JP6231313B2 - 複合成形体 - Google Patents
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Description
これらの問題を解決するために、近年では炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が採用される傾向にある。しかしながら、CFRPにおいても、性能が良くてもコスト面から使いこなすのが困難であるといった課題を有する技術であった。
代表的な例としては、造船などに活用される硬質塩化ビニル系発泡板の上下面をGFRPでサンドイッチしたパネル構造が知られている。これらのサンドイッチパネル構造は、構造力学上の断面係数や断面2次モーメントを向上させることができる。具体的には、サンドイッチ芯材に発泡体や軽量木材または紙、アルミを用いたハニカム材料などを使用することで、比強度の向上を果たすことができる。しかしながら、製造過程で手作業に頼る部分が多く、結果的には性能が良くてもコスト面から使いこなすのが困難であるといった課題を有するものであった。
すなわち本発明は、
〔1〕
複数の樹脂発泡小片と、熱硬化性樹脂硬化物とからなる複合成形体であって、
該樹脂発泡小片間に熱硬化性樹脂硬化物が形成されており、
前記複合成形体を構成する熱硬化性樹脂硬化物が3〜30体積%であり、
前記複合成形体の曲げ弾性率E(MPa)と複合成形体の密度ρ(kg/m3)が下式(1)を満足することを特徴とする複合成形体。
E1/3/ρ > 0.02 [(MPa)1/3(kg/m3)-1] ・・・ (1)
〔2〕
前記複合成形体の密度ρが100〜600kg/m3であることを特徴とする前記〔1〕に記載の複合成形体。
〔3〕
前記複合成形体の周囲には、熱硬化性樹脂硬化物からなる硬化物層が形成されていることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕記載の複合成形体。
〔4〕
前記熱硬化性樹脂硬化物が、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ウレタン系樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔5〕
前記樹脂発泡小片の基材樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂および塩化ビニル系重合体から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔6〕
前記樹脂発泡小片が、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔7〕
前記樹脂発泡小片が相互に融着されており、融着された樹脂発泡小片間の空隙に熱硬化性樹脂硬化物が形成されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔8〕
前記複合成形体の、230℃、10分間加熱後の加熱体積変化率が0%〜−3%であることを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔9〕
前記複合成形体から無作為に少なくとも5箇所から切り出した試験片の密度の標準偏差を、密度の算術平均で除した値である変動係数(%)が10%以内であることを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔10〕
前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の複合成形体の少なくとも一面に、金属板を積層してなる金属複合成形体
を提供する。
本発明の複合成形体は、複数の樹脂発泡小片1間や、樹脂発泡小片成形体2を構成する樹脂発泡小片間の空隙、さらには、樹脂発泡小片1自体に形成された空隙などに、熱硬化性樹脂液体原料が全体にわたって満遍なく連続相の状態で含浸され、硬化し、熱硬化性樹脂硬化物3の連続相を形成している。
一方、複合成形体中の樹脂発泡小片1又は樹脂発泡小片成形体2は、樹脂発泡小片成形体を用いて複合成形体を製造した場合など、発泡粒子同士が融着していれば連続相として形成される。なお、複合成形体の強度の観点からは、樹脂発泡小片と熱硬化性樹脂硬化物が共連続相として存在することが好ましい。
