JP6221344B2 - フィルターおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、金網を用いた積層型のフィルターでは、3次元的に入り組んだ構造の金網中に捕獲された粒子の除去が難しく、メンテナンス性に問題があった。特に飲料製造等のように衛生上の厳しい環境管理が要求される工程では、メンテナンス時の洗浄で粒子が除去しきれずに残留しているフィルターは、再使用せずに交換を余儀なくされていた。
上記のような問題を解消するために、孔部を形成した金属薄板を積層したフィルターが提案されている。例えば、金属薄板に対してエッチング加工を行って貫通孔を穿設して孔部を形成し、このような金属薄板を積層して、孔部の大きさと金属薄板の合計板厚で計算されるアスペクト比を向上させたフィルターが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
本発明は上述のような実情に鑑みてなされたものであり、孔部のアスペクト比が大きく、かつ、孔部内での圧力損失が少なく、優れたフィルター機能を発現するフィルターとその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、開口率が20〜60%の範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記貫通孔における前記金属薄板の厚み方向内部の開口寸法と、前記金属薄板の両面での開口寸法との差が40μm以下であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記エッチング工程において、開口寸法が前記金属薄板の厚み方向で同一である貫通孔の形成では、比重が45〜55Be(ボーメ)の範囲、液温が50〜70℃の範囲であるエッチング液を使用するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記エッチング工程において、前記金属薄板の両面における開口寸法よりも厚み方向内部の開口寸法が大きいような貫通孔の形成では、比重が50〜60Be(ボーメ)の範囲、液温が60〜80℃の範囲であるエッチング液を使用するような構成とした。
尚、図面は模式的または概念的なものであり、各部材の寸法、部材間の大きさの比等は、必ずしも現実のものと同一とは限らず、また、同じ部材等を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比が異なって表される場合もある。
図1は、本発明のフィルターの一実施形態を説明するための部分断面図であり、図2は、図1に示されるフィルターを構成する金属薄板の部分拡大断面図である。図1および図2において、フィルター11は、複数の貫通孔14を有する金属薄板13が複数積層されてなる積層体である。各金属薄板13が有する貫通孔14は、金属薄板13の両面における開口形状が同一である。そして、各金属薄板13の貫通孔14同士の位置を合わせた状態で金属薄板13が積層されることにより、貫通孔14が連通して形成された孔部12を複数有している。
金属薄板13の材質は、例えば、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系のステンレス鋼、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金等であってよく、厚みは20〜150μm、好ましくは20〜80μmの範囲であることが好適である。金属薄板13の厚みが20μm未満であると、所望の強度を具備するフィルター11を作製するための金属薄板13の積層数が多くなり、作業工程および製造コストの面で好ましくない。また、金属薄板13の厚みが150μmを超えると、貫通孔14の開口寸法の調整に支障を来し好ましくない。
また、金属薄板13が有する貫通孔14間の距離は、開口率[(貫通孔14の合計面積/貫通孔14が形成されている領域の面積)×100]が、20〜60%、好ましくは25〜40%の範囲となるように、上記の開口寸法Wを考慮して設定することができ、例えば、15〜100μmの範囲で隣接する貫通孔との距離を設定することができる。
フィルター11を構成する金属薄板13の積層数は、図1に示される例では、3枚であるが、これに限定されるものではなく、金属薄板13の厚み、材質、フィルター11に要求される強度、フィルター11において貫通孔14が連通してなる孔部12(流路)における流体の圧力損失等を考慮して適宜設定することができる。
金属薄板23の材質は、上述の金属薄板13と同様とすることができ、厚みも20〜150μm、好ましくは20〜80μmの範囲であることが好適である。
