JP6225967B2 - グリッド偏光素子及び光配向装置 - Google Patents

グリッド偏光素子及び光配向装置 Download PDF

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Description

本願の発明は、グリッド偏光素子を用いた偏光技術に関するものである。
偏光光を得る偏光素子は、偏光サングラスのような身近な製品を始めとして偏光フィルターや偏光フィルム等の光学素子として各種のものが知られており、液晶ディスプレイ等のディスプレイデバイスでも多用されている。偏光素子には、偏光光を取り出す方式から幾つかのものに分類されるが、その一つにワイヤーグリッド偏光素子がある。
ワイヤーグリッド偏光素子は、透明基板上に金属(導電体)より成る微細な縞状のグリッドを設けた構造のものである。グリッドを形成する各線状部の間隔を偏光させる光の波長よりも狭くすることで偏光子として機能する。直線偏光光のうち、グリッドの長さ方向(即ち各線状部の長さ方向)に電界成分を持つ偏光光にとってはフラットな金属と等価なので反射する一方、長さ方向に垂直な方向に電界成分を持つ偏光光にとっては透明基板のみがあるのと等価なので、透明基板を透過して出射する。このため、偏光子からはグリッドの長さ方向に垂直な方向の直線偏光光が専ら出射する。偏光素子の姿勢を制御し、グリッドの長さ方向が所望の方向に向くようにすることで、偏光光の軸(電界成分の向き)が所望の方向に向いた偏光光が得られることになる。
以下、説明の都合上、グリッドの各線状部の長さ方向に電界成分を持つ直線偏光光をs偏光光と呼び、長さ方向に垂直な方向に電界成分を持つ直線偏光光をp偏光光と呼ぶ。通常、入射面(反射面に垂直で入射光線と反射光線を含む面)に対して電界が垂直なものをs波、平行なものをp波と呼ぶが、グリッドの各線状部の長さ方向が入射面に対し垂直であることを前提とし、このように区別する。
このような偏光素子の性能を示す基本的な指標は、消光比ERと透過率TRである。消光比ERは、偏光素子を透過した偏光光の強度のうち、s偏光光の強度(Is)に対するp偏光光の強度(Ip)の比である(Ip/Is)。また、透過率TRは、通常、入射するs偏光光とp偏光光の全エネルギーに対する出射p偏光光のエネルギーの比である(TR=Ip/(Is+Ip))。理想的な偏光素子は、消光比ER=∞、透過率TR=50%ということになる。
尚、この出願の発明の偏光素子は、グリッドが金属(ワイヤー)には限らないので、以下、単にグリッド偏光素子と呼ぶ。
特開2011−8172号公報
グリッド偏光素子の偏光性能を決める重要な要素に、グリッドのアスペクト比がある。グリッドのアスペクト比は、グリッドを形成する線状部の幅に対する線状部の高さの比である。グリッド偏光素子は、一般にアスペクト比が高くなるに従って消光比も高くなる。
このように消光比の高いグリッド偏光素子を得るには高アスペクト比のグリッドが必要になってくるが、高アスペクト比のグリッド構造を持つ偏光素子を製造することは、一般的に難しい。グリッド偏光素子の製造は、石英のような透明基板上にグリッドを形成することで行われる。グリッドは、各線状部の間隔が光の波長未満という微細な構造物であり、元来、製造は容易ではない。グリッドはフォトリソグラフィの技術を使用して形成されるのが一般的であるが、十分な機械的強度でグリッドを形成することは難しく、アスペクト比が高くなるとその傾向は顕著である。
また、各線状部の間隔が光の波長未満であることから、偏光する光の波長が短くなればなるほどより微細なグリッド構造を造り込む必要があり、さらに困難性が増す。このためひと昔まえでは、紫外線のような短波長域の光を偏光させるグリッド偏光素子は理論的には可能であっても実現は困難であろうと考えられていた。それでも、飛躍的に進歩した半導体製造プロセスでの微細加工技術を応用することで、紫外線のような短波長域用の偏光素子の実用化も十分に狙える状況にはなってきている。
しかしながら、消光比等の点でより高性能のグリッド偏光素子を得ようとする場合、グリッドの高アスペクト比化しか解決手段がない現状では、製造上の困難性がグリッド偏光素子の高性能化や対象波長の短波長化のボトルネックとなってしまっている。
また、発明者らが行った研究により、紫外線のような短波長域の光を対象波長とする場合、アルミのような金属製グリッドを採用した従来のグリッド偏光素子では、期待された偏光性能が十分に得られないことが判ってきた。この理由は、完全には明らかではないが、金属に対する紫外線の反射率が十分でないこと、紫外線による金属の劣化等が要因として推測される。
この出願の発明は、このような状況を鑑みて為されたものであり、より高性能で製造が容易であり、紫外線のような短波長域の光についても高い偏光性能が得られるグリッド偏光素子を提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、透明基板と、透明基板上に設けられた縞状のグリッドとより成るグリッド偏光素子であって、
グリッドは、誘電体又は半導体で形成されており、
グリッドを構成する各線状部において一方の側の隣の線状部との距離をt、他方の側の隣の線状部との距離をTとしたとき、グリッドは、実質的にt<Tである部分を周期的に有しており、
