JP6222772B2 - 応力拡大係数測定用ひずみゲージおよび応力拡大係数算出方法 - Google Patents
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このような応力拡大係数測定用ひずみゲージの従来技術として、特開昭63−24103号公報(以下、「特許文献1」という)に開示された技術がある。
この特許文献1に記載された応力拡大係数計測用ひずみゲージは、図19に示すように、紙や合成樹脂等の絶縁物で形成された矩形のシート状をなすベース1の中央には、直径がdの開口2が形成されている。この開口2の中心から半径r1の円周上には、それぞれ半円弧状をなすゲージグリッド3、4が形成され、これらゲージグリッド3、4の両端にはそれぞれリード線5、6が接続している。同様に、開口2の中心から半径r2の円周上には、それぞれ半円弧状をなすゲージグリッド7、8が形成され、これらゲージグリッド7、8の両端にはそれぞれリード線9、10が接続されている。
ゲージグリッド3、4の測定方向とゲージグリッド7、8の測定方向とが相互に直角をなすように、これらゲージグリッド3、4、7、8のグリッドパターンが設定されている。
上記表と測定したひずみ値を使わなければ、応力拡大係数は、算出できなかった。
他の先行技術として、多数枚のロゼット型ゲージを、き裂回りに貼り付け、測定したひずみ値から応力拡大係数を算出する方法がある。
しかしながら、この多数枚のロゼット型ゲージを添着する厄介さがあると共に、採取したひずみ値のデータ量が多くなり、その処理に多大の労力を必要とするばかりでなく、小型化を図り難いため、小さな領域における測定が困難である、といった問題があった。
因に、き裂先端部回りのひずみ分布式は、弾性学における極座標ひずみ成分式を用いて導かれる。応力拡大係数は、この分布式の第1項目に現れる係数である。従って、応力拡大係数の精度を上げるには、この極座標ひずみ成分式から応力拡大係数解析式を導く必要があった。この要求と共に、精度のよい応力拡大係数を導くためには、極座標形式の高次項までを用いて応力拡大係数を導くことも要求された。但し、この場合に用いる極座標形式の高次項は、できるだけ少ない項数で精度の良い値を保証できる範囲とすることが必要となる。また、ひずみゲージのゲージパターンは、極座標形式のひずみ成分に基づき作られていることが必要である。
さらに、本発明の他の目的とするところは、本発明に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージを用いて、煩雑なき裂長さ測定作業が不要で、簡易な測定作業で、き裂回りのひずみ値が得られ、得られたひずみ値から、現場で電卓程度の計算で簡単に且つ精度よく、応力拡大係数を求められる応力拡大係数算出方法を提供することにある。
軸中心から放射方向に延びる基準軸と、前記軸中心からの半径が異なる第1の円弧部と第2の円弧部と、前記基準軸を対称として所定の角度をもって放射方向に延びる第1および第2の放射軸とを仮想したとき、
前記基準軸と前記第1および第2の放射軸と前記第1の円弧部と前記第2の円弧部とで囲まれる扇形状の第1および第2の領域内に形成され放射方向に受感部を有する第1および第2のゲージグリッド部と、
前記第1のゲージグリッド部の各端に接続された第1の一対の接続端子と、
前記第2のゲージグリッド部の各端に接続された第2の一対の接続端子と、
前記第1および第2のゲージグリッド部と前記第1および第2の接続端子が一体的に添着されてなる絶縁基板とからなる第1および第2のひずみゲージであって、
被測定対象物に生じた亀裂先端部に前記軸中心を合致させると共に前記亀裂部の方向と前記基準軸とを合致させて前記絶縁基板を前記被測定対象物に添着し、前記亀裂回りのひずみを測定し、応力拡大係数を算出し得るように構成したことを特徴としている。
軸中心から放射方向に延びる基準軸と、前記軸中心から半径が異なる第1の円弧部と第2の円弧部と前記第1、第2の円弧部より所定間隔離れて外側に位置し、前記軸中心からの半径が異なる第3の円弧部と第4の円弧部と、前記基準軸を対称として所定の角度をもって放射方向に延びる第1および第2の放射軸とを仮想したとき、
前記基準軸と前記第1および第2の放射軸と、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部とで囲まれる扇形状の第1および第2の領域内にそれぞれ形成され放射方向に受感部を有する第1および第2のゲージグリッド部と、
