以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1から図5に、本発明の椅子のロッキング機構の実施形態の一例を示す。なお、本明細書においては、椅子の座に座った着座者を基準にして上下,前後,左右を定義する。
本実施形態では、椅子の脚の脚支柱19の上端部に取り付けられたメインフレーム1と、当該メインフレーム1の上方に配置されて当該メインフレーム1に対して傾動可能に支持されて取り付けられる座受部材2と、当該座受部材2の左右に離間し対向して配設されると共にメインフレーム1に対して揺動可能に支持されて取り付けられてメインフレーム1の後方に延出する一対の背支持フレーム3,3とを備える。
なお、脚支柱19の上側部分にはガススプリングが内蔵されており、メインフレーム1はこのガススプリングの上端部に取り付けられる。また、座受部材2の上面には、例えば芯材となる座板とその上面に載置されるクッション材及び当該クッション材を覆う上張地とから構成される座が取り付けられ支持される。また、背支持フレーム3の、メインフレーム1の後方に延出する側には、必要に応じて背支桿等の背凭れ支持部材などを介在させて、背凭れが取り付けられる。ただし、これら座や背凭れの形状・形態等は特定のものには限定されないので、詳細についての説明や図示は省略する。
そして、本実施形態の椅子のロッキング機構は、メインフレーム1と、座受部材2と、メインフレーム1と揺動可能に連結されると共に座受部材2と回動可能に連結される背支持フレーム3とを備え、メインフレーム1に対して座受部材2を前後動及び上下動可能且つ揺動可能に連結する回転スライド機構5を有するようにしている。
特に、本実施形態の椅子のロッキング機構は、回転スライド機構5を、メインフレーム1に左右対向して設けられた前後方向の長孔1b,1bと、座受部材2に左右対向して設けられた上下方向の長孔2d,2dと、これら前後方向の長孔1b,1bと上下方向の長孔2d,2dとを左右方向に貫通する連結ピン4とにより構成するようにし、さらに、連結ピン4を貫通させてメインフレーム1に取り付けられるスライダ17と、スライダ17によってメインフレーム1に対して前後にスライド可能且つ揺動可能に支持されると共に座受部材2に設けられたガイド部2eに一端が支持される反力伝達アーム16と、反力伝達アーム16を介して座受部材2の前傾に対する反発力を発揮する反力付与手段18とを備え、座受部材2が、反力付与手段18により発揮される反発力によって反力伝達アーム16を介して付勢されている水平位置と、反力伝達アーム16が反力付与手段18の反発力に抗しながら揺動した前傾位置とに切り替えられるようにしている。
メインフレーム1は、座受部材2と背支持フレーム3とを支持して椅子の脚の脚支柱19に搭載させるためのものであり、座受部材2,背支持フレーム3などの各構成部材を支持する部位と剛性とを備えていれば良く、特定の構造や形状などに限定されるものではない。本実施形態では具体的には、メインフレーム1は、左右の対向する側壁1a,1aと、椅子の脚の脚支柱19の上端部に嵌合する筒状の脚支柱支持部1dと、これら左右の対向する側壁1a,1a及び脚支柱支持部1dを連結するために左右の側壁1a,1aの間に架け渡されて適宜部分的に設けられる天板,底板,梁とを骨格構造として有する。そして、メインフレーム1は、脚支柱支持部1dにより、上側部分にガススプリングが内蔵された脚支柱19の上端部に締まり嵌めによって固定されて取り付けられる。
座受部材2は、周縁上板2cと、周縁上板2cの外側端から左右対向して下方に延出する外側壁2a,2aと、周縁上板2cの内側端から(即ち、外側壁2a,2aの内側位置において)左右対向して下方に延出する内側壁2b,2bとを有する。
座受部材2の前部は、回転スライド機構5を介して、座受部材2がメインフレーム1に対して前後方向及び上下方向にスライド可能且つ傾動可能にメインフレーム1に連結されて支持される。
