JP6220893B2 - クロニジン含有貼付剤 - Google Patents

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Description

本発明は、クロニジン含有貼付剤に関する。
クロニジンは、2−(2,6−ジクロロフェニルイミノ)イミダゾリジンとも呼ばれ、選択的アドレナリンα2受容体アゴニストとして知られている。クロニジンは、中枢α2受容体の刺激による交感神経シグナル伝達の抑制し、かつ、末梢アドレナリン作用性神経終末のシナプス前膜に存在するα2受容体に作用し、交感神経の興奮によりノルエピネフリンの遊離を抑制することによって、血圧を降下させる作用を有する。
クロニジンは、経口用高血圧症治療薬として開発されてきたが、クロニジンの血中濃度が高まると、消化管障害等の副作用を生じやすいという問題がある。クロニジンを経口投与する場合、1日3回、1日あたり0.225〜0.45mgの用法用量で投与され、高血圧治療に有効なクロニジンの血中濃度は、0.2〜2.0ng/mLである(非特許文献1)。
そこで、消化管障害等の副作用を低減させるために、クロニジンの経皮吸収型製剤への応用が検討されている(特許文献1〜3)。
また、クロニジンは、血圧降下作用の他に、より低い投与量で局所鎮痛作用を示すことが新たに見出され、経皮吸収型製剤の開発が注目されている(特許文献4〜7)。特に、特許文献7には、疼痛治療のための処方物におけるα2アゴニストの皮膚透過速度は少なくとも1μg/cm/hrであることが記載されている。
近年、海外ではCatapres−TTS(登録商標、ベーリンガーインゲルハイム社)が市販されており、0.2ng/mL以上の血中濃度で血圧降下作用を示す。特許文献4には、Catapres−TTS(登録商標)−2(貼付面積3.5cm)及びCatapres−TTS(登録商標)−3(貼付面積7.0cm)が、クロニジンが交感神経支配の疼痛や神経因性疼痛に対して局所鎮痛効果を示すことが開示されている。
特開平6−116145号公報 特開昭60−193920号公報 特公昭62−14526号公報 米国特許第5447947号明細書 特開2013−10770号公報 特表2009−514970号公報 特表2009−524586号公報
カタプレス錠インタビューフォーム
ところで、クロニジンは、血管運動中枢を抑制することにより、ねむけ、うつ状態、口渇、性欲低下等の中枢性副作用を示すことがあり、服薬を急に中止した場合、血圧の急上昇等の離脱症候群(withdrawal syndrome)を示すことが知られている。しかしながら、上記先行技術文献には、クロニジンの全身性の作用が発現しないという発想は全く開示されていない。
また、上述のように、クロニジンは、血圧降下作用よりも低い投与量で局所鎮痛作用を示す。したがって、局所鎮痛作用を期待して、従来のクロニジン塩酸塩を含有する抗高血圧症用の貼付剤を使用した場合、所望の局所鎮痛作用だけでなく、血圧降下作用も発揮し、立ちくらみ等の低血圧症状を示す可能性があり、使用者の安全性及びコンプライアンスの観点から問題となる。
さらに、一般的に局所鎮痛用貼付剤には、患部を十分に被覆できる程度の大きな面積を有することが必要とされる。ここで、貼付剤の貼付面積を単純に大きくすると、製剤中に含まれる薬物の含有量が増大する。しかしながら、局所鎮痛作用を目的としたクロニジン含有貼付剤の場合、クロニジンの血中濃度が高まると、血圧降下作用を生じる可能性が高まるため、製剤中のクロニジン含有量を低くする必要がある。
本発明者らは、クロニジン含有貼付剤において、クロニジン含有量の低下に伴い、製剤中のクロニジンの安定性が低下するという問題があることを見出した。すなわち、従来の貼付剤において、全身性の副作用を示さない製剤中のクロニジン濃度は0.5質量%以下であるものの、このようなクロニジン濃度では製剤中のクロニジンの経時安定性が低く、実用性に欠けていた。
本発明は、上記問題点を解決するために、局所鎮痛作用を示し、かつ薬物安定性に優れたクロニジン含有貼付剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の成分がクロニジンに対して皮膚透過抑制剤として作用することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、支持体と、該支持体上に積層された粘着剤層とを備える局所鎮痛用貼付剤であって、上記粘着剤層が、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩と、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤と、粘着剤と、を含み、上記皮膚透過抑制剤が、クエン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リンゴ酸、乳酸、メタクリル酸とメタクリル酸エステルの共重合体及びポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であり、上記クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が、上記粘着剤層全量を基準として0.9質量%以下である、局所鎮痛用貼付剤を提供する。
クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が粘着剤層全量を基準として0.9質量%以下であり、クエン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リンゴ酸、乳酸、メタクリル酸とメタクリル酸エステルの共重合体及びポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する貼付剤であれば、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の皮膚透過速度を十分に抑制することができ、局所鎮痛作用のみを示し、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の経時安定性にも優れる。
本発明に係る貼付剤は、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の最大皮膚透過速度が0.5μg/cm/hr以下であることが好ましい。クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の最大皮膚透過速度が0.5μg/cm/hr以下であると、クロニジンの血中濃度が急激に上昇することがなく、かつ持続的に局所鎮痛作用を示すことができる。
本発明に係る貼付剤は、乾燥剤とともに包材に封入されるか、又は、乾燥機能を有する機能性包材に封入されることが好ましい。
また、本発明は、疼痛症状を訴える対象の皮膚(例えば、患部皮膚)に、上記貼付剤を適用することを含む、疼痛を緩和又は治療する方法を提供するとも理解される。ここで、「治療」とは、上記対象が疼痛症状を自覚しない程度に抑制されることを意味し、「緩和」とは、上記対象が疼痛症状を自覚するものの、上記貼付剤を適用しない場合と比べて、疼痛症状が抑制されることを意味する。
さらに、本発明は、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤、粘着剤、溶剤を含有する組成物を、支持体又は剥離ライナーに展延することを含む、局所鎮痛用貼付剤の製造方法も提供するとも理解される。
本発明に係るクロニジン含有貼付剤によれば、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の皮膚透過速度を十分に抑制することができ、局所鎮痛作用のみを示し、貼付剤中のクロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の経時安定性にも優れる。
本実施形態の貼付剤は、支持体と、該支持体上に積層された粘着剤層とを備える。そして、該粘着剤層はクロニジン又はその薬学的に許容可能な塩と、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤とを含有する。
支持体としては、通常貼付剤に使用できる伸縮性又は非伸縮性のものが用いられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;エチレン酢酸ビニル重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂や綿等の合成樹脂で形成された、フィルム若しくはシート又はこれらの積層体、多孔質膜、発泡体、織布及び不織布等の布帛、多孔質膜、発泡体、紙材等を好適に用いることができる。
本実施形態に係る粘着剤層には、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩と、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤と、粘着剤と、を含有する。
クロニジンは、2−(2,6−ジクロロフェニルイミノ)イミダゾリジンとも呼ばれ、下記化学式(1)で表される構造を有する化合物である。クロニジンは、選択的アドレナリンα2受容体アゴニストとして知られている。
Figure 0006220893
クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩としては、クロニジン塩酸塩が好ましい。本明細書中、特に記載のない限り、「クロニジン」という用語は、クロニジンの薬学的に許容可能な塩も包含される。
