紫外線を解説した参考書である非特許文献1によれば、オゾンには、Chappuis帯(850nm〜440nm)、Huggins帯(360nm〜300nm)、Hartley帯(200〜320nm)と呼ばれる吸収帯がある。
1992年頃、オゾン濃度測定は従来の湿式法に代わり低圧水銀ランプが利用されるようになった。低圧水銀ランプは湿式法とは違い薬品を使用しないこと、メンテナンスが容易であること、測定感度が良いことからオゾン濃度測定に低圧水銀ランプの利用が増えていった。
低圧水銀ランプを使用するオゾン濃度測定は、特許文献1に示すように、真空放電を利用した低圧水銀ランプから発せられる単一波長254nmの紫外線を利用したものである。
紫外線吸収式オゾン濃度測定は、オゾンに吸収される前の波長の放射出力強度Iとオゾンに吸収された後の波長の放射出力強度Oを測定し、吸収された紫外線量を求め、ランベルト・ベールの法則から当該波長におけるオゾン濃度が判明する原理を利用している。
また、光吸収式で濃度を測定する場合、測定する試料は気相及び液相のいずれの場合においてもランベルト・ベールの法則の数式1で求められる。試料ガスを透過してきた波長の透過光の放射出力強度をO、試料ガスを透過してきた波長の入射光の放射出力強度をI、波長におけるオゾンの吸収係数をε(オゾンの吸収係数をεは各波長によってオゾンの吸収係数の値が決められている。)、試料ガスまたは試料水中のオゾン濃度をc、波長が試料ガスまたは試料水を透過する際の光路長をLとすると、数式1は下記のようになる。
しかしながら、オゾン計測に低圧水銀ランプを採用すると真空放電の放電ノイズが計測値の誤差として現れてくる為計測値には常にノイズの影響を除去する補正が不可欠である。また、低濃度におけるオゾン濃度測定の場合、低圧水銀ランプの出力を下げて計測した方が紫外線の減衰を感知しやすく精度良く計測できることが知られている。
低濃度オゾンの場合は光源が高出力だと紫外線はオゾンに吸収されず、光が減衰せずにそのままオゾンを通過してしまう。この事が、計測精度が悪くなる要因の一つでもある。一方、高濃度オゾンの場合に低出力だと、逆に光が全てオゾンに吸収されてしまう事になる。本発明は低濃度オゾン濃度測定に関するものであり、出力は微弱が適している。
しかし、微弱な出力まで下げると放電が起こらず、結局、水銀ランプでは、放電できる出力が必要であり、放電ノイズと切り離すことはできない。低圧水銀ランプは原理的に微弱出力に設定することができず出力をあげて計測しなければならず、その事も放電ノイズが常に計測誤差として表れ正しい計測ができない問題がある。
一方、特許文献2は、オゾン濃度を計測する光源として窒化物系深紫外線半導体発光素子を採用したオゾン濃度測定装置を提供している。このLEDから発せられた紫外線の強度は微弱である。
しかしながら、特許文献2の方法は、窒化物系深紫外線半導体発光素子を採用しているが、素子を点滅させるチョッパ発信駆動だけでは、LEDの時間経過とともに放射出力の強度の低下を防ぐ事は出来ず、微弱出力である故に、計測可能な出力の下限にすぐに到達してしまうという問題が生じた。その為、24時間稼働している工場や、無人島のオゾン計測にLEDを光源としたオゾン濃度計測器を採用する事が出来なかった。
特許文献3はS/N比を高くすることによって計測精度を上げられるため光チョッパを採用している。しかし、光源としてLEDを採用する方法は採られていない。LEDは高速スイッチング可能であることから、光源の明減周期を短くする(明減周波数を大きくする)観点においてすぐれているが、LEDは一般的にその出力が小さく(数十μW程度)、発生する光の強度が小さいため、特許文献3が提案する発明においては、LEDの微弱な出力が利用できないからと推測される。
上記問題を解決するために、発明者等は実験による試行錯誤を繰り返した。その結果、電子移動を滑らかにするための方策として、計測前に紫外線を出力する固体発光素子を高速に点滅させるチョッピング技術と、計測時には点灯したまま、矩形波状に出力を増減するチョッパ発信技術と、計測開始直前には、消灯による放熱後、一定電流を短時間流すなどの技術を採用し、それらの手順の最適組合せに注力した。また、ロックイン・アンプの原理を応用した計測ノイズの除去や、矩形波頂点での測定点の安定化を図るなど受光精度の向上に努めた。更に、時間経過と共に減衰する出力を一定に維持するために固体発光素子に印加する電流を微調整する工夫に思い至った。本発明の目的は、時間経過にともなう固体発光素子の放射出力強度の低下を制御し、微弱出力(μW/cm2)であっても、一定の出力を維持し、長時間、精度よく安定して計測できる駆動方法を有するオゾン濃度測定装置を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
本発明であるオゾン濃度測定装置は、200nm〜320nmの波長域を含む紫外線を発光する固体発光素子を光源とする。本装置は、固体発光素子に電流を印加して一定の紫外線放射出力値を得られる上限電流値と下限電流値の間を振幅させながらオゾン濃度を測定するチョッピング駆動計測手段と、直前のオゾン濃度測定において記録した紫外線放射出力値が変動した場合に、一定の紫外線放射出力値となるように上限電流値と前記下限電流値を補正する出力維持補正手段とを有することを特徴とする。
