JP6216531B2 - 細胞増殖抑制剤およびがんの予防・治療剤 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞増殖抑制剤およびがんの予防・治療剤に関する。
厚生労働省の「人口動態統計」における日本人の主要死因別年齢調整死亡率において、昭和56年から現在に至るまで悪性新生物(がん)が第一位となっており、がんによる死亡率は近年まで低下傾向を示さず、横ばいか、微増を示している。このため、がんの治療および症状の軽減に適した治療方法を開発するために多くの研究が行われており、化学治療の分野においては、抗生物質、代謝拮抗物質、アルキル化剤、ホルモン剤などががん細胞に有効な抗腫瘍剤として見いだされているが、これらの抗腫瘍剤は、がん細胞を攻撃するだけでなく正常細胞にも作用することから、嘔吐、悪心、食欲不振、脱毛などの副作用を引き起こす問題が発生しており、これらの副作用が少ない新規な治療薬の開発が望まれている。
ところで、miRNA(マイクロRNA、microRNA)が、種々の生理活性を有することが知られている。miRNAは、細胞内在性の、20〜25塩基程度の非コードRNAである。miRNAは、ゲノムDNA上のmiRNA遺伝子から、まず数百〜数千塩基程度の長さの一次転写物(pri−miRNA)として転写される。次いで、プロセシングを受けて約60〜70塩基程度のヘアピン構造を有するpre−miRNAとなる。その後、核から細胞質内に移り、さらにプロセシングを受けて20〜25塩基程度の二量体(ガイド鎖およびパッセンジャー鎖)からなる成熟miRNAとなる。成熟miRNAは、そのうちのガイド鎖(アンチセンス鎖)がRISC(RNA-Induced Silencing Complex)と呼ばれるタンパク質と複合体を形成し、標的遺伝子のmRNAに作用することで、標的遺伝子の翻訳を阻害する働きをすることが知られている。
ここで、従来、miRNAの1種であるmiR−205が細胞増殖抑制作用を示し、がんの治療薬となりうる可能性が報告されている(例えば、非特許文献1を参照)。
Hanna JA et al., In situ measurement of miR-205 in malignant melanoma tissue supports its role as a tumor suppressor microRNA, Lab Invest., 2012 Oct;92(10):1390-7
しかしながら、本発明者らの検討によれば、従来報告されているmiR−205をin vivoで投与した場合には、その活性が十分に発揮されないことが判明した。
そこで本発明は、in vivoでも十分な細胞増殖抑制作用を示し、抗がん剤として用いられうる新規な手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った。その結果、miRNA−205のパッセンジャー鎖(センス鎖)の塩基配列を一部改変し、かつ、二本鎖の双方の3’末端に所定の修飾基を導入することで上記課題が解決されうることを見出した。具体的には、野生型miR−205には6箇所のミスマッチ部位が存在するが、これらのうちいくつかをマッチさせるようにパッセンジャー鎖(センス鎖)の塩基配列を改変し、さらに、二本鎖の双方の3’末端にベンゼンピリジン骨格を導入したものがin vivoでも優れた細胞増殖抑制作用を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、下記化学式1または化学式2で表されるmiR−205類似体が提供される。
ここで、化学式1および化学式2において、BPは、ベンゼンピリジン骨格(以下、「BP骨格」とも称する)を表す。
本発明によれば、in vivoでも十分な細胞増殖抑制作用を示し、抗がん剤として用いられうる新規なmiR−205類似体が提供される。
実施例において、miRNA類似体をトランスフェクションし、72時間培養した後に生細胞(A2058細胞)の数を計測した結果を示すグラフである。 実施例において、miRNA類似体をトランスフェクションし、72時間培養した後に生細胞(Mewo細胞)の数を計測した結果を示すグラフである。 実施例において、miRNA類似体をFBS中でインキュベートした際の残存率をリアルタイムPCRにより測定した結果を示すグラフである。 実施例において、miRNA類似体をFBS中でインキュベートした際の残存率をリアルタイムPCRにより測定した結果を示すグラフである。 実施例において、BALB/cSlc-nu/nu(ヌード)マウスにA2058細胞を皮下投与し、miR−205BP/S3、Pre−miR−205−5pまたはコントロールmiRNAを投与し、腫瘍細胞の移植後21日目にマウスを解剖して腫瘍体積を測定した結果を示すグラフである。 実施例において、BALB/cSlc-nu/nu(ヌード)マウスにA2058細胞を皮下投与し、miR−205BP/S3、Pre−miR−205−5pまたはコントロールmiRNAを投与し、腫瘍細胞の移植後21日目にマウスを解剖して腫瘍重量を測定した結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書では、miRNA、pri−miRNA、pre−miRNAにおいて、最終的に標的となる遺伝子のmRNAと対合する、当該mRNAに対するアンチセンス鎖(または当該アンチセンス鎖を含むRNA領域)を「ガイド鎖」と表現する。一方、前記アンチセンス鎖に対するセンス鎖(または当該センス鎖を含むRNA領域)を「パッセンジャー鎖」と表現する。また、化学式としての塩基配列の表現においては、上列がガイド鎖の塩基配列を示し、下列がパッセンジャー鎖の塩基配列を示す。