回転スライド機構5は、メインフレーム1の左右の対向する側壁1a,1aそれぞれの前端寄り位置に対向して設けられた前後方向の長孔1b,1bと、座受部材2の左右の対向する内側壁2b,2bそれぞれの前側位置に対向して設けられた上下方向の長孔2d,2dと、左右方向に配設されて前後方向の長孔1b,1b及び上下方向の長孔2d,2dに案内される連結ピン4とによって構成される。なお、前後方向の長孔1bは、概ね前後方向であれば良く、水平に対して傾斜していても構わない。また、上下方向の長孔2dは、概ね上下方向であれば良く、垂直に対して傾斜していても構わない。
連結ピン4は、メインフレーム1の対向する前後方向の長孔1b,1bと、座受部材2の対向する上下方向の長孔2d,2dとを貫通する。連結ピン4は、メインフレーム1の長孔1bを前後摺動可能且つ軸回転可能に貫通し、また、座受部材2の長孔2dを上下摺動可能且つ軸回転可能に貫通する。
ただし、回転スライド機構5の構成は、メインフレーム1に対して座受部材2を前後方向及び上下方向にスライド可能且つ傾動可能に連結するものであれば上述のものに限られるものではなく、例えば、座受部材2の内側壁2b,2bに前後方向の長孔が対向して設けられると共にメインフレーム1の側壁1a,1aに上下方向の長孔が対向して設けられてこれら前後方向の長孔及び上下方向の長孔を貫通して連結ピンが設けられる構成でも良い。あるいは、板状リンクであって軸方向一端の一面に当該一面から突出する第一の連結ピンと軸方向他端の他面に当該他面から突出する(即ち、第一の連結ピンと反対向きに突出する)第二の連結ピンとをそれぞれが有する左右一対のリンクがメインフレーム1の側壁1aと座受部材2の内側壁2bとの間のそれぞれ(即ち、左右のそれぞれ)に介在させられて配設され、第一の連結ピンがメインフレーム1の側壁1aに前後方向(若しくは上下方向)に摺動可能且つ軸回転可能に支持されると共に第二の連結ピンが座受部材2の内側壁2bに上下方向(若しくは前後方向)に摺動可能且つ軸回転可能に支持される構成でも良い。
背支持フレーム3は、背凭れ(図示省略)を支持すると共に揺動軸6を支点として座受部材2を傾動させる梃子として機能するものであり、回転スライド機構5の後方の位置に左右方向に配設された揺動軸6を介して、メインフレーム1に対して揺動可能に連結される(なお、図2及び図3においては左右一対の背支持フレーム3,3の図示を省略している)。
揺動軸6は、メインフレーム1に対して位置固定されて左右の対向する側壁1a,1aを軸回転可能に貫通し、また、左右両端部分それぞれが左右の背支持フレーム3の前端寄り位置に挿し込まれる。
背支持フレーム3の前端寄り位置(言い換えると、メインフレーム1側位置)に反力伝達フレーム7が固定されて取り付けられる。本実施形態では具体的には、取付片7aにより、反力伝達フレーム7が背支持フレーム3に固定されて取り付けられる。
そして、メインフレーム1と反力伝達フレーム7が取り付けられた背支持フレーム3との間に介在させられて反力付与機構10が備えられる(なお、図2及び図3においては反力付与機構10の図示を省略している)。
反力付与機構10は、反力伝達フレーム7を介して背支持フレーム3の前端部を後ろに向けて付勢することによって背凭れ(図示省略)及び座受部材2の傾動に対して反発力を与えて初期位置に戻す働きをする。なお、背支持フレーム3の前端部が後方に一杯まで押し込まれ、背支持フレーム3に取り付けられた背凭れが上方に一杯まで引き上げられた状態を初期位置とし、図1及び図2,図3は初期位置にある状態を表す。
本実施形態の反力付与機構10は、摺動軸10aによって案内されて相互の間隔を変更可能な第一のマウント10b及び第二のマウント10cと、これら両ばねマウント10b,10cの間に介在する圧縮コイルばね10dとを有する。
そして、第一のマウント10bは、メインフレーム1に一体成形されたマウント受け1cに形成された支持孔に嵌入されて支持される。
また、第二のマウント10cは、後端に係合フック10eを有する。そして、反力伝達フレーム7の前端部に取り付けられた係合軸8が係合フック10eに嵌まり込み、第二のマウント10c及び反力伝達フレーム7を介して反力付与機構10と背支持フレーム3とが揺動可能に連結される。
また、座受部材2と背支持フレーム3とは、左右方向に配設された回動軸9を介して、相互に相対回動(揺動)可能に連結される。これにより、座受部材2の後部は、背支持フレーム3に支持され、言い換えると、回動軸9と背支持フレーム3と揺動軸6とを介してメインフレーム1に支持される。
