本発明の一態様の無線ICデバイスは、
第1主面と前記第1主面に対向する第2主面とを有する樹脂部材と、
配線導体パターンを有する磁性体回路基板と、
前記磁性体回路基板の前記配線導体パターン上に搭載され、第1入出力端子と第2入出力端子とを備えたRFIC素子と、
前記樹脂部材に設けられる一方、一端が前記第1入出力端子に接続され、他端が前記第2入出力端子に接続されたアンテナコイルと、
を備え、
前記磁性体回路基板の少なくとも一部は、前記アンテナコイルの磁性体コアとして、前記アンテナコイルの内側に配置されてもよい。
このような構成により、磁性体回路基板上にRFIC素子等を実装することにより、省スペース化を図り、簡単な構成でデバイスの小型化を実現することができる。また、磁性体回路基板は、アンテナコイルの内側に配置されているため、アンテナコイルの磁性体コア(磁心)として作用する。このため、磁性体基板によってアンテナコイルのL値の向上、又はアンテナ性能の向上を行うことができるため、デバイス寸法に対してアンテナサイズを最大化することができる。
前記無線ICデバイスにおいて、前記アンテナコイルは、
前記樹脂部材の前記第2主面に形成され、前記RFICの前記第1入出力端子及び前記第2入出力端子に接続される第1配線パターンと、
前記樹脂部材の前記第1主面に形成される第2配線パターンと、
前記第1配線パターンと前記第2配線パターンとを接続する第1金属体と、
前記第1配線パターンと前記第2配線パターンとを接続する第2金属体と、
を有していてもよい。
このような構成により、アンテナコイルのうち比較的大きな高さ寸法を持った部分を第1金属体及び第2金属体によって形成できるので、アンテナコイルの電気的信頼性を高めることができる。
前記第1金属体及び前記第2金属体は、柱状の金属ピンであってもよい。
このように構成により、多層基板に複雑な配線を引き回す必要がない。また、金属体として金属ピンを使用することにより、第1金属体及び第2金属体の直流抵抗を小さくすることができ、電気特性を向上させることができる。
前記磁性体回路基板は、前記アンテナコイルから離れて配置され、
前記RFIC素子の前記第1入出力端子及び前記第2入出力端子が実装される前記磁性体回路基板の実装面は、前記樹脂部材の前記第2主面に対向するように配置され、
前記RFIC素子の前記第1入出力端子は、前記磁性体回路基板の接続端子から前記樹脂部材の前記第2主面に向かって延びる第1導体を介して、前記第1配線パターンに接続され、
前記RFIC素子の前記第2入出力端子は、前記磁性体回路基板の接続端子から前記樹脂部材の前記第2主面に向かって延びる第2導体を介して、前記第1配線パターンに接続されてもよい。
このような構成により、RFIC素子を搭載した磁性体回路基板の第2面が、樹脂部材の第2主面に対向するように配置されるため、アンテナコイルの磁界形成の妨げになりにくい。また、磁性体回路基板の第2面が、アンテナコイルから離れて配置されるため、RFIC素子がアンテナコイルの近傍を通過する磁束の妨げになりにくい。
前記磁性体回路基板は、前記樹脂部材の前記第1主面に面する第1面と、前記樹脂部材の前記第2主面に面する第2面と、を有し、
前記RFIC素子は、前記磁性体回路基板の前記第2面に実装されてもよい。
このような構成により、磁性体回路基板のうち樹脂部材の第2主面と面する側の第2面側に、磁性体回路基板と樹脂部材との間にスペースを形成することができる。このため、回路基板の第2面にRFIC素子を実装することにより、無線ICデバイスの高さを小さくすることができる。
前記磁性体回路基板は、第1面と、前記第1面に対向する第2面と、を有し、
前記磁性体回路基板の前記第2面は、前記樹脂部材の前記第2主面の少なくとも一部を形成し、
前記RFIC素子は、前記磁性体回路基板の前記第1面に搭載され、
前記RFIC素子の前記第1入出力端子は、前記磁性体回路基板の接続端子から前記樹脂部材の前記第2主面に向かって延びる第3導体を介して、前記第1配線パターンに接続され、
前記RFIC素子の前記第2入出力端子は、前記磁性体回路基板の接続端子から前記樹脂部材の前記第2主面に向かって延びる第4導体を介して、前記第1配線パターンに接続され、
前記第3導体及び前記第4導体は、前記磁性体回路基板の内部に設けられていてもよい。
このような構成により、磁性体回路基板を樹脂部材の第2主面に配置することができるため、アンテナコイルのL値の向上や、アンテナ性能の向上を達成しつつ、アンテナコイルの高さを小さくすることができる。これにより、無線ICデバイスの更なる小型化を実現することができる。
前記磁性体回路基板の前記第2面に、前記第1配線パターンを形成し、
前記第1金属体は、前記磁性体回路基板上の第1接続端子に接続され、前記磁性体回路基板内に設けられた第1接続導体を介して前記第1配線パターンに接続され、
前記第2金属体は、前記磁性体回路基板上の第2接続端子に接続され、前記磁性体回路基板内に設けられた第2接続導体を介して前記第1配線パターンに接続されてもよい。
このような構成により、更にアンテナコイルのL値の向上や、アンテナ性能の向上を行うことができる。また、無線ICデバイスでは、アンテナコイルの高さを低くしても所定のインダクタンスを得ることができるため、更にデバイスを小型化することができる。
前記磁性体回路基板は、
多結晶相がほぼ全体を占めている磁性体基材層と、
前記磁性体基材層の少なくとも一方の面に配置され、かつ多結晶相がほぼ全体を占めている磁性体補助層と、
を含み、
前記磁性体基材層における多結晶相と前記磁性体補助層における多結晶相とは、互いに実質的に同一の結晶構造を有し、
前記磁性体補助層の線膨張係数は、前記磁性体基材層の線膨張係数よりも小さくてもよい。
このような構成により、磁性体回路基板の機械的強度を向上させることができる。
前記第1配線パターン及び前記第2配線パターンは、それぞれ複数の配線パターンを有し、
前記第1金属体及び前記第2金属体は、それぞれ複数の金属体を有し、
前記アンテナコイルは、前記第1配線パターンと、前記第2配線パターンと、前記第1金属体と、前記第2金属体と、によって形成される複数のループを有するヘリカル状に形成されてもよい。
このような構成により、無線ICデバイスのサイズを大型化せずに、ターン数の多いアンテナコイルを容易に構成することができる。
前記第1金属体及び前記第2金属体は、それぞれ3つ以上の金属ピンを有し、
前記第1金属体及び前記第2金属体は、それぞれ前記Y軸方向に配列され、かつ前記Z軸方向に見て千鳥状に配置されてもよい。
このような構成により、コイルのターン数を増やしても無線ICデバイスのY軸方向の寸法を小さくすることができる。
前記アンテナコイルは、前記Y軸方向から見て内外径の異なる複数のループを含み、
前記アンテナコイルの開口面に位置するループは、前記複数のループのうち内外径が最も大きいループであってもよい。
このような構成により、矩形ヘリカル状のアンテナコイルに対して磁束が出入りする実質的なコイル開口の面積を大きくすることができる。
本発明の一態様の樹脂成型体は、
無線ICデバイスを備えた樹脂成型体であって、
前記無線ICデバイスは、
第1主面と前記第1主面に対向する第2主面とを有する樹脂部材と、
配線導体パターンを有する磁性体回路基板と、
前記磁性体回路基板の前記配線導体パターン上に搭載され、第1入出力端子と第2入出力端子とを備えたRFIC素子と、
前記樹脂部材に設けられる一方、一端が前記第1入出力端子に接続され、他端が前記第2入出力端子に接続されたアンテナコイルと、
を備え、
前記磁性体回路基板の少なくとも一部は、前記アンテナコイルの磁性体コアとして、前記アンテナコイルの内側に配置されてもよい。
このような構成により、省スペース化を図り、簡易な構成で小型化することが可能な無線ICデバイスを備えた樹脂成型体を提供することができる。
前記樹脂成型体において、前記アンテナコイルは、
前記樹脂部材の前記第2主面に形成され、前記RFICの前記第1入出力端子及び前記第2入出力端子に接続される第1配線パターンと、
前記樹脂部材の前記第1主面に形成される第2配線パターンと、
前記第1配線パターンと前記第2配線パターンとを接続する第1金属体と、
前記第1配線パターンと前記第2配線パターンとを接続する第2金属体と、
を有してもよい。
このような構成により、アンテナコイルのうち比較的大きな高さ寸法を持った部分を第1金属体及び第2金属体によって形成できるので、アンテナコイルの電気的信頼性を高めることができる。
本発明の一態様の通信端末装置は、
無線ICデバイスを備えた通信端末装置であって、
前記無線ICデバイスは、
第1主面と前記第1主面に対向する第2主面とを有する樹脂部材と、
配線導体パターンを有する磁性体回路基板と、
前記磁性体回路基板の前記配線導体パターン上に搭載され、第1入出力端子と第2入出力端子とを備えたRFIC素子と、
前記樹脂部材に設けられる一方、一端が前記第1入出力端子に接続され、他端が前記第2入出力端子に接続されたアンテナコイルと、
を備え、
前記磁性体回路基板の少なくとも一部は、前記アンテナコイルの磁性体コアとして、前記アンテナコイルの内側に配置されてもよい。
このような構成により、省スペース化を図り、簡易な構成で小型化することができる無線ICデバイスを備えた通信端末装置を提供することができる。
前記通信端末装置において、前記アンテナコイルは、
前記樹脂部材の前記第2主面に形成され、前記RFICの前記第1入出力端子及び前記第2入出力端子に接続される第1配線パターンと、
前記樹脂部材の前記第1主面に形成される第2配線パターンと、
前記第1配線パターンと前記第2配線パターンとを接続する第1金属体と、
前記第1配線パターンと前記第2配線パターンとを接続する第2金属体と、
を有してもよい。
このような構成により、アンテナコイルのうち比較的大きな高さ寸法を持った部分を第1金属体及び第2金属体によって形成できるので、アンテナコイルの電気的信頼性を高めることができる。
本発明の一態様の無線ICデバイスの製造方法は、
台座上に設けられた粘着層に、第1入出力端子及び第2入出力端子を有するRFIC素子を配線導体パターン上に実装した磁性体回路基板を配置する工程、
前記粘着層に、第1金属体と、第2金属体とを、立てて配置する工程、
前記粘着層上に配置された、前記磁性体回路基板と、前記第1金属体と、前記第2金属体と、を樹脂部材で被膜する工程、
前記第1金属体と、前記第2金属体と、が接続される第2配線パターンを、前記樹脂部材の第1主面に形成する工程、
前記粘着層を設けた前記台座を取り除き、前記第1金属体と前記第2金属体とを接続する一方、前記RFIC素子の第1入出力端子と前記第1金属体とを接続し、前記RFIC素子の第2入出力端子と前記第2金属体とを接続する第1配線パターンを、前記樹脂部材の第2主面に形成する工程、
を含んでもよい。
このような構成により、省スペース化を図り、簡易な構成で小型化することが可能な無線ICデバイスを容易に製造できる。また、粘着層を有する台座を用いることにより、金属体を強固に固定することできるため、幅の小さい金属体をアンテナコイルの一部に使用して無線ICデバイスを製造することができる。そのため、アンテナコイルの巻回数が多く、インダクタンスの高いアンテナコイルを備えた無線ICデバイスを製造することができる。
以下、本発明に係る実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
(実施の形態1)
[全体構成]
