JP6211546B2 - 金属基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属基板の製造方法に関し、更に詳しくは、原盤の凹凸パターンが転写された金属基板を製造する方法に関する。
近年、2次元的又は3次元的なパターン転写を効率的に行う磁気転写方法及びナノインプリント方法が開発されている。磁気転写は、磁気記録媒体の製造で行われる転写技術であり、微細な磁化パターンを表面に有する磁気転写用マスターディスクをスレーブ媒体(被転写媒体ともいう)に密着させた状態で、転写用磁界を印加して、磁化パターンに対応した情報(例えばサーボ信号)をスレーブ媒体に転写する技術である。一方、ナノインプリントは、例えばディスクリートトラックメディア(DTM)やビットパターンドメディア(BPM)などの製造で行われる転写技術であり、微細な凹凸パターンを表面に有するナノインプリント用マスター担体を熱可塑性樹脂又は光硬化樹脂などに押し当て、その凹凸パターンを樹脂に転写する技術である。このような技術によれば、上記のようなモールド(上記マスターディスクや上記マスター担体を含む)を被転写媒体に押し付けて、2次元的又は3次元的なパターンを一括的に転写することができ、ナノレベルの微細パターンを容易にかつ低コストに形成することが可能である。
上記のようなモールドは、例えば電鋳法により製造できる(例えば特許文献1及び特許文献2を参照)。モールドの製造には、モールドに形成する凹凸パターンと相補的な形状の凹凸パターンを表面に有する原盤が用いられる。その原盤を電鋳治具に固定し、原盤の表面に電鋳物を形成する。電鋳後、洗浄液中で電鋳物(複版)を原盤から剥離する。剥離された電鋳物は、所望の形状に切り取られる。モールドが磁気転写用のマスターディスクである場合には、その後さらに磁性層を成膜する工程などが必要に応じて追加される。
通常、電鋳を行う際には、電源と原盤とを導通させるためのリング状の導通治具(導通リング)が用いられる。原盤が導電性を有する場合、導通リングは原盤の上に載置され、原盤が導電性を有しない場合は、原盤の表面に薄い金属層を形成した後に導通リングが原盤の上に載置される。電鋳により、原盤の導通リングの開口部分から露出する部分に電鋳物が堆積する。電鋳後、導通リングは原盤から剥離される。
特開2008−226352号公報 特開2008−4201号公報
ここで、原盤の導通リングが載置される部分はその表面が導通リングで覆われるために、その部分に凹凸パターンがあったとしても、その凹凸パターンは複版には転写されない。従って、原盤は、導通リングの開口の内部にのみ凹凸パターンを有していればよい。事前に、電鋳時に使用する導通リングのサイズがわかっていれば、導通リングの開口に対応する領域に凹凸パターンを有する原盤を作成可能である。
しかしながら、電鋳時に、常に原盤の作製時に想定したサイズの導通リングが使用されるとは限らない。例えば、過去に作製した原盤を電鋳を実施する事業者に持ち込んで複版を作製する場合、その事業者が使用する導通リングは、原盤作製時に想定したものとはサイズが異なる場合がある。そのような場合、導通リングは、全周にわたって或いは部分的に原盤の凹凸パターンの上に載置されることがある。
導通リングが原盤の凹凸パターンが形成されていない部分、すなわち平坦な部分に載置されている場合、電鋳後、導通リングを原盤から支障なく剥離することができる。しかし、導通リングが原盤の凹凸パターンが形成されている部分に載置されている場合は、電鋳によって導通リングが原盤と固着し、導通リングの剥離が困難になることを本発明者は発見した。導通リングが原盤と固着すると、導通リングを原盤から剥離する際に、原盤が損傷することがある。原盤が損傷すると、新たな原盤を作製する必要が生じる。
本発明は、上記に鑑み、原盤の導通リングが重ねられる部分に凹凸パターンが存在するときでも、電鋳後に原盤から導通リングを支障なく剥離できる金属基板の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、内部に開口を有しかつ導電性を有する材料から成る導通治具を、表面に凹凸パターンを有する原盤の凹凸パターンを有する側の面の上に、原盤と導通治具との固着を防止するための固着防止層を介して重ねる工程と、導通リングが重ねられた原盤に電鋳により金属層を形成する電鋳処理工程と、電鋳処理工程により形成された金属層及び導通治具を、原盤から剥離する剥離工程とを有する金属基板の製造方法を提供する。