本実施形態に係る貼付剤において、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、粘着剤層全量を基準として0.9質量%以下であり、下限値としては局所鎮痛作用を発揮できる点から0.1質量%以上であることが好ましい。また、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が0.9質量%を超えると、貼付剤の製造過程において、粘着剤溶液中に沈殿を生じやすくなり、均質な粘着剤層を得ることが困難である。粘着剤層におけるクロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が低いと薬物安定性が低下することを鑑みると、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、従来の貼付剤との効果の差がより顕著となる点から、粘着剤層全量を基準として0.5質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る貼付剤において、クロニジンの皮膚透過速度は、0.5μg/cm/hr以下であることが好ましい。0.5μg/cm/hr以下であると、貼付剤を貼付した際にクロニジンの血中濃度が高くなりにくく、血圧降下作用等の副作用を生じにくい。また、0.002μg/cm/hr以上であると、局所鎮痛作用を発揮するために十分な局所濃度を確保することができる。
本明細書中、「局所濃度」という用語は、貼付剤を貼付する部位(患部)の皮膚を透過した組織における薬物濃度を意味する。
クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤とは、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩が皮膚を透過して血中に移行することを抑制できる化合物を意味しており、具体的には、クエン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リンゴ酸、乳酸、メタクリル酸とメタクリル酸エステルとの共重合体及びポリエチレングリコールが挙げられる。
メタクリル酸とメタクリル酸エステルの共重合体としては、例えば、ポリ(メタクリル酸−co−メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸−co−メタクリル酸エチル)等が挙げられる。メタクリル酸とメタクリル酸エステルの重合比は、1:1〜1:2であることが好ましい。具体的には、オイドラギット(登録商標)L100、オイドラギット(登録商標)L30D−55、オイドラギット(登録商標)S100等が挙げられる。
ポリエチレングリコールとしては、薬学的に許容なものであれば特に制限はなく、数平均分子量が100〜20000であるものが好ましく、200〜600であるものがより好ましい。好ましいポリエチレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール400等が挙げられる。
クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、上記皮膚透過抑制剤は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。水和物である皮膚透過抑制剤としては、例えば、クエン酸一水和物が挙げられる。さらに、上記皮膚透過抑制剤に光学異性体が存在する場合、光学異性体の一方のみを使用してもよく、ラセミ体のように光学異性体の混合物を使用してもよい。光学異性体の混合物である皮膚透過抑制剤としては、例えば、DL−リンゴ酸が挙げられる。
上記皮膚透過抑制剤は、塩の形態のものを包含しない。したがって、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛等の塩は、本実施形態に係るクロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤には、含まれない。
本実施形態に係る貼付剤において、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤の含有量は、粘着剤層全量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、3〜9質量%であることがより好ましい。0.1質量%以上であると、貼付剤を貼付した際にクロニジンの血中濃度が高くなりにくく、血圧降下作用等の副作用を生じにくい。また、10質量%以下であると、局所鎮痛作用を発揮するために十分な局所濃度を確保することができる。
本実施形態に係る粘着剤層は、スチレンブロックコポリマー系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤から選ばれる少なくとも1種の粘着剤を含有する。スチレンブロックコポリマー系粘着剤は、粘着力が弱く、痛覚が過敏になっている患部に貼付又は剥離する際にも痛みを生じにくい点から好ましい。
スチレンブロックコポリマー系粘着剤とは、スチレンブロックコポリマーに粘着付与樹脂等を添加し粘着性を付与したものである。スチレンブロックコポリマー系粘着剤としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)系粘着剤、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)系粘着剤、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)系粘着剤又はスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)系粘着剤等が挙げられる。