グリッドの各線状部の長さ方向に電界成分を有する偏光光をs偏光光とし、距離tで隣り合う二つの線状部を伝搬したs偏光光を密部分伝搬光とし、距離Tで隣り合う二つの線状部を伝搬したs偏光光を疎部分伝搬光としたとき、t/Tの比は、密部分伝搬光の位相が疎部分伝搬光の位相よりもπ/10超且つπ/2未満遅れる比となっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、
前記グリッドは、隣り合う二つの線状部が一組となって前記透明基板上に設けられており、
各組の二つの線状部を伝搬したs偏光光が前記密部分伝搬光であって、各組の二つの線状部の離間距離は前記距離tとなっており、
隣接する組同士で向かい合う二つの線状部を伝搬したs偏光光が前記疎部分伝搬光であって、隣接する組同士の離間距離は前記距離Tとなっており、
前記距離tは、前記密部分伝搬光の出射端での離間距離であり、
前記距離Tは、前記疎部分伝搬光の出射端での離間距離であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記各組の二つの線状部の離間距離は、前記密部分伝搬光の伝搬方向前側に向かって徐々に狭くなっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、光源と、請求項1記載のグリッド偏光素子とを備えており、グリッド偏光素子は、光配向用の膜材が配置される照射領域と光源との間に配置されているという構成を有する。
以下に説明する通り、本願の請求項1又は2記載の発明によれば、誘電体又は半導体製のグリッドを使用した減衰型のグリッド偏光素子において、密部分伝搬光が疎部分伝搬光に対して位相が遅れることを利用してs偏光光を減衰させるので、アスペクト比を高くすることなく消光比をより高くすることができる。このため、製造が容易な高性能のグリッド偏光素子が提供される。
また、請求項3記載の発明によれば、各組の二つの線状部の離間距離は、前記密部分伝搬光の伝搬方向前側に向かって徐々に狭くなっているので、さらに製造が容易となる。
また、請求項4記載の発明によれば、消光比の高いグリッド偏光素子が使用されるので、高品質の光配向処理を行うことが可能となり、高品質の光配向膜を得ることができる。このため、高画質のディスプレイの製造に大きく貢献できる。
この出願の発明の第一の実施形態に係るグリッド偏光素子を模式的に示した斜視概略図である。 減衰型のグリッド偏光素子の動作モデルについて模式的に示した斜視概略図である。 x方向磁界成分Hxの波打ちを確認したシミュレーション実験の結果を示す図である。 x方向磁界成分Hxの波打ち(回転)により新たに電界Eyが発生する様子を模式的に示した正面断面概略図である。 減衰型のグリッド偏光素子において高アスペクト比に代わる高性能化の手段について検討するために発明者が行ったシミュレーション実験の結果を示す図である。 グリッド偏在化による消光比の向上を確認したシミュレーション実験の結果を示す図である。 グリッド偏在化による消光比の向上を確認したシミュレーション実験の結果を示す図である。 グリッド偏在化による消光比の向上を確認したシミュレーション実験の結果を示す図である。 グリッド偏在化による消光比の向上を確認したシミュレーション実験の結果を示す図である。 第一の実施形態のグリッド偏光素子の製造方法について示した概略図である。 実施形態のグリッド偏光素子の使用例を示したものであって、グリッド偏光素子を搭載した光配向装置の断面概略図である。 第二の実施形態のグリッド偏光素子の正面概略図である。 図12に示す実施形態の構造についてのシミュレーション実験の結果を示す図である。 第二の実施形態のグリッド偏光素子の好適な製造方法について示した概略図である。
次に、この出願の発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
図1は、第一の実施形態のグリッド偏光素子を模式的に示した斜視概略図である。図1に示すグリッド偏光素子は、透明基板1と、透明基板1上に設けられたグリッド2とから主に構成されている。
透明基板1は、使用波長(偏光素子を使用して偏光させる光の波長)に対して十分な透過性を有するという意味で「透明」ということである。この実施形態では、紫外線を使用波長として想定しているので、透明基板1の材質としては石英ガラス(例えば合成石英)が採用されている。
グリッド2は、図1に示すように、平行に延びる多数の線状部21より成る縞状のものである。各線状部21は、酸化チタンや窒化チタンのような誘電体又はアモルファスシリコンのような半導体で形成されている。そして、グリッド2において、各線状部21は偏在している。即ち、各線状部21において一方の側の隣の線状部21との距離をt、他方の側の隣の線状部21との距離をTとしたとき、実質的にt<Tである部分を周期的に有している。以下、説明の都合上、t/Tを偏在比と呼ぶ。
上記説明において、「実質的にt<Tである部分」とは、一方の側の離間距離tが他方の側の離間距離Tと実質的に異なるという意味である。「実質的に」とは、製造上のばらつきで発生する距離の相違は含まない趣旨であり、後述する位相遅れ作用が発揮されるよう意図的にt≠Tとするという趣旨である。
