しかしながら、特許文献1に記載された貯留装置では、貯留槽に貯留されたし渣にアーチングが生じると、排出口の開口面積に応じてし渣が短時間で排出されない場合がある。アーチングとは、ブリッジとも称されるものであり、貯留されたし渣に圧縮力がかかることで、貯留槽の対向する、壁と壁との間において架け渡された状態をいう。貯留されたし渣にアーチングが生じると、ベルトゲートを移動させて排出口を形成しても、し渣が自重によって排出口に落下しない場合や、落下するまでに時間がかかってしまう場合がある。一方、ベルトゲートをさらに移動させて排出口の開口面積を拡大させると、今度はアーチングが広範囲に崩れて貯留されたし渣が一度に排出され、トラックの積載量を越えてしまう場合がある。これらのため、特許文献1記載の貯留装置では、し渣の排出量を調整しつつ、し渣を速やかに排出することが難しいといった問題がある。なお、この問題は、ベルトゲートを備えた貯留装置に特有のものではなく、スライドゲートやカットゲートを備えた貯留装置にも当てはまる。
本発明は上記事情に鑑み、し渣の排出量を調整しつつ、し渣を速やかに排出する工夫がなされた貯留装置を提供することを目的とする。
上記目的を解決する本発明の貯留装置は、し渣を受け入れて貯留し、貯留した該し渣を排出口から下方に排出する貯留装置において、
底側に下向きの開口を有し前記し渣を貯留する貯留槽と、
前記開口を閉鎖することで前記し渣の前記貯留槽からの排出を阻止する閉鎖状態と、該開口を開放することで前記排出口を形成し該排出口から該し渣の排出を許容する開放状態との間で動作するゲートと、
前記排出口が形成され始める領域の上方に配置され、前記ゲートが前記開放状態において前記貯留槽に貯留された前記し渣に流体を吐出する吐出部と、
前記ゲートが前記閉鎖状態において、前記貯留槽に貯留された前記し渣に、前記排出口の開口面積が拡大する方向とは反対方向に向けて流体を吐出する第2吐出部とを備えたことを特徴とする。
また、し渣を受け入れて貯留し、貯留した該し渣を排出口から下方に排出する貯留装置において、
底側に下向きの開口を有し前記し渣を貯留する貯留槽と、
前記開口を閉鎖することで前記し渣の前記貯留槽からの排出を阻止する閉鎖状態と、該開口を開放することで前記排出口を形成し該排出口から該し渣の排出を許容する開放状態との間で動作するゲートと、
前記ゲートが前記開放状態において前記貯留槽に貯留された前記し渣に流体を吐出する吐出部とを備え、
前記吐出部は、前記排出口が形成され始める領域の上方に配置されたものであってもよい。
ここで、前記ゲート部材は、スライド移動することによって前記排出口を形成する、ベルトゲートやスライドゲートであってもよいし、観音開き式のカットゲートであってもよい。また、前記流体は、圧縮空気等の気体であってもよいし、水等の液体であってもよい。
上記貯留装置によれば、前記ゲートが前記開放状態において、前記排出口が形成され始める領域の上方に配置された前記吐出部から、前記貯留槽に貯留された前記し渣に流体を吐出させることができる。これによって、前記貯留槽に貯留された前記し渣にアーチングが生じていても、アーチングが生じた部分のうち、前記排出口が形成され始める領域の上方の部分を崩すことができる。この結果、例えば、前記排出口が形成され始めた状態で前記吐出部から流体を吐出することで、該排出口が形成され始めた状態から該排出口の開口面積に応じた量のし渣を速やかに排出することができる。また、前記排出口の開口面積が大きくなったときには既にし渣が排出されているため、アーチングが一気に崩れ一度に大量のし渣が排出されることも防ぐことができる。これらによって、し渣の排出量を調整しつつ、し渣を速やかに排出することができる。
また、前記吐出部は、前記排出口が形成され始める領域に対して該排出口の開口面積が拡大する方向に隣接する領域の上方にも配置された態様であってもよい。
ここで、前記排出口は、開口面積が一方向に拡大してもよいし、複数方向に拡大してもよい。