紫外線放射出力値は、紫外線の放射強度であるが、本発明では、放射紫外線を受光した強度センサに与える電圧値として捉える。固体発光素子に電流を印加すると紫外線が放射される。どの程度の電流を印加するとどの程度の紫外線が放射されるかは、固体発光素子の性能特性に基づく。また、放射強度の測定は、強度センサの性能特性や装置仕様に基づく。素子や装置類が理想状態にあるならば、固体発光素子に印加する電流値と受光強度センサが受ける電圧値は一定の相関値を示すが、実際の計測環境においては、差異が生ずる。また、固体発光素子は放射を続けると通常はその出力が低下する。装置類の老朽化や記載環境により、受光強度センサが受ける電圧値も変動する。この対策のために一定の計測環境下において、固体発光素子への印加電流に対する受光強度センサが受ける電圧値を基準値として設定しておき、計測毎に、受光強度センサが受ける電圧値の変動を捉え、固体発光素子への印加電流を調整しながら、固体発光素子の紫外線放射出力を一定に維持する制御が必要になる。この制御を実行する手段が本発明においては、出力維持補正手段になる。また、実施形態では、固体発光素子を「発光素子」と略して呼ぶ。
実際の計測環境では、固体発光素子への印加電流と受光強度センサが受ける電圧値には測定毎にブレが生ずる。前述したが、装置特性に加えて、オゾン等による紫外線の吸光作用が計測環境には存在するからである。本発明では、受光強度センサが受ける電圧値を固定にして、固体発光素子への印加電流の増減により、この調整を行なう。固体発光素子の出力低下に対してもこの選択が有利である。一定の受光強度センサが受ける電圧値に対して、固体発光素子への印加電流は幅があり、その上限電流値と下限電流値を計測電流の閾値とした。一定の受光強度センサが受ける電圧値が、前記した一定の紫外線放射出力値である。
一定の紫外線放射出力値は1個であるが、その値は近似値であってもよい。または、その範囲をある程度の幅を持たせることも可能である。一定の紫外線放射出力値に幅があると、当然、固体発光素子への印加電流値も広くなる。極端な場合には、測定可能な限界値まで広げてもよいが、補正の効果が薄れてくることに注意が必要である。
固体発光素子の出力低下を抑制することが、本発明の課題である。実験と試行錯誤を通じて、発明者等は固体発光素子への印加電流を上限電流値と下限電流値の間で周期的に振幅させると固体発光素子の出力低下を抑制できることを見出した。この駆動方法は、チョッピングとも言われるが、一般のチョッピングは、点滅であり、本発明は点灯を維持した点が異なる。これが、本発明におけるチョッピング駆動計測手段である。なお、実施形態においては、「点灯式振幅計測」を使用している。
本発明のチョッピング駆動計測手段は、固体発光素子からの紫外線を消灯せずに、上限電流値を上方頂点、下限電流値を下方頂点とする矩形波状に放射させ、上方頂点と前記下方頂点を測定点とすることを特徴とする。
周期振幅を矩形波にすると矩形波の上方頂点と下方頂点は時間的に伸びているので、測定点の把握が楽になる利点がある。
紫外線放射出力値は、オゾンゼロ状態の測定セルに固体発光素子から放射した紫外線を受光したときの強度センサから得た電圧値である。
本発明においては、1個の強度センサで受光強度を検知している。固体発光素子の放射強度は、紫外線が吸光されなければ、強度センサが受けた強度とみなすことができる。この原理に基づいて、本オゾン濃度測定装置は、測定セル内を真空ポンプでゼロガス状態にして紫外線を照射した時の強度センサの値を検知する。測定セルに試料ガスを充填させ、固体発光素子の放射強度を変えずに放射すると紫外線がオゾンに吸光される。このとき使用した強度センサはゼロガス状態で計測したものと同一であるため、ランベルト・ベールの法則からオゾン濃度が計算できる。強度センサから得る値は電圧値である。本発明の実施形態における紫外線放射出力値の呼び名は「ゼロガス基準値」であり、オゾン計測によって得たゼロガス基準値を「当該ゼロガス基準値」、一定の紫外線放射出力値として、固体発光素子に印加する電流補正の指標となるゼロガス基準値を「確定ゼロガス基準値」と呼ぶ。
出力維持補正手段において、上限電流値と下限電流値を補正する補正電流値は、紫外線放射出力値の変動値に応じて予め用意されたリストから抽出する。
前述したように、固体発光素子の放射出力は使用を通じて、低下する傾向にある。これを補うために固体発光素子への印加電流を補正する。この補正電流値は、使用する固体発光素子と強度センサの性能特性及び装置特性による。このため、紫外線放射出力値の変動値に応じて、予め実験等で得た補正電流値をリスト化し、マイクロコンピュータの内蔵メモリ等に記録し、これを利用することが実用的である。ただし、計測環境や装置特性から、このリスト適性が劣化してくるので、マイクロコンピュータ制御の下、測定データを使用して自動的に更新していくことが望ましい。なお、本実施形態においては、上限電流値を「最大点灯電流値」、下限電流値を「最小点灯電流値」と呼ぶ。
出力維持補正手段において、前回紫外線放射出力値の増減状態に応じて補正電流値を加減し、連続計測の1回毎に一定の紫外線放射出力値に近づける。
この方法は、前回の計測で得た紫外線放射出力値の変動に対して、リストから補正電流値を参照するのではなく、マイクロコンピュータが差異に応じて、補正電流値の妥当値を計算等の処理によって決定するものである。計測は連続して行なうので、前回の補正電流値が高ければ今回は低くし、計測を繰り返すことにより、次第に一定の紫外線放射出力値に近づけていく方法である。補正電流値を取得するため、予め用意されたリストを利用してもよいが、リストの補正電流値に誤差が出た場合の修正機能になる。また、リストの無い装置であっても、この機能により補正が可能になる。また、計測環境がリストのデータに適合しない場合や、装置劣化により、リストが利用不全になったり、製造上の違いにより、固体発光素子と強度センサの性能特性がかけ離れた状況であったりした場合に便利である。
