JP6229095B1 - セメント系硬化物の乾燥収縮低減方法 - Google Patents

セメント系硬化物の乾燥収縮低減方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コストや手間のかからない経済的かつ効率的なセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法を提供する。【解決手段】コンクリートやモルタルなどのセメント系硬化物に尿素と硫酸塩を含有する溶液を含浸させる。含浸させる方法としては、セメント系硬化物に塗布したり、吹き付けたり、あるいは尿素と硫酸塩を含有する溶液に一定時間浸漬してもよい。尿素と硫酸塩を含有する溶液は、尿素と硫酸塩を単に水に溶解させた溶液でよい。その他、尿素と硫酸塩を溶解させる液体は、乾燥収縮低減効果を損なわないものであれば、特に限定されず、それ自体が乾燥収縮低減効果を有する溶液を用い、その溶液に尿素と硫酸塩を溶解させたものを使用することもできる。【選択図】 図16

Description

本発明は、コンクリートやモルタルなどのセメント系硬化物の乾燥収縮やそれによる強度の低下を抑制するための乾燥収縮低減方法に関するものである。
従来、モルタルやコンクリートの収縮によるひび割れの抑制のため、膨張材、乾燥収縮低減剤、石灰石骨材などが使用されてきたが、コストの増大を招いている。
コンクリート用の収縮低減剤としては、例えば低級アルコールのアルキレンオキシド付加物を主成分とする生コン用のコンクリート混和剤(例えば、太平洋マテリアル株式会社製の商品名「太平洋テトラガードAS21」)などが市販されている。
また、硬化したコンクリートやモルタルの表面に塗布することで、これらの乾燥収縮を低減するものとして、非イオン界面活性剤の一種であるグリコールエーテル系誘導体などを主成分とする塗布型の収縮低減剤(例えば、株式会社フローリック製の商品名「ヌッテガード」(登録商標)など)が市販されている。
先行技術文献として、例えば、特許文献1にはプレキャスト角型製品の内面に非イオン系界面活性剤などの有機系乾燥収縮低減剤を含浸させることによってひびわれの発生を防止する方法が記載されている。
その他、特許文献2〜5には、コンクリートの品質改善のための表面改質剤の塗布や含浸に関する技術が記載されている。
また、非特許文献1には、コンクリートの混和剤として尿素が硬化後のコンクリートの温度ひび割れや乾燥収縮ひび割れの低減に有効であることや、尿素を用いたコンクリートの諸特性が実験結果に基づいて述べられている。
特開昭62−027386号公報 特開2008−260687号公報 特開2013−253015号公報 特開2015−034119号公報 特開2015−189628号公報
河井徹・阪田憲次、尿素を用いたコンクリートの諸特性、コンクリート工学年次論文集、Vol.29、No.1、2007、第639-644頁
前述のように従来のコンクリートの乾燥収縮低減の技術においては、コストや手間の問題がある。
また、非特許文献1に記載されているように、尿素を混和した場合のコンクリートの乾燥収縮低減効果は既知である。しかし、これらは尿素をコンクリートに混和したものであり、尿素の溶液をコンクリート表面に塗布する技術はこれまでにない。
これに対し、本願の発明者等は、先に尿素を含有する溶液を混和剤としてではなく硬化したモルタルやコンクリートなどの表面から含浸させることでこれらの乾燥収縮低減効果が得られることを発見し、特願2016−193308号として出願を行った。
しかしながら、尿素は非常に水に溶けやすいため、コンクリート構造物などに塗布した後、風雨にさらされると溶出し、乾燥収縮低減効果が薄れる可能性が考えられる。そのため、建築構造物の内部などについては、風雨にさらされることがないため、特に問題とはならないが、風雨にさらされる外部構造物についても乾燥収縮低減効果が維持される方法の開発が必要となった。
本発明はこのような背景のもとに開発されたものであり、尿素に加え硫酸塩を含有する溶液を混和剤としてではなく硬化したモルタルやコンクリートなどの表面から含浸させることでこれらの乾燥収縮低減を図ったものであり、風雨にさらされる外部構造物についても乾燥収縮低減効果が維持することができる経済的かつ効率的なセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法を提供することを目的としている。
本発明のセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法は、脱型後のコンクリートやモルタルなどのセメント系硬化物の表面に尿素と硫酸塩を含有する溶液を含浸させることを特徴とするものである。
セメント系硬化物に尿素と硫酸塩を含有する溶液を含浸させる方法としては、セメント系硬化物がプレキャスト製品など、比較的小さく、移動可能な単体として扱うことができるものであれば、セメント系硬化物を溶液中に一定時間浸漬してもよい。
建物や構造物の場合は尿素と硫酸塩を含有する溶液をセメント系硬化物の表面に塗布することで含浸させることができる。あるいは条件によっては吹き付けでもよい。
硫酸塩としては、主として硫酸アルカリ金属塩又は硫酸アルカリ土類金属塩などの硫酸金属塩を用いることができ、難溶性のものでなければ特に限定されないが、例えば硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウムなど、容易に水に溶けるものが望ましく、中でも硫酸ナトリウムは安価で取り扱いも容易であることから好ましい。又、それらは、組み合わせて使用してもよい。
本発明における硫酸塩の作用としては、セメント中の未反応アルミネートC3Aと硫酸イオンが反応してエトリンガイトを生成し、セメント硬化物の表面部における膨張反応が生ずると考えられる。また、硫酸ナトリウムなどの場合、セメント硬化物の表面部における骨材がNaイオンの存在でアルカリ骨材反応を起こし、表面部における膨張反応が生ずると考えられる。
尿素と硫酸塩を含有する溶液としては、尿素と硫酸塩を単に水に溶解させた溶液でよい。尿素自体が安価であるため、水に溶解させたものを非常に安価な乾燥収縮低減剤として用いることができる。
また、水以外の液体を用い、その液体に尿素と硫酸塩を溶解させたものを使用することもできる。尿素と硫酸塩を溶解させる液体は、尿素と硫酸塩による乾燥収縮低減効果を損なわないものであれば、特に限定されない。
また、水の代わりに用いる液体として、それ自体が乾燥収縮低減効果を有する液体を用い、尿素と硫酸塩を溶解させたものを使用することもできる。
乾燥収縮低減効果を有する好ましい液体としては、非イオン系界面活性剤が挙げられ、例えばグリコールエーテル系誘導体を含む乾燥収縮低減剤などが市販されている。非イオン界面活性剤と水の混合液として使用してもよい。
非イオン系界面活性剤は表面張力を低減させることで、尿素と硫酸塩が硬化物に浸透しやすくなると考えられ、またそれ自体の乾燥収縮低減効果も期待できる。
溶液中の尿素の濃度は、特に限定されず、尿素は比較的安価であるため、他の有意なデメリットが生じない範囲で尿素量を増すことで乾燥収縮低減効果の増大が期待できる。
より具体的には対象とするモルタルやコンクリートの配合、品質なども影響するが、溶液中の尿素の濃度としては、十分な乾燥収縮低減効果が期待できる範囲としては20%以上(質量%)が好ましく、より好ましくは30〜60%(質量%)である。
溶液中の硫酸塩の濃度も、特に限定されず、硫酸塩も硫酸ナトリウムなど一般的には安価であるため、溶解可能な範囲(温度により異なる)で硫酸塩量を増すことで尿素の乾燥収縮低減効果の維持が期待できる。
より具体的には対象とするモルタルやコンクリートの配合、品質なども影響するが、溶液中の硫酸塩の濃度としては、1%以上(質量%)が好ましく、より好ましくは3〜15%(質量%)である。硫酸塩が硫酸ナトリウムの場合も、同様に1%以上(質量%)が好ましく、3〜15%(質量%)がより好ましい。
尿素と硫酸塩の配合における比率(質量)としては、尿素:硫酸塩=20:1〜4:1が好ましく、より好ましくは尿素:硫酸塩=10:1〜4:1である。硫酸塩が硫酸ナトリウムの場合も、同様に尿素:硫酸ナトリウム比は、20:1〜4:1が好ましく、10:1〜4:1がより好ましい。
含浸の時期は、脱型直後あるいは脱型後数日以内程度が望ましいと考えられるが、尿素や硫酸塩の濃度を高めたり含浸の時間を長くしたり、あるいは含浸の程度を深めることで時期的な遅れのデメリットをある程度カバーすることができる。