図1は、本発明に係る実施の形態1の無線ICデバイス101の斜視図である。図1中の直交X,Y,Z座標系において、X軸方向は無線ICデバイス101の幅方向を示し、Y軸方向は無線ICデバイス101の厚さ方向を示し、Z軸方向は無線ICデバイス101の高さ方向を示す。図2は、無線ICデバイス101の平面図である。図3は、無線ICデバイスの底面図である。図4は、無線ICデバイス101の概略構成図である。
図1に示すように、無線ICデバイス101は、樹脂部材70と、樹脂部材70に埋設される磁性体回路基板1と、磁性体回路基板1に搭載されるRFIC素子61と、樹脂部材70に設けられるアンテナコイルと、を備える。アンテナコイルは、第1配線パターン20A,20B,20C,20D,20E,20F,20Gと、第1金属体30A,30B,30C,30D,30E,30Fと、第2配線パターン50A,50B,50C,50D,50E,50Fと、第2金属体40A,40B,40C,40D,40E,40Fと、によって形成されている。
<樹脂部材>
樹脂部材70は、磁性体回路基板1、RFIC素子61、アンテナコイル等を保護するものである。図1に示すように、樹脂部材70は、直方体状を有している。具体的には、樹脂部材70は、第1主面VS1と、第1主面VS1に対向する第2主面VS2と、第1主面VS1と第2主面VSとに連接する第1側面VS3と、第1主面VS1と第2主面VSとに連接する第2側面VS4と、を有する。樹脂部材70は、例えば、エポキシ系の樹脂などで作られている。
図2に示すように、樹脂部材70の第1主面VS1には、X軸方向に延びる第2配線パターン50A,50B,50C,50D,50E,50Fが形成されている。図3に示すように、樹脂部材70の第2主面VS2には、X軸方向に延びる第1配線パターン20A,20B,20C,20D,20E,20F,20Gが形成されている。図1に示すように、樹脂部材70の第1側面VS3の近傍には、Z軸方向に延びる第1金属体30A,30B,30C,30D,30E,30Fが埋設されている。樹脂部材70の第2側面VS4の近傍には、Z軸方向に延びる第2金属体40A,40B,40C,40D,40E,40Fが埋設されている。
<アンテナコイル>
アンテナコイルは、第1配線パターン20A〜20Gと、第1金属体30A〜30Fと、第2配線パターン50A〜50Fと、第2金属体40A〜40Fと、によって6ターンの矩形ヘリカル状に形成されている。
図1に示すように、第1配線パターン20A〜20Gは、樹脂部材70の第2主面VS2上をX軸方向に延び、第2配線パターン50A〜50Fは、樹脂部材70の第1主面VS1上をX軸方向に延びる。ここで、「X軸方向に延びる」の意味は、第1配線パターン20A〜20Gのそれぞれが平行であること及び第2配線パターン50A〜50Fのそれぞれが平行であることを限定するものではない。また、「X軸方向に延びる」の意味は、第1配線パターン20A〜20Gと第2配線パターン50A〜50Fとが平行であることを限定するものではない。「X軸方向に延びる」とは、例えば、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fの延びる方向が概略的にX軸方向を向くこと、即ち実質的にX軸方向に延びること、をも含む。
第1金属体30A〜30Fは、樹脂部材70の第1側面VS3の近傍でY軸方向に配列されると共に、Z軸方向に延びる。第2金属体40A〜40Fは、樹脂部材70の第2側面VS4の近傍でY軸方向に配列されると共に、Z軸方向に延びる。実施の形態1においては、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、互いに平行である。
第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、いずれも例えば円柱状のCu製の金属ピンである。第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、例えば、断面円形のCuワイヤーを所定長単位で切断することで得られる。なお、これらの金属ピンの断面形状は、必ずしも円形である必要はない。例えば、金属ピンのアスペクト比(高さ/底面の直径)は、5以上30以下が好ましい。
図1に示すように、第1金属体30A〜30Fは、樹脂部材70の第2主面VS2に対して法線方向、即ちZ軸方向へ延びるように配置され、かつ、樹脂部材70の第1主面VS1及び第2主面VS2に達する。第1金属体30A〜30Fの第1端は、第1配線パターン20A〜20Fに接続される。第1金属体30A〜30Fの第2端は、第2配線パターン50A〜50Fに接続される。なお、第1端とは、第1金属体30A〜30Fの長手方向端部のうち樹脂部材70の第2主面VS2側の端部を意味し、第2端とは、第1金属体30A〜30Fの長手方向端部のうち樹脂部材70の第1主面VS1側の端部を意味する。
より詳しく説明すると、第1金属体30Aの第1端は、第1配線パターン20Aに接続される。第1金属体30Bの第1端は、第1配線パターン20Bに接続される。第1金属体30Cの第1端は、第1配線パターン20Cに接続される。第1金属体30Dの第1端は、第1配線パターン20Dに接続される。第1金属体30Eの第1端は、第1配線パターン20Eに接続される。第1金属体30Fの第1端は、第1配線パターン20Fに接続される。
第1金属体30Aの第2端は、第2配線パターン50Aに接続される。第1金属体30Bの第2端は、第2配線パターン50Bに接続される。第1金属体30Cの第2端は、第2配線パターン50Cに接続される。第1金属体30Dの第2端は、第2配線パターン50Dに接続される。第1金属体30Eの第2端は、第2配線パターン50Eに接続される。第1金属体30Fの第2端は、第2配線パターン50Fに接続される。
図1に示すように、第2金属体40A〜40Fは、樹脂部材70の第2主面VS2に対して法線方向、即ちZ軸方向へ延びるように配置され、かつ、樹脂部材70の第1主面VS1および第2主面VS2に達する。第2金属体40A〜40Fの第3端は、第1配線パターン20B〜20Gに接続される。第2金属体40A〜40Fの第4端は、第2配線パターン50A〜50Fに接続される。なお、第3端とは、第2金属体40A〜40Fの長手方向端部のうち樹脂部材70の第2主面VS2側の端部を意味し、第4端とは、第2金属体40A〜40Fの長手方向端部のうち樹脂部材70の第1主面VS1側の端部を意味する。
より詳しく説明すると、第2金属体40Aの第3端は、第1配線パターン20Bに接続される。第2金属体40Bの第3端は、第1配線パターン20Cに接続される。第2金属体40Cの第3端は、第1配線パターン20Dに接続される。第2金属体40Dの第3端は、第1配線パターン20Eに接続される。第2金属体40Eの第3端は、第1配線パターン20Fに接続される。第2金属体40Fの第3端は、第1配線パターン20Gに接続される。
第2金属体40Aの第4端は、第2配線パターン50Aに接続される。第2金属体40Bの第4端は、第2配線パターン50Bに接続される。第2金属体40Cの第4端は、第2配線パターン50Cに接続される。第2金属体40Dの第4端は、第2配線パターン50Dに接続される。第2金属体40Eの第4端は、第2配線パターン50Eに接続される。第2金属体40Fの第4端は、第2配線パターン50Fに接続される。
このように、アンテナコイルは、複数の配線パターンを含む第1配線パターン20A〜20G、複数の配線パターンを含む第2配線パターン50A〜50F、複数の金属ピンを含む第1金属体30A〜30F、複数の金属ピンを含む第2金属体40A〜40Fの数によって、複数のループを形成している。
<磁性体回路基板>
磁性体回路基板1は、配線導体パターンを有する磁性体の回路基板である。磁性体回路基板1は、焼結系のフェライト基板により作られている。図4に示すように、磁性体回路基板1は、アンテナコイルの内部、即ちコイル巻回範囲内に配置されることにより、アンテナコイルに対する磁性体コアとして作用している。
図4に示すように、磁性体回路基板1は、樹脂部材70の第1主面VS1側に面する第1面PS1と、樹脂部材の第2主面VS2側に面する第2面PS2と、を有する。磁性体回路基板1の第2面PS2には、配線導体パターン10A,10Bが形成されており、RFIC素子61及びチップキャパシタ62等が実装されている。RFIC素子61の実装面である第2面PS2は、アンテナコイルの磁界を妨げやすい。そのため、磁性体回路基板1の第2面PS2は、樹脂部材70の第2主面VS2に対向するように配置される。
磁性体回路基板1の第2面PS2は、アンテナコイルの巻回軸G1と交差しないように、アンテナコイルの巻回軸G1方向、即ちY軸方向に平行に配置されるのが好ましい。より好ましくは、磁性体回路基板1の第2面PS2は、樹脂部材70の第2主面VS2に平行になるように配置される。
アンテナコイルにより形成される磁界は、アンテナコイルに近いほど強くなる。このため、無線ICデバイス101では、RFIC素子61を実装した磁性体回路基板1をアンテナコイルから離して配置している。磁性体回路基板1は、アンテナコイルの巻回軸G1方向、即ちY軸方向から見たとき、RFIC素子61が実装される第2面PS2を、樹脂部材70の第2主面VS2よりも巻回軸G1寄りに配置しているのが好ましい。より好ましくは、アンテナコイルの磁界形成に与える影響、及び無線ICデバイス101が樹脂成型体に内蔵される場合に射出成型時の高温樹脂による熱的影響を低減するために、RFIC素子61が実装される第2面PS2は、無線ICデバイス101の中央に配置されることが好ましい。
磁性体回路基板1は、第2面PS2上に実装されたRFIC素子61と、第1配線パターン20A,20Gとを電気的に接続するために、第1導体11A及び第2導体11Bを設けている。第1導体11A及び第2導体11Bは、磁性体回路基板1の第2面PS2から樹脂部材70の第2主面VS2に向かって延びている。言い換えると、樹脂部材70の第2主面VS2から第1主面VS1方向、即ちZ軸方向へ延びている。
より詳しく説明すると、第1導体11Aは、樹脂部材70の第2主面VS2上に形成された第1配線パターン20Aと、磁性体回路基板1の第2面PS2上に形成された配線導体パターン10Aと、を接続する。第2導体11Bは、樹脂部材70の第2主面VS2上に形成された第1配線パターン10Gと、磁性体回路基板1の第2面PS2上に形成された配線導体パターン10Bと、を接続する。
図5は、磁性体回路基板1の底面図であり、磁性体回路基板1の第2面PS2を見た図である。図5に示すように、磁性体回路基板1の第2面PS2には、配線導体パターン10A,10B及びNC端子が形成されている。配線導体パターン10A,10B及びNC端子は、例えば、Cu箔のエッチング等によりパターニングされたものである。配線導体パターン10A,10Bには、RFIC素子61の第1入出力端子及び第2入出力端子に接続される給電端子が設けられている。配線導体パターン10A,10Bは、樹脂部材70の第2主面VS2から第1主面VS1に向かって延びる第1導体11A及び第2導体11Bを介して、アンテナコイルの一端及び他端にそれぞれ電気的に接続されている。また、配線導体パターン10A,10Bには、第1導体11A及び第2導体11Bを接続する接続端子12A,12Bが設けられている。