本発明の金属基板の製造方法において、導通治具は、原盤と対向する側の面に固着防止層を有していることが好ましい。
上記において、導通治具は、原盤と対向する側の面の、原盤に重ねられたときに原盤の凹凸パターンが存在する方向側の端部から少なくともあらかじめ定められた距離だけ離れた位置までの間に固着防止層を有していればよい。あるいは、導通治具は、原盤と対向する側の面の全面に固着防止層を有していてもよい。
本発明の金属基板の製造方法は、導電治具を重ねる工程に先行して、原盤の凹凸パターンを有する面の導通治具と対向する部分の少なくとも一部に固着防止層を形成する固着防止層形成工程を有していてもよい。
本発明の金属基板の製造方法において、原盤は円盤状に形成され、かつ導通治具は円環状に形成されていることが好ましい。この場合、導通治具は、円盤状の原盤の外周縁に重ねられることが好ましい。
本発明の金属基板の製造方法において、固着防止層には離型剤を用いることができる。離型剤はフッ素系離型剤であることが好ましい。
本発明の金属基板の製造方法において、固着防止層の表面は撥水性を有することが好ましい。
固着防止層の表面の液滴に対する接触角は90°以上であることが好ましい。
本発明の金属基板の製造方法では、原盤は、導通治具が重ねられる部分の少なくとも一部に凹凸パターンを有していてもよい。
本発明の金属基板の製造方法は、剥離工程に後続して、導通治具と金属層とを切り離す切離し工程を更に有していてもよい。
本発明の金属基板の製造方法では、原盤の上に固着防止層を介して導通治具を重ね、電鋳を実施する。特に、原盤の導通リングが重ねられる部分に凹凸パターンが存在するとき、電鋳時に原盤と導通治具とが固着しやすい。本発明では、原盤と導通治具との間に固着防止層があることで、電鋳の際に原盤と導通治具とが固着することを防止でき、原盤の導通リングが重ねられる部分に凹凸パターンが存在するときでも、電鋳後に原盤から導通リングを支障なく剥離することが可能となる。
本発明の第1実施形態に係る金属基板の製造方法の手順を示すフローチャート。 Ni電鋳を行うための電鋳装置を示す断面図。 原盤の正面図。 原盤と導通リングの断面図。 原盤上に載置された導通リング付近を拡大した断面図。 比較例における原盤上に載置された導通リング付近の断面図。 比較例における原盤を剥離した後の導通リング及び金属層の写真。 比較例における原盤の導通リングが載置される部分付近の顕微鏡写真。 本発明の第2実施形態に係る金属基板の製造方法の手順を示すフローチャート。 (a)〜(c)は、第2実施形態に係る金属基板の製造過程を示す断面図。 原盤を剥離した後の導通リング及び金属層を示す写真。 剥離・洗浄後の原盤を示す写真。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る金属基板の製造方法の手順を示す。本実施形態では、パターン転写の原盤として、例えばSiなどから成る非導電性原盤が用いられる。原盤の作製方法は特に問わない。原盤の材料には、ガラス、石英、アルミナ(Al)、炭化ケイ素(SiC)などを用いることもできる。
まず、原盤の凹凸パターンが形成された表面に、導電体膜(導電体層)を形成する(ステップA1)。導電体膜は、例えばスパッタリング法、CVD(chemical vapor deposition)法、真空蒸着法、又は無電解メッキ法などによって形成される。なお、原盤が導電性を有する材料から成る場合には、ステップA1は省略できる。
次いで、原盤の凹凸パターンが形成された側の面に導通治具(導通リング)を載置し、原盤に導通リングを重ねる(ステップA2)。導通リングは、内部に開口を有しかつ導電性を有する材料から成る。原盤は、導通治具が重ねられる部分の少なくとも一部に凹凸パターンを有する。導通リングは、原盤と対向する側の面に、原盤と導通リングとの固着を防止するための固着防止層を有している。固着防止層は、例えば離型剤から成る。導通リング(その本体)は、固着防止層を介して原盤上に重ねられる。
