JP6220894B2 - 関節軟骨の変性部位の可視化用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、関節軟骨の損傷部位に特異的に吸着することにより、関節軟骨の損傷部位を可視化する関節軟骨イメージング組成物に関する。
変形性関節症(OA;osteoarthritis)は、関節軟骨の変性が主な原因で生じると考えられる関節疾患であり、膝や股、大腿骨などに多く見られる。その発症原因としては、加齢や過負荷のほか、スポーツ損傷や肥満によっても引き起こされる。中でも変形性膝関節症の患者数は、日本国内では2530万人と推定され(2009年、東京大学医学部附属病院22世紀医療センター ROADプロジェクト)、米国ではその倍以上と推定される。また、人口密集地であり、労働条件や環境条件などが日本に比べて厳しいと考えられる中国やインド、アフリカ諸国などでもOAの患者数が今後増加していくものと思われる。現在、日本国内では年間7万5000人(2011年、矢野経済研究所)が最終的な治療法として、全人工膝関節置換手術を受けているとされる。人工関節置換はそれ自体、高度に侵襲的な治療であると同時に、人工関節には機械寿命があり、状況によっては交換を繰り返す必要が生じる。
変形性膝関節症の悪化を防ぎ、究極の人工関節置換手術を避けるためには、早期に適切な治療を受けることが重要である。そのためには、軟骨変性の早期発見が必要となるが、従来のX線(レントゲン)撮像やMRI検査では初期段階での軟骨変性の発見は難しい。また、内視鏡の一種である関節鏡を用いて軟骨を観察することにより、軟骨変性の有無を検査することもできるが、この方法は、担当医師が関節鏡下で鉗子等の器具を用いて軟骨表層部位の触覚を感じ取ることにより判断されるものである。そのため、早期発見は医師の経験と技量に委ねられる部分が大きく、さらに、正常軟骨と変性軟骨の境界が明瞭に識別できないという問題がある。
医師の経験や技量だけに頼らずに、軟骨変性の早期発見を可能とする非侵襲的あるいは低侵襲的な検査方法があれば、軟骨変性の有無や軟骨変性の進行状況を把握して治療方針が立てやすい。非侵襲的あるいは低侵襲的な検査方法としては、生体組織を可視化するin vivoイメージング技術を利用する方法がある。in vivoイメージング技術には、ポジトロン断層法(PET)や核磁気共鳴イメージング(MRI)、超音波イメージング(Ultrasonography:US)又は光音響イメージング(Photoacoustic Imaging:PAI)など様々な技術がある。その他、生体内の関心部位に蛍光物質を集中させ、高感度に捉える蛍光分子トモグラフィ(Fluorescence Molecular Tomography:FMT)等の蛍光イメージング技術が、非侵襲的に関心部位に対する特異的な可視化を可能とするために、注目されている。
上述したin vivo蛍光イメージング技術を関節軟骨について適用すべく、関節軟骨組織に特異的に結合して集積するイメージングプローブに関する技術がいくつか提案されている。特許文献1には、軟骨基質に特異的に結合する軟骨マーカーとして、アルギニン残基6〜20個のポリアルギニンペプチド又はリジン残基6〜20個のポリリジンペプチドに、蛍光物質等の信号発生手段を結合させて得られた軟骨マーカーが記載されている。また、特許文献2には、リジンのε−アミノ基とカルボキシル基とがペプチド結合で連結されたリジンオリゴマーに、電磁波を発生又は吸収し得る基を結合させて得られたリジンオリゴマー誘導体からなる軟骨組織マーカーが記載されている。
特開2009−023993号公報 国際公開第2013/137302号
しかしながら、特許文献1及び特許文献2には、これらの軟骨マーカーは、正常な関節軟骨に対して特異的に結合することは記載されているものの、正常でない、例えば、変形性関節症のような変性した軟骨に対しては、どのような性質を示すのかは記載されていない。すなわち、現状では、関節軟骨の正常部位と正常でない部位とを明瞭に区別して可視化する診断用の関節軟骨イメージング組成物が存在していないという問題があった。
また、上述したように、医師の経験や技量をそれほど必要としなくとも、軟骨変性の早期発見を可能とする検査方法が求められていた。