配線導体パターン10A,10Bは、樹脂部材70の第2主面VS2から第1主面VS1の方向に延びる第1導体11A及び第2導体11Bを介して、アンテナコイルの一端及び他端にそれぞれ電気的に接続されている。アンテナコイルの第1配線パターン20Aは、配線導体パターン10Aに対して直列に接続される一方、第1配線パターン20Gは、配線導体パターン10Bに対して直列に接続される。
より詳しく説明すると、第1導体11Aの一端が、樹脂部材70の第2主面VS2上に形成された第1配線パターン20Aに接続され、第1導体11Aの他端が磁性体回路基板1に設けられた接続端子12Aに接続される。第2導体11Bの一端が樹脂部材70の第2主面VS2上に形成された第1配線パターン20Gに接続され、第2導体11Bの他端が磁性体回路基板1に設けられた接続端子12Bに接続される。
第1導体11A及び第2導体11Bは、例えば、柱状の金属ピンである。第1導体11A及び第2導体11Bの長手方向の長さ、即ちZ方向の長さは、RFIC素子61やチップキャパシタ62等の表面実装部品の厚さよりも長い。第1導体11A及び第2導体11Bは、導電性を有する材料から作られていればよく、例えば、Cu等の金属材料から作られていればよい。
<RFIC素子>
RFIC素子61は、第1入出力端子61aと第2入出力端子61bとを有するRFICチップ(ベアチップ)がパッケージングされたものである。RFIC素子61は、磁性体回路基板1の第2面PS2側に実装される。より具体的には、図4及び図5に示すように、RFIC素子61の第1入出力端子61aは、磁性体回路基板1の第2面PS2側に形成された配線導体パターン10Aの給電端子に接続される。第2入出力端子61bは、磁性体回路基板1の第2面PS2側に形成された配線導体パターン10Bの給電端子に接続される。また、RFIC素子61は、磁性体回路基板1の第2面PS2側に形成されたNC端子にも接続される。
図6は、無線ICデバイス101の回路図である。RFIC素子61には、アンテナコイルANTが接続される。アンテナコイルANTには、チップキャパシタ62が並列接続されると共に、チップキャパシタ63,64が直列接続される。アンテナコイルANTと、チップキャパシタ62,63,64と、RFIC素子61自身が持つ容量成分と、でLC共振回路が構成される。また、チップキャパシタ62,63,64は、周波数を調整するための整合回路を構成している。チップキャパシタ62,63,64のキャパシタンスは、LC共振回路の共振周波数がRFIDシステムの通信周波数と実質的に等しい周波数、例えば13.56MHzとなるように選定される。
図4に示すように、無線ICデバイス101は、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50F上に、めっき層80A及び80Bを設けている。めっき層80A及び80Bは、Cu等のめっき膜により形成される。めっき層80A及び80Bは、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fの膜厚を厚くし、コイルの直流抵抗成分を低減する。更に、無線ICデバイス101は、めっき層80A及び80Bの上に、酸化防止用の保護層90A及び90Bを設けている。保護層90A及び90Bは、例えば、ソルダーレジスト膜等の保護用樹脂膜により形成される。なお、図1〜3においては、説明を簡略化するために、めっき層80A及び80B、保護層90A及び90Bを省略している。
[発明を実施するための形態]において、「RFID素子」は、RFICチップそのものであってもよいし、RFICチップに整合回路等を一体化したRFICパッケージであってもよい。また、「RFIDタグ」は、RFIC素子とRFIC素子に接続されたアンテナコイルとを有したものであって、電波(電磁波)または磁界を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体と定義する。つまり、本実施形態の無線ICデバイスはRFIDタグとして構成される。
RFIC素子61は、HF帯RFIDシステム用の、例えば、HF帯の高周波無線ICチップを備える。無線ICデバイス101は、例えば、管理対象の物品に設けられる。その物品に取り付けられた無線ICデバイス101、即ちRFIDタグをリーダ/ライタ装置に近接させることで、無線ICデバイス101のアンテナコイルとRFIDのリーダ/ライタ装置のアンテナコイルとが磁界結合する。これにより、RFIDタグとリーダライタ装置との間でRFID通信がなされる。
[第1金属体及び第2金属体の配置]
次に、実施の形態1に係る無線ICデバイス101における第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fの配置について、図7及び図8を用いて説明する。
図7は、実施例1の無線ICデバイスの横断面図である。図8は、実施例2の無線ICデバイスの横断面図である。実施例1の無線ICデバイスと実施例2の無線ICデバイスとは、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fの配置が異なる。
実施例1及び実施例2のいずれにおいても、複数の第1金属体30A〜30F及び複数の第2金属体40A〜40Fは、それぞれY軸方向に配列され、且つZ軸方向に見て千鳥状に配置(zigzag alignment)される。図7に示すように、実施例1では、矩形ヘリカル状のアンテナコイルは、コイル内外径の異なる2種のループを含む。第1金属体30Aと第2金属体40Aとを含むループ、第1金属体30Cと第2金属体40Cとを含むループ、第1金属体30Dと第2金属体40Dとを含むループ、第1金属体30Fと第2金属体40Fとを含むループ、のそれぞれの開口幅はWwである。また、第1金属体30Bと第2金属体40Bとを含むループ、第1金属体30Eと第2金属体40Eとを含むループ、のそれぞれの開口幅はWnである。そして、Wn<Wwである。一方、実施例2では、図8に表れるように、いずれのループの開口幅はWで同じである。
実施例1では、矩形ヘリカル状のアンテナコイルの2つの開口面位置のループ、即ち第1金属体30Aと第2金属体40Aとを含むループ、及び、第1金属体30Fと第2金属体40Fとを含むループの内外径は、2種のループのうち大きい方のループである。
換言すると、複数の第1金属体30A〜30Fのうち、Y軸方向での第1端位置の第1金属体30Aと、複数の第2金属体40A〜40Fのうち、Y軸方向での第3端位置の第2金属体40Aと、を含むループを「第1ループ」と表す。複数の第1金属体30A〜30Fのうち、Y軸方向での第2端位置の第1金属体30Fと、複数の第2金属体40A〜40Fのうち、Y軸方向での第4端位置の第2金属体40Fと、を含むループを「第2ループ」と表す。この場合、第1ループ及び第2ループの内外径は、2種のループのうち内外径の大きいループである。
図7及び図8において、破線は矩形ヘリカル状のアンテナコイルに対して磁束が出入りする磁束の概念図である。図8に示す実施例2では、矩形ヘリカル状のアンテナコイルの2つの開口面位置のループの実質的な内外径は、上記ループの開口幅Wより小さい。また、磁束は隣接する金属体の間隙から漏れやすい。一方、図7に示す実施例1では、矩形ヘリカル状のアンテナコイルの2つの開口面位置のループの内外径は、2種のループのうち内外径の大きいループであるので、アンテナコイルに対して磁束が出入りする実質的なコイル開口は実施例2に対して大きい。また、磁束は隣接する金属体の間隙から漏れ難い。そのため、アンテナコイルは通信相手のアンテナに対して相対的に広い位置関係で磁界結合できる。つまり、3つ以上のターン数を持つヘリカル状のアンテナコイルを形成する場合、コイル軸であるY軸方向の両端側のループ面積が大きくなるように、金属体を配置することが好ましい。
なお、上記矩形ヘリカル状のアンテナコイルは、内外径の異なる3種以上の複数種のループを含んでもよい。その場合でも、アンテナコイルの2つの開口面位置のループの内外径は、複数種のループのうち内外径の最も大きいループであればよい。
[製造方法]
実施の形態1に係る無線ICデバイス101の製造方法について、図9A〜9Hを用いて説明する。図9A〜9Hは、無線ICデバイス101の製造工程を順に示す図である。
図9Aに示すように、磁性体回路基板1を準備する。具体的には、磁性体回路基板1の第2面PS2上に配線導体パターン10A,10Bを形成する。また、磁性体回路基板1の第2面PS2上に、RFIC素子等を実装するための給電端子及びNC端子、チップキャパシタ62,63,64を実装するためのランド、第1導体11A及び第2導体11Bを接続するための接続端子12A,12Bを形成する。更に、磁性体回路基板1の第2面PS2に、これらの給電端子、ランド、及び接続端子12A,12Bを接続するための引回しパターン等を形成する(図5参照)。
次に、磁性体回路基板1の配線導体パターン10A,10Bに、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63,64、第1導体11A及び第2導体11Bをそれぞれはんだ等の導電性接合材を介して実装する。はんだを使う場合、磁性体回路基板1の第2面PS2の配線導体パターン10A,10Bに、はんだペーストを印刷し、各部品をマウンターで実装した後、これらの部品をリフロープロセスではんだ付けする。これにより、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63,64、第1導体11A及び第2導体11Bを磁性体回路基板1に電気的に導通させ、且つ構造的に接合する。
磁性体回路基板1は、例えば、フェライト基板等である。配線導体パターン10A,10B、ランド、及び接続端子12Aは、銅箔をパターニングしたものである。磁性体回路基板1は、フェライト基板に厚膜パターンを形成したものであってもよい。
例えば、配線導体パターン10A,10Bの断面寸法は、18μm×100μmである。これらのパターニングを行った後に、Cu等のめっきを施してトータル膜厚を40〜50μmに厚くすることが好ましい。
RFIC素子61は、RFIDタグ用のRFICチップをパッケージングしたものである。チップキャパシタ62,63,64は、例えば積層型セラミックチップ部品である。
次に、図9Bに示すように、粘着層2を有する台座3の粘着層2に磁性体回路基板1、第1金属体30A〜30F、及び第2金属体40A〜40Fをそれぞれ配置する。磁性体回路基板1は、第2面PS2側を粘着層2側にして、第1導体11A及び第2導体11Bを粘着層2に立てた状態で台座3に配置される。第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、それぞれ一端側である第1端側及び第3端側を粘着層2側にして、台座3に立てた状態で配置される。このように、磁性体回路基板1、第1金属体30A〜30F、及び第2金属体40A〜40Fを台座3に強固に固定した状態で実装する。なお、磁性体回路基板1は、安定して台座3に固定するために、例えば、樹脂部材70と同様の材料から作られた支持部材により、粘着層2に固定されてもよい。
粘着層2は、例えば、粘着性を有する樹脂である。第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、それぞれCu製の金属ピンである。また、これらの金属ピンは、例えば直径0.3mm、長さ7mm程度の円柱状である。金属ピンは、Cuを主成分としたものに限定されるわけではないが、導電率や加工性の点でCuを主成分としたものが好ましい。
