JP6205747B2 - 光半導体素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光半導体素子及びその製造方法に関する。
近年では、微小で高効率な光半導体素子として、いわゆるコア−シェル形状の半導体ナノワイヤ型の発光素子の応用が期待されている。このような発光素子である発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)において、特許文献1のように、半導体ナノワイヤの頭頂部に金属のリフレクタを配して、半導体基板の裏面から光を取り出す手法が提案されている。この提案においては、半導体ナノワイヤのシェル層が半導体ナノワイヤの頭頂部を完全に被覆しているため、半導体ナノワイヤの側壁材料と頭頂部材料とが同じ材料で構成されている。この場合、リフレクタが金属であっても、半導体ナノワイヤの頭頂部及び側壁を一括して被覆することが可能である。
特表2010−514207号公報
その一方で、シェル層を半導体ナノワイヤの頭頂部を覆うように成長する際には、様々な傾斜角を持つファセットを生じることが多く、ファセットにおける異常成長による半導体ナノワイヤの形状劣化及び異常成長時の欠陥発生が問題となる。そのため、半導体ナノワイヤの良質なp−i−n構造体の形成という観点からは、シェル層による頭頂部の被覆成長を抑えることが望ましい。しかしながらこの場合、特許文献1のようにリフレクタを一括して被覆すると、p−n接合の短絡或いは大きな漏れ電流を生ぜしめ、素子特性が劣化するという問題がある。また、特許文献1では、リフレクタにより反射された光は、そのまま放射されるため、高密度のLEDアレイにおいては、複数のLEDからのビームが重なってしまい、アレイのLEDを独立して使用する際に問題がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、優れた素子特性を有し、高効率に光を取り出すことができ、所期の良好なビーム形状を有する、高密度のアレイ形成に適した信頼性の高い光半導体素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
光半導体素子の一態様は、第1導電型の半導体ナノワイヤと、前記半導体ナノワイヤの側面を覆う発光層と、前記発光層の少なくとも側面を覆う第2導電型のシェル層とを有する構造体と、前記構造体を覆う電極とを備えており、前記構造体と前記電極との間に、発光波長に対して透明な絶縁層が設けられており、前記シェル層は、前記構造体の上面を覆う第1の部分が前記構造体の側面を覆う第2の部分よりも薄く、前記第1の部分の厚みが10nm以下である
光半導体素子の製造方法の一態様は、第1導電型の半導体ナノワイヤと、前記半導体ナノワイヤの側面を覆う発光層と、前記発光層の少なくとも側面を覆う第2導電型のシェル層とを有する構造体を形成する工程と、前記構造体上に、発光波長に対して透明な絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層を介して前記構造体を覆うように電極を形成する工程とを含み、前記シェル層は、前記構造体の上面を覆う第1の部分が前記構造体の側面を覆う第2の部分よりも薄く、前記第1の部分の厚みが10nm以下である
本発明によれば、優れた素子特性を有し、高効率に光を取り出すことができ、所期の良好なビーム形状を有する、高密度のアレイ形成に適した信頼性の高い光半導体素子が実現する。
第1の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法を工程順に示す概略断面図である。 図1に引き続き、第1の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法を工程順に示す概略断面図である。 図2に引き続き、第1の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法を工程順に示す概略断面図である。 シェル層の半導体ナノワイヤの頭頂部被覆厚(横軸(nm))とトンネル効果により生じる漏れ電流(縦軸(割合))との関係を示す特性図である。 比較例の半導体ナノワイヤ型のLEDの一部を示す概略断面図である。 第1の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。 第3の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。 図7に引き続き、第3の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。 絶縁層の厚みと光透過率との関係を示す特性図である。 第4の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。 図10に引き続き、第4の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