硬化体の表面が風雨にさらされる場合、尿素は水に溶けやすいため、尿素だけだと乾燥収縮低減効果が薄れる可能性が考えられる。建築構造物の内部などについては、風雨にさらされることがないため、特に問題とはならないと考えられる。また、必要に応じ表面に防水処理を施すことも考えられる。
これに対し、本発明のセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法では、セメント系硬化物の表面に尿素と硫酸塩を含有する溶液を含浸させることで、風雨にさらされた場合でも尿素の溶け出しが抑えられ、乾燥収縮低減効果を維持することができるため、外部構造物などでもその効果を十分に発揮することができる。
尿素と硫酸塩を水に溶解させた溶液の場合でも、脱型後のコンクリートに塗布するだけで、乾燥収縮の大幅な低減が見込まれ、尿素及び硫酸塩は安価であるため、収縮低減にかかるコストの大幅な削減が可能となる。
尿素をコンクリートに混和する場合に比べ、尿素の使用量が少ない量で済む。また、尿素をモルタルやコンクリートに混和する場合に比べ作業が容易である。
セメント系硬化物の表面に尿素に加え硫酸塩を含有する溶液を含浸させることで、風雨にさらされた場合でも尿素の溶け出しが抑えられ、乾燥収縮低減効果を維持することができるため、外部構造物などでもその効果を十分に発揮することができる。
実験1−1(水セメント比40%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験1−2(水セメント比60%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験1−3において、尿素を脱型3日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を変化させたケースの比較結果における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験1−3において、尿素を脱型7日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を変化させたケースの比較結果における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験1−3において、尿素を脱型3日後に含浸させた場合について、尿素の浸漬時間を変化させたケースの比較結果における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験1−3において、尿素を脱型7日後に含浸させた場合について、尿素の浸漬時間を変化させたケースの比較結果における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験1−3において、比較例として市販の乾燥収縮低減剤溶液および市販のプレミックス断面修復モルタル材の水溶液を含浸させたケースにおける材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験1−3において、尿素を市販のプレミックス断面修復材の水溶液、およびこれに市販の乾燥収縮低減剤溶液を加えた液に溶解させた溶液を含浸させたケースにおける材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験2−1(水セメント比40%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験2−2(水セメント比60%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験2−3(水セメント比50%)において硫酸ナトリウムへの浸漬時間(脱型3日後)を変化させたときの材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験2−3(水セメント比50%)における硫酸ナトリウムの濃度を変化させたときの材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験2−3(水セメント比50%)における硫酸ナトリウムへの浸漬時間(脱型7日後)を変化させたときの材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験3−1(水セメント比40%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験3−2(水セメント比60%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験3−3(水セメント比50%)における浸漬時間(脱型3日後)を変化させたときの材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験3−3(水セメント比50%)における浸漬時間(脱型7日後)を変化させたときの材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験4−1(水セメント比40%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。 実験4−2(水セメント比60%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。
以下に、本発明のセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法の具体例を、比較例との効果を確認するために行った実験に基づいて説明する。
〔比較例1〕
まず、比較例1として、脱型後のセメント系硬化物の表面に尿素を含有する溶液(硫酸塩を含まない場合)を含浸させた場合の乾燥収縮低減効果について説明する(実験1−1〜実験1−3)。
〔実験1−1〕
実験1−1では、水セメント比40%の通常モルタルの硬化物に尿素を含有する水を含浸させた場合の効果の確認を行った。
(1) 実験条件
実験条件を表1に示す。
Figure 0006229095
表1において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+水(g))=50%
表1における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日尿素:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
7日尿素:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
実験1−1では、さらに材齢91日(13週)で各供試体を水に浸漬(1度目の浸漬)し、材齢119日(17週)で各供試体を再度水に浸漬(2度目の浸漬)することで、尿素の効果に影響があるかどうかを調べた。
(2) 実験結果
実験結果を図1に示す。
図1は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.112%短くなり、その後ほぼ一定の長さを維持した。
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.106%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.082%程度に回復したが、その後急激に乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.110%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.092%程度に回復したが、材齢147日(21週)では長さ変化率−0.112%程度と供試体(N)とほぼ同じ長さ変化率となり、材齢182日(26週)では長さ変化率−0.120%程度と供試体(N)より大きな長さ変化率となった。
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.114%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.087%程度に回復したが、その後急激に乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.119%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.100%程度に回復したが、材齢147日(21週)では長さ変化率−0.123%程度、材齢182日(26週)では長さ変化率−0.132%程度と供試体(N)より大きな長さ変化率となった。
脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬した供試体(3日尿素)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.090%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率0.066%程度に回復したが、その後乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.089%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.072%程度に回復したが、材齢147日(21週)では長さ変化率−0.090%程度、材齢182日(26週)では長さ変化率−0.098%程度であった。
脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬した供試体(7日尿素)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.090%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率0.075%程度に回復したが、その後乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.100%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.085%程度に回復したが、材齢147日(21週)では長さ変化率−0.102%程度、材齢182日(26週)では長さ変化率−0.110%程度であった。
(3) まとめ
実験1−1では、水に尿素を溶解させた溶液をモルタル硬化物の表面に含浸させることで、含浸処理を行わなかった場合や、水を含浸させた場合に比べ、硬化物の乾燥収縮を10〜20%程度低減できることが確認された。
なお、材齢91日と材齢119日で水に浸漬させたことにより、乾燥収縮低減効果に影響があるか否かについては、供試体(3日尿素)と供試体(7日尿素)で長さ変化率が若干広がっている。
〔実験1−2〕
実験1−2では、水セメント比60%の通常モルタルの硬化物に尿素を含有する水を含浸させた場合の効果の確認を行った。
(1) 実験条件
実験条件を表2に示す。
Figure 0006229095
表2において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+水(g))=50%
表2における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日尿素:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
7日尿素:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
さらに、実験1−2では、材齢91日(13週)で各供試体を水に浸漬(1度目の浸漬)し、材齢119日(17週)で各供試体を再度水に浸漬(2度目の浸漬)することで、尿素の効果に影響があるかどうかを調べた。
(2) 実験結果
実験結果を図2に示す。
図2は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.108%短くなり、材齢147日(21週)では、長さ変化率−0.112%程度となった。
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.104%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.083%程度に回復したが、その後急激に乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.109%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.087%程度に回復したが、材齢147日(21週)では長さ変化率−0.114%程度と供試体(N)とほぼ同じ長さ変化率となり、材齢182日(26週)では長さ変化率−0.121%程度と供試体(N)より大きな長さ変化率となった。
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.112%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.088%程度に回復したが、その後急激に乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.117%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.094%程度に回復したが、材齢147日(21週)では長さ変化率−0.122%程度、材齢182日(26週)では長さ変化率−0.130%程度と供試体(N)より大きな長さ変化率となった。
脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬した供試体(3日尿素)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.072%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率0.052%程度に回復したが、その後乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.076%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.055%程度に回復したが、材齢147日(21週)では長さ変化率−0.077%程度、材齢182日(26週)では長さ変化率−0.086%程度であった。
脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬した供試体(7日尿素)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.078%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率0.058%程度に回復したが、その後乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.078%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.060%程度に回復したが、材齢147日(21週)では長さ変化率−0.080%程度、材齢182日(26週)では長さ変化率−0.088%程度であった。
(3) まとめ
実験1−2では、水に尿素を溶解させた溶液をモルタル硬化物の表面に含浸させることで、含浸処理を行わなかった場合や、水を含浸させた場合に比べ、硬化物の乾燥収縮を30%程度低減できることが確認された。
なお、材齢91日と材齢119日で水に浸漬させたことにより、乾燥収縮低減効果に影響があるか否かについては、供試体(3日尿素)と供試体(7日尿素)で長さ変化率が若干縮まっている。
〔実験1−3〕
実験1−3では、実験1−1、実験1−2の結果を参考に、さらに尿素の濃度を変化させた場合、尿素の浸漬時間を変化させた場合、尿素を水以外の液体に溶解させた場合などについて、その効果の確認を行った。
(1) 実験条件
実験条件を表3に示す。
Figure 0006229095
表3において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+水、NGまたはNF1000(g))
NG:株式会社フローリック製の商品名「ヌッテガード」(登録商標)
NF1000:ドーピー建設工業株式会社製の商品名「なおしタルNF」(なおしタルは登録商標)を水で1000倍(重量比)に希釈したもの
なお、上記なおしタルNFは、普通セメント、シリカヒューム、高炉スラグ微粉末を紛体主成分とし、ナイロン繊維、乾燥収縮低減のための非イオン系界面活性剤などを加えたプレミックス断面修復モルタル材として市販されているものである。