チョッピング駆動計測手段の実行に先立ち、このチョッピング駆動計測手段の実行時間より短い時間の間、固体発光素子を消灯し、その後、この消灯時間より短い時間の間、上限電流値と下限電流値の中間の電流値を印加して固体発光素子をアイドリング駆動させる。
消灯は出力低下の原因となる熱を固体発光素子から放熱させる効果がある。また、チョッピング駆動する直前に、上限電流値と下限電流値の中間となる一定の電流値を印加することは、固体発光素子の電子状態を安定にする効果がある。これが、アイドリング駆動に相当する。消灯と定電流の適切な時間の長さは実験結果から得た。なお、これらの時間は装置環境に依存する。本実施形態では、このアイドリング駆動を「定電流駆動」と呼ぶ。
出力維持補正手段の実行の後、固体発光素子からの紫外線が、補正された上限電流値と電流値ゼロ値の間を周期的に振幅して放射される上限振幅エージング駆動と、次いで補正された下限電流値と電流値ゼロ値の間を周期的に振幅して放射される下限振幅エージング駆動とを実行する。
出力維持補正手段を実行すると、固体発光素子に印加する電流値が補正される。オゾン測定に使用する電流値が異なるため、固体発光素子の電子状態を再度調整し、安定にするためにエージングを行なう。
本発明は、微弱出力(μW/cm2)であっても、放射出力強度の低下に対して素子に印加する電流値を補正することにより、常に一定の放射出力強度が得られる効果を奏する。
本発明は、計測前にエージングを実行して固体発光素子の電子状態を活性化させると共に、計測時には、点灯を連続させる矩形波状チョッパ発信により固体発光素子内部の電子が励起状態を繰り返しかつ電子移動も滑らかになるため、時間経過により一方的に出力が減衰する状態を阻止する効果を奏する。
本発明は、前述した素子への印加電流値の補正による出力一定化と矩形波状チョッパ発信により、固体発光素子を光源として採用したオゾン濃度計測では出来なかった連続計測(24時間連続計測)が可能である。
本発明は、微弱出力(μW/cm2)でありながら、矩形波チョッパ駆動を採用しているので、矩形波頂点での測定点が容易に掴め、かつ計測データのサンプル数を増やすことができるため、精度の高い、安定した計測が可能である。
本発明は、Hartley帯(200〜320nm)の紫外線を利用した紫外線吸収式オゾン濃度測定に関するものである。本発明においては、受光強度を検知する1個の強度センサ103が、紫外線がオゾンに吸光される前の発光強度(数式1に表されたランベルト・ベールの法則における入射光の放射出力強度(I))とオゾンに吸光された紫外線強度(同様に透過光の放射出力強度(O))の両方を検知する。入射光の放射出力強度(I)は、測定セル105内をゼロガス状態にして紫外線を照射した時の強度センサ103の検知する電圧値がオゾンの影響を受けていない入射光の放射出力強度とみなされ、マイクロコンピュータ114に入力される。これがオゾンゼロ基準値の設定処理である。オゾンゼロ基準値はオゾンによる吸光のない放射出力強度であるため、常に一定の強度を示すことが望ましい。しかし、発光素子201は使用を継続すると時間と共に出力がばらつくので(通常は低下傾向)、オゾンゼロ基準値に基づいて発光素子201に印加する電流値を加減してこの強度を一定にする。
発光素子201を点灯させた後、時間経過に従って素子の発光出力が低下するのは、素子内部の電子の移動が滑らかでないために抵抗が起き、発熱することが原因である。本発明では、発光素子201の駆動方法について様々な実験を行なった。その結果、発光素子201に加える電流を周期的に振幅させると一定範囲内の出力を持続させることができることがわかった。この駆動方法に更に実験と工夫を加え、本発明の出力安定化手段として採用した。この出力安定化手段は、マイクロコンピュータ114の指令により、発光素子機構118が発光素子201の駆動を制御することにより実現する。
本発明では発光素子201の駆動に極力微弱な電流を使用し、低濃度のオゾンを計測することを特徴としている。ただし、前述したように微弱な電流を使用する場合には、放射強度が弱いため、照射した紫外線がオゾンに全吸収されるようなオゾン濃度環境では計測できない。従って、本発明のオゾン濃度計測装置は、計測対象のオゾン濃度の範囲が定められていることが前提である。更に、発光素子201の能力、受光する強度センサ103の感度等の利用機器の性能に応じて計測能力の限度が定まる。発光素子201は発光を継続すると通常は徐々に放射出力が変化する(通常は低下)。放射出力を復帰させるために発光素子201に印加する電流の強度を調整する必要がある。前述した出力安定化手段は、一定の放射出力を維持させるための放射出力調整手段とも言える。調整ができるためには機器の性能を目一杯使用するのではなく、余裕のある範囲で使用されねばならない。このように一定の放射出力は、発光素子201に印加する一定の電流から得られるとは限らず、電流の強さに幅がある。即ち、一定の放射出力値を維持する電流の幅が計測電流の閾値になる。本発明では閾値の上限を最大点灯電流値309、下限を最小点灯電流値310と呼ぶ。また、その中間値を基準駆動電流値311と呼ぶ。前述のように、これらの値は、計測機器環境に基づくため、本発明においては、実験を通じてその値を定めた。実際は、実施例を参照されたい。