前記基準軸と前記第1および第2の放射軸と、前記第3の円弧部と前記第4の円弧部とで囲まれる扇形状の第3および第4の領域内にそれぞれ形成され放射方向に受感部を有する第3および第4のゲージグリッド部と、
前記第1のゲージグリッド部の各端に接続された第1の一対の接続端子と、
前記第2のゲージグリッド部の各端に接続された第2の一対の接続端子と、
前記第3のゲージグリッド部の各端と接続された第3の一対の接続端子と、
前記第4のゲージグリッド部の各端と接続された第4の一対の接続端子と、
前記第1および第2のゲージグリッド部並びに前記第3および第4のゲージグリッド部と、前記第1および第2の接続端子並びに前記第3および第4の接続端子が一体的に添着されてなる絶縁基板とからなるひずみゲージであって、
被測定対象物に生じた亀裂先端部に前記軸中心を合致させると共に前記亀裂部の方向と前記基準軸とを合致させて前記絶縁基板を前記被測定対象物に添着し、前記亀裂回りのひずみを測定し、応力拡大係数を算出し得るように構成したことを特徴としている。
前記基準軸と前記第1の放射軸および前記基準軸と前記第2の放射軸とがなす角度を、それぞれ90°となしたことを特徴としている。
請求項4に記載した発明に係る応力拡大係数算出方法は、
前記請求項1の応力拡大係数測定用ひずみゲージの前記第1および第2のひずみゲージを、それぞれ一辺に回路挿入し、他の三辺に固定抵抗を回路挿入して2つのホイートストンブリッジ回路を形成し、前記2つのホイートストンブリッジ回路の入力端にブリッジ電圧を印加し、それぞれの出力端に生ずる出力電圧をひずみ測定器で測定した前記第1および第2のひずみゲージのひずみ値を、所定の演算式に代入することでせん断モードにおける応力拡大係数を測定し得るように構成したことを特徴としている。
前記請求項3に記載のひずみゲージを一辺に回路挿入し、他の三辺に固定抵抗を回路挿入して2つのホイートストンブリッジ回路を形成し、
前記ホイートストンブリッジ回路の各入力端にブリッジ電圧を印加したとき、各出力端から出力される電圧をひずみ測定器で測定したときの前記第1のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG1、前記第2のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG2、せん断モードの材料定数をJ1、前記第1および第2のゲージグリッドの第1の形状定数をQ1として、せん断モードの応力拡大係数KIIが、
下記の条件式(1):
前記第1および第2の円弧部の半径をr1およびr2として、
下記条件式(3)で与えられる定数である。
前記請求項3に記載のひずみゲージを一辺に回路挿入し、他の三辺に固定抵抗を回路挿入して4つのホイートストンブリッジ回路を形成し、
前記ホイートストンブリッジ回路の各入力端にブリッジ電圧を印加したとき、各出力端から出力される電圧をひずみ測定器で測定したときの前記第1のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG1、前記第2のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG2、前記第3のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG3、前記第4のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG4、せん断モードの材料定数をJ1、前記第1および第2のゲージグリッドの第1の形状定数をQ1、前記第3および第4のゲージグリッド部の第2の形状定数をQ2として、せん断モードの応力拡大係数KIIが、
下記の条件式(4):
前記第1および第2の円弧部の半径をr1およびr2として、
下記条件式(3)で与えられる定数であり、
前記請求項3に記載のひずみゲージを一辺に回路挿入し、他の三辺に固定抵抗を回路挿入して4組のホイートストンブリッジを形成し、
各前記ホイートストンブリッジの入力端にブリッジ電圧を印加したとき、出力端から出力される電圧をひずみ測定器で測定したときの前記第1〜前記第4のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG1〜εG4、開口モードの材料定数をF1、前記ゲージグリッドの第1および第2の形状定数をQ1およびQ2として、開口モードの応力拡大係数KIが、
下記の条件式(6):