ポリイソブチレン系粘着剤とは、ポリイソブチレン(PIB)に可塑剤等を添加し粘着性を付与したものである。
ポリイソブチレン(PIB)は、異なる平均分子量のポリイソブチレンを複数種、混合して用いてもよい。
可塑剤としては、例えば、飽和炭化水素系可塑剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル;ポリブチレン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム;スクワラン;スクワレン;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。可塑剤としては、流動パラフィン又はポリブチレンが特に好ましい。
粘着剤層中の可塑剤の含有量は、粘着剤としての十分な粘着力の維持を考慮し、当業者が適宜調整することができるが、粘着剤層全量を基準として40〜80質量%であることが好ましく、50〜70質量%であることがより好ましく、55〜65質量%であることが特に好ましい。
シリコーン系粘着剤とは、ジメチルポリシロキサンと、三次元構造のシリケートレジンとの縮合反応物からなる粘着剤であり、例えばBio−PSA 7−4102(ダウコーニング社製、商品名)等を挙げることができる。
これらの各種粘着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、粘着剤の含有量は、粘着剤層の形成及び粘着性、有効成分の組織透過性を考慮し、当業者にとって適宜設定され得る。例えば、粘着剤の含有量は、粘着剤層全量を基準として40〜98質量%であってよく、50〜95質量%であってもよい。特に60〜95質量%であることが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤層には、粘着力及び剥離時の局所刺激性を調節するために、粘着付与樹脂をさらに含有してもよい。
粘着付与樹脂としては、脂環族飽和炭化水素樹脂;ロジン、ロジングリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジングリセリンエステル又はロジンペンタエリスリトールエステルなどのロジン誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂又はマレイン酸レジンなどを好適に用いることができる。具体的には、例えば、エステルガム(荒川化学工業社製、商品名)、ハリエスター(ハリマ化成社製、商品名)、ペンタリン(登録商標、イーストマンケミカル社製、商品名)、フォーラル(イーストマンケミカル社製、商品名)、KE−311(荒川化学工業社製、商品名)等のロジン系樹脂、YSレジン(ヤスハラケミカル社製、商品名)、ピコライト(ルースアンドディルワース社製、商品名)等のテルペン系樹脂、アルコン(登録商標、荒川化学工業社製、商品名)、リガレッツ(イーストマンケミカル社製、商品名)、ピコラスチック(イーストマンケミカル社製、商品名)、エスコレッツ(エクソン社製、商品名)、ウイングタック(グッドイヤー社製、商品名)、クイントン(登録商標、日本ゼオン社製、商品名)等の石油樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が使用可能である。
上記粘着付与樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、粘着付与樹脂の含有量は、貼付剤の十分な粘着力及び剥離時の局所刺激性を考慮し、当業者が適宜設定することが可能であるが、粘着剤層全量を基準として2〜60質量%であることが好ましく、3〜50質量%であることがさらに好ましく、5〜40質量%であることが特に好ましい。
粘着剤層は、必要に応じて、添加物Aとして充填剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、溶剤、香料等を含有してもよい。
充填剤としては、ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン等が例示できる。
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が例示できる。
抗酸化剤としては、トコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸及びそのエステル誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロリン酸及びその塩等を好適に用いることができる。
上記充填剤、紫外線吸収剤及び抗酸化剤は、合計で、粘着剤層全量を基準として、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%の量で配合される。
