JP6222403B1 - レール鋼および車輪鋼の選択方法 - Google Patents
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Abstract
Description
1.質量%で、
C :0.70%以上、0.85%未満、
Si:0.10〜1.50%、
Mn:0.40〜1.50%、および
Cr:0.05〜1.50%を含有し、
残部Fe及び不可避的不純物からなる成分組成を有するレール鋼と、
質量%で、
C :0.57%以上、0.85%未満、
Si:0.10〜1.50%、
Mn:0.40〜1.50%、および
Cr:0.05〜1.50%を含有し、
残部Fe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する車輪鋼とを、
それぞれレールおよび車輪として実軌道で使用する際に、
前記レールの頭部における降伏強度YSRが830MPa以上であり、
前記車輪のリム部における降伏強度YSWが580MPa以上であり、かつ、
前記レールの頭部における降伏強度YSRと、前記車輪のリム部における降伏強度YSWとの比YSR/YSWが下記(1)式に示す範囲内となるように前記レール鋼および車輪鋼を選択する、レール鋼および車輪鋼の選択方法。
記
0.85≦YSR/YSW≦1.95 …(1)
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
V :0.30%以下、
Nb:0.05%以下、
Mo:0.5%以下、
W :0.5%以下、
Al:0.07%以下、
Ti:0.05%以下、および
B :0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含む、前記1に記載のレール鋼および車輪鋼の選択方法。
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
V :0.30%以下、
Nb:0.05%以下、
Mo:0.5%以下、
W :0.5%以下、
Al:0.07%以下、
Ti:0.05%以下、および
B :0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含む、前記1または2に記載のレール鋼および車輪鋼の選択方法。
C:0.70%以上、0.85%未満
Cは、パーライト組織においてセメンタイトを形成し、降伏強度や耐疲労損傷性を確保する効果を有する元素である。C含有量が0.70%未満であると、降伏強度が低下し、優れた耐疲労損傷性を得ることが難しい。一方、C含有量が0.85%以上であると熱間圧延後の変態時に初析セメンタイトがオーステナイト粒界に生成し、耐疲労損傷性が著しく低下する。そのため、C含有量は0.70%以上、0.85%未満とする。
Siは、脱酸剤およびパーライト組織の強化元素として添加される元素である。Siの添加効果を得るためには、Si含有量を0.10%以上とする必要がある。一方、Si含有量が1.50%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材である車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Si含有量は0.10〜1.50%とする。
Mnは、パーライト変態温度を低下させてラメラー間隔を細かくすることにより、レールの高降伏強度化に寄与する元素であるが、Mn含有量が0.40%未満では十分な効果を得ることができない。一方、Mn含有量が1.50%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材である車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Mn含有量は0.40〜1.50%とする。
Crは、パーライト平衡変態温度を上昇させてラメラー間隔を微細化することや、固溶強化により、降伏強度を向上させる効果を有する元素であるが、Cr含有量が0.05%未満であると十分な降伏強度が得られない。一方、Cr含有量が1.50%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材である車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Cr量は0.05〜1.50%とする。
P:0.025%以下、S:0.025%以下までの含有は許容される。一方、P含有量およびS含有量の下限は特に限定されず0%であってよいが、工業的には0%超である。さらに、PおよびSの含有量を過度に低下させると精錬コストの増加を招くため、P含有量およびS含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。なお、本発明のレール鋼の成分組成は、以上の成分と残部のFeおよび不可避不純物とからなるか、あるいはさらに、これらに加えて後述する任意に含むことができる成分とからなることが好ましいが、本発明の作用効果に実質的に影響しない範囲内で、他の微量元素を含有するレール鋼も本発明に属する。
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
V :0.30%以下、
Nb:0.05%以下、
Mo:0.5%以下、
W :0.5%以下、
Al:0.07%以下、
Ti:0.05%以下、および
B :0.005%以下からなる群より選択される1または2以上を、任意に、さらに含むことができる。