次に、図9Cに示すように、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fの高さまで樹脂部材70を形成する。具体的には、エポキシ樹脂等を所定高さまで塗布する。所定の高さとは、少なくとも第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fの高さ以上である。これにより、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fが、樹脂部材70によって被膜される。
次に、図9Dに示すように、樹脂部材70の第1主面VS1を平面的に研磨していくことで、第1金属体30A〜30Fの第2端、及び第2金属体40A〜40Fの第4端を露出させる。
樹脂部材70は、液状樹脂の塗布により設けてもよいし、半硬化シート状樹脂の積層に
よって設けてもよい。
次に、図9Eに示すように、第1金属体30A〜30Fの第2端、及び第2金属体40A〜40Fの第4端が露出する樹脂部材70の第1主面VS1に、第2配線パターン50A〜50Fを形成する(図3参照)。具体的には、樹脂部材70の第1主面VS1に、導電性ペーストをスクリーン印刷することによって第2配線パターン50A〜50Fを形成する。これにより、第2配線パターン50A〜50Fは、第1金属体30A〜30Fの第2端と、第2金属体40A〜40Fの第4端とに接続される。
次に、図9Fに示すように、樹脂部材70から、粘着層2を有する台座3を取り除き、樹脂部材70の第2主面VS2に、第1金属体30A〜30Fの第1端と、第2金属体40A〜40Fの第3端と、第1導体11A及び第2導体11Bの一端と、を露出させる。具体的には、樹脂部材70から台座3を取り外し、粘着層2と樹脂部材70とを平面的に研磨していくことで、第1金属体30A〜30Fの第1端と、第2金属体40A〜40Fの第3端と、第1導体11A及び第2導体11Bの一端と、を樹脂部材70の第2主面VS2に露出させる。
次に、図9Gに示すように、第1金属体30A〜30Fの第1端、及び第2金属体40A〜40Fの第3端が露出する樹脂部材70の第2主面VS2に、第1配線パターン20A〜20Gを形成する(図2参照)。具体的には、樹脂部材70の第2主面VS2に、導電性ペーストをスクリーン印刷することによって、第1配線パターン20A〜20Gを形成する。これにより、第1配線パターン20A〜20Gは、第1金属体30A〜30Fの第1端と、第2金属体40A〜40Fの第3端とに接続される。また、第1配線パターン20A及び20Gは、それぞれ第1導体11A及び第2導体11Bの一端に接続される。
なお、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fは、それぞれ樹脂部材70の第2主面VS2及び第1主面VS1に、めっき法等によってCu膜等の導体膜を形成し、これをフォトレジスト膜形成及びエッチングによってパターニングして形成してもよい。
次に、図9Hに示すように、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fに、めっき層80A,80Bを形成する。また、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fの形成面にめっき層80A,80Bの上から保護層90A,90Bを形成する。
めっき層は、Cu等のめっきによって形成される。Cuめっき膜の場合、Cu等のめっき膜の表面に、更にAuめっき膜を形成してもよい。めっき膜を形成することにより、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fの膜厚が厚くなり、それらの直流抵抗(DCR)が小さくなって、導体損失が低減できる。このことにより、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40FのDCRと同等程度にまで、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50FのDCRを小さくすることができる。すなわち、この段階の素体は、外表面に第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fが露出したものである。そのため、この素体をめっき液に浸漬することにより、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fの厚みを選択的に厚くすることができる。例えば、無線ICデバイス101では、配線導体パターン10A,10Bの厚みに比べて、第1配線パターン20A〜20Gの厚みを増やすことができる。
保護層90A,90Bは、酸化防止用の保護用樹脂膜であり、例えば、ソルダーレジスト膜等である。
なお、上記の工程は、マザー基板状態のまま処理される。最後に、マザー基板を個々の
無線ICデバイス単位(個片)に分離する。
[効果]
実施の形態1に係る無線ICデバイス101によれば、以下の効果を奏することができる。
実施の形態1に係る無線ICデバイス101によれば、磁性体回路基板1上にRFIC素子61等を実装することにより、省スペース化を図ることができる。また、磁性体回路基板1にアンテナコイルを実装する構成ではないため、簡易な構成で無線ICデバイス101のサイズを小型化することができる。
磁性体回路基板1は、アンテナコイルの磁性体コアとして作用するため、アンテナコイルのL値の向上や、アンテナ性能の向上を行うことができる。このため、無線ICデバイス101では、アンテナコイルを大型化することなく、所定のインダクタンス値のアンテナコイルが得られる。また、無線ICデバイス101では、アンテナコイルの高さを低くしても所定のインダクタンスを得ることができる。
また、無線ICデバイス101によれば、磁性体回路基板1の集磁効果により、通信相手のアンテナとの磁界結合を高めることができる。更に、磁性体回路基板1にRFIC素子61が実装されているため、RFIC素子によるアンテナコイルの磁界形成の妨げを抑制することができる。例えば、RFIC素子61のデジタル信号の入出力によるノイズがアンテナコイルの磁界形成の妨げとなることを抑制することができる。また、アンテナコイルの磁界によるRFIC素子61への干渉も小さくすることができる。
磁性体回路基板1は、アンテナコイルから離れて樹脂部材70の中に埋設されている。このため、磁性体回路基板1の第2面PS2側において、磁性体回路基板1と樹脂部材70との間にスペースを設けている。無線ICデバイス101によれば、このスペースを有効活用し、例えば、磁性体回路基板1の第2面PS2側にRFIC素子61やキャパシタ等の実装部品を実装することができる。このため、無線ICデバイス101の小型化を実現することができる。また、磁性体回路基板1の第1面PS1と第2面PS2との両方に実装部品を実装することもできる。
また、磁性体回路基板1の第2面PS2がアンテナコイルから離れて配置されることにより、RFIC素子61がアンテナコイルの近傍を通過する磁束の妨げになりにくい。特に、RFIC素子61の実装面である第2面PS2が、アンテナコイルの巻回軸G1方向から見て、樹脂部材70の第2主面VS2よりも巻回軸G1寄りに配置されることで、RFIC素子61によるアンテナコイルの磁界の妨げを更に少なくすることができる。
無線ICデバイス101によれば、比較的大きな高さ寸法を持った部分を金属ピンによってアンテナコイルの一部を形成できるため、例えば、層間接続導体を有する複数の基材層を積層して高さ方向の接続部を形成する場合に比べて、接続箇所を減らすことができる。したがって、無線ICデバイス101によれば、アンテナコイルの電気特性を向上させることができる。なお、ビアホール型の層間接続導体を有する複数の基材層を積層して接続部を形成する場合、基板に貫通孔を形成し、この貫通孔に導電性ペースト等を充填して層間接続導体、即ちビアを形成している。この場合、貫通孔は加工の際にテーパが形成されるため、複数の基材層を積層すると、径の異なるビアが積層されることになる。また、複数の基材層を積層するとき、ビア間には銅等の異種の材料が挟まれる可能性がある。
無線ICデバイス101によれば、多層基板にコイルを形成する必要がなく、複雑な配線を引回す必要がない。そのため、無線ICデバイス101は、比較的大きな高さ寸法を持ち、コイル開口サイズの設計上の自由度に優れたコイル構造を容易に実現することができる。また、アンテナコイルの低抵抗化が可能であるので、高感度であり、かつ小型化が可能な無線ICデバイスが得られる。
第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、柱状の金属ピンで構成されている。金属ピンは、金属ピン自身が持つ直流抵抗成分を、導電性ペーストの焼成による焼結金属体や、導電性薄膜のエッチングによる薄膜金属体等の導体膜のDCRより十分に小さくできる。そのため、Q値が高い、即ち低損失のアンテナコイルを備えた無線ICデバイス101を提供することができる。
アンテナコイルを構成するパターンのうち、X軸方向に延びる第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fは、Cu等のめっき膜を形成することにより、膜厚を厚くし、コイルの直流抵抗成分をさらに低減することができる。
RFIC素子61に接続されるキャパシタ62,63,64を備えるため、RFIC素子とアンテナコイルとの整合用または共振周波数設定用の回路を容易に構成でき、外部の回路を無くしたり、簡素化したりすることができる。
RFIC素子61、チップキャパシタ62,63,64等の表面実装チップ部品、第1金属体30A〜30F、及び第2金属体40A〜40Fは、樹脂部材70で保護されるので、無線ICデバイス101全体は堅牢である。特に、この無線ICデバイス101を樹脂成型物品に埋設する際、射出成型時に流動する高温の樹脂に対して、表面実装チップ部品のはんだ接続部が保護される。なお、射出成型時に流動する樹脂は、例えば、瞬間的には300℃以上の高温となるが、RFIC素子自体は樹脂部材70に埋設されており、また、RFIC素子と磁性体回路基板1との接合部分も樹脂部材に埋設されているので、RFIC素子、さらには無線ICデバイスの信頼性は損なわれない。
RFIC素子61は、無線ICデバイス101の外方へ露出することがなく、RFIC素子61の保護機能が高くなり、RFIC素子61を外部に搭載することによる大型化が避けられる。また、磁性体回路基板1に対するRFIC素子61の接続部の信頼性が高まる。これにより、プラスチック等の樹脂成形品に内蔵可能な、つまり、射出成形時の高温下にも耐えられる、高耐熱性の無線ICデバイスを実現できる。特に、実施の形態1の無線ICデバイス101は、RFIC素子61を搭載した磁性体回路基板1が、樹脂部材70の表面から離れている。このため、無線ICデバイス101を内蔵するプラスチック等の樹脂成形品を射出成型により製造する場合に、射出成型時の樹脂の熱が磁性体回路基板1に伝わりにくくなっているため、はんだスプラッシュ等の危険性を下げることができる。
また、磁性体回路基板1を樹脂部材70に埋設することにより、磁性体回路基板1を保護することができる。例えば、射出成型体に無線ICデバイス101を内蔵する場合でも、高温の射出成型用樹脂が磁性体回路基板1に直接接触しない。このため、無線ICデバイス101は、耐熱性に優れている。
