JP6225755B2 - イオン液体を用いて製造した熱可塑性樹脂をマトリックスとする高強度繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法 - Google Patents

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熱可塑性樹脂をマトリックスとした繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)の製造方法に関する。
プラスチックは軽量であるが、弾性率が低く自動車、航空機等の構造材料としては適していない。そのため、ガラス繊維、炭素繊維のような弾性率の高い繊維を強化繊維としてマトリックス材料を含浸させ、複合材料として軽量で強度の高い繊維強化プラスチック(FRP)が開発されてきた。
繊維強化プラスチックには、強化繊維にマトリックス材料を予め含浸させ、硬化剤とともに加熱することで半固形状態とした中間成形材料、いわゆるプリプレグが広く使用されている。
プリプレグは賦形の前に樹脂を含浸させているので、マトリックスに対し高い繊維含有率を得ることができ、繊維配向角の精密な制御、低ボイド等、高品質の成形品を得ることができるという利点がある。また、プリプレグを用いて成形する場合には、予め含浸させている樹脂が未硬化モノマーであることから、それほど高い温度や圧力を加えなくても成形が可能であり、成形工程の自動化・省力化等、成形工程においても多くの利点がある。
現在、繊維強化プラスチックのマトリックスとしては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が主流である。熱硬化性樹脂をマトリックスとした場合には、再加熱・架橋反応により完全に硬化するため、溶媒を用いても再度溶解したり、加熱しても融解しない。そのため、廃棄、再利用の際にコストがかかるだけではなく、環境への負荷が大きいという問題点が生じていた。そこで熱可塑性樹脂をマトリックスとして用いた繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)が開発されてきた。
熱可塑性樹脂をマトリックスとして用いた場合、任意の形状へ成形する際に架橋反応を伴わないため、マトリックスが変形可能な温度まで加熱し、金型へ賦形した後は、冷却するだけで成形が完了する。加熱することにより融解するので再加工が容易であり、再利用に優れている。また、廃棄の際に、無機繊維と容易に分離することもできるので、コストを削減することができる。
しかしながら、FRPで一般的に用いられている溶媒法といわれる樹脂を溶媒に溶解して繊維束を含浸させるプリプレグの作製法は、熱可塑性樹脂を溶解可能な溶剤が、塩素系、フッ素系の溶剤が多く、環境に対する負荷が大きい。そのため工業的に用いることが困難である。そこで、FRTPの場合には、フィルムスタッキング法が主として採用されている。
フィルムスッタッキング法は、繊維基材と、シート状に加工した高分子フィルムを積層して高温・高圧でプレス成形する方法である。フィルムスタッキング法によりプリプレグを作製する場合には、樹脂の溶融温度や溶融粘度が高いために、非常に高い温度と圧力が必要とされる(例えば、特許文献1、2参照)。
国際公開2013/008720号 国際公開2005/002819号 特表2011−514401号公報 特許第5203698号
Ingildeev, D. et al., 50TH Dornbirn man-made fibers congress. 2011年
本発明は人体に対する危険性がほとんどなく、環境負荷が小さいプリプレグを用いたFRTPの製造方法を提供することを課題とする。
本発明の繊維と、イオン液体に可溶な熱可塑性樹脂とを含む繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法は、前記繊維は長手方向に100mm以上延在する無機繊維からなる繊維束であり、前記熱可塑性樹脂をイオン液体に溶解させる工程と、イオン液体に溶解した熱可塑性樹脂に前記繊維束を含浸させ、繊維/樹脂複合体を形成させる工程と、前記繊維/樹脂複合体を水に接触させて樹脂を再生させる再生工程と、乾燥工程と、成形工程とを含むことを特徴とする。
イオン液体は幅広い温度範囲で液体として存在する塩であり、イオンのみからなる液体で、蒸気圧が低く、難燃性であり、熱安定性・電気化学的安定性が高く、従来から用いられている熱可塑性樹脂の溶媒と比較して、非常に安全で環境への負荷も少ない。イオン液体を用いることにより、人体への安全性が高く、また、従来のように高温・高圧で加工する工程を必要としないため、環境への負荷が小さい。
繊維束に、イオン液体に溶解した熱可塑性樹脂を含浸させることにより、従来のように高温・高圧処理を行う必要がなくなった。そのため環境への負荷が非常に少ない。また、イオン液体は蒸気圧が低く、難燃性であることから、人体に対する安全性が非常に高い。
