JP6197750B2 - ディーゼルエンジンの燃焼室構造 - Google Patents

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Description

本発明は、ディーゼルエンジンに設けられて、所定の中心軸に沿って延びるシリンダの内側面と、当該シリンダ内を往復動するピストンの冠面と、当該ピストン冠面と対向するシリンダヘッドの底面とにより区画されるとともに内側に燃料が噴射される燃焼室に関する。
従来より、燃焼室内に燃料を直接噴射する直接噴射式のディーゼルエンジンでは、燃料と空気との混合を促進することを目的として、ピストンの冠面にシリンダヘッドから離間する方向に凹むキャビティを設け、燃料噴射によりキャビティ壁面に沿った縦方向の噴霧の流れすなわち縦渦を形成することが行われている。
例えば、特許文献1には、ピストン冠面の中央にキャビティが形成された燃焼室構造であって、キャビティが、いわゆるリエントラント型、つまり、中央隆起部が隆起するとともに開口部が上窄まり状に絞られた構造とされるとともに、燃料噴霧が当該キャビティの壁面のうち開口縁よりも反シリンダヘッド側の部分を指向するように燃料噴射装置が取り付けられたものが開示されている。
この特許文献1の燃焼室構造では、燃料噴霧を、キャビティの壁面のうち開口縁よりも反シリンダヘッド側の部分に衝突させ、キャビティの壁面に沿って外周側から下方に向かった後中央に向かわせ、その後燃料噴射装置側に向かわせることで、燃料と空気とを効果的に混合することができる。
特開平9−69063号公報
ここで、上記のように、リエントラント型のキャビティを設ければ、燃料と空気との混合を促進して、有害燃焼生成物(NOx、スート(煤、いわゆるスモーク))を低減することができ、燃費性能を高めることができる。具体的には、リエントラント型のキャビティがピストンに設けられたディーゼルエンジンでは、エンジンの中負荷域または高負荷域で燃料噴射弁から比較的多量の燃料が噴射されたときに、キャビティの周縁部に到達した燃料の噴霧がキャビティの壁面に沿って反転する(中心側に向けて方向転換する)ような流れ(縦渦)が起き、これによって燃料と空気とのミキシングが促進され、これによって、燃費性能を高めつつ有害燃焼生成物(NOx、スート)が低減する。
ここで、この有害燃焼生成物の低減効果すなわち燃料と空気とのミキシング効果は、キャビティが大きい程、キャビティ内で発生する縦渦が大きくなることに伴い、大きくなる。
一方、ピストンが上死点を通過した後では、ピストンの下降に伴い燃焼室容積が増加する。このとき、燃焼室内では、燃焼室容積の増加率の大きいキャビティの径方向外側へ燃焼ガスの流れが発生し、燃焼ガスの熱がリップ部周辺に伝達し冷却損失となる。そして、この冷却損失は、上死点におけるキャビティ径方向外側の燃焼室容積が小さい程、すなわちキャビティが大きい程大きくなる。具体的には、キャビティが大きい程キャビティ径方向外側の燃焼室容積を小さくせざるを得ないため、キャビティ径方向外側の燃焼室容積の増加率が大きくなり、この部分でのガスの流れが強くなって、冷却損失が大きくなる。
したがって、有害燃焼生成物の発生を抑制しつつ、冷却損失を低減するためひいては燃費性能を高めるためには、燃焼室のキャビティとその外側の燃焼室容積をより適切に設定することが課題となる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、有害燃焼生成物の発生を抑制しつつ燃費性能をより高めることのできるディーゼルエンジンの燃焼室構造を提供する。
上記課題を解決するために、本発明は、ディーゼルエンジンに設けられて、円筒状のシリンダの内側面と、当該シリンダ内を往復動するピストンの冠面と、当該ピストン冠面と対向するシリンダヘッドの底面とにより区画されるとともに内側に燃料が噴射される燃焼室の構造において、上記シリンダヘッドには、圧縮上死点付近を含むタイミングで燃焼室に燃料を噴射するインジェクタが設けられ、上記ピストン冠面の中央には、上記シリンダヘッド底面から離間する方向に凹むキャビティが形成されており、上記キャビティを形成する壁面が、キャビティの中心側ほど上記シリンダヘッド底面に近づくように隆起した中央隆起部と、当該中央隆起部よりもピストンの径方向外側に形成されかつ断面視で径方向外側に凹入する周辺凹部と、当該周辺凹部と上記キャビティの開口縁との間に形成されかつ断面視でピストンの径方向内側に凸となるリップ部とを有し、上記インジェクタは、圧縮上死点付近に噴射された燃料が上記リップ部と周辺凹部との境界付近を指向し、かつ噴射された燃料が当該境界部分に液滴の状態で当たらないような位置に配置され、上記ピストン冠面のうち上記キャビティのリップ部よりもピストンの径方向外側の部分である外周部が、当該リップ部と連続する第1部分と、この第1部分よりもピストンの径方向外側に位置する第2部分とを有し、上記第1部分が上記第2部分よりも上記シリンダヘッド底面から離間する方向に位置することにより、上記第1部分と上記第2部分との間に段部が設けられており、上記リップ部、第1部分および段部にわたるピストンの壁面と、上記リップ部の径方向内側縁を通って上記シリンダの中心軸と平行に延びる面と、上記段部と第2部分との接続部を通って上記シリンダの中心軸と直交する方向に延びる面とにより区画された容積を段部容積V_STEPとし、上死点における上記燃焼室の容積を上死点容積V_TDCとしたときに、V_STEP/V_TDCで規定される段部容積比VRが、0.1以下に設定されていることを特徴とするディーゼルエンジンの燃焼室構造を提供する。