また、「周期的」というのは、ランダムではないという程度の意味である。t≠Tが製造上のばらつきによって生じる場合はランダムということになるが、後述する位相遅れ作用が発揮されるように意図的にt≠Tとするのであり、従って、周期的となる。尚、この場合の周期的とは、透明基板1の表面に沿って線状部21の長さ方向に垂直な方向で見た際にt≠Tの部分が周期的に存在しているということである。
このような実施形態のグリッド偏光素子の構成は、アスペクト比を高くすることなくより高い偏光性能が得られるようにしたり、紫外線のような短波長域の光についても高い偏光性能が得られるようにしたりするには、グリッド偏光素子の構成をどのようにすべきかについて発明者らが鋭意研究を行った成果である。
発明者らは、まず、従来とは基本的に異なる考え方により偏光素子を構成することを意図した。従来のワイヤーグリッド偏光素子は、反射型グリッド偏光素子とも呼べるもので、グリッドに反射率の高い金属を使用し、グリッドの長さ方向に電界成分を持つ直線偏光光を反射させることで透明基板1を透過させないようにするものである。このような考え方のグリッド偏光素子では、前述したように、高性能化には高アスペクト比化が必要であり、紫外線のような短波長域では高い偏光性能が得られないという問題が生じている。
発明者らは、このような従来のグリッド偏光素子の考え方とは異なり、減衰型グリッド偏光素子ともいうべき考え方を想到するに至った。即ち、偏光光が偏光素子中を伝搬する結果で、特定の偏光光が選択的に減衰することを利用するものである。実施形態の減衰型グリッド偏光素子は、グリッドの材料として従来のような金属ではなく誘電体又は半導体を採用すること、グリッドを構成する各線状部を偏在させること(t≠T)で達成される。
まず、グリッドの材料を金属ではなく誘電体又は半導体とした場合、グリッド偏光素子における光の伝搬がどのようになるかについて、以下に説明する。ここでの説明は、グリッドは偏在化されていないものとする(t=T)。
図2は、減衰型のグリッド偏光素子の動作モデルについて模式的に示した斜視概略図である。前述したように、グリッド偏光素子は、p偏光光を透過させる一方、s偏光光を透過させないようにした偏光素子である。従って、主として検討すべきは、s偏光光の挙動である。
図2において、便宜上、光は紙面上の上から下に伝搬するものとし、この方向をz方向とする。また、グリッド2の延びる方向をy方向とし、従ってs偏光光(図5にLsで示す)は、電界成分Eyを持つ。このs偏光光の磁界成分(不図示)はx方向となる(Hx)。
このようなs偏光光がグリッド偏光素子のグリッド2にさしかかると、s偏光光の電界Eyは、グリッド2の誘電率によって弱められる。一方、グリッド2の間の媒質は、空気である場合が多いが、一般的にグリッド2より誘電率が小さいので、グリッド2の間の空間では電界Eyはグリッド2内ほどは弱められない。
この結果、x−y平面内において電界Eyの回転成分が生じる。そして、ファラデーの電磁誘導に対応する以下のマクスウェル方程式(式1)により、このx−y平面での回転の強さに応じて、z方向において二つの互いに逆向きの磁界Hzが誘起される。
Figure 0006225967

即ち、グリッド2間の中央の電界Eyの最も高いところを境に、一方の側ではHzは光の伝搬方向前方に向き、他方の側ではHzは後方を向く。ここで、図2では省略されているが、x方向の磁界HxはEyと同位相で、x軸負の側を向いて存在している。このx方向磁界成分Hxは、生成されたz方向成分Hzに引っ張られ、波打つように変形する。
図3は、このx方向磁界成分Hxの波打ちを確認したシミュレーション実験の結果を示す図である。図3は、グリッド2の材質を酸化チタンとし波長254nmでの光学定数(n=2.35、k=1.31)でシミュレーションを行ったものである。図3では、グリッド2の各線状部21の幅は15nm、各線状部21の間隔は90nmで一定、各線状部21の高さは170nmとした。シミュレーションはFDTD(Finite-Difference Time-Domain)法に基づいており、使用したソフトウェアは、Mathworks社(米国マサチューセッツ州)のMATLAB(同社の登録商標)である。
図3中、上側の濃い黒色の部分は電界Ezのマイナス成分、中程の淡い灰色の部分は電界Ezのプラス成分を示している。磁界は、ベクトル(矢印)で示されている。
図3に示すように、グリッド2にさしかかる前のs偏光光にはHz成分が無いためHx成分のみとなるが、グリッド2にさしかかる前述のHz成分の生成により、磁界がx−z面内で波打つことが確認できる。図3に示すように、磁界の波打ちは、時計回りの磁界の回転とも言える状況である。尚、図3では、y方向が光の伝搬方向であり、z方向がグリッド2の長さ方向となっており、図2とは異なる。
このような磁界成分Hxの波打ち(回転)が生じると、アンペール・マクスウェルの法則に対応するマクスウェル方程式(式2)により、さらに図2のy方向に電界が発生する。
Figure 0006225967

この様子を図4において模式的に示す。図4は、x方向磁界成分Hxの波打ち(回転)により新たに電界Eyが発生する様子を模式的に示した正面断面概略図である。