また、金属薄板23が有する貫通孔24間の距離は、開口率[(貫通孔24の合計面積/貫通孔24が形成されている領域の面積)×100]が、20〜60%、好ましくは25〜40%の範囲となるように、上記の開口寸法W1を考慮して設定することができ、例えば、15〜100μmの範囲で隣接する貫通孔との距離を設定することができる。
フィルター21を構成する金属薄板23の積層数は、図3に示される例では、3枚であるが、これに限定されるものではなく、金属薄板23の厚み、材質、フィルター21に要求される強度、フィルター21において貫通孔24が連通してなる孔部22(流路)における流体の圧力損失等を考慮して適宜設定することができる。
上述の実施形態は例示であり、本発明のフィルターはこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明のフィルターの製造方法を、上述の本発明のフィルター11を例として説明する。
本発明のフィルターの製造方法では、図5に示されるように、金属薄板13に貫通孔形成領域13A(2点鎖線で囲まれる領域)を設定し、この貫通孔形成領域13Aの外側の領域に位置合わせ用穴部形成領域13B(鎖線で囲まれる領域)を設定する。そして、金属薄板13の貫通孔形成領域13Aに所望のピッチで複数の貫通孔14をエッチングにより形成する。また、金属薄板13の位置合わせ用穴部形成領域13Bに位置合わせ用穴部15をエッチングにより形成する。
本発明のフィルターの製造方法において使用する金属薄板13の材質は、例えば、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系のステンレス鋼、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金等であってよく、厚みは20〜150μm、好ましくは20〜80μmの範囲であることが好適である。金属薄板13の厚みが20μm未満であると、後工程において所望の強度を具備するフィルター11を作製するための金属薄板13の積層数が多くなり、作業工程および製造コストの面で好ましくない。また、金属薄板13の厚みが150μmを超えると、貫通孔14の開口寸法の微細化に支障を来し好ましくない。
また、本発明のフィルターの製造方法によって上述のフィルター21を製造する場合、金属薄板23の貫通孔形成領域に形成する貫通孔24を、下記のように金属薄板23の両面における開口寸法W1よりも厚み方向内部の開口寸法W2が大きくなるように形成する他は、フィルター11を例として説明した本発明のフィルターの製造方法と同様とすることができる。
上述の実施形態は例示であり、本発明のフィルターの製造方法はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、位置合わせ用穴部15において、中心開口部15aの周囲に隣接する複数の周辺開口部15bの形状、数は、図7(A)に示される例に限定されず、位置合わせ用ピン17の挿入によって易変形部位15cが周辺開口部15b方向へ押し広げられ、かつ、位置合わせ用穴部15と位置合わせ用ピン17との間に緩みを生じることが防止されるものであればよい。したがって、例えば、図9(A)に示されるように、中心開口部15aの周囲に円弧形状の4個の周辺開口部15bが位置するもの、図9(B)に示されるように、中心開口部15aの周囲に12個の周辺開口部15bが位置するもの等であってもよい。また、図10(A)に示されるように、中心開口部15aの周囲に放射状に長方形状の8個の周辺開口部15bが位置するもの、図10(B)に示されるように、中心開口部15aの周囲に位置する8個の円形状の周辺開口部15bを介して、放射状に長方形状の8個の周辺開口部15b′が位置するもの等であってもよい。
[実施例1]
金属薄板としてステンレス鋼(SUS304、150mm×150mm、厚み25μm)を準備し、金属薄板の中央の50mm×50mmを貫通孔形成領域として画定した。
この金属薄板の両面に感光性ドライフィルム(旭化成(株)製) サンフォートAQ−2558)をラミネートした後、所望のマスクを介して露光し、現像することによりエッチングマスク1とエッチングマスク2を各面に形成した。このように形成したエッチングマスク1は、直径50μmの円形の開口部を90μmピッチで60°千鳥格子形状に2000個配置したものであった。また、形成したエッチングマスク2は、直径60μmの円形の開口部を、エッチングマスク1と同様のピッチで、同様の数有するものであった。したがって、エッチングマスク1における各開口部の面積S1とエッチングマスク2における各開口部の面積S2との比S1/S2は約0.69であった。尚、エッチングマスク1およびエッチングマスク2の各開口部の中心は、金属薄板を介して一致するものであった。
