JP6196099B2 - 発煙剤組成物 - Google Patents

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本発明は、防犯装置(発煙器)に使用できる発煙剤組成物に関する。
建物内への侵入者に対する防犯装置として、煙を発生させる機能を有しているものが知られている。
特許文献1には、防犯用発煙筒と防犯小型簡易カメラを備えた防犯カメラ付煙幕装置の考案が記載されている。
特許文献2には防犯用煙幕装置の考案が記載されているが、高圧ガスが充填されたガスタンクを必須とするものであり、ガスとしては二酸化炭素が例示されている。
特許文献3には、点火装置と発煙剤などを備えた煙幕生成装置が記載されている。発煙剤としては、酸化亜鉛、過塩素酸アンモニウム、塩化ビニル、炭酸カルシウムからなる組成物を錠剤状に成形したものが記載されている(段落番号0020)。
塩化ビニルモノマー自体は発癌性があるとして使用が禁止されているものであり、塩化ビニル樹脂であっても、燃焼により有害な塩素ガスを発生することが考えられるため、安全性の点で問題がある。
特許文献4には、酸化剤、白色粉末、助燃剤が硬化性樹脂により棒状に結着成形され、硬化されてなる白色発煙棒状体が記載されている。具体例として、過塩素酸アンモニウムなどの酸化剤、酸化亜鉛また塩化亜鉛などの白色粉末、澱粉質、炭水化物、塩化ゴムなどの助燃剤、硬化剤の併用により硬化する不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂からなる白色発煙棒状体が記載されている(段落番号0010、0011)。
実施例1の記載では、不飽和ポリエステル樹脂(プレポリマー)を含む棒状体を成形した後で硬化させている。
棒状体にマッチで着火すると、助燃剤や酸化剤の作用により不飽和ポリエステル樹脂が熱分解してガスを生じさせ、そのときに酸化亜鉛また塩化亜鉛などの白色粉末を放出して白煙を生じさせるものと考えられる。
このように白煙源は白色粉末であり、ガス源が熱硬化性樹脂の熱分解によるものであるから、瞬間的に多量のガスを発生させて白色粉末を拡散させることは困難であると考えられる。
実開昭57−194182号公報 実用新案登録第2500591号公報 特許第3816867号公報 特開2003−306395号公報
本発明は、白煙源を発生させると共に白煙源を飛散させるガスを発生させることができる発煙剤組成物を提供することを課題とする。
本発明は、
(A)白煙源を発生させるための発煙剤と、(B)(B-1)燃料と(B-2)酸化剤を含む、ガスおよび白煙源を発生させるためのガス発生剤を含有する発煙剤組成物であって、
(A)成分と(B)成分から発生した白煙源が、(B)成分から発生したガスにより飛散されるものである、発煙剤組成物を提供する。
本発明において白煙源とは、噴出されるか、または噴出された後で冷却されることで白煙となるものを意味する。
本発明の発煙剤組成物は、白煙源を発生させると共に、白煙源を飛散させるためのガスも発生させる。
このため、本発明の発煙剤組成物を防犯装置(発煙器)に使用したとき、勢いよく白煙源を噴出させ拡散させることで白煙を充満させることができるため、防犯効果が高められる。
(A)成分の発煙剤は、作動時における熱により白煙源を発生させるための成分である。白煙源を生じさせるメカニズムは成分により異なるものであり、熱により白煙源を生じさせるものであればよい。
(A)成分の発煙剤としては、(A-1)成分のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレングリコールと、(A-2)成分の金属炭酸塩(水和物)、金属水素化物、金属水酸化物から選ばれるものが好ましい。
(A)成分の発煙剤は、(A-1)成分から選ばれるものでもよいし、(A-2)成分から選ばれるものでもよいし、(A-1)成分と(A-2)成分から選ばれるものを組み合わせてもよい。
(A-1)成分は、作動時における熱により気化(状態変化)してガス(白煙源)となり、前記ガスが冷却されて液滴となって白煙となる。気化によって拡散する空間に白煙を均一濃度に分散させることができるほか、広範囲にわたって拡散させることができる。
(A-2)成分は、作動時における熱により反応(熱分解)して、酸化物(酸化物粉末)と水(水蒸気)(白煙源)に変化した後、酸化物粉末は飛散することでそのまま白煙となり、水蒸気は冷却されて液滴となって白煙となる。そのため白煙成分が酸化物粉末だけでなく、水蒸気からも供給され、濃度の濃い白煙を発生させることができる。
(A)成分として(A-1)成分と(A-2)成分から選ばれるものを組み合わせると、異なる白煙源を発生させることができるため、白煙の濃度や噴出量を高めることができるので好ましい。
(A-1)成分と(A-2)成分は、それぞれ単独であっても十分な白煙源を発生させることができるため、(A-1)成分と(A-2)成分を組み合わせて使用する場合でも、それらの割合は特に制限されるものではない。
(B)成分のガス発生剤は、(B-1)成分の燃料と(B-2)成分の酸化剤、および必要に応じて(B-3)成分のバインダーを含むものであり、ガスおよび白煙を発生させるものである。
