JP6230128B2 - カニューレ保持バンド - Google Patents

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Description

本発明は、気管切開した患者の気管に挿入したカニューレに接続してカニューレを支持するようにしたカニューレ保持バンドに関する。
従来、上気道の閉塞や人工呼吸器補助を必要とする患者や痰の排出障害等のある患者には、気道を確保し、人工呼吸補助、痰の除去等のために前頸部で気管を切開した気管切開部に気管カニューレ(以下、単にカニューレという)を装着していた。また、カニューレから外気中の埃等の異物が気管に混入することを防ぐためにカニューレのコネクタに人工鼻を装着している。咽喉や気管等に痰が溜まったときには人工鼻を抜いて吸引用チューブをカニューレに挿入して吸引していた。
ところで、カニューレを装着した患者が反り返り等の発作を起こしたり咳等をするとカニューレが気管から抜けることがあり、また小児患者等はカニューレを自分で引き抜いてしまうことがあった。カニューレが気管から抜けると呼吸困難を引き起こす等、患者の健康状態に悪影響を与えることがある。そのため、カニューレが不用意に気管から抜けないようにカニューレを紐、或いは綿テープやカニューレホルダー等で身体に結び付けて固定していた。
例えば、非特許文献1に記載されたカニューレ固定手段では、カニューレの気管切開部に挿入されるチューブと人工鼻を取り付けて外気から空気を取り込むコネクタとの間にコネクタの両側に拡張するフランジが設けられている。そして、フランジの両端に設けた固定穴にそれぞれ紐の一端を固定し、この紐を身体に結びつけて他端を外れないように互いに硬結びで固定していた。
しかも、患者が反り返り等の発作を起こしてもカニューレが抜けないようにするために、紐は頸部だけでなく脇の下から背中側で交差させて前面側で紐の両端を結び付けて身体に固定していた。
「新版医療的ケア研修テキスト」(株式会社クリエイツかもがわ:2013年3月20日発行)第101頁
しかしながら、カニューレを紐で身体に結びつけて固定するとして、診察等の場合には硬結びした紐を切断してカニューレを気管切開部から取り外す必要があった。そして、診察後に再度紐をカニューレの固定穴に通して身体に巻き付けて固定しなければならず、手間がかかり煩雑であった。
また、カニューレの固定穴に通した紐を硬く結ぶことで、シリコン製等のフランジの固定穴に亀裂ができたり割れたりして破損するおそれもあった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、患者が反り返り等の発作を起こしてもカニューレが気管切開部から抜けることを防ぐと共に、診察時等に容易に取り外して再度取り付けができてカニューレの破損を防止できるカニューレ保持バンドを提供することを目的とする。
本発明に係るカニューレ保持バンドは、頸部に巻き付けたバンドに保持されていて気管切開部に挿入するカニューレと、カニューレに設けたフランジの両側に形成した固定孔にそれぞれ接続した係止具と、係止具に一端が連結されていて患者の身体に巻き付けて固定するバンド部材とを備え、バンド部材は、係止具の穴に挿通させて長さ調整可能に固定させる面ファスナー付き先端部と、伸縮可能な弾性部材と、帯状のバンド本体とを互いに接続して形成したことを特徴とする。
本発明によるカニューレ保持バンドは、切開した気管内に挿入したカニューレをバンドで首に巻き付けて保持すると共に、カニューレのフランジに設けた保持バンドは患者の身体の大きさに応じて、係止具の穴に挿通させた先端部における面ファスナーの接合位置によって長さを調整でき、しかも保持バンドを身体に取り付けた状態で患者が反り返りや痙攣等の発作を起こした場合でも、身体の動きや頸部の伸展や屈曲や回旋等に応じて保持バンドの弾性部材が伸縮することでカニューレを追従させるため、カニューレが気管切開部から抜けたり固定穴が破損したりすることを防止できる。