上記態様とすることで、前記排出口の開口面積が拡大した領域の上方のし渣に流体を吐出し、該排出口の開口面積が拡大する方向に徐々にアーチングを崩すことによって、し渣の排出量の調整を細かく行うことができる。
さらに、前記貯留槽は、下端側部分に、略垂直な壁で囲まれた下端囲繞部を有するものであり、
前記吐出部は、前記下端囲繞部よりも上方に位置するものであってもよい。
し渣のアーチングは、略垂直な壁で囲まれた前記下端囲繞部には生じにくく、該下端囲繞部よりも上方に生じやすい。このため、前記吐出部が、前記下端囲繞部よりも上方に位置する態様とすれば、前記吐出部から、アーチングが生じる部分に流体を吐出させやすくなる。なお、ここでいう略垂直な壁には、完全に垂直な壁も含む。
また、前記貯留槽は、前記下端囲繞部から上方に向けて略垂直に延在する垂直壁と、該下端囲繞部から上方に向けて拡がる方向に延在する傾斜壁とを有し、
前記ゲートは、前記垂直壁から離れる方向に移動し、該垂直壁から離れる方向に前記排出口の開口面積を拡大させるものであってもよい。
前記貯留槽は、前記傾斜壁を有することで、し渣の貯留量をかせぐことができる。また、前記垂直壁にはアーチングが生じにくく、前記ゲートは、該垂直壁から離れる方向に移動し、該垂直壁から離れる方向に前記排出口の開口面積を拡大させる態様を採用することで、該排出口が形成され始める領域の上方にアーチングが生じにくくなり、また、アーチングが生じたとしてもそのアーチングが崩れやすくなる。このため、前記排出口が形成され始める状態から該排出口の開口面積に応じてし渣を速やかに排出することができる。なお、ここでいう略垂直に延在するとは、完全に垂直に延在する状態も含む。
さらに、前記ゲートが前記閉鎖状態において、前記貯留槽に貯留された前記し渣に、前記排出口の開口面積が拡大する方向とは反対方向に向けて流体を吐出する第2吐出部を備えたものであってもよい。
前記貯留装置におけるし渣の排出において、前記開口全体を開放する前に該開口を閉鎖することが繰り返されると、該排出口の開口面積が拡大する方向側の端部領域にし渣が長期間残存してしまう場合がある。この場合であっても、前記第2吐出部によって、前記排出口の開口面積が拡大する方向とは反対方向に向けて流体を吐出させることで、残存してしまったし渣を該反対方向に送ることができる。これにより、例えば、前記ゲートが前記閉鎖状態において前記第2吐出部から流体を吐出させることで、次の排出工程において、形成され始めた前記排出口から残存したし渣を排出することができる。また、前記排出口が形成され始めてから、前記第2吐出部によって流体を吐出させることで、形成され始めた排出口から残存したし渣を排出することができる。これらによって、前記貯留槽に長期間残存してしまうし渣を少なくすることができる。
本発明によれば、し渣の排出量を調整しつつ、し渣を速やかに排出する工夫がなされた貯留装置を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、下水処理場の中の一部の施設を模式的に示す図である。
この図1には、沈砂池1と、貯留装置2と、ベルトコンベア3と、し渣排出機4が示されている。沈砂池1は、下水処理場の上流側に配置されたものであり、ベルトコンベア3およびし渣排出機4は、沈砂池1と貯留装置2との間に配置されたものである。図1に示す沈砂池1は、長手方向の一端側(図1では左側)から、下水または雨水などの汚水を受け入れ、汚水に含まれる砂を汚水から取り除くものである。図1では、沈砂池1の左側が上流側になり、右側が下流側になる。沈砂池1は、下流側の端部から記載順に設けられた、ポンプ井11と、トラフ12と、集砂ピット13と、除塵機14を備えている。沈砂池1では、受け入れた汚水に含まれる砂をトラフ12に沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピット13に移動させる。