前記第1および第2の円弧部の半径をr1およびr2として、
前記条件式(3)で与えられる定数であり、
前記第3および第4の円弧部の半径をr3およびr4として、前記条件式(5)で与えられる定数である。
さらに、本発明に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージを用いて、煩雑なき裂長さ測定作業が不要で、簡易な測定作業で、き裂回りのひずみ値が得られ、得られたひずみ値から、現場で電卓程度の計算で、簡単に且つ精度よく応力拡大係数を求められる応力拡大係数算出方法を提供することができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージのゲージグリッドのパターンを示す平面図である。
図2は、本発明に係る第1の実施の形態に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージのゲージグリッドのパターンの概略を示す平面図である。
図3は、本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージのゲージグリッドおよび各接続端子のパターンを詳細に示す拡大平面図である。
図4は、本発明に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージの被測定体の貼り付け方を示す説明図である。
図5は、本発明に係る応力拡大係数算出方法を用いて、各ゲージグリッド(ひずみゲージ)毎にひずみ測定を行う場合の回路図を示し、図5(a)〜図5(d)は、第1〜第4のゲージグリッド部G1〜G4で検出されるひずみをそれぞれ測定する場合の回路図である。
本発明の第1の実施の形態に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージは、図2に示すように、
軸中心Oから放射方向に延びる基準軸OXと、前記軸中心Oからの半径r1およびr2が異なる第1の円弧部C1と第2の円弧部C2と、前記基準軸OXを対称として所定の角度をもって放射方向に延びる第1および第2の放射軸OR1およびOR2とを仮想したとき、
前記基準軸OXと前記第1および第2の放射軸OR1およびOR2と前記第1の円弧部C1と前記第2の円弧部C2とで囲まれる扇形状の第1および第2の領域内に形成され放射方向に受感部を有する第1および第2のゲージグリッド部G1およびG2と、を有する。
前記第2のゲージグリッド部G2の各端に接続された第2の一対の接続端子T2−1、T2−2と、
前記第1および第2のゲージグリッド部G1およびG2と前記第1および第2の接続端子T1−1、T1−2およびT2−1、T2−2が一体的に添着されてなる絶縁基板BPとからなる第1および第2のひずみゲージS1およびS2が完成する。
また、本発明に係る第2の実施の形態の応力拡大係数測定用ひずみゲージは、図1および図3に示すように、軸中心Oから放射方向に延びる基準軸OXと、前記軸中心Oから半径r1およびr2が異なる第1の円弧部C1と第2の円弧部C2と前記第1、第2の円弧部C1、C2より所定間隔離れて外側に位置し、前記軸中心Oからの半径r3およびr4が異なる第3の円弧部C3と第4の円弧部C4と、前記基準軸OXを対称として所定の角度をもって放射方向に延びる第1および第2の放射軸OR1およびOR2とを仮想したとき、
前記基準軸OXと前記第1および第2の放射軸OR1およびOR2と、前記第1の円弧部C1と前記第2の円弧部C2とで囲まれる扇形状の第1および第2の領域内にそれぞれ形成され放射方向に受感部を有する第1および第2のゲージグリッド部G1およびG2と、
前記基準軸OXと前記第1および第2の放射軸OR1およびOR2と、前記第3の円弧部C3と前記第4の円弧部C4とで囲まれる扇形状の第3および第4の領域内にそれぞれ形成され放射方向に受感部を有する第3および第4のゲージグリッド部G3およびG4とが形成されている。
前記第2のゲージグリッド部G2の各端に接続された第2の一対の接続端子T2−1、T2−2と、
前記第3のゲージグリッド部G3の各端と接続された第3の一対の接続端子T3−1、T3−2と、
前記第4のゲージグリッド部G4の各端と接続された第4の一対の接続端子T4−1、T4−2とが、それぞれ接続されている。
そして、前記第1および第2のゲージグリッド部G1およびG2並びに前記第3および第4のゲージグリッド部G3およびG4と、前記第1および第2の接続端子T1−1、T1−2およびT2−1、T2−2並びに前記第3および第4の接続端子T3−1、T3−2およびT4−1、T4−2が一体的に絶縁基板BPに添着されてひずみゲージが完成する。