導電リングを重ねた後、導通リングが重ねられた原盤に、電鋳により金属層を形成する(ステップA3)。このステップでは、例えばNi電鋳を行うことで、原盤の導通リングの開口から露出する部分の凹凸パターン上に、Ni電鋳層を形成する。
図2に、Ni電鋳を行うための電鋳装置100を示す。この電鋳装置100は、メッキ液102が入っている電鋳槽104と、電鋳槽104からオーバーフローしたメッキ液102を受けるドレイン槽106と、陽極となるNiペレット108が充填されており電鋳槽104からオーバーフローしたメッキ液102を受けるアノード室110と、原盤を保持する陰極112とを備える。
電鋳槽104には、メッキ液供給配管114によりメッキ液102が供給される。電鋳槽104からドレイン槽106にオーバーフローしたメッキ液102は、ドレイン槽配管116により回収される。また、電鋳槽104からアノード室110にオーバーフローしたメッキ液102は、アノード室排水管118により回収される。
電鋳槽104とアノード室110とは、隔壁板120によって区切られている。電鋳槽104側の隔壁板120の表面には、電極遮断板122が陰極112と対向するように固定されている。この電極遮断板122は、電鋳物の膜厚が面内で均一になるように、陽極を覆うように形成されている。
以上の構成から成る電鋳装置100において、陰極112に原盤を保持させ、陰極112を負電極に接続し、アノード室110を正電極に接続して通電することにより、Ni電鋳物の電鋳が行われる。なお、電鋳の際に電流密度と時間とを制御することにより、Ni電鋳物の内部応力を低減させることができ、電鋳された後のNi電鋳物の表面の平坦度を高め、かつ、表面粗さを小さくすることが可能である。
図3は、原盤11の正面図である。原盤11は、円盤状に形成されており、凹凸パターンが形成されたパターン部12をその表面に有する。導通リングは円環状に形成されており、円盤状の原盤の外周縁に重ねられる。原盤11に重ねられた導電通リングは、押さえ治具によって原盤11に押し付けられて固定される。図3には、導通リングの開口の外縁13を投影した位置が破線で示されている。導通リングの載置後、原盤11の、導通リングの開口の外縁13よりも外周側は導通リングで覆われる。パターン部12は、導通リングの開口の外縁13より外側にも存在している。
図4は、原盤11と導通リング21の断面図である。原盤11の厚みは例えば0.6mm程度であり、導通リング21の厚みは例えば0.9mm程度である。導通リング21の材料には、電鋳装置での使用により錆などの変質を生じない各種金属材料、具体的にはステンレス鋼などが用いられる。図4では図示を省略しているが、原盤11のパターン部12の上には、例えば50nm程度の厚みで導電体膜が形成されている。電鋳を行うことにより、導通リング21の開口部分に金属層(電鋳物)23が形成される。金属層23の厚みは例えば0.3mm程度である。なお、本実施形態では、導通治具として内部に開口を有する導通リング21を用いるが、導通治具は、導電性を有していればよく、必ずしも内部に開口を有するものである必要はない。
図5は、原盤11上に載置された導通リング21付近を拡大した断面図である。原盤11と導通リング21とは、導通リング21に形成された固着防止層22を介して接触する。固着防止層22の厚みは、導通リング21と原盤11との導通をとる観点から、10nm以下、より好ましくは2nm以下であることが好ましい。図5では、導通リング21は、原盤11と対向する側の面の全面に固着防止層22を有する。固着防止層22は、原盤11と対向する側の面の全面に形成されている必要はなく、開口、すなわち原盤11に重ねられたときに凹凸パターンが存在する方向側の端部から径方向に少なくともあらかじめ定められた距離だけ離れた位置までの間に形成されていればよい。
