以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更しうることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
以下に説明する実施の形態において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる場合がある。なお、図面において示す構成要素、すなわち層や領域等の厚さ、幅、相対的な位置関係等は、実施の形態において説明する上で明確性のため、誇張して示される場合がある。
なお、本明細書等において「上」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」であることを限定するものではない。例えば、「絶縁層上のゲート電極層」の表現であれば、絶縁層とゲート電極層との間に他の構成要素を含むものを除外しない。「下」についても同様である。
また、本明細書等において「電極層」や「配線層」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極層」は「配線層」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極層」や「配線層」という用語は、複数の「電極層」や「配線層」が一体となって形成されている場合なども含む。
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、ソースとは、ソース領域、ソース電極、及びソース配線の一部または全部のことをいう。ソース領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ソース電極とは、ソース領域に接続される部分の導電層のことをいう。ソース配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいい、例えば表示装置における信号線がソース電極に電気的に接続される場合にはソース配線に信号線も含まれる。
ドレインとは、ドレイン領域、ドレイン電極、及びドレイン配線の一部または全部のことをいう。ドレイン領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ドレイン電極とは、ドレイン領域に接続される部分の導電層のことをいう。ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいい、例えば表示装置における信号線がドレイン電極に電気的に接続される場合にはドレイン配線に信号線も含まれる。
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線などが含まれる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の作製方法について図1を用いて説明する。
本発明の一態様の半導体装置の作製方法は、まず、基板400上に半導体層403を形成する。
使用できる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。
また、基板400としてシリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板等を用いてもよい。また、SOI基板、半導体基板上に半導体素子が設けられたものなどを用いることができる。
半導体層403としては、シリコン系半導体(アモルファスシリコン、多結晶シリコン等)、酸化物半導体(酸化亜鉛、酸化インジウム等)等を用いることができる。半導体層403に用いる半導体として好適な半導体として、酸化物半導体があげられる。酸化物半導体については、実施の形態3において詳細を説明する。
半導体層403は、基板400上に半導体膜を成膜した後、該半導体膜を島状の半導体層403に加工することで形成できる。半導体膜はスパッタリング法、蒸着法、パルスレーザ堆積法(Pulsed Laser Deposition:PLD法)、PCVD法、ALD法、またはMBE法などを用いて成膜することができる。
続いて、半導体層403上にゲート絶縁膜を形成する。
ゲート絶縁膜の材料として、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ハフニウム、または酸化タンタルなどの酸化物絶縁層を用いることが好ましい。また、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy、x>0、y>0)、窒素が添加されたハフニウムシリケート、ハフニウムアルミネート(HfAlxOy、x>0、y>0)、酸化ランタン、などのHigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁膜は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
なお、ここで酸化窒化シリコンとは、その組成において窒素よりも酸素の含有量が多いものを示し、例として、少なくとも酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率は、その合計が100原子%を超えない値をとる。
ゲート絶縁膜の膜厚は、1nm以上20nm以下とし、スパッタリング法、MBE法、CVD法、PLD法、ALD法等を適宜用いることができる。
本実施の形態では、CVD法により、酸化窒化シリコンを20nm成膜する。なお、ここでは、ゲート絶縁膜の成膜後、島状のゲート絶縁層402への加工は行わない。
なお、ゲート絶縁膜の被覆性を向上させるために、半導体層403上面に平坦化処理を行ってもよい。特にゲート絶縁膜として膜厚の小さい絶縁膜を用いる場合、半導体層403の表面は平坦性が良好であることが好ましい。
次に、ゲート絶縁膜上に、半導体層403と重畳するように、ゲート電極層401を形成する。
ゲート電極層401の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。さらに、インジウムスズ酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化珪素を添加したインジウムスズ酸化物などの導電性材料を適用することもできる。また、上記導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
また、ゲート絶縁膜と接するゲート電極層401の一層として、窒素を含む金属酸化物、具体的には窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いることができる。これらの膜は5eV、または5.5eV以上の仕事関数を有し、ゲート電極として用いた場合、トランジスタの電気特性の閾値電圧をプラスにすることができ、いわゆるノーマリオフのスイッチング素子を実現できる。
ゲート電極の膜厚は、50nm以上300nm以下が好ましい。本実施の形態では、スパッタリング法を用いて、膜厚30nmの窒化タンタルと膜厚200nmのタングステンの積層を成膜する。
また、ゲート電極層401のチャネル長方向の長さは、100nm以下、好ましくは、30nm以下であることが好ましい。本発明の一態様の半導体装置の作製方法を適用することによって、微細なトランジスタを歩留まりよく作製することができる。そのため、チャネル長が小さく、膜厚の薄いゲート電極層を有するトランジスタとすることができる。
なお、ここで、ゲート電極層401をマスクとして、半導体層403に不純物元素を導入して、半導体層403の抵抗を低減してもよい。不純物元素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
導入する不純物元素は、リン、ホウ素、窒素、ヒ素、アルゴン、アルミニウム、またはこれらを含む分子イオンなどを用いることができる。これらの元素のドーズ量は、1×1013〜5×1016ions/cm2とするのが好ましい。また、不純物元素としてリンを導入する場合、加速電圧を0.5〜80kVとするのが好ましい。
また、半導体層403に不純物元素を導入する処理は、複数回行っても良い。半導体層403に不純物元素を導入する処理を複数回行う場合、不純物元素は複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