Vは、炭・窒化物を形成して基地中へ分散析出することにより降伏強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、V含有量が0.30%を超えると、降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材である車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。また、Vは高価な元素であるため、レール鋼のコストが増加する。そのため、Vを添加する場合にはV含有量を0.30%以下とすることが好ましい。なお、V含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、V含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Cuは、Crと同様、固溶強化により降伏強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、Cu含有量が1.0%を超えるとCu割れが生じやすくなるため、Cuを添加する場合にはCu含有量を1.0%以下とすることが好ましい。なお、Cu含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Cu含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Niは、延性を劣化することなく降伏強度を向上させる効果を有する元素である。また、Cuと複合添加することによりCu割れを抑制することができるため、Cuを添加する場合にはNiも添加することが望ましい。しかし、Ni含有量が1.0%を超えると焼入れ性が上昇してマルテンサイトが生成する結果、耐疲労損傷性が低下しがちとなる。そのため、Niを添加する場合にはNi含有量を1.0%以下とすることが好ましい。なお、Ni含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Ni含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Nbは、鋼中のCやNと結び付いて圧延中及び圧延後に炭化物、窒化物、炭窒化物として析出し、高降伏強度化に有効に作用する。したがって、Nbを添加することにより、耐疲労損傷性を大きく向上させ、レールの長寿をさらに延ばすことができる。しかし、Nb含有量が0.05%を超えると、降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材である車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Nbを添加する場合にはNb含有量を0.05%以下とすることが好ましい。なお、Nb含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Nb含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Moは、固溶強化により降伏強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、Mo含有量が0.5%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材である車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Moを添加する場合にはMo含有量を0.5%以下とすることが好ましい。なお、Mo含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Mo含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Wは、固溶強化により降伏強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、W含有量が0.5%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材である車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Wを添加する場合にはW含有量を0.5%以下とすることが好ましい。なお、W含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、W含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Alは、鋼中のNと結び付いて圧延中及び圧延後に窒化物として析出し、高降伏強度化に有効に作用する。したがって、Alを添加することにより、耐疲労損傷性を大きく向上させ、レールの長寿をさらに延ばすことができる。しかし、Al含有量が0.07%を超えると、鋼中に酸化物が多量に生成し、かえってレール鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Alを添加する場合にはAl含有量を0.07%以下とすることが好ましい。なお、Al含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Al含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Bは、圧延中および圧延後に窒化物として析出し、析出強化により高降伏強度化に有効に作用する。したがって、Bを添加することにより、耐疲労損傷性を大きく向上させ、レールの長寿をさらに延ばすことができる。しかし、B含有量が0.005%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材である車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Bを添加する場合にはB含有量を0.005%以下とすることが好ましい。なお、B含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、B含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