出力安定化手段は、主要な機能として点滅式短周期振幅駆動(最大)301と点滅式短周期振幅駆動(最小)302という2タイプのエージング駆動と、吸光度を測定する点灯式振幅計測304があり、発光素子機構118の制御により動作する。点滅式短周期振幅駆動(最大)301は、最大点灯電流値309と電流ゼロ(消灯)の間を一定周期(正弦波状)で点滅させるエージング機能である。一方、点滅式短周期振幅駆動(最小)302は、最小点灯電流値310と電流ゼロ(消灯)の間を一定周期(正弦波状)で点滅させるエージング機能である。点灯式振幅計測304は、点灯状態を保ちつつ、計測電流の閾値間(最大点灯電流値309と最小点灯電流値310の間)を矩形波状にチョッピングサイクルを高速に繰り返し、最大電流時と最小電流時の両方の状態から紫外線の吸光計測値を得る機能である。また、点灯式振幅計測304を実行する前に、ゼロガス計測、試料ガス計測共、消灯(1)306と定電流駆動(2)307が先行して実行される。消灯(1)306は、発光素子201の電子状態を静めて放熱させる役割がある。定電流駆動(2)307は、消灯の電流ゼロ状態から発光素子201に電流を印加し、基準駆動電流値311に到達したら電流値を一定にする役割がある。消灯と基準駆動電流値311の一定電流の組合せも出力の安定化を補助的に助ける機能であり、出力安定化手段の一部であり、発光素子機構118が制御する。
また、本発明ではゼロガス計測によりオゾン吸光作用のない放射出力値を得て、次いで試料ガス計測によりオゾン吸光作用を受けた放射出力値を得て、この2つの放射出力値をランベルト・ベールの法則に基づきオゾン濃度を計算している。このゼロガス計測と試料ガス計測の2連の計測を繰り返し、濃度データのリストが得られる。計測は長時間を必要とするが、計測中の発光素子201の出力は変動し、この変動を抑止しなければならない。出力変動に対しては発光素子201に印加する電流量を調整してその出力を維持することができる。本発明はゼロガス計測時に得たゼロガス基準値(吸光の無い受光時の強度センサ103の電圧値)を出力維持の基準値に利用している。即ち、出力安定化手段の処理機能として、組み込んである。計測の初回に得たゼロガス基準値を確定値として記録しておき、計測サイクル毎に当該ゼロガス基準値と比較し、確定しているゼロガス基準値に復帰するように、駆動電流値を調整する。このために「発光素子201の放射強度を調整する印加電流量」を計測装置の性能特性に応じた実験を厳密に行い取得した。低下した出力(通常は低下する)を確定ゼロガス基準値に基づき補正する。この補正は前述した計測電流の閾値と基準駆動電流値311にも及ぶ。このようにして、最大点灯電流値309と最小点灯電流値310も補正され、僅かに発生した素子の出力低下も一定の値に戻すことができ、発光素子201は長時間安定した放射出力強度を維持することができる。以上説明した「ゼロガス基準値による出力調整機能」は出力安定化手段の中核機能であり、マイクロコンピュータ114の制御により実現する。
図7は本発明の出力安定化手段を構成する各種駆動を組合せ実行させることによってオゾン測定を実施する一例を表したフローチャートである。図7について順次説明する。
S701は実行初期値の取り出し処理である。オゾン濃度測定に当たり、計測環境に基づく初期値及び設定値をマイクロコンピュータ114の不揮発記憶部(図示せず)から取り出し、揮発記憶部(図示せず)のワークエリアに展開する。これらには、オゾン濃度を計測する測定時間(例えば1時間)、ゼロガス基準値設定の繰り返し回数(例えば10回)と試料ガス計測の繰り返し回数(例えば10回)である計測サイクル回数、当該計測機器の能力から予め指定された測定可能閾値(最大点灯電流値309(例えば9.1mA)と最小点灯電流値310(例えば8.9mA))及び基準駆動電流値311(例えば9.0mA)、真空ポンプ作動時間(例えば15秒)等を設定する。その他、点滅式短周期振幅駆動(最大)301と点滅式短周期振幅駆動(最小)302によるエージングを行なう時の繰り返し回数(正弦波の周波数)とその実行時間や、消灯(1)306,消灯(2)308や定電流駆動(1)305,定電流駆動(2)307の実行時間、点灯式振幅計測304における繰り返し回数(矩形波の周波数)とその実行時間もマイクロコンピュータ114の不揮発記憶部に装置固有の稼動値として予め設定しておいてもよい。
計測サイクルが初回かをチェックする(S702)。初回であれば、まだ、オゾンゼロ基準値も入手できておらず、前の計測結果と比較し、調整する必要はない。発光素子201の基準駆動電流値311等、予め決められた値により発光素子201を駆動させればよい。それらの処理を実行せず、S704にいく。
S703は、ゼロガス基準値による出力調整機能であり、出力安定化手段の中核機能である。前回の計測で取得した当該ガスゼロ基準値を確定ガスゼロ基準値と比較し、発光素子201の出力変動(低下)を元の放射出力に補正する処理である。この補正は、低下した程度に応じて、201に印加する基準駆動電流を変更することにより実現する。通常は低下した出力に対して基準駆動電流を増加するがその量は前述したように装置性能特性に依存する。その値は、実験値から予め取得する。ただし、一定量を増加し、次回の計測の結果により、基準駆動電流値311を増減する方法でもかまわない。電流の増減に従い、計測電流の閾値(最大・最小電流値)も補正される。これらの補正された基準駆動電流値311と閾値はワークエリアに更新し格納する。なお、本処理では確定ガスゼロ基準値は初回計測による取得した値でありその後の比較基準値として固定されるが、場合により、何度目かのテスト計測後に確定してもよい。また、初回計測では、基準駆動電流値311等の変動要素は装置性能特性により予め指定されており、S710の処理にてワークエリアに格納されている。従って、基準駆動電流値311等の更新処理は無い。