溶剤としては、例えば、エタノール、アセトン、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を好適に用いることができる。
また、本実施形態の貼付剤には、保存中の外的な環境から粘着剤層を保護するために、粘着剤層の表面を剥離ライナーで被覆してもよい。貼付剤が剥離ライナーを備える場合、貼付剤を使用する時に、剥離ライナーを剥離して除去する。
剥離ライナーとしては、一般に貼付剤の剥離ライナーとして使用できる紙、フィルム、箔及びこれらの積層体等を使用することができ、実質的に薬物非透過性のプラスチック製フィルムが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アルミニウム等の金属、セルロース等を好適に使用することができる。
剥離ライナーの粘着剤層に面する表面は、シリコーン及びテフロン(登録商標)等による離型処理を施してもよい。離型処理することにより、剥離除去しやすくすることができる。特に、シリコーンによる離型処理がより好ましく、剥離特性が経時安定的に保持される。
本実施形態に係る貼付剤は、アルミニウム製の包材(包装材料ともいう)中に封入して、保管することが好ましい。アルミニウム製の包材には、本実施形態に係る貼付剤とともに、乾燥剤、脱酸素剤等の保存剤を同封することがより好ましい。このような保存剤としては、例えば、焼成珪藻土、未焼成珪藻土、結晶性シリカ、ソルビン酸等が挙げられ、具体的には、ファーマキープ(登録商標、三菱ガス化学社製)、エージレス(登録商標、三菱ガス化学社製)等を使用することができる。また、上記包材は機能性包材であってもよい。機能性包材としては、例えば、乾燥機能、脱酸素機能等を有する包材が挙げられる。具体例としては、ドライキープ(登録商標、佐々木化学薬品株式会社)、NS−AAP(日新シール工業株式会社)、モイストキャッチ(登録商標、共同印刷株式会社)、オキシキャッチ(登録商標、共同印刷株式会社)が挙げられる。乾燥剤とともに包材に封入される、又は乾燥機能を有する機能性包材に封入されることにより、貼付剤に含有されるクロニジン又はその薬学的に許容される塩の、加水分解に対する薬物安定性がより向上する。また、脱酸素剤とともに包材に封入されることにより、貼付剤に含有されるクロニジン又はその薬学的に許容される塩の、酸素に対する薬物安定性がより向上する。
本明細書において、「十分な薬物安定性を維持する」という用語は、貼付剤に含有されるクロニジン塩酸塩の分解を抑制し、例えば、60℃において1週間保管した場合においても、貼付剤中のクロニジン含有量が、貼付剤製造時のクロニジン含有量に対して94%以上残存することを意味する。
本実施形態に係る貼付剤は、例えば、以下のような方法で製造することができる。まず、粘着剤と溶剤、必要に応じて、その他の成分を溶媒中で混合して、均一な基剤を調製する。次に、得られた基剤に、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩、及び、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤を混合し、粘着剤溶液を調製する。そして、得られた粘着剤溶液を離型処理されたフィルム(剥離ライナー)上に展延した後、溶剤を乾燥除去させて粘着剤層を形成させる。最後に、該粘着剤層上に支持体を圧着させることにより、貼付剤を得る。したがって、得られた貼付剤は、剥離ライナー、粘着剤層、支持体の順に積層される。また、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の結晶の析出を抑制するために、得られた貼付剤を加温してもよい。また、粘着剤層を形成させる工程は、上記粘着剤溶液に代えて、粘着剤、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩、及び、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤を加温混合したものを使用して、ホットメルト法により製造してもよい。
(貼付剤の製造方法)
表1に記載された割合にしたがい、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、ポリイソブチレン(PIB)、粘着付与樹脂、流動パラフィン、添加物A及びトルエンを、混合機を用いて混合し、均一な基剤1〜4を調製した。表1中の数値は、質量(g)を意味する。次に、表2に記載された割合にしたがい、上記基剤1〜4のいずれか1種とクロニジンと、必要に応じて添加剤Bとを混合し、粘着剤溶液をそれぞれ得た。得られた粘着剤溶液を離型処理されたフィルム(剥離ライナー)上に展延し、溶剤を乾燥除去させて粘着剤層を形成した後、その上に支持体を積層させて、支持体と粘着剤層とを圧着させることにより貼付剤を得た。したがって、得られた貼付剤は、剥離ライナー、粘着剤層、支持体の順に積層された。
Figure 0006220893
Figure 0006220893
(薬物安定性試験)
実施例、比較例及び参考例の貼付剤の薬物安定性は、以下のようにして評価した。