図4に示すように、x−z面内での磁界成分Hxの波打ち(回転)により、グリッド2内では図2の紙面手前側に向いた電界Eyが発生し、グリッド2とグリッド2の間においては紙面奥側に向いた電界Eyが発生する。この場合、入射したs偏光光の元の電界Eyは紙面手前側に向いているから、グリッド2間の電界は、上記磁界の回転により打ち消され、波動を分断するように作用する。結果として、電界Eyがグリッド2内に局在し、グリッド2の材質に応じた吸収によりs偏光光のエネルギーがグリッド2内を伝播しながら減衰する。
一方、p偏光光については、電界成分はx方向に向いているが(Ex)、y方向で見たとき、誘電率の分布は一様であるため、前述したような電界の回転成分は実質的に生じない。従って、s偏光光のような電界のグリッド2内での局在化、波動の分断は、p偏光光に実質的に生じない。実施形態の減衰型グリッド偏光素子は、空間の誘電率分布の違いからこのようにs偏光光とp偏光光とで異なった伝搬をすることを前提にしている。尚、アモルファスシリコンのような半導体製のグリッド2でも、同様にs偏光光とp偏光光とで異なった伝搬をすることが確認されている。
発明者らは、このような誘電体又は半導体製のグリッド偏光素子によって偏光作用を得ることができ、特に、紫外線のような短波長域の光の偏光用に有効であることを確認した。短波長域の光の偏光用に有効である理由は、グリッドにおける光の吸収を利用すること、即ち、上記のようにs偏光光がグリッド2内で局在化し、グリッド2内での吸収により減衰することによると推測された。
発明者らは、このような減衰型のグリッド偏光素子において偏光性能をより高くする観点でさらに研究を続けた。この結果、上記のようにグリッドの各線状部を偏在化させることに着目し、ある偏在化の条件では特に消光比が高くできることを見い出した。以下、この点について説明する。
図5は、減衰型のグリッド偏光素子において高アスペクト比に代わる高性能化の手段について検討するために発明者が行ったシミュレーション実験の結果を示す図である。
図5のシミュレーション実験では、グリッドのアスペクト比やグリッドの偏在比を変えると消光比や透過率がどのように変化するかを調べた。シミュレーションには、RCWA(Rigorous Coupled-Wave Analysis)法が用いられており、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が配布しているソフトウェア(http://physics.nist.gov/Divisions/Div844/facilities/scatmech/html/grating.htm)が使用された。グリッドの材料は酸化チタンとし、透明基板は石英とした。また、偏光させる光の波長は、254nmとした。尚、シミュレーションには材料の光学定数が必要であるが、ここでは、酸化チタンの光学定数は、屈折率2.35、消衰係数(屈折率の虚部)は1.31とした。また石英については、屈折率1.5、消衰係数0とした。
まず、グリッドの各線状部の幅wを20nm、ギャップ幅を70nmで一定とし、各線状部の高さhを変えることでアスペクト比を変化させたシミュレーションを行った。図5中に示すように、図5中に、×マーカーで示すものがその結果である。シミュレーションでは、h=90nm(アスペクト比=4.5)からスタートし、図5に示すように高さhを増加させてアスペクト比を増加させた。尚、図5中の横軸は透過率、縦軸は消光比(対数目盛)である。
図5に示すように、アスペクト比を増加させると、透過率は減少するものの消光比は増加する。例えばグリッド高さh=230nm(アスペクト比=11.5)では、透過率は30%程度に落ちるが、消光比は1000を越える高い値が得られる。しかしながら、このように高いアスペクト比のグリッドは実際には製造が難しい。
次に、発明者らは、グリッド偏在化の構成についてシミュレーション実験を行った。具体的には、上記グリッドの寸法において、比較的製造が容易なグリッド高さh=170nm(アスペクト比=8.5)を標準的なモデルとして採用し、このモデルにおいて偏在させた構成について消光比や透過率をシミュレーションした。より具体的には、t+Tの全体の寸法は140nmで固定した上で、tを減少させTを増加させることでt/Tを変化させた。図5中の■マーカーは、各tの値の際の消光比及び透過率である。ここではtを図5に示すように少しずつ減少させ(Tを増加させ)、消光比及び透過率を算出した。
図5に示すように、tを減少させると(即ちギャップ幅を偏在化させると)、アスペクト比を増加させる場合に比べ、透過率はそれほど減少しないにも関わらず消光比が急激に増加した。消光比の増加は、t=50nm程度を境にしてより急激となり、t=36nmでピークとなった。さらにtを小さくすると、透過率とともに消光比も減少した。ギャップ幅の偏在化は、グリッド構造の偏在化ということを意味する。
上記のように、グリッド偏在化による消光比の向上はある範囲で得られ、その範囲の中でも特に顕著に消光比が向上する範囲があることがシミュレーション実験の結果から判明した。発明者らは、このような結果となる原因についてより詳細に分析すべく、波面の状況を計算によって調べて観察した。計算には、サイバネットシステムズ株式会社(本社:東京都千代田区)が販売している解析ソフトウェアFULLWAVE(商品名)を使用した。この結果を示したのが、図6〜図9である。図6〜図9は、グリッド偏在化による消光比の向上を確認したシミュレーション実験の結果を示す図である。
