JP6204624B2 - 過酸化物を用いた熱ラジカル重合開始剤及び熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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本発明は、熱ラジカル重合開始能を有する過酸化物及びそれらを含む熱硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
<4> 一般式(I)におけるR1が、エポキシ基を有する有機基である<1>〜<3>いずれか1つに記載の過酸化物である。
<7> 光重合開始剤を更に含む<6>に記載の熱硬化性樹脂組成物である。
<8> 液晶滴下シール剤用である<6>又は<7>に記載の熱硬化性樹脂組成物である。
「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」の少なくとも一方を意味する。
本発明の過酸化物は、下記一般式(I)で表される。式中、R1は有機基を表す。R2及びR3は、一方がヒドロキシ基であり他方がヒドロパーオキシ基であるか、R2とR3が一緒になってパーオキシ基を表す。すなわち本発明の化合物は、下記一般式(Ia)、(Ib)及び(Ic)のいずれかで表される。本発明の過酸化物は、特定の構造を有することで、優れた熱ラジカル重合活性を示す。
R1は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、ホウ素原子、リン原子、ケイ素原子及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子から構成される有機基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子から構成される有機基であることがより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子から構成され、炭素数が1〜500の有機基であることが更に好ましく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子から構成され、炭素数が1〜160であり、分子量が15〜4000の有機基であることが更に好ましく、水素原子、炭素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子から構成され、炭素数が3〜40であり、分子量が100〜650の有機基であることが特に好ましい。
なお、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
更に、R1で表される有機基は、一般式(I)におけるR1以外の部分構造、すなわちヒドロパーオキシヒドロキシプロピルオキシ構造及び1,2−ジオキセタニル−3−メチルオキシ構造の少なくとも一方をR1の部分構造として更に有していてもよい。
有機基を構成するアルキル基、アルケニル基、アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。また有機基を構成する部分構造は置換基を有していてもよく、置換基としては上記部分構造を挙げることができる。
ハロアルキル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、置換数は1〜3である。
ヘテロアリール基は、炭素原子の他に、少なくとも酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、総原子数5〜30の単環又は多環の複素環基であり、イミダゾリル基、キサンテニル基、チオキサンテニル基、チエニル基、ジベンゾフリル基、クロメニル基、イソチオクロメニル基、フェノキサチイニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソオキサゾリル基及びフラザニル基等が挙げられる
一般式(I)で表される過酸化物(以下、「第一の過酸化物」ともいう)は、例えば、下記反応式に示すように、対応するアリルエーテル誘導体(好ましくは、一般式(II)で表されるアリルエーテル誘導体)と、一般式(I)で表される過酸化物以外の過酸化物(好ましくは、一般式(III)で表される過酸化物、以下、「第二の過酸化物」ともいう)とを接触させること(以下、「接触工程」ともいう)を含む製造方法で得ることができる。すなわち、一般式(I)で表される過酸化物は、アリルエーテル誘導体と、一般式(I)で表される過酸化物以外の過酸化物との反応生成物であることが好ましい。
なお、一般式(II)で表されるアリルエーテル誘導体に一般式(III)で表される過酸化物を接触させると、一般式(Ia)〜(Ic)で表される過酸化物に加えて、以下に示すような一般式(Id)で表される化合物が得られることがある。
ここで水又はアルコールに溶解可能とは、25℃において純水又はアルコール100gに1g以上溶解することを意味し、5g以上溶解することが好ましく、10g以上溶解することが更に好ましい。
接触工程においては、例えば、アリルエーテル誘導体に含まれるアリル基1モルに対して、第二の過酸化物を1モル〜100モル用いることが好ましく、1モル〜20モル用いることがより好ましく、4モル〜10モル用いることが更に好ましい。
接触工程における温度は、0〜60℃であることが好ましく、15〜50℃であることがより好ましく、20〜40℃であることが更に好ましい。