本発明によれば、冷却損失を小さく抑えて燃費性能を高めることができる。
具体的には、ピストン冠面の外周部に段部が形成されて、キャビティのリップ部から径方向外側に延びる第1部分とシリンダヘッド底面との距離が比較的大きく確保されているため、ピストンの下降に伴う燃焼室容積の増大時に、キャビティの径方向外側部分に位置するこの第1部分の容積の増加率を小さく抑えることができる。そのため、ピストンの下降時に、キャビティからこの第1部分に入り込むガスから燃焼室壁面への熱伝達率を小さく抑えて冷却損失を小さく抑えることができる。
さらに、本発明では、キャビティを形成する壁面が、キャビティの中心側ほどシリンダヘッド底面に近づくように隆起した中央隆起部と、中央隆起部よりもピストンの径方向外側に形成されかつ断面視で径方向外側に凹入する周辺凹部と、周辺凹部と上記キャビティの開口縁との間に形成されかつ断面視でピストンの径方向内側に凸となるリップ部とで構成されているため、燃料噴射時に、燃焼室内に、リップ部と周辺凹部に沿って反シリンダヘッド側に向かった後シリンダの中心軸に向かいながらシリンダヘッド側に向かう縦渦を発生させることができ、この縦渦によって燃料と空気との混合を促進して有害燃焼生成物の発生を抑制することができる。
しかも、本発明では、上記段部容積比VRが0.1以下に設定されており、燃焼室のうちキャビティの径方向外側に位置しキャビティに連続する部分の容積が過度に大きくなるのが回避され、キャビティの容積が確保されている。そのため、上記のように冷却損失を小さく抑えて燃費性能を高めつつ、上記縦渦の強度を確保してより確実にスートの発生を抑制することができる。
具体的には、ピストンの低下に伴ってキャビティから径方向外側に向かうガス流れ(いわゆる逆スキッシュ流)に乗ってキャビティから径方向外側に移動するガスが通過するリップおよび第1部分上の容積である段部容積V_STEPをより大きくすれば、キャビティからこの第1部分に引き込まれるガスの流速が小さくなること等により燃焼室壁面への伝熱量を小さく抑えて冷却損失を小さく抑えることができる。しかしながら、必要な排気量および圧縮比から燃焼室全体の容積は限定される。そのため、この段部容積V_STEPを大きくするとキャビティの容積が小さくなりキャビティ内で縦渦を十分に発生させることができずスートが悪化する。この点について、鋭意研究の結果、本発明者らは、上記段部容積V_STEPと、上死点における燃焼室の容積V_TDCの比である段部容積比VR=V_STEP/V_TDCを、0.1を超えて大きくすると、スートが急増することを突き止めた。従って、上記段部を設けつつ、この段部容積比VRを0.1以下としていることで、本発明では、上記のように冷却損失を抑えて燃費性能を高めつつスートの悪化を抑制することができる。
本発明において、上記段部の高さが0.5mm以上に設定されているのが好ましい(請求項2)。
このようにすれば、上記第1部分上にすす等が堆積した場合であっても、この第1部分上の容積ひいては上記段部とリップ部との間の部分の容積を確保することができるため、この部分におけるガスから燃焼室壁面への伝熱量をより確実に小さく抑えることができる。
ここで、本発明者らは、冷却損失およびスートと上記段部容積比VRとの関係について、さらに、この段部容積比VRを0.04未満にした場合には、この段部容積比VRの低下に伴ってスートの発生量はあまり変化しないものの冷却損失は増大することを突き止めた。そのため、スートをある程度低減しつつ、冷却損失の低減効果を効果的に得るためには、本発明において、上記段部容積比VRを、0.04以上に設定するのが好ましい(請求項3)。
また、本発明者らは、より安定して冷却損失の低減効果すなわち燃費性能の向上効果とスート低減効果とを両立させることができる上記段部容積比VRが、0.06以上0.08以下であることを突き止めた。従って、本発明において、上記段部容積比VRは、0.06以上0.08以下に設定されているのが好ましい(請求項4)。
以上のように、本発明によれば、スートの発生を抑制しつつ燃費性能をより一層高めることができる。