複合成形体の内部では、樹脂発泡小片間の空隙部に、熱硬化性樹脂硬化物が樹脂発泡小片の個々を包むように且つ密着して硬化している。複合成形体内部において、すなわち、熱硬化性樹脂硬化物がいわゆる三次元網目構造を形成する。この網目構造の形成により、複合成形体の強度が発揮される。
E(1/3)/ρ > 0.02 [(MPa)1/3/(kg/m3)]・・・ (1)
なお、式(1)で求められる値を前記複合成形体の比曲げ剛性という。前記比曲げ剛性が小さすぎる場合には、熱硬化性樹脂硬化物により形成される三次元網目構造の気泡壁部分に形成される気孔が応力点となって、曲げ剛性が低下していると考えられる。上記観点から、前記比曲げ剛性は、0.021以上であることが好ましい。なお、比曲げ剛性の上限は、0.04であることが好ましい。
この熱硬化性樹脂硬化物の網目構造のみが残存した形態の成形品は、本発明の複合成形品を、熱硬化性樹脂硬化物の分解温度以下であり、且つ樹脂発泡小片の溶融分解温度以上、或いは減容温度以上に加熱処理することによって、樹脂発泡小片を揮散或いは減容させて、樹脂発泡小片が占有していた部分を空洞状とすることによって達成される。かかる溶融分解操作或いは減容操作は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが、網目構造を形成している熱硬化性樹脂硬化物の酸化劣化等を防止する観点から望ましい。
なお、この網目構造の成形品を得るには、耐熱性の高い熱硬化性樹脂を選択する必要がある。
一方、芯層には結晶性ポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。該結晶性ポリ乳酸系樹脂は、熱硬化性樹脂液体原料に対して溶解や膨潤することなく、発泡粒子の形状が維持されると共に接着性の高い複合成形体が得られる。
上記のような発泡粒子は、例えば、特開2012−025869号公報に記載の方法により調製することができる。
温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡小片成形体から直方体サンプルを切り出し、該サンプルの外形寸法より嵩体積Va[cm3]を求める。次いで該サンプルを温度23℃のエタノールの入ったメスシリンダー中に金網などの道具を使用して沈め、軽い振動等を加えることにより成形体中の空隙に存在している空気を脱気する。そして、金網などの道具の体積を考慮して水位上昇分より読みとられる該サンプルの真の体積Vb[cm3]を測定する。求められたサンプルの嵩体積Va[cm3]と真の体積Vb[cm3]から、次式により空隙率Y[%]を求める。
空隙率Y[%]=〔(Va−Vb)/Va〕×100・・・(2)
前記熱硬化性樹脂硬化物は、その表面硬度がバーコル硬度で20以上であることが望ましい。なお、バーコル硬度は、JIS K7060に準拠して測定することができる。
硬化前の、熱硬化性樹脂液体原料の見かけ粘度は、100〜10000mPa・sであることが好ましい。上記範囲内であれば、樹脂発泡小片間の空隙に容易に含浸させることができる。上記観点から、200〜8000mPa・sであることがより好ましい。なお、本明細書において粘度測定は、JISK6901のブルックフィールド型粘度計法に基づいて行なうこととする。
一方、有機系添加剤としては、フェノール系酸化防止剤、HALS、有機系顔料などが一般的に用いられる。有機系添加剤の添加量は、硬化物に影響がない範囲で添加することができる。前記添加剤の添加量は、熱硬化性樹脂液体原料100質量部に対して10質量部以下とすることが好ましい。
本発明の複合成形体は、密閉可能な所定形状の内部空間を形成できる型に、複数の樹脂発泡小片を充填、または予め複数の樹脂発泡小片を型内成形して得られた発泡小片成形体を配置する工程(1)、該内部空間を密閉して、該内部空間に熱硬化性樹脂液体原料を導入する工程(2)、該液体原料を該樹脂発泡小片間の該空隙部に含浸させ、かつ該成形体の周囲を覆う工程(3)、及び該液体原料を硬化させる工程(4)を経て製造することができる。