表3における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日水10分:脱型3日後に供試体を水に10分間浸漬。
7日水10分:脱型7日後に供試体を水に10分間浸漬。
3日水30分:脱型3日後に供試体を水に30分間浸漬。
7日水30分:脱型7日後に供試体を水に30分間浸漬。
3日尿素30%:脱型3日後に供試体を尿素濃度30%の溶液に1分間浸漬。
7日尿素30%:脱型7日後に供試体を尿素濃度30%の溶液に1分間浸漬。
3日尿素40%:脱型3日後に供試体を尿素濃度40%の溶液に1分間浸漬。
7日尿素40%:脱型7日後に供試体を尿素濃度40%の溶液に1分間浸漬。
3日尿素50%:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
7日尿素50%:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
3日尿素50%10分:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に10分間浸漬。
7日尿素50%10分:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に10分間浸漬。
3日尿素50%30分:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に30分間浸漬。
7日尿素50%30分:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に30分間浸漬。
3日NG:脱型3日後に供試体をNG溶液に1分間浸漬。
7日NG:脱型7日後に供試体をNG溶液に1分間浸漬。
3日NF:脱型3日後に供試体をNF1000溶液に1分間浸漬。
7日NF:脱型7日後に供試体をNF1000溶液に1分間浸漬。
3日尿素+NF:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液に1分間浸漬。
7日尿素+NF:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液に1分間浸漬。
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+NF1000(g))
3日尿素+NF+NG:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液およびNG溶液の混合溶液に1分間浸漬。
7日尿素+NF+NG:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液およびNG溶液の混合溶液に1分間浸漬。
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+NF1000(g)+NG(g))
NF1000(g)=NG(g)
さらに、実験1−3では、材齢91日(13週)で各供試体を水に浸漬(1度目の浸漬)し、材齢119日(17週)で各供試体を再度水に浸漬(2度目の浸漬)することで、尿素の効果に影響があるかどうかを調べた。
(2) 実験結果
実験結果を図3〜図7に示す。
図3は、実験1−3において、尿素を脱型3日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を変化させたケース(3日尿素30%、3日尿素40%、3日尿素50%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示したグラフである。
材齢91日(13週)時点で、3日尿素30%および3日尿素40%では約23%、3日尿素50%では約33%の乾燥収縮低減効果がみられた。
途中、2回の水への浸漬を行った後の材齢119日(17週)では、3日尿素30%では約27%、3日尿素40%では約30%、3日尿素50%では約37%の乾燥収縮低減効果がみられた。
結果として、尿素濃度30%と40%とでは乾燥収縮低減効果の差は顕著ではなかったが、尿素濃度50%では乾燥収縮低減効果の差が顕著であった。
図4は、実験1−3において、尿素を脱型7日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を変化させたケース(7日尿素30%、7日尿素40%、7日尿素50%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示したグラフである。
材齢91日(13週)時点で、7日尿素30%では約9%、7日尿素40%では約6%、7日尿素50%では約19%の乾燥収縮低減効果がみられた。
途中、2回の水への浸漬を行った後の材齢119日(17週)では、7日尿素30%では約9%、7日尿素40%では約11%、7日尿素50%では約16%の乾燥収縮低減効果がみられた。
尿素を脱型7日後に含浸させた場合についても、尿素濃度30%と40%とでは乾燥収縮低減効果の差は顕著ではなかったのに対し、尿素濃度50%では乾燥収縮低減効果の差が顕著であり、尿素を脱型3日後に含浸させた場合と同様の傾向が見られた。
しかしながら、乾燥収縮低減効果としては、尿素を脱型7日後に含浸させた場合より尿素を脱型3日後に含浸させた場合の効果が大きい。
図5は、実験1−3において、尿素を脱型3日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を50%とし、浸漬時間を変化させたケース(3日尿素50%、3日尿素50%10分、3日尿素50%30分)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を、尿素を含まない水に浸漬したケース(3日水、3日水10分、3日水30分)と対比して示したグラフである。
尿素を含まない水に浸漬したケースについてみると、3日水(1分浸漬)と3日水10分では長さ変化率にほとんど差がないのに対し、3日水30分では長さ変化率が大きくなっている。これは脱型3日目という比較的早期に水に浸漬した場合において、長い時間水に浸漬させると硬化後の乾燥収縮が大きくなることを示している。
一方、尿素を含むケース(尿素濃度は50%)では、1分、10分、30分と浸漬時間が長いほど乾燥収縮低減効果が大きいことが分かった。これは尿素が硬化物の表面から内部へより深く浸透して行ったためと思われる。
図6は、実験1−3において、尿素を脱型7日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を50%とし、浸漬時間を変化させたケース(7日尿素50%、7日尿素50%10分、7日尿素50%30分)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を、尿素を含まない水に浸漬したケース(7日水、7日水10分、7日水30分)と対比して示したグラフである。
尿素を含まない水に浸漬したケースについてみると、7日水(1分浸漬)と7日水10分、7日水30分で長さ変化率に顕著な差は見られなかった。
一方、尿素を含むケース(尿素濃度は50%)では、1分、10分、30分と浸漬時間が長いほど乾燥収縮低減効果が大きい点は、尿素を脱型3日後に含浸させた場合と同様であるが、浸漬時間が短い1分の7日尿素50%の場合では、より乾燥収縮低減効果が発揮されている図5の3日尿素50%との差が大きいのに対し、7日尿素50%10分、7日尿素50%30分と徐々に、図5の3日尿素50%10分、3日尿素50%30分との効果の差が縮まっている。
図7は、実験1−3において、比較例として市販の乾燥収縮低減剤溶液および市販のプレミックス断面修復モルタル材の水溶液を含浸させたケース(3日NG、7日NG、3日NF、7日NF)の比較結果における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。
塗布型の乾燥収縮低減剤溶液である3日NG、7日NGについては、含浸処理を行わなかったNに対し、乾燥収縮低減効果があらわれているが、他の条件が同じである図3の3日尿素50%、図4の7日尿素50%と同程度の効果であった。
市販の断面修復モルタル材を1000倍(重量比)に希釈した3日NF、7日NFについては、含浸処理を行わなかったNと顕著な差は見られなかった。
