以下、本発明を具体化した実施形態による位置センサについて図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態による位置センサの構成を示す。位置センサ1は、検知対象である金属性(導体)のターゲット2と、ターゲット2の位置を検知するための正弦コイル(第1の送波コイル)3、余弦コイル(第2の送波コイル)4、受波コイル5、及び処理回路部6とを備える。位置センサ1は、ターゲット2の位置によって正弦コイル3及び余弦コイル4と受波コイル5との電磁結合が異なることを利用して、ターゲット2の位置を検知するものである。
正弦コイル3、余弦コイル4、受波コイル5、及び処理回路部6は、回路基板7に設けられている。回路基板7は、多層基板であり、回路基板7の表層に正弦コイル3及び受波コイル5が形成され、回路基板7の内層に余弦コイル4が形成されている。正弦コイル3と余弦コイル4は、回路基板7の表面に垂直な方向に互いに重なるように形成されており、受波コイル5は、正弦コイル3及び余弦コイル4を囲うように形成されている。正弦コイル3、余弦コイル4、及び受波コイル5は、処理回路部6に接続されている。
ターゲット2は、金属性(導体)であり、可動体8の先端に設けられている。可動体8は、非金属性(絶縁体)である。可動体8は、不図示の支持体によって、回路基板7に対して、直線状に往復移動可能に支持されている。つまり、ターゲット2は、正弦コイル3、余弦コイル4、及び受波コイル5に対して、直線状に往復移動可能に設けられている。また、ターゲット2は、回路基板7の表面に隣接した場所を、回路基板7の表面と平行に移動可能に設けられている。
正弦コイル3及び余弦コイル4は、電磁波を送波(電磁場を励起)するためのコイルであり、受波コイル5は、正弦コイル3及び余弦コイル4から送波される電磁波を受波する(励起される電磁場を受ける)ためのコイルである。処理回路部6は、正弦コイル3及び余弦コイル4を駆動し、受波コイル5の出力に基いてターゲット2の位置を検知するための回路である。
正弦コイル3にある周波数で変化する電圧を入力すると、電磁誘導によって、その周波数と同じ周波数で変化する電圧が受波コイル5から出力される。このときの受波コイル5から出力される電圧の振幅は、正弦コイル3の形状によって、また、ターゲット2の位置によって、異なる。これは、正弦コイル3の形状によって、また、ターゲット2の位置によって、正弦コイル3と受波コイル5との電磁結合が異なるためである。
正弦コイル3は、第1の所定の形状をしている。正弦コイル3にある周波数で変化する電圧を入力したときの受波コイル5の出力信号の振幅をA1とする。第1の所定の形状は、振幅A1をターゲット2の位置Xによって正弦関数(検知領域の所定の位置を原点0とし、検知領域の長さLを周期とする正弦関数)に従って異らせる形状である。すなわち、第1の所定の形状は、振幅A1をsin((2π/L)X)にする形状である。本実施形態では、検知領域の中央の位置をターゲット2の位置Xの原点0としている。
具体的には、第1の所定の形状は、ターゲット2の移動経路に平行な線分に対して線対称な形状であって、長さが検知領域の長さLと同じで、長さの1/2の位置で180度捻られ、両端が検知領域の両端に(中央が検知領域の原点0に)合わせられた形状である。180度捻られた部分は、繋がっておらず、絶縁体又は空間を介して立体的に交差している。このような形状の正弦コイル3にある周波数で変化する電圧を入力すると、そのときの受波コイル5の出力信号の振幅A1は、sin((2π/L)X)となる。つまり、正弦コイル3は、振幅A1がsin((2π/L)X)となるように構成されたコイルである。
また、余弦コイル4にある周波数で変化する電圧を入力すると、電磁誘導によって、その周波数と同じ周波数で変化する電圧が受波コイル5から出力される。このときの受波コイル5から出力される電圧の振幅は、余弦コイル4の形状によって、また、ターゲット2の位置によって、異なる。これは、余弦コイル4の形状によって、また、ターゲット2の位置によって、余弦コイル4と受波コイル5との電磁結合が異なるためである。
余弦コイル4は、第2の所定の形状をしている。余弦コイル4にある周波数で変化する電圧を入力したときの受波コイル5の出力信号の振幅をA2とする。第2の所定の形状は、振幅A2をターゲット2の位置Xによって余弦関数(検知領域の所定の位置を原点0とし、検知領域の長さLを周期とする余弦関数)に従って異らせる形状である。すなわち、第2の所定の形状は、振幅A2をcos(2πX/L)にする形状である。
具体的には、第2の所定の形状は、ターゲット2の移動経路に平行な線分に対して線対称な形状であって、長さが検知領域の長さLと同じで、長さの1/4の位置と3/4の位置の各々で180度捻られ、両端が検知領域の両端に合わせられた形状である。180度捻られた部分は、繋がっておらず、絶縁体又は空間を介して立体的に交差している。このような形状の余弦コイル4にある周波数で変化する電圧を入力すると、そのときの受波コイル5の出力信号の振幅A2は、cos((2π/L)X)となる。つまり、余弦コイル4は、振幅A2がcos((2π/L)X)となるように構成されたコイルである。
図2は、位置センサ1の電気的ブロック構成を示す。処理回路部6は、受波コイル5と共振回路を構成するコンデンサ21を備えている。また、処理回路部6は、正弦コイル3及び余弦コイル4に矩形波を入力する送波波形生成部22と、受波コイル5から得られる出力に基いてターゲット2の位置を検知する位置検知部23とを備える。
位置検知部23は、ターゲット2の位置Xの検知において必要な各種タイミングを示す信号を生成する基準タイミング生成部31と、モードを選択するモード選択部32と、受波コイル5から得られる出力信号を増幅する増幅部33と、を有する。また、位置検知部23は、受波コイル5の出力信号に含まれる、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを計測する位相計測部34と、各種の計測値を一時的に記憶する計測値記憶部35と、位相成分θXを位置Xに変換する出力変換部36と、を有する。
受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路は、その共振周波数が送波波形生成部22から正弦コイル3及び余弦コイル4に入力する矩形波の基本周波数fと同じになるように構成されている。すなわち、共振回路の共振周波数が矩形波の基本周波数fと同じになるように、コンデンサ21の静電容量が調整されている。受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路は、並列共振回路である。
基準タイミング生成部31は、モード選択部32にモード切替信号を送信する。モード切替信号は、モードの切替えタイミングであることを示す(モードの切替えを指示する)信号である。また、基準タイミング生成部31は、モード切替信号を送信した後、送波波形生成部22に送波開始信号を送信する。送波開始信号は、矩形波の入力の開始タイミングであることを示す(矩形波の入力の開始を指示する)信号である。また、基準タイミング生成部31は、送波開始信号を送信した後、位相計測部34に基準時刻信号を送信する。基準時刻信号は、位相の計測の基準となるタイミングであることを示す(位相を計測するための動作の開始を指示する)信号である。
基準タイミング生成部31は、これらモード切替信号の送信、送波開始信号の送信、及び基準時刻信号の送信を所定の動作周期で繰返す。基準タイミング生成部31は、これらの信号の送信において、送波開始信号を送信したときから遅延時間ta経過した時点で、基準時刻信号を送信し、基準時刻信号を送信したときから計測動作時間tb経過後に、モード切替信号を送信する。遅延時間taは、位相計測部34の動作における後述する待機時間twよりも短い一定の時間である。計測動作時間tbは、位相計測部34の後述する計測モードの動作時間である。
モード選択部32は、モード切替信号が入力されると、モードを切替えて、送波波形生成部22と位相計測部34にモード信号を送信する。すなわち、モード選択部32は、第1のモードであるときにモード切替信号が入力されると、第1のモードから第2のモードへ切替えて、送波波形生成部22と位相計測部34に第2のモードであることを示すモード信号を送信する。また、モード選択部32は、第2のモードであるときにモード切替信号が入力されると、第2のモードから第1のモードへ切替えて、送波波形生成部22と位相計測部34に第1のモードであることを示すモード信号を送信する。
増幅部33は、受波コイル5から得られる出力電圧(受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路で増幅された電圧)を増幅する。
図3(a)(b)は、送波波形生成部22が正弦コイル3及び余弦コイル4に入力する矩形波と、そのときに受波コイル5から得られる出力信号を示す。
送波波形生成部22は、正弦コイル3及び余弦コイル4に、互いに同じ基本周波数fで互いに異なる位相の矩形波を入力する。上述のように、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路は、その共振周波数が矩形波の基本周波数fと同じになるように構成されている。すなわち、送波波形生成部22は、正弦コイル3及び余弦コイル4に、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路の共振周波数と同じ基本周波数fで互いに異なる位相の矩形波を入力する。本実施形態では、矩形波の基本周波数f(共振回路の共振周波数でもある)は、4[kHz]である。