集砂ピット13に集められた砂は、不図示の揚砂ポンプによって沈砂池1の外部に送られる。砂が取り除かれた汚水は、ポンプ井11に貯留され、不図示の揚水ポンプによって沈殿池等に送られる。除塵機14は、沈砂池1に流れ込んできた汚水に混入しているし渣を除去するためのものである。沈砂池1に流れ込んできた汚水が除塵機14を通過する際、混入しているし渣は、除塵機14に遮られる。除塵機14によって遮られたし渣は、ベルトコンベア3によってし渣排出機4に搬送され、し渣排出機4から貯留装置2に投入される。貯留装置2にし渣が溜まってくると、貯留装置2からトラックTの荷台にし渣が排出される。貯留装置2から排出されたし渣はトラックTによって下水処理場の外に搬送され、焼却等の処理がなされる。
図2は、本発明の一実施形態に相当する貯留装置を示す正面図である。同図(a)では、後述する、ベルトゲートが閉鎖状態である様子を示し、同図(b)では、後述する、ベルトゲートが開放状態である様子を示している。また、図3は、図2(a)に示す貯留装置のA−A断面図であり、図4は、図2(a)に示す貯留装置の左側面図である。
図2(a)に示すように、貯留装置2は、貯留槽21と、ベルトゲート22を有している。貯留槽21は、上端部分が開放されることで投入口21aが形成されている。この投入口21aに、図1に示す、し渣排出機4からし渣が投入され、貯留槽21にし渣が貯留される。図2(a)、図3および図4では、標準的な量のし渣が貯留されている様子を一点鎖線で示している。また、図2(b)に示すように、貯留槽21は、底側に下向きの開口21bを有している。
図2(a)に示すように、ベルトゲート22は、図の左側から右側に向けて、例えば3°程度上側に傾斜した姿勢で、貯留槽21の下端部分に配置されている。図2(a)は、ベルトゲート22が、貯留槽21の開口を閉鎖した状態を示している。この状態では、貯留されたし渣の貯留槽21からの排出が阻止される。以下、図2(a)に示す、貯留槽21の開口を閉鎖したベルトゲート22の状態を、閉鎖状態と称することがある。ベルトゲート22は、紙面と直交する方向に延在した複数のローラ221と、これら複数のローラ221に巻き掛けられたベルト222を有している。複数のローラ221のうち、図における左右両端に配置されたローラ221が駆動用のローラであり、これら駆動用のローラ221を駆動させることによって、ベルトゲート22は、閉鎖状態の位置から、図の矢印で示すように右側に移動する。以下、ベルトゲート22が、閉鎖状態の位置から移動する方向を開放方向と称することがある。なお、本実施形態では公知のベルトゲートを採用しているため、詳細な説明は省略し、説明に用いる図面においても、ベルトゲート22を簡略化して示し駆動装置やフレーム等は省略している。
図2(b)は、ベルトゲート22が、同図(a)に示す閉鎖状態の位置から開放方向に移動し、開口21bが全て開放された状態を実線で示し、開口21bが開放され始めた状態を一点鎖線で示している。なお、図2(b)では、同図(a)で一点鎖線で示すし渣が全て排出された様子を示している。以下、開口21bが全て開放されたベルトゲート22の状態を全開状態と称することがあり、開口21bの一部が開放されたベルトゲート22の状態を一部開放状態と称することがある。また、一部開放状態のうち、図2(b)に一点鎖線で示す、開口21bが開放され始めたベルトゲート22の状態を、特に開放開始状態と称することがある。