不純物元素が導入されることで抵抗が低減された領域を半導体層が有することにより、半導体層403と、後に形成されるソース電極層及びドレイン電極層とのコンタクト抵抗が小さくなる。コンタクト抵抗が小さくなったことで、ソース電極層及びドレイン電極層近傍の電界が緩和され、オン特性が高く、高速動作、高速応答が可能な、電気特性に優れた半導体装置とすることができる。
次に、ゲート絶縁膜及びゲート電極層401上に絶縁層を形成し、該絶縁層をエッチングして側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bを形成する。エッチングには、異方性エッチングを用いる。さらに、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bをマスクとして、ゲート絶縁膜をエッチングし、ゲート絶縁層402を形成する(図1(A)参照)。
側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bとなる絶縁層は代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化シリコン、窒化酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることができる。また、側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bはプラズマCVD法またはスパッタリング方等を用いて形成することができる。
本実施の形態では、酸化窒化シリコン膜を用いて、側壁絶縁層を形成する。
次いで、半導体層403、ゲート絶縁層402、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412b上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これらと同じ層で形成される配線等を含む)となる導電膜415を形成する(図1(B)参照)。
導電膜415は、ゲート電極層401と同様の材料、方法を用いて形成することができる。導電膜415は、後の形成工程においてエッチングされ、膜厚が減少するため、ソース電極層及びドレイン電極層(これらと同じ層で形成される配線等を含む)として必要な膜厚よりも厚く形成する必要がある。少なくとも、導電膜415の膜厚はゲート電極層401の膜厚以上である。本実施の形態では、スパッタリング法により、膜厚300nmのタングステン膜を形成する。
導電膜415は、導電膜を形成し、導電膜上にフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、導電膜を選択的にエッチングすることで島状に加工した後、レジストマスクを除去することで形成できる。なお、該エッチング工程では、ゲート電極層401と重畳する領域の導電膜415の除去は行わない。
続いて、導電膜415のゲート電極層401と重畳する領域の一部を化学的機械研磨によって研磨し、該領域の膜厚を減少させた導電膜416を形成する(図1(C)参照)。
ここで行う研磨処理によって、導電膜415のゲート電極層401と重畳する領域の膜厚を減少させ、少なくとも導電膜415のゲート電極層と重畳する領域の膜厚(図1(C)に示すLa)を、導電膜415のゲート電極層401と重畳しない領域の膜厚(図1(C)中に示すLb)よりも小さくする。より具体的には、LaとLbの差が、後に形成されるソース電極層及びドレイン電極層の膜厚となっていればよい。つまり、研磨処理によって、導電膜415のゲート電極層401と重畳する領域を、ソース電極層及びドレイン電極層となる膜厚だけ減少させればよい。
導電膜415の研磨処理には、化学的機械研磨を用いるため、導電膜415のゲート電極層と重畳し、高さが高くなっている箇所(基板からの距離が遠い箇所)から研磨され、導電膜415のゲート電極層401と重畳する領域を研磨することができる。
また、化学的機械研磨によって、少なくとも、導電膜415のゲート電極層401と重畳する領域と、その他の領域との膜厚差が生じるまで研磨すればよいので、化学的機械研磨による研磨量が少なくて済み、研磨量のばらつきが生じにくい。
続いて、導電膜416をゲート電極層401の上面が露出するまでエッチングすることで、ゲート電極層401と重畳する領域の導電膜416を除去し、自己整合的にソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成する(図1(D)参照)。
導電膜416に対するエッチングは、異方性エッチングである。導電膜416は、先の研磨処理によって、ゲート電極層401と重畳する領域が研磨され、ゲート電極層401と重畳する領域における膜厚が他の領域の膜厚よりも小さい。そのため、導電膜416に対して異方性エッチングを行うと、膜厚の薄いゲート電極層401と重畳する領域の導電膜が全て除去されても、他の領域の導電膜は残り、残った導電膜によってソース電極層405a及びドレイン電極層405bを自己整合的に形成することができる。
したがって、導電膜416のゲート電極層401と重畳する領域の膜厚(図1(C)に示すLa)と、その他の領域の膜厚(図1(C)に示すLb)の差が、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの膜厚となる。
エッチングとしては、ドライエッチングを用いても、ウェットエッチングを用いてもよいが、異方性の高いエッチングとしては、ドライエッチングが好ましく、例えば、エッチングガスとして、四フッ化炭素(CF4)、塩素(Cl2)、酸素(O2)等を含むガスや、塩素と酸素を含んだガス等を用いることが好ましい。また、トリフルオロメタン(CHF3)、オクタフルオロシクロブタン(C4F8)、テトラフルオロメタン(CF4)等のフッ素を含むガスを用いることができ、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)等の希ガスまたは水素(H2)を添加しても良い。さらに、ドライエッチングとして、基板に高周波電圧を印加する、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いるのが好ましい。
上記の方法は、ゲート電極層401上の導電膜416をエッチングによって除去することで、自己整合的にソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成することができる。したがって、レジストマスクを用いたエッチングを行う必要がなく、マスクの精密な位置合わせ等が不要となる。したがって、微細なトランジスタを歩留まりよく作製することができる。
以上の工程によって、トランジスタ420を形成することができる。
図2にトランジスタ420の上面図及び断面図を示す。図2(A)は、トランジスタ420の上面図であり、図2(B)は、図2(A)の一点鎖線A−Bにおける断面図である。
トランジスタ420は、基板400と、基板400上の半導体層403と、半導体層403上のゲート絶縁層402と、ゲート絶縁層402上のゲート電極層401と、ゲート電極層401の側面を覆う側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bと、基板400及び半導体層403上の、側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bと接するソース電極層405a及びドレイン電極層405bと、を有する。
なお、本実施の形態のトランジスタは、上記の構成に限らず、図3(A)に示すように、ゲート電極層401上に絶縁層413を積層したトランジスタ430してもよい。絶縁層413を積層することで、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとの絶縁性が確保されるため、トランジスタの信頼性をさらに向上させることができる。
絶縁層413には、代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化シリコン、窒化酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることができる。また、絶縁層413はプラズマCVD法またはスパッタリング法等を用いて形成することができる。