さらに成形工程もマトリックス樹脂が変形可能な温度まで加熱することにより成形することができるので、熱硬化性樹脂を用いた場合に比べて低温で加熱処理すれば足り、環境に対する負荷が非常に小さい。さらに、本発明の方法によれば、従来法であるフィルムスタッキング法により製造するよりも高い物性を備えた成形品を得ることができる。
本発明の繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法は、前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリアミドMXD6、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンからなる群から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする。
イオン液体に可溶な熱可塑性樹脂のうち、前記樹脂はイオン液体への可溶性も良く、非常に扱いやすい。また、これら樹脂を複合して用いることによって、2つの樹脂の物性を備えた成形品を製造することも可能である。
前記樹脂は非ハロゲン系且つ常温で低粘性液体であり、工業的生産が確立されたイミダゾリウム系イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテートに溶解性が高いことから、工業的に安定してプリプレグを生産することが可能となる。
本発明による繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法のフローを示す図。 成形板の破断面を示す走査顕微鏡像。
本発明の繊維は無機繊維であればどのようなものを用いてもよい。具体的にはガラス繊維、炭素繊維が挙げられる。
また、無機繊維はカップリング剤で処理してもよい。特に、ガラス繊維の場合には、以下に示すように高い物性を得るためには、シランカップリング剤で処理することが望ましい。
シランカップリング剤としてはアミノシラン等が挙げられるが、用いる無機繊維及び樹脂と相性によってどのようなものを用いてもよい。好ましくは,X−Si−(OR)(式中、Xは置換基を表し、Rはアルキル基を表す。)で表されるシラン化合物からなるシランカップリング剤であり、該構造式において、置換基Xはマトリックス樹脂と反応することができる官能基を有する。官能基としては、具体的には例えばビニル基、アミノ基、エポキシ基、メタクリロキシ基又はメルカプト基などが挙げられる。Rはアルキル基で、中でもメチル基またはエチル基が好ましい。
シランカップリング剤として具体的には、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
用いる熱可塑性樹脂としては、イオン液体に可溶な樹脂であればどのようなものを用いてもよい。例えば、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミドMXD6、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエーテルサルフォン(PES)等が挙げられる。
また、樹脂を溶解するイオン液体としては、イミダゾリウム系、ピリジニウム系、ピリミジニウム系イオン液体等を用いることができる。中でも、非ハロゲン系且つ常温で低粘性液体であり、工業的生産が確立され比較的安価に入手可能なことから、イミダゾリウム系イオン液体が好ましい。
イミダゾリウム系イオン液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチル−ホスフェート、1,3−ジメチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムプロピオネート、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド等のイミダゾリウム系イオン液体を挙げることができる。
粘性および樹脂との相溶性の点で、より好ましくは、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチル−ホスフェートを挙げることができる。
≪熱可塑性樹脂のイオン液体への溶解性の検討≫