また、診察等の際には、バンド部材の先端部の面ファスナーを分離して先端部を係止具から取り外すことでカニューレを気管切開部から取り外すことができ、診察終了後には再度保持バンドの先端部を係止具に接続して面ファスナーで連結できる。
また、係止具は、カニューレのフランジに形成した固定孔に挿通させる樹脂紐と、該樹脂紐の両端部に設けて面ファスナー付き先端部を穴に挿通させる樹脂リングとを備えていることが好ましい。
係止具はカニューレにおけるフランジの固定穴に通した樹脂紐と樹脂リングとで形成したからフランジの固定穴に対してスライド可能である上に伸縮も可能であり、患者の発作等によって保持バンドを通して荷重がかかっても樹脂製の係止具が伸縮してある程度吸収することができる。
本発明に係るカニューレ保持バンドによれば、患者が反り返りや痙攣等の発作を起こして不随意運動等を行いカニューレが気管切開部から引き抜かれる力が相対的に働いても、弾性部材が伸縮して追従するのでカニューレが気管切開部から抜けることを防止できる。しかも、カニューレのフランジに設けた固定穴にも過大な荷重がかからないので固定穴が損傷することを防止できる。更に、患者の体格に違いがあっても保持バンドの弾性部材によって吸収して取り付けできる。
また、保持バンドは面ファスナー付き先端部で係止具と接合及び分離が行えるため、診察時のカニューレの取り外しやその後の再装着と保持バンドの連結を容易に行える。しかも、保持バンドの先端部における面ファスナーの接合位置を調整することで患者の体格に応じて長さの調整を行える。
本発明の実施形態によるカニューレ保持バンドを示す要部説明図である。 患者にカニューレ保持バンドを装着した状態を示す要部斜視図である。 カニューレに連結した保持バンドを身体に取り付けた状態を示す説明図である。
以下、本発明の一実施形態によるカニューレ保持バンド1について図1乃至図3に基づいて説明する。
図1に示すカニューレ保持バンド1は、患者の切開した気管内に挿入するカニューレ2と、カニューレ2に接続して身体に取り付ける保持バンド3とを有している。また、カニューレ2には人工鼻4を取り付けて、埃等がカニューレ2を通して気管内に侵入することを防ぐと共に患者の呼吸によって吸入する空気に湿度と温度を与えて乾燥や温度変化等を防いでいる。
カニューレ2は、図1に示すように、気管切開部から気管内に挿入される略円弧状に湾曲したチューブ6と、チューブ6に連通する中空のコネクタ7と、チューブ6及びコネクタ7の間に形成されていてチューブ6の長手方向に略直交する方向に拡幅する略板状のフランジ8とを備えている。フランジ8の両端部には固定穴9がそれぞれ形成されている。カニューレ2のコネクタ7には人工鼻4のコネクタ4aが嵌合可能である。
また、カニューレ2には、カニューレ2を患者の頸部に取り付けるバンド11が設けられている。バンド11の両端部11aの表面には第一の面ファスナー12が所定長さに亘って固着されており、各端部11aをカニューレ2のフランジ8の固定穴9内に挿入した後に折り曲げて第一の面ファスナー12同士で接合可能としている。そのため、患者の頸部の太さに応じて第一の面ファスナー12の接合位置を調整してバンド11の長さや径を調整できる。
次に、カニューレ2のフランジ8の両端部に設けた固定穴9に取り外し可能に連結する保持バンド3について説明する。保持バンド3は、フランジ8の固定穴9に取り付け可能な係止具14と、係止具14に取り付け可能な帯状のバンド部材15とを有している。
係止具14は例えば樹脂製であり、略U字状に湾曲した可撓性のある細紐状の樹脂紐17と樹脂紐17の両端にそれぞれ設けられた一対の樹脂リング18とで構成されている。係止具14は樹脂製であるため樹脂紐17と樹脂リング18はそれぞれ伸縮可能で変形可能とされている。樹脂リング18は固定穴9を通過可能であり、しかもバンド部材15の先端部21を挿通させる穴を有している。