回動軸9は、座受部材2の後端寄り位置において座受部材2に対して位置固定されて左右の対向する外側壁2a,2aを軸回転可能に貫通し、また、左右両端部分それぞれが左右の背支持フレーム3に挿し込まれる。
なお、前から順に、連結ピン4,揺動軸6,回動軸9の順に配設される。また、これらのピンや軸の滑りをよくするため、これらピンや軸が貫通したり支持されたりする部位にスリーブが取り付けられるようにしても良い。また、これらピンや軸が抜け落ちないように、端部に、ヘッド部や抜け止め用リング・止め輪などの係止手段(図示省略)が適宜設けられる。
また、メインフレーム1と背支持フレーム3との間に介在して両者の間で伸長しようとする力(伸び方向の反発力)を発揮する第一の流体スプリング11が備えられる(なお、図2及び図3においては第一の流体スプリング11及び後述する操作機構15の図示を省略している)。本実施形態では、第一の流体スプリング11としてロック機構付きのガススプリングが用いられる。なお、第一の流体スプリング11がロック機構を備えることにより、背支持フレーム3(及び背凭れ)が任意の傾斜位置で固定され得る。ただし、第一の流体スプリング11は、ロック機構付きのガススプリングに限定されるものではなく、ロック機構のないガススプリングでも良いし、さらに言えば、オイルスプリングでも良い。
第一の流体スプリングとしてのガススプリング11は、シリンダー11a内にシャフト11bと連結したピストン(図示せず)を内蔵し、シリンダー11a内のピストンの両側の空間を連通路によって連通させた構造を有する。この構造により、ガススプリング11は、ピストンの位置によらずほぼ一定の大きさの反発力を発揮する。
ガススプリング11は、シャフト11bがシリンダー11aから突き出す向きの先端側に、ロック機構の操作機構15を備える。ガススプリング(流体スプリング)のロック機構の操作機構及びその取り付け態様自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する。概要としては、操作機構15は、ガススプリング11のシャフト11b先端の調整ピン11cを押圧する操作アーム15aと、当該操作アーム15aをアーム揺動軸15bを中心に揺動可能に支持すると共にガススプリング11のシャフト11bが貫通して支持される支持フレーム15cと、操作アーム15aを揺動させるために一端が操作アーム15aに連結されたワイヤ15dとを有する。
そして、ワイヤ15dの、操作アーム15aに連結する側とは反対側の端部(図示省略)が引っ張られ操作アーム15aが揺動して調整ピン11cが押し込まれることによってシリンダー11a内の連通路に設けられたバルブが開けられ、ガススプリング11が伸縮可能になって背支持フレーム3がロッキング可能になる。一方、ワイヤ15dが緩められて調整ピン11cが引き出されることによってバルブが閉じられ、ガススプリング11が伸縮不能になって長さが固定されてメインフレーム1と背支持フレーム3とガススプリング11とによって三角形のフレームが形成され、背支持フレーム3がロックされてロッキング不能になる。
支持フレーム15cは、左右方向に配設された支持軸12によってメインフレーム1に対して回転可能に支持される。これにより、ガススプリング11の一端(図1に示す例では前端)はメインフレーム1と回転可能に連結される。
ガススプリング11は、また、シリンダー11aの、シャフト11bが突出する側とは反対側の端部に円筒形状の軸受け部11dを有する。軸受け部11dは、円筒貫通孔の軸心方向を左右方向にして配設され、左右方向に配設された連結軸13を貫通させて軸回転可能(即ち、摺動可能)にこの連結軸13を支持する。
連結軸13は、左右両端部分それぞれが左右の背支持フレーム3に挿し込まれる。なお、連結軸13は、回動軸9の後方に配設される。この連結軸13により、ガススプリング11の他端(図1に示す例では後端)は背支持フレーム3と回動可能に連結される。
そして、ガススプリング11のシリンダー11aの、シャフト11bが突出する側の端面(図1に示す例では前端面)に、シャフト11bを摺動可能に貫通させてストッパ部材14が取り付けられる。