ベルトゲート22が開放開始状態では、開口21bの開放された領域に排出口V1が形成される。以下、開放開始状態における排出口V1が形成される領域を、排出口始端領域と称することがある。また、ベルトゲート22が、図2(b)に実線で示す全開状態では、開口21bと同じ領域に排出口V3が形成される。このように、ベルトゲート22の移動量によって排出口の開口面積が変動し、ベルトゲート22の移動量によって排出口の開口面積を調整することができる。すなわち、ベルトゲート22は、排出口の開口面積を、全開状態と閉鎖状態との間で変化させるものである。全開状態および一部開放状態では、貯留槽21に貯留されたし渣の貯留槽21からの排出が許容される。ベルトゲート22の、全開状態および一部開放状態を併せて、以下、開放状態と称することがある。ベルトゲート22は、開放状態において排出口からし渣を排出した後、図2(b)の矢印で示すように、開放状態の位置から左方向に移動して閉鎖状態になる。以下、ベルトゲート22が、開放状態の位置から左方向に移動する方向を閉鎖方向と称することがあり、開放方向と閉鎖方向を併せて開閉方向と称することがある。ベルトゲート22は、閉鎖状態と開放状態との間で動作するものであり、本発明におけるゲートの一例に相当する。また、図2(a)および同図(b)において、貯留装置2の右側を開放方向側と称することがあり、貯留装置2の左側を閉鎖方向側と称することがある。なお、本実施形態では、開口21bの開閉方向の長さは、2150mm程度に設定されており、ベルトゲート22が全開状態では、開閉方向の長さが2150mm程度の排出口V3が形成される。また、排出口始端領域の開閉方向の長さは500mm程度に設定されており、ベルトゲート22が開放開始状態では、開閉方向の長さが500mm程度の排出口V1が形成される。
図2〜図4に示すように、貯留槽21は、下端囲繞部211と、貯留部212と、投入部213を有している。図2および図4に示すように、下端囲繞部211は、貯留槽21の下端側部分に設けられたものであり、略垂直な4つの壁によって囲まれている。なお、ここでいう略垂直とは、完全な垂直も含む。下端囲繞部211は、その下端部分に開口21bを有し、ベルトゲート22が接続される部分である。
貯留部212は、閉鎖方向側と開放方向側にそれぞれ配置された垂直壁2121と、開閉方向と水平方向に直交する方向の両側にそれぞれ配置された傾斜壁2122を有している。以下、開閉方向と水平方向に直交する方向を開閉直交方向と称することがある。垂直壁2121は、下端囲繞部211から上方に向けて略垂直に延在したものである。なお、ここでいう略垂直も、完全な垂直を含む意味で用いている。また、傾斜壁2122は、下端囲繞部211から上方に向けて拡がる方向、すなわち外側に延在したものである。ここで、ベルトゲート22は、構造や費用等の面から大型化することが難しいため、貯留槽21の開口21bの開口面積を拡大することには制約が生じてしまう。また、下端囲繞部211は、ベルトゲート22に接続する部分であるため、接続の構造上、壁を略垂直にする必要がある。これらのため、下端囲繞部211における、し渣を貯留する空間を拡大することは難しい。本実施形態の貯留部212は、傾斜壁2122を有するものであるため、全て垂直壁で構成される態様と比べてし渣が貯留される空間が拡大し、し渣の貯留量をかせぐことができる。いいかえると、傾斜壁2122は、下端囲繞部211から上方に向けて、し渣が貯留される空間が拡大する方向に傾斜して延在したものである。
また、貯留部212は、傾斜壁2122によって、し渣が貯留される空間が下方に向うに従い縮小する。このため、図2(a)および図4においてクロスハッチングで示すように、貯留部212の下端側部分に貯留されたし渣に強い圧縮力がかかりアーチングが生じやすい。本実施形態では、閉鎖方向側に垂直壁2121を配置することで、排出口始端領域の上方には、アーチングが生じにくく、またアーチングが生じたとしても崩れやすくする工夫がなされている。なお、下端囲繞部211に貯留されたし渣にも強い圧縮力がかかるが、下端囲繞部211は略垂直な壁で囲まれているためアーチングが生じにくく、ベルトゲート22を開放状態にすれば排出口から排出されやすい。