本発明は、上述した点に鑑み案出されたもので、その目的は、関節軟骨の正常部位と正常でない部位とを明瞭に区別して可視化できる関節軟骨イメージング組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、軟骨変性の早期発見や変性度合の精密な識別を容易に行い、早期の治療方針の決定に寄与できる関節軟骨イメージング組成物を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の関節軟骨イメージング組成物は、陽性荷電分子を含有し、その陽性荷電分子は標識分子で標識されている。正常軟骨は、表面が平たんな細胞が多層に重層した表層を構成しているが、変性した軟骨は、細胞層が剥離して、繊維質の多い不規則な組織構造をした軟骨基質が露出した状態、あるいは、表層から深部に向かって欠損した状態となっている。本発明の関節軟骨イメージング組成物は、標識分子で標識された陽性荷電分子を含有しており、この陽性荷電分子は、露出した軟骨基質に重点的に浸透及び吸着する。このように、本発明の関節軟骨イメージング組成物は、軟骨が変性している部分に重点的に吸着するため、関節軟骨の正常部位と正常でない変性部位とを区別して可視化することができる。
また、本発明の関節軟骨イメージング組成物の陽性荷電分子は、陽性荷電化されたタンパク質又はペプチド化合物であることが好ましい。関節軟骨イメージング組成物を構成する陽性荷電分子として、生体内にも広く存在し、安全性が高く、取り扱いも容易であり、標識分子の標識も簡単に行うことのできる物質が選択される。
本発明の関節軟骨イメージング組成物のタンパク質又はペプチド化合物は、アルブミン、アルブミン分解物又はアルブミンの修飾化合物であることが好ましい。これにより、陽性荷電分子を構成するタンパク質又はペプチド化合物として、好適な物質が選択される。
さらに、本発明の関節軟骨イメージング組成物の陽性荷電分子は、陽性荷電化された糖鎖化合物であることが好ましい。関節軟骨イメージング組成物を構成する陽性荷電分子として、生体内にも広く存在し、安全性が高く、取り扱いも容易であり、標識分子の標識も簡単に行うことのできる物質が選択される。
本発明の関節軟骨イメージング組成物の糖鎖化合物は、デキストラン、サイクロデキストリン又はこれらの誘導体であることが好ましい。これにより、陽性荷電分子を構成する糖鎖化合物として、好適な物質が選択される。
さらに、本発明の関節軟骨イメージング組成物の標識分子は、蛍光物質、放射性同位元素、X線吸収物質、抗体分子及び特異的抗体によって認識される認識部位を有する分子からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質であることが好ましい。上述した陽性荷電分子等は標識分子で標識されているため、軟骨が変性している部分に吸着する陽性荷電分子等の位置を、蛍光物質、放射性同位元素、X線吸収物質、抗体分子又は特異的抗体によって認識される認識部位を有する分子等の標識分子により、可視化することができる。
また、上述した標識分子のうち、蛍光物質はインドシアニングリーンであることが好ましい。これにより、安全性が高く、有効に可視化や検出を行うことができる標識分子が選択される。
また、本発明の関節軟骨イメージング組成物の標識分子は、磁性粒子、金属粒子、金属ナノ粒子及び他のナノ素材含有物質からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質であることも好ましい。これにより、軟骨が変性している部分に吸着する陽性荷電分子等の位置について、X線CT、MRI、ラマン分光法、プラズモン共鳴法などによる検出も可能となる。
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する関節軟骨イメージング組成物を提供することができる。
(1)関節軟骨の正常部位と正常でない変性部位とを明瞭に区別して可視化することができる。
(2)軟骨変性の早期発見や変性度合の精密な識別を容易に行うことができる。
(3)関節鏡による診断又は手術の際に、関節軟骨イメージング組成物を使用することにより、生体内において、関節軟骨の変性部位を可視化させて診断または治療することができる。
(4)関節腔に関節軟骨イメージング組成物を注入することなどにより、in vivoイメージング技術を利用して非侵襲的又は低侵襲的に軟骨の変性状態を診断することができる。
(5)安全性の高い物質から構成されているため、取り扱いも容易である。また、分解産物についても同様に安全性が高い。
(6)検査や手術が終了した後には、代謝、加水分解又は組織液による希釈によって効率よく排除される。