図8は、実験1−3において、尿素を市販のプレミックス断面修復材の水溶液、およびこれに市販の乾燥収縮低減剤溶液を加えた液に溶解させた溶液を含浸させたケース(3日尿素+NF、7日尿素+NF、3日尿素+NF+NG、7日尿素+NF+NG)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。
結果として、尿素を水以外の溶液に溶解させた溶液を用いた場合にも乾燥収縮低減効果が得られることが確認されたが、実験1−3で用いたモルタルについては水の場合と水以外の溶液の場合で顕著な効果の差違はみられなかった。
(3) まとめ
実験1−3では、尿素の濃度、浸漬時間、水以外の溶液に尿素を溶解させた場合について、種々のケースを比較したが、傾向として尿素の濃度は高いほど、また浸漬時間が長いほど乾燥収縮低減効果が大きかった。また、尿素の濃度が高く、浸漬時間が長くなると、脱型から含浸までの日数の長短の影響が縮小した。
〔比較例2〕
次に、比較例2として、脱型後のセメント系硬化物の表面に硫酸塩を含有する溶液を含浸させた場合の乾燥収縮低減効果について説明する(実験2−1〜実験2−3)。
〔実験2−1〕
実験2−1では、水セメント比40%の通常モルタルの硬化物に硫酸金属塩である硫酸ナトリウムNa2SO4を含有する水を含浸させた場合の効果の有無の確認を行った。
(1) 実験条件
実験条件を表4に示す。
Figure 0006229095
表4において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
Na2SO4濃度=Na2SO4(g)/(Na2SO4(g)+水(g))=10%
表4における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日硫酸:脱型3日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬。
7日硫酸:脱型7日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬。
実験2−1では、水セメント比40%の場合について、材齢28日(4週)から材齢91日(13週)まで1週ごとに各供試体を水に浸漬することで、硫酸塩(硫酸ナトリウムNa2SO4)の効果に影響があるかどうかを調べた。
(2) 実験結果
実験結果を図9に示す。
図9は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.116%短くなった。
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.096%短くなった。
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.097%短くなった。
脱型3日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬した供試体(3日硫酸)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.099%短くなった。
脱型7日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬した供試体(7日硫酸)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.093%短くなった。
(3) まとめ
実験2−1は、硫酸塩の溶液をモルタル硬化物の表面に含浸させた場合の硬化物の乾燥収縮硬化を、含浸処理を行わなかった場合や、水を含浸させた場合と比較したものであるが、水を含浸させた場合と比べて顕著な効果はみられず、硫酸塩単独では乾燥収縮低減効果は少ないと推察された。
〔実験2−2〕
実験2−2では、水セメント比60%の通常モルタルの硬化物に硫酸塩として硫酸ナトリウムNa2SO4を含有する水を含浸させた場合の効果の有無の確認を行った。
(1) 実験条件
実験条件を表5に示す。
Figure 0006229095
表5において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
Na2SO4濃度=Na2SO4(g)/(Na2SO4(g)+水(g))=10%
表5における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日硫酸:脱型3日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬。
7日硫酸:脱型7日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬。
実験2−2では、水セメント比60%の場合について、材齢28日(4週)から材齢91日(13週)まで1週ごとに各供試体を水に浸漬することで、硫酸塩(硫酸ナトリウムNa2SO4)の効果に影響があるかどうかを調べた。
(2) 実験結果
実験結果を図10に示す。
図10は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.113%短くなった。
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.085%短くなった。
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.085%短くなった。
脱型3日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬した供試体(3日硫酸)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.089%短くなった。
脱型7日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬した供試体(7日硫酸)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.089%短くなった。
(3) まとめ
実験2−2も、実験2−1と同様、硫酸ナトリウムの溶液をモルタル硬化物の表面に含浸させた場合の硬化物の乾燥収縮硬化を、含浸処理を行わなかった場合や、水を含浸させた場合と比較したものであるが、水を含浸させた場合と比べて顕著な効果はみられず、硫酸塩単独では乾燥収縮低減効果は少ないと推察された。
〔実験2−3〕
実験2−3では、実験2−1、実験2−2の結果を参考に、さらに硫酸ナトリウム溶液の浸漬時間を変化させた場合、硫酸ナトリウムの濃度を変化させた場合などについて、その効果の有無の確認を行った。モルタルの硬化物は水セメント比50%で作成した。
(1) 実験条件
実験条件を表6に示す。
Figure 0006229095
表6において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
表6における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日水10分:脱型3日後に供試体を水に10分間浸漬。
7日水10分:脱型7日後に供試体を水に10分間浸漬。
3日水30分:脱型3日後に供試体を水に30分間浸漬。
7日水30分:脱型7日後に供試体を水に30分間浸漬。
3日硫酸5%:脱型3日後に供試体をNa2SO4濃度5%の溶液に1分間浸漬。
7日硫酸5%:脱型7日後に供試体をNa2SO4濃度5%の溶液に1分間浸漬。
3日硫酸10%:脱型3日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬。
7日硫酸10%:脱型7日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に1分間浸漬。
3日硫酸10%10分:脱型3日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に10分間浸漬。
7日硫酸10%10分:脱型7日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に10分間浸漬。
3日硫酸10%30分:脱型3日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に30分間浸漬。
7日硫酸10%30分:脱型7日後に供試体をNa2SO4濃度10%の溶液に30分間浸漬。