光半導体素子をコア−シェル形状の半導体ナノワイヤ型の発光素子に適用した諸実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDについて、その構造を製造方法と共に説明する。
図1〜図3は、第1の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
先ず、図1(a)に示すように、半導体基板1上に絶縁膜2を形成し、触媒3を配する。
詳細には、半導体基板1として、例えばn型のInP基板を用意する。InP基板におけるn型の不純物濃度は、例えば5×1017〜1×1019/cm3程度であれば良い。
半導体基板1の表面上に、CVD法等により例えばSiO2を堆積し、絶縁膜2を形成する。絶縁膜2の所定部位をリソグラフィー及びドライエッチングで加工し、半導体基板1の表面の一部を露出する開口2aを形成する。
ドライエッチングでマスクとして用いたレジストが形成された状態で、開口2a内を含むレジストの全面に、触媒3となる金属、ここでは金(Au)の微粒子をスパッタ法又は蒸着法等により堆積する。レジストを所定のウェット処理等により除去することにより、開口2a内のみに触媒3が残存する。
続いて、図1(b)に示すように、半導体ナノワイヤ4を形成する。
詳細には、触媒3を用いて、絶縁膜2の開口2aを埋め込み上方に起立するように、半導体基板1の材料と同様であるn型のInPを成長する。これにより、コアとなる半導体ナノワイヤ4が形成される。その後、触媒3は所定のウェット処理等により除去される。
InPにおけるn型の不純物(ドーパント)としては、例えば硫黄(S)を用い、その不純物濃度は、例えば5×1017〜1×1019/cm3程度であれば良い。InPの成長には、有機金属気相成長(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE)法等を適用し、原料には例えば硫化水素(H2S)を用いる。
続いて、図1(c)に示すように、発光層5及びシェル層6を形成する。
詳細には、先ず、半導体ナノワイヤ4の側面を覆うように、MOVPE法等により、例えば、バリア層となるi型のInP5a、i型のInAsP5b、及びバリア層となるi型のInP5cを順次積層する。これにより、量子井戸層である発光層5が形成される。発光層は、i型のInAsPを挟むi型のInPを形成することなく、i型のInAsPの単層としても良い。
次に、半導体ナノワイヤ4及び発光層5の上面から発光層5の側面に架けて覆うように、p型の例えばInPを堆積する。これにより、シェル層6が形成される。
InPにおけるp型の不純物(ドーパント)としては、例えば亜鉛(Zn)を用い、その不純物濃度は、例えば5×1017〜2×1018/cm3程度であれば良い。InPの成長には、MOVPE法等を適用し、原料には例えばジエチル亜鉛(DEZ)を用いる。
シェル層6は、その上面部分が側面部分よりも薄く、上面部分の厚みは例えば10nm以下、ここでは4nm程度に形成される。半導体ナノワイヤ4、発光層5、及びシェル層6を備えて、p−i−n構造体10が形成される。
その後、p−i−n構造体10上に、例えばp型のInGaAsコンタクト層を1nm程度〜10nm程度の厚みに形成しても良い。このコンタクト層は、低抵抗のp型電極として機能する。
続いて、図2(a)に示すように、絶縁層7を形成する。
詳細には、p−i−n構造体10上を含む全面に、CVD法等により、発光波長に対して透明となる絶縁材料を堆積する。これにより、絶縁層7が形成される。この絶縁材料としては、SiO2,CaF2,Al23,BaF2,MgF2から選ばれた少なくとも1種、ここではSiO2を用いる。
続いて、図2(b)に示すように、レジスト12を形成する。
詳細には、全面にレジスト12を塗布し、レジスト12をリソグラフィーにより加工する。レジスト12には、絶縁層7の絶縁膜2上に形成された部分を覆い、絶縁層7のp−i−n構造体10上に形成された部分を露出する開口12aが形成される。
続いて、図2(c)に示すように、絶縁層7をエッチングする。
詳細には、レジスト12をマスクとして用い、絶縁層7の開口12aから露出する部分を、所定の薬液を用いてウェットエッチングする。これにより、絶縁層7のp−i−n構造体10の頭頂部に形成された部分が所期の厚みに調節されると共に、絶縁層7の開口12aから露出する部分が除去されてp−i−n構造体10の側面の一部が露出する。
レジスト12は、所定の薬液を用いたウェット処理又は酸素プラズマを用いたアッシング処理により、除去される。