これまでにイオン液体に溶解可能な熱可塑性樹脂がいくつか報告されている(特許文献3、4、非特許文献1)。そこで、これら文献に報告されているイオン液体と樹脂の組み合わせの中から、工業的生産が確立され比較的安価に入手可能なイミダゾリウム系イオン液体と、熱可塑性樹脂を選択した。イオン液体に溶解する熱可塑性樹脂とイオン液体の組み合わせの中から、イオン液体として、非ハロゲン系且つ常温で低粘性液体であり、工業的生産が確立され比較的安価に入手可能なイミダゾリウム系イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(Ionic Liquids Technologies GmbH製、以下、[EMIM][Ac]という。)を選択し、以下検討を行った。また、熱可塑性樹脂としては、高い機械的特性を有するポリアミド樹脂であるポリアミドMXD6(三菱ガス化学株式会社製、MXD6ナイロンS6007、以下MXD6という。)、及び高い耐熱性と高い靱性を有するポリエーテルサルフォン(住友化学株式会社製、PES3600P、以下PESという。)を選択し、プリプレグの作製に使用した。また、強化繊維としては、ガラス繊維織物(日東紡績株式会社製、WEA22Fのアミノシラン表面処理品)を用いた。
≪溶解条件の検討≫
MXD6とPESの2種の樹脂の[EMIM][Ac]への溶解条件を検討した。溶液中の樹脂濃度が20重量%となるように調整し、溶液温度が40℃、60℃、80℃、100℃、120℃、140℃に設定して連続して撹拌を行い、各温度で樹脂が完全に見えなくなった時間を溶解に要した時間とした。
MXD6の溶解温度と溶解時間の関係を表1に、PESの溶解温度と溶解時間の関係を表2に示す。
表中、×は未溶解の樹脂が残っているもの、○は完全に溶解していることを示す。−は、すでに溶解していることから、それ以降の時間では、溶解実験を行っていないことを示す。なお、溶解は目視で確認している。
表1及び表2に示すように、溶液の温度及び時間に依存して、MXD6、PESともに溶解させることができる。
≪プリプレグの作製≫
表1及び表2に示すように、MXD6、PESともに各々40℃で48時間、40℃で72時間加熱することにより溶解させることができる。しかしながら、60℃以上に加熱しないと粘性が5Pa・s程度まで低下しないことから、ガラス繊維織物への含浸が困難であった。そこで、プリプレグ溶液を100℃に加熱し、プリプレグを作製した。
図1にプリプレグの作製方法を示す。熱可塑性樹脂はイオン液体に溶解する。溶解温度はイオン液体の分解温度である150℃以下の温度であればよい。熱可塑性樹脂がイオン液体に完全に溶解した溶液をプリプレグ溶液と称する。
次に、プリプレグ溶液に、無機繊維を含浸させる。無機繊維としてはガラス繊維、炭素繊維等、公知の無機繊維を用いることができる。
無機繊維としてガラス繊維を用いる場合には、樹脂との接着性を増強させるためにシランカップリング剤で処理することが好ましい。また、ここではハンドレイアップ法(HLU法)で樹脂の含浸を行ったが、公知のどのような方法を用いて無機繊維への含浸を行っても良い。
プリプレグ溶液は粘性が高いと無機繊維への含浸性が悪いことから、粘性が5Pa・s程度となる60℃以上にすることが好ましい。また、150℃より高温ではイオン液体が分解することから、150℃以下の温度とする必要がある。
無機繊維にプリプレグ溶液を含浸した繊維/樹脂複合体は、60℃の純水中に72時間浸漬することによって、イオン液体を除去する(再生工程)。その後、60℃24時間減圧乾燥を行い(乾燥工程)、プリプレグを作製した。作製したプリプレグは加熱し、成形することができる。
≪平均分子量の検討≫
熱可塑性樹脂をイオン液体に溶解した場合には、分子構造の変化が予想される。分子構造の変化が、成形品の物性に影響を与える可能性があることから、分子量の変化、及び成形品の強度について検討を行った。
まず、イオン液体に溶解する前の樹脂、プリプレグ中の樹脂について、重量平均分子量の測定を行った。
結果を表3に示す。重量平均分子量(Mw)は、JIS−K7252に準じてゲル浸透クロマトグラフィーにより求めた。
表3に示すのは、樹脂をイオン液体に溶解し、水に浸漬することにより、イオン液体中から再生した樹脂の重量平均分子量、すなわちプリプレグ中の樹脂の重量平均分子量である。
イオン液体に溶解する前の樹脂の重量平均分子量は、以下のとおりである。MXD6は重量平均分子量(Mw)82,900、PESは、重量平均分子量(Mw)27,000である。
これに対し、イオン液体で溶解後、水に接触させて再生した後の樹脂の重量平均分子量は、イオン液体中での加熱温度が高温となり、また、加熱時間が長くなるにしたがって低下している。
また、MXD6を140℃で48時間から72時間加熱していたものは、プリプレグは作製できたが茶色に着色していた。PESを120℃で6時間以上加熱して、又は、140℃で加熱して溶解させたものは、再生工程において水と接触させた際に、繊維束から樹脂が脱落してしまい、プリプレグが作製できなかった。その他の溶解条件のプリプレグ溶液を用いた場合は、問題なくプリプレグを作製することができた。
したがって、熱可塑性樹脂のイオン液体への溶解温度T(℃)及び溶解時間H(時間)は、以下の関係式を満たすことが好ましく、
60≦T≦120のとき、
650000≦T2.5×H≦920000
さらに、
60≦T≦110のとき、
650000≦T2.5×H≦910000
の関係式を満たすことがより好ましい。