第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fは、樹脂部材70の表面にスクリーン印刷するか、又はパターニングすればよいので、その形成が容易である。また、第1配線パターン20A〜20Gから第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fへの接続が容易であり、第2配線パターン50A〜50Fから第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fへの接続が容易である。さらに、磁性体回路基板1の第1導体11A及び第2導体11Bと、第1配線パターン20A、20Gとの接続を容易にすることができる。
RFIC素子61は、磁性体回路基板1の第2面PS2に形成された配線導体パターン10A,10B、第1導体11A及び第2導体11Bを介して、アンテナコイルに接続されている。そのため、ブリッジパターンの形成が容易になる。なお、RFIC素子61は、第1導体11A及び第2導体11Bに直接接続してもよい。RFIC素子61が、引回し用の配線導体パターン10A,10Bを介して第1導体11A及び第2導体11Bに接続されることで、磁性体回路基板1の第2面PS2の任意の位置に第1導体11A及び第2導体11Bを形成することができる。なお、RFIC素子61は、直接第1導体11A及び第2導体11Bに接続してもよい。
無線ICデバイス101において、アンテナコイルの実質的な開口径が大きいので、通信相手のアンテナに対して相対的に広い位置関係で通信することができる。
第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、少なくともコイル軸方向の端部においてそれぞれ配列方向に千鳥状に配置されることにより、金属体の本数を増やしてターン数を増やしても、無線ICデバイス101のサイズを小型化することができる。
実施の形態1に係る無線ICデバイス101の製造方法によれば、以下の効果を奏することができる。
実施の形態1に係る無線ICデバイス101の製造方法によれば、省スペース化を図り、簡易な構成で小型化するとともに、コイル開口面積が大きく、直流抵抗が小さい等の優れた電気特性を有し、かつ堅牢性や耐熱性の高い無線ICデバイス101を容易に製造することができる。
無線ICデバイス101の製造方法によれば、粘着層2を有する台座3を用いることにより、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fを強固に固定することができるため、より小さい幅の金属体をアンテナコイルに使用することができる。したがって、アンテナコイルの巻回数が多く、インダクタンスの高いアンテナコイルを製造することができる。また、比較的大きな高さ寸法を持ち、小さい幅の金属体を使用することにより、コイル開口面積をさらに大きくすることができる。
なお、実施の形態1に係る無線ICデバイス101において、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、円柱状の側部が樹脂部材70の第1側面VS3及び第2側面VS4に埋設されているが、この構成に限るものではない。第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fの側部が、樹脂部材70の第1側面VS3及び第2側面VS4から一部露出する構成であってもよい。
実施の形態1における第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、円柱状のCu製ピンを例として説明したが、これに限定されない。例えば、スタッド状のばんぷ等であってもよい。
実施の形態1における第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、それぞれY軸方向に配列され、且つZ軸方向に見て千鳥状に配置(zigzag alignment)される構成について説明したが、これに限定されない。例えば、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、一列に並べて配列されていてもよい。
実施の形態1における磁性体回路基板1は、アンテナコイルの巻回軸G1方向から見て、樹脂部材70の第2主面VS2よりも巻回軸G1寄りに配置される例を説明したが、これに限定されない。例えば、磁性体回路基板1は、少なくとも一部がアンテナコイルの内部に位置し、磁性体コアとして機能すればよい。また、磁性体回路基板1の位置を変更することによって、磁性体コアの集磁効果を利用し、アンテナコイルの磁界の指向性を変更することができる。例えば、樹脂部材70の第1主面VS1側に磁界を向かわせたい場合、磁性体回路基板1を第1主面VS1に近づけて配置すればよい。
実施の形態1におけるRFIC素子61においては、RFICチップがパッケージされたものを説明したが、これに限定されない。例えば、RFIC素子61は、ベアチップ状のRFICであってもよい。この場合、RFICは、Au電極端子を有し、磁性体回路基板1のAuめっき膜が印刷された給電端子に対して超音波接合により接続される。
実施の形態1に係る無線ICデバイス101においては、チップキャパシタ62,63,64の3つのキャパシタ用いて整合回路を構成する例について説明したが、これに限定されない。無線ICデバイス101においては、共振周波数設定用のキャパシタとして、少なくとも1つ以上のキャパシタが、アンテナコイルに並列に接続されていればよい。
実施の形態1における樹脂部材70は、フェライト粉等の磁性体粉を含む構成であってもよい。この構成によれば、樹脂部材70は磁性を有するため、所定のインダクタンスのアンテナコイルを得るに要する全体のサイズを小さくすることができる。また、樹脂部材70が磁性を有する場合には、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fの側部を樹脂部材70の側面から露出させてもよい。このような構成により、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fが露出する樹脂部材70の表面へも磁界が広がり、これらの方向での通信も可能となる。
実施の形態1において、RFIC素子61及びキャパシタ62,63,64は、磁性体回路基板1の第2面PS2側に実装する構成について説明したが、これに限定されない。磁性体回路基板1は、第1面PS1に実装部品を実装してもよいし、第1面PS1と第2面PS2との両面に実装部品を実装してもよい。
実施の形態1における第1導体11A及び第2導体11Bは、柱状の金属ピンである例を説明したが、これに限定されない。例えば、第1導体11A及び第2導体11Bは、磁性体回路基板1上に形成されたスタッド上のばんぷであってもよいし、めっき層80を形成する際にめっきを成長させて作成したものであってもよい。
実施の形態1における磁性体回路基板1は、焼結系のフェライト基板を例として説明したが、これに限定されない。磁性体回路基板1は、磁性体を有する回路基板であればよく、磁性体材料から作られていればよい。
実施の形態1において、アンテナコイルの一部を形成する第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、金属ピンである例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、樹脂部材70に設けられた複数の貫通孔に導電性ペーストを充填することによって金属化した金属体であってもよい。第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、樹脂部材70に設けられた複数の貫通孔にめっき膜を形成した金属体(スルーホールめっき)であってもよい。また、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、樹脂部材70の側面に導電性ペーストを印刷して金属化した金属体、又は樹脂部材70の側面にめっき膜をパターニングにすることによって形成される金属体であってもよい。
(実施の形態2)
[全体構成]
本発明に係る実施の形態2の無線ICデバイスについて、図10及び図11を用いて説明する。
図10は、実施の形態2に係る無線ICデバイス102の概略構成を示す。図11は、実施の形態2に係る無線ICデバイス102の底面図を示す。なお、実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
図10に示すように、実施の形態2の無線ICデバイス102は、実施の形態1の無線ICデバイス101と比べて、磁性体回路基板1を樹脂部材70の第2主面VS2に配置している点が異なる。また、実施の形態2では、実施の形態1と比べて、磁性体回路基板1の第2面PS2が樹脂部材70の第2主面VSの一部を形成し、第3導体11C及び第4導体11Dが磁性体回路基板1の内部に設けられている点が異なる。
無線ICデバイス102の磁性体回路基板1は、樹脂部材70の第2主面VS2に配置されており、磁性体回路基板1の第2面PS2が樹脂部材70の第2主面VS2の一部を形成している。図11に示すように、磁性体回路基板1の第2面PS2には、第1配線パターン20A〜20Gの一部が形成されている。
磁性体回路基板1の第1面PS1には、配線導体パターン10A,10B、給電端子、NC端子、接続端子等が形成されており、RFIC素子61やキャパシタ62等が実装されている。アンテナコイルの巻回軸G1方向、即ちY軸方向から見たとき、第1面PS1は、第2面PS2よりも巻回軸寄りに配置されている。即ち、無線ICデバイス102では、アンテナコイルの巻回軸G1方向から見たとき、第2面PS2と比べて、巻回軸G1に近い位置にある第1面PS1に、RFIC素子61の実装面を形成している。
磁性体回路基板1の内部には、第3導体11C及び第4導体11Dが設けられている。第3導体11Cは、第1面PS1上に形成された配線導体パターン10Aと、第2面PS2上に形成された第1配線パターン20Aと、を電気的に接続する。第4導体11Dは、第1面PS1上に形成された配線導体パターン10Bと、第2面PS2上に形成された第1配線パターン20Gと、を電気的に接続する。第3導体11C及び第4導体11Dは、Ag系導電性ペーストを焼成することにより作られたビア導体である。第3導体11C及び第4導体11Dは、接続端子を介して配線導体パターン10A,10Bに接続されることにより、RFIC素子61の第1入出力端子61a及び第2入出力端子61bに接続される。
[製造方法]
実施の形態1に係る無線ICデバイス101の製造方法について、図12A〜12Jを用いて説明する。図12A〜12Jは、無線ICデバイス101の製造工程を順に示す図である。
図12Aに示すように、未焼成の磁性体材料110に第3導体11C及び第4導体11Dを設けるための、導体用孔111A,111Bを形成する。磁性体材料110とは、例えば、フェライトシート等である。
図12Bに示すように、導体用孔111A,111BにAg系の導電性ペーストを充填する。また、磁性体材料110の第1面PS1に配線導体パターン10A,10Bを形成するためのAg系の導電性ペーストを印刷する。その後、磁性体材料110を、800から1000℃の温度で焼成する。焼成後、降温工程を経て、第1面PS1上に形成された配線導体パターン10A,10Bと、内部に設けられた第3導体11C及び第4導体11Dと、を有する磁性体回路基板1が得られる。