図1(a)は、直方体状の内部空間4を有する型5内に、複数の樹脂発泡小片1が固着一体化された樹脂発泡小片成形体2を収納する工程(1)が終了した状態を模式的に示している。
空隙率が上記範囲内であれば、硬化した熱硬化性樹脂による強度発現に優れ、軽量性を有する複合成形体となる。なお、網目構造は型に配置した樹脂発泡小片の個々の形状や、発泡小片成形体の空隙率を変えることにより、網目構造の形状は適宜変更することが可能である。
それ故、熱硬化性樹脂硬化物の網目構造の形成には、熱硬化性樹脂液体原料の粘度、型の減圧状態、含浸速度や、硬化速度が関連する。
かかる観点から、前記発泡小片成形体に導入される熱硬化性樹脂液体原料の粘度は、100〜10000mPa・sであることが望ましく、200〜9000Pa・sであることがさらに望ましい。
なお、硬化条件は、特段に規定されるものではなく、熱硬化性樹脂は、1液性ではなく、2液以上の複数液混合から構成されてもよい。硬化手段としては、目的とする硬化物が得られれば特段に規定されるものではなく、ラジカル反応、重縮合反応、メタセシス反応などの一般的な化学反応を伴う形態で硬化させることができる。
(発泡小片成形体の製造)
鞘層がネイチャーワークス社製のポリ乳酸、グレード名:「Ingeo4060D」の無発泡層であり、芯層が同社のグレード名:「Ingeo2003D」からなる鞘芯型ポリ乳酸発泡粒子の樹脂発泡小片として用いた。鞘層と芯層の質量比率は5/95であった。該発泡粒子を型内成形して発泡小片成形体を得た。成形は、開放し、閉鎖し得る金型〔有効寸法:長さ(l)300×幅(w)300×深さ(t)50(mm)〕を使用して、型内を空気で0.1MPa(G)に保持した金型内に発泡粒子を充満した後、金型内の空気圧を0.0MPa(G)に戻し、次いで金型に付属する排気弁を開放した状態で元圧0.3MPa(G)のスチームを5秒間導通した後に、排気弁を閉鎖し、0.02MPa(G)のスチームを型に導入し5秒間保持した後に、直ちに型を開放し、15秒の水冷冷却を行い、型を開放して、型で成形した平板状の発泡小片成形体を取り出した。成形体は、40℃のオーブン中で24時間乾燥した後に、70℃のオーブンに移し、24時間の熱処理が施された。熱処理後の発泡小片成形体の寸法は長さ(l)295×幅(w)295×厚み(t)48(mm)であり、嵩密度84kg/m3を有する、表1に示す空隙率のポリ乳酸製の発泡小片成形体を得た。成形品は、厚さ28mmにカットして平板とした。
有効内寸300(l)×300(w)×30(t)(mm)である、熱硬化性樹脂の導入口と排出口を有する樹脂型(FRP型)を上型とし、2mm厚みのSUS板を下型とした、上下一対の、密閉空間を形成できる型の内部に、前記ポリ乳酸製の発泡小片成形体を配置した(配置工程)。次いで、下型との境界部に設けられた液状原料の導入口を閉鎖して型内を密閉した後に、上型の中央頂部に設けた排出口から−0.04MPa(G)で減圧した(減圧工程)。型内が−0.04MPa(G)となったのを確認した後に、予め調合しておいたエポキシ系熱硬化性樹脂液状原料を、導入口を開いて型内へ導入した。エポキシ系樹脂は三菱化学(株)製jER807を100質量部と三菱化学(株)製TETA 11質量部とからなる熱硬化性樹脂液体原料を用いた。なお、この熱硬化性樹脂液体原料の粘度は、表1に示す。
導入口に接続した10mmφのシンプレックスチューブを介して、型の減圧状態を推進力に、混練した熱硬化性樹脂液体原料(以下、「液体樹脂」ということがある。)を吸引し型内へ層流状態を維持しながら且つ気孔の混入に配慮しながら導入した。なお、導入時にわたり−0.04MPa(G)を維持した。導入時の液体樹脂量を30g/分から200g/分の間で制御しながら導入し、最終的に上型の排出口から液状樹脂が排出されるまで継続して行った(導入工程)。液体樹脂の導入に要した時間は10分であった。導入が終了した時点で、導入口を閉鎖し、排出口から減圧を継続しながら24時間の間、型を静置した状態(室内の気温:23℃、湿度:60%RH)で保持した。
24時間経過の後に、型を開放し、複合成形品を取り出した。次いで、80℃に加温してあるオーブン中に3時間放置し、硬化を完結した。
得られた複合成形品の物性などを表2に示す。
(発泡小片成形体の製造)