図6〜図8には、グリッド偏光素子を通したs偏光光の伝搬状況が示されており、前掲のソフトウェアにより波面の状況を表示したものである。実際の表示はカラー画像であり、図6〜図8は、それを白黒に変換したものである。実際のカラー画像における色を注釈的に記載した。
このうち、図6及び図7にはグリッド偏在化の構成である第一の実施形態のグリッド偏光素子における光の伝搬状況が示されており、図6にはs偏光光(TE波)の伝搬状況、図7にはp偏光光(TM波)の伝搬状況が示されている。図6及び図7において、入射面は紙面に対して平行であり、グリッドの各線状部の長さ方向は紙面に垂直である。各線状部21の位置が解るように、画像に重畳させて描き入れられている。
図6はs偏光光であるので、電界は紙面に垂直な方向に分布を持っており、従って紙面に沿った方向では一様である。また、図7では、便宜上、電界ではなく磁界の位相が示されている。図7はp偏光光(TM波)であるので、磁界は紙面に垂直な方向に分布しており、紙面に沿った方向では一様である。
尚、図6及び図7において、色の違いは、位相の違いであり、端的には極性の違いである。例えば青がプラス、赤がマイナスである。
図6に示すように、s偏光光はTE波であるため、グリッドに入射する前では電界はグリッドに垂直な方向(紙面上の横方向)で位相は一様であり、乱れていない。グリッドに入射すると、屈折率の分布が不均一になるため、それに応じて位相に乱れが生じる。即ち、図6に示すように、狭い幅tのギャップで隣接する二つの線状部21の部分(以下、密部分という)を伝搬する波は、広い幅Tのギャップで隣接する二つの線状部21の部分(以下、疎部分という)を伝搬する波に対して位相が徐々に遅れる。位相の遅れは、屈折率の高い部分を伝搬するために位相速度が遅くなることに起因する。
このような位相遅れのため、密部分を伝搬してグリッドから出射する光(以下、密部分伝搬光という)と、疎部分を伝搬して出射する光(以下、疎部分伝搬光という)とでは、相当の位相差が発生する。グリッドを出射した後は、空間における屈折率の分布が一様になるため、それ以上の位相差は発生しないが、そのまま位相差が保存された状態で光が伝搬する。この際、密部分伝搬光のみに着目すると、図6の透明基板上に同位相で光を放射する複数の光源が配列し光を放射しているように見なせる。各光源から放射される光は略球面波状であるけれども、透明基板から離れるに従って各光源からの光が重なり合い平面波が形成される。これは、ホイヘンスの原理で各素元波が重なり合い平面波として伝搬していくモデルと類似している。
次に、疎部分伝搬光のみに着目すると、密部分と位相が異なるが、図6の透明基板上に同位相で光を放射する複数の光源が配列し光を放射しているように見なせ、透明基板から離れるに従って、各光源からの光が重なり合い平面波が形成される。密部分を伝搬して形成された平面波と、疎部分を伝搬して形成された平面波は位相差があるため、位相差がπ/2以上ある場合は、二つの光が互いに打ち消しあうことになる。このような考え方によれば、グリッドを透過した時点で、s偏光光が完全に吸収されなかったとしても、グリッドを透過し漏れた光は、打ち消しあいにより強度を弱めることができるため、従来のアスペクト比では得られなかったs偏光光の減衰を達成することができる。
一方、p偏光光(TM波)については、ギャップ幅方向で一様な磁界が図7に示すように歪められるものの、電界についてはギャップ幅方向でもともと分布を持っているため、疎部分を伝搬した光と密部分を伝搬した光とで一様に位相差が生じるような状況にはならず、従ってお互いに弱め合うような状況にはならない。
図5に示すグリッド偏在化構造の顕著な消光比の向上は、このような状況を示しているものと考えられる。つまり、ギャップ幅を偏在化させると、電界の集中を強化させてグリッド内での吸収によるs偏光光の減衰の効果がより高くなるが、それに加え、密部分伝搬光と疎部分伝搬光との間でπ/2以上の位相差が発生するようにギャップ幅を偏在化させると、位相差による打ち消し合いの効果も加わるので、さらにs偏光光が減衰するようになり、消光比をより高くできる。図5に示す結果は、このような状況を示しているものと考えられる。
図8は、偏在化させていないグリッド偏光素子(t=T)について、同様のシミュレーション実験を行った結果を示す図である。条件は、t=Tとした以外は、図5及び図6に示す場合と同様とした。したがって、アスペクト比は8.5である。図6との比較のため、図8ではs偏光光の伝搬状況が示されている。
図8に示すように、t=Tの場合、多少の位相遅れが生じ、x方向で一様であったs偏光光の電界成分がグリッドによって分断されるように歪められるものの、グリッドを出射する際には殆ど位相差が発生していない。これは、空間の屈折率分布の不均一化が少ないために発生する位相差も小さく、このため、グリッドを出射した際の波面の重なりにおいて位相差が緩和されて解消してしまうことによるものと思われる。つまり、密部分伝搬光の位相遅れを利用したs偏光光の減衰は、グリッドの偏在化をある程度大きくし、空間の屈折率分布がある程度以上不均一になった場合に生じる現象であると考えられる。