本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンシステムの概要を示す図である。 図1に示すディーゼルエンジンの燃焼室付近の概略断面図である。 燃焼室の構造を示す概略断面図である。 燃焼室の概略上面図である。 上死点における燃焼室容積を説明するための図である。 段部容積部の容積を説明するための図である。 (a)燃焼初期のガスの流れを示した図である。(b)燃焼中期のガスの流れを示した図である。(c)燃焼後期のガスの流れを示した図である。 (a)段部容積部が設けられていない燃焼室におけるガスの流れを示した図である。(b)本実施形態に係る燃焼室におけるガスの流れを示した図である。 (a)段部容積部が設けられていない燃焼室におけるガスの流速を示した図である。(b)本実施形態に係る燃焼室におけるガスの流速を示した図である。 (a)段部容積部が設けられていない燃焼室における温度分布を示した図である。(b)本実施形態に係る燃焼室における温度分布を示した図である。 段部容積比と冷却損失およびスート発生量との関係を示したグラフである。 段部容積比の変更手順を説明するための図である。 段部容積比と伝熱量の変化率との関係を示したグラフである。
以下、本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの燃焼室構造を図面に基づいて説明する。
(1)全体構成
まず、本実施形態に係るディーゼルエンジンの燃焼室構造が適用されるディーゼルエンジンシステム100の概要について説明する。
図1は、ディーゼルエンジンシステム100の概略図である。本図に示されるディーゼルエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルのディーゼルエンジンである。具体的に、このディーゼルエンジンシステム100は、軽油を主成分とする燃料の供給を受けて駆動されるディーゼルエンジン本体(以下、単にエンジン本体という)1と、エンジン本体1に燃焼用の空気を導入するための吸気通路30と、エンジン本体1で生成された排ガス(燃焼ガス)を排出するための排気通路40と、排気通路40を通過する排ガスの一部を吸気通路30に還流するためのEGR装置50と、排気通路40を通過する排ガスにより駆動されるターボ過給機60とを備えている。
図2は、エンジン本体1の一部を拡大して示す断面図である。この図2および先の図1に示すように、エンジン本体1は、円筒状のシリンダ2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダ2内にシリンダ2の中心軸X1に沿って摺動可能に収容されたピストン4と、シリンダブロック3にガスケットを介して連結されるシリンダヘッド5と、潤滑油を貯溜するためにシリンダブロック3の下側に配設されたオイルパン6とを有している。以下、シリンダ2の中心軸X1と平行な方向を上下方向といい、シリンダヘッド5側を上、シリンダブロック3側を下という場合がある。
ピストン4は、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸7とコネクティングロッド8を介して連結されている。また、ピストン4の上方には燃焼室9が形成されており、この燃焼室9では、後述するインジェクタ20から噴射された燃料が空気と混合されつつ拡散燃焼する。そして、当該燃焼に伴う膨張エネルギーにより、ピストン4が往復運動するとともにクランク軸7が中心軸回りに回転するようになっている。燃焼室9の詳細については後述する。
ここで、エンジン本体1の幾何学的圧縮比、つまり、ピストン4が下死点にあるときの燃焼室容積とピストン4が上死点にあるときの燃焼室容積との比は、12以上15以下(例えば14)に設定されている。この12以上15以下という幾何学的圧縮比は、ディーゼルエンジンとしてはかなり低い値である。これは、燃焼温度の抑制によるエミッション性能の向上や熱効率の向上を狙ってのことである。
シリンダヘッド5には、吸気通路30から供給される空気を燃焼室9に導入するための吸気ポート16と、燃焼室9で生成された排ガスを排気通路40に導出するための排気ポート17と、吸気ポート16の燃焼室9側の開口を開閉する吸気弁18と、排気ポート17の燃焼室9側の開口を開閉する排気弁19とが設けられている。また、シリンダヘッド5には、燃焼室9に燃料を噴射するインジェクタ20が取り付けられている。このインジェクタ20は、その先端部21aが燃焼室9内に臨むような姿勢で取り付けられている。
EGR装置50は、排気通路40と吸気通路30とを互いに連結するEGR通路51と、EGR通路51に設けられたEGRクーラ52およびEGR弁53とを有している。EGR弁53は、EGR通路51を通じて排気通路40から吸気通路30に還流される排ガス、つまりEGRガスの流量を調節するために開閉される弁であり、EGRクーラ52はEGRガスを冷却するための熱交換器である。EGR弁53は、例えばエンジンの負荷が比較的低い条件のときに大きく開弁されて、十分な量のEGRガスをエンジン本体1に導入する。これにより、燃焼温度が抑制されてエミッション性能が向上する。
ターボ過給機60は、吸気通路30に配設されたコンプレッサ61と、コンプレッサ61と同軸に連結され、かつ排気通路40に配設されたタービン62と、タービンをバイパスするために排気通路40に設けられたバイパス通路64と、バイパス通路64に開閉可能に設けられたウェストゲート弁65とを有している。タービン62は、排気通路40を流れる排ガスのエネルギーを受けて回転し、コンプレッサ61は、タービン62と連動して回転することにより、吸気通路30を流通する空気を圧縮(過給)する。ウェストゲート弁65は、ターボ過給機60による過給圧が上限値を超えたときに開弁され、過給圧の過上昇を防止する。