絶縁層7のp−i−n構造体10の頭頂部に形成された部分は、上記のエッチングにより、発光波長に対して透明な膜厚範囲として、例えば422nm程度〜475nm程度の厚みに調節される。SiO2の発光波長1.3μmにおける屈折率は1.45程度である。
絶縁層7の絶縁材料としてCaF2を用いる場合には、絶縁層7のp−i−n構造体10の頭頂部に形成された部分は、上記のエッチングにより、発光波長に対して透明な膜厚範囲として、例えば428nm程度〜481nm程度の厚みに調節される。CaF2の発光波長1.3μmにおける屈折率は1.43程度である。
絶縁層7の絶縁材料としてAl23を用いる場合には、絶縁層7のp−i−n構造体10の頭頂部に形成された部分は、上記のエッチングにより、発光波長に対して透明な膜厚範囲として、350nm程度〜393nm程度の厚みに調節される。Al23の発光波長1.3μmにおける屈折率は1.75程度である。
絶縁層7の絶縁材料としてBaF2を用いる場合には、絶縁層7のp−i−n構造体10の頭頂部に形成された部分は、上記のエッチングにより、発光波長に対して透明な膜厚範囲として、254nm程度〜285nm程度の厚みに調節される。BaF2の発光波長1.3μmにおける屈折率は2.41程度である。
絶縁層7の絶縁材料としてMgF2を用いる場合には、絶縁層7のp−i−n構造体10の頭頂部に形成された部分は、上記のエッチングにより、発光波長に対して透明な膜厚範囲として、453nm程度〜510m程度の厚みに調節される。MgF2の発光波長1.3μmにおける屈折率は1.35程度である。
続いて、図3(a)に示すように、表面電極8を形成する。
詳細には、半導体基板1の表面側において、絶縁層7から露出するp−i−n構造体10の側面の一部を含む全面を覆うように、スパッタ法又は蒸着法等により、電極材料として例えば、金(Au)、Pt(白金)、チタン(Ti)を順次積層する。これにより、表面電極8が形成される。表面電極8は、p−i−n構造体10の頭頂部を絶縁層7を介して覆い、p−i−n構造体10の側面でシェル層6と電気的に接続される。
続いて、図3(b)に示すように、ITO透明導電膜9及び裏面電極11を形成する。
詳細には、先ず、半導体基板1の裏面にスパッタ法等によりITO透明導電膜9を形成する。
次に、ITO透明導電膜9上に、スパッタ法又は蒸着法等により、電極材料として例えば金(Au)を堆積する。堆積したAuをリソグラフィー及びドライエッチングにより所定の電極形状に加工する。以上により、裏面電極11が形成される。
しかる後、所定の後処理を経ることにより、本実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDが形成される。
本実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDでは、p−i−n構造体10の発光層5から発光した光は、薄いシェル層6、発光波長に対して透明な絶縁層7を透過して表面電極8の裏面で反射し、半導体基板1の裏面から高効率に取り出される。このLEDでは、高密度のLEDアレイを構成した場合でも、複数のLEDからのビームが重なることなく、所期の良好なビーム形状を得ることができる。
本実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの奏する技術的効果について、比較例との比較に基づいて説明するために実験を行った。その結果を図4に示す。実験では、シェル層の半導体ナノワイヤの頭頂部被覆厚(横軸(nm))とトンネル効果により生じる漏れ電流(縦軸(割合))との関係について調べた。比較例の半導体ナノワイヤ型のLEDは、本実施形態における、発光波長に対して透明な絶縁層を有しない構成である。その一部を図5に示す。図5では、半導体ナノワイヤ101と、その側面を覆う発光層102と、これを覆うシェル層103と、全面を覆う表面電極104とが示されている。
図4に示すように、比較例では、シェル層103の頭頂部被覆厚が10nm程度以下となると、漏れ電流が急激に上昇することが判る。即ち比較例においては、シェル層103の頭頂部被覆厚が10nm程度以下となると、半導体ナノワイヤ101の側面を取り囲む発光層102にキャリアが注入されずに、p−i−n構造体は、その頭頂部でトンネル効果により表面電極104と導通してしまう。