固着防止層22は、例えば離型剤から成る。離型剤の例としては、PDMS(ポリジメチルシロキサン)やフッ素系離型剤が挙げられる。固着防止層22に用いられる離型剤は、フッ素系離型剤であることが好ましい。フッ素系離型剤の例としては、下記化学式1で表されるFAS3、下記化学式2で表されるFAS13、下記化学式3で表されるFAS17、及びダイキン工業製のオプツールHDなどが挙げられる。固着防止層22の表面は撥水性を有する。撥水性を有するとは、例えば表面の液滴に対する接触角が90°以上であることを意味する。固着防止層22の液滴に対する接触角は120°以上であることが更に好ましい。
図1に戻り、電鋳後、電鋳処理工程により形成された金属層23(図4を参照)及び導通リング21を、原盤11から分離(剥離)する(ステップA4)。その後、導通リング21から金属層23を分離する(ステップA5)。この金属層23が、原盤11のパターンが転写された金属基板(複版)となる。
ここで、比較例として、導通リング21が固着防止層を有しない場合を考える。図6は、比較例における原盤11上に載置された導通リング付近の断面図である。比較例では、原盤11と導通リング21との間に固着防止層22(図4及び図5を参照)が存在しない。原盤11のパターン部12は、導通リング21の開口よりも広いため、導通リング21の内側の一部はパターン部12の上に載置される。例えば原盤11と導通リング21との接触面の長さが7mmのとき、導通リング21は、その開口から外縁側に3mmまでの位置範囲において、パターン部12の上に載置される。
本発明者は、上記比較例のように導通リング21がパターン部12の上に載置された状態で電鋳を行うと、原盤11と導通リング21とが固着することを発見した。この固着の問題は、パターン部12が導通リング21の開口よりも狭く、従って導通リング21が原盤11の平坦な面の上に載置された場合には生じない。原盤11と導通リング21とが固着する理由は、パターン部12の表面のわずかな凹凸を通じて電鋳液が原盤11と導通リング21との間に入り込むためであると考えられる。
図7は、比較例における原盤11を剥離した後の導通リング21及び金属層23の写真である。比較例では、原盤11と導通リング21とが固着し、原盤11を剥離することが困難であった。無理に原盤11を剥がすと、原盤11に割れが生じた。原盤11と導通リング21との固着力が強い箇所では、図7に示すように、原盤の一部14が、導通リング21及び金属層23から分離できずに、導通リング21及び金属層23に残存した。剥離後の原盤11を観察すると、導通リング21と接触していたパターン部12(図3を参照)に変色が見られた。
図8は、比較例における原盤11の導通リング21が載置される部分付近の顕微鏡写真である。本発明者は、原盤11にSi原盤を用い、Si原盤への電鋳後、原盤11の導通リング21が載置されていた部分付近を、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により観察した。観察の結果、導通リングの開口の外縁13(図3も参照)よりも導通リング21の内部側に電鋳液がしみ出した痕跡が観察された。
また、本発明者は、図8に示す領域A〜領域Cについて、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光法)により、原盤11表面の組成分析を行った。領域Aは、導通リングの開口の外縁13(導通リング21が載置される部分と導通リング21がない部分との境界)付近の領域である。領域Bは、原盤11における凹凸パターンがある部分とない部分との境界16よりも少し内側の領域である。領域Cは、凹凸パターンがない平坦部の領域である。
領域Aからは、OとSiとNiとが検出された。領域Aにおける各物質の質量濃度は、Oが0.27%、Siが0.72%、Niが99.01%であった。これを分子濃度で表すと、Oは0.97%、Siは1.49%、Niは97.54%となる。領域Bからは、OとSiとNiとが検出された。領域Bにおける各物質の質量濃度は、Oが3.87%、Siが87.51%、Niが8.61%であった。これを分子濃度で表すと、Oは6.91%、Siは88.91%、Niは4.19%となる。領域Cからは、SiとNiとが検出された。領域Cにおける各物質の質量濃度は、Siが85.58%、Niが14.42%であった。これを分子濃度で表すと、Siは92.54%、Niは7.46%となる。