絶縁層413は、ゲート電極層401の形成時にゲート電極層401となる導電膜上に絶縁層413となる絶縁膜を形成し、ゲート電極層401のエッチングに用いるマスクと同じマスクを用いてエッチングすることで形成することができる。その後、ゲート電極層401及び絶縁層413上に側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bとなる絶縁層を設け、エッチングすることで、ゲート電極層401及び絶縁層413の側面を覆う側壁絶縁層414a及び側壁絶縁層414bが形成される。
なお、絶縁層413を設けない場合、図3(B)に示すトランジスタ440のように、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの形成工程において、ゲート電極層も一緒にエッチングされ、膜厚が減少する場合がある。
また、図示していないが、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上に層間絶縁層を形成してもよい。層間絶縁層は、ゲート絶縁層402と同様の材料及び方法を用いて形成することができる。本実施の形態では、CVD法により形成した酸化窒化シリコンを用いる。
さらに、層間絶縁層上に平坦化絶縁層を形成してもよい。平坦化絶縁層は、ゲート絶縁層402と同様の材料、方法を用いて形成することができる。また、平坦化絶縁層は積層構造であってもよい。平坦化絶縁層として、緻密性の高い無機絶縁層(代表的には酸化アルミニウム等)を用いると、トランジスタ420の保護絶縁層として機能する。
本実施の形態で示した半導体装置は、ゲート電極層401上の導電膜を、化学的機械研磨法によって膜厚を減少させてから、異方性エッチングによって除去することで、自己整合的にソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成することができる。したがって、レジストマスクを用いたエッチングを行う必要がなく、マスクの精密な位置合わせが不要となり、微細なトランジスタを歩留まりよく作製することができる。
化学的機械研磨法は、少なくとも導電膜のゲート電極層と重畳する領域の膜厚と、他の領域との膜厚に差を生じさせるために用いるため、化学的機械研磨法による研磨量が少なくて済み、半導体装置に対するばらつきが生じにくい。したがって、半導体装置の形状や特性にばらつきが生じにくく、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1とは異なる、本発明の一態様の半導体装置の作製方法について図面を用いて説明する。
図4及び図5に、本実施の形態の半導体装置の作製方法について示す。なお、半導体層403、ゲート絶縁層402、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bについては、実施の形態1と同様の材料、方法を用いて形成することができるため、詳細な説明を省略する。他にも、実施の形態1と同様の箇所については、説明を省略する場合がある。
まず、実施の形態1と同様の材料、方法を用いて、半導体層403、ゲート絶縁層402、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bを形成する(図4(A)参照)。
続いて、半導体層403、ゲート絶縁層402、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412b上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これらと同じ層で形成される配線等を含む)となる導電膜215を形成する(図4(B)参照)。
導電膜215は、実施の形態1に示す導電膜415と同様の材料、方法を用いて形成することができる。ただし、導電膜215は、導電膜415とは異なり、後の形成工程において、エッチングにより膜厚が減少することがないため、導電膜415よりも薄く形成すればよい。導電膜215の膜厚は20nm以上50nm以下である。本実施の形態では、膜厚30nmのタングステン膜を形成する。
続いて、導電膜215上に、層間絶縁膜217を形成する(図4(C)参照)。層間絶縁膜217は、実施の形態1に示すゲート絶縁層402と同様の材料、方法を用いて形成することができる。本実施の形態では、酸化窒化シリコンを300nm形成する。
次に、層間絶縁膜217のゲート電極層401と重畳する領域を化学的機械研磨法によって研磨し、該領域の膜厚を減少させた層間絶縁膜218を形成する(図5(A)参照)。その後、層間絶縁膜218をエッチングし、層間絶縁層417を形成する(図5(B)参照)。
層間絶縁膜218のエッチングには、異方性エッチングを用いる。また、導電膜215とのエッチングの選択比が高い条件を用いることが好ましい。エッチングとしては例えば、ドライエッチングが好ましく、例えば、エッチングガスとして、メタン(CH4)、トリフルオロメタン(CHF3)、オクタフルオロシクロブタン(C4F8)、テトラフルオロメタン(CF4)等のフッ素を含むガスを用いることができ、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)等の希ガスまたは水素(H2)を添加しても良い。さらに、ドライエッチングとして、基板に高周波電圧を印加する、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いるのが好ましい。
先の研磨処理によって、層間絶縁膜218のゲート電極層401と重畳する領域は、膜厚が減少し、層間絶縁膜218の他の領域よりも膜厚が小さい。そのため、層間絶縁膜218に対して異方性エッチングを行い、ゲート電極層401と重畳する領域を除去しても、その他の領域(化学的機械研磨処理を受けていない領域)における層間絶縁膜218は残り、層間絶縁層417が形成される。
続いて、層間絶縁層417をマスクとして導電膜215をゲート電極層401の上面が露出するまでエッチングする。ゲート電極層401の上面が露出するまでエッチングを行うことで、ゲート電極層401上の導電膜215を除去して、自己整合的にソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成することができる(図5(C)参照)。
導電膜215のエッチングは、層間絶縁層417に対して導電膜215のエッチングの選択比が高い条件を用いて行う。例えば、エッチングガスとして塩素や、酸素を含んだガスを用いたドライエッチングや、エッチングガスとして四フッ化炭素、塩素、酸素等を含んだガスを用いたドライエッチング等を用いてもよい。
なお、エッチング選択比とは二つの異なる層のエッチングレートの比を意味する。つまり、層間絶縁層417に対して導電膜215のエッチングの選択比が高いとは、導電膜215のエッチングレートを層間絶縁膜のエッチングレートで割った値が高いことを意味している。
上記の方法を用いることで、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの作製工程のゲート電極層上の導電膜の除去において、レジストマスクを用いるエッチングを行う必要がなく、マスクの精密な位置合わせ等が不要なため、微細な加工を正確に行うことができる。
化学的機械研磨法は、少なくとも層間絶縁膜218のゲート電極層401と重畳する領域の膜厚と、他の領域との膜厚に差を生じさせるために用いる。そのため、化学的機械研磨法による研磨量が少なくて済み、半導体装置に対するばらつきが生じない。したがって、半導体装置の形状や特性にばらつきが生じにくく、歩留まりのよい半導体装置を作製することができる。
以上の工程によって、トランジスタ450を形成することができる。
トランジスタ450の上面図及び断面図を図6に示す。図6(A)はトランジスタ450の上面図を示し、図6(B)は図6(A)の一点鎖線C−Dにおける断面図を示す。