Tiは、圧延中及び圧延後に炭化物、窒化物、炭窒化物として析出し、析出強化により高降伏強度化に有効に作用する。したがって、Tiを添加することにより、耐疲労損傷性を大きく向上させ、レールの長寿をさらに延ばすことができる。しかし、Ti含有量が0.05%を超えると、粗大な炭化物、窒化物、または炭窒化物が生成する結果、かえってレールの耐疲労損傷性が低下する。そのため、Tiを添加する場合にはTi含有量を0.05%以下とすることが好ましい。なお、Ti含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Ti含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
C:0.57%以上、0.85%未満
Cは、パーライト組織においてセメンタイトを形成し、降伏強度や耐疲労損傷性を確保する効果を有する元素である。C含有量が0.57%未満であると、降伏強度が低下し、優れた耐疲労損傷性を得ることが難しい。一方、C含有量が0.85%以上であると熱間圧延後の変態時に初析セメンタイトがオーステナイト粒界に生成し、耐疲労損傷性が著しく低下する。そのため、C含有量は0.57%以上、0.85%未満とする。
Siは、脱酸剤およびパーライト組織の強化元素として添加される元素である。Siの添加効果を得るためには、Si含有量を0.10%以上とする必要がある。一方、Si含有量が1.50%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材であるレール鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Si含有量は0.10〜1.50%とする。
Mnは、パーライト変態温度を低下させてラメラー間隔を細かくすることにより、車輪の高降伏強度化に寄与する元素であるが、Mn含有量が0.40%未満では十分な効果を得ることができない。一方、Mn含有量が1.50%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材であるレール鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Mn含有量は0.40〜1.50%とする。
Crは、パーライト平衡変態温度を上昇させてラメラー間隔を微細化することや、固溶強化により、降伏強度を向上させる効果を有する元素であるが、Cr含有量が0.05%未満であると十分な降伏強度が得られない。一方、Cr含有量が1.50%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材であるレール鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Cr量は0.05〜1.50%とする。
P:0.030%以下、S:0.030%以下までの含有は許容される。一方、P含有量およびS含有量の下限は特に限定されず0%であってよいが、工業的には0%超である。さらに、PおよびSの含有量を過度に低下させると精錬コストの増加を招くため、P含有量およびS含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。なお、本発明の車輪鋼の成分組成は、以上の成分と残部のFeおよび不可避不純物とからなるか、あるいはさらに、これらに加えて後述する任意に含むことができる成分とからなることが好ましいが、本発明の作用効果に実質的に影響しない範囲内で、他の微量元素を含有するレール鋼も本発明に属する。
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
V :0.30%以下、
Nb:0.05%以下、
Mo:0.5%以下、
W :0.5%以下、
Al:0.07%以下、
Ti:0.05%以下、および
B :0.005%以下からなる群より選択される1または2以上を、任意に、さらに含むことができる。
Vは、炭・窒化物を形成して基地中へ分散析出することにより降伏強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、V含有量が0.30%を超えると、降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材である車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。また、Vは高価な元素であるため、車輪鋼のコストが増加する。そのため、Vを添加する場合にはV含有量を0.30%以下とすることが好ましい。なお、V含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、V含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Cuは、Crと同様、固溶強化により降伏強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、Cu含有量が1.0%を超えるとCu割れが生じやすくなるため、Cuを添加する場合にはCu含有量を1.0%以下とすることが好ましい。なお、Cu含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Cu含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Niは、延性を劣化することなく降伏強度を向上させる効果を有する元素である。また、Cuと複合添加することによりCu割れを抑制することができるため、Cuを添加する場合にはNiも添加することが望ましい。しかし、Ni含有量が1.0%を超えると焼入れ性が上昇してマルテンサイトが生成する結果、耐疲労損傷性が低下しがちとなる。そのため、Niを添加する場合にはNi含有量を1.0%以下とすることが好ましい。