送波波形生成部22は、正弦コイル3及び余弦コイル4に矩形波を入力する入力モードとして、第1の入力モードと、第2の入力モードとを有している。第1の入力モードは、互いの位相関係が第1の所定の位相関係にある矩形波を正弦コイル3及び余弦コイル4に入力するモードである。第1の所定の位相関係は、正弦コイル3に入力する矩形波の位相に対して、余弦コイル4に入力する矩形波の位相が3π/2遅れた位相関係である。第2の入力モードは、互いの位相関係が第1の所定の位相関係とは異なる第2の所定の位相関係にある矩形波を正弦コイル3及び余弦コイル4に入力するモードである。第2の所定の位相関係は、正弦コイル3に入力する矩形波の位相に対して、余弦コイル4に入力する矩形波の位相がπ/2遅れた位相関係である。
送波波形生成部22は、モード選択部32からモード信号が入力されることにより、入力モードをセットする。すなわち、第1のモードであることを示すモード信号が入力されると、第1の入力モードにセットし、第2のモードであることを示すモード信号が入力されると、第2の入力モードにセットする。
また、送波波形生成部22は、基準タイミング生成部31から送波開始信号が入力されることにより、正弦コイル3及び余弦コイル4への矩形波の入力を開始する。すなわち、第1の入力モードにセットした状態のときに送波開始信号が入力されると、第1の入力モードでの矩形波の入力を開始し、第2の入力モードにセットした状態のときに送波開始信号が入力されると、第2の入力モードでの矩形波の入力を開始する。
第1の入力モードでの矩形波の入力は、以下のようにして行われる。すなわち、図3(a)に示すように、送波開始信号の入力時点Tiでハイになる、基本周波数fの矩形波1−1、及び、送波開始信号の入力時点Tiから(1/f)×(3/4)遅れた時点でハイになる、基本周波数fの矩形波1−2を生成する。矩形波1−1の基本周波数fと矩形波1−2の基本周波数は、互いに同じ周波数であり、また、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路の共振周波数と同じ周波数である。そして、矩形波1−1を正弦コイル3に入力し、矩形波1−2を余弦コイル4に入力する。
正弦コイル3に入力する矩形波1−1は、ある基準時点Tc1を基準にした位相遅れ量がγ1(γ1>0)の矩形波であり、余弦コイル4に入力する矩形波1−2は、ある基準時点Tc1を基準にした位相遅れ量がγ1+3π/2の矩形波である。基準時点Tc1は、任意に定めることが可能であり、γ1は、基準時点Tc1の選び方によって生じる位相オフセット成分である。矩形波1−1がハイになる時点(例えば、送波開始信号の入力時点Ti)を基準時点Tc1に定めれば、γ1=0となり、矩形波1−1の位相は0となり、矩形波1−2の位相は3π/2となる。矩形波1−1と矩形波1−2の位相関係は、矩形波1−1の位相に対して、矩形波1−2の位相が3π/2遅れた位相関係になっている。
このように矩形波1−1、1−2を入力すると、受波コイル5から信号(第1の出力信号)が出力される。この出力信号は、矩形波1−1、1−2の基本周波数fと同じ基本周波数fで変化し、矩形波1−1に対してS1の位相差を有する。
第2の入力モードでの矩形波の入力は、以下のようにして行われる。すなわち、図3(b)に示すように、送波開始信号の入力時点Tiでハイになる、基本周波数fの矩形波2−1、及び、送波開始信号の入力時点Tiから(1/f)×(1/4)遅れた時点でハイになる、基本周波数fの矩形波2−2を生成する。矩形波2−1の基本周波数fと矩形波2−2の基本周波数は、互いに同じ周波数であり、また、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路の共振周波数と同じ周波数である。そして、矩形波2−1を正弦コイル3に入力し、矩形波2−2を余弦コイル4に入力する。
正弦コイル3に入力する矩形波2−1は、ある基準時点Tc2を基準にした位相遅れ量がγ2(γ2>0)の矩形波であり、余弦コイル4に入力する矩形波2−2は、ある基準時点Tc2を基準にした位相遅れ量がγ2+π/2の矩形波である。γ2は、基準時点Tc2の選び方によって生じる位相オフセット成分である。矩形波2−1がハイになる時点(例えば、送波開始信号の入力時点Ti)を基準時点Tc2に定めれば、γ2=0となり、矩形波2−1の位相は0となり、矩形波2−2の位相はπ/2となる。矩形波2−1と矩形波2−2の位相関係は、矩形波2−1の位相に対して、矩形波2−2の位相がπ/2遅れた位相関係になっている。
このように矩形波2−1、2−2を入力すると、受波コイル5から信号(第2の出力信号)が出力される。この出力信号は、矩形波2−1、2−2の基本周波数fと同じ基本周波数fで変化し、矩形波2−1に対してS2の位相差を有する。
上記のように正弦コイル3及び余弦コイル4に矩形波を入力すると、入力する矩形波の基本周波数と同じ周波数で変化する信号が受波コイル5から出力される。このときの受波コイル5の出力信号の基本周波数は、入力する矩形波の基本周波数と同じであるので、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路の共振周波数と同じである。従って、受波コイル5の出力信号は、共振回路で共振し、受波コイル5から得られる出力信号は、共振によって振幅が増幅される。また、共振によって増幅された受波コイル5の出力信号は、増幅部33によってさらに増幅される。
図4(a)は、コンデンサ21を備えず共振回路を構成していない場合において受波コイル5から得られる出力を示し、図4(b)は、本発明の場合(コンデンサ21を備えて共振回路を構成している場合)において受波コイル5から得られる出力を示す。コンデンサ21を備えず共振回路を構成していない場合と、本発明の場合の両方で、受波コイル5から得られる出力の振幅電圧値Vpp(増幅部33による増幅後の値)を測定した。測定の結果、コンデンサ21を備えず共振回路を構成していない場合に比較して、本発明の場合の方が、振幅電圧値Vppが数倍程度高かった。このように、本発明では、コンデンサ21を備えて共振回路を構成していることにより、受波コイル5から得られる出力は、共振によって振幅が増幅される。
また、コンデンサ21を備えて共振回路を構成していることにより、受波コイル5から得られる出力は、S/N比が大きくなる。これは、以下の理由による。つまり、受波コイル5から出力される基本周波数で変化する電圧は、基本周波数の奇数倍の周波数で変化する電圧の重ね合わせである(一般に、矩形波は、基本周波数の奇数倍の周波数の波の重ね合わせである)。従って、受波コイル5の出力のうち、基本周波数と同じ周波数成分のみが共振して増幅される(基本周波数の3倍以上の奇数倍の周波数成分は共振せず増幅されない)。これにより、高周波成分(基本周波数の奇数倍の周波数成分)は除去され、受波コイル5から得られる出力は、S/N比が大きくなる。このように、本発明では、コンデンサ21を備えて共振回路を構成していることにより、受波コイル5から得られる出力は、共振によってS/N比が大きくなる。
なお、受波コイル5の出力信号の基本周波数と、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路の共振周波数(共振点)とは、完全に一致することが好ましい。しかし、受波コイル5の出力信号の基本周波数と共振回路の共振周波数とが僅かにずれていても、受波コイル5の出力は、共振回路で共振する。すなわち、受波コイル5の出力信号の基本周波数と共振回路の共振周波数とが僅かにずれていても、受波コイル5の出力は、共振によって振幅が増幅され、また、共振によってS/N比が大きくなる。つまり、矩形波の基本周波数fと共振回路の共振周波数とは、僅かにずれていてもよい。本発明において、矩形波の基本周波数fと共振回路の共振周波数とが同じであるとは、矩形波の基本周波数fと共振回路の共振周波数とが完全に一致している場合だけでなく、矩形波の基本周波数fと共振回路の共振周波数とが僅かにずれている場合も含んでいる。
また、受波コイル5から得られる出力は、共振によって位相がβずれることになる。この位相ずれβの値は、受波コイル5の繋ぎ方によって正の値又は負の値になる。つまり、受波コイル5から得られる出力は、受波コイル5の繋ぎ方によって、位相が|β|(βの絶対値)だけ遅れる又は進むことになる。|β|の値は、矩形波の基本周波数fと共振回路の共振周波数とが完全に一致している場合には、π/2となり、矩形波の基本周波数fと共振回路の共振周波数とが僅かにずれている場合には、そのずれに応じて、π/2からずれた値となる。なお、上記の本発明の場合における振幅電圧値Vppの測定結果は、共振による位相ずれβの値がπ/2からずれていた(すなわち、受波コイル5の出力信号の基本周波数が共振回路の共振周波数から僅かにずれていた)場合の測定結果である。
送波波形生成部22が第1の入力モードで正弦コイル3及び余弦コイル4に矩形波を入力しているとき(矩形波1−1、1−2を入力しているとき)に受波コイル5から得られる出力信号(電圧)を第1の出力信号V1とする。第1の出力信号V1は、以下の式(1)で表される。