図2および図4に示すように、投入部213は、その上端部分に投入口21aを有し、閉鎖方向側に配置された壁が、貯留部212から上方に向けて拡がる方向、すなわち外側に延在し、その他の壁は、貯留部212から上方に向けて略垂直に延在している。閉鎖方向側に配置された壁が、貯留部212から上方に向けて拡がる方向に延在しているため、投入口21aの開口面積が拡大し、図1に示すし渣排出機4からし渣を投入し易くすることができる。また、投入部213にも、し渣が貯留される場合に、し渣の貯留量をかせぐこともできる。
図2〜図4に示すように、閉鎖方向側の垂直壁2121には、3つの第1フロント吐出装置23が設けられている。また、図2および図3に示すように、一対の傾斜壁2122それぞれには、第1サイド吐出装置24が1つ設けられている。さらに、開放方向側の垂直壁2121には、第2吐出装置25が1つ設けられている。なお、図4では、図面を簡略化するため、第1サイド吐出装置24は省略している。第1フロント吐出装置23、第1サイド吐出装置24および第2吐出装置25それぞれは、タンク231,241,251と、タンクに接続したノズル部材232,242,252を備えている。また、図2に示すように、それぞれのノズル部材232,242,252の先端には、吐出口232a,242a,252aが形成されている。以下、第1フロント吐出装置23の吐出口を第1フロント吐出口232aと称することがあり、第1サイド吐出装置24の吐出口を第1サイド吐出口242aと称することがあり、第2吐出装置25の吐出口を第2吐出口252aと称することがある。第1フロント吐出装置23のタンク231は、閉鎖方向側の垂直壁2121に取り付けられ、第1サイド吐出装置24のタンク241は、傾斜壁2122に取り付けられ、第2吐出装置25のタンク251は、開放方向側の垂直壁2121に取り付けられている。なお、これらのタンク231,241,251は、貯留装置2を設置する不図示の設備における壁面等に取り付けてもよい。また、これらのタンク231,241,251は、不図示の空気圧縮機に接続されるものであり、この空気圧縮機から圧縮空気がタンク231,241,251に供給される。タンク231,241,251に供給された圧縮空気は、例えば、0.7MPa程度の圧力で吐出口232a,242a,252aから吐出される。なお、吐出口232a,242a,252aから吐出される圧縮空気の圧力は、0.3MPa〜1.0MPaの範囲で調整することができる。また、吐出口232a,242a,252aから吐出された圧縮空気は、例えば、直径500mm程度の円で囲まれる領域に拡がる。図2(b)および図3では、ノズル部材232,242,252から圧縮空気が吐出された様子を網掛して模式的に示している。
第1フロント吐出装置23のノズル部材232は、閉鎖方向側の垂直壁2121を貫通し、第1フロント吐出口232aが下向きに配置されている。また、第1サイド吐出装置24のノズル部材242は、傾斜壁2122を貫通し、第1サイド吐出口242aが下向きに配置されている。なお、図2(a)および同図(b)では、第1サイド吐出装置24のノズル部材242を示すため、第1サイド吐出装置24のタンク241を省略している。さらに、第1フロント吐出口232aおよび第1サイド吐出口242aは、貯留部212の下端部よりもやや上方の位置に配置されている。このため、第1フロント吐出口232aおよび第1サイド吐出口242aは、図2(a)に一点鎖線で示す、標準的な貯留量のし渣に埋没した状態になる。また、第1フロント吐出口232aや第1サイド吐出口242aから圧縮空気を吐出することで、貯留されたし渣のうち、図2(a)でクロスハッチングで示す部分に生じたアーチングを効率的に崩すことができる。
