JP6201126B2 - マスタスレーブシステム - Google Patents

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Description

本発明は、力順送型バイラテラル制御が適用されるマスタスレーブシステムに関する。
いわゆるマスタスレーブシステムは、マスタロボットとスレーブロボットとが機械的に結合し、連動する機械式マスタスレーブシステムが発端となっている。機械式マスタスレーブシステムには、操作者が直接的な操作感を得られるという長所があるが、操作者とマスタロボットおよびスレーブロボットとの幾何学的拘束から機構設計の自由が制限されるとともに、駆動源が人力であることから操作が重くならざるを得ず、また、異常時における安全確保に難があるという短所も存在する。
そこで、機械式マスタスレーブシステムの有用性は認めつつも、現在においては、マスタロボットとスレーブロボットとが電気的に相互接続され、かつ機械的には分離されて、両者が独立に動作可能な電気式マスタスレーブシステムが主流となっている。一般的に、電気式とすれば、電気的またはソフトウェア的手段による融通が利き、柔軟に機構を設計することができ、しかも、大出力アクチュエータの作業領域に操作者を入れないような、安全を確保しやすいシステムを構築することが可能となる。
このような特徴を持つ電気式マスタスレーブシステムは、遠隔操作(テレオペレーション)を主なアプリケーションとして発展してきたために、これまでは、位置や力の再現性、透明性、または通信時間遅延の改善を主眼として研究がなされてきた。以下、電気式マスタスレーブシステムにおける基本的なバイラテラル制御について俯瞰的に説明する。
まず、マスタロボットおよびスレーブロボットのダイナミクスを表現する運動方程式を、説明の便宜のため、一例として以下のように定める。
Figure 0006201126
Figure 0006201126
(t)は、時刻tにおいて操作者がマスタロボットに加えるマスタ操作力、f(t)は、同じく時刻tにおいてスレーブロボットが環境(作業対象)に加えるスレーブ作業力である。また、マスタロボットおよびスレーブロボットのそれぞれについて、q(t)、q(t)は関節変位、τ(t)、τ(t)は関節駆動力、M(q)、M(q)は慣性行列、r(q ,q)、r(q ,q)は慣性以外の効果を集約した剰余項である。J(q)、J(q)は微分運動学を表現するヤコビ行列であり、以下の関係を満たす。
Figure 0006201126
Figure 0006201126
(t)、x(t)は、それぞれq(t)、q(t)に対応するマスタロボットの操作端およびスレーブロボットの作業端の作業座標系における変位である。なお、本明細書では、関数の独立変数を示す“(t)”等の記述を省略して表記することがある。
[対称型バイラテラル制御]
対称型のバイラテラル制御は、マスタ・スレーブの双方向の変位誤差サーボである。この制御では力センサが不要となるため、比較的安定な系を簡単に構成することができる。作業座標系における比例制御を用いれば、マスタロボットの制御則およびスレーブロボットの制御則は、例えば以下のようになる。
Figure 0006201126
Figure 0006201126
は位置制御ゲインである。また、Sはマスタロボットからスレーブロボットへの力のスケール比、Sはスレーブロボットからマスタロボットへの変位のスケール比である。
マスタダイナミクス(1)、スレーブダイナミクス(2)、マスタ制御則(5)およびスレーブ制御則(6)から、次式が得られる。
Figure 0006201126
このように、対称型バイラテラル制御では、マスタ操作力fにマスタダイナミクスの影響が等倍で加わるとともに、スレーブダイナミクスの影響とスレーブ作業力fがS -1倍で加わる。
[力逆送型バイラテラル制御]
力逆送型のバイラテラル制御では、スレーブロボットの作業端にスレーブ作業力fを計測する作業力センサを配置し、スレーブ作業力fをマスタの駆動力へ「反射」させる。この場合、マスタ制御則は次式のようになる。なお、スレーブ制御則は対称型バイラテラル制御における式(6)と同じである。
Figure 0006201126
マスタダイナミクス(1)およびマスタ制御則(8)から、次式が得られる。
Figure 0006201126
対称型バイラテラル制御と同様、力逆送型バイラテラル制御では、マスタ操作力fにマスタダイナミクスの影響が等倍で加わるとともに、スレーブ作業力fがS -1倍で加わる。一方、マスタ操作力fは、スレーブダイナミクスの影響を受けない。
[力帰還型バイラテラル制御]
力帰還型のバイラテラル制御では、マスタロボットの操作端にマスタ操作力fを計測する操作力センサを配置するとともに、スレーブロボットの作業端にスレーブ作業力fを計測する作業力センサを配置し、マスタ側で力誤差サーボを構成する。この場合、マスタ制御則は次式のようになる。
Figure 0006201126
上式は、力逆送型のマスタ制御則(8)に力誤差サーボを追加したものである。なお、Kは力制御ゲインである。また、スレーブ制御則は対称型バイラテラル制御における式(6)と同じである。
マスタダイナミクス(1)およびマスタ制御則(10)から、次式が得られる。なお、Iは単位行列である。
Figure 0006201126
上式において力制御ゲインKを十分に大きくすれば、次式が得られる。
Figure 0006201126
このように、力帰還型バイラテラル制御では、力制御ゲインKを十分に大きくすることで、マスタ操作力fへのマスタダイナミクスの影響は無視できる程小さくなり、マスタ操作力fにはスレーブ作業力fのみがS -1倍で加わる。ただし、実装上は力制御ゲインKを大きくするにつれてバイラテラル制御の安定性が損なわれるため、マスタ操作力fへのマスタダイナミクスの影響を完全に消すことは難しく、透明性を完全に実現することはできない。
[並列型バイラテラル制御]
宮崎らは、非特許文献1において、これまでのバイラテラル制御の直列的な接続方法を改良した並列型バイラテラル制御を提案した。並列型では、マスタロボットの操作端にマスタ操作力fを計測する操作力センサを配置するとともに、スレーブロボットの作業端にスレーブ作業力f(t)を計測する作業力センサを配置して、マスタ・スレーブで並列に変位誤差サーボを構成する。この場合、制御則は例えば以下のようになる。
Figure 0006201126
Figure 0006201126
Figure 0006201126
なお、x(t)は、時刻tにおけるマスタロボットの操作端およびスレーブロボットの作業端の作業座標系での目標変位である。
マスタダイナミクス(1)、スレーブダイナミクス(2)、マスタ制御則(13)、スレーブ制御則(14)および目標変位演算(15)から、次式が得られる。
Figure 0006201126
そして、上式において力制御ゲインKを十分に大きくすれば、次式が得られる。
Figure 0006201126
マスタ制御則とスレーブ制御則とを並列に構成することで位相遅れが減少し、バイラテラル制御の安定性が向上することが並列型バイラテラル制御の利点である。しかしながら、式(16)右辺第1項、第2項のように、並列型バイラテラル制御では、マスタ操作力fがマスタダイナミクスおよびスレーブダイナミクスの両方の影響を受ける。さらに、式(16)右辺第3項のように、並列型バイラテラル制御では、マスタ操作力fに元々のダイナミクスには存在しないバネ項まで付加される。力制御ゲインKを大きくすればこれらの影響は無視できるほど小さくなるが、安定性が向上しているとはいえ、実装上は力制御ゲインKを大きくするにつれてバイラテラル制御の安定性が損なわれるため、結局、並列型バイラテラル制御でも透明性は完全には実現できていない。