トランジスタ450は、基板400と、基板400上の半導体層403と、半導体層403上のゲート絶縁層402と、ゲート絶縁層402上のゲート電極層401と、ゲート電極層401の側面を覆う側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bと、基板400、半導体層403、ゲート絶縁層402、側壁絶縁層412a及び側壁絶縁層412bと接するソース電極層405a及びドレイン電極層405bと、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上の層間絶縁層417と、を有する。
なお、本実施の形態は上記の構成に限らず、例えば、図7(A)に示すように、ゲート電極層401上に絶縁層413が積層されたトランジスタ460としてもよい。絶縁層413を積層することで、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとの絶縁性が確保されるため、トランジスタの歩留まりをさらに向上させることができる。
ゲート電極層401と積層された絶縁層413を有する場合、絶縁層413によって、ゲート電極層401と、ソース電極層及びドレイン電極層との絶縁性が確保されるため、図7(B)に示すトランジスタ470のように、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの上端は、ゲート電極層401の上面よりも高くてもよい。
なお、図7(C)に示すトランジスタ480のように、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの上端が、エッチングによって層間絶縁層417及び絶縁層413の上面よりも低くなる場合がある。また、図示していないが、絶縁層413を設けない場合は、ゲート電極層401の上面も同様に、層間絶縁層417の上面より低くなる場合がある。
本実施の形態で示した半導体装置は、ゲート電極層401上の層間絶縁膜を、化学的機械研磨法によって予め膜厚を減少させた後、エッチングによって除去し、自己整合的に層間絶縁層を形成する。該層間絶縁層をマスクとして、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成することができる。したがって、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの形成工程において、レジストマスクを用いたエッチングを行う必要がなく、マスクの精密な位置合わせが不要となり、微細なトランジスタを歩留まりよく作製することができる。
化学的機械研磨法は、少なくとも層間絶縁膜のゲート電極層と重畳する領域の膜厚と、他の領域との膜厚に差を生じさせるために用いるため、化学的機械研磨による研磨量が少なくて済み、半導体装置に対する影響が少ない。したがって、半導体装置の形状や特性にばらつきが生じにくく、歩留まりのよい半導体装置を作製することができる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2に示した半導体装置の半導体層に適用できる半導体として好ましい形態である酸化物半導体について詳細を説明する。
酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)、或いは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを低減するためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。スタビライザーとしては他にも、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)を有することが好ましい。
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドであるランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ガドリニウム(Gd)、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
例えば、酸化物半導体として、単元系金属の酸化物である酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
なお、ここでは、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属が入っていてもよい。
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)、In:Ga:Zn=3:2:1(=1/2:1/3:1/6)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成のrだけ近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)2+(b−B)2+(c−C)2≦r2を満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物元素濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を下げることにより移動度を上げることができる。
酸化物半導体膜は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう)、または非晶質などの状態をとる。好ましくは、酸化物半導体膜は、CAAC−OS膜(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部及び非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸及びb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部のしめる割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物等を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向はCAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
CAAC−OS膜を用いることで、可視光や紫外光の照射によるトランジスタの電気特性の変動を低減することが可能である。よって、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
なお、本実施の形態の半導体装置は、領域によって結晶性が異なる酸化物半導体層を用いてもよい。例えば、チャネルが形成される領域は高い結晶性を有し、それ以外の領域においては、結晶性の低い膜を用いてもよい。具体的には、チャネル形成領域はCAAC−OS膜であり、その他の領域は非晶質構造とすることもできる。
なお、酸化物半導体膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
なお、一例として、酸化物半導体膜をIn−Zn系金属酸化物により形成する場合には、ターゲットの組成を原子数比で、In/Zn=1〜100、好ましくはIn/Zn=1〜20、さらに好ましくはIn/Zn=1〜10とする。Znの原子数比を好ましい範囲とすることで、電界効果移動度を向上させることができる。ここで、酸素を過剰に含ませるために、金属酸化物の原子数比In:Zn:O=X:Y:Zを、Z>1.5X+Yとすることが好ましい。
酸化物半導体膜としてIn−Ga−Zn系酸化物をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1、4:2:3、3:1:2、1:1:2、2:1:3、または3:1:4で示されるIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜することで、多結晶またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
また、酸化物半導体膜としてIn−Sn−Zn系酸化物をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Sn:Zn=1:1:1、2:1:3、1:2:2、または20:45:35で示されるIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体層を成膜することで、多結晶またはCAACが形成されやすくなる。