図9は、これらの点を確認したシミュレーション実験の結果について示した図である。図9では、図5〜図7に示すシミュレーションにおいて、偏在比と位相差との関係をFDTD法(Finite-difference time-domain method)により求めた計算結果が示されている。計算には、同じくサイバネットシステムズ株式会社の解析ソフトウェアFULLWAVE(商品名)を使用した。図9において、横軸は狭い方のギャップ幅tであり、縦軸は位相差(左)及び消光比(右)である。
図9に示すように、ギャップ幅tを狭くしてしていくと(即ち偏在比の逆数T/tを大きくしていくと)、ギャップ幅tが60nmを下回るあたりから急に位相差が大きくなり、ギャップ幅t=50nm〜10nmの範囲で位相差はπ(ちょうど逆位相)となる。この際、ギャップ幅t=50nm〜10nmの範囲で消光比向上の効果が得られることになるが、この効果が一様ではなく、36nm付近でピークとなったことについては、以下のように考えられる。即ち、ギャップ幅tが50〜40nm程度では、密部分での電界の集中が比較的弱く、位相差によって疎部分の電界を弱める働きがそれほど大きくないと考えられる。逆に、ギャップ幅t=20〜10nm程度では、密部分での電界の集中は大きくなるものの、疎部分の範囲が広がってしまうため、疎部分の電界を弱める効果が相対的に小さくなってしまうものと考えられる。ギャップ幅t=40〜30nm程度で、密部分での電界の集中と疎部分の幅の大きさとのバランスが取れ、ちょうど上手く弱め合うことになると考えられる。
いずれにしても、密部分と疎部分とで位相差がπ/2以上あれば、理論的には弱め合いが生じs偏光光は減衰する。このため、消光比が高くなる。また、図9に示すように、位相差がπ/2未満であっても、t=60nm未満の範囲では消光比が上昇している。t=60nmでは位相差はπ/10程度であるから、位相差がπ/2未満であってもπ/10を超えていれば、消光比向上の効果が得られることを示している。これらの効果は、波長や屈折率との関係でグリッドの高さを最適に定める必要があるものの、アスペクト比を高くことによって得るものではない。現に、図5に示すように、アスペクト比8.5のグリッドでも、1×10を遙かに超える高い消光比が得られており、この程度のグリッド比であればさほど困難性なく製造が可能である。
次に、実施形態のグリッド偏光素子の製造方法について説明する。図10は、第一の実施形態のグリッド偏光素子の製造方法について示した概略図である。この製造方法では、まず、図10(1)に示すように、透明基板1上に中間薄膜3を作成する。中間薄膜3は、グリッド用の薄膜を作成する際のベースになる薄膜である。中間薄膜3は、最終的には除去されるものであるため、特に材料については制限がない。形状安定性が良く、エッチングの際に迅速に除去可能であれば良い。例えば、フォトレジストなどの有機材料、カーボンなどが中間薄膜3の材質として選定される。
次に、図10(2)に示すように、フォトリソグラフィを行って中間薄膜3をパターニングする。即ち、フォトレジストの全面塗布と、露光、現像、エッチングを行って中間薄膜3をパターニングする。パターニングは、中間薄膜3を、紙面垂直方向に延びた多数の線状部(以下、中間線状部という)31から成る縞状とするものである。この際、各中間線状部31の幅Lやその離間間隔Lは、最終的に作成されるグリッド2の各線状部21の間隔t,Tを決めるものである。
次に、図10(3)に示すように、各中間線状部31により形成される溝の側面にグリッド用薄膜4を作成する。グリッド用薄膜4は、溝の側面のみに作成すれば足りるが、通常は、全面を覆うようにして全体にグリッド用薄膜4が作成される。グリッド用薄膜4は、グリッド2の材料例えば酸化チタンより成る薄膜であり、例えばALD(Atomic Layer Deposition)により作成される。グリッド用薄膜4の作成後、グリッド用薄膜4の異方性エッチングを行う。異方性エッチングは、透明基板1の厚さ方向のエッチングである。このエッチングにより、図10(4)に示すように中間線状部31の両側壁にグリッド用薄膜4が残留した状態となる。
その後、中間薄膜3の材料のみエッチングできるエッチャントを使用してエッチングを行い、各中間線状部31をすべて除去する。これにより、各線状部21より成るグリッド2が透明基板1上に形成された状態となり、実施形態のグリッド偏光素子が得られる。得られたグリッド偏光素子は、所定の偏在比t/Tを持ち、この値になるようにグリッド幅Wに応じて各中間線状部31の寸法L,Lが決定される。
次に、このようなグリッド偏光素子の使用例について説明する。図11は、実施形態のグリッド偏光素子の使用例を示したものであって、グリッド偏光素子を搭載した光配向装置の断面概略図である。
図11に示す装置は、前述した液晶ディスプレイ用の光配向膜を得るための光配向装置であり、対象物(ワーク)10に偏光光を照射することで、ワーク10の分子構造が一定の方向に揃った状態とするものである。従って、ワーク10は光配向膜用の膜(膜材)であり、例えばポリイミド製のシートである。ワーク10がシート状である場合、ロールツーロールの搬送方式が採用され、搬送の途中で偏光光が照射される。光配向用の膜材で被覆された液晶基板がワークとなることもあり、この場合には、液晶基板をステージに載せて搬送したり、又はコンベアで搬送したりする構成が採用される。
図11に示す装置は、光源5と、光源5の背後を覆ったミラー6と、光源5とワーク6との間に配置されたグリッド偏光素子7とを備える。グリッド偏光素子7は、前述した実施形態のものである。