[力順送型バイラテラル制御]
ここまで、対称型、力逆送型、力帰還型および並列型を含む、基本的なバイラテラル制御について述べたが、これらをはじめとする従来のバイラテラル制御は、以下の問題1〜6を有していた。
[問題1]・・・力逆送型、力帰還型および並列型に共通する問題
制御にスレーブ作業力fの情報を必要とするため、スレーブロボットに作業力センサを実装できないシステムには適用できない。
[問題2]・・・対称型および力逆送型に共通する問題
マスタロボットの変位誤差によってシステムが駆動される制御であるため、人力で簡単にマスタロボットの変位誤差を発生することができるように、すわなち、高いバックドライバビリティが保たれるようにマスタロボットの慣性および摩擦を極力小さくしておかなければならず、高精度な機構とすることが難しい。
[問題3]・・・力帰還型および並列型に共通する問題
透明性を目指す制御であるため、操作者が主に環境(作業対象)のダイナミクスのみを感じることになる。
[問題4]・・・対称型、力逆送型、力帰還型および並列型に共通する問題
スレーブロボットが常にマスタロボットに接続されているため、操作者がマスタロボットに対して何もしなくてもスレーブロボットに加えられる外力のみによってシステムに不安定な挙動が励起される危険がある。
[問題5]・・・対称型、力逆送型、力帰還型および並列型に共通する問題
スレーブロボットへの指令値が位置であり、位置制御によってスレーブダイナミクスをキャンセルしなければならないため、制御系への負荷が大きい。さらに、位置制御ベースの制御則では、必ずしも他の制御則を重畳することができるとは限らない。
[問題6]・・・対称型、力逆送型、力帰還型および並列型に共通する問題
スレーブロボットに作業座標系での位置制御を適用すると特異点問題が生じ、スレーブロボットの姿勢が特異点近傍となったときに制御が破綻する可能性がある。
これらの問題をエレガントに解決し得る新たなバイラテラル制御として、本発明者は、特許文献1において「力順送型バイラテラル制御」の基本構成を提案した。力順送型では、マスタロボットの操作端にマスタ操作力fを計測する操作力センサを配置し、計測したマスタ操作力fをスレーブロボットの駆動力へ「投射」する。力順送型バイラテラル制御におけるマスタ制御則およびスレーブ制御則は、例えば以下のようになる。
Figure 0006201126
Figure 0006201126
スレーブダイナミクス(2)およびスレーブ制御則(19)から、次式が得られる。
Figure 0006201126
このように、力順送型バイラテラル制御では、マスタ操作力fにスレーブダイナミクスの影響とスレーブ作業力fがS -1倍で加わる。すなわち、力順送型バイラテラル制御とは、スレーブロボットが環境(作業対象)に加えるスレーブ作業力fを計測するのではなく、操作者がマスタロボットに加えるマスタ操作力fを計測することで、マスタからスレーブへは力情報を順送し、スレーブからマスタへは変位情報を逆送する手法である。
力順送型バイラテラル制御は、以下の特徴1〜6を有している。
[特徴1]
スレーブ作業力fの情報を必要としないため、スレーブロボットに作業力センサを実装できないシステムにも適用することができる。
[特徴2]
マスタロボットの変位誤差ではなく、操作者がマスタロボットに加えるマスタ操作力fによってシステムが駆動されるため、マスタロボットにバックドライバビリティが必要とされず、その結果、マスタロボットを人力に対して堅牢で、かつ高精度な機構とすることができる。
[特徴3]
透明性ではなく後述する「投射性」を目指す制御であるため、操作者が環境(作業対象)のダイナミクスのみならずスレーブダイナミクスをも感じ、マスタダイナミクスは感じない。
[特徴4]
操作者がマスタロボットにマスタ操作力fを加えなければ、マスタロボットからスレーブロボットへの接続は遮断される(バイラテラルでなくなり、ユニラテラルとなる)ので、スレーブロボットに加えられる外力のみによってシステムに不安定な挙動が励起される危険はない。
[特徴5]
スレーブロボットへの指令値が位置ではなく駆動力(力とトルク)なので、スレーブ制御則の実装が容易であり、制御系への負荷が小さい。また、駆動力制御ベースの制御なので、スレーブ制御則に駆動力制御ベースのあらゆる制御を重畳することができる。
[特徴6]
スレーブロボットが位置制御ではなく駆動力制御されるので、作業座標系での制御を適用しても特異点問題が生じず、スレーブロボットの姿勢が特異点近傍となっても制御が破綻することはない。
以下、上記特徴1〜6について、さらに詳しく説明していく。
まず、[特徴1]について説明する。
力逆送型、力帰還型、並列型等の従来の多くのバイラテラル制御では、マスタスレーブシステムの操作感を高めるために、スレーブロボットの作業端にスレーブ作業力fを計測するための作業力センサを実装している。しかしながら、少なからぬシステムにおいて、スレーブロボットの作業端に作業力センサを実装することは困難である。
例えばパワー増幅マスタスレーブシステムの場合、スレーブロボットには大出力のアクチュエータが配置される。このため、スレーブロボットはこの大出力に耐えられるハードウェアでなければならない。しかしながら、一般に作業力センサとしての多軸力センサは繊細かつ高価なので、大出力スレーブロボットの作業端に実装するのは困難である。また、手術ロボットとしてのマスタスレーブシステムの場合、スレーブロボットは人体内部に侵襲することが必要であり、そのハードウェアには高いレベルの洗浄・消毒・滅菌が求められる(オートクレープ滅菌)。このようなスレーブロボットの作業端に、複雑な電子機器である多軸力センサを実装するのは困難である。
力順送型バイラテラル制御では、このような実装上の困難の無いマスタロボットにのみ力センサ(操作力センサ)を実装すればよい。一方、スレーブロボットは、アクチュエータと変位センサのみの、これ以上は無い単純な構成にすることができる。以上のことから、力順送型バイラテラル制御は、多くのシステムに比較的容易に実装可能である。
次に、[特徴2]について説明する。
従来のバイラテラル制御の多く、例えば対称型および力逆送型バイラテラル制御では、マスタロボットに加えられるマスタ操作力fそのものではなく、マスタ操作力fによって生じたマスタロボットの変位誤差によってシステムが駆動される。この場合、操作感を高めるためには、マスタロボットを人力でも楽に動かし得るように、いわゆるバックドライバブルにする必要があった。そして、そのために、マスタロボットの慣性質量および摩擦をできるだけ減らしておく必要があった。このような事情から、従来のバイラテラル制御では、マスタロボットが必然的に低い減速比を有する非力で華奢な機構となってしまっていた。これは、操作者に反力を高精度に提示するための剛性や出力が不足しがちであることを意味する。