製造した貼付剤を25mm×25mmの略矩形に打ち抜き、アルミニウム製の包材にそれぞれ個別に封入した後、該包材を表3〜5に記載の条件(温度、期間)にしたがって保管した。表3に記載の期間が経過した後、該包材から貼付剤を取り出し、得られた貼付剤にテトラヒドロフラン及びメタノールを添加して振とう及び超音波処理することにより、貼付剤中に含有される薬物(クロニジン)を抽出した。得られた抽出液を濃縮したのち、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)にて吸光度を測定した。得られた吸光度から、検量線に基づいて貼付剤一枚あたりの薬物含有量を算出した。なお、保管前の貼付剤中の薬物含有量を同様に算出し、初期薬物含有量とした。薬物安定性試験における貼付剤中の薬物残存率を、下記式(1)により算出し、薬物安定性を示す値とした。
薬物残存率=(試験後の貼付剤1枚あたりの薬物含有量)/(試験前の貼付剤1枚あたりの薬物含有量)×100(%) …(1)
(皮膚透過性試験)
実施例、比較例及び参考例の貼付剤の皮膚透過性は、以下のようにして評価した。
ヘアレスマウスの背部皮膚を剥離し、剥離された皮膚の真皮側がレセプター層側となるようにして、37℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセルに装着した。次に、皮膚の角質層側に貼付剤(貼付面積3.14cm)を貼付し、レセプター層としてリン酸緩衝液(pH7.4)を加えた生理食塩水を用いて、1.25mL/hrで4時間毎に24時間後までレセプター溶液をサンプリングし、その流量を測定すると共に、HPLCを用いてレセプター溶液中のクロニジン濃度を測定した。得られた測定値から1時間あたりの薬物透過速度を算出し、定常状態における単位面積あたりの薬物の皮膚透過速度とした。
試験例1:クロニジン含有量と薬物安定性及び皮膚透過性との関係
表2の記載にしたがい、基剤1とクロニジンとを混合して、クロニジンの含有量が異なる参考例1〜4の貼付剤を調製した。参考例1〜4の貼付剤の薬物安定性及び皮膚透過性の評価結果を表3に示す。表3に示すように、貼付剤中のクロニジン含有量の低下に伴い、皮膚透過速度及び薬物安定性が低下することが明らかとなった。
Figure 0006220893
試験例2:添加物Bの添加による薬物安定性及び皮膚透過性の変化
実施例1〜13、比較例1〜7の貼付剤を調製し、薬物安定性及び皮膚透過性を評価した。評価結果を表4及び表5に示す。添加物B(クエン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リンゴ酸、乳酸、オイドラギット(登録商標)L100/ポリエチレングリコール及びクエン酸/ポリエチレングリコール)を添加することによって、94%以上のクロニジン残存率を示し、貼付剤中の薬物安定性と皮膚透過性がともに向上した。特に、実施例5及び6の貼付剤は、皮膚透過性の抑制効果が顕著であった。一方、比較例1〜7の貼付剤は、60℃、1週間保管した場合、クロニジンの残存率は73〜93%であった。
Figure 0006220893
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Claims (3)

  1. 支持体と、該支持体上に積層された粘着剤層とを備える局所鎮痛用貼付剤であって、
    前記粘着剤層が、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩と、クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩に対する皮膚透過抑制剤と、粘着剤と、を含み、
    前記皮膚透過抑制剤が、クエン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リンゴ酸、乳酸、並びに、メタクリル酸とメタクリル酸エステルとの共重合体及びポリエチレングリコールの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記メタクリル酸とメタクリル酸エステルとの共重合体が、ポリ(メタクリル酸−co−メタクリル酸メチル)またはポリ(メタクリル酸−co−メタクリル酸エチル)であり、
    前記ポリエチレングリコールが、数平均分子量が100〜20000のポリエチレングリコールであり、
    前記クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が、前記粘着剤層全量を基準として0.1質量%〜0.9質量%であり、
    クロニジン又はその薬学的に許容可能な塩の最大皮膚透過速度が0.002μg/cm /hr〜0.5μg/cm /hrである、局所鎮痛用貼付剤。
  2. 前記皮膚透過抑制剤の含有量が、前記粘着剤層全量を基準として、0.1〜10質量%である、請求項1に記載の貼付剤。
  3. 乾燥剤とともに包材に封入される、又は、乾燥機能を有する機能性包材に封入される、請求項1又は2に記載の貼付剤。
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