実施例1における陽性荷電化されたウシ血清アルブミンの等電点電気泳動の結果を示す写真である。 実施例2における陽性荷電化アルブミン又はアルブミンとインドシアニングリーンとの結合による蛍光発光の結果を示す写真である。 実施例3における本発明の関節軟骨イメージング組成物による損傷軟骨モデルのイメージングの結果を示す写真である。 実施例4における本発明の関節軟骨イメージング組成物による軟骨損傷モデル及び無傷モデルに対するイメージングの結果を示す写真である。 実施例5における本発明の関節軟骨イメージング組成物によるヒト損傷軟骨に対するイメージングの結果を示す写真である。
本発明の関節軟骨イメージング組成物には、標識された陽性荷電分子が含まれる。本発明において、「陽性荷電分子」とは、陽性荷電(正電荷)を備え、変性した軟骨に選択的に吸着できる分子のことをいう。
軟骨は、結合組織に分類され、豊富な細胞外基質である軟骨基質とその中に点在する軟骨細胞から構成されている。関節を構成する軟骨は、硝子軟骨と呼ばれており、その硝子軟骨の軟骨基質の主成分は、主にコラーゲンとプロテオグリカンである。このプロテオグリカンは、コンドロイチン硫酸、ケタラン硫酸及びヘパラン硫酸等の陰性荷電を有する側鎖を含有しており、全体として陰性荷電を有する。正常軟骨は、表面が平たんな細胞が多層に重層した表層を構成しているが、変性した軟骨は、細胞層が剥離して、繊維質の多い不規則な組織構造をした軟骨基質が露出した状態、あるいは、表層から深部に向かって欠損した状態となっている。本発明の関節軟骨イメージング組成物に含まれる陽性荷電分子は、軟骨組織の表層が剥離して、露出した軟骨基質中のプロテオグリカンに特異的に吸着するものと推測される。
本発明における陽性荷電分子としては、変性した軟骨に選択的に吸着できる分子であれば、特に限定されないが、安全性や取り扱いの容易さの観点から、陽性荷電化されたタンパク質若しくはペプチド化合物、又は陽性荷電化された糖鎖化合物が好ましい。なお、本明細書において、「タンパク質」には、糖タンパク質やリポタンパク質、ヌクレオチド結合タンパク質等が広く含まれる。
陽性荷電化されることにより、本発明における陽性荷電分子として用いられるタンパク質又はペプチド化合物としては、血漿タンパク質や種々のアルブミンが好ましく、特に血清アルブミンが好ましい。また、血漿タンパク質や種々のアルブミンには、これらの分解物や修飾化合物も含まれる。この陽性荷電化されたアルブミン(カチオン化アルブミン)は、軟骨基質に特異的に吸着するが、軟骨組織の細胞内には侵入しにくい性質を有している。それゆえ、このカチオン化アルブミンは、正常軟骨組織の表層からは細胞内部に取り込まれ難く、正常な軟骨組織の表層内に存在する軟骨基質はほとんど吸着されない。このため、カチオン化アルブミンは、関節軟骨組織のうち、正常でない変性部位に重点的に吸着される。また、アルブミン又はその分解物・修飾化合物の陽性荷電化の状態としては、軟骨損傷部位への重点的な吸着がなされる観点から、等電点pIが8以上となるように陽性荷電化されていることが好ましく、10以上となるように陽性荷電化されていることが特に好ましい。このように軟骨組織の細胞に侵入しにくい性質を有するアルブミンを選択することにより、関節軟骨イメージング組成物を生体へ適用する際の安全性がさらに高められる。また、分子量の大きいアルブミン分子を選択することにより、標識分子による標識数を増やすことができるため、たとえば標識分子として蛍光物質を用いた場合には輝度を向上させるなど調整が可能であり、標識分子による検出、すなわち可視化が容易となる。
また、上述のアルブミン同様に陽性荷電化されることによって、本発明における陽性荷電分子として用いられる糖鎖化合物としては、直鎖状又は環状の糖鎖化合物が好ましく、直糖状の糖鎖化合物としては、デキストラン又はデキストラン誘導体が特に好ましく、環状の糖鎖化合物としては、サイクロデキストリン又はサイクロデキストリン誘導体が特に好ましい。これら陽性荷電化したデキストラン、サイクロデキストリン又はこれらの誘導体は、上述したアルブミン同様に、軟骨基質に特異的に吸着するが、軟骨組織の細胞内には侵入しにくい性質を有している。それゆえ、これらカチオン化されたデキストランやサイクロデキストリンは、正常軟骨組織の表層からは細胞内部に取り込まれ難く、正常な軟骨組織の表層内に存在する軟骨基質はほとんど吸着されない。このため、カチオン化されたデキストラン又はサイクロデキストリンは、関節軟骨組織のうち、正常でない変性部位に吸着される。このとき、デキストラン又はサイクロデキストリンとしては、軟骨組織の細胞内への侵入し難さの観点から、分子量が3,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。