また、バンド部材15は一対の樹脂リング18に挿通可能であり、表面に所定長さに亘って第二の面ファスナー20を固着した先端部21と、この先端部21に一端が連結されたゴム等からなる帯状の弾性部材22と、弾性部材22の他端に連結された長尺で帯状のバンド本体23とを有している。しかも各バンド本体23の自由端部23aにはその表面に所定長さに亘って第三の面ファスナー24が固着されている。
なお、先端部21やバンド本体23として帯状の綿や不織布、或いは樹脂等の柔らかい適宜の材料を採用することができる。
そのため、バンド部材15は先端部21を係止具14の一対の樹脂リング18に通して折り曲げて先端部21の第二の面ファスナー20同士で接合可能であり、患者の体格によって第二の面ファスナー20の接合位置を調整してバンド部材15の長さを調整できる。また、一対のバンド部材15を身体に巻き付けて例えば身体の前面で自由端部23aの第三の面ファスナー24同士を接合することで保持バンド3を身体に固定することができる。なお、第三の面ファスナー24同士の接合位置を調整することによってもバンド部材15の長さを調整可能である。
本実施形態によるカニューレ保持バンド1は上述の構成を備えており、次にカニューレ保持バンド1に設けたカニューレ2の着脱方法と使用方法について説明する。
まず、図2に示すように、カニューレ2のチューブ6を患者の気管切開部から気管内に挿入し、バンド11を患者の頸部に巻いてその両端部11aをフランジ8の各固定穴9内に挿入して折り曲げ、各端部11aの第一の面ファスナー12同士を接合してバンド11をカニューレ2に連結する。
そして、保持バンド3において、予めフランジ8の各固定穴9に一方の樹脂リング18を挿通させた各係止具14を略U字に折り曲げて一対の樹脂リング18をそろえて、バンド部材15の先端部21を挿通させて折り曲げ、第二の面ファスナー20同士で先端部21を固定する。
次に、図3に示すように、2本のバンド部材15をそれぞれ例えば患者の前面の脇の下から背中側に回してX字状に交差させて、前面のお腹あたりで各バンド本体23の自由端部23a同士を第三の面ファスナー24で接合して保持する。このようにしてカニューレ2と保持バンド3からなるカニューレ保持バンド1の取り付けが終了する。患者は保持バンド3で保持されたカニューレ2に人工鼻4を装着した状態で生活できる。
この状態において、患者が例えば反り返り等の発作を起こした場合、頭部が頸部と共に後方上部に反り返えるため、保持バンド3で保持されたカニューレ2に引き抜き方向の力が相対的にかかる。この場合でも、各保持バンド3は荷重を受けて弾性部材22で伸びるため係止具14や先端部21が頸部の反り返りに追従することで、カニューレ2の引き抜きが抑えられる。
また、頭部の後方への反り返りに限定されることなく、患者の痙攣や不随意運動、或いは適宜方向の体の動きに応じて弾性部材22が伸縮して先端部21と係止具14が追従し、カニューレ2に大きな引き抜き荷重がかかることを防止できる。
更に、カニューレ2におけるフランジ8の固定穴9に通した係止具14は、樹脂紐17と一対の樹脂リング18とで形成したから、フランジ8の固定穴9に対して摺動可能である上に伸縮も可能であるため、係止具14によってもカニューレ2の引き抜き荷重を低減できる。
しかも、患者の発作等によって保持バンド3の係止具14を介してカニューレ2のフランジ8の固定穴9に荷重がかかっても、係止具14は樹脂製であるため多少伸縮して荷重を吸収すると共にカニューレ2を頸部の動きに追従させることができる。
また、診察等のためにカニューレ2を気管切開部から引き抜くには、保持バンド3の先端部21における第二の面ファスナー20同士を接合状態から分離させ、係止具14の樹脂リング18から先端部21を引き抜く。そして、バンド11における両端部11aの第一の面ファスナー12同士を接合状態から分離させ、カニューレ2のフランジ8の各固定穴9から各端部11aを引き抜いた後で、カニューレ2のチューブ6を気管切開部から引き抜くことができる。
なお、バンド本体23の自由端部23aの第三の面ファスナー24を引き剥がして分離してから、保持バンド3の先端部21における第二の面ファスナー20の接合を分離させてもよい。