さらに、図2(b)に示すように、第1フロント吐出口232aは、排出口始端領域(排出口V1)の上方に配置されている。このため、ベルトゲート22が、図2(b)に一点鎖線で示す開放開始状態において、貯留されたし渣にアーチングが生じている場合であっても、第1フロント吐出口232aから圧縮空気を吐出することで、排出口始端領域の上方にアーチングが生じた部分を崩し、排出口V1の開口面積に応じた量のし渣を速やかに排出することができる。なお、本実施形態では、貯留部212の開閉直交方向の寸法が1500mm程度に設定され、上述したように、吐出された圧縮空気が、直径500mm程度の円で囲まれる領域に拡がる第1フロント吐出装置23を採用している。また、本実施形態では、第1フロント吐出口232aは、閉鎖方向側の垂直壁2121から開放方向に250mm程度離れた位置に設けられている。これらのため、図3に示すように、第1フロント吐出装置23を、開閉直交方向に500mm程度の間隔をあけて3つ並べて設け、これらの第1フロント吐出口232aから圧縮空気を吐出させることで、排出口始端領域全域の上方に生じたアーチングを崩すことができる。第1フロント吐出口232aは、本発明における吐出部の一例に相当する。なお、第1フロント吐出口232aの個数や配置位置は、排出口始端領域の広さや吐出装置の能力等に応じて調整することができる。
図2および図3に示すように、第1サイド吐出装置24の第1サイド吐出口242aは、排出口始端領域よりも開放方向側に隣接する領域の上方に配置されている。すなわち、第1サイド吐出口242aは、排出口始端領域に対して、排出口の開口面積が拡大する方向に隣接する領域の上方に配置されたものである。なお、本実施形態では、第1サイド吐出口242aは、閉鎖方向側の垂直壁から開放方向に750mm程度離れた位置に設けられている。排出口始端領域よりも開放方向側に隣接する領域を、以下、隣接領域と称することがある。図2(b)では、隣接領域を開放したベルトゲート22にハッチングを入れて示している。隣接領域を開放したベルトゲート22の状態を、以下、隣接領域開放状態と称することがあり、隣接領域開放状態では、排出口V2が形成されている。本実施形態では、排出口始端領域から開放方向500mm程度の領域を隣接領域に設定し、ベルトゲート22を、開放開始状態の位置から開放方向に500mm程度開放方向に移動させた状態を隣接領域開放状態としている。ベルトゲート22を、開放開始状態の位置から開放方向に移動させ、ベルトゲート22を隣接領域開放状態にする。この隣接領域開放状態で、第1サイド吐出口242aから圧縮空気を吐出することで、隣接領域の上方に生じたアーチング部分を崩し、崩したし渣を速やかに排出口V2から排出できる。第1サイド吐出口242aは、本発明における吐出部の一例に相当する。なお、隣接領域における開閉直交方向の中央領域の上方に生じたアーチング部分は、図3に示すように、第1サイド吐出口242aから圧縮空気を吐出して隣接領域の上方における開閉直交方向の両側に生じたアーチング部分を崩すことで一緒に崩すことができる。このため、隣接領域における開閉直交方向の中央領域には、第1サイド吐出口242aが配置されていない。また、隣接領域よりもさらに開放方向側に隣接する領域の上方に、第1サイド吐出口242aを配置してもよい。
図2および図3に示すように、第2吐出装置25のノズル部材252は、タンク251から2つに分岐し、それぞれの第2吐出口252aが、開放方向側の垂直壁2121に形成された不図示の吐出孔に接続されている。吐出孔は、第1フロント吐出口232aや第1サイド吐出口242aよりもやや下方に位置している。第2吐出口252aからは、貯留部212の開放方向側に貯留したし渣に対し、閉鎖方向に向けて圧縮空気が吐出される。すなわち、第2吐出口252aは、排出口の開口面積が拡大する方向とは反対方向に向けて流体を吐出するものであり、本発明における第2吐出部の一例に相当する。なお、本実施形態では、第2吐出口252aから、やや下方向に向けて圧縮空気を吐出する態様を採用しているが、第2吐出口252aから、水平方向に向けて圧縮空気を吐出する態様としてもよい。第2吐出口252aからの圧縮空気の吐出は、例えば、し渣を排出し、ベルトゲート22を閉鎖状態にした後に実施される。これにより、貯留槽21の開放方向側に残存したし渣を閉鎖方向に送ることができ、貯留槽21の開放方向側に長期間残留してしまうし渣を少なくすることができる。