このように軟骨組織の細胞に侵入しにくい性質を有するデキストランやサイクロデキストリンを選択することにより、関節軟骨イメージング組成物を生体へ適用する際の安全性がさらに高められる。また、分子量の大きいデキストランやサイクロデキストリンを選択することにより、標識分子による標識数を増やすことができるため、たとえば標識分子として蛍光物質を用いた場合には輝度を向上させるなど調整が可能であり、標識分子による検出、すなわち可視化が容易となる。また、サイクロデキストリンについては、その分子の内部空洞に標識分子を容易に包接するため、本発明の関節軟骨イメージング組成物を容易に得ることができる。
なお、本発明において、「関節軟骨イメージング」とは、関節軟骨の状態を裸眼又は装置等を用いて、画像や数値又はベクトル等の手段により可視化(見える化)することをいう。可視化にあたっては、関節軟骨組織の一部を採取して検出する場合、生体内で(in situ)検出する場合のいずれをも含み、生体内での可視化については、通常の手術における可視化のほか、関節鏡を用いた低侵襲的な検査又は手術や、本発明の組成物を関節腔内にシリンジ等を用いて注入するような低侵襲的な検査における可視化も含まれる。
本発明において、標識分子とは、陽性荷電分子に直接的に若しくは間接的に結合されるか、陽性荷電分子に包接されることにより、陽性荷電分子に目印をつけて、陽性荷電分子の存在を裸眼や装置等により検出することができる分子のことをいう。標識分子としては、特に限定されないが、蛍光物質、放射性同位元素、発光物質、酵素、X線吸収物質、抗体分子、特異的抗体によって認識される認識部位を有する分子(抗体認識分子)、磁性粒子、金属粒子、ガラスコーティングされた金属ナノ粒子等を適宜用いることができる。
本発明の一実施態様としては、可視化や検出が容易である観点から、標識分子として蛍光物質が好適に用いられる。蛍光色素としては、一例として、インドシアニングリーン、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor 546、AlexaFluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 647、BODIPY(登録商標)FL、テキサスレッド(登録商標)、オレゴングリーン(登録商標)488、ローダミンB、ローダミングリーン、テトラメチルローダミン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、フィコエリスリン、フィコシアニン、Cy3、Cy5、Cy7などが好適に用いられる。このうち、安全性が高く、可視化や検出が容易な観点から、インドシアニングリーンを用いることが特に好ましい。インドシアニングリーンは一定条件下において、近赤外光を照射することにより、照射した近赤外光よりも波長の長い近赤外領域の蛍光を発する。発せられた光は直接の肉眼ではほとんど観察できず、観察のためには赤外光検出のための装置を必要とするが、暗視野を可能とするため、関節鏡下での観察ではコントラストをつけやすく、検出しやすい。これらの蛍光分子はアビジン・ビオチン法による結合のほか、包接、その他公知の方法により陽性荷電分子を標識することができる。
また、標識分子として、抗体認識分子を用いた場合は、アビジン・ビオチン法のほか、各種蛍光抗体反応を利用して、蛍光観察が可能である。また、ルシフェリンを標識分子として用いた際には、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を利用した発光観察も可能である。さらに、標識分子として、X線吸収物質や磁性ナノ粒子、金属ナノ粒子等を用いることも可能である。これらを標識分子として用いることにより、X線CT、MRI、ラマン分光法、プラズモン共鳴法などによる観察も可能となる。なお、上述した標識分子による検出に加えて、軟骨組織下に豊富に存在するヘモグロビンの赤外光吸収やコラーゲン繊維の自家発光現象の検出、MRエラストグラフィ(MR elastography:MRE)の振動による剪断応力に対する組織の粘弾性を非侵襲的に評価することも可能である。
さらに、本発明の関節軟骨イメージング組成物には、上述した分子以外の他の成分を含むことができる。そのような添加物としては、例えば、等張化剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤などが挙げられる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール、D−ソルビトール、ブドウ糖などが好適に用いられる。緩衝剤としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。