これに対して本実施形態では、p−i−n構造体10の頭頂部と表面電極8との間に絶縁層7が設けられており、縦方向からのキャリア注入のない構造であるため、図4に示すように、トンネル効果による漏れ電流は全く生じない。従って本実施形態では、漏れ電流の発生を懸念することなく、シェル層6の半導体ナノワイヤ4の頭頂部被覆厚を10nm以下の所期の厚みに形成することができる。これにより、ファセットにおける異常成長による半導体ナノワイヤ4の形状劣化及び異常成長時の欠陥発生が十分に抑止される。このように本実施形態によるLEDでは、シェル層6の半導体ナノワイヤ4の頭頂部被覆厚に依存することなく、優れた素子特性(ダイオード特性)を得ることができ、半導体基板1の裏面からの光の良好な取り出しが実現する。
以上説明したように、本実施形態によれば、優れた素子特性を有し、高効率に光を取り出すことができ、所期の良好なビーム形状を有する、高密度のアレイ形成に適した信頼性の高い半導体ナノワイヤ型のLEDが実現する。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDについて、その構造を製造方法と共に説明する。本実施形態では、p−i−n構造体が、その頭頂部にシェル層6を有しない構成とされる点で第1の実施形態と相違する。
図6は、第1の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。なお、第1の実施形態と同じ構成部材等については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
本実施形態では先ず、第1の実施形態と同様に、図1(a)〜図1(b)の諸工程を順次実行する。
続いて、図6(a)に示すように、発光層5及びシェル層21を形成する。
詳細には、先ず、半導体ナノワイヤ4の側面を覆うように、MOVPE法等により、例えば、i型のInP5a、i型のInAsP5b、及びi型のInP5cを順次積層する。これにより、量子井戸層である発光層5が形成される。
次に、半導体ナノワイヤ4の上面は露出した状態で、発光層5の側面のみを覆うように、p型の例えばInPを堆積する。これにより、シェル層21が形成される。
InPにおけるp型の不純物(ドーパント)としては、例えば亜鉛(Zn)を用い、その不純物濃度は、例えば5×1017〜2×1018/cm3程度であれば良い。InPの成長には、MOVPE法等を適用し、原料には例えばジエチル亜鉛(DEZ)を用いる。
半導体ナノワイヤ4、発光層5、及びシェル層21を備えて、p−i−n構造体20が形成される。
p型InPを発光層5の側面のみに形成し、半導体ナノワイヤ4の上面には形成されないようにシェル層21を形成するには、例えば以下の手法が好適である。
MOVPE法により、シェル層21のp型InPを成長する際に、成長温度を500℃程度以上の高温とし、V/III比を1000程度〜5000程度の高値に設定して、p型InPを成長する。
上記の手法に代わって、以下のようにシェル層21を形成しても良い。
先ず、第1の実施形態におけるシェル層6と同様に、半導体ナノワイヤ4及び発光層5の上面を含む全面を覆うようにp型InPを成長する。その後、リソグラフィー及びエッチングにより半導体ナノワイヤ4及び発光層5の上面部分のp型InPを除去する。以上により、シェル層21が形成される。
続いて、第1の実施形態と同様に、図2(a)〜図3(b)の諸工程を順次実行する。図3(b)に対応する状態を図6(b)に示す。
しかる後、所定の後処理を経ることにより、本実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDが形成される。
本実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDでは、p−i−n構造体20の発光層5から発光した光は、発光波長に対して透明な絶縁層7を透過して表面電極8の裏面で反射し、半導体基板1の裏面から高効率に取り出される。このLEDでは、高密度のLEDアレイを構成した場合でも、複数のLEDからのビームが重なることなく、所期の良好なビーム形状を得ることができる。
本実施形態では、p−i−n構造体20の頭頂部と表面電極8との間に絶縁層7が設けられており、縦方向からのキャリア注入のない構造であるため、トンネル効果による漏れ電流は全く生じない。そのため、漏れ電流の発生を懸念することなく、p−i−n構造体20の頭頂部にシェル層21を有しない構成とされている。これにより、ファセットにおける異常成長による半導体ナノワイヤ4の形状劣化及び異常成長時の欠陥発生が十分に抑止される。このように本実施形態によるLEDでは、優れた素子特性(ダイオード特性)を得ることができ、半導体基板1の裏面からの光の良好な取り出しが実現する。
以上説明したように、本実施形態によれば、優れた素子特性を有し、高効率に光を取り出すことができ、所期の良好なビーム形状を有する、高密度のアレイ形成に適した信頼性の高い半導体ナノワイヤ型のLEDが実現する。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDについて、その構造を製造方法と共に説明する。本実施形態では、発光波長に対して透明な絶縁層の厚みについて、更に工夫がなされている。