次いで、図5および図6を用いて、貯留装置2における、し渣の排出工程の一例を説明する。
図5は、貯留装置における、し渣の排出工程のフローチャートである。図6は、図5に示す、し渣の排出工程を説明するための説明図である。
本実施形態では、図2〜図4に示す貯留装置2の貯留槽21に、3〜4t程度のし渣が貯留され、貯留されたし渣を、積載量が2.5t程度のトラックに排出する場合を例にあげて説明する。
ベルトゲート22が閉鎖状態において貯留槽21に3〜4t程度のし渣が貯留されると排出工程が開始される。初めに、図6(a)に示すように、ベルトゲート22を開放方向に移動させ、ベルトゲート22を開放開始状態にする(ステップS1)。このステップS1を実施することによって、開放始端領域の下方が開放されて排出口V1が形成され、排出口V1からし渣を排出する。本実施形態では、ベルトゲート22が全開状態の場合に形成される排出口V3(図2(b)参照)の開閉方向の長さは2150mm程度であり、ステップS1を実施することによって形成される排出口V1の開閉方向の長さは500mm程度である。ここで、貯留されているし渣の状態等によっては、開放始端領域の上方に貯留されているし渣が全て排出口V1から排出される場合もあるが、上述したように、クロスハッチングで示す、貯留部212の下端側部分にアーチングが生じやすい。このため、下端囲繞部211における、開放始端領域の上方に貯留されているし渣のみが排出され、貯留部212に貯留されたし渣は排出されずに残ってしまうか、あるいは排出されるまでに時間を要する場合が多い。なお、本実施形態では、貯留部212の閉鎖方向側に垂直壁2121を配置し、開放始端領域の上方にはアーチングが生じにくく、またアーチングが生じた場合であってもそのアーチングが崩れやすくなる工夫がなされている。
次いで、図6(b)に示すように、第1フロント吐出装置23の第1フロント吐出口232aから圧縮空気を、0.7MPa程度の圧力で、0.5秒〜1秒程度吐出させる(ステップS2)。すなわち、第1フロント吐出口232aは、排出口V1が、ベルトゲート22が全開状態にあるときの排出口V3の半分以下の開口面積であってベルトゲート22が閉鎖状態よりは大きな開口面積の状態で、排出口V1の上方に貯留されているし渣に向けて圧縮空気を吐出するものである。なお、ステップS2では、3つの第1フロント吐出口232aから同時に圧縮空気を吐出させてもよいし、3つの第1フロント吐出口232aから順番に圧縮空気を吐出させてもよい。ステップS2を実施することによって、開放始端領域の上方に生じたアーチングが崩され、貯留部212における、開放始端領域の上方に残ったし渣を排出口V1から排出する。これにより、排出口V1の開口面積に応じた量のし渣を速やかに排出することができる。
ステップS2が実施された後、貯留装置2から排出されトラックに積載されたし渣が、トラックの荷台に満杯(本実施形態では2.5t)になったか否かを判断する(ステップS3)。ステップS3において、し渣がトラックの荷台に満杯になったと判断した場合には、ステップS8に進む。なお、ステップS1を実施した際に開放始端領域の上方に生じたアーチングが崩れることもあるため、ステップS1を実施した後に、ステップS3と同様に、し渣がトラックの荷台に満杯になったか否かを判断してもよい。
一方、ステップS3において、し渣がトラックの荷台に満杯になっていないと判断した場合には、図6(c)に示すように、ベルトゲート22を開放方向に移動させ、ベルトゲート22を隣接領域開放状態にする(ステップS4)。ステップS4を実施することによって隣接領域の下方が開放され、開閉方向の長さが1000mm程度の排出口V2が形成される。ステップS4を実施した場合も、貯留部212の下端側部分に生じたアーチングによって、隣接領域の上方に貯留されているし渣のうち、下端囲繞部211に貯留されているし渣のみが排出口V2から排出され、貯留部212に貯留されたし渣は排出されずに残ってしまう場合が多い。なお、ステップS4を実施した後にも、ステップS3と同様に、し渣がトラックの荷台に満杯になったか否かを判断してもよい。