上述したように本実施形態によるカニューレ保持バンド1によれば、次の作用効果を奏する。
(1)患者が反り返りや痙攣等の発作を起こしたり不随意運動等を行ったりして相対的にカニューレ2に引き抜き方向の力が加わったとしても、保持バンド3の弾性部材22が伸縮してカニューレ2が頸部の動きに追従し、過大な引き抜き力がカニューレ2にかからずカニューレ2が抜けることはない。
(2)また、カニューレ2のフランジ8に設けた固定穴9にも過大な力がかからず、しかも係止具14は樹脂製であるため、シリコン等からなる固定穴9に亀裂が入ったり切断したりして破損することを防止できる。更に、保持バンド3を患者の身体に取り付ける際、患者の体格に違いがあっても弾性部材22によって吸収して保持バンド3を取り付けできる。
(3)保持バンド3のバンド部材15は先端部21における第二の面ファスナー20で係止具14と簡単に接合及び分離が行えるため、診察時のカニューレ2の取り外しやその後の再装着と保持バンド3の連結を容易に行える。しかも、バンド部材15の先端部21における第二の面ファスナー20の接合位置を調整することで患者の体格に応じて保持バンド3の長さの調整を行える。
(4)カニューレ2のフランジ8にある固定穴9に取り付ける係止具14を樹脂製とすることで、係止具14を多少伸長可能であるため、フランジ8の固定穴9に亀裂や分断等の破損を生じることを防止できる。
なお、本発明によるカニューレ保持バンド1は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や置換等が可能であり、これらも本発明に含まれる。以下に本発明の変形例について上述した実施形態における部材や部品と同一または同様な部材、部品には同一の符号を用いて説明する。
例えば、上述した実施形態ではカニューレ2のフランジ8の両側に固定穴9を設けて頸部のバンド11の端部11aを挿入して第一の面ファスナー12で着脱可能に取り付けたが、一方の端部11aのみを第一の面ファスナー12で着脱可能とし、他方の端部11aはフランジ8に固定してもよい。
また、上述した実施形態ではカニューレ2に人工鼻4を装着して使用するようにしたが、必ずしも人工鼻4をカニューレ2に取り付けなくてもよい。
なお、保持バンド3のバンド部材15同士を連結する自由端部23aには必ずしも第三の面ファスナー24を固定する必要はなく、例えばバックルやフック等、適宜の連結部材を採用することができる。或いは硬結び等で結びつけてもよい。
また、本発明で用いるカニューレ2として単管、複管、カフ付き、カフなし等、任意のタイプのものを採用できることは言うまでもない。
1 カニューレ保持バンド
2 カニューレ
3 保持バンド
8 フランジ
9 固定穴
11 バンド
11a 端部
12 第一の面ファスナー
14 係止具
15 バンド部材
17 樹脂紐
18 樹脂リング
20 第二の面ファスナー
21 先端部
22 弾性部材
23 バンド本体
23a 自由端部
24 第三の面ファスナー

Claims (2)

  1. 頸に巻き付けたバンドに保持されていて気管切開部に挿入するカニューレと、
    前記カニューレに設けたフランジの両側に形成した固定孔にそれぞれ接続した係止具と、
    前記係止具に一端が連結されていて患者の身体に巻き付けて固定するバンド部材とを備え、
    前記バンド部材は、前記係止具の穴に挿通させて長さ調整可能に固定させる面ファスナー付きの先端部と、伸縮可能な弾性部材と、帯状のバンド本体とを互いに接続して形成したことを特徴とするカニューレ保持バンド。
  2. 前記係止具は、前記カニューレのフランジに形成した固定孔に挿通させる樹脂紐と、該樹脂紐の両端部に設けて前記面ファスナー付きの先端部を前記穴に挿通させる樹脂リングとを備えている請求項1に記載されたカニューレ保持バンド。
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