指定された時間、真空ポンプ107を作動させ、測定セル105内をゼロガス状態にする(S704)。
S705においてエージング駆動を実行する。エージングは素子をゆさぶり、電子の流れを安定させる効果がある。本発明においては、一定の放射出力値を維持する計測電流の閾値の上限である最大点灯電流値309と下限である最小点灯電流値310それぞれについて電流0の状態との間でチョッピングを実行する。まず、発光素子201に対して、最大点灯電流値309を上方の頂点、電流0値(消灯)を下方の頂点として振幅を周期的に繰り返す正弦波状に電流を印加する。発光素子201は計測電流の閾値の上限の電流による発光と消灯が繰り返され、素子の電子状態がゆさぶられる。この実行時間や周波数はS701で初期設定された値を使用する。正弦波の代わりに矩形波(擬似正弦波)を使用してもよい。この駆動を点滅式短周期振幅駆動(最大)301と呼ぶ。
この最大電流のエージングが終了したら、点滅式短周期振幅駆動(最小)302と呼ぶエージングを実行する。閾値の下限値と電流0を頂点とする以外、その動作仕様は同じである。
図9は点滅式短周期振幅駆動(最大)の模式図である。最大点灯電流値(最大点灯)と消灯を繰り返し、光強度を振幅させる状態を模式的に示している。点滅式短周期振幅駆動(最大)は素子に印加する電流値を0mA(LED消灯)と最大点灯電流値(LED最大点灯)を短周期で繰り返し振幅させ素子に負荷を加える事で素子に流れる電流を安定させる事を目的としている。
図10は点滅式短周期振幅駆動(最小)の模式図である。点滅式短周期振幅駆動(最小)は素子を消灯と最小点灯電流値(LED最小点灯)を行い、目的は、前述した点滅式短周期振幅駆動(最大)と同じで素子に負荷を加える事で素子に流れる電流を安定させる事を目的としている。
図7に戻る。S706からS711は、ゼロガス基準値を決定するステップであり、ゼロガス計測の手段を形成する。S701の初期処理で指定された回数を繰り返す。取得されたゼロガス基準値複数から1個のゼロガス基準値を確定する。確定の方法は、平均値でもよいし、標準偏差を適用してもよい。また、特定回の値や最も多い値を選択してもよい。
ゼロガス計測を行なう前に、発光素子201を消灯(1)306して素子の電子状態を静めて放熱を行なう。出力の安定化を補助的に助ける機能である。消灯する時間はS701の指定時間による(S707)。
消灯の電流ゼロの静まった電子状態から発光素子201に電流を印加していく。基準駆動電流値311に到達したら電流値を一定に持続させる。これが定電流駆動(2)307であり、出力の安定化を補助的に助ける機能である。持続時間はS701の指定時間による(S708)。
S709は、オゾンゼロの状態になった測定セル105に紫外線照射の受光強度を電圧値として取得するステップである。点灯式振幅計測304の計測方法が取られる。点灯式振幅計測304は、点灯状態を保ちつつ、計測電流の閾値間(最大点灯電流値309と最小点灯電流値310の間)を矩形波状にチョッピングサイクルを高速に繰り返し、閾値の上限と下限の時に紫外線の吸光計測値を得る。この値は記録される。このステップにおける計測時間と周波数は
S701にて指定される。
図5に点灯式振幅計測304における発光の矩形波の模式図を載せた。発光素子201に最大点灯電流値309を上方の頂点、最小点灯電流値310を下方の頂点として一定時間、矩形波状に電流を印加する。消灯せず、点灯を続けたままチョッピングする特徴を持つ。従来の機械的方法の回転ディスク式では出来なかった点灯させながらのチョッパ発信である。光を点灯させているので、光強度の立ち上がりが滑らかになり、強度が安定する事ができ、特に微小オゾン計測の場合の、ゼロガス状態と試料ガス状態の電圧値の差が僅かな場合でも、最小点灯電流値310が微小変化を感知することができる。
図7に戻る。測定データはマイクロコンピュータ114制御下にある記録装置(図示せず)に記録される。測定データはそのまま解析処理に持ち込んでもよい。また、有意なデータを選別し、測定値としてあげてもよい(S710)。
S712は、計測が正常にできたかを判定するステップである。オゾンゼロにするための処理なので、一定時間が経過すれば、測定値はほぼ同一の値を示すはずである。従って、測定データのばらつきが激しい場合、一定値が継続しない場合などが異常とみなすことができる。異常が発生した場合には計測を停止し、異常終了を告げる(S713)。
正常にゼロガス計測が終了したら、統計的手法等を利用して、適切な測定値を選別する。この値が当該ゼロガス基準値である。この値は、次の計測で発光素子201の出力補正(S703)で使用するため、ワークエリアに格納保存する(S714)。
当該ゼロガス計測が初回であったか判定する。初回であれば、確定ゼロガス基準値の設定が必要である(S715)。初回の場合にはS710へいく。
初回計測なので、当該ゼロガス基準値は、確定ゼロガス基準値になる。当該ゼロガス基準値を確定ゼロガス基準値としてワークエリアに格納保存する(S716)。
真空ポンプ107を駆動させたままで、電磁弁106を開け試料ガス入口側108から試料ガスを測定セル105内に流入させる。測定セル105内をゼロガス状態から試料ガス状態になる切り替え時間は初期設定で指定される(S717)。