基材樹脂がポリプロピレン系樹脂とポリ乳酸樹脂の混合樹脂からなる発泡粒子の樹脂発泡小片として用いた。該発泡粒子を型内成形して発泡小片成形体を得た。成形は、開放し、閉鎖し得る金型(有効寸法300(l)×300(w)×50(t)(mm))を使用して、型内を空気で0.1MPa(G)に保持した金型内に発泡ビーズを充満した後、金型内の空気圧を0.0MPa(G)に戻し、次いで金型に付属する排気弁を開放した状態で元圧0.3MPa(G)のスチームを5秒間導通した後に、排気弁を閉鎖し、0.02MPa(G)のスチームを型に導入し5秒間保持した後に、直ちに型を開放し、15秒の水冷冷却を行い、型を開放して、型で成形した平板状の発泡小片成形体を取り出した。成形体は、40℃のオーブン中で24時間乾燥した後に、70℃のオーブンに移し、24時間の熱処理が施された。熱処理後の発泡小片成形体の寸法は295l×295w×48t(mm)であり、表1に示す発泡小片成形体を得た。成形品は、厚さ28mmにカットして平板とした。
有効内寸300(l)×300(w)×30(t)(mm)である、熱硬化性樹脂の導入口と排出口を有する樹脂型(FRP型)を上型とし、2mm厚みのSUS板を下型とした、上下一対の型の内部に、前記発泡小片成形体を配置した(配置工程)。次いで、下型との境界部に設けられた液状原料の導入口を閉鎖した後に、上型の中央頂部に設けた排出口から−0.04MPa(G)で減圧した(減圧工程)。型内が−0.04MPa(G)となったのを確認した後に、予め調合しておいた以下のエポキシ系熱硬化性樹脂液状原料を、導入口を開いて型内へ導入した(導入工程)。エポキシ系樹脂は三菱化学(株)製jER807を100質量部と三菱化学製(株)TETA 11質量部とからなる熱硬化性樹脂液体原料を用いた。なお、この熱硬化性樹脂液体原料の粘度は、表1に示す。
導入口に接続した10mmφのシンプレックスチューブを介して、型の減圧状態を推進力に、混練した熱硬化性樹脂液体原料(以下、「液体樹脂」ということがある。)を吸引し型内へ層流状態を維持しながら且つ気孔の混入に配慮しながら導入した。導入時の液体樹脂量を30g/分から200g/分の間で制御しながら導入し、最終的に上型の排出口から液状樹脂が排出されるまで継続して行った。導入時の圧力は−0.04MPa(G)を維持した。液体樹脂の導入に要した時間は10分であった。導入が終了した時点で、導入口を閉鎖し、排出口から減圧を継続しながら24時間の間、型を静置した状態(室内の気温を23℃とし、湿度を60%RHとして)で保持した。
24時間経過の後に、型を開放し、複合成形品を取り出した(含浸・硬化工程)。
得られた複合成形体の物性などを表2に示す。
開口部が300(w)×75(t)mmである型枠に、実施例1で得られたポリ乳酸系樹脂発泡小片成形体(寸法は295(w)×295(l)×28(t)(mm)であり、84kg/m3の嵩密度を有する空隙率10%のポリ乳酸製の発泡小片成形体)を挿入した。型枠は下型に密着する構造であり、下型を減圧状態とすることで、発泡小片成形体を介して、発泡小片成形体の上面から下面に向けて差圧を形成させた(上面は開放されている)。エポキシ系樹脂は三菱化学(株)製jER807を100質量部と三菱化学(株)社製TETA 11質量部とからなる熱硬化性樹脂液体原料を用いた。上面から、発泡小片成形体の上面を被覆するように、熱硬化性樹脂液体原料を流し込んだ。なお、導入時の減圧は−0.04MPa(G)とした。液体原料が発泡小片成形体に吸入されるのを確認した後に、脱型し、24時間放置した。次いで、80℃に加温してあるオーブン中に3時間放置し、硬化を完結し、300(w)×300(l)×10(t)(mm)の平板状複合成形品を得た。比較例1の複合成形体の製造工程の条件を表1に、得られた複合成形体の構成及び評価結果について表2に示す。