多くの場合、光配向には紫外線の照射が必要なことから、光源5には高圧水銀ランプのような紫外線ランプが使用される。光源5は、ワーク10の搬送方向に対して垂直な方向(ここでは紙面垂直方向)に長いものが使用される。
グリッド偏光素子7は、前述したように、グリッド2の長さを基準にしてp偏光光を選択的に透過させるものである。従って、光配向を行う方向にp偏光光の偏光軸が向くよう、ワーク10に対してグリッド偏光素子7が姿勢精度良く配置される。
尚、グリッド偏光素子は、大型のものを製造するのが難しいため、大きな領域に偏光光を照射する必要がある場合、複数のグリッド偏光素子を同一平面上に並べた構成が採用される。この場合、複数のグリッド偏光素子を並べた面は、ワーク10の表面と並行とされ、各グリッド偏光素子におけるグリッドの長さ方向がワークに対して所定の向きとなるように各グリッド偏光素子が配置される。
このようなグリッド偏光素子7を搭載した光配向装置は、消光比の高いグリッド偏光素子7を使用しているので、高品質の光配向処理を行うことが可能となり、高品質の光配向膜を得ることができる。このため、高画質のディスプレイの製造に大きく貢献できる。
次に、第二の実施形態のグリッド偏光素子について説明する。図12は、第二の実施形態のグリッド偏光素子の正面概略図である。
第一の実施形態では、グリッド2を成す各線状部21は、透明基板1に対して垂直であったが、第二の実施形態では斜めに形成されている。即ち、図12に示すように、隣り合う一対の線状部21は、正面視で逆ハの字を形成している。逆ハの字を形成する二つの線状部が一組となって多数組の線状部21,21が形成されている。
第二の実施形態において、グリッド偏在化の構造は、各線状部の出射端(出射側の端部)において達成されている。即ち、各組を構成する二つの線状部21,21のお互いの離間距離は出射側の端部において狭い距離tとなっている。そして、図12に示すように、隣接する組同士の出射端における距離が広い距離Tとなっている。即ち、例えばある組における右側の線状部とその右側の組の二つの線状部のうちの左側の線状部との出射端における距離が広い距離Tとなっている。左側の組についても同様で、左側の組の二つの線状部のうちの右側の線状部との出射端における距離が広い距離Tとなっている。
このようなグリッド偏在化の構造においても、発明者らが行ったシミュレーションでは、同様に効果があることが確認されている。図13は、この点を示すもので、図12に示す実施形態の構造についてのシミュレーション実験の結果を示す図である。図13は、同様に解析ソフトウェアFULLWAVEを使用してシミュレーションした結果を示す図である。同様に、カラー画像を白黒に変換してあり、理解のため、元の画像の色の別が書き入れられている。図6と同様、図13はs偏光光についての伝搬状況波を示している。尚、逆ハの字を成す二つの線状部21,21が密部分である。また、各組において隣り合う二つの線状部21,21が疎部分である。即ち、例えばある組の右側の線状部21とその右側の組の左側の線状部21とが成す部分が疎部分である。
図13に示すように、第二の実施形態のグリッド偏光素子でも、s偏光光については、グリッドから出射する際、密部分と疎部分とでπ/2を越える位相差が発生しており、互いに弱め合うことで全体として減衰していく。このため、グリッドのアスペクト比を高くすることなく高い消光比が得られる。
図5において、併せてこの第二の実施形態のグリッド偏光素子についてのシミュレーション実験結果(消光比及び透過率)が示されている。図が見にくくなるためにtの値については図示が省略されているが、第二の実施形態のシミュレーション実験では、同様にt=70nmからスタートしてtを徐々に小さくしたところ、透過率は徐々に減少するものの、消光比はt=30nmあたりから急激に上昇し、t=24nmで最大の消光比8300が得られた。消光比最大となるtの値が第一の実施形態と比べて小さくなっていることは、逆ハの字状の形状と関係があるものと推測される。即ち、密部分とはいえ入射側でギャップ幅が広がっているので、出射端がより狭くなっていないと、電界の集中や位相遅れの効果が出にくいものと推測される。
尚、二つの線状部21,21が一つの組を形成し、そのお互いの離間距離が狭い距離tであり、組同士の離間間隔が広い距離Tであるという点自体は、第一の実施形態でも同様である。第二の実施形態では、各線状部21が透明基板1に対して垂直ではなく斜めであることが相違している。
また、図示及び詳しい説明は省略するが、グリッド2の形状を上下逆にし、密部分を成す一対の線状部をハの字状とした場合、消光比向上の効果は小さい。この理由は、ハの字状の場合、グリッド2の出射端において偏在比が小さくなってしまい、電界を集中させる効果や位相差を発生させる効果や緩和されてしまうことによるものと考えられる。
次に、図14に示す第二の実施形態のグリッド偏光素子の好適な製造方法について説明する。図14は、第二の実施形態のグリッド偏光素子の好適な製造方法について示した概略図である。
第二の実施形態のグリッド偏光素子を製造する際にも、図14(1)に示すように、透明基板1上に中間薄膜3を作成する。中間薄膜3は、グリッド用薄膜を作成する際のベースになる薄膜である。