本発明の応力拡大係数測定用ひずみゲージは、その基本構成として、き裂先端部を中心にして90°に展開した扇型の領域内に、放射方向に展開された受感部を備える例を示している。この構成により、上記中心Oから放射方向に生ずるひずみを測定するものであるが、必ずしも90°に限定されるものではない。
図3は、本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態に係るより具体的な応力拡大係数測定用ひずみゲージのゲージグリッドを含む平面図である。応力拡大係数の測定時には、図4に示すように、使用者が、このひずみゲージを、その軸中心Oを、き裂先端部に合致させ、かつ基準軸OXがき裂の延長方向となるようにして貼り付ける。
第1〜第4のゲージグリッド部G1〜G4の各々を形成する抵抗素材には、任意の抵抗素材を充当することができる。例えば、Cu−Ni(系)合金、Ni−Cr(系)合金、Fe−Cr(系)合金などを、用途に合わせて用いることができる。
本発明の第2の実施の形態に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージのゲージグリッドの配置は、図1に示す本発明の第1の実施の形態に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージのゲージグリッドの配置に部分的な追加配置を加えたものである。具体的には、本発明の第2の実施の形態に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージのゲージグリッドの配置は、図2に示す第1の実施の形態に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージのゲージグリッドの配置に加えて、軸中心Oを中心として、それぞれ半径がr3とr4と異なる第3の円弧部C3と第4の円弧部C4と、第1の放射軸OR1と第2の放射軸OR2とで囲まれた扇型の領域、即ち、第3のゲージグリッド部G3と第4のゲージグリッド部G4を有する。
図3では、第1〜第4のゲージグリッド部G1〜G4の受感部の構造として軸中心から放射方向に延び、順次、円弧部C1、C2およびC3、C4近傍にて複数の折り返し点を有する受感素子を配置しているが、本発明の受感部の構造は、一般に、上記き裂先端部を中心として放射方向に生ずるひずみを受感できさえすれば良く、従って、図3に示すものとは限らない。上記の第1〜第4のゲージグリッド部G1〜G4の構成は、き裂先端前部領域のひずみ全体を網羅することができる。
本発明の第3の実施の形態に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージのゲージグリッドの配置は、上記の基準軸OXと上記の第1の放射軸OR1とがなす角度を90°にすると共に、上記の基準軸OXと上記の第2の放射軸OR2とがなす角度をも90°にしたものである。
図5は、本発明に係る応力拡大係数算出方法を用いて各ゲージグリッドを単位としてひずみ測定を行う場合の回路図を示し、図5(a)〜図5(d)は、第1のゲージグリッド部G1〜第4のゲージグリッド部G4で検出されるひずみをそれぞれ測定する場合の回路図を示すものである。
第1〜第4のゲージグリッド部G1〜G4は、それぞれ本発明に係る応力拡大係数算出方法で用いるホイートストンブリッジの一辺に挿入接続される。このホイートストンブリッジの他の三辺には、同一抵抗値の抵抗器Rが挿入接続される。より具体的には、図5(a)に示す回路では、一方の第1の接続端子T1−1と他方の第1の接続端子T1−2との間に接続された第1のゲージグリッド部G1が上記ホイートストンブリッジの一辺を構成する。同様に、図5(b)に示す回路では、一方の第2の接続端子T2−1と他方の第2の接続端子T2−2との間に接続された第2のゲージグリッド部G2が、図5(c)に示す回路では、一方の第3の接続端子T3−1と他方の第3の接続端子T3−2との間に接続された第3のゲージグリッド部G3が、図5(d)に示す回路では、一方の第4の接続端子T4−1と他方の第4の接続端子T4−2との間に接続された第4のゲージグリッド部G4が、それぞれ上記ホイートストンブリッジの一辺を構成する。