(B)成分のガス発生剤は、公知のエアバッグ装置に使用するガス発生器用のガス発生剤を使用することができる。
(B)成分のガス発生剤は、所望形状に成形された成形体であるものが好ましい。
(B-1)成分の燃料は、ニトロセルロース、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンシアヌレート、5-アミノテトラゾール、5,5'-ビステトラゾール2アンモニウム塩から選ばれるものが好ましい。
(B-2)成分の酸化剤は、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムから選ばれるものが好ましい。
(B-2)成分の酸化剤は、(B-1)成分の燃料の酸化剤を瞬時に燃焼させて大量のガス(窒素ガスや二酸化炭素を含むガス)を発生させる共に、酸化剤自体が変化することで白煙源を生じさせる。
例えば、塩素酸カリウムや過塩素酸カリウムは塩化カリウムの粉末となって白煙源となり、硝酸カリウムは、酸化カリウム、炭酸カリウム(ガス中の二酸化炭素と反応する)などの粉末となって白煙源となる。
(B-3)成分のバインダーは、ガス発生剤を所望形状に成形するときに使用する成分であり、グアガム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMCNa)、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン、デキストリンから選ばれるものが好ましい。
(B)成分のガス発生剤中の各成分の含有割合は、次のとおりである。
(B-1)成分は10〜80質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、
(B-2)成分は20〜90質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。
(B-3)成分は、(B-1)成分と(B-2)成分の合計100質量部に対して、0.5〜50質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。
発煙剤組成物における(A)成分の発煙剤と(B)成分のガス発生剤の含有割合は、
(A)成分は10〜90質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、
(B)成分は10〜90質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
本発明の発煙剤組成物は、(A)成分の発煙剤と(B)成分のガス発生剤が混合されたものを所望形状の成形体にすることができる。
本発明の発煙剤組成物は、(A)成分の発煙剤からなる層と(B)成分のガス発生剤からなる層の2層からなる成形体にすることができる。
本発明の発煙剤組成物は、(A)成分の発煙剤と(B)成分のガス発生剤からなる一つの成形体であるが、(A)成分の周囲が(B)成分で被覆された成形体、または(B)成分の周囲が(A)成分で被覆された成形体にすることができるが、(B)成分の周囲が(A)成分で被覆された成形体の方が発煙源を拡散し易いので好ましい。
本発明の発煙剤組成物は、(A)成分の発煙剤と(B)成分のガス発生剤を別々の成形体にすることができる。
(A)成分の発煙剤と(B)成分のガス発生剤を別々の成形体にするときは、形状および大きさは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
成形体は、単孔または多孔を有する円柱状成形体または角柱状成形体、ディスク状成形体、粒状成形体に形成することができる。
成形方法としては、公知のエアバッグ装置で使用するガス発生器用のガス発生剤成形体の製造方法を適用することができ、例えば、特開平10−87390号公報の段落番号0035〜0037、実施例1に記載の製造方法を適用することができる。
本発明の発煙剤組成物を防犯装置用の発煙器において使用するときは、次のようにして発煙器に収容することができる。
1)(A)成分と(B)成分が混合された発煙剤組成物(粉末状または成形体)を1つの容器に入れた状態で収容する実施形態。
2)(A)成分の発煙剤(粉末状または成形体)と(B)成分のガス発生剤(粉末状または成形体)を別々に調製した後、容器中に接触した状態で収容するか、または分離した状態で収容する実施形態。
3)(A)成分の発煙剤(粉末状または成形体)と(B)成分のガス発生剤(粉末状または成形体)を別々に調製した後、別々の容器に収容する実施形態。
前記容器は使用状態に応じて適宜選択することができ、紙、熱可塑性樹脂、ゴムなどの可燃性材料からなるもの、金属やセラミックスなどの不燃性材料からなるものであり、多数の開口部(孔)を有しているものを使用することができる。
本発明の発煙剤組成物を防犯装置(発煙器)に使用したときの作動状態を説明する。
防犯装置は、センサー、電気式点火器を備え、発煙剤組成物が収容されたものであり、室内の天井や壁に取り付けられて使用される。
発煙剤組成物は、例えば防犯装置に設けられた一つの収容室内にまとめて収容されているか、あるいは発煙剤とガス発生剤に分けて別々の収容室に収容されていてもよい。