図7及び図8は、第3の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。なお、第1の実施形態と同じ構成部材等については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
本実施形態では先ず、第1の実施形態と同様に、図1(a)〜図1(b)の諸工程を順次実行する。
続いて、図7(a)に示すように、発光層31及びシェル層32を形成する。
詳細には、先ず、半導体ナノワイヤ4の側面を覆うように、MOVPE法等により、例えば、バリア層となるi型のInP31a、i型のIn0.53Ga0.47As31b(厚み20nm程度)、及びバリア層となるi型のInP31cを順次積層する。これにより、発光層31が形成される。発光層は、i型のIn0.53Ga0.47Asを挟むi型のInPを形成することなく、i型のIn0.53Ga0.47Asの単層としても良い。
次に、半導体ナノワイヤ4の上面は露出した状態で、発光層31の側面のみを覆うように、p型の例えばInPを堆積する。これにより、シェル層32が形成される。
InPにおけるp型の不純物(ドーパント)としては、例えば亜鉛(Zn)を用い、その不純物濃度は、例えば5×1017〜2×1018/cm3程度であれば良い。InPの成長には、MOVPE法等を適用し、原料には例えばジエチル亜鉛(DEZ)を用いる。
半導体ナノワイヤ4、発光層31、及びシェル層32を備えて、p−i−n構造体30が形成される。p−i−n構造体30における発光波長は1.65μm程度となる。
p型InPを発光層31の側面のみに形成し、半導体ナノワイヤ4の上面には形成されないようにシェル層32を形成するには、例えば以下の手法が好適である。
MOVPE法により、シェル層32のp型InPを成長する際に、成長温度を500℃程度以上の高温とし、V/III比を1000程度〜5000程度の高値に設定して、p型InPを成長する。
上記の手法に代わって、以下のようにシェル層32を形成しても良い。
先ず、第1の実施形態におけるシェル層6と同様に、半導体ナノワイヤ4及び発光層31の上面を含む全面を覆うようにp型InPを成長する。その後、リソグラフィー及びエッチングにより半導体ナノワイヤ4及び発光層31の上面部分のp型InPを除去する。以上により、シェル層32が形成される。
なお、シェル層32を形成する代わりに、第1の実施形態と同様に、p型InPが半導体ナノワイヤ4及び発光層31の上面から発光層31の側面に架けて覆う、シェル層6を形成するようにしても良い。
続いて、図7(b)に示すように、絶縁層33を形成する。
詳細には、p−i−n構造体30上を含む全面に、CVD法等により、発光波長に対して透明となる絶縁材料を堆積する。これにより、絶縁層33が形成される。この絶縁材料としては、SiO2,CaF2,Al23,BaF2,MgF2から選ばれた少なくとも1種、ここではSiO2を用いる。
続いて、図7(c)に示すように、レジスト12を形成する。
詳細には、全面にレジスト12を塗布し、レジスト12をリソグラフィーにより加工する。レジスト12には、絶縁層33の絶縁膜2上に形成された部分を覆い、絶縁層33のp−i−n構造体30上に形成された部分を露出する開口12aが形成される。
続いて、図8(a)に示すように、絶縁層33をエッチングする。
詳細には、レジスト12をマスクとして用い、絶縁層33の開口12aから露出する部分を、所定の薬液を用いてウェットエッチングする。これにより、絶縁層33のp−i−n構造体30の頭頂部に形成された部分が所期の厚みに調節されると共に、絶縁層33の開口12aから露出する部分が除去されてp−i−n構造体30の側面の一部が露出する。
レジスト12は、所定の薬液を用いたウェット処理又は酸素プラズマを用いたアッシング処理により、除去される。
絶縁層33のp−i−n構造体30の頭頂部に形成された部分は、上記のエッチングにより、発光波長に対して透明な膜厚範囲として、発光波長(ここでは1.65μm)の1/2光学波長を中心とした当該1/2光学波長の±6%以内の値とされる。即ち、発光波長をλ、屈折率をnとして、絶縁層33のp−i−n構造体30の頭頂部に形成された部分の厚みdは、d=[λ/2n]×(1±0.06)となる。具体的には、SiO2の発光波長λ=1.65μmにおける屈折率nは1.46であるため、厚みdの適正範囲は、[1650/(2×1.46)]×(1±0.06)により、531nm〜599nmとなる。
絶縁層33の厚みを発光波長の1/2光学波長とすれば、理論上、p−i−n構造体30の発光層31から発光した光の絶縁層33による反射が完全に抑止される。