なお、ここで、ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下であるとよい。ターゲットの充填率を高くすることで、形成される酸化物半導体層を緻密なものとすることができる。
なお、酸化物半導体膜に適用することができる金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは、3eV以上であるとよい。このように、バンドギャップの広い金属酸化物を用いると、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
また、酸化物半導体膜は、複数の酸化物半導体層が積層された構造でもよい。例えば、酸化物半導体膜を、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の積層として、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、異なる組成の金属酸化物を用いてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜に三元系金属の酸化物を用い、第2の酸化物半導体層に二元系金属の酸化物を用いてもよい。また、例えば、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜を、どちらも三元系金属の酸化物としてもよい。
また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の構成元素を同一とし、両者の組成を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=2:1:3としてもよい。
この時、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜のうち、ゲート電極に近い側(チャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの含有率をIn>Gaとするとよい。またゲート電極から遠い側(バックチャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの含有率をIn≦Gaとするとよい。
酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、Inの含有率を多くすることによりs軌道のオーバーラップが多くなる傾向があるため、In>Gaの組成となる酸化物はIn≦Gaの組成となる酸化物と比較して高い移動度を備える。また、GaはInと比較して酸素欠損の形成エネルギーが大きく酸素欠損が生じにくいため、In≦Gaの組成となる酸化物はIn>Gaの組成となる酸化物と比較して安定した特性を備える。
チャネル側にIn>Gaの組成となる酸化物半導体を適用し、バックチャネル側にIn≦Gaの組成となる酸化物半導体を適用することで、トランジスタの移動度および信頼性をさらに高めることが可能となる。
また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、結晶性の異なる酸化物半導体を適用してもよい。すなわち、単結晶酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体、またはCAAC−OS膜を適宜組み合わせた構成としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の少なくともどちらか一方に非晶質酸化物半導体を適用すると、酸化物半導体層の内部応力や外部からの応力を緩和し、トランジスタの特性ばらつきが低減され、また、トランジスタの信頼性をさらに高めることが可能となる。
一方で、非晶質酸化物半導体は水素などのドナーとなる不純物を吸収しやすく、また、酸素欠損が生じやすいためn型化されやすい。このため、チャネル側の酸化物半導体膜は、CAAC−OS膜などの結晶性を有する酸化物半導体を適用することが好ましい。
また、酸化物半導体膜を3層以上の積層構造とし、複数層の結晶性を有する酸化物半導体層で非晶質酸化物半導体層を挟む構造としてもよい。また、結晶性を有する酸化物半導体層と非晶質酸化物半導体層を交互に積層する構造としてもよい。
また、酸化物半導体層を複数層の積層構造とする場合の上記構成は、それぞれを適宜組み合わせて用いることができる。
なお、酸化物半導体層のアルカリ金属及びアルカリ土類金属は少なくすることが好ましく、これらの濃度は、好ましくは1×1018atoms/cm3以上、さらに好ましくは2×1016atoms/cm3以下とする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアが生成される場合があり、トランジスタのオフ電流を増大させる原因となるからである。
酸化物半導体膜の厚さは、1nm以上100nm以下、好ましくは1nm以上35nm以下とする。
酸化物半導体膜は、好ましくはスパッタリング法により、基板加熱温度を100℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上550℃以下、さらに好ましくは200℃以上500℃以下とし、酸素ガス雰囲気で成膜する。成膜時の基板加熱温度が高いほど得られる酸化物半導体膜の不純物元素濃度は低くなる。また、酸化物半導体膜の中の原子配列が整い、高密度化され、多結晶またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
さらに、酸素ガス雰囲気下で成膜することでも、希ガスなどの余分な原子が含まれないため、多結晶またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ただし、酸素ガスや、アルゴン等の希ガスの混合雰囲気としてもよく、その場合は酸素ガスの割合は30体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上とする。なお、酸化物半導体膜の成膜に用いるアルゴン及び酸素は、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、アルゴンの純度を9N(露点−121℃、水0.1ppb、水素0.5ppb)、酸素の純度を8N(露点−112℃、水1ppb、水素1ppb)とすることが好ましい。
本実施の形態では、アルゴンと酸素の流量比が2:1の雰囲気下において、スパッタリング法を用い、原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:2であるIn−Ga−Zn系酸化物膜を20nm成膜する。
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いたトランジスタは動作時のキャリア(電子)の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
なお、Raは、JIS B 0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている算術平均粗さを曲面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」で表現でき、以下の式にて定義される。
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(x1,y1,f(x1,y1)),(x1,y2,f(x1,y2)),(x2,y1,f(x2,y1)),(x2,y2,f(x2,y2))の4点で表される四角形の領域とし、指定面をxy平面に投影した長方形の面積をS0、基準面の高さ(指定面の平均の高さ)をZ0とする。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
酸化物半導体膜の形成面を平坦化するため、基板上に下地絶縁層を設け、該下地絶縁層に対して平坦化処理を行ってから、酸化物半導体層を形成してもよい。下地絶縁層は、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。なお、下地絶縁層をスパッタリング法を用いて形成すると、水素等の不純物元素低減することができる。