また、上記のように形成したエッチングマスク1およびエッチングマスク2は、貫通孔形成領域の外側であって、金属薄板の四隅近傍に、金属薄板を介して対向するように図7(A)に示される位置合わせ用穴部を形成するための開口部を有するものであった。
(エッチング条件)
・エッチング液 : 塩化第二鉄溶液
・比重 : 50ボーメ(Be)
・温度 : 75℃
・スプレー圧 : 3kg/cm2
形成された貫通孔を両面顕微鏡を用いて観察、測定した結果、金属薄体の表面における開口部の形状は、金属薄板の両面において共に直径70μmの円形であった。また、金属薄板の厚み方向における貫通孔の開口寸法は70μmで一定であり、貫通孔はストレート形状であった。また、位置合わせ用穴部は、中心開口部が直径10mmの円形であり、その周囲に幅200μmの円弧形状の6個の周辺開口部が位置し、中心開口部と周辺開口部との間には幅100μmの易変形部位が存在するものであった。
上記と同様にして、貫通孔、位置合わせ用穴部が形成された金属薄板を9枚作製した。
(拡散接合条件)
・雰囲気 : 真空
・接合温度 : 1000℃
・接合時間 : 9時間
このように作製したフィルターが備える孔部について、その内径を上記と同様に測定した結果、各金属薄板の積層時のズレによる開口寸法の減少は15μm以下であり、各金属薄板の位置合わせの精度が高いことが確認された。そして、厚み225μmのフィルターが具備する孔部は、開口寸法が約70μmのストレート形状であり、アスペクト比(孔部の長さ/孔部の最小開口寸法)が約3.2である微細なものであることが確認された。
このようなフィルターをろ過装置に装着し、薄力粉(粒径分布幅は5〜100μm)を純水に10g/L含有させた流体を用い、ろ過を行った結果、孔部内での圧力損失は0.30MPa程度であった。また、0.1時間のろ過操作の後、ろ過装置から取り外したフィルターを純水洗浄後にエタノールを用いて洗浄したところ、フィルターに捕獲されていた薄力粉を完全に排除することができた。
金属薄板の両面からのエッチングの条件を下記のように変更した他は、実施例1と同様にして、金属薄板に貫通孔と位置合わせ用穴部を形成した。
(エッチング条件)
・エッチング液 : 塩化第二鉄溶液
・比重 : 52ボーメ(Be)
・温度 : 80℃
・スプレー圧 : 3kg/cm2
また、位置合わせ用穴部は、中心開口部が直径10mmの円形であり、その周囲に幅200μmの円弧形状の6個の周辺開口部が位置し、中心開口部と周辺開口部との間には幅100μmの易変形部位が存在するものであった。
このような金属薄板9枚を、実施例1と同様に積層、位置合わせした後、拡散接合を行って積層体を作製し、その後、裁断してフィルターを作製した。
このようなフィルターを用いて実施例1と同様にろ過を行った結果、孔部内での圧力損失は0.33MPa程度であった。また、0.1時間のろ過操作の後、ろ過装置から取り外したフィルターを純水洗浄後にエタノールを用いて洗浄したところ、フィルターに捕獲されていた薄力粉を完全に排除することができた。
金属薄板の両面からのエッチングの条件を下記のように変更した他は、実施例1と同様にして、金属薄板に貫通孔と位置合わせ用穴部を形成した。
(エッチング条件)
・エッチング液 : 塩化第二鉄溶液
・比重 : 45ボーメ(Be)
・温度 : 70℃
・スプレー圧 : 3kg/cm2
また、位置合わせ用穴部は、中心開口部が直径10mmの円形であり、その周囲に幅200μmの円弧形状の6個の周辺開口部が位置し、中心開口部と周辺開口部との間には幅100μmの易変形部位が存在するものであった。
このような金属薄板9枚を、実施例1と同様に積層、位置合わせした後、拡散接合して、積層体を作製し、その後、裁断してフィルターを作製した。
このようなフィルターを用いて実施例1と同様にろ過を行った結果、孔部内での圧力損失は0.35MPa以上であり、実施例1および実施例2よりも大きいものであった。また、0.1時間のろ過操作の後、ろ過装置から取り外したフィルターを純水洗浄後にエタノールを用いて洗浄したが、フィルターに捕獲されていた薄力粉を完全に排除することは困難であった。
エッチングマスク形成時の露光マスクを変更して、金属薄板の両面からのエッチングにより貫通孔と同時に金属薄板に形成する位置合わせ用穴部を、直径10mmの円形とし、エッチング終了後に研磨により直径を10.3mmとした他は、実施例1と同様にして、金属薄板に貫通孔と位置合わせ用穴部を形成した。
このような金属薄板9枚を、実施例1と同様に積層、位置合わせした後、拡散接合して、積層体を作製し、その後、裁断してフィルターを作製した。
