JP6217585B2 - 曲げ加工性及び耐衝撃摩耗性に優れた耐摩耗鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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(1)質量%で、C:0.13〜0.36%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.10〜2.00%、Cr:0.05〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、Al:0.10%以下、N:0.005%以下を、次(1)式
Ceq*=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
(ここで、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義されるCeq*が0.45〜0.85を満足するように含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、表面から板厚方向に1mmの位置における組織が、組織全量に対する面積率で、ベイナイト相と島状マルテンサイト相と、あるいはさらにマルテンサイト相との合計が90%以上で、かつ前記島状マルテンサイト相と前記マルテンサイト相との合計が、10〜50%である組織と、を有し、表面から板厚方向に1mmの位置における硬さがブリネル硬さで300〜400HBW10/3000であり、曲げ加工性および耐衝撃摩耗性に優れることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.030%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(4)鋼素材を、加熱し、熱間圧延して耐摩耗鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、C:0.13〜0.36%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.10〜2.00%、Cr:0.05〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、Al:0.10%以下、N:0.005%以下を次(1)式で
Ceq*=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
(ここで、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義されるCeq*が0.45〜0.85を満足するように含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、前記熱間圧延を終了した後、800〜500℃の温度域における、鋼板表面の平均冷却速度CRが、次(2)式
CR1 ≦ CR ≦ CR2 ・・・(2)
ここで、CR1=120×exp(−7×Ceq*) ・・・(3)
CR2=700×exp(−7×Ceq*) ・・・(4)
を満足する冷却速度で冷却することを特徴とする曲げ加工性および耐衝撃摩耗性に優れた耐摩耗鋼板の製造方法。
(5)(4)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.030%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
Cは、基地相(マトリクス)硬さを増加させ、耐摩耗性を向上させる有効な元素である。このような効果を得るためには、0.13%以上の含有を必要とする。一方、0.36%を超える含有は、曲げ加工性を著しく低下させる。このため、Cは0.13〜0.36%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.16〜0.33%であり、より好ましくは0.19〜0.30%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶して固溶強化により基地相(マトリクス)硬さを増加させる元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、延性、靭性を低下させ、さらに介在物量が増加するなどの問題を生じる。このため、Siは0.05〜1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.40%である。
Mnは、鋼中に固溶して固溶強化により基地相(マトリクス)硬さを増加させる元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上の含有を必要とする。一方、2.00%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Mnは0.10〜2.00%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.50〜1.60%、より好ましくは1.00〜1.60%である。
Crは、焼入れ性の向上に寄与する元素であり、このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Crは0.05〜2.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.10〜1.5%、より好ましくは0.40〜1.5%である。
Pは、粒界に偏析し母材および溶接部の靱性を低下させるなど、悪影響を及ぼす元素であり、不可避的不純物として、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.020%以下であれば許容できる。このため、Pは0.020以下に限定した。なお、過剰の低減は、精錬コストの高騰を招くため、0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、MnS等の硫化物系介在物として鋼中に存在し、破壊の発生起点となるなど、悪影響を及ぼす元素である。本発明では不可避的不純物として、できるだけ低減することが好ましいが、0.005%以下であれば、許容できる。このため、Sは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは、0.0035%以下である。なお、過剰の低減は、精錬コストの高騰を招くため、0.0005%以上とすることが好ましい。
Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒を微細化する作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.10%を超えて多量に含有すると、酸化物系介在物が増加し、清浄度が低下し、表面疵が多発して表面性状が低下するとともに、曲げ加工性が低下する。このため、Alは0.10%以下に限定した。好ましくは0.05%以下である。
Nは、母材および溶接部の靭性を低下させる元素であり、本発明では、不可避的不純物元素として、できるだけ低減することが好ましいが、0.005%以下であれば、許容できる。このため、Nは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.004%以下である。