吸気通路30におけるコンプレッサ61よりも下流側(吸入空気の流れ方向下流側)には、コンプレッサ61により圧縮された空気を冷却するためのインタークーラ35と、開閉可能なスロットル弁36とが設けられている。なお、スロットル弁36は、エンジンの運転中は基本的に全開もしくはこれに近い高開度に維持されており、エンジンの停止時等の必要時にのみ閉弁されて吸気通路30を遮断する。
排気通路40におけるタービン62よりも下流側(排ガスの流れ方向下流側)には、排ガス中の有害成分を浄化するための排気浄化装置41が設けられている。この排気浄化装置41には、排ガス中のCOおよびHCを酸化する酸化触媒41aと、排ガス中のスート(煤)を捕集するDPF41bとが含まれる。
(2)燃焼室構造
次に、燃焼室9の詳細構造について説明する。
(2−1)全体構造
図3は、ピストン4が上死点にある状態での燃焼室9の断面図である。図4は、燃焼室9の概略上面図である。
図2に示すように、燃焼室9は、シリンダヘッド5の底面5aと、ピストン4の冠面4aと、シリンダ2の内側面2aとにより区画されている。
上記インジェクタ20は、その中心軸がシリンダ2の中心軸X1と一致し、その先端部21aが、燃焼室9の天井部分すなわちシリンダヘッド5の底面5aのうちピストン冠面4aと対向する部分の中央に位置するように配置されている。インジェクタ20は、多噴口式であって、先端部21aに形成された複数の噴射口21bから、燃焼室9内に放射状に燃料を噴射するよう構成されている。本実施形態では、図4に示すように、インジェクタ20は、10個の噴射口21bを有する。
(2−2)キャビティの構造
ピストン4の冠面4aの中央(径方向中央)には、下方に凹むキャビティ70が形成されている。キャビティ70は、ピストン4の中心軸X1を含む各断面において、中心軸X1を中心として線対称な形状を有している。
キャビティ70は、いわゆるリエントラント型であり、中央隆起部71bが隆起するとともに開口部が上窄まり状に絞られた形状を有している。
具体的には、キャビティ70の内側面70aすなわちキャビティ70を形成する壁面70aは、キャビティ70の中心側すなわちシリンダ2の中心軸X1側ほどシリンダヘッド底面5aに近づくように隆起した中央隆起部71bと、中央隆起部71bよりも径方向外側に形成されかつ断面視で径方向外側に凹入する周辺凹部71cと、周辺凹部71cとキャビティ70の開口縁71aとの間に形成されかつ断面視で径方向内側に凸となるリップ部71dとで構成されている。本実施形態では、リップ部71dおよび周辺凹部71cはそれぞれ湾曲しているとともに、リップ部71dから周辺凹部71cに向かってその曲率が連続して変化するよう構成されている。
上述のように、インジェクタ20は、燃焼室9内に放射状に燃料を噴射するよう配置されているが、本実施形態では、特に、インジェクタ20は、図3のQ1で示すように、ピストン4が圧縮上死点付近に位置する場合において、燃料が、リップ部71dと周辺凹部71cとの境界付近に向かって噴射されるように配置されている。そして、この境界部分とピストン4の中心軸X1との距離は、噴射された燃料が直接(液滴の状態で)この境界部分に当たらない長さに設定されている。
なお、このようなキャビティ70としては、例えば、特開2010−121483号公報に開示されているものが適用可能である。
(2−3)ピストン冠面の外周部の構造
ピストン冠面4aのうちキャビティ70の開口縁71aよりも径方向外側に位置する外周部72には、段部73が形成されている。具体的には、キャビティ70の開口縁71aから径方向外側に延びる第1部分74、すなわち、ピストン冠面4aの外周部72の径方向内側部分である第1部分74が、この第1部分74よりも径方向外側に位置する第2部分75、すなわち、ピストン冠面4aの外周部72の径方向外側部分である第2部分75、よりも下方に位置することで、ピストン冠面4aの外周部72に段部73が形成されている。
上記段部73は、図6に示す段部容積をV_STEPとし、図5に示すピストン4が上死点にある状態での燃焼室9の容積である上死点容積をV_TDCとしたときにV_STEP/V_TDCで規定される段部容積比VRが、0.07程度になるように設けられている。具体的には、段部容積V_STEPは、燃焼室9のうち、リップ部71d、第1部分74および段部73にわたるピストン4の壁面S1と、リップ部71dの径方向内側縁を通ってシリンダ3の中心軸X1と平行に延びる面S2と、段部73と第2部分75との接続部を通ってシリンダ3の中心軸X1と直交する方向に延びる面S3とにより区画された部分の容積である。以下、この部分を段部容積部74aという場合がある。また、上死点容積V_TDCは、ピストン4が上死点にある状態でピストン冠面4aとシリンダヘッド底面5aとの間の容積である。本実施形態では、段部容積比VRは、0.07に設定されている。