これに対して力順送型バイラテラル制御では、マスタロボットに加えられるマスタ操作力fによってシステムが駆動されるため、マスタ操作力fさえ計測できればマスタロボットがバックドライバブルである必要はない。このため、力順送型バイラテラル制御では、マスタロボットを堅牢かつ高い減速比を有する強力な機構とすることができるとともに、操作者に反力を高精度に提示することが可能となる。なお、マスタロボットの機構は、マスタであるが故に人力程度の力に対する堅牢さが確保されていれば十分である。このため、マスタ操作力fを計測するための操作力センサを装備していることは、たとえ操作力センサが多軸力センサであっても、堅牢さを確保する上で不利にならない。
次に、[特徴3]について説明する。
スレーブロボットに作業力センサを配置する力逆送型および力帰還型バイラテラル制御において、特に作業力センサをスレーブロボットの作業端に置く場合、式(9)や式(11)から分かるように、操作者がスレーブダイナミクスを感じることはない。一方、操作者はマスタダイナミクスを感じるため、従来のバイラテラル制御において重要な規範であった透明性は、マスタダイナミクスの影響を無視できる程小さくすることで実現されることになっていた。すなわち、従来のバイラテラル制御では、[特徴2]の説明中で述べたのとは別の理由からも、マスタロボットを低い減速比を有する非力で華奢な機構とすることが必要であった。
しかし、この透明性という従来のマスタスレーブシステムの規範そのものに再考の余地があると本発明者は考えており、ここに新たな規範を提唱する。すなわち、マスタダイナミクスおよびスレーブダイナミクスの両方を「透明」とし、操作者が直接、環境(作業対象)のみを操る操作感を提示するための「透明性」という従来の規範に対して、操作者によるマスタ操作力fをスレーブ駆動力として「投射」し、環境(作業対象)のダイナミクスをも含むスレーブダイナミクスをマスタ変位として「投射」することで、環境(作業対象)と共にスレーブロボットをも操る操作感を提示するための新たな規範である。この新たな規範を「投射性」と呼ぶことにする。マスタ操作力fが正確にスレーブ駆動力に投射されているほど、また、環境(作業対象)のダイナミクスとスレーブダイナミクスが正確にマスタ変位に投射されているほど、投射性は高いと言える。
定性的に表現すれば、透明性が高い従来のマスタスレーブシステムの場合、操作者は、マスタスレーブシステムの感覚が消えた結果、自分の身体で直接的に環境(作業対象)を操作しているように感じる。一方、投射性が高いマスタスレーブシステムの場合、操作者は、マスタロボットの感覚が消えた結果、自分の身体でスレーブロボットを動かし、そのスレーブロボットが環境(作業対象)を操作しているように感じる。つまり、透明性が「生身の身体で対象を操る感覚」を目標としているのに対し、投射性は「外骨格を介して対象を操る感覚」を目標としている、と言い換えることができる。
そこで、本発明者は、理想的な投射性が実現された状態を「外骨格投射」と名付ける。外骨格投射を実現することにより、少なくとも体幹以外はマスタロボットから機械的に独立して動作するはずのスレーブロボットが、体幹以外の部分においてもマスタロボットと機械的に連動するような感覚を操作者に感じさせることができる。さらに、操作装置に過ぎないマスタロボットの感覚を消した上で、作業装置であるスレーブロボットが、あたかも自らが実際に身に纏っている外骨格であるかのような感覚を操作者に与えることができる。「外骨格投射」の語は、このような作用効果に由来している。
横小路らは、非特許文献2のp.575において、透明性と同義の「理想応答」を以下のように定義している。

“オペレータがある操作力を加えたとき、マスタアームとスレーブアームの位置の応答x、xと力の応答f、fとが、扱う対象物によらず常に一致する。”

スケール比(S、S)を考慮した本明細書の表記に合わせれば、上記理想応答は以下のように表現することができる。
Figure 0006201126
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この理想応答が実現されている状態を、非特許文献2では遠隔知覚(object teleperception)できる状態と呼んでいる。ただし、このような理想応答を実現するためにはマスタスレーブシステムのダイナミクスを慣性ごと全て消去しなければならず、制御系への負荷が大きく、バイラテラル制御が不安定になる可能性が高い(非特許文献3参照)。これは、力帰還型バイラテラル制御の式(11)あるいは並列型バイラテラル制御の式(16)において力の透明性(22)を実現するためには、力制御ゲインK→∞としなければならないことからも理解される。
これに対して、本発明者が定義した「投射性」の理想応答は以下のように表現することができる。
Figure 0006201126
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この理想応答が実現されている状態が「外骨格投射」である。外骨格投射を実現するためにスレーブダイナミクスを消去する必要はない。これは、パワー増幅マスタスレーブシステムにおいて、特に有利である。パワー増幅マスタスレーブシステムのスレーブロボットはマスタロボットよりも大型であることが多く、慣性もスレーブロボットが支配的である。その支配的なスレーブロボットの慣性を消去する分の負荷が軽くなることは、制御系の安定性向上に少なからず寄与する。
さらに、規範としての投射性は、特にマスタロボットとスレーブロボットとが大きく異なるダイナミクスを持つマスタスレーブシステム(異構造・異自由度・異スケール)における「機械に優しい操作」を操作者が習得する場合において、透明性よりも有利である。
例えば、マスタロボットとスレーブロボットのスケールが大きく異なる、異スケールのマスタスレーブシステムにおいては、投射性を規範とすることで、環境(作業対象)のみならずスレーブダイナミクスのスケール効果をも操作者に提示することができる。スレーブロボットがマスタロボットよりも大きい場合に生じる慣性の効果(具体的には、スレーブロボットが慣性により動き続けようとすることにより、マスタロボットが振り回されるような状態)を操作者に提示することで、操作者に適切な操作を促すことができ、操作者自身のスキルによる操作の効率化および最適化が期待できる。投射性でなく透明性を規範とするシステムではスレーブダイナミクスのスケール効果は操作者に提示されないため、このような、操作者による操作の効率化および最適化は期待できない。
以上のように、力順送型バイラテラル制御では、マスタロボットの操作端に操作力センサを配置することによって、式(20)に示されているように、マスタダイナミクスを透明とし、スレーブロボットを介して環境(作業対象)を操る感覚を操作者に提示することができる高い投射性、すなわち外骨格投射を実現することができる。また、力順送型バイラテラル制御では、式(24)で表現された力の投射性を実現するために、力制御ゲインKを無限大にする必要はない。
次に、[特徴4]について説明する。
操作者がマスタロボットに対して何もしないマスタ操作力f=0の場合、マスタスレーブシステムは外力−fのみによって駆動される。対称型では式(7)より、力逆送型では式(9)より、力帰還型では式(11)より、外力−fはそれぞれ以下のようになる。
Figure 0006201126