次に、フォトリソグラフィを行って中間薄膜3をパターニングする。即ち、フォトレジストの全面塗布と、露光、現像、エッチングを行い、図14(2)に示すようにフォトレジスト30を縞状にパターニングする。そして、図14(3)に示すように、このフォトレジスト30のパターンをマスクにして中間薄膜3をエッチングし、縞状とする(多数の中間線状部31から成るものとする)。
この際、図10に示す製造方法と異なり、完全な異方性エッチングではなく、若干等法的なエッチングとする。若干等法的なエッチングとは、ドライエッチングにおいて基板に垂直バイアス電力を小さく設定するか、又はCガスのような添加ガスを導入することにより行える。これらの両方を行っても良い。若干等法的なエッチングとすると、図14(3)に示すように、各中間線状部31は断面台形状となる。即ち、側面311がテーパ状の形状(テーパ面)となる。この際、隣り合う中間線状部31の底部の離間距離L、及び各中間線状部31の底面の幅Lは、最終的に作成されるグリッド2の各線状部21の間隔t,Tを決めるものである。
次に、このようにパターニングされた中間薄膜3に対し、図14(4)に示すようにグリッド用薄膜4を作成する。グリッド用薄膜4は、同様にALD等の方法により作成され、各中間線状部31の側面及び上面を覆った状態となる。そして、透明基板1の厚さ方向の異方性エッチングをグリッド用薄膜4に対して行い、図14(5)に示すように中間線状部31の両側の側面(テーパ面)311にグリッド用薄膜4が残留した状態とする。
その後、中間薄膜3の材料のみエッチングできるエッチャントを使用してエッチングを行い、各中間線状部31をすべて除去する。これにより、図14(6)に示すように各組で逆ハの字状を成す各線状部21で形成されたグリッド2の構造が得られる。図14から解るように、t=L−2wであり、T=Lである。
図14に示す製造方法は、中間薄膜3のパターニングにおいて側面311がテーパ面であるので、製造が容易であるという優位性がある。図14(4)においてグリッド用薄膜4を作成する際、中間薄膜3が台形であると、グリッド用薄膜4は表面に堆積しやすくなるためである。図10に示す製造方法では、中間薄膜3からなる線状部31が透明基板1に対して垂直であるため、図10(3)においてグリッド用薄膜4を表面に均一に成膜することが難しい。ALD法で成膜できる材料の場合は比較的容易にグリッド用薄膜4を表面に均一に成膜できるが、スパッタリング法、蒸着法でしか形成できないグリッド材料の場合には、中間薄膜3は台形の方がグリッド用薄膜4を形成しやすい。つまり、図12に示す第二の実施形態のグリッド偏光素子の構造は、製造が容易であるという優位性を有する。
以上の説明において、対象波長は254nmを想定したが、それよりも短い例えば200nm以下の紫外線が対象波長とされる場合もある。また逆に、254nmよりも長い紫外域又は可視域の波長が対象波長とされることもある。
また、上記各実施形態において、距離tのギャップと距離Tのギャップが交互に存在していたが、周期的に偏在化していれば足り、必ずしも交互である必要はない。例えば、第一の実施形態の構造において、短い距離tで隣り合う三つの線状部(二つのギャップ)が一組となり、各組が広いギャップTで隣り合っているような構造でも良い。
1 透明基板
2 グリッド
21 線状部
3 中間薄膜
4 グリッド用薄膜
5 光源
6 ミラー
7 グリッド偏光素子
10 ワーク

Claims (4)

  1. 透明基板と、透明基板上に設けられた縞状のグリッドとより成るグリッド偏光素子であって、
    グリッドは、誘電体又は半導体で形成されており、
    グリッドを構成する各線状部において一方の側の隣の線状部との距離をt、他方の側の隣の線状部との距離をTとしたとき、グリッドは、実質的にt<Tである部分を周期的に有しており、
    グリッドの各線状部の長さ方向に電界成分を有する偏光光をs偏光光とし、距離tで隣り合う二つの線状部を伝搬したs偏光光を密部分伝搬光とし、距離Tで隣り合う二つの線状部を伝搬したs偏光光を疎部分伝搬光としたとき、t/Tの比は、密部分伝搬光の位相が疎部分伝搬光の位相よりもπ/10超且つπ/2未満遅れる比となっていることを特徴とするグリッド偏光素子。
  2. 前記グリッドは、隣り合う二つの線状部が一組となって前記透明基板上に設けられており、
    各組の二つの線状部を伝搬したs偏光光が前記密部分伝搬光であって、各組の二つの線状部の離間距離は前記距離tとなっており、
    隣接する組同士で向かい合う二つの線状部を伝搬したs偏光光が前記疎部分伝搬光であって、隣接する組同士の離間距離は前記距離Tとなっており、
    前記距離tは、前記密部分伝搬光の出射端での離間距離であり、
    前記距離Tは、前記疎部分伝搬光の出射端での離間距離であることを特徴とする請求項1記載のグリッド偏光素子。
  3. 前記各組の二つの線状部の離間距離は、前記密部分伝搬光の伝搬方向前側に向かって徐々に狭くなっていることを特徴とする請求項2記載のグリッド偏光素子。
  4. 光源と、請求項1、2又は3記載のグリッド偏光素子とを備えており、グリッド偏光素子は、光配向用の膜材が配置される照射領域と光源との間に配置されていることを特徴とする光配向装置。
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