また、段部73の高さh、すなわち、第1部分74と第2部分75との上下方向の離間距離h(図6参照)は、0.5mm以上に設定されている。本実施形態では、この段部73の高さhは1.0mmに設定されている。なお、ピストン冠面4aの上端面すなわち第2部分75の上面は、シリンダヘッド底面5aから下方に離間しており、これらの間には、所定のクリアランスが確保されている。圧縮上死点におけるこの離間量は、例えば、0.8mm程度である。
(3)燃焼室内のガスの流れと作用効果
(3−1)概要
上記のように構成された燃焼室9内でのガス流れを図7(a)〜(c)を用いて説明する。図7(a)は、ピストン4が圧縮上死点付近にあり燃焼が開始されたときすなわち燃焼初期での様子を示したものである。図7(b)、(c)はこの順で、図7(a)から時間が経過したときの様子を示しており、図7(b)は燃焼中期、図7(c)は燃焼後期での様子である。
図7(a)の矢印Y1で示すように、圧縮上死点付近では、圧縮上死点前にピストン4が上昇するのに伴って燃焼室9のうちキャビティ70の外周部72とシリンダヘッド底面5aとの間の部分から、ガス(空気)がキャビティ70側に向かって流入して、スキッシュ流が発生する。そして、燃料噴射に伴い、キャビティ70内には、矢印Y2で示すように、キャビティ70の内側面に沿ってキャビティ70の外周側から中央側に向かう縦渦が発生する。すなわち、燃料噴霧がキャビティ70の壁面、特にリップ部71dの下側部分に衝突するのに伴って、キャビティ70内に、上記縦渦が発生する。具体的には、キャビティ70内には、リップ部71dに沿って下方に向かった後、周辺凹部71cに沿ってシリンダ3の中心軸側に向かい、その後、中央隆起部71bに沿って、シリンダ3の中心軸側、かつ上方に向かう縦渦が発生する。特に、本実施形態では、リップ部71dおよび周辺凹部71cがそれぞれ湾曲しているとともに、リップ部71dから周辺凹部71cに向かってその曲率が連続して変化するように構成されているため、キャビティ70内のガスはより確実にキャビティ70の壁面に沿って移動し、安定した縦渦が生成される。
このようにキャビティ70内に燃料を噴射すると、キャビティ70内に縦渦が生成され、Q11に示すように燃料噴霧はこの縦渦に乗って下方に移動する。このとき、一部の燃料の燃焼は開始しており、燃料噴霧と燃焼ガスとが下方に移動する。
上述のように、本実施形態では、キャビティ70のリップ部71dと周辺凹部71cとの境界付近に向かって燃料が噴射され、この境界部分は下方に向かって径方向外側に湾曲しており、これによって、燃料噴霧のこの境界部分への衝突角度が小さく抑えられている。そのため、燃料噴霧は、キャビティ70の壁面に付着するのが抑制された状態で、また、周辺に散乱するのが抑制された状態で、円滑にキャビティ70の壁面に沿って下方に移動する。また、本実施形態では、上述のように、上記境界部分とピストン4の中心軸X1との距離が、噴射された燃料が直接(液滴の状態で)この境界部分に当たらない長さに設定されており、これによっても、燃料のキャビティ70の壁面への付着が抑制されている。
図7(b)に示すように、キャビティ70の周辺凹部71cに沿って下方に移動した燃料噴霧および燃焼ガスは、Q12で示すように、周辺凹部71cに沿って移動することで加速され、キャビティ70の壁面に付着した燃料を吹き飛ばしつつ、かつ、キャビティ70の壁面に到達する前の燃料噴霧と干渉することなく、キャビティ70の中央隆起部71bに移動して、キャビティ70の中央に存在する空気A12と混合する。
その後は、図7(c)のQ13に示すように、ピストン4の下降とともに、燃焼室9全体に燃焼ガスが均一に拡散して、燃焼室9全体の空気が効率よく燃焼する。
このように、本実施形態では、燃料噴霧が、キャビティ70の壁面に沿う縦渦にのって移動することで、燃料の滞留や干渉によって局所的にリッチな状態が生じるのが回避され、空気と燃料との混合が促進されて均一でリーンな燃焼ガスが生成される。
(3−2)冷却損失
ここで、図7(b)に示すように、圧縮上死点後は、ピストン4の下降によって燃焼室9のうちキャビティ70よりも径方向外側部分の容積が増大するのに伴って、この部分の圧力は低下する。そのため、矢印Y3に示すように、燃焼室9内には、キャビティ70からキャビティ70の径方向外側に向かう逆スキッシュ流が生じる。
上述のように、燃料が噴射されると、その直後から一部の燃料は燃焼を開始し高温の燃焼ガスが生成される。そのため、この高温の燃焼ガスの一部が逆スキッシュ流に乗ってキャビティ70よりも径方向外側の部分に引き込まれることで、この部分では高温の燃焼ガスから燃焼室9の壁面に熱が逃げてしまい冷却損失が生じる。特に、逆スキッシュ流に乗って移動する燃焼ガスが通過するキャビティ70のリップ部71dとこのリップ部71dに連続する第1部分74にて冷却損失が生じる。