接触工程における接触時間は、3時間〜24時間であることが好ましく、3時間〜10時間であることがより好ましく、3時間〜6時間であることが更に好ましい。
接触工程に塩基を用いる場合、塩基の使用量は例えば、アリルエーテル誘導体に含まれるアリル基1モルに対して、0.01モル〜10モル用いることが好ましく、0.05モル〜5モル用いることがより好ましく、0.1モル〜1モル用いることが更に好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、一般式(I)で表される過酸化物と、重合性化合物とを含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。一般式(I)で表される過酸化物を含むことで優れた熱硬化性を達成することができる。
熱硬化性樹脂組成物は、一般式(I)で表される過酸化物の少なくとも1種を含む。一般式(I)で表される過酸化物の詳細は既述の通りである。熱硬化性樹脂組成物は、一般式(I)で表される過酸化物を1種単独でも2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種の重合性化合物を含む。重合性化合物は、公知の材料が使用できる。重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましく、液晶への溶解による汚染性の観点から、(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び/又はこれらのオリゴマー並びにビスフェノールA型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種が更に好ましい。
重合性化合物は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱重合性樹脂組成物が、一般式(Id)で表される化合物を含む場合、熱重合性樹脂組成物中の一般式(Id)で表される化合物の含有量は、一般式(I)で表される過酸化物に対して1〜10000質量%であることが好ましく、10〜5000質量%であることがより好ましく、100〜3000質量%であることが更に好ましい。また、熱重合性樹脂組成物は、一般式(Id)で表される化合物を1種単独でも2種以上を組み合わせて含むことができる。
光重合開始剤は、特に限定されず、通常用いられる光重合開始剤から適宜選択して用いることができる。光重合開始剤の具体例としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(O−エトキシカルボニル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1−[4−(3−メルカプトプロピルチオ)フェニル]−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン、1−[4−(10−メルカプトデカニルチオ)フェニル]−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン、1−(4−{2−[2−(2−メルカプトエトキシ)エトキシ]エチルチオ}フェニル)−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン、1−[3−(メルカプトプロピルチオ)フェニル]−2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−プロパン−1−オン、1−[4−(3−メルカプトプロピルアミノ)フェニル]−2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−プロパン−1−オン、1−[4−(3−メルカプト−プロポキシ)フェニル]−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタニウム、α−アリルベンゾイン、α−アリルベンゾインアリールエーテル、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1,2−ジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)、1‐[6‐(2‐メチルベンゾイル)‐9‐エチル‐9H‐カルバゾール‐3‐イル]エタノンO‐アセチルオキシム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、1,3−ビス(p−ジメチルアミノベンジリデン)アセトンなどを例示することができる。光重合開始剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱硬化剤としては特に限定されず、通常用いられる熱硬化剤から適宜選択して用いることができる。熱硬化剤の具体例としては、ヒドラジド化合物、アミンアダクト化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。これらの化合物は、例えば、1種のヒドラジド化合物、1種のヒドラジド化合物と1種のイミダゾール化合物との組合せ、1種のヒドラジド化合物と2種以上のアミンアダクト化合物との組合せ、1種のヒドラジド化合物と2種以上のアミンアダクト化合物と2種以上のイミダゾール化合物との組合せ、及び2種以上のヒドラジド化合物と2種以上のアミンアダクト化合物との組合せのように、それぞれを単独で使用しても、複数の化合物を組み合わせて使用してもよい。熱硬化剤は、市販されている製品を用いることができる。