このように、酸化物半導体層のチャネルが形成される領域において、下地絶縁層の平均面粗さを0.3nm以下とするためには、平坦化処理を行えばよい。平坦化処理は酸化物半導体膜の形成前に行えばよい。
例えば、平坦化処理として、ドライエッチングなどを行えばよい。ここで、エッチングガスとしては、塩素、塩化ボロン、塩化シリコンまたは四塩化炭素などの塩素系ガス、四フッ化炭素、フッ化硫黄またはフッ化窒素などのフッ素系ガスなどを用いればよい。
また、酸化物半導体膜に含まれる水素は、極力少ないことが好ましい。この水素は、水素原子の他、水素分子、水、水酸基、またはその他の水素化物として含まれる場合もある。そのため、酸化物半導体層に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は300℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。熱処理は減圧雰囲気または不活性雰囲気下などで行うことができる。また、熱処理は酸化物半導体膜の形成後、島状に加工する前に行ってもよいし、島状に加工した後に行ってもよい。さらに、脱水化、脱水素化のための熱処理は複数回行ってもよく、他の加熱処理と兼ねてもよい。
熱処理は、減圧雰囲気または不活性雰囲気で熱処理を行った後、温度を保持しつつ酸化性雰囲気に切り替えてさらに熱処理を行うと好ましい。これは減圧雰囲気または不活性雰囲気にて熱処理を行うと、酸化物半導体層中の不純物(例えば、水素等)濃度を低減することができるが、同時に酸素欠損も生じてしまう恐れがあり、このとき生じた酸素欠損を、酸化性雰囲気での熱処理により低減することができる。
酸化物半導体膜は、熱処理を行うことで、膜中の水素等の不純物元素を極めて小さくすることが可能となる。その結果、トランジスタの電界効果移動度を理想的な電界効果移動度近くまで高めることが可能となる。
また、下地絶縁層として、酸素を過剰に含む絶縁膜を用いてもよい。下地絶縁層としては、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ハフニウム、または酸化タンタルなどの酸化物絶縁層を用いることが好ましい。また、これらの化合物を単層構造または2層以上の積層構造で形成して用いることができる。積層構造とする際、例えば、基板と接する下地絶縁層にCVD法によって形成した酸化シリコン膜を用い、酸化物半導体層と接する下地絶縁層にスパッタリング法によって形成した酸化シリコン膜を用いる構成としてもよい。酸化物半導体層と接する絶縁層を、水素濃度が低減された酸化物絶縁層とすることで、酸化物半導体層に水素の拡散を抑制する他に、酸化物半導体層の酸素欠陥に下地絶縁層となる酸化物絶縁層から酸素が供給されるため、トランジスタの電気特性を良好にすることができる。
下地絶縁層は、酸化物半導体層と接するため、層中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成を超える量の酸素が存在することが好ましい。例えば、下地絶縁膜として、酸化シリコン層を用いる場合には、SiO(2+α)(ただし、α>0)とする。
また、ゲート絶縁膜も下地絶縁層と同様に酸化物半導体層と接するため、層中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成を超える量の酸素が存在することが好ましい。
酸化物半導体層上に、平坦化絶縁層として、酸化アルミニウム膜を成膜した後、熱処理を行ってもよい。酸化アルミニウム膜は、酸化物半導体層への水(水素を含む)の侵入防止機能及び酸化物半導体層からの酸素の脱離防止機能を有する。よって、酸化物半導体層、またはそれに接する絶縁層が酸素過剰領域を有していると、酸化アルミニウム膜を設けた状態で熱処理を行うことによって、酸化物半導体層の膜中、または絶縁層と酸化物半導体層の界面において、少なくとも1ヶ所、該膜の化学量論比を超える酸素が存在する領域(酸素過剰領域とも表記する)を設けることができる。
実施の形態1及び実施の形態2に示す半導体装置に、本実施の形態で示す酸化物半導体を適用することで、オン特性に優れ、リーク電流の少ないトランジスタとすることができる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3に示す酸化物半導体を半導体層に用いたトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の一例を、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態の半導体装置は、トランジスタ162として実施の形態1及び実施の形態2に記載のトランジスタを適用して構成される。
図8は、半導体装置の構成の一例である。図8(A)に半導体装置の断面図を、図8(B)に半導体装置の上面図を、図8(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。ここで、図8(A)は、図8(B)のE−F、及びG−Hにおける断面に相当する。なお、図8(B)においては、図の明瞭化のため、図8(A)に示す半導体装置の一部の構成要素を省略している。
図8(A)及び図8(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有するものである。トランジスタ162は、実施の形態3で示した、酸化物半導体層を半導体層に用いたトランジスタを適用することができる。
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、開示する発明の技術的な本質は、情報を保持するために酸化物半導体をトランジスタ162に用いる点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
図8(A)におけるトランジスタ160は、基板100に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物元素領域120を含む半導体層と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁層108と、ゲート絶縁層108上に設けられたゲート電極層110と、不純物元素領域120上の絶縁層130と、絶縁層130に設けられた開口に形成され、不純物元素領域120と接する導電層112a及び導電層112bと、を有する。
絶縁層130上には、絶縁層135が設けられ、絶縁層135に設けられた開口には、ゲート電極層110、導電層112a及び導電層112bとそれぞれ接する導電層114c、導電層114a及び導電層114bが形成されている。さらに、絶縁層135上には絶縁層140が設けられ、絶縁層140には、導電層114cと接する導電層115が設けられている。導電層115は、トランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層となる電極層142aと接する。
なお、高集積化を実現するためには、図8(A)に示すようにトランジスタ160が側壁絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ160の特性を重視する場合には、ゲート電極層110の側面に側壁絶縁層を設け、不純物元素度が異なる領域を含む不純物元素領域120としてもよい。
絶縁層140上面において、平坦化処理を行うことが好ましい。本実施の形態では、研磨処理(例えばCMP処理)により十分に平坦化した(好ましくは、絶縁層140の上面の平均面粗さは0.15nm以下)絶縁層140上に酸化物半導体層144を形成する。
図8(A)に示すトランジスタ162は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタである。ここで、トランジスタ162に含まれる酸化物半導体層144は、高純度化されたものであることが望ましい。高純度化された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ特性のトランジスタ162を得ることができる。
トランジスタ162は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