室内に不法侵入者が入ったとき、センサーが感知することで電気式点火器を作動させて燃焼生成物(火炎や高温ガスなどが混在したもの)を発生させる。
その後、燃焼生成物と(A)成分の発煙剤が接触することによって白煙源が生じる。
(A)成分の発煙剤の成分の内、(A-1)成分のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレングリコールは、電気式点火器の燃焼生成物(熱)によってガス(白煙源)に変化した状態で防犯装置から噴出され、噴出後に空気中で冷却されることで白煙(液滴)に変化する。
(A)成分の発煙剤の成分の内、(A-2)成分の金属炭酸塩(水和物)、金属水素化物、金属水酸化物は、電気式点火器の燃焼生成物(熱)により酸化物粉末(白煙源)と水蒸気(白煙源)となって防犯装置から噴出され、酸化物は微細な粉末からなる白煙となり、水蒸気は冷却されて白煙(液滴)に変化する。
発煙剤と燃焼生成物の接触と並行して、ガス発生剤も燃焼生成物と接触して着火燃焼される。
(B-1)成分の燃料は、酸化剤の作用により燃焼して、窒素ガス、二酸化炭素ガスなどを含む高温ガスを瞬時に発生させる。
(B-2)成分の酸化剤は、(B-1)成分の燃料を燃焼させると共に、酸化剤自体は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、酸化カリウム、炭酸カリウムなどの白煙源に変化して、微細な粉末のまま白煙となる。なおガス発生剤が燃焼するときの熱を使って発煙剤の分解を促進することもできる。
本発明の発煙組成物を使用することで、(A)成分と(B-2)成分から生じた白煙(異なる白煙源に由来する白煙)が、(B-1)成分から発生したガスの作用により勢いよく噴出されることから、白煙が濃くなり、室内に均一にかつ迅速に広範囲に拡散される。
そして、このように防犯装置から室内に白煙が噴出され拡散されることで、侵入者に対して威嚇が行われ、侵入者の視界が妨げられ、行動が抑止または遅延されることから、犯罪行為が抑止乃至は防止、牽制される。
実施例1〜4
表1に示す各成分からなる発煙剤組成物成形体を公知のガス発生剤成形体の製造方法と同様にして製造した。
発煙剤は、外径10mm、長さ10mm、質量1gの円柱状成形体のものを使用した。
ガス発生剤は、外径2.5mm、内径0.6mm、長さ3.4mm、質量0.034gの単孔円柱状のものを使用した。
得られた発煙剤組成物成形体を使用して、発煙状態を確認する試験をした。
発煙剤成形体70gとガス発生剤成形体8gを電気式の点火装置が配置された試験容器(縦5m、横2m、高さ3mの透明なガラス容器)の内部に互いに分けて配置した。但し、1つの点火装置により発煙剤成形体とガス発生剤成形体が同時に着火できるようになっている。容器内は室温(20℃)に維持した。
点火装置を作動させたところ、瞬時に白煙が発生して、肉眼ではガラス容器の反対側が見えなくなった。
Figure 0006196099

Claims (4)

  1. (A)白煙源を発生させるための発煙剤30〜70質量%と、(B)(B-1)燃料と(B-2)酸化剤70〜30質量%を含む、ガスおよび白煙源を発生させるためのガス発生剤を含有する発煙剤組成物であって、
    (A)成分の発煙剤が、(A-1)パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレングリコールから選ばれるものまたは(A-2)水酸化アルミニウムであり、
    (B)成分のガス発生剤中、
    (B-1)成分の燃料が、ニトロセルロース、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンシアヌレート、5-アミノテトラゾール、5,5'-ビステトラゾール2アンモニウム塩から選ばれるものであり、
    (B-2)成分の酸化剤が、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムから選ばれるものであり、
    (B-1)成分と(B-2)成分の合計量中、(B-1)成分が10〜80質量%、(B-2)成分が20〜90質量%であり、
    (A)成分と(B)成分から発生した白煙源が、(B)成分から発生したガスにより飛散されるものである、発煙剤組成物。
  2. (B)成分のガス発生剤が、さらに(B-3)グアガム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドから選ばれるバインダーを含むものである、請求項記載の発煙剤組成物。
  3. センサーと電気式点火器を備え、請求項1または2記載の発煙剤組成物が収容室内に収容された、室内の天井または壁に取り付けて使用されるものである、防犯装置となる発煙器。
  4. センサーと一つの電気式点火器を備え、請求項1または2記載の発煙剤組成物が収容室内に収容された、室内の天井または壁に取り付けて使用される発煙器であって、
    前記発煙剤組成物が、発煙剤成形体とガス発生剤成形体が分けて配置され、前記一つの電気式点火器により発煙剤成形体とガス発生剤成形体が同時に着火できるようになっているものである、防犯装置となる発煙器。
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