図12Cに示すように、磁性体回路基板1の第1面PS1側に形成された配線導体パターン10A,10B上にRFIC素子61やキャパシタ62等の表面実装部品が導電性接合材を介して実装される。導電性接合材としては、例えば、Sn−Ag系のはんだを使用する。なお、各部品は、マウンターで実装され後、リフロープロセスではんだ付けされる。
RFIC素子61は、RFIDタグ用のRFICチップをパッケージングしたものである。チップキャパシタ62,63,64は、例えば積層型セラミックチップ部品である。
次に、図12Dに示すように、粘着層2を有する台座3の粘着層2に磁性体回路基板1、第1金属体30A〜30F、及び第2金属体40A〜40Fをそれぞれ配置する。磁性体回路基板1は、第2面PS2側を粘着層2側にして台座3に配置される。第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、それぞれ一端側である第1端側及び第3端側を粘着層2側にして、台座3に立てた状態で実装される。このように、磁性体回路基板1、第1金属体30A〜30F、及び第2金属体40A〜40Fを台座3に強固に固定した状態で配置する。なお、磁性体回路基板1は、安定して台座3に固定するために、例えば、樹脂部材70と同様の材料から作られた支持部材により、粘着層2に固定されてもよい。
次に、図12Eに示すように、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fの高さまで樹脂部材70を形成する。具体的には、エポキシ樹脂等を所定高さまで塗布する。所定の高さとは、少なくとも第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fの高さ以上である。これにより、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fが、樹脂部材70によって被膜される。
次に、図12Fに示すように、樹脂部材70の第1主面VS1を平面的に研磨していくことで、第1金属体30A〜30Fの他端側である第2端、及び第2金属体40A〜40Fの他端側である第4端を露出させる。
次に、図12Gに示すように、第1金属体30A〜30Fの第2端、及び第2金属体40A〜40Fの第4端が露出する樹脂部材70の第1主面VS1に、第2配線パターン50A〜50Fを形成する(図3参照)。具体的には、樹脂部材70の第1主面VS1に、導電性ペーストをスクリーン印刷することによって第2配線パターン50A〜50Fを形成する。これにより、第2配線パターン50A〜50Fは、第1金属体30A〜30Fの第2端と、第2金属体40A〜40Fの第4端とに接続される。
次に、図12Hに示すように、樹脂部材70から、粘着層2を有する台座3を取り除き、樹脂部材70の第2主面VS2に、第1金属体30A〜30Fの第1端と、第2金属体40A〜40Fの第3端と、第3導体11C及び第4導体11Dの一端と、を露出させる。具体的には、樹脂部材70から台座3を取り外し、粘着層2と樹脂部材70と磁性体回路基板1を平面的に研磨していくことで、第1金属体30A〜30Fの第1端と、第2金属体40A〜40Fの第3端と、第3導体11C及び第4導体11Dの一端と、を樹脂部材70の第2主面VS2に露出させる。
次に、図12Iに示すように、第1金属体30A〜30Fの第1端、第2金属体40A〜40Fの第3端、第3導体11C及び第4導体11Dの一端が露出する樹脂部材70の第2主面VS2と、磁性体回路基板1の第2面PS2に、第1配線パターン20A〜20Gを形成する(図11参照)。具体的には、樹脂部材70の第2主面VS2と磁性体回路基板1の第2面PS2とに、導電性ペーストをスクリーン印刷することによって、第1配線パターン20A〜20Gを形成する。これにより、第1配線パターン20A〜20Gは、第1金属体30A〜30Fの第1端と、第2金属体40A〜40Fの第3端とに接続される。また、第1配線パターン20A及び20Gは、それぞれ第3導体11C及び第4導体11Dの一端に接続される。
なお、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fは、それぞれ樹脂部材70の第2主面VS2及び第1主面VS1に、めっき法等によってCu膜等の導体膜を形成し、これをフォトレジスト膜形成及びエッチングによってパターニングして形成してもよい。
次に、図12Jに示すように、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fに、めっき層80A,80Bを形成する。また、第1配線パターン20A〜20G及び第2配線パターン50A〜50Fの形成面にめっき層80A,80Bの上から保護層90A,90Bを形成する。
なお、上記の工程は、マザー基板状態のまま処理される。最後に、マザー基板を個々の
無線ICデバイス単位(個片)に分離する。
[効果]
実施の形態2に係る無線ICデバイス102によれば、以下の効果を奏することができる。
実施の形態2に係る無線ICデバイス102は、磁性体回路基板1を樹脂部材70の第2主面VS2に配置し、第2面PS2により樹脂部材70の第2主面VS2の一部を形成している。また、磁性体回路基板1は、その内部に第3導体11C及び第4導体11Dを設けることにより、第1面PS1上に形成された配線導体パターン10A,10Bと、第2面PS2に形成された第1配線パターン20A,20Gとを接続している。このような構成により、アンテナコイルのL値を向上させつつ、アンテナコイルの高さを低くすることができるため、無線ICデバイス102のサイズを小型化することができる。
また、磁性体回路基板1の第1面PS1にRFIC61等の実装部品を実装することにより、実施の形態1に比べて、より簡単に、磁性体回路基板1と実装部品との接合部分を、樹脂部材70の第2主面VS2よりもアンテナコイルの巻回軸G1寄りに配置することができる。RFIC素子61の実装面は、アンテナコイルにより形成される磁界を妨げやすい。そのため、アンテナコイルの巻回軸(Y軸)方向から見たとき、第2面PS2と比べて、巻回軸G1に近い位置にある第1面PS1に、RFIC素子61の実装面を形成することにより、容易にRFIC素子61とアンテナコイルとの距離を取ることができる。したがって、実施の形態2に係る無線ICデバイス102では、実施の形態1に比べて、RFIC素子61等の実装部品を、巻回軸G1に近づけて配置することができるため、更に電気的特性及び熱的特性を高めることができる。
実施の形態2に係る無線ICデバイス102の製造方法によれば、アンテナコイルのL値を向上させつつ、アンテナコイルの高さを低くし、小型化することが可能な無線ICデバイス102を容易に製造することができる。また、磁性体回路基板1を製造するときに、第3導体11C及び第4導体11Dを形成することができるため、製造工程の簡略化が可能となる。
なお、実施の形態2において、第3導体11C及び第4導体11Dを、Ag系の導電性ペーストを焼成することにより形成されるビア導体として説明したが、これに限定されない。第3導体11C及び第4導体11Dは、導電性を有し、配線導体パターン10A,10Bと、第1配線パターン20A,20Gとを電気的に接続可能な材料から作られていればよい。
実施の形態2において、磁性体材料110は、フェライトシートとして説明したが、これに限定されない。磁性体材料110は、磁性体を有する材料であればよい。
(実施の形態3)
[全体構成]
本発明に係る実施の形態3の無線ICデバイスについて、図13及び図14を用いて説明する。
図13は、実施の形態3に係る無線ICデバイス103の概略構成を示す。図14は、実施の形態3に係る無線ICデバイス103の底面図を示す。なお、実施の形態3では、主に実施の形態2と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態2と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態2と重複する記載は省略する。
図13に示すように、実施の形態3の無線ICデバイス103は、実施の形態2の無線ICデバイス102と比べて、磁性体回路基板1の第2面PS2が、樹脂部材70の第2主面VS2全体を形成している点が異なる。また、実施の形態3においては、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fが、磁性体回路基板1の第1面PS1上に設けられ、第1接続導体13A〜13F及び第2接続導体14A〜14Fにより、第1配線パターン20A〜20Gにそれぞれ接続されている点が異なる。
図13に示すように、無線ICデバイス103の磁性体回路基板1は、第2面PS2が樹脂部材70の第2主面VS2全体を形成している。磁性体回路基板1の第2面PS2上には、複数の第1接続端子15A〜15F及び複数の第2接続端子16A〜16Fが設けられている。磁性体回路基板1の内部には、第1配線パターン20A〜20Gと接続される複数の第1接続導体13A〜13F及び複数の第2接続導体14A〜14Fが設けられている。第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、第1接続端子15A〜15F及び第2接続端子16A〜16Fを介して、第1接続導体13A〜13F及び第2接続導体14A〜14Fに接続されている。図14に示すように、磁性体回路基板1の第2面PS2には、第1配線パターン20A〜20Gが形成されている。
実施の形態3においては、第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fは、磁性体回路基板1の第1面PS1上に設けられている。具体的には、第1金属体30A〜30Fの第1端が、磁性体回路基板1の第1面PS1上に設けられた第1接続端子15A〜15Fに接続されている。第2金属体40A〜40Fの第3端が、磁性体回路基板1の第1面PS1上に設けられた第2接続端子16A〜16Fに接続されている。
磁性体回路基板1は、その内部に第1接続導体13A〜13F及び第2接続導体14A〜14Fを設けている。第1接続導体13A〜13Fは、一端を第1配線パターン20A〜20Fに接続し、他端を第1接続端子15A〜15Fに接続している。これにより、第1接続導体13A〜13Fは、第1金属体30A〜30Fと、第1配線パターン20A〜20Fと、を電気的に接続している。第2接続導体14A〜14Fは、一端を第1配線パターン20B〜20Gに接続し、他端を第2接続端子16A〜16Fに接続している。これにより、第2接続導体14A〜14Fは、第2金属体40A〜40Fと、第1配線パターン20B〜20Gと、を電気的に接続している。第1金属体30A〜30Fと第1接続端子15A〜15Fとの接続、及び第2金属体40A〜40Fと第2接続端子16A〜16Fとの接続は、導電性接合材を介して行われる。導電性接合材としては、例えば、Sn−Ag系のはんだを使用する。
第1接続導体13A〜13F及び第2接続導体14A〜14Fは、導電性の材料から作られていればよく、例えば、第3導体11C及び第4導体11Dと同様に、Ag系の導電性ペーストを焼成して作られてもよい。