S718からS723は、オゾン濃度測定のための試料ガスの受光強度を計測するステップであり、試料ガス計測の手段を形成する。S701の初期処理で指定された回数を繰り返し、取得された試料ガス測定値複数が記録される。1個の測定値を確定する場合には、平均値でもよいし、標準偏差を適用してもよい。また、特定回の値や最も多い値を選択してもよい。取得データ及び測定されたオゾン濃度については、本発明であるオゾン濃度測定装置の利用分野の意図に任される。また、試料ガス計測を行なう前に、S719の消灯、S720の定電流駆動、S721の点灯式振幅計測304及びS722の処理はゼロガス計測のステップと同様の仕様になる。
S724は、計測が正常にできたかを判定するステップである。試料ガスであってもほぼ同一の測定値を示すはずである。従って、測定データのばらつきが激しい場合、一定値が継続しない場合などが異常とみなすことができる。ただし、オゾンゼロ値と同じ値になった場合は、実際にオゾンゼロである可能性もあるので異常とはしない。また、オゾン濃度が高すぎて全紫外線が吸光された場合も異常と判定する。また、計測電流の閾値の下限値における最小点灯電流値310のデータに異常な値のデータが多数あった場合もオゾン濃度が低すぎるか、閾値設定がうまくいかないシステム障害とみなすことができ、異常と判断する。異常が発生した場合には計測を停止し、異常終了を告げる(S725)。
S726は、計測サイクルの終了を判断している。計測時間が終了になっていない場合には、再度計測を行なう(S727)。
本発明は、発光素子201から発する紫外線の向き調整を行う事に特徴があり、発光素子201の時間経過にともなう放射出力強度の低下を間接的ではあるが抑えることができる。
発光素子201の組み立ては、素子を点灯させ紫外線の照射の向きを確認しながら素子の組み立てを行っていない。その為、機械的精度のみの組み立ては、紫外線の照射の向きを制御できず、装置に照射されて劣化に影響していた。
発光素子201の紫外線の向きを制御する為にLEDメーカーは、素子にレンズを取り付けて販売しており、カタログには平行光(±6度)、分散光等の紫外線が一定の精度で照射できる事が出来る記載があり、レンズを取り付けることで、紫外線の向きが制御され販売されている。
しかし、僅かな光の向きのズレまでは制御されておらず、照射される紫外線は、例えば、平行レンズを使用した場合には中心部と外周部の放射出力強度の違いとして現れてくる。また、光が平行レンズに対して直角に入射されず、入射角のずれは、平行レンズの性能が発揮されず、光が平行光に変換されず、レンズを通過した光がズレた状態では、測定セルにすべての光が入らず漏れた光が装置に照射されてしまう。
その結果、光の向きズレが原因で強度センサに紫外線が照射されずに放射出力強度の減少として現れ、発光素子201に印加する電流値を上げる事になっていた。
結果として、本来、発光素子201に印加する必要がない電流値を増加させる事となり、素子ダメージに繋がり、素子の性能が悪化し、時間経過とともに放射出力強度が低下していく事に間接的に繋がっていた。
本発明によれば、発光素子201から発する光が光学フィルタで単一波長の紫外線となった後、紫外線の向きを左右方向、上下方向に調整する事に特徴がある。
本発明は、左右方向、上下方向、前後方向の指向性調整治具で紫外線の向きを調整する方法であるが、市販されている手動のステージガイドを用いて傾斜方向、回転方向、多軸方向、直動方向を組み合わせて光の向きを調整してもよい。微調整の方法は、一般的にはマイクロメーターヘッド付きを用いるが、ファインピッチスクリュー付きでも構わない。
また、市販されているカタログに記載された平行レンズの設計上のフォーカスピント距離(焦点距離)は採用せずにフォーカスをずらす(LEDと平行レンズを近づける方向にフォーカスをずらす。)事を採用している。紫外線は、完全な平行光にならず、僅かに紫外線が広がる事を利用している。
フォーカスのずらし方法は、光の分散となり、強度センサへ照射される光の一点集中を避けることができ強度センサの劣化を防止する事ができる。結果として発光素子201から発する紫外線の時間経過に伴う放射出力強度の低下を抑える効果がある。
エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社から市販されている、合成石英製平凸レンズ(PCX)焦点距離40mm(型番48818−L)を使用する場合、実験の結果から、焦点距離は26mmにセットするのが適している。
図1は発光素子ボックス101の発光素子201を用いた出力安定化手段による紫外線吸収式オゾン濃度計1の構成図である。図1を利用して構成図の概略を説明する。始めにオゾンゼロ基準値設定を行う。オゾンゼロ基準値設定は市販されているゼロガス生成器で可能である。オゾンガスを触媒(パラジウム触媒、活性炭等)、吸着剤で除去することでオゾンゼロの状態を作りですことができる。本発明は真空ポンプ式を採用している。発光素子ボックス101の発光素子201を消灯し、光が照射されない状態にする。電磁弁106を閉じて試料ガスが測定セル105に流入しないようにする。真空ポンプ107を作動させ測定セル105内に滞留する酸素、オゾン、大気中に含まれるガス、微小水分、微小物等を排ガス出口111から排気して真空状態をつくる。測定セル105内を真空にする事でオゾン濃度の測定環境(温度、湿度)による平行レンズ110、強度センサ103の性能をイニシャライズする目的もある。強度センサ103は紫外線センサデバイスである。強度センサ103に光が照射されていない時の強度センサ103の電圧値は増幅器104を通り、インターフェイス113を介してマイクロコンピュータ114にこの電圧値がゼロ値として入力される。