実施例2に記載の発泡粒子(重量81g)を用い、液状不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ製4007A)100重量部と酸化マグネシウム3重量部、及び硬化剤として(過酸化ベンゾイル)BPO2重量部を硬化剤が実質的に分解する温度未満で予備混合した。続いて、前記予備混合物と前記発泡粒子とを容器内に入れて、該発泡粒子表層部の全面が予備混合物で全面被覆されるように混合操作を行った。次に、内寸法が長さ295mm、幅295mm、深さ45mmの樹脂製型枠を用意し、大判のポリエチレン製シートを型枠内壁面に沿わせ、その上から、前記容器内容物の厚みが約45mmとなるように型枠内に入れ、更にその上からをポリエチレン製シートで覆って、35℃雰囲気下で3日間放置した。型枠から取り出された未硬化状合成樹脂発泡粒状物集合体は、不飽和ポリエステル樹脂が常温において固体状ないし半固体状に増粘された結果、長さ295mm、幅295mm、厚み45mmのサイズのものであった。次に、内部がポリテトラフルオロエチレン樹脂で表面処理された110℃に加熱されたアルミニウム製雌金型内に入れ、この雌金型に一致するプレス機構を有する同材質の110℃に加熱された雄金型にてプレス(プレス圧力は10kgf/cm2 )し、そのままその温度で40分間保持した後、60℃以下に両金型を冷却し、軽量成形体を取り出し、23℃、50%RHの雰囲気下で48時間放置した。その軽量成形体は、長さ295mm、幅295mm、厚み28mmのサイズのものであった。比較例2の複合成形体の製造工程の条件を表1に、得られた複合成形体の構成及び評価結果について表2に示す。
比較例2は、発泡小片成形体に熱硬化性樹脂を含浸する工程において減圧とすることなく含浸させ、実施例2とは異なる方法で複合成形体(軽量成形体)を得たため、曲げ弾性率が実施例2によるものより低かった。
これは、含浸のばらつきや、熱硬化性樹脂硬化物の気泡壁中にエアーの巻き込みによる気孔が形成されることに起因し、当該気孔が応力点となって、局所的に強度が低下していると考えられる。
(樹脂発泡小片の嵩密度)
樹脂発泡小片の嵩密度は、樹脂発泡小片を無作為に抜き出し、気温23℃、相対湿度50%の大気圧下において、容積1Lのメスシリンダーの中に、静電気を除去しつつ自然堆積状態となるように多数の発泡小片を1Lの目盛まで収容し、次に、収容された発泡小片の重量を測定することにより求めた。
前記複合成形体の密度は、複合成形体の重量を水没法にて求められる複合成形体の体積で除して得られるとして求めた。なお、該密度は、硬化物層を含む、複合成形体の全体の密度を意味する。
網目の気泡径の測定方法は、以下のようにして行った。得られた複合成形体を厚み方向に2分割し、切断面の拡大写真を撮影し、次に、写真上に複合成形体の表面から中心付近を通り反対側の表面まで達する直線を引き、直線と交わっている樹脂発泡小片の数を数える。
そして、直線の長さ(実際の長さ)を樹脂発泡小片で除して、網目の気泡径を求め、この操作を複合成形体の5箇所について同様に行ない、得られる測定値の平均値とした。
複合成形体を構成する樹脂発泡小片成形体と熱硬化性樹脂の網目構造壁との接着性を確認する方法としては、曲げ破壊にて確認することができる。より具体的には、JIS K7221に準拠して、通常は幅20mm、厚さ10mm、長さ200mmの試験片に切り出した後、支点間(スパン)100mmに設定した3点曲げ試験を、荷重速度5mm/秒で試験片中央部に曲げ荷重を与え、割れ折れるまで試験を行った後、その破断面を検証した。破断面において樹脂発泡小片が材料破壊している数が多いほど、接着性は高いと評価できるが、材料破壊した発泡小片の数(Nb)と材料破壊しなかった発泡小片の数(Nn)を比較し、その比Nb/Nnの値が1以上でなければ、接着性があるとは評価できない。即ち、本発明の複合成形体の接着性確認法において、Nb/Nnの比の値は、1以上であることが好ましい。Nb/Nnの値が1以下の場合は、曲げ、引張、せん断などの力学的強度が十分に発現しない虞があるため、好ましくない。
本発明において複合成形体の曲げ弾性率の測定は、JIS K7203(1982)に基づき、試験片として、長さ150mm×横25mm×厚さ30mm(製品厚み)のものを複合成形体から、任意の箇所において10箇所切出して使用した。なお、該試験片には、厚み方向の上下面には硬化物層が存在するサンプルを用い、側面には硬化物層が存在しないものを用いた。測定は、支点先端のR=5mm、圧子先端のR=5mm、支点間距離50mm、曲げ速度10mm/分の条件にて行った。なお、試験片について10個の試験片を測定し平均値を求め、曲げ弾性率とした。
本発明における比曲げ剛性は、上述の方法により求められた、前記曲げ弾性率(MPa)の値、前記複合成形体の密度(kg/m3)から式(1)により求めた値である。