フィラー粒子は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤として具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
(BisA−ジグリシジルエーテルのエチレングリコールモノアリルエーテル開環体の製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた2000mLガラス製三ツ口フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;エピクロンEXA850CRP〔DIC社製〕280g、エチレングリコールモノアリルエーテル〔TCI社製〕800g(4.75当量/エポキシ基)、クロロホルム〔関東化学社製〕560g、ホウフッ化錫水溶液〔森田化学社製〕1.6g(1.5ミリ当量/エポキシ基)を入れ、攪拌しながら60℃に昇温した。反応開始後、4時間攪拌を継続し、高速液体クロマトグラフィーによる確認により、反応がほぼ進行しなくなった時点で反応終了とした。上記反応液を3000mLガラス製ビーカーに移し、クロロホルム〔関東化学社製〕500g、水500gを入れ、しばらく攪拌後、静置させた。水層を分離、除去した後、同様の操作を繰り返した。水層のpHが7.0以上であることを確認し、有機層を減圧条件下(60mmHg以下、60℃)濃縮した。無色透明粘稠液体を365g得た。
(テトラアリルエーテル化合物の製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた1000mLガラス製三ツ口フラスコに、製造例1で得られた化合物200g、塩化アリル〔TCI社製〕112g(2.0当量/水酸基)、塩化テトラブチルアンモニウム〔TCI社製〕2.36g(0.01当量/水酸基)、ジメチルスルホキシド〔関東化学社製〕100gを混合させた。室温条件下、48%水酸化ナトリウム水溶液〔関東化学社製〕122g(2.0当量/水酸基)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で12時間攪拌を継続し、高速液体クロマトグラフィーによる確認により、反応がほぼ進行しなくなった時点で反応終了とした。上記反応液を3000mLガラス製ビーカーに移し、クロロホルム〔関東化学社製〕500g、水500gを入れ、しばらく攪拌後、静置させた。水層を分離、除去した後、同様の操作を繰り返した。水層のpHが7.0以下であることを確認し、有機層を減圧条件下(60mmHg以下、60℃)濃縮した。無色透明液体として下記化学式で表わされるテトラアリルエーテル化合物を210g得た。
以下のようにして、部分エステル化エポキシ樹脂(部分メタアクリル化エポキシ樹脂)を製造した。
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂の部分メタクリレート化エポキシ樹脂の合成)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA850CRP、DIC株式会社製)320.2g、メタクリル酸(東京化成社製)90.4g、PS−PPh3(ポリスチレン(PS)にトリフェニルホスフィン(PPh3)を担持した塩基性触媒、バイオタージ社製)1.5g、及びBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)100mgを混合し100℃で6時間撹拌した。反応終了後、濾過により触媒を除去し部分メタクリレート化エポキシ樹脂を得た。
(過酸化物を含有するエポキシ樹脂の製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた1000mLガラス製三ツ口フラスコに、製造例2で得られた化合物50g、メタノール〔関東化学社製〕128g(12.5当量/アリル基)、アセトニトリル〔関東化学社製〕105g(8.0当量/アリル基)、炭酸カリウム〔関東化学社製〕17g(0.4当量/アリル基)を混合させた。反応系内が20〜40℃の温度範囲になるように調節しながら30〜35%の過酸化水素水〔関東化学社製〕217g(6.0当量/アリル基)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で3時間攪拌を継続し、高速液体クロマトグラフィーによる確認により、反応がほぼ進行しなくなった時点で反応終了とした。上記反応液を1000mLガラス製ビーカーに移し、クロロホルム〔関東化学社製〕250g、水250gを入れ、しばらく攪拌後、静置させた。水層を分離した後、同様の操作を繰り返した。水層のpHが7.0以下、および過酸化水素濃度が測定限界以下であることを確認し、有機層を減圧条件下(60mmHg以下、60℃)濃縮した。無色透明粘稠液体として、下記化学式群に示すような一般式(I)で表わされる過酸化物とエポキシ樹脂の混合物を44g得た。
エポキシ当量を、過塩素酸法で測定したところ、エポキシ当量196g/eqであった。
粘度を、EHD型粘度計を用いて25℃で測定したところ、粘度9.775Pa・sであった。
塩素濃度を、蛍光X線法を用いて測定したところ、塩素濃度231ppmであった。
過酸化物濃度を、ヨウ素滴定法を用いて測定したところ、過酸化物濃度10.5質量%であった。