測定セル105内の排気が終わり真空状態になったならば、真空ポンプ107を作動させたままで測定セル105内に前述の出力安定化手段により発光素子ボックス101の発光素子201を駆動させる。点灯式振幅計測(S709)で計測を行う。光は照射方向112で進み、連続波長の紫外線は紫外線拘束管機構117(不活性ガス充填 真空でも可)内で収束されながら進み照射スポット径が小さくなり光学フィルタ202に照射される。光学フィルタ202で連続波長は単一波長に絞られ、発光素子ボックス101内(ガス充填、真空でも可)を進み、平行レンズ取り付機構102に取り付けられた平行レンズ110を通り、測定セル105に入射する。測定セル105内は真空状態なので平行光になった単一波長はオゾンに吸収されず放射出力強度は減衰しない。強度センサ103で放射出力強度を測定する。強度センサ103で測定された値は電圧値として出力され、入射光の放射出力強度をIとなる。この電圧値はマイクロコンピュータ114に入力される。I=入射光の放射出力強度(オゾンゼロ基準値)となりオゾンゼロ基準値設定が完了する。
オゾンゼロ基準値設定後、試料ガスの測定を行う。真空ポンプ107を作動させたままで電磁弁106を開け試料ガス入口側108から試料ガスを測定セル105内に流入させる。流量計109に取り付けてあるバルブを調整して測定セル105内に流入する試料ガス流量を最小限に調整する事で測定セル105内は真空に保つ事ができる。試料ガスが測定セル105に試料ガスが流入した状態で出力安定化手段により発光素子201を駆動させ点灯式振幅計測(S721)を行う。光は試料ガスに含まれているオゾンに吸収され減衰した光は強度センサ103に入射され、透過光の放射出力強度となる。強度センサ103で測定された値は電圧値として出力される。透過光の放射出力強度はOとして、この電圧値はマイクロコンピュータ114に入力される。O=透過光の放射出力強度とする。
入射光の放射出力強度(オゾンゼロ基準値)I、透過光の放射出力強度をOがマイクロコンピュータ114に入力されると、マイクロコンピュータ114は、ランベルト・ベールの法則、数式1から計算してオゾン濃度を算出する。マイクロコンピュータ114で計算された値は表示器115に表示される。例えば、表示する値は、最大値、最小値、平均値、標準偏差等マイクロコンピュータ114が処理して表示器115に表示する。
図2は調整機構取り付ベース203に取り付けられた発光素子201、紫外線拘束管機構212に取り付けられた光学フィルタ202(単一波長取り出しフィルタ)の指向性調整機構200の構成図である。発光素子201から200〜320nmの連続波長が照射され紫外線拘束管機構212を通り光学フィルタ202(単一波長取り出しフィルタ)により単一波長に絞られる。発光素子201と光学フィルタ202の間の紫外線拘束管機構212は円筒形に加工され、発光素子201から発する紫外線119の向きを所定の範囲内に抑えて光学フィルタ202に照射される。紫外線拘束管機構117(材質 金属、ガラス、セラミックス)に不活性ガス(真空状態でも可)を充填する事で放射された連続波長による活性酸素Oが発生しないので発光素子201表面、光学フィルタ202表面に酸化物膜が形成される事を防ぐ事もできる。光学フィルタ202を通過した紫外線119は、平行レンズ110の中心部に照射されるように指向性調整機構200で、紫外線119を紫外線上下調整方向208で光の上下の向き、紫外線左右調整方向209で光の左右の向きを微調整する事を可能にしている。紫外線上下調整方向208は、上下調整ガイド206に取り付けられた上下回転ピン207で調整を行い、上下固定ピン211で固定される。紫外線左右調整方向209は、固定台205に取り付けられた左右回転ピン204で調整をおこない、左右固定ピン210で固定される。発光素子ボックス101には、フォーカス調整ガイド116が固定台となり、紫外線を平行レンズ110に対して紫外線前後調整方向121をカタログ掲載値のフォーカス値よりフォーカス調整溝119でフォーカス値のずらしを行う。指向性調整機構200を所定の位置にセットさせフォーカス固定ネジ120でフォーカス調整ガイド116に固定させる。フォーカス値のずらしは、紫外線のピントのズレとなり、測定セル内へ万遍無く光を分散させオゾンに紫外線を吸収させて計測する事ができ、平行レンズ110、測定セル105、強度センサへの紫外線の一点集中がなくなり機器の劣化が防止できる。
また、光学フィルタ202は214nm〜296.5nm(0.5nmスパン)の単一波長を取り出すことが出来る。なお、発光素子ボックス101全体に不活性ガス(真空状態でも可)を充填させ、紫外線拘束管機構117に入り込ませた方法は、活性酸素Oが発生しない事で装置のダメージがなくなる。また、発光素子機構118の洗浄不具合、異物混入を防止する為に、発光素子機構118は、発光素子ボックス101の外部設置とすることで、発光素子ボックス101内、紫外線拘束管機構212内を安定して真空度を保つ事ができる。
本発明の出力安定化手段の一例を下記に示す。発光素子201が発する紫外線のうち計測値に誤差を与え、再オゾン化を発生させる、オゾンの吸収波長(255nm)を外し、Hartley帯(200〜320nmの中心値近傍)の中心値近傍の紫外線である、265nmを採用した。