ここで、α1=β+γ1+δ−π/2であり、位相オフセットである。βは、共振によって生じる位相オフセット成分(位相ずれ)である。γ1は、基準時点Tc1の選び方によって生じる位相オフセット成分であり、基準時点Tc1を基準にした矩形波1−1の位相(位相遅れ量)に対応する成分である。δは、温度などの要因によって生じる位相オフセット成分(位相遅れ)である。tは、時間である。
また、送波波形生成部22が第2の入力モードで正弦コイル3及び余弦コイル4に矩形波を入力しているとき(矩形波2−1、2−2を入力しているとき)に受波コイル5から得られる出力信号(電圧)を第2の出力信号V2とする。第2の出力信号V2は、以下の式(2)で表される。
ここで、α2=β+γ2+δ−π/2であり、位相オフセットである。γ2は、基準時点Tc2の選び方によって生じる位相オフセット成分であり、基準時点Tc2を基準にした矩形波2−1の位相(位相遅れ量)に対応する成分である。
第1の出力信号V1、及び第2の出力信号V2がこのようになるのは、以下の理由による。すなわち、第1の出力信号V1は、正弦コイル3に矩形波1−1が入力されることにより受波コイル5から出力される信号と、余弦コイル4に入力波1−2が入力されることにより受波コイル5から出力される信号との重ね合わせにより得られる信号である。
正弦コイル3に矩形波1−1が入力されることにより受波コイル5から出力される信号は、共振により生じるβの位相ずれ、及び温度などの要因によって生じるδの位相遅れが加わり、以下の式(3)で表される信号となる。
余弦コイル4に矩形波1−2が入力されることにより受波コイル5から出力される信号は、共振により生じるβの位相ずれ、及び温度などの要因によって生じるδの位相遅れが加わり、以下の式(4)で表される信号となる。
式(3)で表される信号と式(4)で表される信号の重ね合わせ(足し合わせ)により得られる信号が第1の出力信号V1であり、式(3)と式(4)を足し合わせると、式(1)となる。従って、第1の出力信号V1は、式(1)で表される信号となる。
また、第2の出力信号V2は、正弦コイル3に矩形波2−1が入力されることにより受波コイル5から出力される信号と、余弦コイル4に入力波2−2が入力されることにより受波コイル5から出力される信号との重ね合わせにより得られる信号である。
正弦コイル3に矩形波2−1が入力されることにより受波コイル5から出力される信号は、共振により生じるβの位相ずれ、及び温度などの要因によって生じるδの位相遅れが加わり、以下の式(5)で表される信号となる。
余弦コイル4に矩形波2−2が入力されることにより受波コイル5から出力される信号は、共振により生じるβの位相ずれ、及び温度などの要因によって生じるδの位相遅れが加わり、以下の式(6)で表される信号となる。
式(5)で表される信号と式(6)で表される信号の重ね合わせ(足し合わせ)により得られる信号が第2の出力信号V2であり、式(5)と式(6)を足し合わせると、式(2)となる。従って、第2の出力信号V2は、式(2)で表される信号となる。
式(1)から明らかなように、第1の出力信号V1は、矩形波1−1、1−2の基本周波数fと同じ基本周波数fで変化する信号である。また、第1の出力信号V1の位相をθ1とすると、θ1=(2π/L)X+β+δ−π/2+γ1である。θ1は、基準時点Tc1を基準にした位相であり、θ1>0のとき、基準時点Tc1を基準にした位相遅れ量である。すなわち、第1の出力信号V1は、矩形波1−1に対して、位相差S1=(2π/L)X+β+δ−π/2を有している。
また、式(2)から明らかなように、第2の出力信号V2は、矩形波2−1、2−2の基本周波数fと同じ基本周波数fで変化する信号である。また、第2の出力信号V2の位相をθ2とすると、θ2=−(2π/L)X+β+δ−π/2+γ2である。θ2は、基準時点Tc2を基準にした位相であり、θ2>0のとき、基準時点Tc2を基準にした位相遅れ量である。すなわち、第2の出力信号V2は、矩形波2−1に対して、位相差S2=−(2π/L)X+β+δ−π/2の位相差を有している。
位相θ1、θ2は、各々、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θX=(2π/L)Xと、位相オフセット成分α1=β+δ+γ1−π/2、α2=β+δ+γ2−π/2とを含んでいる。位相θ1、θ2をθX、α1、α2を用いて表すと、θ1=θX+α1、θ2=−θX+α2となる。位相θ1、θ2は、各々、ターゲット2の位置Xによって異なる値となる。
矩形波1−1と矩形波2−1は、いずれも、送波開始信号の入力時点Tiでハイになる信号である。すなわち、矩形波1−1と矩形波2−1は、送波開始信号の入力時点Tiを基準にして同じタイミングでハイになる信号である。従って、送波開始信号の入力時点Tiと矩形波1−1の位相の基準時点Tc1との時間差と、送波開始信号の入力時点Tiと矩形波2−1の位相の基準時点Tc2との時間差が等しければ、γ1=γ2である。
つまり、基準時点Tc1と基準時点Tc2を、いずれも、送波開始信号の入力時点Tiから同じ時間だけ経過した時点(例えば基準時刻信号の入力時点To)に選べば、γ1=γ2となる。γ1=γ2であれば、α1=α2であり、位相θ1の位相オフセット成分α1と位相θ2の位相オフセット成分α2は互いに等しく、θ1=θX+α、θ2=−θX+αである(α=α1、α2)。
図5は、位相オフセット成分α1、α2が互いに等しい場合のターゲット2の位置Xと位相θ1、θ2との関係を示す。なお、図5は、αが正の値の場合を図示している。αが負の値の場合については図示を省略する。位相成分θXは、ターゲット2の位置Xに比例した値となり、ターゲット2の位置Xが検知領域の左端(−L/2)から右端(L/2)の範囲で−πからπまで増加する。位相θ1は、θXにαを足し合わせた値となり、位相θ2は、−θXにαを足し合わせた値となる。
従って、αが正の値の場合、位相θ1は、ターゲット2の位置Xが検知領域の左端から周期点P1の範囲で−π+αからπまで増加し、ターゲット2の位置Xが周期点P1から検知領域の右端の範囲で−πから−π+αまで増加する。また、αが正の値の場合、位相θ2は、ターゲット2の位置Xが検知領域の左端から周期点P2の範囲で−π+αから−πまで減少し、ターゲット2の位置Xが周期点P2から検知領域の右端の範囲でπから−π+αまで減少する。
また、αが負の値の場合、位相θ1は、ターゲット2の位置Xが検知領域の左端から周期点P1の範囲でπ+αからπまで増加し、ターゲット2の位置Xが周期点P1から検知領域の右端の範囲で−πからπ+αまで増加する。また、αが負の値の場合、位相θ2は、ターゲット2の位置Xが検知領域の左端から周期点P2の範囲でπ+αから−πまで減少し、ターゲット2の位置Xが周期点P2から検知領域の右端の範囲でπからπ+αまで減少する。
なお、周期点P1は、αが正の値の場合は、P1=L/2−(L/2π)×αであり、αが負の値の場合は、P1=−L/2−(L/2π)×αである。周期点P2は、P2=−P1である。周期点P1と周期点P2は、位相オフセット成分αが小さい(0に近い)ほど、L/2(検知領域の右端)と−L/2(検知領域の左端)に近づく。
位相オフセット成分α1、α2が互いに等しい場合の位相θ1、θ2について考えると、θX=(θ1−θ2)/2、α=(θ1+θ2)/2の関係を満たす。従って、位相オフセット成分α1、α2が互いに等しい場合の位相θ1、θ2を求めることができれば、θX=(θ1−θ2)/2の関係からθXを求めることができ、θX=(2π/L)Xの関係からターゲット2の位置Xを求めることができる。
位相計測部34は、増幅部33の出力に基いて、すなわち、受波コイル5から得られる出力信号に基いて、受波コイル5から得られる出力信号の位相に含まれる、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを求める。
位相計測部34は、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを計測するための動作として、第1の計測モードと第2の計測モードを有している。
位相計測部34は、モード選択部32からモード信号が入力されることにより、計測モードをセットする。すなわち、第1のモードであることを示すモード信号が入力されると、第1の計測モードにセットし、第2のモードであることを示すモード信号が入力されると、第2の計測モードにセットする。モード選択部32からのモード信号は、送波波形生成部22と位相計測部34の両方に入力される。従って、送波波形生成部22が第1の入力モードのときに、位相計測部34が第1の計測モードになり、送波波形生成部22が第2の入力モードのときに、位相計測部34が第2の計測モードになる。
また、位相計測部34は、基準タイミング生成部31から基準時刻信号が入力されることにより、そのときにセットしている計測モードでの動作を開始する。すなわち、第1の計測モードにセットした状態のときに基準時刻信号が入力されると、第1の計測モードでの動作を開始し、第2の計測モードにセットした状態のときに基準時刻信号が入力されると、第2の計測モードでの動作を開始する。