JIS A 1412−2 熱流計法(HFM法)に準じて複合成形体の熱伝導率を測定した。複合成形体を200×200×25mmの寸法の試験体に切り出し、測定装置の加熱板と冷却熱板の間に挟み、試験体温度差30℃、試験体平均温度20℃の条件で測定を行った。
まず、各実施例、比較例において作製した複合成形体の、試験前の体積Bを測定した。次いで、複合成形体を温度230℃のオーブンにて10分加熱した後、温度23℃、相対湿度50%の条件下に60分保管した。そして、加熱後の複合成形体の体積Cを測定した。
加熱体積変化率をAとすると、式:A=(B−C)/B×100にて寸法変化率を求めた。なお、試験片のサイズは、縦50mm×横50mm×厚み25mmとして行った。なお、試験片には、硬化物層が除かれたサンプルを用いた。その結果を表2に示す。
まず、複合成形体を板厚方向にカッターで切断し、その切断面を観察することにより、熱硬化性樹脂硬化物の充填性、樹脂発泡小片の充填性を評価し、連続相となっているか、分散相の状態となっているかを判断した。
また、本発明の複合成形体は、厚み方向に有効な形状で厚みを増して断面係数を向上し、投影面あたりの重量の軽量化を達することができるので、金属部品との置き換えを行うと同時に部品軽量化を達することができ、更には、コストを社会的要求レベルに維持することができる。
2. 発泡小片成形体
3. 熱硬化性樹脂硬化物
3' 熱硬化性樹脂液体原料
4. 内部空間
5. 型
5a. 上型
5b. 下型
6. 空隙部
7. 導入孔
8. 減圧吸引パイプ
10. 複合成形体
Claims (9)
- 複数の樹脂発泡小片と、熱硬化性樹脂硬化物とからなる複合成形体であって、
該樹脂発泡小片間に熱硬化性樹脂硬化物が形成されており、
前記複合成形体は、該複合成形体の内部に熱硬化性樹脂硬化物で構成される網目構造を有しており、
前記複合成形体を構成する熱硬化性樹脂硬化物が3〜30体積%であり、
前記複合成形体の、230℃、10分間加熱後の加熱体積変化率が0%〜−3%であり、
前記複合成形体の曲げ弾性率E(MPa)と複合成形体の密度ρ(kg/m3)が下式(1)を満足することを特徴とする複合成形体。
E1/3/ρ > 0.02[(MPa)1/3(kg/m3)−1] ・・・ (1) - 前記複合成形体の密度ρが100〜600kg/m3であることを特徴とする請求項1に記載の複合成形体。
- 前記複合成形体の周囲には、熱硬化性樹脂硬化物からなる硬化物層が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の複合成形体。
- 前記熱硬化性樹脂硬化物が、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびポリイミド系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合成形体。
- 前記樹脂発泡小片の基材樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリ塩化ビニル系重合体から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合成形体。
- 前記樹脂発泡小片の基材樹脂が、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合成形体。
- 前記樹脂発泡小片が相互に融着されており、融着された樹脂発泡小片間の空隙に熱硬化性樹脂硬化物が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合成形体。
- 前記複合成形体から無作為に少なくとも5箇所から切り出した試験片の密度の標準偏差を、密度の算術平均で除した値である変動係数(%)が10%以内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の複合成形体。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の複合成形体の少なくとも一面に、金属板を積層してなる金属複合成形体。
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