≪miR−205類似体≫
(化学構造)
本明細書に開示のmiR−205類似体は、下記化学式1または化学式2で表されるものである。
ここで、ヒトの野生型miR−205は、以下のような塩基配列を有している。
このように、野生型miR−205は、6箇所のミスマッチ部位を有しているが、これらのミスマッチ部位をガイド鎖の5’末端の側からミスマッチ1〜6としたときに、本発明に係るmiR−205類似体のうち、化学式1で表されるもの(以下、「類似体1」とも称する)では、ミスマッチ4〜6がマッチするようにパッセンジャー鎖の塩基配列が改変されている。また、本発明に係るmiR−205類似体のうち、化学式2で表されるもの(以下、「類似体2」とも称する)では、ミスマッチ1およびミスマッチ2がマッチするようにパッセンジャー鎖の塩基配列が改変されている。
(ベンゼンピリジン骨格(BP骨格))
化学式1および化学式2において、BPは、ベンゼンピリジン骨格(BP骨格)を表す。BP骨格はベンゼン環およびピリジン環を有する骨格であれば特に制限されないが、例えば、下記化学式3で表されるものであることが好ましい。
ただし、上記化学式3で表されるもののほかにも、例えば国際公開第2007/094135号パンフレットに開示されているようなBP骨格が同様に用いられうる。
(製造方法)
上述した本発明に係るmiRNA−205類似体は、その塩基配列に基づき、従来公知の手法を用いて、天然物から単離することにより、化学的に合成することができる。また、このようにして製造されたmiRNAのガイド鎖およびパッセンジャー鎖の双方の3’末端にBP骨格を導入する手法についても、従来公知の知見(例えば、国際公開第2007/094135号パンフレットや特開2011−251912号公報など)が適宜参照されうる。
発明の一形態によれば、上述したmiR−205類似体(すなわち、類似体1および/または類似体2)を有効成分として含有する細胞増殖抑制剤が提供される。ここで、「細胞増殖抑制剤」とは、例えばがん細胞等の細胞の増殖を抑制することによって種々の用途に用いられうる剤をいう。そして、細胞増殖抑制剤の用途としては、例えば、がんの予防および/または治療剤が挙げられる。ここで、本形態に係る細胞増殖抑制剤によって増殖が抑制されるがん細胞について特に制限はないが、例えば、大腸がん、乳がん、肺がん、前立腺がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆道がん、脾臓がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、卵巣がん、精巣がん、甲状腺がん、膵臓がん、脳腫瘍、造血器腫瘍、悪性黒色腫などが挙げられ、好ましくは悪性黒色腫が挙げられる。つまり、本形態に係る細胞増殖抑制剤は、これらのがんの予防・治療剤として用いられうる。
本発明に係る細胞増殖抑制剤による細胞増殖の抑制効果は、例えば、各種のがん細胞を、被験対象となる試料の存在下に培養し、生細胞の数の経時的な変化を観察することにより評価され、ここで、生細胞の数が経時的に減少する場合、該試料が、細胞増殖抑制効果を有することの指標となる。
本発明の一形態による細胞増殖抑制剤は、上述した類似体1または類似体2を有効成分として含む。これらの双方を有効成分として含んでももちろんよい。ただし、類似体1の方がin vivoにおいてより強い細胞増殖抑制活性を示すことから、本発明に係る細胞増殖抑制剤は、少なくとも類似体1を有効成分として含むことが好ましい。ここで、「有効成分として含む」とは、本発明に係る細胞増殖抑制剤が、所望の細胞増殖抑制活性を発揮するのに充分な量(すなわち、有効量)で、類似体1および/または類似体2を含有することを意味する。
したがって、類似体1および/または類似体2を、そのまま細胞増殖抑制剤として用いてもよいが、このような有効量で有効成分を含み、かつ細胞増殖抑制活性を損なわない限りにおいて、本発明に係る細胞増殖抑制剤は、所望の製品形態に応じた製薬上許容されうる担体や、他の添加剤などとともに組成物を構成してもよい。また、本発明に係る細胞増殖抑制剤は、賦形剤などの添加剤と混合して非経口投与、経口投与または外部投与に適した、医薬品、医薬部外品などの薬剤組成物のほか、飲食品などの形で使用することができる。
医薬品に使用する場合、治療的有効量の上記類似体が、1つまたは複数の製薬上許容されうる担体(添加剤)および/または希釈剤とともに処方される。以下で詳細に説明するように、本発明に係る薬剤組成物は固体または液体での投与のために具体的に処方することができる。経口投与として、例えば、水薬(水溶液もしくは非水溶液または懸濁液)、錠剤、巨丸剤、粉末薬、顆粒剤、舌に塗布するためのペーストが例示される。非経口投与としては、例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液として例えば皮下、筋内もしくは静脈内注射のための製剤、あるいは、局所用として、または、膣内または直腸内へ投与するための剤形へと製剤化されうる。なかでも、本発明に係る類似体は、RNA医薬である点を考慮して、好ましくは注射剤の形態として製剤化される。