ここで、絶縁層の厚みと光透過率との関係について調べた。その結果を図9に示す。絶縁層が屈折率1.46の石英からなる場合を例示する。図9では、横軸が絶縁層の厚みを発光波長の1/2光学波長を中心(0.00)としたズレ量の割合で示しており、縦軸が光透過率の変化割合(ΔT/T)で示している。図9に示すように、絶縁層の厚みが、発光波長の1/2光学波長を中心とした当該光学波長の±6%以内の値であれば、光透過率の変化割合が1%以内となることが判る。即ち、絶縁層33のp−i−n構造体30の頭頂部に形成された部分の厚みを、531nm程度〜599nm程度の範囲内の値とすることで、光透過率の変化割合が1%以内に抑えられる。これにより、理論上の理想的な1/2波長板とほぼ同等に、p−i−n構造体30の発光層31から発光した絶縁層33による光反射がほぼ完全に抑止される。
絶縁層33の絶縁材料としてCaF2を用いる場合には、絶縁層33のp−i−n構造体30の頭頂部に形成された部分の厚みdは、上記のエッチングにより、以下の適正範囲に調節される。CaF2の発光波長λ=1.65μmにおける屈折率nは1.40であるため、厚みdの適正範囲は、[1650/(2×1.40)]×(1±0.06)により、554nm程度〜624nm程度の範囲内の値となる。
絶縁層33の絶縁材料としてAl23を用いる場合には、絶縁層33のp−i−n構造体30の頭頂部に形成された部分の厚みdは、上記のエッチングにより、以下の適正範囲に調節される。Al23の発光波長λ=1.65μmにおける屈折率nは1.35であるため、厚みdの適正範囲は、[1650/(2×(1.35))]×(1±0.06)により、453nm程度〜510nm程度の範囲内の値となる。
絶縁層33の絶縁材料としてBaF2を用いる場合には、絶縁層33のp−i−n構造体30の頭頂部に形成された部分の厚みdは、上記のエッチングにより、以下の適正範囲に調節される。BaF2の発光波長λ=1.65μmにおける屈折率nは2.40であるため、厚みdの適正範囲は、[1650/(2×2.40)]×(1±0.06)により、255nm程度〜287nm程度の範囲内の値となる。
絶縁層33の絶縁材料としてMgF2を用いる場合には、絶縁層33のp−i−n構造体30の頭頂部に形成された部分の厚みdは、上記のエッチングにより、以下の適正範囲に調節される。MgF2の発光波長λ=1.65μmにおける屈折率nは1.33であるため、厚みdの適正範囲は、[1650/(2×1.33)]×(1±0.06)により、460nm程度〜518nm程度の範囲内の値となる。
続いて、第1の実施形態と同様に、図3(a)〜図3(b)の諸工程を順次実行する。図3(b)に対応する状態を図8(b)に示す。
しかる後、所定の後処理を経ることにより、本実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDが形成される。
本実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDでは、p−i−n構造体30の発光層31から発光した光は、その殆ど全てが発光波長に対して透明な絶縁層33を透過して表面電極8の裏面で反射し、半導体基板1の裏面から高効率に取り出される。このLEDでは、高密度のLEDアレイを構成した場合でも、複数のLEDからのビームが重なることなく、所期の良好なビーム形状を得ることができる。
本実施形態では、p−i−n構造体30の頭頂部と表面電極8との間に絶縁層33が設けられており、縦方向からのキャリア注入のない構造であるため、トンネル効果による漏れ電流は全く生じない。そのため、漏れ電流の発生を懸念することなく、例えばp−i−n構造体30の頭頂部にシェル層32を有しない構成とすることができる。これにより、ファセットにおける異常成長による半導体ナノワイヤ4の形状劣化及び異常成長時の欠陥発生が十分に抑止される。このように本実施形態によるLEDでは、優れた素子特性(ダイオード特性)を得ることができ、半導体基板1の裏面からの光の良好な取り出しが実現する。
以上説明したように、本実施形態によれば、優れた素子特性を有し、高効率に光を取り出すことができ、所期の良好なビーム形状を有する、高密度のアレイ形成に適した信頼性の高い半導体ナノワイヤ型のLEDが実現する。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDについて、その構造を製造方法と共に説明する。本実施形態では、p−i−n構造体の下方に回折格子型レンズが設けられている。