通常であれば、原盤11と導通リング21との間に隙間はなく、電鋳時に、導通リング21が載置されていた箇所に電鋳液が侵入することはないため、導通リング21が載置されていた箇所においてNiは検出されない。しかしながら、組成分析の結果、特に導通リングの開口の外縁13に近い領域Aにおいて、Niが高濃度で検出された。Niが高濃度で検出される理由は、原盤11の表面に凹凸パターンが存在することによって原盤11の表面が親水性となり、導通リング21と接触する凹凸パターンの部分から、原盤11と導通リング21との間に電鋳液が入り込むためと推察される。
本実施形態では、導通リング21の原盤11と対向する面に固着防止層を形成し、原盤11と導通リング21の本体とを固着防止層を介して接触させる。固着防止層が存在することで、原盤11のパターン部12の一部に導通リング21が重なる場合でも、原盤11と導通リング21との固着を防ぐことができ、原盤11を支障なく剥離することができる。特に、固着防止層22にその表面に撥水性を与える材料を用いることで、原盤11のパターン部12と導通リング21との間に電鋳液がしみ出すことを抑制することができ、原盤11と導通リング21との固着を防止できる。
次いで、本発明の第2実施形態を説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る金属基板の製造方法の手順を示す。図10(a)〜(c)は、本実施形態に係る金属基板の製造過程を示す。第1実施形態では、固着防止層を有する導通リング21が用いられた。本実施形態では、導通リング21を載置する工程に先行して、原盤11の凹凸パターンを有する面の導通リング21と対向する部分の少なくとも一部に固着防止層を形成する。
本実施形態においても、まず、原盤の凹凸パターンが形成された表面に、導電体膜(導電体層)を形成する(ステップB1)。このステップは、図1のステップA1と同様である。次いで、図10(a)に示すように、原盤11の導通リング21が載置される部分に固着防止層15を形成する(ステップB2)。図10(a)では、導通リングの開口の外縁13(図2を参照)よりも外側に固着防止層15を形成しているが、固着防止層15は、導通リングの開口の外縁13から径方向にあらかじめ定められた距離だけ離れた位置までの間に形成されていればよい。
固着防止層15の形成後、図10(b)に示すように、原盤の凹凸パターンが形成された側の面の上に導通リング21を載置する(ステップB3)。導通リング21は、原盤11上の固着防止層15を介して原盤11上に載置される。導電リングの載置後、原盤の導通リングの開口から露出する部分に金属層を電鋳により形成する(ステップB4)。電鋳により、図10(c)に示すように、原盤の凹凸パターン上に金属層23が形成される。
電鋳後、電鋳処理工程により形成された金属層23及び導通リング21を、原盤11から分離(剥離)する(ステップB5)。その後、導通リング21から金属層23を分離する(ステップB6)。この金属層23が、原盤11のパターンが転写された金属基板(複版)となる。なお、本実施形態と第1実施形態とを組み合わせることも可能である。すなわち、固着防止層15を原盤11の導通リング21が載置される部分に形成したうえで、固着防止層22(図4及び図5を参照)を有する導通リング21を原盤11上に載置してもよい。
本実施形態では、原盤11側に固着防止層15を形成する。この場合も、第1実施形態と同様に、原盤11のパターン部12と導通リング21との間に電鋳液がしみ出すことを防止でき、原盤11と導通リング21との固着を防止することができる。
ここで、特許文献2には、非導電性原盤の凹凸パターンの形成された面に導電体層を形成し、その導電体層の上に単分子層を形成し、単分子層が形成された非導電性原盤をメッキ液に浸漬させて、単分子層の形成されている面にメッキによりスタンパーを形成することが記載されている(例えば請求項4を参照)。しかしながら、特許文献2には導通リングの記載はない。特許文献2では、凹凸パターンを単分子層で覆うのに対し、本実施形態では、原盤11の導通リング21が載置される部分の少なくとも一部に固着防止層を形成する。特許文献2には、導通リング21が載置される部分に凹凸パターンが形成されることは記載されておらず、従って、導通リングと原盤との固着の問題は生じない。