さらに、本発明の関節軟骨イメージング組成物には、上述した添加物のほか、陽性荷電分子の軟骨組織内への侵入をさらに防ぐ物質を含ませることも可能である。このような物質としては、例えば、コラーゲンや陽性荷電化されていないアルブミン又はこれらの誘導体や分解物等が挙げられる。
なお、本発明の関節軟骨イメージング組成物は、上述した標識分子に替えて、損傷軟骨修復作用を有する治療用薬剤や、細胞シートなどによる再生医療・細胞治療の足場となるI型コラーゲン等のスキャフォールド分子を結合して用いることで、軟骨損傷部位に選択的に結合する薬剤送達システムとしての利用が可能である。また、スキャフォールド移植後の術後管理にも利用が可能である。
次に、本発明の関節軟骨イメージング組成物の使用方法について、説明する。本発明の関節軟骨イメージング組成物は、適用が容易である観点から、液体製剤であることが好ましい。本発明の組成物を生体内に適用する際には、関節鏡下での関節軟骨表層への噴霧、滴下もしくは塗布、又は、関節腔内への注射を行うことができる。関節鏡下での適用の場合には、乳酸リンゲル液又は生理的食塩水等で軟骨表面を洗浄して関節腔内の粘液(滑液)を除去した後、本発明の関節軟骨イメージング組成物の噴霧や塗布等を行うことが好ましい。また、関節軟骨イメージング組成物の噴霧等を行った後は、一定時間放置して関節軟骨イメージング組成物を浸透させる。この一定時間とは具体的には、対象組織への浸透性の観点から、3分〜30分程度が好ましく、5分〜20分程度がより好ましく、10分〜15分程度がさらに好ましい。その後、関節軟骨を乳酸リンゲル液等ですすぎ、非特異的な吸着や余剰の関節軟骨イメージング組成物を除去する。その後、標識分子による蛍光等の検出を行う。
標識分子による検出方法としては、特に限定されないが、関節鏡及び標識分子に適した励起光に調整するフィルタを備えたオプティカルファイバーを挿入して標識分子の測定を行うことが好ましい。一例として、標的分子に蛍光指示薬であるインドシアニングリーンを用いた場合には、至適なフィルタを介したCCDカメラの画像により、インドシアニングリーンの緑色の蛍光(ピーク波長800〜850nm)を簡易的に観察することができる。さらに、検出結果のイメージングにあたっては、適当なソフトウエアを用いて、蛍光強度等を観察者の望む色調や数値等に変換し、表示することが可能である。また、上述のようにして、関節軟骨イメージング組成物が可視化した軟骨変性部分につき、視認できる画像上の濃淡や色調の遷移等を識別あるいは検出することにより、変性した軟骨組織表面の粗さ、すなわち、軟骨の変性レベルを検知することも可能である。関節鏡を用いた診断や手術にかかる時間は、通常1〜3時間と短時間であるので、関節軟骨イメージング組成物の作用時間も同様に1〜3時間程度であればよく、診断や手術が終わった後には、乳酸リンゲル液や生理的食塩水等で複数回洗浄することにより、そのほとんどが排出され、残存した分についても加水分解等により分解され、排出され得る。
本発明の関節軟骨イメージング組成物によれば、正常な軟骨組織に対しては、その表層細胞が形成する殼の様な構造が陽性荷電分子を排除し、軟骨細胞内への侵入も起こり難いため、正常な軟骨組織は可視化されない。一方、変性して表層細胞層が無い軟骨組織に対しては、露出した軟骨基質に指向的に吸着するため、変性した軟骨組織は強調される。通常の検出方法では、軟骨変性の早期、すなわち、表層細胞層が失われたのみの「軟骨変性グレード1」は検出や識別が非常に困難とされていた。本発明の関節軟骨イメージング組成物によれば、このような「軟骨変性グレード1」についても識別、検出が可能となり、患者の早期の治療を可能とすることができる。
また、本発明の関節軟骨イメージング組成物によれば、関節鏡を使用して関節内の組織(軟骨、十靭帯及び半月板)の損傷状態を把握し、治療を行うことができるため、低襲侵性な診断及び治療が可能となる。これまで、関節鏡によって可視光下でモニターに映し出される関節軟骨は、白色の高い輝度をもち軟骨表層の変性や損傷を判別することが困難であったが、本発明の組成物を用いることにより、軟骨表面の変性や欠損部分を標識することができ、暗視野で標識分子による赤外蛍光を発光させる等して、可視光では見ることが難しかった軟骨の損傷状態を発見することが可能となる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.陽性荷電化アルブミンの調整