第1の計測モードでは、位相計測部34は、受波コイル5から得られる出力信号の位相に対応する位相対応時間tθを計測し、その計測した位相対応時間tθを第1の位相対応時間t1として、計測値記憶部35に記憶する。
第2の計測モードでは、位相計測部34は、受波コイル5から得られる出力信号の位相に対応する位相対応時間tθを計測し、その計測した位相対応時間tθを第2の位相対応時間t2として、計測値記憶部35に記憶する。また、第2の計測モードでは、位相計測部34は、第1の位相対応時間t1及び第2の位相対応時間t2に基いて、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを算出する。すなわち、計測値θX *=2πf×(t1−t2)/2を位相成分θXとして算出する。
図6は、位相計測部34による位相対応時間tθの計測方法を示す。位相計測部34は、位相対応時間tθの計測を以下のようにして行う。すなわち、図6に示すように、基準時刻信号の入力時点To(基準となる所定の時点)から受波コイル5の出力信号の極性が変化するまでの時間を、位相対応時間tθとして計測する。但し、基準時刻信号の入力時点Toから所定の待機時間twが経過するまでは、受波コイル5の出力信号の極性の変化の検出を行わない。これは、受波コイル5の出力信号が安定していない状態での誤検出を防ぐためである。待機時間twは、受波コイル5の出力信号の振幅が安定するまで待機するための時間であり、予め設定された一定の時間である。また、受波コイル5の出力信号の極性が最初に変化するまでの時間は、受波コイル5の出力信号の電圧値が負の値から正の値に最初に変化するまでの時間とする。
つまり、基準時刻信号の入力時点Toから、待機時間tw経過後において受波コイル5の出力信号の電圧値が負の値から正の値に最初に変化するまでの時間を、位相対応時間tθとして計測する。この計測は、例えば、コンパレータによって、受波コイル5の出力信号の電圧値の変化を検出することにより行われる。
位相計測部34が第1の計測モードのとき、送波波形生成部22は、第1の入力モードであり、位相計測部34が第2の計測モードのとき、送波波形生成部22は、第2の入力モードである。従って、第1の計測モードで位相対応時間tθを計測するときの受波コイル5の出力信号は、第1の出力信号V1であり、第2の計測モードで位相対応時間tθを計測するときの受波コイル5の出力信号は、第2の出力信号V2である。
従って、第1の計測モードで計測した位相対応時間tθ(第1の位相対応時間t1)は、基準時刻信号の入力時点Toを基準にした第1の出力信号V1の位相θ1に対応する時間である。すなわち、2nπ+θ1=2πft1(nは自然数:−π<θ1<π)の関係(a)を満たす。また、第2の計測モードで計測した位相対応時間tθ(第2の位相対応時間t2)は、基準時刻信号の入力時点Toを基準にした第2の出力信号V2の位相θ2に対応する時間である。すなわち、2nπ+θ2=2πft2(nは自然数:−π<θ2<π)の関係(b)を満たす。
基準時刻信号の入力時点Toが位相θ1、θ2の基準時点Tc1、Tc2なので、γ1=γ2であり、α1=α2である。すなわち、θ1=θX+α、θ2=−θX+α(α=α1、α2)であり、θX=(θ1−θ2)/2の関係(c)を満たす。(a)(b)(c)の関係から、2πf×(t1−t2)/2=θXである。従って、第2の計測モードで算出する計測値θX *=2πf×(t1−t2)/2は、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXである。
出力変換部36は、位相計測部34により計測した位相成分θX(計測値θX *)をターゲット2の位置Xに変換する。すなわち、θX=(2π/L)Xの関係から、θX *×(L/2π)をターゲット2の位置Xとして算出する。そして、出力変換部36は、この算出したターゲット2の位置Xを出力する。
次に、位置センサ1の全体的な動作について説明する。初期の状態において、モード選択部32は、第2のモードにあるとする。まず、基準タイミング生成部31は、モード選択部32にモード切替信号を送信する。これにより、モード選択部32は、モード切替信号が入力され、第2のモードから第1のモードに切替えて、送波波形生成部22と位相計測部34に第1のモードであることを示すモード信号を送信する。これにより、送波波形生成部22は、第1のモードであることを示すモード信号が入力され、入力モードを第1の入力モードにセットする。また、位相計測部34は、第1のモードであることを示すモード信号が入力され、計測モードを第1の計測モードにセットする。
続いて、基準タイミング生成部31は、送波波形生成部22に送波開始信号を送信する。これにより、送波波形生成部22は、送波開始信号が入力され、第1の入力モードで正弦コイル3及び余弦コイル4への矩形波(矩形波1−1及び矩形波1−2)の入力を開始する。これにより、受波コイル5から第1の出力信号V1が出力される。この第1の出力信号V1は、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路での共振により増幅され、振幅が大きく、S/N比も大きい出力となる。そして、この出力信号V1は、増幅部33によってさらに増幅される。
また、基準タイミング生成部31は、位相計測部34に基準時刻信号を送信する。これにより、位相計測部34は、基準時刻信号が入力され、第1の計測モードでの動作を開始し、位相対応時間tθを計測して、その計測した位相対応時間tθを第1の位相対応時間t1として計測値記憶部35に記憶する。
その後、基準タイミング生成部31は、モード選択部32にモード切替信号を送信する。これにより、モード選択部32は、モード切替信号が入力され、第1のモードから第2のモードに切替えて、送波波形生成部22と位相計測部34に第2のモードであることを示すモード信号を送信する。これにより、送波波形生成部22は、第2のモードであることを示すモード信号が入力され、入力モードを第2の入力モードにセットする。また、位相計測部34は、第2のモードであることを示すモード信号が入力され、計測モードを第2の計測モードにセットする。
続いて、基準タイミング生成部31は、送波波形生成部22に送波開始信号を送信する。これにより、送波波形生成部22は、送波開始信号が入力され、第2の入力モードで正弦コイル3及び余弦コイル4への矩形波(矩形波2−1及び矩形波2−2)の入力を開始する。これにより、受波コイル5から第2の出力信号V2が出力される。この第2の出力信号V2は、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路での共振により増幅され、振幅が大きく、S/N比も大きい出力となる。そして、この出力信号V2は、増幅部33によってさらに増幅される。
また、基準タイミング生成部31は、位相計測部34に基準時刻信号を送信する。これにより、位相計測部34は、基準時刻信号が入力され、第2の計測モードでの動作を開始し、位相対応時間tθを計測して、その計測した位相対応時間tθを第2の位相対応時間t2として計測値記憶部35に記憶する。そして、位相計測部34は、計測値記憶部35に記憶している第1の位相対応時間t1及び第2の位相対応時間t2に基いて、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを2πf×(t1−t2)/2によって算出する。そして、出力変換部36は、ターゲット2の位置XをθX×(L/2π)によって算出して出力する。
その後も、基準タイミング生成部31は、モード選択部32へのモード切替信号の送信、送波波形生成部22への送波開始信号の送信、及び位相計測部34への基準時刻信号の送信を繰り返し行う。これにより、上記の動作が繰り返され、ターゲット2の位置Xが継続的に算出されて出力される。
図7は、ターゲット2の位置Xと、位相成分θXの計測値θX *との関係を示す。αが正の値であるか負の値であるかに関わらず、計測値θX *は、ターゲット2の位置Xが検知領域の周期点P2から周期点P1の範囲にあるとき、ターゲット2の位置Xに比例した値となり、周期点P2から周期点P1の範囲で−π+αからπ−αまで増加する。また、αが正の値であるか負の値であるかに関わらず、計測値θX *は、検知領域の左端(−L/2)から周期点P2の範囲で0からαまで増加し、周期点P1から検知領域の右端(L/2)の範囲で−αから0まで増加する。すなわち、αが正の値であるか負の値であるかに関わらず、計測値θX *は、周期点P2から周期点P1の範囲において、実際の位相成分θX(図5のθX参照)と同じ値となり、それ以外の範囲においては、実際の位相成分θXからπだけずれた値となる。
例えば、ターゲット2の移動範囲を周期点P1から周期点P2の範囲に制限して、周期点P1から周期点P2の範囲の計測値θX *だけを算出することにより、周期点P1から周期点P2の範囲において、ターゲット2の位置Xを検知して出力することができる。
また、例えば、ターゲット2の位置Xが0のとき(ターゲット2が検知領域の中心に位置しているとき)の位相θ1又は位相θ2、すなわち、位相オフセット成分αを予め計測して、その計測した値を基準値α0として記憶しておく。そして、位相対応時間tθを計測し、位相対応時間tθ及び基準値α0に基いて、2nπ+θX=2πftθ−α0(nは自然数:−π<θX<π)の関係からθXを求めてもよい。すなわち、2πftθ−α0を2πで割った余りをθXとして求めてもよい。このようにして求める計測値θX *は、位相オフセットαが(δが)温度などの要因によって基準値α0から変動していなければ、−L/2からL/2の範囲(検知領域の全ての範囲)において、実際の位相成分θXと同じ値になる。従って、−L/2からL/2の範囲において、ターゲット2の位置Xを検知して出力することができる。