図10及び図11は、第4の実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。なお、第1及び第2の実施形態と同じ構成部材等については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
先ず、図10(a)に示すように、半導体基板1上に半導体多層膜41を形成する。
詳細には、半導体基板1上に、MOVPE法等により、n型InP層41a、n型InGaAsP層41b、及びn型InP層41cを順次積層する。これにより、3層構成の半導体多層膜41が形成される。
続いて、図10(b)に示すように、半導体多層膜41を格子状に加工する。
詳細には、リソグラフィー及びドライエッチングにより、半導体多層膜41のうちn型InGaAsP層41b及びn型InP層41cを格子状に加工する。
続いて、図10(c)に示すように、回折格子型レンズ43を形成する。
詳細には、格子状に加工されたn型InGaAsP層41b及びn型InP層41cを埋め込むように、MOVPE法等により、n型InP層41a上にn型InP層42を再成長する。以上により、n型InP内に格子状のn型InGaAsPを備えた回折格子型レンズ43が形成される。
なお、半導体基板1の代わりにSOI基板を用い、SOI基板のSiO2層を、上記のInGaAsP層と同様に格子状に加工し、その後、Siを再成長することにより、回折格子型レンズを形成するようにしても良い。この回折格子型レンズでは、より屈折率差が大きく強いレンズ効果を得ることができる。
続いて、第2の実施形態と同様に、図1(a),図1(b),図6(a),図2(a)〜図3(b)の諸工程を順次実行する。図3(b)に対応する状態を図11に示す。
しかる後、所定の後処理を経ることにより、本実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDが形成される。
本実施形態による半導体ナノワイヤ型のLEDでは、p−i−n構造体20の発光層5から発光した光は、発光波長に対して透明な絶縁層7を透過して表面電極8の裏面で反射し、半導体基板1の裏面から高効率に取り出される。しかも、p−i−n構造体20の下方に配された回折格子型レンズ43により、ビーム径の広がりが抑制される。このLEDでは、高密度のLEDアレイを構成した場合でも、複数のLEDからのビームが重なることなく、所期の良好なビーム形状を得ることができる。
本実施形態では、p−i−n構造体20の頭頂部と表面電極8との間に絶縁層7が設けられており、縦方向からのキャリア注入のない構造であるため、トンネル効果による漏れ電流は全く生じない。そのため、漏れ電流の発生を懸念することなく、p−i−n構造体20の頭頂部にシェル層21を有しない構成とされている。これにより、ファセットにおける異常成長による半導体ナノワイヤ4の形状劣化及び異常成長時の欠陥発生が十分に抑止される。このように本実施形態によるLEDでは、優れた素子特性(ダイオード特性)を得ることができ、半導体基板1の裏面からの光の良好な取り出しが実現する。
以上説明したように、本実施形態によれば、優れた素子特性を有し、高効率に光を取り出すことができ、所期の良好なビーム形状を有する、高密度のアレイ形成に適した信頼性の高い半導体ナノワイヤ型のLEDが実現する。
以下、光半導体素子及びその製造方法の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)第1導電型の半導体ナノワイヤと、
前記半導体ナノワイヤの側面を覆う発光層と、
前記発光層の少なくとも側面を覆う第2導電型のシェル層と
を有する構造体と、
前記構造体を覆う電極と
を備えており、
前記構造体と前記電極との間に、発光波長に対して透明な絶縁層が設けられたことを特徴とする光半導体素子。
(付記2)前記絶縁層は、その厚みが、発光波長の1/2光学波長を中心とした当該1/2光学波長の±6%以内の値であることを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
(付記3)前記シェル層は、前記構造体の頭頂部における厚みが10nm以下であることを特徴とする付記1又は2に記載の光半導体素子。
(付記4)前記絶縁層は、SiO2,CaF2,Al23,BaF2,MgF2から選ばれた少なくとも1種を材料として形成されることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記5)前記半導体ナノワイヤの下方に回折格子型レンズが設けられたことを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記6)第1導電型の半導体ナノワイヤと、前記半導体ナノワイヤの側面を覆う発光層と、前記発光層の少なくとも側面を覆う第2導電型のシェル層とを有する構造体を形成する工程と、
