JP6208417B2 - 溶解パルプ - Google Patents
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(1) 溶解パルプを叩解してカナダ標準濾水度を50〜150ml低下させることを含む、カナダ標準濾水度が550〜650mlである溶解パルプの製造方法。
(2) 溶解パルプが、溶解クラフトパルプである、(1)に記載の方法。
(3) 溶解パルプを叩解してカナダ標準濾水度を50〜150ml低下させることを含む、溶解パルプから調製したビスコース溶液の濾過性を改善する方法。
(4) カナダ標準濾水度が550〜650mlである溶解パルプ。
(5) 溶解パルプが、溶解クラフトパルプである、(4)に記載の溶解パルプ。
(6) 半合成繊維製造用である、(4)または(5)に記載の溶解パルプ。
ここで、kは目づまり係数であり、次式により求めることができる。
t/v=k/2*t+1/S0
[式中、t:濾過時間、v:濾過量、S0:最初の濾過速度]
本発明の原料は木材チップである。本発明において原料となる木材チップは、針葉樹材、広葉樹材のいずれのチップを含んでいれば、そのサイズや樹種は特に制限されず、単一種類の木材のチップでも2種以上の木材が混合されたチップでもよい。本発明においては、針葉樹などの比較的、蒸解や漂白が難しいとされる樹種であっても、高品質な溶解パルプを効率良く製造することができる。本発明において使用される針葉樹材のチップとしては、例えば、カラマツ属やマツ属の木材チップを好適に使用することができる。カラマツ属に関しては、例えば、Larix(以下、L.と略す)leptolepis(カラマツ)、L.laricina(タマラック)、L.occidentalis(セイブカラマツ)、L.decidua(ヨーロッパカラマツ)、L.gmelinii(グイマツ)などが挙げられる。また、カラマツ属以外の針葉樹としては、例えば、マツ属に関しては、Pinus radiata(ラジアータマツ)など、トガサワラ属に関しては、Pseudotsuga(以下、P.と略す)menziesii(ダクラスファー)、P.japonica(トガサワラ)など、スギ属に関しては、Cryptomeria japonicaなどを挙げることができる。
上述したように、好ましい態様において本発明の溶解パルプは、クラフト蒸解法(KP法)によって製造される溶解クラフトパルプである。これに限定されるものではないが、本発明の溶解クラフトパルプの製造について以下に説明する。
本発明ではクラフト蒸解を行う前の前処理として、チップに対して加水分解処理を行って、木材チップ中のヘミセルロース分を水溶性の糖に分解して、除去することができる。前処理としての加水分解処理(前加水分解)は、木材チップを高温の水で処理することによって実施される。添加する水は、熱水でも水蒸気の状態でもよい。加水分解の進行によって有機酸等が生成するので、処理液のpHは2〜5となるのが一般的である。
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
本発明における前加水分解処理は、Pファクター(Pf)が350〜800となる範囲で行うことが好ましい。Pfが350未満であれば、ヘミセルロースの除去が不十分となり、ヘミセルロースを除去したことによる脱リグニン性の向上効果も少なくなる。また、Pfが800を超えると、加水分解が過剰となりα−セルロース分が減少してパルプ収率の低下を招くとともに、リグニンの縮合により、後に続くクラフト蒸解工程における蒸解性の悪化を招いてしまう。
前加水分解釜に木材チップと水を供給する際の比率(動的液比)は1〜2.3L/kgとすることが好ましい。前加水分解釜に供給する木材チップと水の比率は動的液比とも呼ばれ、木材チップ1kgあたりの水の量として示される。動的液比が1.0L/kg未満であると、木材チップに対して水が少なすぎるために加水分解が不十分となり、液比が2.3L/kgを超えると前加水分解釜の頂部において気相部が十分に確保できないので好ましくない。なお、水には木材チップと共に供給する水だけではなく、木材チップに含まれる水分、ドレン水等も含まれる。
次いで、前加水分解処理後の木材チップは、前加水分解液を除去し、チップを十分に水で洗浄して回収することができる。不十分な洗浄では、後続の蒸解工程において悪影響が生じる場合がある。