ストッパ部材14は、第一の流体スプリング11としてはシャフト11bを更に引き込むことが可能な状態においてシャフト11bの引き込みを途中で制限することにより、第一の流体スプリング11が完全に収縮する前に当該第一の流体スプリング11の収縮を規制するものである。
ストッパ部材14の素材や形状は、特定のものに限定されるものではなく、第一の流体スプリング11の収縮を規制する作用を発揮し得るものであれば、どのようなものであっても良い。
なお、ストッパ部材14の素材は、クッション材としての機能を発揮し得るように、完全な剛体よりも、適度に変形し得るもの(即ち、弾性挙動するもの)が好ましい。具体的には例えば、素材としてはエラストマー系樹脂が好ましい。また、形状としては図1や図4,5に示すように環状(ドーナツ状)が挙げられる。
さらに、座受部材2にガイド部2eが設けられて当該ガイド部2eと連結ピン4とを介して座受部材2とメインフレーム1との間に介在させられて反力伝達アーム16及びスライダ17が配設されると共に、反力伝達アーム16と座受部材2との間に介在して両者の間で伸長しようとする力(伸び方向の反発力)を発揮する反力付与手段としての第二の流体スプリング18が備えられる。
ガイド部2eは、反力伝達アーム16の一端を回転可能且つ回転軸心方向と直交する方向にスライド可能に支持するものである。ガイド部2eは、本実施形態では、後方開口の左右方向の溝として(言い換えると、縦断面が後方開口のコ字形に)、座受部材2の前側位置において座受部材2に対して位置固定されて設けられる。なお、ガイド部2eは、座受部材2と一体のものとして形成されて設けられるようにしても良いし、座受部材2とは別体のものとして形成され取り付けられて設けられるようにしても良い。
反力伝達アーム16は、反力付与手段としての第二の流体スプリング18の伸び方向の反発力を、ガイド部2eを介して座受部材2の前傾に対する反発力として座受部材2に伝達するものである。
反力伝達アーム16は、本実施形態では、左右に離間し対向して前方に延出するアーム部16a,16aと、左右に離間し対向して下方に延出する連結部16b,16bと、アーム部16aと連結部16bとが連接していると共に左右対向するアーム部16a及び連結部16bをつなぎ合わせている屈曲部16cとを有する。
各アーム部16aの前端部分は、軸心方向を左右方向にする円柱状に形成される。そして、この各アーム部16aの前端部分である円柱部分は、ガイド部2eとしての左右方向の溝に挿し入れられ、摺動可能に(具体的には、円柱部分を中心としてアーム部16aが揺動可能に、且つ、前後にスライド可能に)ガイド部2eに支持される。
スライダ17は、反力伝達アーム16をメインフレーム1に対して前後にスライド可能且つ揺動可能に支持するものである。
スライダ17は、本実施形態では、ベース部17aと、ベース部17aの左右側端のそれぞれからメインフレーム1の左右側方位置において対向して下方に延出するガイド部17b,17bと、左右に離間し対向してベース部17aから上方に延出する支持部17c,17cとを有する。
左右の対向するガイド部17b,17bは、メインフレーム1の側壁1aと座受部材2の内側壁2bとの間に配設される。そして、左右の対向するガイド部17b,17bを連結ピン4が左右方向に貫通する。このように、メインフレーム1の前後方向の長孔1b,1b内を移動する連結ピン4が貫通することにより、スライダ17はメインフレーム1に対して前後スライド可能に取り付けられる。
左右の対向する支持部17c,17cは、アーム揺動軸20を介して反力伝達アーム16を揺動可能に支持する。具体的には、アーム揺動軸20が反力伝達アーム16の屈曲部16cを左右方向に貫通し、このアーム揺動軸20の両端部がスライダ17の左右対向する支持部17c,17cに軸回転可能に支持される。これにより、反力伝達アーム16が、支持部17c,17cによってスライダ17に揺動可能に支持される。
反力付与手段としての第二の流体スプリング18は、反力伝達アーム16を揺動させることによって反力伝達アーム16のアーム部16a,16a及び座受部材2のガイド部2eを介して座受部材2の傾動に対して反発力を与えるものである。なお、このような反発力を与えるものとしての反力付与手段は、流体スプリングに限定されるものではなく、例えば反力付与機構10のように圧縮コイルばね及び両端のマウントを有するものでも良い。