本実施形態の位置センサ1によれば、受波コイル5から得られる出力は、受波コイル5とコンデンサ21とにより構成される共振回路で共振する。この共振によって、受波コイル5から得られる出力は、振幅が大きくS/N比も大きい出力となる。
これにより、正弦コイル3及び余弦コイル4に入力する矩形波が高周波を変調したものでなくても、振幅が大きくS/N比も大きい受波コイル5の出力を得ることができ、この受波コイル5の出力に基いてターゲット2の位置Xを検知することができる。
従って、正弦コイル3及び余弦コイル4に入力する矩形波の生成において、高周波を変調するための変調回路が不要であり、また、受波コイル5の出力に基くターゲット2の位置Xの検知において、受波コイル5の出力を復調するための復調回路が不要である。つまり、これらの変調回路及び復調回路を必要とせずに、ターゲット2の位置Xを検知することができる。これにより、回路を簡素化することができる。また、正弦コイル3及び余弦コイル4に入力する矩形波は、ローとハイの2値の電圧から成るため、生成が容易であり、簡単な回路によって生成することができる。これにより、回路を簡素化することができる。
また、受波コイル5とコンデンサ21とにより構成される共振回路が並列共振回路なので、少ない電流値で、振幅が大きくS/N比も大きい受波コイル5の出力を得ることができる。
また、本実施形態の位置センサ1によれば、受波コイル5の出力を復調しないので、復調のためのローパスフィルタが不要であり、ローパスフィルタを使用していない。従って、従来のようにローパスフィルタの出力波形が落ち着くまで位相の計測を待たなければならない、ということがない。これにより、位相の計測に要する時間を短くすることができ、ターゲットの位置の検知に要する時間を短くすることができる。また、従来のようにローパスフィルタの影響によって第1のモードから第2のモードに替わるときに位相計測値が変化する、ということがない。つまり、第2のモードの初期位相を調整する必要がなく、第2のモードの初期位相を調整するための回路(前回の位相の計測値をフィードバックする回路や第2のモードの初期位相を計算する回路など)が不要である。これにより、回路を簡素化することができる。
なお、本実施形態において、ターゲット2は、金属性(導体)に限られず、誘電体、磁性体、LC共振器であってもよい。また、可動体8は、非金属性(絶縁体)に限られず、金属性(導体)、誘電体、磁性体、LC共振器であってもよく、ターゲット2と一体的に形成されていてもよい。
また、本実施形態において、基準タイミング生成部31は、基準時刻信号と送波開始信号を同時に送信してもよいし、基準時刻信号を送信した後に送波開始信号を送信してもよい。基準時刻信号を送信した後に送波開始信号を送信する場合には、基準時刻信号を送信したときから一定時間経過した時点で、送波開始信号を送信すればよい。このようにしても、基準時刻信号の入力時点Toを位相の基準にすると、γ1=γ2であり、第1の位相対応時間t1及び第2の位相対応時間t2は、基準時刻信号の入力時点Toを基準にした位相に対応する時間である。従って、このようにしても、上記実施形態と同じようにしてθXを算出することができる。
また、本実施形態において、送波波形生成部22は、送波開始信号の入力時点Tiからある時間が経過した時点でハイになる矩形波1−1、矩形波2−1を生成するようにしてもよい。但し、送波開始信号の入力時点Tiから矩形波1−1がハイになるまでの時間と、送波開始信号の入力時点Tiから矩形波2−1がハイになるまでの時間は、同じ時間である。このようにしても、基準時刻信号の入力時点Toを位相の基準にすると、γ1=γ2であるので、上記実施形態と同じようにしてθXを算出することができる。
また、本実施形態において、位相計測部34は、基準時刻信号の入力時点Toから受波コイル5の出力信号の電圧値が正の値から負の値に変化するまでの時間を、位相対応時間tθとして計測してもよい。また、位相計測部34は、基準時刻信号の入力時点Toから受波コイル5の出力信号の電圧値が所定の基準電圧(例えばグランド電位)と交差するまでの時間を、位相対応時間tθとして計測してもよい。また、ターゲット2が検知領域の中心(X=0の位置)に位置するときに、基準時刻信号の入力時点Toから受波コイル5の出力信号の電圧値が基準電圧と交差するまでの時間をtcとする。そして、基準時刻信号の入力時点Toから時間tcが経過した時点を、位相対応時間tθの計測開始時点としてもよい。
また、本実施形態において、位相計測部34は、第1の出力信号V1の位相θ1及び第2の出力信号V2の位相θ2を計測し、これら計測した位相θ1、θ2に基いて、ターゲット2の位置に対応する位相成分θXを算出してもよい。すなわち、第1の位相対応時間t1に基いて、2nπ+θ1=2πft1(nは自然数:−π<θ1<π)の関係から位相θ1を算出する。つまり、2πft1を2πで割った余りをθ1として算出する。また、第2の位相対応時間t2に基いて、2nπ+θ2=2πft2(nは自然数:−π<θ2<π)の関係から位相θ2を算出する。つまり、2πft2を2πで割った余りをθ2として算出する。そして、これらの位相θ1、θ2に基いて、θX=(θ1−θ2)/2の関係からθXを算出するようにしてもよい。
図8は、位置センサ1の変形例を示す。図8に示す位置センサ1は、上記実施形態におけるコンデンサ21に代えて、正弦コイル3と共振回路を構成するコンデンサ51と、余弦コイル4と共振回路を構成するコンデンサ52とを備えている。正弦コイル3とコンデンサ51とによって構成される共振回路は、並列共振回路であり、余弦コイル4とコンデンサ52とによって構成される共振回路も、並列共振回路である。これらの共振回路の共振周波数は、いずれも、上記実施形態における受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路の共振周波数と同じ周波数であり、正弦コイル3及び余弦コイル4に入力される矩形波の基本周波数と同じ周波数である。
このような構成の位置センサ1によれば、正弦コイル3に入力する矩形波は、正弦コイル3とコンデンサ51とにより構成される共振回路で共振し、余弦コイル4に入力する矩形波は、余弦コイル4とコンデンサ52とにより構成される共振回路で共振する。この共振によって、正弦コイル3及び余弦コイル4に入力する矩形波は、振幅が大きくS/N比も大きいものとなり、その結果、受波コイル5から得られる出力は、振幅が大きくS/N比も大きい出力となる。これにより、上記実施形態と同様に、回路を簡素化することができる。
また、正弦コイル3とコンデンサ51とにより構成される共振回路、及び余弦コイル4とコンデンサ52とにより構成される共振回路が並列共振回路なので、少ない電流値で、振幅が大きくS/N比も大きい受波コイル5の出力を得ることができる。
図9は、位置センサ1の別の変形例を示す。図9に示す位置センサ1は、上記実施形態におけるコンデンサ21に加え、正弦コイル3と共振回路を構成するコンデンサ51と、余弦コイル4と共振回路を構成するコンデンサ52とを備えている。正弦コイル3とコンデンサ51とによって構成される共振回路は、並列共振回路であり、余弦コイル4とコンデンサ52とによって構成される共振回路も、並列共振回路である。これらの共振回路の共振周波数は、いずれも、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路の共振周波数と同じ周波数であり、正弦コイル3及び余弦コイル4に入力される矩形波の基本周波数と同じ周波数である。
このような構成の位置センサ1によれば、正弦コイル3に入力する矩形波は、正弦コイル3とコンデンサ51とにより構成される共振回路で共振し、余弦コイル4に入力する矩形波は、余弦コイル4とコンデンサ52とにより構成される共振回路で共振する。また、受波コイル5から得られる出力は、受波コイル5とコンデンサ21とにより構成される共振回路で共振する。これらの共振によって、受波コイル5から得られる出力は、振幅が大きくS/N比も大きい出力となる。これにより、上記実施形態と同様に、回路を簡素化することができる。
しかも、受波コイル5とコンデンサ21とによる共振回路での共振に加え、正弦コイル3とコンデンサ51とによる共振回路及び余弦コイル4とコンデンサ52とによる共振回路での共振によって、受波コイル5の出力は、振幅が大きくS/N比も大きい出力となる。これにより、上記実施形態と比較して、また、上記図8の変形例と比較して、振幅がより一層大きくS/N比もより一層大きい受波コイル5の出力を得ることができる。
また、正弦コイル3とコンデンサ51とにより構成される共振回路、及び余弦コイル4とコンデンサ52とにより構成される共振回路が並列共振回路なので、少ない電流値で、振幅がより一層大きくS/N比もより一層大きい受波コイル5の出力を得ることができる。