トランジスタ162は実施の形態1に示した、作製工程においてゲート電極層148、及び側壁絶縁層136a、136b上に設けられた導電膜の一部を化学機械研磨処理により膜厚を減少させ、該導電膜をエッチングすることで、ゲート電極層148上の導電膜を除去する工程を用いて、ソース電極層及びドレイン電極層として機能する電極層142a、142bを形成するトランジスタである。
よって、トランジスタ162は、ソース電極層又はドレイン電極層として機能する電極層142a、電極層142bと酸化物半導体層144が接する領域(コンタクト領域)と、ゲート電極層148との距離が側壁絶縁層136a及び側壁絶縁層136bによって決定され、容易に距離を短くすることができる。したがって、電極層142a、142bと酸化物半導体層144とが接する領域(コンタクト領域)、及びゲート電極層148間の抵抗が減少し、トランジスタ162のオン特性を向上させることが可能となる。
電極層142a、142bの形成工程におけるゲート電極層148上の導電膜を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング工程を用いないため、精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきの少ない微細な構造を有するトランジスタを歩留まりよく作製することができる。
トランジスタ162上には、絶縁層145が単層または積層で設けられている。また、絶縁層145上には絶縁層150が設けられ、絶縁層150のトランジスタ162の電極層142aと重畳する領域には、導電層153が設けられており、電極層142aと、絶縁層130と、導電層153とによって、容量素子164が構成される。すなわち、トランジスタ162の電極層142aは、容量素子164の一方の電極として機能し、導電層153は、容量素子164の他方の電極として機能する。なお、容量が不要の場合には、容量素子164を設けない構成とすることもできる。また、容量素子164は、別途、トランジスタ162の上方に設けてもよい。
トランジスタ162および容量素子164の上には絶縁層155が設けられている。絶縁層155上にはトランジスタ162と、他のトランジスタを接続するための配線158が設けられている。配線158はトランジスタ162のドレイン電極層となる電極層142bと電気的に接続している。
なお、電極層142b及び配線158の電気的接続は、電極層142b及び配線158を直接接続させて行ってもよいし、電極層142b及び配線158の間の絶縁膜に電極を設け、該電極を介して行ってもよい。また、間に介する電極は、複数でもよい。図8(A)では配線158は、絶縁層150、絶縁層155及び絶縁層130などに形成された開口に形成された導電層152、導電層154及び導電層156を介して電極層142bと電気的に接続される。
図8(A)及び図8(B)において、トランジスタ160と、トランジスタ162とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ160のソース領域またはドレイン領域と酸化物半導体層144の一部が重畳するように設けられているのが好ましい。また、トランジスタ162及び容量素子164が、トランジスタ160の少なくとも一部と重畳するように設けられている。例えば、容量素子164の導電層153は、トランジスタ160のゲート電極層110と少なくとも一部が重畳して設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
次に、図8(A)及び図8(B)に対応する回路構成の一例を図8(C)に示す。
図8(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ160のソース電極層とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ160のドレイン電極層とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ162のゲート電極層とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極層と、トランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層の一方は、容量素子164の電極の他方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
図8(C)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極層の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
情報の書き込み及び保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極層、及び容量素子164に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極層には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極層に与えられた電荷が保持される(保持)。
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ160のゲート電極層の電荷は長時間にわたって保持される。
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲート電極層に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極層にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ160のゲート電極層にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位V0とすることにより、トランジスタ160のゲート電極層に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ160は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極層の状態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極層の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態においては、実施の形態1及び実施の形態2に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置について、実施の形態3に示した構成と異なる構成について、図9及び図10を用いて説明を行う。なお、本実施の形態の半導体装置は、トランジスタ162として実施の形態3に記載の酸化物半導体層を半導体層に用いたトランジスタを適用して構成される。トランジスタ162としては、実施の形態1及び実施の形態2で示すトランジスタのいずれの構造も適用することができる。
図9(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、図9(B)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、図9(A)に示す半導体装置について説明を行い、続けて図9(B)に示す半導体装置について、以下説明を行う。
図9(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ162のゲート電極層とは電気的に接続され、トランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層と容量素子254の第1の端子とは電気的に接続されている。
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは、容量素子254に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
次に、図9(A)に示す半導体装置(メモリセル250)に、情報の書き込み及び保持を行う場合について説明する。
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子254の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、容量素子254の第1の端子の電位が保持される(保持)。