しかしながら、本実施形態では、上述のように、ピストン冠面4aの外周部72に段部73が形成されて、リップ部71dに連続する第1部分74がより下方に配置されて、第1部分74およびこれに連続するリップ部71dの上方の容積が大きく確保されている。そのため、これらの部分すなわちキャビティ70の径方向外側部分の容積の増大速度が小さく抑えられ、これによって冷却損失が小さく抑えられている。すなわち、この容積の増大速度が小さく抑えられることで、リップ部71dおよび第1部分74を通過する燃焼ガスの流速が小さく抑えられ、これによりリップ部71dおよび第1部分74でのガスと壁面との間の熱伝達率が小さくなる結果、ガスから壁面への伝熱量が小さく抑えられる。また、リップ部71dおよび第1部分74の上方の容積が大きいことで、高温の燃焼ガスと燃焼室9の壁面との間に距離が確保されることによっても、燃焼ガスから壁面への伝熱量が小さく抑えられる。
この点について、図8(a)、(b)、図9(a)、(b)、図10(a)、(b)を用いて具体的に説明する。各図の(a)は、段部73が設けられておらず、ピストン冠面4aのうちキャビティ70の径方向外側に位置する外周部72がシリンダヘッド底面5aと近接した位置で平行に延びるよう構成された場合の図であり、各図の(b)は、本実施形態に係る図である。図8(a)、(b)は、燃焼室9内のガスの流れをCFD計算した結果を示したものであり、これら図において矢印の向きがガスの流れ方向を表し、矢印の長さが流速を表している。図9(a)、(b)は、同様のCFD計算結果であって、燃焼室9内のガスの流速を色分けしたものであり、色が濃いほど流速が速いことを示している。図10(a)、(b)は、図8(a)、(b)に対応する燃焼室9内のガス温度の演算結果を示したものであり、色が濃いほど温度が高いことを示している。なお、各図(a)と(b)とにおいて、燃焼室全体の容積は同一である。また、これら図は、圧縮比が14.8程度に設定された1500ccの4気筒エンジンにおける結果であり、各図(a)は、上記のとおり、段部容積比VRが0.07、段部容積部の高さhが1.0mmに設定された場合の結果である。
図8(a)と図8(b)とを比較すると、段部73を設けた本実施形態(図8(b))の方が、段部73が設けられていない場合(図8(a))よりも、リップ部71d周辺(各図のZ1で示した部分)の速度が低くなっていることがわかる。また、図9(a)と図9(b)とを比較すると、リップ部71d周辺(各図のZ1で示した部分)において、段部73を設けた本実施形態(図9(b))の方が、段部73が設けられていない場合(図9(a))よりも、高速のガスの広がり(高速のガスの存在領域)が小さく抑えられていることがわかる。
また、図10(a)と図10(b)とを比較すると、段部73を設けた本実施形態(図10(b))では、リップ部71d周辺(Z1で示した領域)において、高温ガスが燃焼室9の壁面との間から離間しており、壁面と接触する部分には比較的低温のガスが存在しているが、段部73が設けられていない場合(図10(a))では、リップ部71d周辺(Z1で示した領域)において、高温ガスと壁面とがほぼ直接接触している。
ここで、ガスから壁面への伝熱量Qhは、ガスと壁面との間の熱伝達率をαgとし、壁面面積をFgとし、ガスの温度をTgとし壁面温度をTwiとすると、簡易的に、次の式(1)で表される。
[数1]
Qh=∫αg×Fg×(Tg−Twi)dt・・・(1)
そして、熱伝達率αgは、ガスの流速をvg、ガスの圧力をP、ガスの温度をTg、シリンダ2のボア径をDとして、次の式(2)で近似される。なお、Cは係数である。
[数2]
αg=C×D−0.214(vg×p)0.783×Tg−0.525・・・(2)
従って、上記のように、段部73を設けた本実施形態の方が、段部73が設けられていない場合よりも、リップ部71d周辺におけるガスの流速vgが小さく抑えられていることおよび高速のガスの広がりが小さく抑えられていることで、リップ部71d周辺における熱伝達率αgの平均値は小さくなる。加えて、リップ部71d周辺において、段部73を設けた本実施形態の方が、段部73が設けられていない場合よりも、壁面と接触するガスの温度Tgが小さく抑えられている。そのため、段部73を設けた本実施形態の方が、段部73が設けられていない場合よりも、壁面への伝熱量Qhは小さくなる。
このように、段部73が設けられてリップ部71dに連続する第1部分74がより下方に配置され、これにより、リップ部71dと第1部分74上の容積が大きく確保されていることで、本実施形態では、燃焼ガスからリップ部71dおよび第1部分74周辺への伝熱量が小さくされて冷却損失が小さく抑えられる。
(3−3)スート
ここで、このように、段部73を設けてリップ部71dと第1部分74上の容積を大きく確保すれば、冷却損失を小さく抑えることができる。そのため、この容積をより大きくすれば、冷却損失の低減効果をより一層高めることができると考えられる。
しかしながら、本発明者らは、鋭意研究の結果、このリップ部71dと第1部分74上の容積に対応する上記段部容積部74aの容積を大きくすれば冷却損失を低減して燃費性能を高めることができるものの、この容積を過剰に大きくするとスートが悪化することを突き止めた。
これは、次のような理由によると考えられる。