このようなフィルターを用いて実施例1と同様にろ過を行った結果、孔部内での圧力損失は0.40MPa以上であり、実施例1および実施例2よりも大きいものであった。また、0.1時間のろ過操作の後、ろ過装置から取り外したフィルターを純水洗浄後にエタノールを用いて洗浄したが、フィルターに捕獲されていた薄力粉を完全に排除することは困難であった。
12,22…孔部
13,23…金属薄板
14,24…貫通孔
15…位置合わせ用穴部
15a…中心開口部
15b…周辺開口部
Claims (11)
- 複数の貫通孔を有する金属薄板の複数枚が当該貫通孔の位置を互いに合わせて積層されてなり、積層される前記金属薄板の前記貫通孔同士が当該金属薄板の厚さ方向に連通して形成された孔部を複数有する積層体であり、
前記金属薄板の両面における前記貫通孔の開口形状が同一であり、
重ね合わさる前記金属薄板の互いに当接する面における前記貫通孔の開口寸法が互いに同一であり、
前記孔部を構成する前記各貫通孔の前記金属薄板の両面における開口寸法よりも当該各貫通孔の前記厚さ方向内部における開口寸法が大きく、
前記孔部を構成する前記各貫通孔の前記金属薄板の両面における開口寸法が70μm以上であり、
前記孔部を構成する前記各貫通孔の中心のズレの最大が15μm以下である
ことを特徴とするフィルター。 - 前記金属薄板には、中心開口部と、当該中心開口部の周囲に隣接して複数位置する周辺開口部とを有する位置合わせ用穴部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルター。
- 前記周辺開口部は円弧形状であることを特徴とする請求項2に記載のフィルター。
- 前記周辺開口部は四角形状であり、前記中心開口部の周囲に放射状に位置していることを特徴とする請求項2に記載のフィルター。
- 前記金属薄板の厚みは20〜150μmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフィルター。
- 開口率が20〜60%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフィルター。
- 前記貫通孔における前記金属薄板の厚さ方向内部の最大開口寸法と、前記金属薄板の両面での開口寸法との差が5μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のフィルター。
- エッチングにより複数の貫通孔と位置合わせ用穴部を形成した金属薄板を複数枚作製するエッチング工程と、
前記貫通孔が前記金属薄板の厚さ方向に連通することにより孔部を形成するように、複数枚の前記金属薄板を積層して接合する接合工程を有し、
前記エッチング工程における前記貫通孔の形成では、前記金属薄板の両面における前記貫通孔の開口形状を同一とし、前記貫通孔の開口寸法を前記金属薄板の厚さ方向で同一、あるいは、当該貫通孔の前記金属薄板の両面における開口寸法よりも当該貫通孔の前記厚さ方向内部における開口寸法が大きくなるように当該貫通孔を形成し、
前記エッチング工程における前記位置合わせ用穴部の形成では、位置合わせ用ピンよりも小径の中心開口部と、該中心開口部の周囲に隣接して複数位置する周辺開口部とを有する位置合わせ用穴部を形成し、
前記接合工程では、複数枚の当該金属薄板を重ね、前記位置合わせ用穴部に位置合わせ用ピンを挿入して位置合わせを行うことにより、前記孔部を構成する前記各貫通孔の中心のズレの最大が15μm以下である前記孔部が形成されることを特徴とするフィルターの製造方法。 - 前記エッチング工程における前記貫通孔の形成では、水平状態の金属薄板の両面からエッチングマスクを介してエッチング液を噴射して同時エッチングを行い、前記金属薄板の上面側に配設するエッチングマスクの各開口部の面積S1と、前記金属薄板の下面側に配設するエッチングマスクの各開口部の面積S2との比S1/S2を、0.6〜1.2の範囲で設定することを特徴とする請求項8に記載のフィルターの製造方法。
- 前記エッチング工程において、開口寸法が前記金属薄板の厚み方向で同一である貫通孔の形成では、比重が45〜55Be(ボーメ)の範囲、液温が50〜70℃の範囲であるエッチング液を使用することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のフィルターの製造方法。
- 前記エッチング工程において、前記金属薄板の両面における開口寸法よりも厚み方向内部の開口寸法が大きいような貫通孔の形成では、比重が50〜60Be(ボーメ)の範囲、液温が60〜80℃の範囲であるエッチング液を使用することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のフィルターの製造方法。
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