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいから、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子に蓄積された電荷)は長時間にわたって保持することができる。
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ162がオン状態となると、浮遊状態であるビット線BLと容量素子254とが導通し、ビット線BLと容量素子254の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電位の変化量は、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子254に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
例えば、容量素子254の第1の端子の電位をV、容量素子254の容量をC、ビット線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル250の状態として、容量素子254の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V1)/(CB+C)は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
このように、図9(A)に示す半導体装置は、トランジスタ162のオフ電流が極めて小さいという特徴から、容量素子254に蓄積された電荷は長時間にわたって保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
次に、図9(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
図9(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図9(A)に示したメモリセル250を複数有するメモリセルアレイ251a及びメモリセルアレイ251bを有し、下部に、メモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及びメモリセルアレイ251b)を動作させるために必要な周辺回路253を有する。なお、周辺回路253は、メモリセルアレイ251と電気的に接続されている。
図9(B)に示した構成とすることにより、周辺回路253をメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及びメモリセルアレイ251b)の直下に設けることができるため半導体装置の小型化を図ることができる。
周辺回路253に設けられるトランジスタは、トランジスタ162とは異なる半導体材料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、前記トランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
なお、図9(B)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251aと、メモリセルアレイ251b)が積層された構成を例示したが、積層するメモリセルの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルを積層する構成としても良い。
次に、図9に示したメモリセル250に適用できる半導体装置の具体的な構成について図10を用いて説明する。図10(B)は半導体装置の上面図を示し、図10(A)は図10(B)の一点鎖線J−J、K−Lにおける断面を示す。なお、図10(B)においては、図の明瞭化のため、図10(A)に示す半導体装置の一部の構成要素を省略している。
図10に示すメモリセルは、酸化物半導体にチャネルが形成されるトランジスタ162と、容量素子254とを有する。なお、トランジスタ162の構成は、図8に示す半導体装置が有するトランジスタ162と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
図10において容量素子254は、ドレイン電極層となる電極層142a、絶縁層145、及び導電層153で構成されている。
図10に示す電極層142bと電気的に接続する導電層152、導電層154、導電層156、配線158及びこれらと電気的に接続する層は、図9に示すビット線BLとして機能する。また、図10に示すゲート電極層148と電気的に接続する層は、図10に示すワード線WLとして機能する。
トランジスタ162は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
図9に示すように、トランジスタ162、容量素子254を含むメモリセルアレイ251を重畳するように密に積層して設けることで、より半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
以上のように、上部に多層に形成された複数のメモリセルは、酸化物半導体を用いたトランジスタにより形成されている。高純度化され、真性化された酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
上記のようなトランジスタは、オン特性が高く、高速動作、高速応答が可能である。また、微細化も達成できる。よって、該トランジスタを用いることで高性能及び高信頼性の半導体装置を提供することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本明細書に開示する半導体装置は、様々な電子機器に適用することができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。
図11に電子機器の具体例を示す。図11(A)及び図11(B)は、2つ折り可能なタブレット型端末である。図11(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038を有する。
実施の形態1または実施の形態2に示す半導体装置は、表示部9631a、表示部9631bに用いることが可能であり、信頼性の高いタブレット型端末とすることが可能となる。また、実施の形態3または実施の形態4に示す記憶装置を本実施の形態の半導体装置に適用してもよい。
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが、該構成に限定されない。表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図11(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図11(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する。なお、図11(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示している。
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図11(A)および図11(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作または編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の一面または二面に効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図11(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図11(C)にブロック図を示し説明する。図11(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図11(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力電送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。