Na2SO4濃度=Na2SO4(g)/(Na2SO4(g)+水(g))
(2) 実験結果
実験結果を図11〜図13に示す。
図11は、実験2−3において、硫酸ナトリウムを脱型3日後に含浸させ、材齢28日(4週)から材齢91日(13週)まで1週ごとに各供試体を水に浸漬させた場合について、硫酸ナトリウムの浸漬時間を変化させたケース(3日硫酸10%、3日硫酸10%10分、3日硫酸10%30分)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.105%短くなった。
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.095%短くなった。
脱型3日後に水に10分間浸漬した供試体(3日水10分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.093%短くなった。
脱型3日後に水に30分間浸漬した供試体(3日水30分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.089%短くなった。
脱型3日後に濃度10%の硫酸ナトリウム溶液に1分間浸漬した供試体(3日硫酸10%)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.090%短くなった。
脱型3日後に濃度10%の硫酸ナトリウム溶液に10分間浸漬した供試体(3日硫酸10%10分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.095%短くなった。
脱型3日後に濃度10%の硫酸ナトリウム溶液に30分間浸漬した供試体(3日硫酸10%30分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.098%短くなった。
図12は、実験2−3において、硫酸ナトリウムの濃度を変化させたケース(3日硫酸5%、7日硫酸5%、3日硫酸10%、7日硫酸10%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、図11でも示したように、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.105%短くなった。
脱型3日後に濃度5%の硫酸ナトリウム溶液に1分間浸漬した供試体(3日硫酸5%)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.098%短くなった。
脱型7日後に濃度5%の硫酸ナトリウム溶液に1分間浸漬した供試体(7日硫酸5%)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.115%短くなった。
脱型3日後に濃度10%の硫酸ナトリウム溶液に1分間浸漬した供試体(3日硫酸10%)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.090%短くなった。
脱型7日後に濃度10%の硫酸ナトリウム溶液に1分間浸漬した供試体(7日硫酸10%)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.095%短くなった。
図13は、実験2−3において、硫酸ナトリウムを脱型7日後に含浸させ、材齢28日(4週)から材齢91日(13週)まで1週ごとに各供試体を水に浸漬させた場合について、硫酸ナトリウムの浸漬時間を変化させたケース(7日硫酸10%、7日硫酸10%10分、7日硫酸10%30分)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、図11、図12にも示したように、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.105%短くなった。
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.093%短くなった。
脱型7日後に水に10分間浸漬した供試体(7日水10分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.102%短くなった。
脱型7日後に水に30分間浸漬した供試体(7日水30分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.086%短くなった。
脱型7日後に濃度10%の硫酸ナトリウム溶液に1分間浸漬した供試体(7日硫酸10%)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.093%短くなった。
脱型7日後に濃度10%の硫酸ナトリウム溶液に10分間浸漬した供試体(7日硫酸10%10分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.093%短くなった。
脱型7日後に濃度10%の硫酸ナトリウム溶液に30分間浸漬した供試体(7日硫酸10%30分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢91日(13週)までに長さが約0.095%短くなった。
(3) まとめ
実験2−3では硫酸ナトリウム溶液の浸漬時間や硫酸ナトリウムの濃度の違いで、乾燥収縮の大きさに差があらわれたものの、水を含浸させた場合と比べて乾燥収縮低減効果があるとは言えず、硫酸塩単独では乾燥収縮低減効果は少ないと推察された。
〔実施例〕
次に、本発明の実施例として、脱型後のセメント系硬化物の表面に尿素と硫酸塩を含有する溶液を含浸させた場合の乾燥収縮低減効果について説明する(実験3−1〜実験3−3、実験4−1、実験4−2)。
〔実験3−1〕
実験3−1では、水セメント比40%の通常モルタルの硬化物に尿素と硫酸金属塩である硫酸ナトリウムNa2SO4を含有する水(尿素50%、硫酸ナトリウム10%濃度の混合溶液)を含浸させた場合の効果の確認を行った。
(1) 実験条件
実験条件を表7に示す。
Figure 0006229095
表7において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
mix:〔(硫酸ナトリウム:水:尿素=1:9:10(質量)〕
表7における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日mix:脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬。
7日mix:脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬。
実験3−1では、さらに材齢28日(4週)から材齢77日(11週)まで1週ごとに各供試体を水に浸漬することで効果に影響があるかどうかを調べた。
(2) 実験結果
実験結果を図14に示す。
図14は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢48日までに長さが約0.090%短くなり、その後ほぼ一定の長さを維持した。
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.082%短くなった。
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.084%短くなった。
脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に1分間浸漬した供試体(3日mix)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.072%短くなった。
脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に1分間浸漬した供試体(7日mix)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.070%短くなった。
(3) まとめ
実験3−1では、水に尿素と硫酸ナトリウムを溶解させた混合溶液をモルタル硬化物の表面に含浸させることで、含浸処理を行わなかった場合や、水を含浸させた場合に比べ、材齢77日(11週)時点で、硬化物の乾燥収縮を15〜20%程度低減できることが確認された。