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態による位置センサ1の電気的ブロック構成を示す。本実施形態の位置センサ1では、位置検知部23は、上記第1の実施形態の構成に加え、位相オフセットαの基準値α0を記憶した基準値記憶部61と、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを位相オフセットαに基いて調整する位相調整部62とを備える。また、位相計測部34が上記第1の実施形態と異なっている。本実施形態における他の構成については、上記第1の実施形態と同様である。
位相計測部34は、増幅部33の出力に基いて、すなわち、受波コイル5から得られる出力信号に基いて、第1の出力信号V1の位相θ1、及び第2の出力信号V2の位相θ2を計測する。
位相計測部34は、位相θ1、θ2を計測するための動作として、第1の計測モードと第2の計測モードを有している。各計測モードのセット及び各計測モードでの動作の開始は、上記第1の実施形態と同様である。
第1の計測モードでは、位相計測部34は、受波コイル5から得られる出力信号の位相θを計測し、その計測した位相θを第1の出力信号V1の位相θ1の計測値θ1 *として、計測値記憶部35に記憶する。
第2の計測モードでは、位相計測部34は、受波コイル5から得られる出力信号の位相θを計測し、その計測した位相θを第2の出力信号V2の位相θ2の計測値θ2 *として、計測値記憶部35に記憶する。
位相計測部34は、位相θの計測を以下のようにして行う。すなわち、上記第1の実施形態と同様の方法で位相対応時間tθを計測する。そして、その計測した位相対応時間tθに基いて、2nπ+θ=2πftθ(nは自然数:−π<θ<π)の関係から位相θを求める。つまり、2πftθを2πで割った余りをθとして算出する。
上記第1の実施形態と同様に、第1の計測モードで位相対応時間tθを計測するときの受波コイル5の出力信号は、第1の出力信号V1であり、第2の計測モードで位相対応時間tθを計測するときの受波コイル5の出力信号は、第2の出力信号V2である。従って、第1の計測モードで計測した位相θは、基準時刻信号の入力時点Toを基準にした第1の出力信号V1の位相θ1の計測値θ1 *である。また、第2の計測モードで計測した位相θは、基準時刻信号の入力時点Toを基準にした第2の出力信号V2の位相θ2の計測値θ2 *である。
基準値記憶部61は、位相オフセットαの基準値α0を予め記憶している。基準値α0は、ターゲット2の位置Xが0のとき(ターゲット2が検知領域の中心に位置しているとき)の位相θ1又は位相θ2の値であり、例えば、位置センサ1の製造過程において計測されて基準値記憶部61に記憶される。
位相調整部62は、位相計測部34により計測した位相θ1、θ2に基いて、位相オフセット成分αを求め、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを、位相オフセット成分α及び基準値α0に基いて調整して求める。つまり、位相調整部62は、位相成分θXの計測値θX *を、位相θ1、θ2、位相オフセット成分α、及び基準値α0に基いて、−L/2からL/2の範囲(検知領域の全ての範囲)において実際の位相成分θXと同じ値になるように求める。
出力変換部36は、位相調整部62により求めた位相成分θX(計測値θX *)をターゲット2の位置Xに変換する。すなわち、上記第1の実施形態と同様に、θX *×(L/2π)をターゲット2の位置Xとして算出する。そして、出力変換部36は、この算出したターゲット2の位置Xを出力する。
図11は、位相調整部62における位相調整処理を示す。また、図12(a)(b)は、位相調整処理における位相オフセットαが正の値の場合の計測値θ1 *、θ2 *の調整の様子を示し、図13(a)(b)は、位相調整処理における位相オフセットαが負の値の場合の計測値θ1 *、θ2 *の調整の様子を示す。
位相調整部62は、位相計測部34が第1の出力信号V1の位相θ1の計測値θ1 *、及び第2の出力信号V2の位相θ2の計測値θ2 *を計測した後、以下のようにして、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXの計測値θX *を求める。
まず、位相調整部62は、位相計測部34により計測された計測値θ1 *、θ2 *に基いて、(θ1 *+θ2 *)/2を算出し、その算出した値を位相オフセットαの計測値α*とする(S1)。
位相オフセットαが正の値の場合には、図12(a)に示すように、ターゲット2の位置Xが周期点P2から周期点P1の範囲にあるときに、計測値α*=αとなり、それ以外のときに、計測値α*=α−πとなる。すなわち、位相オフセットαが正の値の場合には、計測値α*は、ターゲット2の位置Xが周期点P2から周期点P1の範囲にあるときに、実際の位相オフセットαと同じになり、それ以外のときは、実際の位相オフセットαから−πずれた値となる。
また、位相オフセットαが負の値の場合には、図13(a)に示すように、ターゲット2の位置Xが周期点P2から周期点P1の範囲にあるときに、計測値α*=αとなり、それ以外のときに、計測値α*=α+πとなる。すなわち、位相オフセットαが負の値の場合には、計測値α*は、ターゲット2の位置Xが周期点P2から周期点P1の範囲にあるときに、実際の位相オフセットαと同じになり、それ以外のときは、実際の位相オフセットαからπずれた値となる。
ここで、位相調整部62は、計測値α*がα0−π/2未満であれば(S2でYES)、計測値α*を調整し、α*+πを計測値α*とする(S3)。また、計測値α*がα0+π/2以上であれば(S4でYES)、計測値α*を調整し、α*−πを計測値α*とする(S5)。
そして、位相調整部62は、計測値θ1 *がα*−π未満であれば(S6でYES)、計測値θ1 *を調整し、θ1 *+2πを計測値θ1 *とする(S7)。また、計測値θ1 *がα*+π以上であれば(S8でYES)、計測値θ1 *を調整し、θ1 *−2πを計測値θ1 *とする(S9)。
また、位相調整部62は、計測値θ2 *がα*−π未満であれば(S10でYES)、計測値θ2 *を調整し、θ2 *+2πを計測値θ2 *とする(S11)。また、計測値θ2 *がα*+π以上であれば(S12でYES)、計測値θ2 *を調整し、θ2 *−2πを計測値θ2 *とする(S13)。
位相オフセットαが正の値の場合において、ターゲット2の位置Xが周期点P1からL/2の範囲にあるときには、S2でYES、S3、S4でNO、S6でYES、S7、S8でNO、S10でNO、及びS12でNOを経由する。これにより、位相オフセットαが正の値の場合において、ターゲット2の位置Xが周期点P1からL/2の範囲にあるときの位相θ1の計測値θ1 *が、図12(a)から図12(b)のように2π調整される。
また、位相オフセットαが正の値の場合において、ターゲット2の位置Xが−L/2から周期点P2の範囲にあるときには、S2でYES、S3、S4でNO、S6でNO、S8でNO、S10でYES、S11、及びS12でNOを経由する。これにより、位相オフセットαが正の値の場合において、ターゲット2の位置Xが−L/2から周期点P2の範囲にあるときの位相θ2の計測値θ2 *が、図12(a)から図12(b)のように2π調整される。
また、位相オフセットαが負の値の場合において、ターゲット2の位置Xが−L/2から周期点P1の範囲にあるときには、S2でNO、S4でYES、S5、S6でNO、S8でYES、S9、S10でNO、及びS12でNOを経由する。これにより、位相オフセットαが負の値の場合において、ターゲット2の位置Xが−L/2から周期点P1の範囲にあるときの位相θ1の計測値θ1 *が、図13(a)から図13(b)のように−2π調整される。
また、位相オフセットαが負の値の場合において、ターゲット2の位置Xが周期点P2からL/2の範囲にあるときには、S2でNO、S4でYES、S5、S6でNO、S8でNO、S10でNO、S12でYES、及びS13を経由する。これにより、位相オフセットαが負の値の場合において、ターゲット2の位置Xが周期点P2からL/2の範囲にあるときの位相θ2の計測値θ2 *が、図13(a)から図13(b)のように−2π調整される。
そして、位相調整部62は、このように調整した後の計測値θ1 *、θ2 *に基いて、(θ1 *−θ2 *)/2を算出し、その算出した値を位相成分θXの計測値θX *とする(S14)。
図14は、ターゲット2の位置Xと、このようにして求めた位相成分θXの計測値θX *との関係を示す。計測値θX *は、−L/2からL/2の範囲(検知領域の全ての範囲)において、ターゲット2の位置Xに比例した値となり、−L/2からL/2の範囲で−πからπまで増加する。すなわち、計測値θX *は、−L/2からL/2の範囲において、実際の位相成分θX(図5のθX参照)と同じ値となる。
本実施形態の位置センサ1によれば、検知領域の全ての範囲において、計測値θX *を実際の位相成分θXと同じ値になるように計測して、ターゲット2の位置Xを検知することができる。しかも、位相オフセットαが温度などの要因によって基準値α0から変動した場合であっても、検知領域の全ての範囲において、計測値θX *を実際の位相成分θXと同じ値になるように計測して、ターゲット2の位置Xを検知することができる。但し、位相オフセットαの変動は、−π/2<α0<π/2の範囲であるとする。なお、位相オフセットαが基準値α0から変動しないとすれば、S2、S4の処理は、不要であり、S6、S8、S10、S12の各処理は、α*をα0に置き換えた処理にすればよい。