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式(25)〜(27)は、従来(対称型、力逆送型、力帰還型)のバイラテラル制御では、スレーブロボットが外力−fを受けると、操作装置にすぎないマスタロボットのダイナミクスの影響下でスレーブロボットが動作することを示している。そして、場合によっては、スレーブロボットに加えられた外力−fのみによってマスタスレーブシステムに不安定な挙動が励起される危険がある。説明は省略するが、並列型のバイラテラル制御についても同様のことが言える。この問題については、力逆送型および力帰還型バイラテラル制御において操作者がマスタロボットの操作端から手を離すと、システムが不安定な挙動を示す傾向が見られることが、非特許文献4のp.24に指摘されている。特に、力帰還型および並列型バイラテラル制御において透明性を高めるために力制御ゲインKを大きくしていると、その傾向が強くなる。
これに対し、力順送型バイラテラル制御では、式(20)より、外力−fは次式のようになる。
Figure 0006201126
スレーブロボットは、外力−fを受けた際に自分自身のダイナミクスの影響下で動作する。また、外力−fがマスタダイナミクスの影響を全く受けないことから、マスタ操作力f=0の場合は、マスタからスレーブへの接続が自動的に遮断され、力制御ゲインKに関係なくユニラテラルとなることが分かる。このように、力順送型バイラテラル制御では、スレーブロボットに加えられる外力−fのみによってマスタスレーブシステムに不安定な挙動が励起される危険はない。
次に、[特徴5]について説明する。
マスタスレーブシステムにおいては、マスタロボットは人間に操作されるためだけにあり、人間が操作しやすいスケールで作られ、人間にとって快適な環境下に置かれる。しかしスレーブロボットは、達成すべきタスクに応じて、多種多様な環境下で動作すべく多種多様なハードウェア構造を採用することが求められる。例えば、パワー増幅マスタスレーブシステムにおいてはスレーブロボットに大出力が求められるため、電磁アクチュエータの代わりに油圧アクチュエータが採用されることがある。また、手術ロボットとしてのマスタスレーブシステムにおいては、空圧アクチュエータが採用されることもある。そして、ほとんどの従来のバイラテラル制御では、操作者の意思はスレーブロボットの目標位置として指定され、スレーブロボットは位置制御される。
よく知られているように、電磁アクチュエータに比べ油圧/空圧アクチュエータの位置(軌道)制御性能は低い。このため、従来のバイラテラル制御を用いて操作者の意思を油圧/空圧アクチュエータに正確に反映させるためには、高度で複雑な位置制御則を適用しなければならず、実装に困難が予想される。
しかし、力順送型バイラテラル制御では、操作者の意思はスレーブロボットの目標駆動力として指定され、スレーブロボットは駆動力制御される。油圧/空圧アクチュエータを採用した力順送型バイラテラル制御では、油圧/空圧アクチュエータの目標位置ではなく目標圧力を指定することにより、スレーブロボットは駆動力制御される。このような油圧/空圧アクチュエータの圧力制御は、油圧/空圧制御弁を用いて一般的に行なわれていることであり、実装に困難はない。
もちろん、力順送型バイラテラル制御に駆動力制御を実装しても、操作者がスレーブロボットの位置制御を高精度に行なうことは保証されず、従来のバイラテラル制御でコンピュータが担っていた高度で複雑な位置制御則を、操作者のスキルに押し付けてしまっただけとも言える。しかし、駆動力制御の実装が容易であることは確かであり、操作者の意思はスレーブ駆動力として正確にスレーブロボットに反映される。しかも、従来のバイラテラル制御では位置制御則に隠されてしまう油圧/空圧アクチュエータの制御性の良し悪しまで、力順送型バイラテラル制御では操作者が直感的に判断することができる。
さらに、操作者のスキルに押し付けたものの操作者の手に余るスレーブダイナミクスの非線形性が存在するならば、ダイナミクス補償のアルゴリズム(重力補償、摩擦補償、他)をスレーブロボットの駆動力制御に重畳することで、操作者のスキルを支援することができる。スレーブロボットが駆動力制御される力順送型バイラテラル制御においては、制御則の単純な重ね合わせが可能であり、これまでロボット制御工学が営々と培ってきた成果としての駆動力制御ベースの膨大な知識を操作者のスキル支援のために利用することができる。例えば、操作に役立つスレーブロボットの慣性は操作者に感じさせつつ、操作をしにくくするスレーブロボットの非線形項は補償して消去するといった応用も可能である。あるいは、まるで外骨格上で操作者の手を取って誘導するかのようなスレーブロボットの低ゲインの軌道制御を重ね合わせたり、スレーブロボットの可動範囲を制限する仮想壁をスレーブロボット制御に重ね合わせたりすることもできる。スレーブロボットが位置制御ベースの場合は、前述の通り、このような制御則を単純に重ね合わせることができるとは限らない。
次に、[特徴6]について説明する。
マスタスレーブシステムにおけるマスタロボットには操作性が求められ、スレーブロボットには作業性が求められる。操作性向上のためには、いわゆる人間工学的なマスタロボット設計が必要であり、作業性向上のためには、達成すべきタスクに合わせたスレーブロボット設計が必要である。このため、マスタロボットとスレーブロボットの構造は、自ずと異なったものとなる。構造の異なるマスタロボットとスレーブロボットを備えたマスタスレーブシステムを、異構造マスタスレーブシステムと呼ぶ。
同構造マスタスレーブシステムで操作性と作業性を共に高めるのには限界がある。このため、高度なマスタスレーブシステムは異構造とならざるを得ない。そして、異構造マスタスレーブシステムにおいては作業座標系で制御を行うのが一般的であり、本明細書におけるここまでの考察でも、作業座標系で制御を行うことを前提として制御則を構築してきた。
一般に、ロボットを作業座標系で位置制御すると特異点問題が生ずる。特異点とは、ヤコビ行列が正則とならない(逆行列が得られない)ロボットの姿勢(特異姿勢)のことである。特異点においては、作業座標系におけるロボットの運動方向が制限される。特異点近傍においては、作業座標系でロボットの目標軌道を定めた場合に、その目標軌道を実現する関節速度が過大となる。そして、現実のロボットは有限の関節速度しか発生できないため、特異点近傍においては作業座標系での位置制御が破綻する可能性がある。これが特異点問題である。たとえ式(6)のように、計算上、ヤコビ行列の逆行列を経由しない位置制御則でも、やはり特異点近傍で位置制御は破綻する。これは、座標変換に伴う物理的な破綻である。このため、この位置制御の破綻を計算の工夫によって防ぐことはできない。
従来のマスタスレーブシステムにおいてはスレーブロボットに位置制御がなされており、これを作業座標系での位置制御とすると特異点問題が発生する。つまり、特異点近傍を避けなければ、特異点近傍で位置制御が破綻してしまう。一方、破綻を嫌ってスレーブロボットが特異点近傍を避けて動くようにすると、
i)スレーブロボットの作業領域が狭くなり、必要以上にロボットが大型化する。
ii)タスク達成のために、スレーブロボットの特異点を積極的に利用することができない。
という別のデメリットが発生し、これを解消することは容易ではなかった。なお、特異点を積極的に利用する手法については、非特許文献5に詳細に記載されている。