「治療的有効量」とは、いずれの医療にも適用可能な妥当な便益/リスク比で、何らかの所望の治療効果を生じるために有効な作用物質または組成物の量を意味する。例えば、本発明に係る細胞増殖抑制剤の投与量は、対象疾患、投与対象、投与経路などにより差異はあるが、用量は対象となる者の体重等の条件によって容易に変動しうるため、当業者によって適宜選択されうる。
「製薬上許容されうる」とは、正しい医学的判断の範囲内で、妥当な便益/リスク比に見合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応等の問題や合併症なしに、ヒトおよび動物の組織に接触しての使用に好適な、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すために使用される。
「製薬上許容されうる担体」とは、体の一器官または一部から体の別の器官または一部へ本発明に係る細胞増殖抑制剤を運搬または輸送することに関与する液体または固体の充填剤、希釈剤、補形薬、溶剤またはカプセル化材料のような、製薬上許容されうる材料、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、剤形の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で「許容されうる」ものでなければならない。製薬上許容されうる担体として機能しうる材料のいくつかを以下に例示すると、ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンのようなデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのようなセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐薬ワックスのような補形薬;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油のような油脂;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩液;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに薬物処方で使用される他の非毒性の適合物質を含む。いくつかの実施形態では、薬物製剤は非発熱性である。すなわち、患者の体温を上昇させないものが好ましい。
その他、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、香味剤および香料、保存料および酸化防止剤もまた組成物中に存在してもよい。
製薬上許容されうる酸化防止剤の例には以下のものがある:アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等のような油溶性酸化防止剤;ならびにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤も必要に応じて含有させることができる。
非経口投与に好適な本発明に係る細胞増殖抑制剤を含有する薬剤組成物は、本発明に係る類似体とともに、1つまたは複数の製薬上許容されうる滅菌等張水溶液または非水溶液、分散剤、懸濁液もしくは乳剤、または使用直前に滅菌注射可能溶液または分散剤中で戻すことが可能な滅菌粉末を含み、これは酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、調剤を目的レシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは濃縮剤を含みうる。
本発明に係る細胞増殖抑制剤を有する薬剤組成物において使用可能な好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルがある。固有の流動性は、例えば、レシチンのような被覆材料の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
これらの組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤のような補助薬を含んでもよい。微生物の活動の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール等の種々の抗菌剤および抗真菌剤の含有によって確保し得る。糖、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含めると好ましい。さらに、注射可能薬物形態の持続性吸収が、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる作用物質の含有により引き起こされうる。