図15は、位相調整部62における位相調整処理の変形例を示す。図15に示す位相調整処理では、位相調整部62は、以下のようにして、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXの計測値θX *を求める。
まず、位相調整部62は、位相計測部34により計測された計測値θ1 *、θ2 *に基いて、(θ1 *+θ2 *)/2を算出し、その算出した値を位相オフセットαの計測値α*とする(S21)。
ここで、位相調整部62は、計測値α*がα0−π/2未満であれば(S22でYES)、計測値α*を調整し、α*+πを計測値α*とする(S23)。また、計測値θ1 *を調整し、θ1 *+2πを計測値θ1 *とする(S24)。
また、位相調整部62は、計測値α*がα0+π/2以上であれば(S25でYES)、計測値α*を調整し、α*−πを計測値α*とする(S26)。また、計測値θ1 *を調整し、θ1 *−2πを計測値θ1 *とする(S27)。
続いて、位相調整部62は、このように調整した後の計測値θ1 *、θ2 *に基いて、(θ1 *−θ2 *)/2を算出し、その算出した値を位相成分θXの計測値θX *とする(S28)。
そして、位相調整部62は、計測値θX *が−π未満であれば(S29でYES)、計測値θX *を調整し、θX *+2πを計測値θX *とする(S30)。また、計測値θX *がπ以上であれば(S31でYES)、計測値θX *を調整し、θX *−2πを計測値θX *とする(S32)。
位相オフセットαが正の値の場合において、ターゲット2の位置Xが周期点P1からL/2の範囲にあるときには、S22でYES、S23、S24、S25でNO、S28、S29でNO、及びS31でNOを経由する。また、位相オフセットαが正の値の場合において、ターゲット2の位置Xが−L/2から周期点P2の範囲にあるときには、S22でYES、S23、S24、S25でNO、S28、S29でNO、S31でYES、及びS32を経由する。
また、位相オフセットαが負の値の場合において、ターゲット2の位置Xが−L/2から周期点P1の範囲にあるときには、S22でNO、S25でYES、S26、S27、S28、S29でNO、及びS31でNOを経由する。また、位相オフセットαが負の値の場合において、ターゲット2の位置Xが周期点P2からL/2の範囲にあるときには、S22でNO、S25でYES、S26、S27、S28、S29でYES、S30、及びS31でNOを経由する。
このような位相調整処理によれば、上記第2の実施形態の位相調整処理と同様に、検知領域の全ての範囲において、計測値θX *を実際の位相成分θXと同じ値になるように計測することができる。
<第3の実施形態>
図16は、第3の実施形態による位置センサ1の電気的ブロック構成を示す。本実施形態の位置センサ1では、位置検知部23は、上記第1の実施形態における増幅部33に代えて、受波コイル5の出力信号をダウンサンプリングするためのADタイミング生成部71及びAD変換部72を備える。また、位相計測部34が上記第1の実施形態と異なっている。また、本実施形態では、正弦コイル3及び余弦コイル4に入力する矩形波の基本周波数fは、2[MHz]であり、受波コイル5とコンデンサ21とによって構成される共振回路の共振周波数も、矩形波の基本周波数と同じ2[MHz]に設定されている。本実施形態における他の構成については、上記第1の実施形態と同様である。
ADタイミング生成部71は、AD変換部72にADタイミング信号を送信する。ADタイミング信号は、受波コイル5の出力信号をサンプリング(AD変換)するタイミングを示す信号である。AD変換部72は、ADタイミング生成部71からADタイミング信号が入力されると、そのタイミングで受波コイル5の出力信号の電位値yをサンプリングして、その電位値yを位相計測部34に出力する。
図17は、ADタイミング生成部71及びAD変換部72による受波コイル5の出力信号のダウンサンプリングの様子を示す。ADタイミング生成部71は、所定のサンプリング周期tsで、AD変換部72にADタイミング信号を送信する。サンプリング周期tsは、正弦コイル3及余弦コイル4に入力する矩形波の周期1/fよりも長い周期である。また、サンプリング周期tsは、正弦コイル3及余弦コイル4に入力する矩形波の半周期(1/f)/2の整数倍とは異なる周期である。また、サンプリング周期tsは、1/fの整数倍の時間を3等分以上に等分する周期である。すなわち、サンプリング周期tsは、ts=(1/f)×(Nk+Z)/Nである。Nは、3以上の任意の自然数であり、kは、任意の自然数であり、Zは、N−1までの任意の自然数である。
矩形波の半周期(1/f)/2の整数倍とは異なる周期は、(1/f)/2)×(Lh+W)/Lと表せる。Lは、2以上の任意の自然数であり、hは、0又は任意の自然数であり、Wは、L−1までの任意の自然数である。Lh+Wは、Lの整数倍ではないので、(Lh+W)/Lは、整数でない。従って、((1/f)/2)×(Lh+W)/Lは、矩形波の半周期(1/f)/2の整数倍とは異なる周期である。
サンプリング周期tsは、ts=(1/f)×(Nk+Z)/N=((1/f)/2)×(2Nk+2Z)/Nである。2Z<Nの場合は、2Z=W、2k=hとして、ts=((1/f)/2)×(Lh+W)/Lと表せる。また、2Z≧Nの場合は、2Z=N+W、2k+1=hとして、ts=((1/f)/2)×(Lh+W)/Lと表せる。従って、サンプリング周期Tsは、矩形波の半周期(1/f)/2の整数倍とは異なる周期である。また、k≧1、Z≧1であることから、(Nk+Z)/Nは、1よりも大きい。従って、サンプリング周期tsは、矩形波の周期1/fよりも長い周期である。また、Nk+Zは、整数であり、Nは、3以上の自然数である。従って、サンプリング周期tsは、矩形波の周期1/fを整数倍した時間を3等分以上に等分(N等分)する周期である。
すなわち、ADタイミング生成部71は、サンプリング周期ts=(1/f)×(Nk+Z)/Nの周期で、AD変換部72にADタイミング信号を送信する。これにより、AD変換部72は、このADタイミング信号に基いて、サンプリング周期ts=(1/f)×(Nk+Z)/Nの周期で、受波コイル5の出力信号の電位値yをサンプリングする。そして、AD変換部72は、それらサンプリングした電位値yを位相計測部34に出力する。本実施形態では、N=3(L=3)、k=6(h=12)、Z=1(W=2)であり、ts=(1/f)×19/3=(1/f)×6+(1/f)×1/3である。位相計測部34は、AD変換部72の出力に基いて、すなわち、受波コイル5から得られる出力信号に基いて、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを計測する。
受波コイル5の出力の電位値yは、波形に歪などが生じないとすれば、時間tの関数としてy=Asin(2πft−θ)+Bと表せる。ここで、Aは振幅であり、Bは振動の中心電圧であり、θは位相(θ1又はθ2:θ>のとき、位相遅れ)である。
電位値y=Asin(2πft−θ)+Bは、A、B、θの3つの未知の係数を含んでいる。従って、(t、y)の3つの異なる組(t0、y0)、(t1、y1)、(t2、y2)の値からA、B、θの値を求めることができる。すなわち、以下の式(7)に示す連立方程式を解くことにより、A、B、θの値を求めることができる。
但し、t1≠t0+((1/f)/2)×i、t2≠t0+((1/f)/2)×i、t2≠t1+((1/f)/2)×i(iは任意の整数)であるとする。つまり、t0とt1との時間間隔t1−t0、t1とt2との時間間隔t2−t1、t0とt2との時間間隔t2−t0が、いずれも、((1/f)/2)×i(入力波1、2の半周期の整数倍)とは異なる時間間隔とする。これは、y=Asin(2πft−θ)+Bが1/fの周期性を有していることを考慮し、(t0、y0)、(t1、y1)、(t2、y2)が(t、y)の3つの異なる組の値である必要性のためである。AD変換部72による電位値yのサンプリングタイミングは、このようなt0、t1、t2となる。
このようなt0、t1、t2における電位値y0、y1、y2を計測し、それらの値を用いて式(7)の連立方程式を解くことにより、θの値を求めることができる。つまり、式(7)に示す連立方程式をθについて解くことにより、θの値を求めることができる。また、式(7)に示す連立方程式をsinθ/cosθについて解くことにより、θ=tan−1(sinθ/cosθ)の関係から、θの値を求めることができる。
sin関数、cos関数は、Mを2以上の整数とし、jを0からMまでの整数とした場合、以下の式(8)(9)の関係を満たす。
例えば、N=3の場合、式(8)(9)の関係を考慮すると、式(7)に示す連立方程式から、以下の式(10)が得られる。
従って、θは、θ=tan−1(sinθ/cosθ)の関係から、以下の式(11)となる。
式(11)により求められるθは、電位値ynを計測する時刻tnの基準時刻(時刻0)を基準(位相の基準時点Tc)にした受波コイル5の出力信号の位相θとなる。