特異点問題への対策として、非特許文献6のp.476には、マスタロボットおよびスレーブロボットの各関節が可動範囲の限界や特異点に近づいた場合、逆方向へ力が働くようにマスタ側へフィードバックする方法が記載されている。また、非特許文献7では、異構造マスタスレーブシステムにおける特異点問題を解決するために、特異点からの距離(可操作度)に応じてアシストゲインを調整する方法が提案されている。これらはいずれも、特異点近傍での操作感を重くすることで操作者に特異点に近づいていることを知らせる方法であり、特異点を避ける手法の一種である。つまり、非特許文献6および非特許文献7の手法を用いても、上記デメリットi)、ii)は依然として解消されない。
特異点問題への別の対策として、非特許文献8では特異点適合法が提案されている。この手法は、ヤコビ行列の余因子行列を利用した制御法であり、この手法によれば、関節速度が過大になることが抑えられ、位置制御は破綻しなくなる。また、特異点を避けなくて済むため、上記デメリットi)、ii)も解消される。しかし、破綻はしないものの関節速度が有限であることに変わりなく、特異点近傍においては操作性の劣化が避けられない。非特許文献8では操作性を劣化させないための工夫がなされているが、劣化を抑えることはできても、劣化しないようにすることは非特許文献8の手法を使う限り不可能である。
これに対して、力順送型バイラテラル制御ではスレーブロボットに位置制御がなされず、駆動力制御がなされる。例えば、式(19)のようにスレーブロボットに駆動力制御を実装した場合は、微分運動学に基づきヤコビ行列の転置行列J さえ求められればよく、ヤコビ行列の逆行列J -1を求める必要はない。スレーブロボットに駆動力制御がなされる力順送型バイラテラル制御では、そもそもスレーブロボットには特異点問題が存在しないのでスレーブロボットの特異点を避ける必要はなく、上記問題i)、ii)は存在しない。言い換えると、力順送型バイラテラル制御によれば、
i’)スレーブロボットの可動範囲全域(全作業領域)を使用することができる。
ii’)タスク達成のために、スレーブロボットの特異点を積極的に利用することができる。
というメリットが得られる。
なお、非特許文献9のp.116では、力逆送型および力帰還型バイラテラル制御とは逆向きの制御として「position-force loop」が示されているが、同文献にはこの制御に関するこれ以上の詳細な記載がないため、この制御が力順送型バイラテラル制御に相当する制御であるとは考えられない。
また、非特許文献9のp.116には、“position-force loopの実装はうまくいかない”との記載があり、さらにその理由として、“スレーブロボットに対する力制御は不安定である”との記載がある。これらの記載は、「position-force loop」の実装は非常に困難であるか、または不可能であると考えるのが当業者の技術常識であったことを示唆している。
特許第5105450号公報 特願2013−28989号
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以上のように、力順送型バイラテラル制御は、従来のバイラテラル制御にはない多くの利点を有しているが、その一方で解決を要する以下の問題を有している。
すなわち、[特徴6]で述べた通り、力順送型バイラテラル制御ではスレーブロボットに位置制御がなされておらず、駆動力制御がなされているため、スレーブロボットに特異点問題は存在しない。しかしながら、力順送型バイラテラル制御ではマスタロボットに位置制御がなされているので、これを作業座標系での位置制御とするとスレーブロボットではなくマスタロボットに特異点問題が発生する。たとえ式(18)のように、計算上、ヤコビ行列の逆行列を経由しない位置制御則でも、座標変換に伴う物理的な破綻は存在し、やはり特異点近傍で位置制御が破綻する。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、マスタロボットおよびスレーブロボット双方の特異点問題を解決し得るマスタスレーブシステムを提供することにある。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者は、
i)マスタロボットの大きさは高々人間サイズなので、マスタロボットの特異点近傍を除く操作領域内に人間の操作領域の全部が含まれる設計としても、マスタロボットが必要以上に大型化することはない。
ii)マスタロボットに求められる出力は高々人力であり、かつ、[特徴2]で述べたように、力順送型バイラテラル制御ではマスタロボットを堅牢かつ高い減速比を有する強力な機構とすることができるので、マスタロボットの特異点を積極的に利用する必要はない。
ことを見いだし、さらにこれらの知見i)、ii)から、
iii)従来のバイラテラル制御が適用されるマスタスレーブシステムとは異なり、力順送型バイラテラル制御が適用されるマスタスレーブシステムに限っては、マスタロボットが特異点近傍を避けて動くことがデメリットにはならない。
ことを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るマスタスレーブシステムは、
操作者によって操られるアドミッタンス型の力覚提示装置であるマスタロボットと、前記マスタロボットに少なくとも電気的に接続され、かつ前記マスタロボットから少なくとも体幹以外が機械的に独立して動作するスレーブロボットとからなる、バイラテラル制御されるマスタスレーブシステムであって、
前記マスタロボットを位置制御するマスタ駆動力を発生させる少なくとも一つのマスタアクチュエータと、前記スレーブロボットを駆動力制御するスレーブ駆動力を発生させる少なくとも一つのスレーブアクチュエータと、前記マスタロボットにおけるマスタ変位を計測する少なくとも一つのマスタ変位センサと、前記スレーブロボットにおけるスレーブ変位を計測する少なくとも一つのスレーブ変位センサと、前記操作者が前記マスタロボットに加えるマスタ操作力を計測する少なくとも一つの操作力センサと、前記スレーブ変位を写像することにより、当該スレーブ変位に対応する前記マスタ変位の目標値であるマスタ目標変位を求めるマスタ目標変位演算装置と、前記マスタ操作力に基づいて前記スレーブ駆動力の目標値であるスレーブ目標駆動力を求めるスレーブ目標駆動力演算装置と、を備え、
前記スレーブアクチュエータが前記スレーブ目標駆動力に基づいて前記スレーブ駆動力を発生させる一方、前記マスタアクチュエータが前記マスタ目標変位と前記マスタ変位とに基づいて前記マスタ駆動力を発生させることで、(1)前記スレーブロボットが環境に加えるスレーブ作業力を計測する前記バイラテラル制御のための作業力センサを不要とし、かつ(2)前記操作者にマスタダイナミクスを感じさせることなく、スレーブダイナミクスを感じさせるようにし、
さらに、前記マスタ目標変位演算装置における前記写像を、前記マスタ目標変位の集合が前記マスタロボットの特異点を含まないように予め定義しておくことで、(3)前記スレーブロボットと前記マスタロボットとが同構造であるか異構造であるかに関わらず、前記スレーブロボットの可動範囲全域において前記マスタロボットおよび前記スレーブロボット双方の特異点問題を解決し得るようにした
ことを特徴とする。
上記マスタスレーブシステムは、前記マスタ目標変位演算装置が、前記マスタロボットの逆運動学演算によって、前記スレーブ変位に対応する前記マスタ目標変位を前記マスタロボットのマスタ関節座標系において求めることで、前記マスタアクチュエータによる前記マスタロボットの位置制御が前記マスタ関節座標系において行われることが好ましい。