また、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬した過程において、乾燥収縮低減効果が維持されており、実験1−1の尿素のみを含有する溶液を用いた場合との対比では、実験1−1の場合のような水の浸漬による乾燥収縮低減効果の低減がなかった。したがって、尿素と硫酸塩の混合溶液を用いることで、外部構造物など風雨にさらされる構造物においても乾燥収縮低減効果の維持が期待できる。
〔実験3−2〕
実験3−2では、水セメント比60%の通常モルタルの硬化物に尿素と硫酸塩としての硫酸ナトリウムNa2SO4を含有する水を含浸させた場合の効果の確認を行った。
(1) 実験条件
実験条件を表8に示す。
Figure 0006229095
表8において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
mix:〔(硫酸ナトリウム:水:尿素=1:9:10(質量)〕
表8における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日mix:脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬。
7日mix:脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬。
実験3−2では、さらに材齢28日(4週)から材齢77日(11週)まで1週ごとに各供試体を水に浸漬することで効果に影響があるかどうかを調べた。
(2) 実験結果
実験結果を図15に示す。
図15は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢42日までに長さが約0.079%短くなり、その後ほぼ一定の長さを維持した。
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.068%短くなった。
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.070%短くなった。
脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に1分間浸漬した供試体(3日mix)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.050%短くなった。
脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に1分間浸漬した供試体(7日mix)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.052%短くなった。
(3) まとめ
実験3−2では、水に尿素と硫酸ナトリウムを溶解させた混合溶液をモルタル硬化物の表面に含浸させることで、含浸処理を行わなかった場合や、水を含浸させた場合に比べ、材齢77日(11週)時点で、硬化物の乾燥収縮を15〜35%程度低減できることが確認された。
また、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬した乾湿の繰り返しにおいても乾燥収縮低減効果が維持された。したがって、尿素と硫酸塩の混合溶液を用いることで、外部構造物など風雨にさらされる構造物においても乾燥収縮低減効果の維持が期待できる。
〔実験3−3〕
実験3−3では、実験3−1、実験3−2の結果を参考に、さらに尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液の浸漬時間を変化させた場合について、その効果の有無の確認を行った。モルタルの硬化物は水セメント比50%で作成した。
(1) 実験条件
実験条件を表9に示す。
Figure 0006229095
表9において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
mix:〔(硫酸ナトリウム:水:尿素=1:9:10(質量)〕
表9における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日水10分:脱型3日後に供試体を水に10分間浸漬。
7日水10分:脱型7日後に供試体を水に10分間浸漬。
3日水30分:脱型3日後に供試体を水に30分間浸漬。
7日水30分:脱型7日後に供試体を水に30分間浸漬。
3日mix:脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬。
7日mix:脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬。
3日mix10分:脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に10分間浸漬。
7日mix10分:脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に10分間浸漬。
3日mix30分:脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に30分間浸漬。
7日mix30分:脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に30分間浸漬。
実験3−3では、さらに材齢28日(4週)から材齢77日(11週)まで1週ごとに各供試体を水に浸漬することで効果に影響があるかどうかを調べた。
(2) 実験結果
実験結果を図16、図17に示す。
図16は、実験3−3において、水に尿素と硫酸ナトリウムを溶解させた混合溶液を脱型3日後に含浸させ、材齢28日(4週)から材齢91日(13週)まで1週ごとに各供試体を水に浸漬させた場合について、混合溶液の浸漬時間を変化させたケース(3日mix、3日mix10分、3日mix30分)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢48日までに長さが約0.086%短くなり、その後ほぼ一定の長さを維持した。
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.077%短くなった。
脱型3日後に水に10分間浸漬した供試体(3日水10分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.073%短くなった。
脱型3日後に水に30分間浸漬した供試体(3日水30分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.073%短くなった。
脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に1分間浸漬した供試体(3日mix)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.053%短くなった。
脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に10分間浸漬した供試体(3日mix10分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.046%短くなった。
脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に30分間浸漬した供試体(3日mix30分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.048%短くなった。
図17は、実験3−3において、水に尿素と硫酸ナトリウムを溶解させた混合溶液を脱型7日後に含浸させ、材齢28日(4週)から材齢91日(13週)まで1週ごとに各供試体を水に浸漬させた場合について、混合溶液の浸漬時間を変化させたケース(7日mix、7日mix10分、7日mix30分)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示したグラフである。
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢48日までに長さが約0.086%短くなり、その後ほぼ一定の長さを維持した。
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.072%短くなった。