本実施形態では、反力付与手段としての第二の流体スプリング18としてロック機構付きのガススプリングが用いられる。なお、反力付与手段としての第二の流体スプリング18がロック機構を備えることにより、座受部材2(及び座)が任意の傾斜位置で固定され得る。ただし、第一の流体スプリング11と同様に、第二の流体スプリング18も、ロック機構付きのガススプリングに限定されるものではなく、ロック機構のないガススプリングでも良いし、さらに言えば、オイルスプリングでも良い。
反力付与手段(第二の流体スプリング)としてのガススプリング18は、第一の流体スプリングとしてのガススプリング11と同様に、シリンダー18a内にシャフト18bと連結したピストン(図示せず)を内蔵し、シリンダー18a内のピストンの両側の空間を連通路によって連通させた構造を有する。
第二の流体スプリング18は、シャフト18bがシリンダー18aから突き出す向きの先端側に、ロック機構の操作機構の一部である支持フレーム21を有する。なお、第二の流体スプリング18のロック機構の操作機構は、支持フレーム21を除いて図示を省略している。第二の流体スプリング18のロック機構の操作機構の具体的な構造は、第一の流体スプリング11のロック機構の操作機構15と同様である。
支持フレーム21は、左右の対向する側板21a,21aそれぞれの外面から左右に突出する円柱状の凸部21b,21bによって座受部材2に対して回転可能に支持される。これにより、第二の流体スプリング18の一端(図1に示す例では後端)は座受部材2と回転可能に連結される。
第二の流体スプリング18は、また、シリンダー18aの、シャフト18bが突出する側とは反対側の端部に円筒形状の軸受け部18cを有する。軸受け部18cは、円筒貫通孔の軸心方向を左右方向にして配設され、左右方向に配設された連結軸23を貫通させて軸回転可能(即ち、摺動可能)にこの連結軸23を支持する。
連結軸23は、左右両端部分それぞれが、反力伝達アーム16の左右対向する連結部16bに挿し込まれる。この連結軸23により、第二の流体スプリング18の他端(図1に示す例では前端)は反力伝達アーム16と回動可能に連結される。
上述した椅子のロッキング機構の動作を以下に説明する。
まず、座や背凭れに荷重がかけられていない状態では、図1に示すように、反力付与機構10により、反力伝達フレーム7を介して、背支持フレーム3の前部が当該背支持フレーム3の回転軸である揺動軸6よりも下方位置において後ろに向けて付勢され、背凭れ(図示省略)が着座者の自然姿勢の背中を支持する位置(初期位置)にある。なお、第一の流体スプリング11も反力付与機構10による上記付勢と同調する付勢力を発揮している。また、第二の流体スプリング18によって反力伝達アーム16を介して座受部材2の前部が上に向けて付勢され、座(図示省略)が、着座に適当な水平位置にある。このとき、回転スライド機構5を構成する連結ピン4は、前後方向の長孔1b,1bの前端部に位置していると共に、上下方向の長孔2d,2dの下端部に位置している。
そして、着座者が前屈みになって座の前部に荷重がかけられると、図4に示すように、前後方向の長孔1b,1bによる拘束によって上下方向に移動できない連結ピン4に対して上下方向の長孔2d,2dの分だけ座受部材2の前部が下がると共に反力伝達アーム16が揺動して第二の流体スプリング18が押し縮められながら、座受部材2が回動軸9を中心として揺動して座が前傾する。このとき、背支持フレーム3は、初期位置のままであり、傾動しない。すなわち、座受部材2の前傾は、回動軸9によって行われ、揺動軸6とは関係なく行われる。また、連結ピン4は、前後方向の長孔1b,1bの前端部に位置していると共に、上下方向の長孔2d,2dの上端部に位置している。なお、反力伝達アーム16のアーム部16a,16aの前端部分は、座受部材2のガイド部2e内を後ろ向きにスライドすることにより、座受部材2の支持点の位置変更に対応する。