また、上記マスタスレーブシステムは、前記マスタロボットの機構が、数値的な反復収束演算を必要とすることなく解析的に前記マスタロボットの逆運動学演算が行われ得るように構成されていることが好ましい。
なお、このような構成としては、例えば、前記マスタロボットが6以下の自由度を有し、前記6以下の自由度のうちの連続した3つの自由度が、単一のシリアルリンク機構を構成する3つの回転関節によってもたらされたものであり、前記3つの回転関節の回転軸またはその延長線が一点で交わるような構成が考えられる。
また、上記マスタスレーブシステムは、前記マスタロボットが複数のマスタロボットの中から選ばれたものであり、前記スレーブロボットが前記複数のマスタロボットのいずれにも電気的に接続可能な複数のスレーブロボットの中から選ばれたものであり、前記選ばれた各1つの前記マスタロボットおよび前記スレーブロボットが電気的に接続されていることが好ましい。
本発明によれば、マスタロボットおよびスレーブロボット双方の特異点問題を解決し得るマスタスレーブシステムを提供することができる。
本発明に係る力順送型マスタスレーブシステムの概略図である。 本発明に係る力順送型マスタスレーブシステムの制御ブロック図である。 本発明に係る力順送型マスタスレーブシステムのマスタアームの一例を示す概略図である。 本発明に係る力順送型マスタスレーブシステムのマスタアームとして不適当なマスタアームの一例を示す概略図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本発明に係る力順送型マスタスレーブシステム(正確には、力順送型バイラテラル制御が適用されるマスタスレーブシステム)1は、体幹Bの異なる位置に設けられるとともに、以下の要領で互いに電気的に接続されたマスタアームMを含むマスタロボットとスレーブアームSを含むスレーブロボットとからなる。この力順送型マスタスレーブシステム1において、マスタアームMは、操作者Uによって操られるアドミッタンス型の力覚提示装置である。
マスタアームMとスレーブアームSは、それぞれ、一端側に操作端となるグリップGと作業端dを有するとともに、他端側が体幹Bの異なる位置に備えられている。また、マスタアームMとスレーブアームSは、それぞれ、2本のリンクを有するとともに、グリップGまたは作業端dに接続される一端、体幹Bに接続される他端、およびリンク同士の接続部分に各1つの関節(一例として、回転関節)を有している。したがって、マスタアームMとスレーブアームSは、それぞれ3自由度を有している。
これらの関節には、マスタ変位センサPm1〜3およびスレーブ変位センサPs1〜3、マスタアクチュエータAm1〜3およびスレーブアクチュエータAs1〜3が備えられている。また、グリップGには、操作力センサFが備えられている。さらに、図1に示すように、この力順送型マスタスレーブシステム1には、位置制御系PC、マスタ目標変位演算装置2、駆動力制御系FCおよびスレーブ目標駆動力演算装置3が備えられている。
なお、本明細書では、マスタアームM、マスタ変位センサPm1〜3、マスタアクチュエータAm1〜3、操作力センサF(グリップG)、および位置制御系PCがマスタロボットに含まれ、スレーブアームS、スレーブ変位センサPs1〜3、スレーブアクチュエータAs1〜3、および駆動力制御系FCがスレーブロボットに含まれるものとする。
操作力センサFはマスタアームMに設けられ、操作者Uからのマスタ操作力fを計測する。マスタ変位センサPm1〜3はマスタアームMの各関節に設けられ、マスタ変位qおよびxを計測する。また、スレーブ変位センサPs1〜3はスレーブアームSの各関節に設けられ、スレーブ変位qおよびxを計測する。
マスタ目標変位演算装置2は、計測されたスレーブ変位qおよびxに基づきマスタ変位qおよびxの目標値であるマスタ目標変位を演算により求める。また、スレーブ目標駆動力演算装置3は、計測されたマスタ操作力fに基づき後述するスレーブ駆動力τの目標値であるスレーブ目標駆動力を演算により求める。
スレーブアクチュエータPs1〜3は、スレーブアームSの各関節に設けられ、スレーブ目標駆動力に基づきスレーブ駆動力制御系FCを通じてスレーブ駆動力τを発生させ、これによりスレーブアームSが駆動力制御される。一方、マスタアクチュエータAm1〜3は、マスタアームMの各関節に設けられ、マスタ変位qおよびxとマスタ目標変位とに基づきマスタ駆動力τを発生させ、これによりマスタアームMが位置制御される。より詳しくは、マスタアクチュエータAm1〜3は、マスタ変位センサPm1〜3からの信号とマスタ目標変位演算装置2からの信号との偏差が0になるように位置制御系PCを通じてマスタ駆動力τを発生させる。
このように、力順送型マスタスレーブシステム1では、スレーブ駆動力τを発生させるスレーブアクチュエータAs1〜3によってスレーブアームSが駆動力制御される一方、マスタ駆動力τを発生させるマスタアクチュエータAm1〜3によってマスタアームMが位置制御される。
図2は、この構成を制御ブロック図で表現したものである。図2のマスタロボットには、マスタアームM、マスタ変位センサPm1〜3、マスタアクチュエータAm1〜3、操作力センサF(グリップG)、および位置制御系PCが含まれる。また、スレーブロボットには、スレーブアームS、スレーブ変位センサPs1〜3、スレーブアクチュエータAs1〜3、および駆動力制御系FCが含まれる。
本発明者が特許文献1において提案した基本的な力順送型マスタスレーブシステムと本発明に係る力順送型マスタスレーブシステム1とは、マスタ目標変位演算装置2における演算が異なっている。より詳しくは、本発明に係る力順送型マスタスレーブシステム1のマスタ目標変位演算装置2は、マスタ目標変位xmdの集合がマスタロボットの特異点を含まないように予め定義しておいた写像φを用いて、スレーブ変位xに対応するマスタ目標変位xmdを求める。
本発明に係る力順送型バイラテラル制御では、マスタ制御則(18)に代えて、例えば次式のマスタ制御則を用いる。
Figure 0006201126
一方、スレーブ制御則は、前述のスレーブ制御則(19)をそのまま用いる。
また、本発明に係る力順送型バイラテラル制御では、マスタ目標変位演算装置2において、以下のようにして定義された写像φを用いる。
まず、マスタ操作領域の集合XをX∋xとし、スレーブ作業領域の集合XをX∋xとし、これらの集合間の写像φを次式のように定義する。
Figure 0006201126
さらに、マスタ操作領域内の全ての特異点近傍の集合XmSを、XmS⊂Xとする。このとき、写像φによる集合Xの像Xmd=φ(X)∋xmdについて、次式が成り立つように写像φを定める。
Figure 0006201126
このようにして定義した写像φによれば、スレーブ変位xに対応するマスタ目標変位xmd=φ(x)をマスタロボットの特異点近傍を回避して求めることができる。そして、これにより、マスタロボットおよびスレーブロボット双方の特異点問題を解決することができる。
なお、特異点近傍の集合XmSはマスタロボットの機構に依存するため、実装においては、マスタロボット毎に写像φを具体的に定義する必要があるが、スケール変換xmd=Sにxmdoだけの平行移動(オフセット)を加えてなる次式の写像φにおいて、xmdoをマスタ操作領域の中央付近に相当する位置とし、さらにスケール比Sをマスタ目標変位xmdが特異点近傍を含まなくなるまで小さくしておけば、多くの場合は事足りると予想される。