ウシ血清アルブミン5g(シグマ−アルドリッチ合同会社製品)を純水25mLに溶解させた。他方、無水エチレンジアミン67mL(シグマ−アルドリッチ合同会社製品)を純水500mLに添加し、氷水中で6Nの塩酸約350mLを徐々に加えてpHを4.75に調製した。さらに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩1.8g(シグマ−アルドリッチ合同会社製品)を上記エチレンジアミン溶液に添加し、先に調製したウシ血清アルブミン水溶液を加えた。氷水で調整容器を冷却して温度とpHを保ちながら2時間撹拌した後、4Mの酢酸緩衝液を5mL加えて反応を停止させた。得られた溶液を4°Cにて純水で72時間透析した後、凍結乾燥を行った。凍結乾燥により得られた結晶は白色で光沢があり、薄膜状の外観を呈した。
上述のようにして調整された凍結乾燥産物と、原料として用いたウシ血清アルブミンについて両者の等電点を測定し、陽性荷電化アルブミンが得られたかどうかの確認を行った。凍結乾燥産物及びウシ血清アルブミンを純水に溶解し、Novex(登録商標)IEFゲル(ライフテクノロジーズジャパン株式会社製品)にアプライして等電点電気泳動を行った。結果を図1に示す。図1に示されるように、通常のウシ血清アルブミンのpIは約4.9であるが、凍結乾燥産物は、pIが11程度と高く、高度にカチオン化されていることが分かった。これにより、陽性荷電化アルブミンが得られたことが確認された。
[実施例2]
2.陽性荷電化アルブミンとインドシアニングリーンの至適濃度の検討
蛍光色素であるインドシアニングリーン(ICG)は、ICGのみからなる水溶液の状態では蛍光は認められないが、タンパク質と結合すると近赤外光領域の蛍光を発する。実施例1で作成した陽性荷電化アルブミンにICGを結合させ、ICGから発せられる蛍光強度を以下のようにして測定した。なお、対照試験として、陽性荷電化されていないアルブミンとICGの結合による蛍光強度も測定した。
実施例1で作成した陽性荷電化アルブミンを純水に溶解させ、1.250mg/mL、0.625mg/mL、0.313mg/mL、0.156mg/mL及び0.078mg/mLの濃度の溶液を調整した。また、インドシアニングリーン(シグマ−アルドリッチ合同会社製品)を純粋に溶解させ、0.025mg/mLの溶液を調整した。各濃度の陽性荷電化アルブミン溶液とICG溶液をそれぞれ50μLずつ取り、96ウェルのELISAプレートの各ウェルに添加し、混合した。溶液から生じた赤外蛍光を赤外線観察カメラシステム(pde−neo C10935−20、浜松ホトニクス株式会社製品)で撮影した(励起光760nm、蛍光830nm)。対照試験として、陽性荷電化アルブミンをウシ血清アルブミン(シグマ−アルドリッチ合同会社製品)に替えて、上述と同様の内容にて試験を行った。結果を図2に示す。
図2の写真に示すように、陽性荷電化されていないアルブミンは、アルブミン濃度が0.313mg/mL(アルブミン濃度;0.156mg/mL、ICG濃度;0.0125mg/mL)以上の試験区において肉眼での蛍光識別が可能であった。一方、陽性荷電化アルブミンは、陽性荷電化アルブミン濃度が0.156mg/mL(陽性荷電化アルブミン濃度;0.078mg/mL、ICG濃度;0.0125mg/mL)以上の試験区において、肉眼での蛍光識別が可能であった。このように、陽性荷電化アルブミンは、通常のアルブミンよりも、低濃度で蛍光識別が可能なことがわかった。なお、ICGについては、上述の試験濃度(0.0125mg/mL)よりも高い濃度で試験を行ったところ、蛍光の輝度も高まることが確認された。
[実施例3]
3.関節軟骨イメージング組成物によるウシ正常関節軟骨を用いた損傷軟骨モデルのイメージング(1)
生後2〜3週間の精肉用ウシの前肢肩部の関節軟骨を約1.5cm×約2cmの大きさで切り出し、下骨は取り除いた。次に、図3の損傷軟骨モデル図に示すように、切り出した関節軟骨片の表面をカミソリで0.1〜0.2mm程度の深さで一部切除し、軟骨表面に欠損部を生じさせた。実際の臨床での利用を想定して、各関節軟骨片に約5mLの生理食塩水を注射筒で噴射して洗浄した。次に、純水に陽性荷電化アルブミンとICGを溶解させて調製した関節軟骨イメージング組成物(陽性荷電化アルブミン濃度:2.5mg/mL、ICG濃度:0.125mg/mL)200μLを疎水性プラスチック面に滴下し、関節軟骨片の表面を下にして疎水性プラスチック面に置き、関節軟骨イメージング組成物に浸漬させた。約10〜15分後に生理食塩水で余分な関節軟骨イメージング組成物を洗い流し、赤外線カメラ(浜松ホトニクス株式会社製品)を用いて、各関節軟骨切片の表面の画像を記録した。