洗浄後のチップは、蒸解液と共に蒸解釜へ投入され、一般的な条件でクラフト蒸解に供することができる。蒸解釜は連続蒸解釜、バッチ式蒸解釜のいずれも使用できるが、連続蒸解釜の方がエネルギー効率がよいので、好ましい。また、MCC、EMCC、ITC、Lo−solidなどの修正クラフト法の蒸解に供しても良い。また、1ベッセル液相型、1ベッセル気相/液相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相型などの蒸解型式なども特に限定はない。すなわち、本願のアルカリ性水溶液を含浸し、これを保持する工程は、従来の蒸解液の浸透処理を目的とした装置や部位とは別個に設置してもよい。好ましくは、蒸解を終えた未晒パルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの洗浄装置で洗浄する。洗浄後の未晒パルプのカッパー価は、針葉樹の場合、10〜22にすることが好ましく、12〜20としてもよい。広葉樹の場合、5〜20にすることが好ましく、6〜16としてもよい。
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
本発明においては、蒸解後得られた未漂白パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。
カラマツを原料とする木材チップを、篩い分け器(ジャイロシフター)を使用して篩い分けし、サイズが9.5〜25.4mmの木材チップを得た。
続いて、再び回転型オートクレーブを用い、150℃で85分間、クラフト蒸解薬液の浸透を行った後、蒸解温度158℃で230分間(Hファクター:約1300)、クラフト蒸解を行って溶解パルプを得た。クラフト蒸解薬液は、活性アルカリ105g/L(Na2O換算値)、NaOH75.6g/L(Na2O換算値)、Na2S29.4g/L(Na2O換算値)、硫化度28%の組成であり、木材チップと蒸解薬液との液比は3.2L/kgとした。
・二酸化塩素処理(D1):パルプ濃度10質量%、二酸化塩素添加量1.2質量%、温度55℃、60分間
・アルカリ抽出/過酸化水素処理(Ep):パルプ濃度10質量%、水酸化ナトリウム添加量0.93質量%、過酸化水素添加量1.03質量%、温度70℃、90分間
・二酸化塩素処理(D2):パルプ濃度10質量%、二酸化塩素添加量0.33質量%、温度75℃、240分間
得られた漂白溶解クラフトパルプを水で十分に洗浄した後、漂白溶解クラフトパルプの離解濾水度、α−セルロース含有量を以下の方法にて測定した。
・離解濾水度:風乾した漂白溶解クラフトパルプをJIS P 8220に規定されたパルプ離解法に従って標準離解機で離解して、JIS P 8121(1995年)に規定される方法に従ってカナダ標準濾水度(CSF)を測定した。
・α−セルロース含有量:TAPPI T203に従い、パルプに含まれるαセルロースの量を測定した。
・粘度:目盛りつきの透明な管にビスコース溶液を入れ、20±0.1℃の水槽中に立てる。15〜30分放置した後、1/8インチボールベアリングスチールボール(0.1300±0.003g)をピンセットで管の中央部に落とし、管の目盛り20cmの間の落下所要秒数を測定する。
・濾過性(Kr):RP JIS 改訂懇談会、溶解パルプ試験方法(案)(昭和32年1月発行、付2、p1〜10)に従った。
酸素脱リグニン処理後に叩解処理を行わない以外は、実施例1と同様にして漂白溶解クラフトパルプを得た。
Claims (6)
- 溶解クラフトパルプを叩解してカナダ標準濾水度を50〜150ml低下させることを含む、カナダ標準濾水度が550〜650mlである溶解クラフトパルプの製造方法。
- 溶解クラフトパルプに酸素脱リグニン処理を行うことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 溶解クラフトパルプを漂白することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
- 前記溶解クラフトパルプが針葉樹を原料とする溶解クラフトパルプである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 溶解クラフトパルプを叩解してカナダ標準濾水度を50〜150ml低下させてカナダ標準濾水度を550〜650mlに調整することを含む、溶解クラフトパルプから調製したビスコース溶液の濾過性を改善する方法。
- カナダ標準濾水度を50〜150ml低下させたカナダ標準濾水度が550〜650mlである、半合成繊維製造用の溶解クラフトパルプ。
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