次に、上記で作製した表3の重量平均分子量を備えたプリプレグを5枚重ねて、平板形状の金型を用いてプレス成形により成形品を作製した。成形条件は表4に示す。
また、物理的性質を比較するためにフィルムスタッキング法により、MXD6、PESの夫々についてFRTPを作製した。具体的には厚さ0.10mmのシート状に加工した樹脂フィルムとガラス繊維織物を交互に5枚積層して、同じ金型とプレスを用いて積層板を作製した。成形条件は上記と同様である。FRTP積層板の仕上がり寸法と繊維体積含有率はすべてのFRTPで同じになるように金型のクリアランスを調整し、幅300mm、長さ300mm、厚さ1.05mmとした。繊維体積含有率Vfは40%であった。
次に作製した成形品の物理的性質を測定した。表3に表4の条件で作製した成形品の物性をまとめた。
表3中、BSは曲げ強度、BMは曲げ弾性率を示す。曲げ強度、曲げ弾性率ともに、JIS K 7017に準じた3点曲げ試験により強度、弾性率の測定を行った。試験片のサイズは厚さt=1.05mm、幅b=15mm、長さl=100mmで曲げスパンは20mmである。
表3に示すように、比較的低温で加熱し樹脂をイオン液体に溶解した場合には、MXD6、PESいずれもフィルムスタッキング法で作製した成形品に比べ、曲げ強度、曲げ弾性率ともに高い値となっている。イオン液体に溶解することにより、粘性の低いプリプレグ溶液が作製されていることから、強化繊維であるガラス繊維織物に含浸性が増し、さらに接着状態も良好となるために強度、弾性率が増強しているものと考えられる。
そこで、FRTPの強化繊維と樹脂との接着状態を評価するために、曲げ破断部の走査電子顕微鏡観察を行った。結果を図2に示す。
図2(A)には本発明の方法である、[EMIM][Ac]にMXD6を溶解させ、作製したプリプレグを用いた成形板の破断面を示す。ガラス繊維束に樹脂が接着している様子が観察される。
これに対し、図2(B)に示すのは、同じくMXD6を用いフィルムスタッキング法により作製した積層板である。本発明の方法に比べ、ガラス繊維束に樹脂がほとんど付着していないことが観察された。ここでは示さないがPESを用いて作製したFRTPでも同様の結果が観察された。
さらに、ここでは示さないが、樹脂のガラス繊維織物への含浸状態を評価するために、走査電子顕微鏡による断面観察を行った。イオン液体を用いて樹脂を溶解することにより作製したプリプレグから成形したFRTP内のガラス繊維束への樹脂の含浸状態を走査電子顕微鏡により観察した。その結果、いずれの樹脂を用いた場合も、樹脂のガラス繊維束への含浸は非常に良好であることが確認された。
上記示してきたように、比較的低温で加熱し樹脂をイオン液体に溶解した場合には、MXD6、PESともに高強度、高弾性率の成形品を作製できる。
次に、イオン液体に溶解し、再生後の樹脂の重量平均分子量の減少と、成形品の強度との関係について検討を行った。
例えば、曲げ強度は、MXD6の場合には、140℃72時間処理したプリプレグ溶液を用いると、フィルムスタッキング法で作製した積層板より強いものの、140℃48時間および、120℃以下の温度条件でプリプレグ溶液を作製したものと比較して10%以上低下している。その際のプリプレグ中のMXD6樹脂の重量平均分子量はイオン液体溶解前の82,900から56,500と30%程度小さくなっている。
また、PESの場合、100℃9時間処理すると、曲げ強度はフィルムスタッキング法で作製した積層板より強いものの、80℃以下の温度条件で作製したものと比較して曲げ強度は10%前後の低下がみられる。その際のプリプレグ中のPES樹脂の重量平均分子量はイオン液体溶解前の27,000から18,720と30%程度小さくなっている。
以上の結果を鑑みると、イオン液体に樹脂を溶解し、水に接触させて再生した後の重量平均分子量が、イオン液体に溶解する前と比較して35%以下の低下であれば、成形品の曲げ強度、曲げ弾性率の点でフィルムスタッキング法で作製した成形品に比べて優位である。用いる熱可塑性樹脂によっても異なるが、どのような樹脂を用いるとしても再生後の重量平均分子量の低下率が、イオン液体溶解前と比較して、好ましくは25%以下であることが望ましく、さらに好ましくは10%以下であることが望ましい。10%以下の低下であれば、フィルムスタッキング法で作製した成形品と比べて非常に高い曲げ強度、曲げ弾性率を有する成形品を製造することができる。
また、繊維強化熱可塑性樹脂複合体中の樹脂量は、10〜80体積%が望ましい。樹脂量が上記の範囲であれば、成形性に優れ、かつ、機械的物性に優れた成形品が得られる。
最後にシランカップリング剤の効果、複数の樹脂を混合した場合の効果について検討した。強化繊維としては、シランカップリング剤処理品としてガラス繊維織物(日東紡績株式会社製、WEA22Fのアミノシラン表面処理品)、シランカップリング剤未処理品としてガラス繊維織物(日東紡績株式会社製、WEA22Fのシランカップリング剤未処理品)を用いた。