本発明に係る薬剤組成物を投与する場合、本発明に係る有効成分の投与量は、受容者、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定されうる。本発明においては、少なくとも細胞増殖抑制効果を得るために必要な1日あたりの有効成分の量を投与できるように、1日あたりの組成物の投与量を考慮し、組成物中の含有量を適宜設定することが好ましい。なお、本発明による薬剤組成物は、好ましくは、有効成分である類似体1および/または類似体2を、当該有効成分換算で成人一人に1日あたり好ましくは1ng〜100mg、より好ましくは10ng〜10mg、さらに好ましくは100ng〜100mgの範囲で提供される量含む。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
統計解析
生細胞数、mRNAの発現量およびルシフェラーゼ活性はそれぞれ3サンプル測定し、その平均値±標準偏差(Mean±SD)を求め、コントロールを100%あるいは1.0としたときの相対値を示した。実験に用いた各miRNAあるいはsiRNAをトランスフェクションした場合の結果をスチューデントのt検定(有意水準5%)にて有意差検定を行った。
細胞培養および細胞の生育性
ヒト悪性黒色腫由来細胞株A2058およびMewoをヒューマンサイエンス研究資源バンクから購入し、製造者のプロトコールに従って維持した。
miRNAまたはsiRNAによる細胞のトランスフェクション
A2058細胞またはMewo細胞を、トランスフェクションの前日に、6穴プレートに0.5×10細胞/ウェルの濃度で播種した。miR−205の代表的な模倣体としては、野生型miR−205と同一の配列を有し、一般に入手可能なPre−miR−205−5p(アプライドバイオシステムズ)を用いた。細胞のトランスフェクションには、Pre−miR−205−5pのほか、3’オーバーハング領域に上記化学式3で表される芳香族ベンゼンピリジン類似体が付加され、かつミスマッチ部位のパッセンジャー鎖の少なくとも1つをマッチさせた合成miR−205類似体(北海道システム・サイエンス株式会社)を用いた。また、トランスフェクションは、カチオン性リポソームであるリポフェクトアミンRNAiMAX(インビトロジェン)を10nMの濃度で用い、製造者のリポフェクションのプロトコールに従って行った。なお、各miRNAについては、最終濃度が20nMとなるように調整し、培地に添加した。また、コントロール(陰性対照)としては、Dharmacon社製のコントロールRNAを培地に添加した。
本実施例で用いた合成miR−205類似体の配列を、類似体1および類似体2のものも含めて下記に示す。
生細胞数の算定
上述したように各miRNA類似体をトランスフェクションし、72時間培養した後に0.5%トリプシン-EDTA(ethlenediaminetetraacetic acid、SIGMA、St. Louis、MO、USA)を用いて、細胞を回収し、トリパンブルーを用いた色素排除法にて、改良Neubauer型血球計算盤(ERMA、東京)を用いて生細胞数を計測した。結果を図1および図2に示す。これらの図に示すように、上述したS1〜S8のいくつかは、コントロール(陰性対照)に対して有意に高い細胞増殖抑制作用を示した。
miRNAのin vitroでの安定性の評価
miRNAのin vitroでの安定性を評価するために、BP修飾されていない合成miR−205類似体であるmiR−205/S1およびmiRNA−205/S3を北海道システム・サイエンス株式会社から入手した。
Pre−miR−205−5p、miR−205BP/S1、miR−205/S1、miR−205BP/S3およびmiR−205/S3のそれぞれを20 pmolの濃度で、37℃にてリポフェクトアミンRNAiMAXを用いずに、100μlのFBS(Hyclone Laboratories, Inc., Logan, UT, USA)中で0、2、10、20または30分間インキュベートした。次いでtotal RNAを抽出し、TaqMan microRNA assay(hsa-miR-205; Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いた定量RT−PCR(リアルタイムPCR)を行い、ΔΔCt法により各miR−205類似体のレベルを定量した。なお、リアルタイムPCRによるmiR−205類似体のレベルの定量は以下のようにして行った。
まず、DNase I処理を用いたフェノール/グアニジウムチオシアネート法により細胞からtotal RNAを抽出した。次いで、miRNAの定量レベルを測定するために、TaqMan microRNA assayを用いて成熟miRNAの配列を対応するcDNAへと逆転写して、リアルタイムPCRを行った。具体的には、total RNA 25ngを逆転写した後にcDNAを得た。PCR条件は、初期変性ステップ(95℃10秒間)に続いて40サイクル(95℃5秒間、60℃30秒間)であった。蛍光発光が所定の閾値に達したサイクル数としてサイクル閾値(Ct)を決定した。各サンプルにおけるmiR−205類似体の定量レベルをCt値として測定した。ΔΔCt法により各miR−205類似体の相対的な定量レベルを算出し、Pre−miR−205−5pまたはmiR−205BP/S3の標準曲線から各各miR−205類似体の定量レベルの絶対値を算出した。