図5(a)および図5(b)で示す2つの回路を用いて、ひずみεG1、εG2を算出し、せん断モードの材料定数をJ1とし、ゲージグリッド部G1、G2の形状定数をQ1として、求める応力拡大係数KIIを、条件式(1)により算出する(請求項5に対応する)。
この第5の実施の形態に係る応力拡大係数算出方法では、ひずみゲージを一辺に回路挿入し、他の三辺に固定抵抗Rを回路挿入して4つのホイートストンブリッジ回路を形成する。
前記ホイートストンブリッジ回路の各入力端にブリッジ電圧eiを印加したとき、各出力端から出力される電圧eoG1〜eoG4をひずみ測定器で測定したときの前記第1のゲージグリッド部G1で測定されたひずみをεG1、前記第2のゲージグリッド部G2で測定されたひずみをεG2、前記第3のゲージグリッド部G3で測定されたひずみをεG3、前記第4のゲージグリッド部G4で測定されたひずみをεG4とする。せん断モードの材料定数をJ1、前記第1および第2のゲージグリッド部G1およびG2の第1の形状定数をQ1、前記第3および第4のゲージグリッド部G3およびG4の第2の形状定数をQ2として、せん断モードの応力拡大係数KIIが、
下記の条件式(4):
前記第1および第2の円弧部の半径C1およびC2をr1およびr2として、
下記条件式(3)で与えられる定数であり、
この実施の形態に係る応力拡大係数算出方法は、上記の第1〜第4のゲージグリッド部G1〜G4を用いて、開口モードにおける応力拡大係数を具体的に求める算出方法である。
本発明の第6の実施の形態に係る応力拡大係数算出方法は、図5(a)〜図5(d)で示す4つの回路を用いる。
この場合のひずみ測定方法は、まず、本発明の第4の実施形態に係るせん断モードにおける応力拡大係数算出方法で用いたひずみ測定方法と同様のひずみ測定方法により、図5(a)〜図5(d)で示す4つの回路を用いて、第1〜第4のひずみεG1〜εG4を算出する。開口モードの材料定数をF1とし、第1〜第4のゲージグリッド部G1〜G4の第1の形状定数をQ1および第2の形状定数をQ2として、求める開口モードの応力拡大係数KIを、条件式(6)により算出する。
き裂の負荷モードとして開口型モードIタイプの試験片を製作して使用した。
予め、幅αmmの模擬き裂を試験片の中央部に形成(中央き裂平板試験片)した試験片を製作した。製作した試験片の各部寸法は板幅(W)に対してW(板幅):L(板長さ):a(き裂長さ):α(き裂幅)=1:3.75:0.3:0.00167とした。本発明の応力拡大係数測定用ひずみゲージを、き裂先端部に添着し、負荷実験を行いひずみ測定を行った。図7は負荷実験より得られたひずみ値から算出した応力拡大係数KIと理論値の比較結果を示すグラフである。
ここで、開口モードIにおけるKIとは、図6の試験片P1において、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)の出力eoG1、eoG2、eoG3、eoG4を用いて算出した場合(即ち、+90°〜−90°の範囲)である。負荷実験に用いた応力拡大係数測定用ひずみゲージの第1の円弧部C1の半径r1、第2の円弧部C2の半径r2、第3の円弧部C3の半径r3、そして第4の円弧部C4の半径r4の寸法はW:r1:r2:r3:r4=80:1:1.67:2.33:3とした。
図7にて分かるように、開口モードI、負荷状態における中央き裂の応力拡大係数KIは、理論値に対して±10%以内の値を示し、本発明の応力拡大係数測定用ひずみゲージが良好な精度を有していることが検証できた。
上記と同様に、混合モードの中央斜き裂平板試験片P2についても負荷実験を行った。その際、き裂角度は試験片軸方向から45°とし試験片を製作した。製作した試験片の各部寸法は板幅(W)に対してW(板幅):L(板長さ):a(き裂長さ):α(き裂幅)=1:3.75:0.3:0.00167とした。本発明の応力拡大係数測定用ひずみゲージを、き裂先端部に添着し、負荷実験を行いひずみ測定を行った。図9は負荷実験より得られたひずみ値から算出した応力拡大係数KIと理論値の比較結果を示すグラフである。図10は負荷実験より得られたひずみ値から算出した応力拡大係数KIIと理論値の比較結果を示すグラフである。
ここで、算出した応力拡大係数KI、KIIとは、図8の試験片P2において、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)の出力eoG1、eoG2、eoG3、eoG4を用いて算出した場合(即ち、+90°〜−90°の範囲)である。負荷実験に用いた応力拡大係数測定用ひずみゲージの第1の円弧部C1の半径r1、第2の円弧部C2の半径r2、第3の円弧部C3の半径r3、そして第4の円弧部C4の半径r4の寸法はW:r1:r2:r3:r4=80:1:1.67:2.33:3とした。