赤外線カメラで観察した画像を図3に示す。対照区の関節軟骨片(表面を切除していないもの)については、軟骨表面からの関節軟骨イメージング組成物の浸透及び吸着は確認できなかった。白線状の発光は、関節軟骨片の外周側面に余剰な関節軟骨イメージング組成物が毛細管現象で付着したものであった。他方、試験区1(軟骨表面のうち、片側半面をカミソリで切除し欠損させたもの)については、表面の欠損部分から関節軟骨イメージング組成物が浸透し、吸着することにより生じた発光が確認できた。なお、白線状の発光は、関節軟骨片の外周側面に余剰な関節軟骨イメージング組成物が毛細管現象で付着したものであった。さらに、試験区2(軟骨表面のうち、中央部分をカミソリで切除し欠損させたもの)については、表面の中央部の欠損部分から関節軟骨イメージング組成物が浸透し、吸着することにより生じた発光が確認できた。このように、切除面は、深部にまで本発明の関節軟骨イメージング組成物が浸透して吸着し、強度な蛍光を発することが示された。
[実施例4]
4.関節軟骨イメージング組成物によるウシ正常関節軟骨を用いた損傷軟骨モデルのイメージング(2)
生後2〜3週間の精肉用ウシの前肢肩部の関節軟骨を無菌的に約1cm×約1.5cmの大きさで切り出し、下骨は可及的に取り除いた。切り出した軟骨は生理的リン酸緩衝液に浸漬させた。次に、切り出した関節軟骨片の表面の略半面(平面視、右側半面)を、手術用メス(No.11)で約0.1〜0.2mm程度の深さで切除し、軟骨表面に欠損部を作成した。この処理により、関節軟骨片の平面視左側半面は無傷の対照区となり、平面視右側半面は、軟骨の表層損傷モデルとなる。また、測定及び観察の際の位置確認のため、損傷させた面の一端の角を斜めに削除した。蛍光観察に先立ち、各関節軟骨片に約2〜3mLの生理的リン酸緩衝液を注射筒で吹き付けて洗浄した。余剰の緩衝液はキムワイプ(登録商標)で除去した。次に、後述する試料液1〜4を50μLずつ夫々疎水性シャーレに垂らし、各関節軟骨片の表面を下にしてシャーレの上に垂らした試料液の上に置き、関節軟骨片の表面に試料液を浸漬させた。約10分後に余分な試料液を2〜3mLの生理的リン酸緩衝液で洗い流し、余剰の緩衝液はキムワイプで除去した。各関節軟骨片を黒色の紙片の上に置き、近赤外光下及び可視光下で写真撮影を行った。
本実施例で用いた試料液1〜4は、いずれも純水に各成分を溶解させて調製し、試料液1:純水のみ、試料液2:ICG濃度0.125mg/mL、試料液3:アルブミン濃度2.5mg/mL及びICG濃度0.125mg/mL並びに試料液4:陽性荷電化アルブミン濃度2.5mg/mL及びICG濃度0.125mg/mLとした。また、近赤外光下での撮影は、近赤外発光ダイオード16本を円形に配列させた光源(励起波長:770nm、各30mA)で各関節軟骨片の試料液を励起させ、ICG用832nmのフィルター(Semrock社製品、BrightLine ICG−B)を介して、高感度CCDカメラ(浜松ホトニクス株式会社製品、ORCA−ER)にて、全て同一条件(100ms、low light及び8×binning mode)で行った。近赤外光下での撮影の後、可視光下でのモノクロ撮影を行った。
結果を図4に示す。可視光撮影写真及び近赤外光撮影写真のいずれにおいても、左側半面が無傷の対照を示し、右側半面が損傷モデルを示している。試料液1(純水のみ)の場合には、いずれの面においても発光は確認されなかった。しかし、試料液2(ICGのみ)の場合には、無傷の対照部分の面にのみ蛍光が見られた。この蛍光はICGが軟骨表面のタンパク質に吸着したことによるものと考えられる。他方、損傷モデルの面には、蛍光発光が観察されないことから、軟骨の表面が損傷することにより、タンパク質よりもグリコサミノグリカン等の糖鎖が軟骨表面に豊富に露出しており、ICGがこれらの糖鎖に吸着されなかったためと考えられた。他方、試料液3(アルブミン+ICG)の場合には、いずれの面も非常に弱い蛍光発光が観察されたが、その発光強度には差はなかった。これにより、アルブミンは、軟骨マトリックスや細胞層に対する吸着特異性がほとんどないこと、及び試料液中に含まれるアルブミンがICGと結合することにより、軟骨表面へのタンパク質へのICGの吸着活性が失われたためと考えられた。