各車両において排気量すなわちシリンダ2の容積は決まっている。さらに、各車両において、出力、燃費、排気性能等の点から圧縮比は限定される。そのため、燃焼室9全体の容積は各車両で限定される。例えば、排気量1500ccの4気筒エンジンで圧縮比が14.8程度の場合では、上死点における燃焼室9の容積は30cc程度に限定される。従って、段部容積部74aを大きくするとその分キャビティ70の容積を小さくせねばならない。そして、キャビティ70の容積が小さくなると、キャビティ70内で十分な縦渦を安定して発生させることができず、燃料と空気との混合が不十分となってスートが悪化する。
例えば、図8(a)と図8(b)とを比較すると、Z2で示した部分において、段部73すなわち段部容積部74aを設けたことに伴いキャビティ70の容積が小さくなった本実施形態(図8(b))の方が、段部73すなわち段部容積部74aが設けられておらずキャビティ70の容積が比較的大きく確保された場合(図8(a))よりも、ガスの流速(矢印の長さ)は小さくなっており、縦渦の強度が弱まっていることがわかる。
(4)容積の比率と性能の関係
上記の結果より、本発明者らは、段部容積部74aの大きさについて適切な範囲があるのではないかと考え、この点について、さらに研究した。その結果、段部容積部74aの容積である段部容積V_STEPと、ピストン4が上死点にある状態での燃焼室9の容積V_TDCとの比である段部容積比VR=V_STEP/V_TDCと、スートおよび冷却損失との関係が、図11に示すような関係となることを発見した。そして、段部73すなわち段部容積部74aを設けつつ、この段部容積比VRを所定の範囲にすれば、冷却損失を低減して燃費性能を高めつつスートの発生量を適切な範囲に抑えることができることを突き止めた。
図11は、段部容積比VRに対するスートの発生量および冷却損失の変化を示したグラフであり、実線が冷却損失、破線がスートの発生量を示している。この図11では、上側にいくほど冷却損失が増大し、スートの発生量が増大することになる。
ここで、図11は、図12に示すように、シリンダ中心軸X1からリップ部71dと周辺凹部71cとの境界部分までの距離を同一として、段部73の高さhとキャビティ70の深さとを変化させることで段部容積比VRを変化させたときの結果である。すなわち、上述のように、燃料のキャビティ70の壁面への付着ひいてはスートの増加を抑制するには、このシリンダ中心軸X1からリップ部71dと周辺凹部71cとの境界部分までの距離をある程度確保する必要があるため、ここでは、この距離を燃料の付着を回避できる最小限の距離に固定して、段部73の高さhとキャビティ70の深さとを変化させた。なお、図12は、圧縮比が14.8程度に設定された1500ccの4気筒エンジンにおいて、段部73の高さhを、0(段部容積部なし)から0.5、1.0、1.3mmと変化させたときの燃焼室形状を示している。また、図13に、段部容積比VRを図12に示すように変化させた際の、1クランク角あたりの燃焼室9の壁面への伝熱量の変化を示した。図13は、横軸がクランク角、縦軸が1クランク角あたりの伝熱量であり、伝熱量は燃焼が行われるTDC以後において大きくなっている。
図13に示されるように、段部容積比VRを大きくすると、燃焼ガスから燃焼室9の壁面への伝熱量は小さくなる。そして、図11に示されるように、段部容積比VRを大きくすると冷却損失は低下する。一方、図11に示されるように、段部容積比VRを大きくすればスートは悪化する。
しかしながら、段部容積比VRに対して冷却損失はほぼ比例して変化するのに対して、スートは段部容積比VRが0.1を超えると急激に悪化する。そのため、段部73および段部容積部74aを設けて、冷却損失を低下させる場合であっても、段部容積比VRは、0.1以下に抑える必要がある。換言すると、段部73および段部容積部74aを設けつつ段部容積比VRを0.1以下にすれば、冷却損失を低下させつつスートの急増を回避することが可能となる。
ただし、図11に示されているように、段部容積比VRを0.04未満にすると、段部容積比VRを変化させてもスートの発生量がほぼ変化しないのに対して、冷却損失は段部容積比VRの低下に伴って増大する。そのため、スートの発生を小さく抑えつつ冷却損失を効果的に低減するには、段部容積比VRを0.04以上とするのがよいといえる。
また、図11に示されるように、スートのラインは段部容積比VR=0.08において変曲しており、スートの増加率(スートのラインの傾き)は段部容積比VRが0.08を超えて大きくなると急増する。そのため、段部容積比VRを0.08付近に設定した場合は、例えば、製造ばらつきやシリンダヘッドの熱膨張ばらつき、また、段部容積部74aにすすが堆積すること等により段部容積部74aの容積がばらつく(増大側にばらつく)と、スートのばらつき(増大量)が大きくなり、スートを想定した範囲内に抑えることができなくなるおそれがある。また、冷却損失のラインは段部容積比VR=0.06において変曲しており、冷却損失の増加率(冷却損失のラインの傾き)は段部容積比VRが0.06を超えて小さくなるとわずかながら増加する。そのため、段部容積比VRを0.06付近に設定した場合は、例えば、上記ばらつきによって冷却損失のばらつき(増大量)が大きくなり、冷却損失ひいては燃費性能を想定した範囲内に抑えることができなくなるおそれがある。従って、安定したスート低減効果および燃費性能を確保するためには、段部容積比VRを0.06以上0.08以下に抑えるのが好ましい。