次いで、図6(d)に示すように、第1サイド吐出装置24の第1サイド吐出口242aから圧縮空気を、0.7MPa程度の圧力で、0.5秒〜1秒程度吐出させる(ステップS5)。ステップS5を実施することによって、隣接領域の上方に生じたアーチングが崩され、貯留部212における、隣接領域の上方に残ったし渣を排出口V2から排出する。これにより、排出口V2の開口面積に応じた量のし渣を速やかに排出することができる。
ステップS5が実施された後、し渣がトラックの荷台に満杯になったか否かを再び判断する(ステップS6)。
ステップS6において、し渣がトラックの荷台に満杯になっていないと判断した場合には、ベルトゲート22を、開放方向に、例えば100mm程度移動させる(ステップS7)。このように、ベルトゲート22を、開放方向に少し(例えば100mm程度)移動させることを寸開と称する。ステップS7を実施することによって、排出口の開口面積を拡大し、排出口からし渣を少しずつ排出する。ステップS7は、ステップS6において、し渣がトラックの荷台に満杯になったと判断されるまで繰り返し実施され、ステップS7を実施するたびに、排出口の開口面積を徐々に拡大し、排出口から少しずつし渣を排出する。
ステップS3またはステップS6において、し渣がトラックの荷台に満杯になったと判断すると、図6(e)に示すように、ベルトゲート22を閉鎖方向に移動させ、ベルトゲート22を閉鎖状態にする(ステップS8)。
次いで、図6(f)に示すように、第2吐出装置25の吐出口252aから圧縮空気を、0.7MPa程度の圧力で、0.5秒〜1秒程度吐出させる(ステップS9)。ステップS9を実施することによって、貯留槽21の開放方向側に残っていたし渣を閉鎖方向側に崩し、崩したし渣を、次回の排出工程において排出口から排出する。これによって、貯留槽21の開放方向側に長期間残ってしまうし渣を少なくすることができる。ステップS9の実施が完了すると、排出工程が終了する。
なお、ステップS1やステップS4において、ベルトゲート22の寸開を繰り返し、その都度し渣がトラックの荷台に満杯になったか否かを判断しながら、ベルトゲート22を開放方向に移動させてもよい。また、ステップS8の前に、ステップS9を実施し、貯留槽21の開放方向側に残っていたし渣を、図6(d)に示す排出口V2から排出してもよい。
以上説明したように、本発明の貯留装置2によれば、排出口の開口面積に応じた量のし渣を速やかに排出することが可能になり、し渣の排出量を調整しつつし渣を速やかに排出することができる。また、排出口の開口面積を拡大していく際に、貯留されているし渣に生じたアーチングが広範囲に崩れることで一度に大量のし渣が排出され、トラックの積載量を越えてしまうことを防ぐこともできる。
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、上述の実施形態では、ベルトゲート22を備えた貯留装置2を例にあげて説明したが、本発明は、スライドゲートや、観音開き式のカットゲートを備えた貯留装置にも適用することができる。カットゲートを備えた貯留装置の場合には、カットゲートの開閉方向における中央部分が開放始端領域になり、この開放始端領域における、カットゲートの開閉方向両側に隣接した領域それぞれが隣接領域になる。このため、開放始端領域の上方と、隣接領域それぞれの上方に、吐出部を配置すればよい。また、上述の実施形態では、吐出口232a,242a,252aから圧縮空気を吐出させているが、全部の吐出口から、あるいは一部の吐出口から、水等の液体を吐出させてもよい。