図9、10にて分かるように、混合モードの中央斜き裂平板試験片P2における応力拡大係数はKI、KIIともに理論値に対して±10%以内の値を示し、良好な精度を有していることが検証できた。
上記と同様に、混合モードの片側縁斜き裂平板試験片P3についても負荷実験を行った。その際、き裂角度は試験片軸方向から45°とし試験片を製作した。製作した試験片の各部寸法は板幅(W)に対してW(板幅):L(板長さ):a(き裂長さ):α(き裂幅)=1:3.75:0.3:0.00167とした。本発明の応力拡大係数測定用ひずみゲージを、き裂先端部に添着し、負荷実験を行いひずみ測定を行った。図12は負荷実験より得られたひずみ値から算出した応力拡大係数KIと理論値の比較結果を示すグラフである。図13は負荷実験より得られたひずみ値から算出した応力拡大係数KIIと理論値の比較結果を示すグラフである。
ここで、算出した応力拡大係数KI、KIIとは、図11の試験片P3において、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)の出力eoG1、eoG2、eoG3、eoG4を用いて算出した場合(即ち、+90°〜−90°の範囲)である。負荷実験に用いた応力拡大係数測定用ひずみゲージの第1の円弧部C1の半径r1、第2の円弧部C2の半径r2、第3の円弧部C3の半径r3、そして第4の円弧部C4の半径r4の寸法はW:r1:r2:r3:r4=80:1:1.67:2.33:3とした。
図12、13にて分かるように、混合モードの片側縁斜き裂平板試験片P3における応力拡大係数はKI、KIIともに理論値に対して概ね±10%の値を示した。
以下では、上記の各実施の形態に係るホイートストンブリッジ回路を用いたひずみ測定方法の原理を説明する。
図14は、一般的なホイーストンブリッジ回路を示す回路図である。
一般に、ひずみゲージによるひずみの測定には、図14に示すようなホイーストンブリッジ回路を使用する。図14に示すホイーストンブリッジ回路では、ホイーストンブリッジ回路の一辺を占める抵抗の1つを抵抗値Rgのひずみゲージに置き換え、他の三辺を占める3つの抵抗の各々を抵抗値Rの固定抵抗とする。
ひずみゲージがひずみεを受けたときの抵抗値変化ΔRgとひずみεとの関係は数式(8)で表される。
但し、図14と上記数式において、
Rg:ひずみゲージの抵抗値、
ΔRg:ひずみゲージの抵抗値変化量、
Ks:ひずみゲージのゲージ率、
ε:ひずみゲージの受けるひずみ、
ei(E):ホイートストンブリッジ回路の印可電圧、eo:出力電圧、
R:固定抵抗の抵抗値、とする。
以下では、上記の各実施形態に係るホイートストンブリッジ回路を用いた応力拡大係数の計算方法を説明する。
ひずみゲージグリッドG1〜G4で測定されたひずみεG1〜εG4を数式(6)、数式(1)に代入することで2種類の応力拡大係数を求める。
開口モードIの応力拡大係数をKI
とすると、下記(6)式:
εG1:第1のゲージグリッド部G1で測定されたひずみ、
εG2:第2のゲージグリッド部G2で測定されたひずみ、
εG3:第3のゲージグリッド部G3で測定されたひずみ、
εG4:第4のゲージグリッド部G4で測定されたひずみ、
のうち、εG1とεG2の2つ、または、εG1、εG2、εG3およびεG4の4つとする。
また、測定対象の材料で決まる定数には、
F1:開口モードの材料定数、
J1:せん断モードの材料定数、
が有る。
Q1:ひずみゲージグリッドの形状定数1(式3)、
Q2:ひずみゲージグリッドの形状定数2(式5)、
が有る。
開口モードの材料定数F1は、縦弾性係数をEとし、ポアソン比をνとして、式(7)で算出する。
図15は、き裂先端から展開するxy直行座標系を示す説明図である。
本発明のひずみゲージでは、開口モードIとせん断モードIIの2つのモードを考える。
それぞれのモードを受ける材料のき裂先端周辺のひずみ分布式は、図15に示すように、xyの直行座標系において、一般にき裂先端からの距離rの級数展開式として与えられている。応力拡大係数は、ひずみ分布式の係数として現れる。
図16は、き裂先端から展開するrθ極座標系を示す説明図である。
本発明のひずみゲージでは、従前のゲージとは異なり、き裂先端を中心とした放射方向のひずみを測定するため、図16に示すようにひずみ分布式の極座標変換を行う。