(5)本実施形態の作用効果
上記に対して、本実施形態では、段部容積比VRが0.07に設定されている。そのため、高いスート低減効果および高い燃費性能を両立させ、かつ、これらの性能効果を安定して確保することができる。
また、段部73の高さh、すなわち、第1部分74と第2部分75との上下方向の離間距離でhが、1.0mmに設定されている。そのため、この第1部分74にすす等が堆積した場合であっても、段部容積部74aの容積を確保することができ、燃費性能を高く維持することができる。すなわち、ピストン冠面4aのうちキャビティ70よりも径方向外側では、すす等が堆積し、その堆積高さが最大で0.4mm程度になることが分かっている。そのため、第1部分74にすす等が仮に堆積した場合であっても、段部容積部74aの容積を確保するためには、段部73の高さhを0.5mm以上とするのが望ましく、本実施形態では、この段部73の高さhが1.0mmに設定されているため仮にすす等が堆積した場合であっても段部容積部74aの容積を確保して、冷却損失を低減することができる。なお、この段部73の高さhは、0.5mm以上であればよく、その上限は、段部容積比VRによって決定されればよい。
(6)変形例
本実施形態では、段部容積比VRを0.07とした場合について説明したが、上記のように、段部容積比VRが少なくとも0.1以下に抑えられていれば冷却損失を低減しつつスートの過度の悪化を抑制することができる。そのため、段部容積比VRは、0.1以下の範囲内で適宜変更可能である。ただし、段部容積比VRが0.04以上に設定されていれば、冷却損失を効果的に低減できる。また、段部容積比VRが0.06以上0.08以下に設定されていれば、安定して高い燃費性能と排気性能(スート低減効果)を得ることができる。
また、すす等の堆積量がより少なく抑えられる場合等には、段部容積比VRを上記範囲に設定しつつ、段部73の高さhを0.5mmより小さくしてもよい。
9 燃焼室
5 シリンダヘッド
4a ピストン冠面
70 キャビティ
72 外周部
73 段部
74 第1部分
75 第2部分

Claims (4)

  1. ディーゼルエンジンに設けられて、円筒状のシリンダの内側面と、当該シリンダ内を往復動するピストンの冠面と、当該ピストン冠面と対向するシリンダヘッドの底面とにより区画されるとともに内側に燃料が噴射される燃焼室の構造において、
    上記シリンダヘッドには、圧縮上死点付近を含むタイミングで燃焼室に燃料を噴射するインジェクタが設けられ、
    上記ピストン冠面の中央には、上記シリンダヘッド底面から離間する方向に凹むキャビティが形成されており、
    上記キャビティを形成する壁面が、キャビティの中心側ほど上記シリンダヘッド底面に近づくように隆起した中央隆起部と、当該中央隆起部よりもピストンの径方向外側に形成されかつ断面視で径方向外側に凹入する周辺凹部と、当該周辺凹部と上記キャビティの開口縁との間に形成されかつ断面視でピストンの径方向内側に凸となるリップ部とを有し、
    上記インジェクタは、圧縮上死点付近に噴射された燃料が上記リップ部と周辺凹部との境界付近を指向し、かつ噴射された燃料が当該境界部分に液滴の状態で当たらないような位置に配置され、
    上記ピストン冠面のうち上記キャビティのリップ部よりもピストンの径方向外側の部分である外周部が、当該リップ部と連続する第1部分と、この第1部分よりもピストンの径方向外側に位置する第2部分とを有し、
    上記第1部分が上記第2部分よりも上記シリンダヘッド底面から離間する方向に位置することにより、上記第1部分と上記第2部分との間に段部が設けられており、
    上記リップ部、第1部分および段部にわたるピストンの壁面と、上記リップ部の径方向内側縁を通って上記シリンダの中心軸と平行に延びる面と、上記段部と第2部分との接続部を通って上記シリンダの中心軸と直交する方向に延びる面とにより区画された部分の容積を段部容積V_STEPとし、上死点における上記燃焼室の容積を上死点容積V_TDCとしたときに、V_STEP/V_TDCで規定される段部容積比VRが、0.1以下に設定されていることを特徴とするディーゼルエンジンの燃焼室構造。
  2. 請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃焼室構造であって、
    上記段部の高さが0.5mm以上に設定されていることを特徴とするディーゼルエンジンの燃焼室構造。
  3. 請求項2に記載のディーゼルエンジンの燃焼室構造であって、
    上記段部容積比VRが、0.04以上に設定されていることを特徴とするディーゼルエンジンの燃焼室構造。
  4. 請求項3に記載のディーゼルエンジンの燃焼室構造であって、
    上記段部容積比VRが、0.06以上0.08以下に設定されていることを特徴とするディーゼルエンジンの燃焼室構造。
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