なお、Ni含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Ni含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Nbは、鋼中のCやNと結び付いて圧延中及び圧延後に炭化物、窒化物、炭窒化物として析出し、高降伏強度化に有効に作用する。したがって、Nbを添加することにより、耐疲労損傷性を大きく向上させ、車輪の長寿をさらに延ばすことができる。しかし、Nb含有量が0.05%を超えると、降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材であるレール鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Nbを添加する場合にはNb含有量を0.05%以下とすることが好ましい。なお、Nb含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Nb含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Moは、固溶強化により降伏強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、Mo含有量が0.5%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材であるレール鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Moを添加する場合にはMo含有量を0.5%以下とすることが好ましい。なお、Mo含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Mo含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Wは、固溶強化により降伏強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、W含有量が0.5%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材であるレール鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Wを添加する場合にはW含有量を0.5%以下とすることが好ましい。なお、W含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、W含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Alは、鋼中のNと結び付いて圧延中及び圧延後に窒化物として析出し、高降伏強度化に有効に作用する。したがって、Alを添加することにより、耐疲労損傷性を大きく向上させ、車輪の長寿をさらに延ばすことができる。しかし、Al含有量が0.07%を超えると、鋼中に酸化物が多量に生成し、かえって車輪鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Alを添加する場合にはAl含有量を0.07%以下とすることが好ましい。なお、Al含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Al含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Bは、圧延中および圧延後に窒化物として析出し、析出強化により高降伏強度化に有効に作用する。したがって、Bを添加することにより、耐疲労損傷性を大きく向上させ、車輪の長寿をさらに延ばすことができる。しかし、B含有量が0.005%を超えると降伏強度が高くなりすぎ、かえって相手材であるレール鋼に疲労損傷が発生しやすくなる。そのため、Bを添加する場合にはB含有量を0.005%以下とすることが好ましい。なお、B含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、B含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
Tiは、圧延中及び圧延後に炭化物、窒化物、炭窒化物として析出し、析出強化により高降伏強度化に有効に作用する。したがって、Tiを添加することにより、耐疲労損傷性を大きく向上させ、車輪の長寿をさらに延ばすことができる。しかし、Ti含有量が0.05%を超えると、粗大な炭化物、窒化物、または炭窒化物が生成する結果、かえって車輪の耐疲労損傷性が低下する。そのため、Tiを添加する場合にはTi含有量を0.05%以下とすることが好ましい。なお、Ti含有量の下限は特に限定されないが、降伏強度を向上させるという観点からは、Ti含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
本発明においては、上記成分組成を有するレール鋼と車輪鋼とを、それぞれレールおよび車輪として実軌道で使用する際に、前記レールの頭部における降伏強度YSRと、前記車輪のリム部における降伏強度YSWとの比YSR/YSWが下記(1)式に示す範囲内となるように前記レール鋼および車輪鋼を選択する。
0.85≦YSR/YSW≦1.95 …(1)
ここで、レールの降伏強度YSRは、AREMA Chapter 4の2.1.3.4に記載の位置からASTM A370に記載の、平行部が0.25インチまたは0.5インチの引張試験片を採取し、引張試験を行って求める。車輪の降伏強度YSWは、AAR Specification M-107/M-208の3.1.1.に記載の位置から、レールの試験と同様の引張試験片を採集し、引張試験を行って求める。
レールの頭部における降伏強度YSRを高くすれば、レール自体の耐疲労損傷性をより高めることができるため、YSRを830MPa以上とする。一方、YSRの上限については特に限定されないが、YSRを高くしすぎると(1)式の条件を満たすことが困難となることから、1200MPa以下とすることが好ましい。