結果を図3に示す。図3に示す値は、各miR−205類似体の0分における定量レベルを100%としたときの相対値である。図3に示すように、miR−205BP/S3のみが高い残存率を示した。このことから、本実験で用いたmiR−205類似体の中ではmiR−205BP/S3のみがRNaseに対して抵抗性を示すことがわかる。
また、Pre−miR−205−5p、miR−205BP/S3、miR−205BP/S4、miR−205BP/S7およびmiR−205BP/S8を用い、上記と同様の手法により各miR−205類似体の定量レベルを定量した。結果を図4に示す。図4に示す値は、各miR−205類似体の0分における定量レベルを100%としたときの相対値である。図4に示すように、miR−205BP/S3が高い残存率を示し、miR−205BP/S7も30分後で約10%の残存率を示した。このことから、本実験で用いたmiR−205類似体の中ではmiR−205BP/S3およびmiR−205BP/S7がRNaseに対して抵抗性を示し、miR−205BP/S3が特に高い抵抗性を示すことがわかる。
in vivoにおける腫瘍モデルとmiR−205/リポソーム複合体の投与
BALB/cSlc-nu/nu(ヌード)マウスを日本エスエルシー株式会社から入手した。A2058細胞を100μlあたり1×10個まで濃縮し、各マウスの背中に皮下投与した。腫瘍体積は式:0.5236L1(L2)2(ここで、L1は腫瘍の長径であり、L2は腫瘍の短径である)に従って算出した。まず、miRNA投与の頻度を決定するために、腫瘍細胞の接種7日目にPre−miR−205−5pまたはmiR−205BP/S3(0.1nmol)のOpti-MEM(Invitrogen)溶液(50μl)を2μlのカチオン性リポソーム(リポフェクトアミンRNAiMAX)と混合し、得られた混合物を腫瘍に一度に注射した。注射後0、24、48、72または96時間後にマウスを解剖し、移植した腫瘍の全組織を摘出してtotal RNAを抽出し、次いでmiR−205類似体の発現レベルを評価した。
in vivoでのmiR−205類似体の抗腫瘍効果を評価すべく、miR−205BP/S3、Pre−miR−205−5pまたはコントロールmiRNA(1投与あたり0.1 nmol)のOpti-MEM溶液(50μl)を2μlのリポフェクトアミンRNAiMAXと混合し、得られた混合物を腫瘍部位に週に2回投与した。なお、各群のマウスは5匹ずつであった。また、腫瘍の評価は腫瘍細胞の移植後21日目にマウスを解剖して行った。具体的には、腫瘍体積および腫瘍重量を測定した。結果をそれぞれ図5(腫瘍体積)および図6(腫瘍重量)に示す。これらの図に示す結果から、miR−205BP/S3は、従来公知のmiR−205類似体であるPre−miR−205−5pに比べて、きわめて優れた抗腫瘍効果を示すことがわかる。これは、上述したようにmiR−205BP/S3が高いRNase抵抗性を示すことに起因するものと推測される。
〔配列番号:1〕
miR−205BP/S3(類似体1)のガイド鎖のRNA配列である。
〔配列番号:2〕
miR−205BP/S3(類似体1)のパッセンジャー鎖のRNA配列である。
〔配列番号:3〕
miR−205BP/S7(類似体2)のガイド鎖のRNA配列である。
〔配列番号:4〕
miR−205BP/S7(類似体2)のパッセンジャー鎖のRNA配列である。
〔配列番号:5〕
Pre−miR−205−5p(ヒトの野生型miR−205)のガイド鎖のRNA配列である。
〔配列番号:6〕
Pre−miR−205−5p(ヒトの野生型miR−205)のパッセンジャー鎖のRNA配列である。
〔配列番号:7〕
miR−205BP/S1のガイド鎖のRNA配列である。
〔配列番号:8〕
miR−205BP/S1のパッセンジャー鎖のRNA配列である。
〔配列番号:9〕
miR−205BP/S2のガイド鎖のRNA配列である。
〔配列番号:10〕
miR−205BP/S2のパッセンジャー鎖のRNA配列である。
〔配列番号:11〕
miR−205BP/S4のガイド鎖のRNA配列である。
〔配列番号:12〕
miR−205BP/S4のパッセンジャー鎖のRNA配列である。
〔配列番号:13〕
miR−205BP/S5のガイド鎖のRNA配列である。
〔配列番号:14〕
miR−205BP/S5のパッセンジャー鎖のRNA配列である。
〔配列番号:15〕
miR−205BP/S6のガイド鎖のRNA配列である。
〔配列番号:16〕
miR−205BP/S6のパッセンジャー鎖のRNA配列である。
〔配列番号:17〕
miR−205BP/S8のガイド鎖のRNA配列である。
〔配列番号:18〕
miR−205BP/S8のパッセンジャー鎖のRNA配列である。

Claims (5)

  1. 下記化学式1または化学式2で表されるmiR−205類似体:
    化学式1および化学式2において、BPは、下記化学式3で表されるベンゼンピリジン骨格を表す。
  2. 請求項に記載のmiR−205類似体を有効成分として含有する、細胞増殖抑制剤。
  3. 請求項に記載のmiR−205類似体を有効成分として含有する医薬。
  4. 請求項に記載のmiR−205類似体を有効成分として含有する、がんの予防および/または治療剤。
  5. 前記がんが、悪性黒色腫である、請求項に記載の予防および/または治療剤。
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