実施の形態3においては、磁性体回路基板1の一部が、アンテナコイルの磁性体コアとして機能している。したがって、磁性体回路基板1の少なくとも一部がアンテナコイルの内部に配置されていれば、磁性体回路基板1は、アンテナコイルの磁性体コアとしての機能を発揮する。
[効果]
実施の形態3に係る無線ICデバイス103によれば、以下の効果を奏することができる。
実施の形態3に係る無線ICデバイス103では、磁性体回路基板1の第2面PS2が樹脂部材70の第2主面VS2全体を形成している。また、磁性体回路基板1の第1面PS1上に設けられた第1金属体30A〜30F及び第2金属体40A〜40Fが、第1接続導体13A〜13F及び第2接続導体14A〜14Fを介して、第1配線パターン20A〜20Gに電気的に接続されている。このような構成により、磁性体回路基板1のサイズを大きくせずに、更にアンテナコイルのL値の向上や、アンテナ性能の向上を行うことができる。また、無線ICデバイス103では、アンテナコイルの高さを低くしても所定のインダクタンスを得ることができるため、更にデバイスを小型化することができる。
実施の形態3においては、アンテナコイルの内部に位置する部分の磁性体回路基板1が、アンテナコイルの磁性体コアとして機能し、この部分の集磁効果により、通信相手のアンテナとの磁界結合を高めることができる。
なお、実施の形態3において、第1接続導体13A〜13Fの数及び第1接続端子15A〜15Fの数は、第1金属体30A〜30Fの数と同じであり、第2接続導体14A〜14Fの数及び第2接続端子16A〜16Fの数は、第2金属体40A〜40Fの数と同じである。
(実施の形態4)
[全体構成]
本発明に係る実施の形態4の無線ICデバイスについて、図15を用いて説明する。
図15は、実施の形態4に係る無線ICデバイス104の概略構成を示す。なお、実施の形態3では、主に実施の形態2と異なる点について説明する。実施の形態4においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態4では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
図15に示すように、実施の形態4の無線ICデバイス104は、実施の形態1の無線ICデバイス101と比べて、磁性体回路基板1Aが、磁性体基材層1aと、磁性体補助層1bとを含む点が異なる。
実施の形態4における磁性体回路基板1Aは、第1面PS1、第2面PS2、及び磁性体回路基板1Aの内部中央に、それぞれ磁性体補助層1bを設け、それぞれの磁性体補助層1bの間に磁性体基材層1aを設けている。
磁性体基材層1a及び磁性体補助層1bは、多結晶相がほぼ全体を占めている材料から構成される。磁性体基材層1aにおける多結晶相と磁性体補助層1bにおける多結晶相とは、互いに実質的に同一の結晶構造を有しており、かつ磁性体補助層1bの線膨張係数α2は、磁性体基材層1aの線膨張係数α1よりも小さい。
磁性体基材層1aにおける多結晶相と磁性体補助層1bにおける多結晶相とは、フェライトからなる多結晶相である。また、磁性体基材層1aと磁性体補助層1bとは、同時に焼成されて得られる。
磁性体基材層1aを構成するフェライトは、例えば、Fe−Ni−Zn−Cu系のフェライトである。磁性体基材層1aを構成するフェライトは、例えば、酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)、及び酸化銅(CuO)を所定の比率で調合したものを焼成して作られる。これにより、磁性体基材層1aを構成するフェライトは、例えば、1MHzでの透磁率が150、線膨張係数α1が10.5の特性を有する。
磁性体補助層1bを構成するフェライトは、低透磁率のフェライトであることが好ましい。抵透磁率とは、例えば、透磁率が30以下である。低透磁率の磁性体補助層1bは、例えば、Fe−Ni−Zn−Cu系のフェライトである。磁性体補助層1bを構成するフェライトは、酸化第二鉄、酸化亜鉛、酸化ニッケル、及び酸化銅を所定の比率で調合したものを焼成して作られる。これにより、低透磁率の磁性体層を構成するフェライトは、例えば、1MHzでの透磁率が20、線膨張係数α2が9.5の特性を有する。
[効果]
実施の形態4に係る無線ICデバイス104によれば、以下の効果を奏することができる。
実施の形態4に係る無線ICデバイス104においては、磁性体回路基板1Aの第1面PS1、第2面PS2、及び磁性体回路基板1Aの内部中央に、磁性体補助層1bを配置し、その間に磁性体基材層1aを配置している。磁性体補助層1bは、多結晶相がほぼ全体を占めている材料で作られている。磁性体補助層1bにおける多結晶相は、磁性体基材層1aの多結晶相と同じ結晶構造を有する。また、磁性体補助層1bの線膨張係数α2は、磁性体基材層1aの線膨張係数α1よりも小さい。このような構成により、焼成工程の後の降温工程において、磁性体補助層1bよりも磁性体基材層1aの方が大きく収縮しようとし、磁性体補助層1bの主面には圧縮応力が残留する。その結果、磁性体回路基板1Aの機械的強度を向上させることができる。
また、磁性体補助層1bから離れた磁性体基材層1aの内部には、線膨張係数の差による内部応力が発生しやすい。実施の形態4においては、磁性体基材層1aの内部にも、磁性体補助層1bを配置することにより、磁性体基材層1aの内部に生じる内部応力を緩和することができる。
磁性体補助層1bが抵透磁率のフェライトで構成されていることにより、磁性体補助層1bに配線導体パターン10A,10B等を形成する場合に、配線導体パターン10A,10B等から発生する不要な磁場を抑制することができる。
なお、実施の形態4においては、磁性体回路基板1Aの第1面PS1、第2面PS2、磁性体回路基板1Aの内部中央に磁性体補助層1bをそれぞれ配置し、磁性体補助層1bの間に磁性体基材層1aを配置する構成について説明したが、これに限定されない。例えば、磁性体補助層1bは、磁性体回路基板1Aの第1面PS1と第2面PS2との両面のみに配置されてもよいし、磁性体回路基板1Aの第1面PS1と、第2面PS2とのうち少なくとも一方に配置してもよい。また、磁性体補助層1bは、磁性体回路基板1Aの第1面PS1と第2面PS2との両面に配置すると共に、磁性体回路基板1Aの内部に複数設けられてもよい。磁性体回路基板1Aの内部に配置される磁性体基材層1aには、クラックの原因となる内部応力が発生しやすいため、磁性体回路基板1Aの内部に磁性体補助層1bを配置することにより、内部応力を緩和することができる。
実施の形態4においては、磁性体補助層1bは、Fe−Ni−Zn−Cu系のフェライトを説明したが、これに限定されない。例えば、磁性体補助層1bを構成するフェライトは、Fe−Zn−Cu系のフェライトであってもよい。このフェライトは、例えば、酸化第二鉄、酸化亜鉛、及び酸化銅を所定の比率で調合したものを焼成して作られる。これにより、磁性体補助層1bを構成するフェライトは、例えば、1MHzでの透磁率が1.0、線膨張係数α2が9.0の特性を有する。また、磁性体補助層1bは、磁性体基材層1aと同程度かそれ以上の透磁率を有する層であってもよい。
(実施の形態5)
[全体構成]
本発明に係る実施の形態5の無線ICデバイスについて、図16〜図18を用いて説明する。
図16は、実施の形態5に係る無線ICデバイス105の概略構成を示す。図17は、実施の形態5の無線ICデバイス105の回路図である。図18は、実施の形態5の無線ICデバイス105の底面図である。なお、実施の形態5では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態5においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態5では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
図16に示すように、実施の形態5の無線ICデバイス105は、実施の形態1の無線ICデバイス101と比べて、磁性体回路基板1の第1面PS1及び第2面PS2との両面に表面実装部品を実装し、樹脂部材70の第2主面VS2に更に入出力端子P1,P2を形成している点が異なる。また、実施の形態5では、実施の形態1と比べて、リーダライタモジュール(以下、「RWモジュール」という)を形成している点が異なる。
図16に示すように、無線ICデバイス105の磁性体回路基板1の第1面PS1に、配線導体パターン10A,10Bが形成されている。磁性体回路基板1の第2面PS2には、配線導体パターン10C,10D及び第5導体11Eが形成されている。また、磁性体回路基板1の内部には第6導体11Fが設けられている。
配線導体パターン10A,10Bには、RW−IC素子5、整合回路用のキャパシタ62等の実装部品が実装されている。配線導体パターン10C,10Dには,ローパスフィルタ用のキャパシタ65,67等の実装部品が実装されている。また、第2面PS2に形成された配線導体パターン10Bは、樹脂部材70の第2主面VS2から第1主面VS1の方向へ延びる第5導体11Eを介して、樹脂部材70の第2主面VS2に形成された入出力端子P1と接続されている。
第5導体11Eは、例えば、第1導体11A及び第2導体11Bと同様の材料で作られている。第6導体11Fは、例えば、実施の形態2における第3導体11C及び第4導体11Dと同様の材料で作られている。
図17に示すように、RWモジュールは、RW−IC素子5と、ローパスフィルタ(以下、「LPF」という)6と、整合回路7と、アンテナコイルANTと、を備える。
RW−IC素子5は、RFIC素子61の1つであり、アンテナコイルANTに所定の高周波帯の信号を送信するものである。高周波体の信号とは、例えば、13MHz帯の信号である。RW−IC素子5は、通信相手に送信すべきベースバンド信号を、所定のデジタル変調方式に従って、所定の高周波帯の送信信号(正相信号)に変換する。また、RW−IC素子5は、正相信号に対し位相が180°回転した逆相信号を生成し、差動信号を生成する。なお、RW−IC素子5は、アンテナコイルANTを介して受信した高周波信号を処理するための給電回路として機能し、所定のデジタル変調方式に従って、アンテナコイルANTからの受信信号をベースバンド信号に変換することもできる。また、RW−IC素子5は、第1入出力端子61a、第2入出力端子61bに加えて、更に入出力端子P1,P2を備える。
LPF6は、RW−IC素子5から出力された差動信号から、予め定められた周波数以下の低域成分のみを通過させて、アンテナコイルANTに送信信号を出力している。これにより、不要な高調波成分がアンテナコイルANTから放射されるのを抑制している。LPF6は、キャパシタ65,66,67及びコイル68,69で構成される。
キャパシタ62,63,64で構成される整合回路7、及びアンテナコイルANTは、実施の形態1と同じであるため、説明を省略する。
実施の形態5においては、磁性体回路基板1の第2面PS2側にRW−IC素子5と、整合回路用のキャパシタと、を実装している。一方、磁性体回路基板1の第1面PS1側には、LPF6用のキャパシタとコイルを実装している。
図18に示すように、樹脂部材70の第2主面VS2の中央付近には、RW−IC素子5から引き出された入出力端子P1,P2が形成されている。入出力端子P1,P2は、マイコン等に接続される。
[効果]
実施の形態5に係る無線ICデバイス105によれば、以下の効果を奏することができる。