さらに、図4に示す座が前傾している状態において着座者が背凭れに凭り掛かると、図5に示すように、反力付与機構10(具体的には、圧縮コイルばね10d)が押し縮められながら、背凭れ及び背支持フレーム3が揺動軸6を中心として後傾する。同時に、回動軸9を介しての連結によって座受部材2の後部が後方斜め下向きに引き込まれると共に連結ピン4が前後方向の長孔1b,1b内を後ろ向きに移動することによって座受部材2が後ろ向きにスライドする。このとき、スライダ17も、座受部材2の後ろ向きのスライドに合わせて、メインフレーム1に対して後ろ向きにスライドする。また、連結ピン4は、前後方向の長孔1b,1bの後端部に位置していると共に、上下方向の長孔2d,2dの上端部に位置している。このように、回転スライド機構5の上下方向の長孔2d,2dによって座受部材2は前傾することができ、且つ、座受部材2が前傾している状態で回転スライド機構5の前後方向の長孔1b,1bによって座受部材2が後ろにスライドすることができ、このため、背支持フレーム3は後傾することができる。
以上のように構成された本発明の椅子のロッキング機構によれば、背支持フレーム3が傾動可能であると共に、座受部材2が前傾する際に背支持フレーム3が前傾することがなく、且つ、座受部材2が前傾した状態から背支持フレーム3を後傾させることができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるものの本発明の具体的な実施の形態がこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、メインフレーム1,座受部材2,背支持フレーム3などの各構成部材の具体的な形状や態様は、上述の実施形態におけるものに限られるものではなく、椅子の用途やデザインなどを踏まえて適宜選択される。具体的には例えば、上述の実施形態の背支持フレーム3,3は左右に離間し対向して配設される一対のものであるが、一本のフレームからなる背支持フレームであっても良い。
また、上述の実施形態では反力伝達フレーム7が背支持フレーム3とは別体の部材として形成されて背支持フレーム3に固定されて取り付けられるようにしているが、反力伝達フレーム7としての機能を有する部位を背支持フレーム3と一体に形成するようにしても良い。
また、上述の実施形態では反力付与機構10として圧縮コイルばね10d及び両端のマウント10b,10cを有するものが用いられるようにしているが、反力付与機構10は、背支持フレーム3及び座受部材2の傾動に対して反発力を与えるものであれば特定の仕組みに限定されるものではなく、具体的には例えば流体スプリングでも良い。
また、上述の実施形態では第一の流体スプリング11の他に反力付与機構10を備えるようにしているが、本発明において反力付与機構10は必須の構成ではなく、反力付与機構10を備えずに第一の流体スプリング11のみを備える構成としても良い。第一の流体スプリング11も、メインフレーム1と背支持フレーム3との間に介在して両者の間で伸長しようとする力を発揮するものであり、背凭れ(図示省略)及び座受部材2の傾動に対して反発力を与えて初期位置に戻すことができる。
また、上述の実施形態では流体スプリング11が椅子の脚の脚支柱19に対して後方位置に備えられるようにしているが、流体スプリング11が椅子の脚の脚支柱19に対して前方位置に備えられるようにしても良い。具体的には例えば、図1に示す例における反力付与機構10に代えて(言い換えると、反力付与機構10と入れ換えて)、メインフレーム1と背支持フレーム3との間に介在させられて備えられるようにしても良い。さらに、複数の流体スプリングが備えられるようにしても良く、具体的には例えば二本の流体スプリングが左右方向に並べられて備えられるようにしても良い。
また、上述の実施形態ではメインフレーム1と背支持フレーム3との連結など部材同士が揺動・回動・回転可能に連結されるために両部材に左右対向する貫通孔が設けられると共にこれら左右の貫通孔に亘って設けられる一本の軸やピンが用いられるようにしているが、部材同士を揺動・回動・回転可能に連結する構造であれば前述の構造に限られるものではなく、二本の短い軸やピンを用いて左右別々の軸やピンで両部材を連結するようにしても良いし、一方の部材に円柱状の凸部を設けると共に他方の部材に貫通孔若しくは凹部若しくはC字形状の爪部(軸受け部)を設けてこれら凸部と貫通孔・凹部・爪部とを摺動可能に噛み合わせて連結するようにしても良い。