Figure 0006201126
式(32)で表される簡易的な写像φで事足りない場合は、単なるスケール変換(拡大縮小)と平行移動だけではなく、いわゆるアフィン変換によって回転・剪断を加えた線形変換により写像φを定義すればよい。この他、射影変換や適当な非線形変換により写像φを定義することもできる。
なお、非特許文献4のp.78−85には、異構造マスタスレーブシステムにおいてマスタ操作領域とスレーブ作業領域とを対応させる手法が記載されているが、この手法は、「形の異なるマスタとスレーブのほぼ全動作領域で、両者のおおよその運動方向を一致させる方法」であり、本発明のように特異点問題を解決し得るものではない。
ここで、上の説明では、マスタロボットの位置制御をマスタ制御則(29)に従って作業座標系で行うこととしたが、マスタロボットの逆運動学を用いれば、例えばマスタ制御則(33)に従ってマスタ関節座標系で位置制御を行うこともできる。
Figure 0006201126
ただし、マスタ関節変位q、およびその目標値であるマスタ目標関節変位qmdは、それぞれ以下の通りである。なお、マスタ関節変位qはマスタロボットの姿勢と等価なので、本明細書ではqを姿勢と呼ぶこともある。
Figure 0006201126
Figure 0006201126
式(34)、(35)においてψ -1は、マスタロボットの逆運動学を表す非線形関数である。前述の通り、本発明では、写像φがマスタロボットの特異点を回避しつつもスレーブ作業領域Xを全てカバーするよう定義されているため、逆運動学ψ -1(φ(x))は必ず解を持つ。
マスタ制御則(29)では、作業座標系での位置制御のためにヤコビ行列J(q)が用いられているので、作業座標系での変位誤差に対するゲインJ がマスタロボットの姿勢qに依存して変化することになる。すなわち、ある姿勢において適切だったゲインが、別の姿勢においては適切でなくなる可能性がある。一方、上記のマスタ制御則(33)では、マスタ関節座標系での変位誤差に対するゲインKがマスタロボットの姿勢qに依存しない定数となるので、システムの安定性の向上が期待できる。
なお、マスタ制御則(33)において逆運動学ψ -1(φ(x))は必ず解を持つと述べたが、この解が解析的に導出できるとは限らない。特に、多くの自由度を有するリンク機構の逆運動学には一般的な解析解が存在しないことが多い。解析解が存在しない場合は、数値解法、すなわちコンピュータによる数値的な反復収束計算によって解を導出する必要があるが、この計算は制御系への負荷が非常に大きいものであった。
しかしながら、例えば産業用のロボットアームの多くは、その機構を工夫することによって数値解法に依らずに解析的に解を導出し得るようになっている。これに関し、非特許文献10には、制御対象となるロボットが以下の2つの条件を満たせば、逆運動学の一般解が解析的に導出され得ることが示されている。
i)ロボットの自由度が6以下であること。
ii)6以下の自由度のうちの連続した3つの自由度が、単一のシリアルリンク機構を構成する3つ以上の回転関節によってもたらされたものであり、かつその3つの回転関節の回転軸またはその延長線が一点で交わること。
したがって、本発明においても、マスタロボットをこのような機構とすることによって、マスタ制御則(33)における逆運動学ψ -1(φ(x))の解を解析的に導出することができるようになり、高速かつ簡便にマスタ制御則(33)に従ったマスタロボットの位置制御を行えるようになる。
なお、力順送型ではない従来のマスタスレーブシステムではスレーブロボットに位置制御がなされるので、逆運動学を用いてシステムの安定性を向上させ、かつ制御を高速かつ簡便なものとするためには、スレーブロボットが上記条件i)およびii)を満たすような、逆運動学が解析的に導出可能な構造であることが好ましい。しかしながら、スレーブロボットにはタスク遂行のための作業性能が第1に求められるところ、必要な作業性能を実現するための構造と、逆運動学を解析的に導出可能とするための構造との両立を図ることは困難である。この点、マスタロボットは、人間が操作し易い構造になっていれば十分なので、逆運動学を解析的に導出可能とし、かつ操作性に優れた構造とすることは、比較的容易である。
上記条件i)およびii)を満たすマスタロボット(マスタアームM’)の一例を図3に示す。同図に示すように、マスタアームM’は、θ1〜θ6で示された6つの回転関節を備え、これにより6自由度を有している。また、回転関節θ1〜θ6のうちの連続した3つの回転関節θ4〜θ6はシリアルリンク機構を構成し、さらに、回転関節θ4の回転軸の延長線と回転関節θ6の回転軸の延長線とが、回転関節θ5の回転軸上の一点で交わっている。
なお、例えば、回転関節θ1、θ2およびθ4は連続しているとは言えない。また、例えば、回転関節θ1、θ2およびθ3は連続しているものの、その回転軸(または延長線)が一点で交わっていない。
次に、上記条件i)およびii)を満たさないマスタロボット(マスタアームM’’)の一例を図4に示す。同図に示すように、マスタアームM’’は、θ1〜θ3、θ5〜θ8で示された7つの回転関節、およびθ4で示された1つの直動関節によってもたらされる8自由度を有しているので、条件i)を満たさない。また、マスタアームM’’には、連続する3つの回転関節の組が3つ(θ1〜θ3、θ5〜θ7、θ6〜θ8)存在しているが、どの組においても回転軸(または延長線)は一点で交わっていない。したがって、マスタアームM’’は、条件ii)も満たしていない。
本発明に係る力順送型マスタスレーブシステムは、複数のマスタロボットの中から選ばれた1つのマスタロボットと、複数のマスタロボットのいずれにも電気的に接続可能な複数のスレーブロボットの中から選ばれた1つのスレーブロボットとを電気的に接続してマスタスレーブシステムを構築したものであってもよい。上記の通り、マスタロボットには操作性が求められ、スレーブロボットには作業性が求められるところ、このような構成にすれば、自分の好みのマスタロボット(マイマスタロボット)を使いつつ、タスクに応じて複数のスレーブロボットを交換して使い分けることができるので、熟練のためのトレーニングを短縮しつつ、単にスレーブロボットの作業端に設けられたエンドエフェクタを交換するだけでは済まないような多種多様なタスクに対応できるというメリットが得られる。
この構成は、例えば手術ロボットとしてのマスタスレーブシステムに好適である。マスタについては、医師が自らの身体やスキル、好みに合わせて、良く調整されたマスタロボットを選択し、スレーブについては、予め準備しておいた多種多様なスレーブロボットの中から術式に応じたものを選択することができる。また、この構成は、1つのマスタロボットで手術ロボットのような小さなスレーブロボットおよびパワー増幅ロボットのような大きなスレーブロボットのいずれかを選択的に操作したい場合にも好適である。
なお、特異点問題を抱えている従来のマスタスレーブシステムでは、マスタロボットおよびスレーブロボットの組み合わせ毎に特異点問題に個別に対処せねばならないため、上記のような複数のマスタロボットおよびスレーブロボットの中から任意に選択した各1つのマスタロボットおよびスレーブロボットを接続してマスタスレーブシステムを構築することは、非常に困難であった。