実施の形態5の無線ICデバイス105によれば、磁性体回路基板1の第1面PS1と第2面PS2の両方に表面実装部品を実装することにより、無線ICデバイス本体のサイズを大きくすることなく、実装部品の数を増やすことができる。また、無線ICデバイス105では、更に入出力端子P1,P2を設けることにより、マイコン等で制御することができる。
なお、実施の形態5においては、磁性体回路基板1の第1面PS1と第2面PS2の両方に表面実装部品を実装して、LPF6、整合回路7を有するRWモジュールを形成する例について説明したが、これに限定されない。例えば、実施の形態5においては、直流成分をカットするキャパシタ等、その他回路を実装してもよい。
なお、実施の形態5においては、RW−IC素子5の入出力端子P1,P2が、樹脂部材70の第2主面VS2の中央付近に配置される構成について説明したが、これに限定されない。入出力端子P1,P2は、任意の位置に配置してもよい。このような構成により、設計の自由度が向上する。
(実施の形態6)
[全体構成]
本発明に係る実施の形態6の無線ICデバイスについて、図19を用いて説明する。
図19は、実施の形態6に係る無線ICデバイス106の概略構成を示す。なお、実施の形態6では、主に実施の形態2と異なる点について説明する。実施の形態6においては、実施の形態2と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態6では、実施の形態2と重複する記載は省略する。
図19に示すように、実施の形態6の無線ICデバイス106は、実施の形態2の無線ICデバイス102と比べて、封止樹脂層140と、磁性体ブロック141とを含む点が異なる。
図19に示すように、無線ICデバイス106は、磁性体回路基板1の第1面PS1側に封止樹脂層140を形成すると共に、封止樹脂層140の上に磁性体ブロック141を配置している。また、磁性体回路基板1、封止樹脂層140、及び磁性体ブロック141は、樹脂部材70の中に埋設されると共に、アンテナコイルの内側に配置されている。
封止樹脂層140は、磁性体回路基板1の第1面PS1上に実装されたRFIC61及びチップキャパシタ62等の表面実装部品を樹脂によって封止している。封止樹脂層140は、例えば、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂などで作られている。
磁性体ブロック141は、封止樹脂層140の上に配置されている。磁性体ブロック141は、直方体形状を有しており、例えば、フェライト等で作られている。磁性体ブロック141は、アンテナコイルの内側に配置されており、磁性体回路基板1と共にアンテナコイルに対する磁心(磁性体コア)として作用する。
[効果]
実施の形態6に係る無線ICデバイス106によれば、以下の効果を奏することができる。
実施の形態6の無線ICデバイス106によれば、磁性体回路基板1の第1主面側の表面実装部品を封止樹脂層140によって封止し、封止樹脂層140の上に磁性体ブロック141を配置している。また、磁性体ブロック141は、アンテナコイルの内側に配置されている。このような構成により、磁性体ブロック141が磁性体回路基板1と共にアンテナコイルに対する磁心として作用し、集磁効果を向上させることができる。その結果、通信相手のアンテナとの磁界結合を高めることができる。
磁性体回路基板1は、内部に第1導体11A及び第2導体11Bを形成するための導体用孔111A,111Bを空ける加工を行う必要がある(図12A参照)。無線ICデバイス106では、磁性体ブロック141による集磁効果の向上を行うことができるため、磁性体回路基板1の厚さを実施の形態2と比べて相対的に薄くすることができる。そのため、実施の形態6においては、導体用孔111A,111Bの深さを短くすることができるため、磁性体回路基板1の加工が容易になる。
実施の形態6の無線ICデバイス106によれば、磁性体回路基板1の第1面PS1側に実装された表面実装部品を封止樹脂層40によって封止することによって、表面実装部品を保護することができる。
(実施の形態7)
[全体構成]
本発明に係る実施の形態7のRFIDタグ付き物品について、図20〜図21を用いて説明する。
図20は、実施の形態7に係るRFIDタグ付き物品301の斜視図である。図21は、実施の形態7に係るRFIDタグ付き物品301の正面図である。
RFIDタグ付き物品301は、RFIDタグを内蔵した樹脂成型体であり、例えば、樹脂成型で作られたミニチュアカー等の玩具である。RFIDタグ付き物品301は、実施の形態1の無線ICデバイス101を備える。実施の形態7において、無線ICデバイス101は、RFIDタグとして用いられる。
図20及び図21に示すように、無線ICデバイス101は、樹脂成型体201内に埋設され、物品301の外部には露出しない。無線ICデバイス101は、玩具の底部に埋設される。玩具の底部とは、図21の視点で、RFIDタグ付き物品301の上面付近に対応する。
無線ICデバイス101のアンテナコイルの巻回軸は、ミニチュアカー等の玩具の底面に対する法線方向を向く。そのため、この玩具の底面をリーダ/ライタ装置の読み取り部に対向させることで、リーダ/ライタ装置は、無線ICデバイス101と通信する。これにより、リーダ/ライタ装置またはリーダ/ライタ装置に接続されるホスト装置は所定の処理を行う。
次に、RFIDタグ付き物品301の製造方法について、図22を用いて説明する。図22は、実施の形態7に係るRFIDタグ付き物品301を射出成型で製造する工程を示す。
図22に示すように、樹脂成型体201の射出成型用金型401を準備し、射出成型用金型401内に無線ICデバイス101を固定する。無線ICデバイス101は、例えば、射出成型用樹脂402と同じ樹脂で作られた支持部材等により、射出成型用金型401内に固定される。次に、射出成型用樹脂402をゲートから射出成型用金型401内に充填し、樹脂成型体201を成型することにより、RFIDタグ付き物品301を製造する。
RFIC素子61等は、他の実施形態に係る無線ICデバイスと同様に、樹脂部材70で保護されるので、無線ICデバイス101は堅牢である。そして、射出成型時に高熱にて流動する射出成型用樹脂402に対して表面実装チップ部品のはんだ接続部が保護される。因みに、ポリイミド系の樹脂膜で被覆されたCuワイヤーが巻回された、通常の巻線型コイル部品であると、射出成型時の熱で被覆が溶けてCuワイヤー間が短絡してしまう。そのため、従来の通常の巻線型コイル部品をアンテナコイルとして利用することは困難である。
無線ICデバイス101の磁性体回路基板1は、アンテナコイルの巻回軸G1方向から見たとき、樹脂部材70の第2主面VS2よりも巻回軸G1寄りに配置されている。即ち、無線ICデバイス101の磁性体回路基板1は、高温の射出成型用樹脂402と接触する樹脂部材70の外縁からある程度距離を取って離れて配置されているため、熱的影響を受けにくい。
[効果]
実施の形態7に係るRFIDタグ付き物品301によれば、以下の効果を奏することができる。
実施の形態7によれば、リーダ/ライタ装置等で通信可能な電気的特性及び熱的特性に優れたRFIDタグ付き物品301を提供することができる。
また、無線ICデバイス101の磁性体回路基板1は、アンテナコイルの内部において任意の位置に配置することで、アンテナコイルにより形成される磁界に指向性を持たせることができる。そのため、無線ICデバイス101を搭載するRFIDタグ付き物品301は、RFIDタグにより生じる磁界に指向性を持たせることができる。
(実施の形態8)
[全体構成]
本発明に係る実施の形態8のRFIDタグ付き物品について、図23〜図25を用いて説明する。
図23は、実施形態8に係るRFIDタグ付き物品302の斜視図である。図24は、RFIDタグ付き物品302の断面図である。図25は、図24の部分拡大図である。
RFIDタグ付き物品302は、RFIDタグを搭載した通信端末装置であり、例えば、スマートフォンなどの携帯電子機器である。RFIDタグ付き物品302は、無線ICデバイス101及び共振周波数を持つブースターアンテナ120を備える。図23及び図24に示すように、RFIDタグ付き物品302の上面側に下部筐体202があって、下面側に上部筐体203がある。下部筐体202と上部筐体203とで囲まれる空間の内部に、回路基板200、無線ICデバイス101および共振周波数を持つブースターアンテナ120を備える。
無線ICデバイス101は、実施の形態1で示したとおりである。無線ICデバイス101は、図23及び図24に示すように、回路基板200に実装される。回路基板200には無線ICデバイス101以外の部品も実装される。
共振周波数を持つブースターアンテナ120は、下部筐体202の内面に貼付される。このブースターアンテナ120は、バッテリーパック130と重ならない位置に配置される。ブースターアンテナ120は、絶縁体基材123および絶縁体基材123に形成されるコイルパターン121,122を含む。
図25に示すように、無線ICデバイス101は、そのアンテナコイルおよびブースターアンテナ120に対して磁束が鎖交するように配置される。すなわち、無線ICデバイス101のアンテナコイルは、ブースターアンテナ120のコイルと磁界結合するように、無線ICデバイス107とブースターアンテナ120は配置される。なお、図25中の破線は、その磁界結合に寄与する磁束を概念的に表す。
無線ICデバイス101のRFIC素子61は、回路基板200側を向いて近接して配置されると共に、アンテナコイルがブースターアンテナ120側を向いて近接して配置される。そのため、無線ICデバイス101のアンテナコイルとブースターアンテナ120との結合度は高い。また、RFIC素子61と他の回路素子とをつなぐ配線、特にデジタル信号ラインや電源ラインは、アンテナコイルの磁束と実質的に平行に配線されるのでアンテナコイルとの結合は小さい。
図26は、ブースターアンテナ120の斜視図である。図27は、ブースターアンテナ120の回路図である。ブースターアンテナ120は、第1コイルパターン121と第2コイルパターン122は、それぞれ矩形渦巻状にパターン化された導体であり、平面視で同方向に電流が流れる状態で容量結合するようにパターン化される。第1コイルパターン121と第2コイルパターン122との間には浮遊容量が形成される。第1コイルパターン121および第2コイルパターン122のインダクタンスと浮遊容量のキャパシタンスとでLC共振回路が構成される。このLC共振回路の共振周波数は、このRFIDシステムの通信周波数と実質的に等しい。通信周波数は例えば13.56MHz帯である。
[効果]
実施の形態8に係るRFIDタグ付き物品302によれば、以下の効果を奏することができる。
実施の形態8のRFIDタグ付き物品302によれば、ブースターアンテナの大きなコイル開口を利用して通信できるので、通信可能最長距離を拡張することができる。
なお、実施の形態7及び実施の形態8においては、実施の形態1の無線ICデバイス101を備えた物品について説明したが、これに限定されない。例えば、実施形態2〜6の無線ICデバイスを備えた物品であってもよい。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正、及びこれらの実施形態を組み合わせることは明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。