前記構造体上に、発光波長に対して透明な絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を介して前記構造体を覆うように電極を形成する工程と
を含むことを特徴とする光半導体素子の製造方法。
(付記7)前記絶縁層は、その厚みが、発光波長の1/2光学波長を中心とした当該1/2光学波長の±6%以内の値とされることを特徴とする付記6に記載の光半導体素子の製造方法。
(付記8)前記シェル層は、前記構造体の頭頂部における厚みが10nm以下とされることを特徴とする付記6又は7に記載の光半導体素子の製造方法。
(付記9)前記絶縁層は、SiO2,CaF2,Al23,BaF2,MgF2から選ばれた少なくとも1種を材料として形成されることを特徴とする付記6〜8のいずれか1項に記載の光半導体素子の製造方法。
(付記10)前記半導体ナノワイヤの下方に回折格子型レンズを形成する工程を更に含むことを特徴とする付記6〜9のいずれか1項に記載の光半導体素子の製造方法。
1 半導体基板
2 絶縁膜
2a,12a 開口
3 触媒
4,101 半導体ナノワイヤ
5,31,102 発光層
5a,5c,31a,31c InP
5b,31b InAsP
6,21,32,103 シェル層
7,33 絶縁層
8,104 表面電極
9 ITO透明導電膜
10,20,30 p−i−n構造体
11 裏面電極
12 レジスト
41 半導体多層膜
41a,41c,42 n型InP層
41b n型InGaAsP層
43 回折格子型レンズ

Claims (9)

  1. 第1導電型の半導体ナノワイヤと、
    前記半導体ナノワイヤの側面を覆う発光層と、
    前記発光層の少なくとも側面を覆う第2導電型のシェル層と
    を有する構造体と、
    前記構造体を覆う電極と
    を備えており、
    前記構造体と前記電極との間に、発光波長に対して透明な絶縁層が設けられており、
    前記シェル層は、前記構造体の上面を覆う第1の部分が前記構造体の側面を覆う第2の部分よりも薄く、前記第1の部分の厚みが10nm以下であることを特徴とする光半導体素子。
  2. 前記構造体と前記電極との間に、第2導電型のコンタクト層が設けられており、
    前記コンタクト層と前記電極との間に前記絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光半導体素子。
  3. 基板と、
    前記基板上に形成された回折格子型レンズと
    を更に含み、
    前記半導体ナノワイヤは、前記回折格子型レンズ上に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体素子。
  4. 前記絶縁層は、その厚みが、発光波長の1/2光学波長を中心とした当該1/2光学波長の±6%以内の値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
  5. 前記絶縁層は、SiO2,CaF2,Al23,BaF2,MgF2から選ばれた少なくとも1種を材料として形成されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の光半導体素子。
  6. 第1導電型の半導体ナノワイヤと、前記半導体ナノワイヤの側面を覆う発光層と、前記発光層の少なくとも側面を覆う第2導電型のシェル層とを有する構造体を形成する工程と、
    前記構造体上に、発光波長に対して透明な絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層を介して前記構造体を覆うように電極を形成する工程と
    を含み、
    前記シェル層は、前記構造体の上面を覆う第1の部分が前記構造体の側面を覆う第2の部分よりも薄く、前記第1の部分の厚みが10nm以下であることを特徴とする光半導体素子の製造方法。
  7. 前記構造体と前記電極との間に、第2導電型のコンタクト層を形成する工程を更に含み、
    前記コンタクト層と前記電極との間に前記絶縁層を設けることを特徴とする請求項に記載の光半導体素子の製造方法。
  8. 基板上に回折格子型レンズを形成する工程を更に含み、
    前記半導体ナノワイヤを前記回折格子型レンズ上に形成することを特徴とする請求項又はに記載の光半導体素子の製造方法。
  9. 前記絶縁層は、その厚みが、発光波長の1/2光学波長を中心とした当該1/2光学波長の±6%以内の値とされることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の光半導体素子の製造方法。
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