上記で得られた過酸化物を含有するエポキシ樹脂の10質量部と、重合性化合物として上記で得られた部分メタクリル化エポキシ樹脂の100質量部とを、スリーワンモータを用いて混合して、熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、過酸化物を含有するエポキシ樹脂中の過酸化物濃度は10.5質量%である。
得られた熱硬化性樹脂組成物の硬化性を以下のようにして評価した。
熱硬化性樹脂組成物を25mm×25mm厚さ0.7mmのLCD用ガラスと、25mm×25mm厚さ0.1mmのPETフィルムにより、熱硬化性樹脂組成物の厚みが0.5mmになるようにはさみ、表1に示す条件で加熱処理又は紫外線照射処理して、硬化性評価用のサンプルとした。
サンプルのIRスペクトルをFT−IR(Spectrum One、パーキンエルマー社製)を用いて測定し、得られたIRスペクトルのメタクリル基のピーク面積よりメタクリル基の反応率(転化率、メタクリル反応率)を算出した。反応率の算出はメタクリル基の吸収1630cm−1(又は945cm−1)の面積の減少をベンゼン環の二重結合の吸収1500cm−1の面積を基準として計算した。
加熱処理は恒温層を用いて行った。また、紫外線照射処理は、紫外線照射装置(UVX−01224S1、ウシオ電機製)により、100mW/cm2の紫外線照射照度で3000mJ/cm2の光エネルギーで照射を行った。なお、加熱処理と紫外線照射処理の両方を行った場合は、紫外線照射処理後に加熱処理を行った。
紫外線照射処理のみでの過酸化物の分解による樹脂組成物の硬化は確認されなかった。
紫外線照射処理後にも過酸化物は十分に残存しており、紫外線照射処理後の加熱処理で問題なく硬化物が得られた(反応率は95%)。
実施例2において、過酸化物を含有するエポキシ樹脂の配合量(質量部)を表2に示すように変更したこと以外は、実施例2と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製し、同様にして硬化性(反応率%)を評価した。
実施例3において、過酸化物を含有するエポキシ樹脂を配合しなかった場合は、いずれの加熱処理条件でも反応率は0%であった。
部分メタクリル化エポキシ樹脂、実施例1で得られた過酸化物を含有するエポキシ樹脂、過酸化物非含有エポキシ樹脂、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1))、及び熱硬化剤(味の素ファインテクノ社製アミキュアVDH(1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン))を下記表3に示す配合量(質量部)で混合して、熱硬化性樹脂組成物を調製し、実施例2と同様にして評価した。
過酸化物非含有エポキシ樹脂は、特開2012−077202号公報の記載に準じて調製した下記エポキシ樹脂である。
液晶への溶出性の評価は液晶の相転移温度であるNI点(Nematic-Isotropic point)の変化により行った。液晶のNI点は液晶の各成分の混合組成により決定され、各配合で固有の値となる。一般的に、これら液晶に何らかの不純物(他成分)が混入することによりNI点は低下することが知られており、不純物混入具合をNI点より評価することが出来る。
アンプル瓶に、上記で得られた過酸化物を含有するエポキシ樹脂又は過酸化物非含有エポキシ樹脂を0.1g入れ、それぞれに液晶(MLC−11900−080、メルク社製)1gを加えた。このアンプル瓶を120℃オーブンに1時間投入し、その後室温で静置して室温(25℃)に戻ってから液晶部分を取り出し0.2μmフィルターによりろ過し、評価用の液晶サンプルとした。
NI点の測定には示差走査型熱量計(DSC、パーキンエルマー社製、Pyris6)を使用した。評価用の液晶サンプル10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件で測定を行った。
以上から、エポキシ樹脂における過酸化物構造の有無は、液晶汚染性に影響しないことが分かる。
Claims (9)
- 2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が有する1つのエポキシ基を、ヒドロパーオキシヒドロキシエチル基又はジオキセタニル基に置換した過酸化物を用いた熱ラジカル重合開始剤であって、
前記2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂は、炭素数2〜10のアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、ナフタレンジグリシジルエーテル、芳香族テトラグリシジルエーテル、フロログルシノールのポリグリシジルエーテル、ピロガロールのポリグリシジルエーテル、アルドースのポリグリシジルエーテル、ケトースのポリグリシジルエーテル、糖アルコールのポリグリシジルエーテル、又は、下記式:
である、過酸化物を用いた熱ラジカル重合開始剤。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱ラジカル重合開始剤と、重合性化合物とを含む熱硬化性樹脂組成物。
- 光重合開始剤を更に含む請求項7に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 液晶滴下シール剤用である請求項7又は8に記載の熱硬化性樹脂組成物。
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