Ceq*は、鋼の焼入れ性を示す指標で、次(1)式
Ceq*=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
(ここで、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される。なお、Ceq*の計算に際しては、(1)式に記載された元素のうち含有しないものは「零」として算出するものとする。
Nb、Ti、Bはいずれも、鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。
Ca、Mg、REMはいずれも、Sと結合し、圧延方向に長く伸びるMnS等の形成を抑制して、硫化物系介在物が球状を呈するように形態制御し、溶接部等の靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上、REM:0.0005%以上、含有することが好ましい。一方、Ca:0.0040%、Mg:0.0050%、REM:0.0080%、を超えて含有すると、鋼の清状度が低下し、表面疵が多発し表面性状が低下するとともに、曲げ加工性が低下する。このようなことから、含有する場合には、Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%、に限定することが好ましい。
CR1 ≦ CR ≦ CR2 ・・・(2)
(ここで、CR1=120×exp(−7×Ceq*) ・・・(3)
CR2=700×exp(−7×Ceq*) ・・・(4)
を満足する冷却速度で冷却する。ここでいう冷却速度は、表面での冷却速度をいうものとする。なお、(3)、(4)式は、本発明者らが求めた実験式であり、種々の組成の鋼板を種々の冷却速度で冷却して、所望の組織および所望の表面硬さを確保できる冷却速度範囲を意味する。
CR1 ≦ CR ≦ CR2 ・・・(2)
を満足する平均冷却速度CRで冷却することとした。また、冷却の停止温度は、500℃以下とすることが好ましい。
(1)組織観察
得られた鋼板から、組織観察用試験片を採取し、圧延方向断面を研磨、腐食(ナイタール腐食液)して、光学顕微鏡(倍率:400倍)を用いて表面から1mmの位置を中心として、観察し撮像し、画像解析により各相の同定および面積率を算出した。なお、撮像は5視野以上で行った。1視野の面積は約250μm(板厚方向)×400μm(圧延方向)であった。
(2)表面硬さ試験
得られた鋼板から、硬さ測定用試験片を採取し、JIS Z 2243(1998)の規定に準拠して、表面から板厚方向に1mmの位置の硬さを測定した。なお、表面から1mmを研削除去し、表面から1mmの面で表面硬さを測定した。測定に際しては、直径10mmのタングステン硬球を使用し、荷重は3000kgfとした。
(3)曲げ試験
得られた鋼板から曲げ試験片(幅50mm×150mm長さ)を採取し、JIS Z 2248の規定に準拠して、曲げ角度:180°まで押し曲げ、割れ発生のない最小内側半径R(mm)を求め、板厚t(mm)に対する曲げ比率(R/t)で表示した。R/tが1.5以下である場合を曲げ加工性に優れるとして「○」と評価する。
(4)衝撃摩耗試験
得られた鋼板の表面から板厚方向に1mmの位置が試験片表面(摩耗試験面1a)となるように、衝撃摩耗試験片(厚さ10mm×幅25mm×長さ75mm)を採取し、衝撃摩耗試験を実施した。衝撃摩耗試験は、図2に模式的に示す衝撃摩耗試験装置を用いて行った。
1a 摩耗試験面
1A 衝撃摩耗試験片
1B 比較材試験片
2 ドラム
3 ロータ
4 珪石(装入された材料)
Claims (6)
- 質量%で、
C :0.13〜0.36%、 Si:0.05〜1.0%、
Mn:0.10〜2.00%、 Cr:0.05〜2.0%、
P :0.020%以下、 S :0.005%以下、
Al:0.10%以下、 N :0.005%以下
を、下記(1)式で定義されるCeq*が0.45〜0.85を満足するように含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、
表面から板厚方向に1mmの位置における組織が、組織全量に対する面積率で、ベイナイト相と島状マルテンサイト相と、あるいはさらにマルテンサイト相との合計が90%以上で、かつ前記島状マルテンサイト相と前記マルテンサイト相との合計が10〜50%である組織と、を有し、
表面から板厚方向に1mmの位置における硬さがブリネル硬さで300〜400HBW10/3000であり、曲げ加工性および耐衝撃摩耗性に優れることを特徴とする耐摩耗鋼板。
記
Ceq*=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
ここで、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%) - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.030%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の耐摩耗鋼板。
- 鋼素材を、加熱し、熱間圧延して耐摩耗鋼板とするにあたり、
前記鋼素材を、質量%で、
C :0.13〜0.36%、 Si:0.05〜1.0%、
Mn:0.10〜2.00%、 Cr:0.05〜2.0%、
P :0.020%以下、 S :0.005%以下、
Al:0.10%以下、 N :0.005%以下
を、下記(1)式で定義されるCeq*が0.45〜0.85を満足するように含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、
前記熱間圧延を終了した後、800〜500℃の温度域における、鋼板表面の平均冷却速度CRが、下記(2)式を満足する冷却速度で冷却し、表面から板厚方向に1mmの位置における組織が、組織全量に対する面積率で、ベイナイト相と島状マルテンサイト相と、あるいはさらにマルテンサイト相との合計が90%以上で、かつ前記島状マルテンサイト相と前記マルテンサイト相との合計が10〜50%である組織であり、表面から板厚方向に1mmの位置における硬さがブリネル硬さで300〜400HBW10/3000である鋼板とすることを特徴とする曲げ加工性および耐衝撃摩耗性に優れた耐摩耗鋼板の製造方法。
記
Ceq*=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
ここで、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
CR1 ≦ CR ≦ CR2 ・・・(2)
ここで、CR1=120×exp(−7×Ceq*) ・・・(3)
CR2=700×exp(−7×Ceq*) ・・・(4) - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.030%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項4に記載の耐摩耗鋼板の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項4または5に記載の耐摩耗鋼板の製造方法。
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