図17は、本発明に係る応力拡大係数測定用ひずみゲージを用いてひずみ測定を行う場合の説明図である。
極座標変換を行ったひずみ分布の2項目までと、図17に示す本発明に係るひずみゲージの形状とから、それぞれのモードでゲージグリッドが測定するひずみεG1〜εG4の算式は、開口モードIでは数式(10)〜数式(13)、せん断モードIIでは数式(14)〜(17)となる。
また、Q1とQ2は、ひずみゲージグリッドの形状によって決まる値であり、上述のとおり、Q1をひずみゲージグリッドの形状定数1、Q2をひずみゲージグリッドの形状定数2と呼称する。
F2、B0は、以下の導出で最終的に消去するため、詳細説明は省略する。
(開口モードIとせん断モードIIとの重ね合わせ)
一般に、き裂は、開口モードIとせん断モードIIとが合わさった混合モードとしてのひずみを受けると考えられるため、以下では、ひずみεG1〜εG4について、開口モードIとせん断モードIIとの重ね合わせを行う場合を説明する。
この場合は、数式(19)〜(22)が得られる。
εG2=F1KIQ1+F2B0−J1KIIQ1 (20)
εG3=F1KIQ2+F2B0+J1KIIQ2 (21)
εG4=F1KIQ2+F2B0−J1KIIQ2 (22)
開口モードIの応力拡大係数KIは、数式演算で示すと、数式(19)+数式(20)から、数式(21)+数式(22)を引き算し、その結果をKIについて整理することで数式(6)のように得られる。
OR2 第2の放射軸
OX 基準軸
O 軸中心
C1 第1の円弧部
C2 第2の円弧部
C3 第3の円弧部
C4 第4の円弧部
G1〜G4 第1〜第4のゲージブリッド部
S1〜S4 第1〜第4のひずみゲージ
r1〜r4 軸中心Oからの半径
T1−1、T1−2 第1の接続端子
T2−1、T2−2 第2の接続端子
T3−1、T3−2 第3の接続端子
T4−1、T4−2 第4の接続端子
R 固定抵抗
P1〜P3 第1〜第3の試験片
Claims (7)
- 軸中心から放射方向に延びる基準軸と、前記軸中心からの半径が異なる第1の円弧部と第2の円弧部と、前記基準軸を対称として所定の角度をもって放射方向に延びる第1および第2の放射軸とを仮想したとき、
前記基準軸と前記第1および第2の放射軸と前記第1の円弧部と前記第2の円弧部とで囲まれる扇形状の第1および第2の領域内に形成され放射方向に受感部を有する第1および第2のゲージグリッド部と、
前記第1のゲージグリッド部の各端に接続された第1の一対の接続端子と、
前記第2のゲージグリッド部の各端に接続された第2の一対の接続端子と、
前記第1および第2のゲージグリッド部と前記第1および第2の接続端子が一体的に添着されてなる絶縁基板とからなる第1および第2のひずみゲージであって、
被測定対象物に生じた亀裂先端部に前記軸中心を合致させると共に前記亀裂部の方向と前記基準軸とを合致させて前記絶縁基板を前記被測定対象物に添着し、前記亀裂回りのひずみを測定し、応力拡大係数を算出し得るように構成したことを特徴とする応力拡大係数測定用ひずみゲージ。 - 軸中心から放射方向に延びる基準軸と、前記軸中心から半径が異なる第1の円弧部と第2の円弧部と前記第1、第2の円弧部より所定間隔離れて外側に位置し、前記軸中心からの半径が異なる第3の円弧部と第4の円弧部と、前記基準軸を対称として所定の角度をもって放射方向に延びる第1および第2の放射軸とを仮想したとき、
前記基準軸と前記第1および第2の放射軸と、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部とで囲まれる扇形状の第1および第2の領域内にそれぞれ形成され放射方向に受感部を有する第1および第2のゲージグリッド部と、
前記基準軸と前記第1および第2の放射軸と、前記第3の円弧部と前記第4の円弧部とで囲まれる扇形状の第3および第4の領域内にそれぞれ形成され放射方向に受感部を有する第3および第4のゲージグリッド部と、
前記第1のゲージグリッド部の各端に接続された第1の一対の接続端子と、
前記第2のゲージグリッド部の各端に接続された第2の一対の接続端子と、
前記第3のゲージグリッド部の各端と接続された第3の一対の接続端子と、
前記第4のゲージグリッド部の各端と接続された第4の一対の接続端子と、
前記第1および第2のゲージグリッド部並びに前記第3および第4のゲージグリッド部と、前記第1および第2の接続端子並びに前記第3および第4の接続端子が一体的に添着されてなる絶縁基板とからなるひずみゲージであって、