図3は、本発明の出力安定化手段の一例である。点滅式短周期振幅駆動(最大)301→点滅式短周期振幅駆動(最小)302→定電流駆動(1)305→ロックイン駆動303→消灯(1)306→定電流駆動(2)307→点灯式振幅計測304→消灯(2)308で発光素子機構118の200〜320nmの連続波長を発する発光素子201を駆動させた時の、強度センサ103の値を縦軸に電圧値として表したオシロスコープの画面である。発光素子201は265nmをピーク波長とする連続波長を発している。上段、下段のグラフの縦軸は、強度センサ103の電圧値を表していて「2V/スパン」であり、下段のグラフは上段のグラフのロックイン駆動303、点灯式振幅計測304等を拡大したものである。上段の横軸時間は、「100mS/スパン」で、下段の横軸時間は、「5mS/スパン」である。例えば、下段の定電流駆動1305→ロックイン駆動303の合計時間は、15mSになる。
本発明の一例として、出力安定化手段にロックイン駆動(駆動時間≒10mS、周波数≒1KHz)を採用した。基準駆動電流値に正弦波をのせ最大点灯電流値309と最小点灯電流値310の範囲で振幅させ、駆動回路の位相補正、ポンプ、電磁弁から発生するノイズ除去補正を行う事ができ、マイクロコンピュータ114内にロックイン・アンプの原理(雑音に埋もれた微小信号を高感度で検出することが出来る。)が組み込まれ処理される。ロックイン駆動の最適化条件により素子の出力低下の防止ができる。ロックイン駆動と素子の出力低下の関係は更なる検討で解明する予定である。
図3は、点滅式短周期振幅駆動(最小)302の最小点灯電流値310を、点灯式振幅計測304で、「1V」下げ、基準駆動電流値311を、「0.5V」下げた。今後の実験で最適値を見つける予定である。
点滅式短周期振幅駆動(最大)301は、点滅時間≒250mS、振幅時の放射出力強度≒0.19415μW/cm2、点灯時間≒0.25S/2(点滅周波数≒48〜52Hz)とする。正弦波形で電流値を変化させ光強度を振幅させる。
点滅式短周期振幅駆動(最小)302は、点滅時間≒220mS、振幅時の放
射出力強度≒0.19238μW/cm2、点灯時間≒0.22S/2(点滅周
波数≒55〜60Hz)とする。正弦波形で電流値を変化させ光強度を振幅さ
せる。
定電流駆動(1)305は、点灯時間≒5mS、ロックイン駆動303の駆動
時間≒10mS(周波数≒1KHz)とする。
消灯(1)306は、消灯時間≒8mSとする。
定電流駆動(2)307の駆動時間≒5mSとする。
点灯式振幅計測304は、点灯時間≒10mS(周波数≒1KHz)とす。
最大点灯電流値309≒9.707642mA(放射出力強度≒0.19415μW/cm2)とする。最小点灯電流値310≒9.61914mA(放射出力強度≒0.19238μW/cm2)とする。
消灯(2)308は、消灯時間≒500mSとする。
図4は、本発明を実施する発光素子201を用いて255〜285nmの波長(ピーク波長265nm)を放射して放射出力強度を計測したグラフである。紫外線の放射出力強度は地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターの分光器で測定した。(仕様 プリズムグレーティング方式 測定波長 200nm〜2500nm 分光計器(株)製 型番 US−25ART)で計測した。縦軸が放射出力強度の値、横軸が発光素子102から発する波長を表している。ピーク波長265nm(DOWAエレクトロニクス(株)製)で基準駆動電流値1mA(401)、5mA(402)、9mA(403)に対する放射出力強度が、0.001(μW/cm2・265nm)、0.075(μW/cm2・265nm)、0.18(μW/cm2・265nm)を読み取る事が出来る。
図6は、点灯式振幅計測(304)に、一例として正弦波を使用した場合の減衰を表したグラフである。縦軸が強度センサの電圧値、横軸が時間となっている。オゾンに光が照射され減衰した状態を表している。グラフの上から、オゾン濃度が、0ppm(601)、0.1ppm(602)、0.2ppm(603)、0.3ppm(604)である。例えば、オゾン有りの時の正弦波の半値全幅(full width at half maximum,FWHM)部の電圧値と、オゾン無し(ゼロガス状態)の正弦波の半値全幅部の電圧値の減衰値を調べる事で濃度が計測できる。オゾン濃度が0ppm(601)の半値全幅部の電圧値が2.5V、オゾン濃度が0.2ppm(603)の半値全幅部の電圧値が1Vになる。正弦波の計測は、オゾン濃度が0ppm(601)の半値全幅部の横軸の時間とオゾン濃度が0.2ppm(603)の半値全幅部の時間の値が違い、オゾン濃度が、0ppmと0.2ppmで、計測時間が違ってくる。正弦波の利用で計測時間を一致させるには、正弦波の頂点のみの利用になり、頂点の一点計測は、計測精度の信頼性が落ちてしまう。本発明の計測は、矩形波を採用しているので、減衰時の時間軸のズレが発生しない。
図8は、測定セル105内をゼロガス状態にして、本発明による時間経過に伴う出力低下の状態を表したものである。縦軸が強度センサ103の電圧値を表している。横軸が経過時間である。本発明による出力安定化手段801によるゼロガス状態での時間経過にともなう強度センサ103の電圧値の低下(出力低下)が全くない事が分かる。一方、定電流での連続点灯802は、点灯後約40分で強度センサ103の電圧値が47.2%低下する事が分かる。(1.8Vから0.85Vに出力が下がる。)
図1の構成は、溶液中(液相)のオゾン濃度測定装置にも適用できる。