しかしながら、本発明に係る力順送型マスタスレーブシステムによれば、マスタロボットおよびスレーブロボット双方の特異点問題が解決されるので、スレーブロボットについては可動範囲全域(全作業領域)の情報(つまり、スレーブ作業領域の集合Xの情報)、マスタロボットについては可動範囲全域(全操作領域)と特異姿勢近傍の情報(つまり、マスタ操作領域の集合Xとマスタ操作領域内の全ての特異点近傍の集合XmSの情報)を持たせておき、各々1つを選んで接続した時に、それらの情報から写像φを手動もしくは自動で定義するだけで、任意のマスタロボットおよびスレーブロボットを組み合わせてなるマスタスレーブシステムを容易に構築することができる。なお、写像φの定義は、例えば式(32)のSとxmdoを調節するような方法であれば、容易に自動化することができる。
[注意事項]
本明細書では、便宜上、マスタロボット、スレーブロボットという表現を使用したが、必ずしも本発明はいわゆるロボットらしいロボットへの適用のみに限られない。マスタスレーブシステムおよびバイラテラル制御には広範な応用が期待されており、あらゆる電気式マスタスレーブシステムに本発明は適用することができる。例えばX−by−Wireシステム(バイワイヤシステム)と呼ばれるものは、全て電気式マスタスレーブシステムである。したがって、マスタスレーブロボットシステムのみならず、自動車、航空機、船舶、その他あらゆる操縦型機械のX−by−Wireシステムにおいてバイラテラル制御を使用する場合に、本発明をそのまま適用することができる。
本明細書中の「変位」および「位置」は一般化変位を意味し、並進・回転の位置姿勢を含むものとする。同じく「力」は一般化力を意味し、並進力・回転力(トルク)を含むものとする。
各バイラテラル制御における具体的な制御則は説明のための簡単な例であり、制御目的を変えなければ、より高度な制御則を用いることができる。例えば、位置制御則としては比例制御が用いられているが、もちろんPID制御や、PID制御を拡張したProxy-based Sliding Mode制御(非特許文献11参照)、あるいは、それをさらに拡張した特許文献2記載のような高度な制御則を用いることもできる。
操作力センサはハードウェアとしての力センサでなくてもよく、電磁アクチュエータの電流や油空圧アクチュエータの圧力から操作力を推定する手段や、変位センサの信号等からオブザーバ等によって操作力を推定する手段であってもよい。
力順送型バイラテラル制御では、操作結果が変位情報によって提示されるため、直流を下限、数百Hzから1kHz程度を上限とする広い周波数帯域を使って操作結果の提示がなされる。この操作結果の提示は、必ずしも一種類のアクチュエータで行う必要はなく、例えば、提示できる周波数帯域の異なる複数のアクチュエータで分担して提示してもよい。複数のアクチュエータの組み合わせとしては、例えば、大モータと小モータの組み合わせ(いわゆるマクロ・マイクロシステム)や、あるいは低周波帯域を担うモータと高周波帯域を担う振動子またはスピーカまたはボイスコイルモータ等の組み合わせが考えられる。
1 マスタスレーブシステム
2 マスタ目標変位演算装置
3 スレーブ目標駆動力演算装置
M マスタアーム
S スレーブアーム
操作力センサ
FC 駆動力制御系
PC 位置制御系
Am1〜3 マスタアクチュエータ
As1〜3 スレーブアクチュエータ
Pm1〜3 マスタ変位センサ
Ps1〜3 スレーブ変位センサ

Claims (5)

  1. 操作者によって操られるアドミッタンス型の力覚提示装置であるマスタロボットと、前記マスタロボットに少なくとも電気的に接続され、かつ前記マスタロボットから少なくとも体幹以外が機械的に独立して動作するスレーブロボットとからなる、バイラテラル制御されるマスタスレーブシステムであって、
    前記マスタロボットを位置制御するマスタ駆動力を発生させる少なくとも一つのマスタアクチュエータと、
    前記スレーブロボットを駆動力制御するスレーブ駆動力を発生させる少なくとも一つのスレーブアクチュエータと、
    前記マスタロボットにおけるマスタ変位を計測する少なくとも一つのマスタ変位センサと、
    前記スレーブロボットにおけるスレーブ変位を計測する少なくとも一つのスレーブ変位センサと、
    前記操作者が前記マスタロボットに加えるマスタ操作力を計測する少なくとも一つの操作力センサと、
    前記スレーブ変位を写像することにより、当該スレーブ変位に対応する前記マスタ変位の目標値であるマスタ目標変位を求めるマスタ目標変位演算装置と、
    前記マスタ操作力に基づいて前記スレーブ駆動力の目標値であるスレーブ目標駆動力を求めるスレーブ目標駆動力演算装置と、
    を備え、
    前記スレーブアクチュエータが前記スレーブ目標駆動力に基づいて前記スレーブ駆動力を発生させる一方、前記マスタアクチュエータが前記マスタ目標変位と前記マスタ変位とに基づいて前記マスタ駆動力を発生させることで、
    (1)前記スレーブロボットが環境に加えるスレーブ作業力を計測する前記バイラテラル制御のための作業力センサを不要とし、かつ(2)前記操作者にマスタダイナミクスを感じさせることなく、スレーブダイナミクスを感じさせるようにし、
    さらに、前記マスタ目標変位演算装置における前記写像を、前記マスタ目標変位の集合が前記マスタロボットの特異点を含まないように予め定義しておくことで、
    (3)前記スレーブロボットと前記マスタロボットとが同構造であるか異構造であるかに関わらず、前記スレーブロボットの可動範囲全域において前記マスタロボットおよび前記スレーブロボット双方の特異点問題を解決し得るようにした
    ことを特徴とするマスタスレーブシステム。
  2. 前記マスタ目標変位演算装置が、前記マスタロボットの逆運動学演算によって、前記スレーブ変位に対応する前記マスタ目標変位を前記マスタロボットのマスタ関節座標系において求めることで、
    前記マスタアクチュエータによる前記マスタロボットの位置制御が、前記マスタ関節座標系において行われるようにした
    ことを特徴とする請求項1に記載のマスタスレーブシステム。
  3. 前記マスタロボットの機構が、数値的な反復収束演算を必要とすることなく解析的に前記マスタロボットの逆運動学演算が行われ得るように構成されている
    ことを特徴とする請求項2に記載のマスタスレーブシステム。
  4. 前記マスタロボットが6以下の自由度を有し、
    前記6以下の自由度のうちの連続した3つの自由度が、単一のシリアルリンク機構を構成する3つの回転関節によってもたらされたものであり、
    前記3つの回転関節の回転軸またはその延長線が一点で交わる
    ことを特徴とする請求項3に記載のマスタスレーブシステム。
  5. 前記マスタロボットは、複数のマスタロボットの中から選ばれたものであり、
    前記スレーブロボットは、前記複数のマスタロボットのいずれにも電気的に接続可能な複数のスレーブロボットの中から選ばれたものであり、
    前記選ばれた各1つの前記マスタロボットおよび前記スレーブロボットが電気的に接続されている
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のマスタスレーブシステム。
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