また、受波コイル5の出力波形が歪などを含んでいたり、電位値yの計測値が誤差を含んでいたりすることを考慮し、3個よりも多くの電位値yを計測して、最小自乗法の手法によって、θの値を求めることもできる。
例えば、計測する電位値yの個数N*をN*=N×m(mは、任意の自然数)とし、電位値yを計測するサンプリング周期tsをts=(1/f)×(Nk+Z)/Nとした場合、最小二乗法の手法によってθの値を求めると、以下の式(12)となる。
式(12)により求められるθは、電位値ynを計測する時刻tnの基準時刻(時刻0)を基準(位相の基準時点Tc)にした受波コイル5の出力信号の位相θとなる。
なお、式(12)は、以下のようにして導出される。すなわち、最小自乗法によって求めるθは、電位値yn(n=0、1、2、・・・、N*−1)の誤差の自乗和が最小値をとるときのθである。
電位値ynの誤差の自乗和をDとすると、この自乗和Dは、以下の式(13)で表される。
ここで、u=Acosθ、v=Asinθとおく。すると、自乗和Dは、以下の式(14)となる。
自乗和Dが最小値を取るときの条件は、Dをuで偏微分した導関数∂D/∂u、Dをvで偏微分した導関数∂D/∂v、DをBで偏微分した導関数∂D/∂Bが、それぞれ、0となるときである。すなわち、∂D/∂u=0、∂D/∂v=0、∂D/∂B=0を満たすときのθが、自乗和Dが最小値を取るときのθであって、最小自乗法によって求めるθである。
∂D/∂u、∂D/∂v、∂D/∂Bは、式(14)をu、v、Bのそれぞれで偏微分することにより得られ、以下の式(15)(16)(17)となる。
サンプリング周期tsがts=(1/f)×(Nk+Z)/Nであり、ynの個数N*がN*=N×mである場合、式(8)(9)の関係を考慮すると、∂D/∂u=0、∂D/∂v=0、∂D/∂B=0から、以下の式(18)(19)(20)が得られる。
v/u=(Asinθ)/(Acosθ)=tanθである。従って、θ=tan−1(v/u)であり、上記の式(12)が得られる。
位相計測部34は、AD変換部72の出力に基いて、すなわち、受波コイル5から得られる出力信号に基いて、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを計測する。
位相計測部34は、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを計測するための動作として、第1の計測モードと第2の計測モードを有している。各計測モードのセット及び各計測モードでの動作の開始は、上記第1の実施形態と同様である。
第1の計測モードでは、位相計測部34は、受波コイル5から得られる出力信号の位相θを計測し、その計測した位相θを第1の出力信号V1の位相θ1の計測値θ1 *として、計測値記憶部35に記憶する。
第2の計測モードでは、位相計測部34は、受波コイル5から得られる出力信号の位相θを計測し、その計測した位相θを第2の出力信号V2の位相θ2の計測値θ2 *として、計測値記憶部35に記憶する。また、第2の計測モードでは、位相計測部34は、計測値θ1 *及び計測値θ2 *に基いて、ターゲット2の位置Xに対応する位相成分θXを算出する。すなわち、計測値θX *=(θ1 *−θ2 *)/2を位相成分θXとして算出する。
位相計測部34は、位相θの計測を以下のようにして行う。位相計測部34は、基準時刻信号の入力時点To以降にAD変換部72によりサンプリングされた(AD変換部72から出力された)受波コイル5の出力信号の電位値yを順に番号付けして計測値記憶部35に記憶する。つまり、位相計測部34は、基準時刻信号の入力時点To以降にAD変換部72によりサンプリングされたn番目の電位値yをynとして計測値記憶部35に格納する。このとき、位相計測部34は、AD変換部72によりサンプリングされたN*=N×m個の電位値ynを計測値記憶部35に格納する。これにより、計測値記憶部35には、基準時刻信号の入力時点To以降に1/fの(Nk+Z)/N倍の周期(1/fの整数倍とは異なる周期)でN*=N×m回サンプリングした電位値ynが格納される。つまり、基準時刻信号の入力時点To以降に1/fの(Nk+Z)倍の時間をN等分する時間間隔でサンプリングしたN*=N×m個の電位値ynが格納される。
そして、位相計測部34は、それら計測値記憶部35に格納したN*=N×m個の電位値ynに基いて、受波コイル5の出力信号の位相θを求める。すなわち、位相計測部34は、上記の式(12)を適用して、最小自乗法の手法によって、位相θを求める。
この場合、tnは、基準時刻信号の入力時点Toを基準時刻(時刻0)とした時刻である。ynは、時刻tnにおける電位値yである。このようにして求めるθは、基準時刻信号の入力時点Toを基準にした受波コイル5の出力信号の位相θとなる。
このような位相θの計測方法は、1/fのNk+Z(Nの倍数でない整数)倍の時間を1周期とし、この周期をN等分した間隔でサンプリングしたN個の電位値ynを1周期分のデータとし、m周期分のデータを利用して位相θを計測しているということである。そして、このような位相θの計測方法は、サンプリングする電位値ynの個数N*=N×mが多いほど、また、mが大きいほど、精度が高くなる。本実施形態では、N=3、k=6、m=5としている。すなわち、本実施形態では、1/fの19倍の時間を1周期とし、1周期分のデータの個数を3個とし、5周期分のデータを利用して、位相θを計測している。位相計測部34は、このようにして求めたθを受波コイル5の出力信号の位相の計測値θ*とする。
上記第1の実施形態と同様に、位相計測部34が第1の計測モードのとき、送波波形生成部22は、第1の入力モードであり、位相計測部34が第2の計測モードのとき、送波波形生成部22は、第2の入力モードである。送波波形生成部22が第1の入力モードのときにADタイミング生成部71及びAD変換部72がダウンサンプリングする受波コイル5の出力信号は、第1の出力信号V1である。また、送波波形生成部22が第2の入力モードのときにADタイミング生成部71及びAD変換部72がダウンサンプリングする受波コイル5の出力信号は、第2の出力信号V2である。従って、第1の計測モードで計測した位相θは、基準時刻信号の入力時点Toを基準にした第1の出力信号V1の位相θ1の計測値θ1 *である。また、第2の計測モードで計測した位相θは、基準時刻信号の入力時点Toを基準にした第2の出力信号V2の位相θ2の計測値θ2 *である。
本実施形態の位置センサ1によれば、位相θ1、θ2の計測精度を落とさずに、正弦コイル3及び余弦コイル4に入力する矩形波の基本周波数f(駆動周波数)を上記第1の実施形態及び上記第2の実施形態よりも高くすることができる。
これは、以下の理由による。すなわち、上記第1の実施形態及び上記第2の実施形態と本実施形態とで、受波コイル5の出力波形が同じであり、かつ、位相計測部34の時間分解能が同じであるとする。すると、上記第1の実施形態及び上記第2の実施形態の電圧値の符号が変わるまでの時間計測による位相計測よりも、本実施形態の電圧値のサンプリング(その時刻での電圧値計測)による位相計測の方が高分解能になるためである。つまり、時間計測の分解能により生じる位相計測の誤差よりも、電圧値計測の分解能により生じる位相計測の誤差の方が小さいためである。例えば、上記第1の実施形態及び上記第2の実施形態において、矩形波の基本周波数fを2[MHz]とし、時間分解能を24[MHz]として、時間計測により位相θ1、θ2を計測すると、位相θ1、θ2の計測分解能は30度となる。これに対し、本実施形態において、同じ時間分解能24[MHz]で、電圧値分解能を振幅に対して1/30以下として、電圧値のサンプリングにより位相θ1、θ2を計測すると、位相θ1、θ2の計測分解能は第1及び上記第2の実施形態よりも高くなる。本実施形態によれば、このことによって、上記第1の実施形態及び上記第2の実施形態よりも高い分解能で位相θ1、θ2を計測することができる。
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態及び上記第2の実施形態よりも高い分解能で位相θ1、θ2を計測することができる。従って、本実施形態によれば、位相θ1、θ2の計測精度を落とさずに、矩形波の基本周波数f(駆動周波数)を上記第1の実施形態及び上記第2の実施形態よりも高くすることができる。
矩形波の基本周波数fを高くすると、電圧の変化速度が速くなることにより、受波コイル5の出力は、振幅が大きくなり、S/N比も大きくなる。従って、矩形波の基本周波数fを高くすることにより、振幅及びS/N比の大きい受波コイル5の出力を得ることができる。つまり、矩形波の基本周波数fを高くした場合、受波コイル5の出力の振幅及びS/N比が大きくなるので、位相θ1、θ2の計測精度を保ちつつ又は位相θ1、θ2の計測精度を高めつつ、矩形波の基本周波数fを高くすることができる。しかも、矩形波の基本周波数fを高くすることにより、位相θ1、θ2の計測時間を短くすることができる。また、位相θ1、θ2の計測時間が短くなることで、消費電流を減らすことができる。複数周期分のデータを利用して位相θ1、θ2を計測することにより、位相θ1、θ2の計測精度が向上する。
なお、本実施形態において、位相計測部34により計測した位相θ1、θ2に基いて、上記第2の実施形態における位相調整処理又は上記図15に示す位相調整処理と同様の位相調整処理を行って、位相成分θXの計測値θX *を求めるようにしてもよい。