被測定対象物に生じた亀裂先端部に前記軸中心を合致させると共に前記亀裂部の方向と前記基準軸とを合致させて前記絶縁基板を前記被測定対象物に添着し、前記亀裂回りのひずみを測定し、応力拡大係数を算出し得るように構成したことを特徴とする応力拡大係数測定用ひずみゲージ。 - 前記基準軸と前記第1の放射軸および前記基準軸と前記第2の放射軸とがなす角度を、それぞれ90°となしたことを特徴とする請求項1または2に記載の応力拡大係数測定用ひずみゲージ。
- 前記請求項1の応力拡大係数測定用ひずみゲージの前記第1および第2のひずみゲージを、それぞれ一辺に回路挿入し、他の三辺に固定抵抗を回路挿入して2つのホイートストンブリッジ回路を形成し、前記2つのホイートストンブリッジ回路の入力端にブリッジ電圧を印加し、それぞれの出力端に生ずる出力電圧をひずみ測定器で測定した前記第1および第2のひずみゲージのひずみ値を、所定の演算式に代入することでせん断モードにおける応力拡大係数を測定し得るように構成したことを特徴とする応力拡大係数算出方法。
- 前記請求項3に記載のひずみゲージを一辺に回路挿入し、他の三辺に固定抵抗を回路挿入して2つのホイートストンブリッジ回路を形成し、
前記ホイートストンブリッジ回路の各入力端にブリッジ電圧を印加したとき、各出力端から出力される電圧をひずみ測定器で測定したときの前記第1のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG1、前記第2のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG2、せん断モードの材料定数をJ1、前記第1および第2のゲージグリッドの第1の形状定数をQ1として、せん断モードの応力拡大係数KIIが、
下記の条件式(1):
但し、前記せん断モードの材料定数J1は、縦弾性係数をE、ポアッソン比をνとして、下記条件式(2)で与えられる定数であり、
前記第1および第2の円弧部の半径をr1およびr2として、
下記条件式(3)で与えられる定数である。
- 前記請求項3に記載のひずみゲージを一辺に回路挿入し、他の三辺に固定抵抗を回路挿入して4つのホイートストンブリッジ回路を形成し、
前記ホイートストンブリッジ回路の各入力端にブリッジ電圧を印加したとき、各出力端から出力される電圧をひずみ測定器で測定したときの前記第1のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG1、前記第2のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG2、前記第3のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG3、前記第4のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG4、せん断モードの材料定数をJ1、前記第1および第2のゲージグリッドの第1の形状定数をQ1、前記第3および第4のゲージグリッド部の第2の形状定数をQ2として、せん断モードの応力拡大係数KIIが、
下記の条件式(4):
但し、前記せん断モードの材料定数J1は、縦弾性係数をE、ポアッソン比をνとして、下記条件式(2)で与えられる定数であり、
前記第1および第2の円弧部の半径をr1およびr2として、
下記条件式(3)で与えられる定数であり、
- 前記請求項3に記載のひずみゲージを一辺に回路挿入し、他の三辺に固定抵抗を回路挿入して4組のホイートストンブリッジを形成し、
各前記ホイートストンブリッジの入力端にブリッジ電圧を印加したとき、出力端から出力される電圧をひずみ測定器で測定したときの前記第1〜前記第4のゲージグリッド部で測定されたひずみをεG1〜εG4、開口モードの材料定数をF1、前記ゲージグリッドの第1および第2の形状定数をQ1およびQ2として、開口モードの応力拡大係数KIが、
下記の条件式(6):
但し、前記開口モードの材料定数F1は、縦弾性係数をE、ポアッソン比をνとして、下記条件式(7)で与えられる定数であり、
前記第1および第2の円弧部の半径をr1およびr2として、
前記条件式(3)で与えられる定数であり、
前記第3および第4の円弧部の半径をr3およびr4として、前記条件式(5)で与えられる定数である。
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