脱型7日後に水に10分間浸漬した供試体(7日水10分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.072%短くなった。
脱型7日後に水に30分間浸漬した供試体(7日水30分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.066%短くなった。
脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に1分間浸漬した供試体(7日mix)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.058%短くなった。
脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に10分間浸漬した供試体(7日mix10分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.048%短くなった。
脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に30分間浸漬した供試体(7日mix30分)は、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬することで長さ変化率が変動しながら、材齢77日(11週)までに長さが約0.039%短くなった。
(3) まとめ
実験3−3では、水に尿素と硫酸ナトリウムを溶解させた混合溶液をモルタル硬化物の表面に含浸させることで、含浸処理を行わなかった場合や、水を含浸させた場合に比べ、材齢77日(11週)時点で、硬化物の乾燥収縮を30〜40%程度低減できることが確認された。
また、材齢28日(4週)以後、1週ごとに各供試体を水に浸漬した乾湿の繰り返しにおいても乾燥収縮低減効果が維持された。したがって、尿素と硫酸塩の混合溶液を用いることで、外部構造物など風雨にさらされる構造物においても乾燥収縮低減効果の維持が期待できる。
脱型7日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に浸漬したケースでは浸漬時間が1分、10分、30分と長いほど乾燥収縮低減効果が大きかったが、脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムの混合溶液に浸漬したケースでは、材齢77日時点において浸漬時間10分と30分での差は明確ではなかった。
〔実験4−1〕
実験1−1〜実験1−3、実験3−1〜実験3−3がモルタル硬化物に対する実験であったのに対し、実験4−1では、水セメント比40%のコンクリート硬化物を対象として実験を行った。
(1) 実験条件
実験条件を表10に示す。
Figure 0006229095
表10において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
a:川砂+砂利6号
sp:高性能AE減水剤
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+水(g))=50%
mix:〔(硫酸ナトリウム:水:尿素=1:9:10(質量)〕
表10における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日尿素:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
3日mix:脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬。
(2) 実験結果
実験結果を図18に示す。
図18は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
材齢56日(8週)時点で、脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、含浸処理を行わなかったNに対し、乾燥収縮低減効果がほとんど変わらないが、脱型3日後に尿素の溶液に1分間浸漬した供試体(3日尿素)は長さ変化率が約10%低減し、乾燥収縮低減効果がみられる。
脱型3日後に尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬した供試体(3日mix)は、材齢42日(6週)までは、脱型3日後に尿素の溶液に1分間浸漬した供試体(3日尿素)より長さ変化率が小さかったが、材齢56日(8週)時点ではほぼ同じとなり、含浸処理を行わなかったNに対しては、長さ変化率が約8%低減した。
(3) まとめ
コンクリートに対する実験4−1は、モルタルに対する実験に比べると、尿素あるいは尿素と硫酸塩を水に溶解させたものを含浸させた場合の効果が相対的に小さいが、コンクリートはモルタルに比べもともと長さ変化率自体が小さく、コンクリートにおいても乾燥収縮低減効果が確認された。
〔実験4−2〕
実験4−2では、水セメント比60%のコンクリート硬化物を対象として、実験4−1と同様の実験を行った。
(1) 実験条件
実験条件を表11に示す。
Figure 0006229095
表11において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
a:川砂+砂利6号
sp:高性能AE減水剤
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+水(g))=50%
mix:〔(硫酸ナトリウム:水:尿素=1:9:10(質量)〕
表11における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日尿素:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
3日mix:脱型3日後に供試体を尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬。
(2) 実験結果
実験結果を図19に示す。
図19は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
材齢56日(8週)時点で、脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、含浸処理を行わなかったNに対し、乾燥収縮低減効果がほとんど変わらないが、脱型3日後に尿素の溶液に1分間浸漬した供試体(3日尿素)は長さ変化率が約11%低減し、乾燥収縮低減効果がみられる。
脱型3日後に尿素と硫酸ナトリウムを含有する溶液に1分間浸漬した供試体(3日mix)は、材齢42日(6週)までは、脱型3日後に尿素の溶液に1分間浸漬した供試体(3日尿素)より長さ変化率が小さかったが、材齢56日(8週)時点ではほぼ同じとなり、含浸処理を行わなかったNに対しては、長さ変化率が約9%低減した。
(3) まとめ
コンクリートに対する実験4−2は、コンクリートに対する実験4−1とほぼ同様の傾向がみられたが、水セメント比が40%でより高品質の実験4−1と比べると、コンクリート供試体のもともとの長さ変化率自体が若干大きくなっている。

Claims (3)

  1. 脱型後のセメント系硬化物の表面に尿素と硫酸塩を含有する溶液を含浸させることを特徴とするセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法。
  2. 請求項1記載のセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法において、前記尿素と硫酸塩を含有する溶液を脱型後のセメント系硬化物の表面に塗布することで、該尿素と硫酸塩を含有する溶液をセメント系硬化物に含浸させることを特徴とするセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法。
  3. 請求項1または2記載のセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法において、前記尿素と硫酸塩を含有する溶液は尿素と硫酸塩を水、非イオン系界面活性剤、又はそれらの混合液に溶解させた溶液であることを特徴とするセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法。
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