車輪のリム部における降伏強度YSWを高くすれば、車輪自体の耐疲労損傷性をより高めることができるため、YSWを580MPa以上とする。一方、YSRの上限については特に限定されないが、YSWを高くしすぎると(1)式の条件を満たすことが困難となることから、1000MPa以下とすることが好ましい。
レール鋼は、頭部における鋼組織がパーライト組織であることが好ましい。これは、パーライト組織が、焼戻しマルテンサイト組織やベイナイト組織に比べて優れた疲労損傷性を有するためである。
表1に示す成分組成を有する鋼100kgを真空溶解し、80mm厚に熱間圧延した。得られた圧延材を150mm長さに切断した後、1000〜1300℃に加熱し、最終板厚が12mmとなるよう熱間圧延した。次いで、冷却速度0.5〜3℃/sで400℃までエアー冷却し、その後、放冷してレール鋼を得た。この際、前記熱間圧延前の加熱温度や冷却速度を調整することによって、最終的に得られるレール鋼の降伏強度を制御した。
得られた各レール鋼および車輪鋼の降伏強度を、ASTM A370に準拠した引張試験により評価した。各レール鋼および車輪鋼から、ASTM A370に定められた、平行部の直径が0.25インチ(6.35mm)である引張試験片を採取し、引張速度:1mm/分で引張試験を行い、応力−歪み曲線から求められた0.2%耐力を降伏強度とした。測定された値を表2に示す。
得られた各レール鋼および車輪鋼の表面を鏡面に研磨後、ナイタールで腐食し、倍率100倍で組織観察を実施した。
得られた各レール鋼および車輪鋼から、接触面を曲率半径15mmの曲面とした直径30mmの試験片を作製し、表3に示したレール鋼と車輪鋼の組み合わせにおける疲労損傷の発生を、2円筒型試験機を用いて評価した。接触圧力:2.2GPa、すべり率:−20%、油潤滑条件で試験を実施し、剥離(疲労損傷)が発生した時点での回転数を表3に示した。前記回転数の値は、レールおよび車輪の疲労損傷寿命の指標と見なすことができる。なお、剥離が発生するまで試験を続けると長時間かかるため、本実施例では、1728000回転未満でレール鋼に剥離が生じたもの、および2160000回転未満で車輪鋼に剥離が生じたものについては、そのレール鋼と車輪鋼の組み合わせでは十分な耐疲労損傷性が得られないと判断し、試験を中断した。この場合、剥離が生じなかった方の部材については、表2の回転数の欄を「−」とした。また、前記回転数が、レール鋼では1728000回転以上、車輪鋼では2160000回転以上であれば、耐疲労損傷性が良好であると判断し、表3中では「剥離せず」と記載した。
表4に示す成分組成のレール鋼と、表5に示す成分組成の車輪鋼とを使用した以外は、実施例1と同様の条件で試験を行った。用いたレール鋼と車輪鋼の組み合わせと、評価結果とを表6に示す。この結果からもより、成分組成と降伏強度比YSR/YSWとが本願発明の条件を満たすようにレール鋼と車輪鋼とを選択することにより、レールと車輪の疲労損傷を効果的に抑制できることが分かる。
表7に示す成分組成のレール鋼と、表8に示す成分組成の車輪鋼とを使用した以外は、実施例1と同様の条件で試験を行った。加えて、最終的に得られたレール鋼のビッカース硬さHRと、最終的に得られた車輪鋼のビッカース硬さHWとを、ビッカース硬さ試験機で荷重98Nにより測定し、レール鋼の硬さHRと車輪鋼の硬さHWとの比HR/HWを求めた。用いたレール鋼と車輪鋼との組み合わせと、評価結果とを表9に示す。
2 レール材
Claims (3)
- 質量%で、
C :0.70%以上、0.85%未満、
Si:0.10〜1.50%、
Mn:0.40〜1.50%、および
Cr:0.05〜1.50%を含有し、
残部Fe及び不可避的不純物からなる成分組成を有するレール鋼と、
質量%で、
C :0.57%以上、0.85%未満、
Si:0.10〜1.50%、
Mn:0.40〜1.50%、および
Cr:0.05〜1.50%を含有し、
残部Fe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する車輪鋼とを、
それぞれ頭部における鋼組織がパーライトであるレールおよびリム部における鋼組織がパーライトである車輪として実軌道で使用する際に、
前記レールの頭部における降伏強度YSRが830MPa以上であり、
前記車輪のリム部における降伏強度YSWが580MPa以上であり、かつ、
前記レールの頭部における降伏強度YSRと、前記車輪のリム部における降伏強度YSWとの比YSR/YSWが下記(1)式に示す範囲内となるように前記レール鋼および車輪鋼を選択する、レール鋼および車輪鋼の選択方法。
記
0.85≦YSR/YSW≦1.95 …(1) - 前記レール鋼の成分組成が、質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
V :0.30%以下、
Nb:0.05%以下、
Mo:0.5%以下、
W :0.5%以下、
Al:0.07%以下、
Ti:0.05%以下、および
B :0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含む、請求項1に記載のレール鋼および車輪鋼の選択方法。 - 前記車輪鋼の成分組成が、質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
V :0.30%以下、
Nb:0.05%以下、
Mo:0.5%以下、
W :0.5%以下、
Al:0.07%以下、
Ti:0.05%以下、および
B :0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含む、請求項1または2に記載のレール鋼および車輪鋼の選択方法。
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