表5成形品の「IL」は本発明の方法であるイオン液体に樹脂を溶解してプリプレグを作製し、成形品を製造したことを示し、「FS」はフィルムスタッキング法により成形品を製造したことを示す。剥離強度は、JIS−K6854に準じて、成形品の表面からガラスクロスを引き剥がす剥離試験により求めた。また、アルカリ白化変色距離は、1NのNaOH水溶液を60℃に加温し、そのアルカリ水溶液中に成形品を1時間浸漬し,浸漬後の成形品端部の変色距離を顕微鏡(×20倍)で観察し計測した。
表5の実施例1〜3、比較例3、6に示すように、イオン液体を用いてプリプレグを作製した場合であっても、ガラス繊維にシランカップリング剤処理をしない場合(比較例3、6)には、曲げ強度200MPa、剥離強度10N/cmと、シランカップリング剤で処理した場合と比較して1/2程度の値となっている。したがって、ガラス繊維を無機繊維として用いた場合には、シランカップリング剤処理することが好ましい。
シランカップリング剤処理は、シランカップリング剤の水溶液中にガラス繊維を浸漬し、乾燥させて水分を除去することで行われる。シランカップリング剤の濃度は0.01〜10重量%であるのが好ましく、ガラス繊維を表面処理液に浸漬した後の水溶液のピックアップはガラス繊維重量に対して15〜40%が好ましい。実施例1〜3、比較例2、5においては、アミン系のシランカップリング剤0.5重量%水溶液(処理液)で浸漬処理を行い、ピックアップが30%の処理液含有ガラス繊維を、110℃で5分間乾燥し水分を除去し、シランカップリング剤処理を施した。
イオン液体で溶解した樹脂をマトリックスとし、シランカップリング剤処理したガラス繊維を強化繊維として製造した実施例1〜3の成形品は、いずれの樹脂を用いても、曲げ強度が480〜500MPaと、フィルムスタッキング法により製造した成形品(比較例1、2、4、5)の200〜350MPaと比べて非常に強度が高い。
剥離強度に関しても、実施例1〜3に示すように、本発明の方法により得た成形品は、いずれの樹脂を用いても、剥離強度が20N/cmと、フィルムスタッキング法により製造した成形品の剥離強度が10〜15N/cmであるのに比べると、高い値となっている。
アルカリ白化距離も本発明の成形品では、フィルムスタッキング法による成形品の約1/2程度となっており、強化繊維と樹脂の界面接着性が良好であり、かつ、非常に耐アルカリ性が高い。
また、実施例3に示したように、本発明のプリプレグの製造方法よれば、複数の樹脂を混合してイオン液体に溶解することが可能である。実施例3では,MXD6とPESを夫々イオン液体に対して10重量%となるように計量し、計量したMXD6とPESを同時に[EMIM][Ac]中へ投入し、80℃で12時間連続して撹拌を行いプリプレグ溶液とした。このプリプレグ溶液を用いて、MXD6のプリプレグ溶液と同様の作製条件でプリプレグ作製とプレス成形を行った。実施例3に示すように、複数の熱可塑性樹脂をイオン液体に溶解・混合したプリプレグ溶液を作製し、成形品を作製することができるので、複数の樹脂の物理的性質を備えたプリプレグを作製することが可能となる。
以上、示してきたように、本発明者らはイオン液体に熱可塑性樹脂を溶解することによって、安全で且つ環境に対して負荷の少ない方法で熱可塑性樹脂をマトリックスとするプリプレグの作製に成功した。
さらに、本発明のプリプレグを用いて作製した成形品は、従来の方法であるフィルムスタッキング法による成形品と比較して、曲げ強度、曲げ弾性率、耐アルカリ性に優れている。

Claims (2)

  1. 繊維と、イオン液体に可溶な熱可塑性樹脂を含む繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法であって、
    前記繊維は長手方向に100mm以上延在する無機繊維からなる繊維束であり、
    前記熱可塑性樹脂をイオン液体に溶解させる工程と、
    イオン液体に溶解した熱可塑性樹脂に前記繊維束を含浸させ、繊維/樹脂複合体を形成させる工程と、
    前記繊維/樹脂複合体を水に接触させて樹脂を再生させる再生工程と、
    乾燥工程と、
    成形工程とを含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法。
  2. 請求項1記載の繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリアミドMXD6、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンからなる群から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法。
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