さらに、試料液4(陽性荷電化アルブミン+ICG)の場合には、損傷面の方に強い蛍光が観察された。これは、陽性荷電化アルブミンが損傷を受けた面から内部に浸透して陰性荷電を多く含む軟骨中層に吸着したためと推測された。無傷の対照部分の面は細胞層が密に並んでおり、陰性荷電も少なく、陽性荷電化アルブミンの吸着が少ないものと考えられる。また、ICGは陽性荷電化アルブミンに包摂されるなどしてタンパク質に飽和しており、軟骨表面のタンパク質に新たに吸着することはなかったものと考えられる。このように、陽性荷電化アルブミンとICGから構成される本発明の関節軟骨イメージング組成物は、軟骨損傷部に浸透して吸着し、正常な軟骨表面部分よりも強い蛍光を発することにより、損傷部分を可視化することが示された。
[実施例5]
5.関節軟骨イメージング組成物によるヒト損傷軟骨のイメージング
本発明の関節軟骨イメージング組成物を用いたヒトの関節軟骨の損傷部分のイメージングを試みた。試験材料として、人工膝関節手術のために切除され、医療廃棄されたヒトの関節の変性軟骨を用いた。無菌的に約1cm×約1.5cmの大きさで関節軟骨片を切り出した。切り出した軟骨は生理的リン酸緩衝液に浸漬させた。蛍光観察に先立ち、関節軟骨片に約2〜3mLの生理的リン酸緩衝液を注射筒で吹き付けて洗浄し、可視光下でカラー写真撮影を行った。余剰の緩衝液はキムワイプ(登録商標)で除去した。次に、純水に陽性荷電化アルブミンとICGを溶解させて調製した関節軟骨イメージング組成物(陽性荷電化アルブミン濃度:2.5mg/mL、ICG濃度:0.125mg/mL)100μLを疎水性シャーレにのせ、関節軟骨片の表面を下にしてシャーレの上に置き、関節軟骨片の表面に関節軟骨イメージング組成物を浸漬させた。約10分後に余分なイメージング組成物を2〜3mLの生理的リン酸緩衝液で洗い流し、余剰の緩衝液はキムワイプで除去した。関節軟骨片を黒色の紙片の上に置き、近赤外光下で表面及び側面の写真撮影を行った。近赤外光下での撮影は、近赤外発光ダイオード16本を円形に配列させた光源(励起波長:770nm、各30mA)で各関節軟骨片の試料液を励起させ、ICG用832nmのフィルター(Semrock社製品、BrightLine ICG−B)を介して、高感度CCDカメラ(浜松ホトニクス株式会社製品、ORCA−ER)にて、全て同一条件(100ms、low light及び8×binning mode、Auto−contrast mode)で行った。
結果を図5に示す。本実施例で用いたヒト変性軟骨は、重度の変形性関節症の病変のために、関節軟骨片のほぼ全体から強い蛍光が示された。これにより、陽性荷電化アルブミンとICGの組成物は、陽性荷電化アルブミンが、ICGの生体タンパク質への非特異的吸着を抑制しつつ、軟骨中層に多く存在する陰性荷電に優先的に吸着し、蛍光を発光することがわかった。なお、図5に示すように、可視光下で観察した際に確認された軟骨片表面の薄赤色部分については、蛍光強度が周囲と比べて低くなっていることがわかった。この薄赤色部分は関節軟骨の辺縁に近いところの組織であることから、軟骨表面に形成された滑膜組織様の血管を含む組織であると考えられ、その滑膜が本発明のイメージング組成物の浸透を遅らせたものと推測された。
本発明の関節軟骨イメージング組成物は、変形性膝関節症の引き金となる軟骨の変性を早期に検出でき、正常軟骨と変性軟骨の境界を明瞭に区別することができる。本発明の関節軟骨イメージング組成物は、関節鏡による診断又は手術等の際に、生体内において、関節軟骨の変性部位を可視化させることができるだけでなく、関節腔に注入することなどにより、in vivoイメージング技術を利用して非侵襲的又は低侵襲的に軟骨の変性状態を観察することができる。さらに、摘出関節軟骨組織又は再生関節軟骨組織において、軟骨損傷度の評価および改善度の評価、ならびに、関節軟骨疾患に関する創薬研究や病理研究にも有用である。

Claims (2)

  1. インドシアニングリーンで標識されている陽性荷電化アルブミンを含有することを特徴とする関節軟骨の変性部位の可視化用組成物。
  2. 前記可視化用組成物は、変性部位を有する関節軟骨の表面に噴霧、滴下、塗布又は浸漬させて、前記陽性荷電化アルブミンが前記関節軟骨の変性部位に吸着されるように用いられることを特徴とする請求項に記載の関節軟骨の変性部位の可視化用組成物。
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