本発明者は、固着防止層22(図4及び図5を参照)として、PDMS(dimethylpolysiloxane:ジメチルポリシロキサン)を付与した導通リング21を用いた実験を行った。この実験では、固着防止層15(図10(b)及び図10(c)を参照)として、FAS(フッ化アルキルシラン)13を形成した原盤11を用いた。
図11は、原盤を剥離した後の導通リング21及び金属層23を示す。同図に示すように、導通リング21及び複版である金属層23と、原盤11との固着は見られなかった。図12は、剥離・洗浄後の原盤を示す。同図に示すように、剥離後の原盤11に損傷は見られなかった。従って、この原盤11は次の使用が可能である。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の金属基板の製造方法は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
11:原盤
12:パターン部
13:導通リングの開口の外縁
14:原盤の一部
15:固着防止層
16:境界
21:導通リング
22:固着防止層
23:金属層(電鋳物)
100:電鋳装置
102:メッキ液
104:電鋳槽
106:ドレイン槽
108:Niペレット
110:アノード室
112:陰極
114:メッキ液供給配管
116:ドレイン槽配管
118:アノード室排水管
120:隔壁板
122:電極遮断板

Claims (13)

  1. 導電性を有する材料から成る導通治具を、表面に凹凸パターンを有する原盤の前記凹凸パターンを有する側の面に、前記原盤と前記導通治具との固着を防止するための固着防止層を介して重ねる工程と、
    前記導通治具が重ねられた前記原盤に電鋳により金属層を形成する電鋳処理工程と、
    前記電鋳処理工程により形成された金属層及び前記導通治具を、前記原盤から剥離する剥離工程とを有する金属基板の製造方法。
  2. 前記導通治具は、前記原盤と対向する側の面に前記固着防止層を有している請求項1に記載の金属基板の製造方法。
  3. 前記導通治具は、前記原盤と対向する側の面の、前記原盤に重ねられたときに前記凹凸パターンが存在する方向側の端部から少なくともあらかじめ定められた距離だけ離れた位置までの間に前記固着防止層を有する請求項2に記載の金属基板の製造方法。
  4. 前記導通治具は、前記原盤と対向する側の面の全面に前記固着防止層を有する請求項2又は3に記載の金属基板の製造方法。
  5. 前記導通治具を重ねる工程に先行して、前記原盤の前記凹凸パターンを有する面の前記導通治具と対向する部分の少なくとも一部に前記固着防止層を形成する固着防止層形成工程を有する請求項1から4何れか1項に記載の金属基板の製造方法。
  6. 前記原盤は円盤状に形成され、かつ前記導通治具は円環状に形成されている請求項1から5何れか1項に記載の金属基板の製造方法。
  7. 前記導通治具は、円盤状の前記原盤の外周縁に重ねられる請求項6に記載の金属基板の製造方法。
  8. 前記固着防止層は離型剤から成る請求項1から7何れか1項に記載の金属基板の製造方法。
  9. 前記離型剤はフッ素系離型剤である請求項8に記載の金属基板の製造方法。
  10. 前記固着防止層の表面は撥水性を有する請求項1から9何れか1項に記載の金属基板の製造方法。
  11. 前記固着防止層の表面の液滴に対する接触角は90°以上である請求項10に記載の金属基板の製造方法。
  12. 前記原盤は、前記導通治具が重ねられる部分の少なくとも一部に前記凹凸パターンを有する請求項1から11の何れか1項に記載の金属基板の製造方法。
  13. 前記剥離工程に後続して、前記導通治具と前記金属層とを切り離す切離し工程を更に有する請求項1から12何れか1項に記載の金属基板の製造方法。
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