以下、図を参照して、本実施形態を説明する。
光電変換素子は、一般的に、電子集電電極と、電子受容体兼電子輸送層(以後、電子輸送層と呼ぶ)と、電子供与体兼ホール輸送層(以下、ホール輸送層と呼ぶ)と、ホール集電電極と、を有して構成される。
図1に、本実施形態の光電変換素子の一例の断面の概略図を示す。また、図2に、本実施形態の光電変換素子の他の例の断面の概略図を示す。
図1に示すように、本実施形態の光電変換素子100aは、第1の基板1上に、電子集電電極である第1の電極3、第1の電子輸送層6及び第2の電子輸送層7を含む電子輸送層5、第1のホール輸送層9及び第2のホール輸送層10を含むホール輸送層8、金属酸化物層11、ホール集電電極である第2の電極4、第2の基板2、が順次設けられた構成を有する。
また、図2の光電変換素子100bは、金属酸化物層11を有さない以外は、光電変換素子100aと同様の構成を有する。
以下、各々の構成要素について詳細に説明する。
(基板)
第1の基板1及び第2の基板2は、一定の硬性を保持するために設けられ、可視光に対して透明な材質のものであれば特に限定されない。具体例としては、ガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などが挙げられる。
(電子集電電極)
第1の電極3の電子集電電極としては、可視光に対して透明な導電性物質であれば、特に限定されず、公知の光電変換素子又は液晶パネルなどで使用される電極を使用することができる。
電子集電電極の具体例としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、インジウム・亜鉛酸化物、ニオブ・チタン酸化物、グラフェンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
電子集電電極の厚さとしては、5nm〜100μmの範囲であることが好ましく、50nm〜10μmの範囲であることがより好ましい。
また、電子集電電極として、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチック膜、ITOコート透明プラスチック膜などの、基板と一体となっているものを使用しても良い。
さらに、酸化スズや酸化インジウムに、原子価が異なる陽イオン又は陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状などの光が透過可能な構成を有する金属電極を、上述の基板上に設けたものを使用しても良い。これらは、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
また、第1の基板1及び第2の基板2の抵抗を下げる目的で、図1及び図2に示すように、各々、第1のリード線13及び第2のリード線14を配置しても良い。
第1のリード線13及び第2のリード線14の材料としては、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケルなどの金属が挙げられる。なお、これらのリード線は、基板1、2に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上に上述した電極を設ける方法が挙げられる。
(電子輸送層)
前述したように、本実施形態の光電気変換素子100は、第1の電極3上に、後述する半導体の微粒子などから形成される電子輸送層5を有する。
電子輸送層5の構成としては、第1の電極3上に、緻密な第1の電子輸送層6と、多孔質状の第2の電子輸送層7と、を有する構成であることが好ましい。
なお、ここで言う「緻密な」とは、第1の電子輸送層6の半導体の微粒子の充填密度が、第2の電子輸送層7の半導体微粒子の充填密度より高密度であることを意味する。
緻密な第1の電子輸送層6は、第1の電極3と後述するホール輸送層8との間の電子的接触(コンタクト)を防止するために形成される。したがって、第1の電極3とホール輸送層8とが物理的に接触しなければ、ピンホールやクラックなどが形成されていても良い。
第1の電子輸送層6の膜厚としては、特に制限されないが、10nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、20nm〜700nmの範囲内であることがより好ましい。
第2の電子輸送層7は、多孔質状の電子輸送層であり、第1の電子輸送層6の上に形成される。
第2の電子輸送層7は、単層であっても良いし、多層であっても良い。第2の電子輸送層7は、塗布法などで形成されるが、一度の塗布で形成される膜厚が不十分である場合は、多層塗布で形成される。
第2の電子輸送層7が多層である場合、粒径が異なる半導体の微粒子の分散液を多層塗布して形成しても良いし、種類が異なる半導体や、樹脂、添加剤の組成などが異なる塗布液を多層塗布して形成しても良い。
第2の電子輸送層7の膜厚は、100nm〜100μmの範囲内にあることが好ましい。第2の電子輸送層7の膜厚が増大するほど、単位投影面積当たりの担持光増感化合物量が増えるため、光の捕獲率が高くなるが、注入された電子の拡散距離も増えるため、電荷の再結合によるロスも大きくなる。そのため、第2の電子輸送層7の膜厚は、100nm〜100μmの範囲内にあることが好ましい。
電子輸送層の材料としては、半導体材料であれば特に限定されず、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体、金属のカルコゲニドなどに代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物、などが挙げられる。
金属のカルコゲニドとしては、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又はタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物などが挙げられる。
その他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物などが挙げられる。
ペロブスカイト構造を有する化合物としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどが挙げられる。
上述した材料は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。また、上述した半導体の結晶型は、単結晶でも多結晶でも非晶質でも良い。
上述した材料の中でも、N型酸化物半導体を使用することが好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブを使用することが好ましい。
上述した半導体の微粒子の一次粒径は、1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、5〜50nmの範囲内にあることがより好ましい。また、平均粒径がより大きい半導体微粒子を混合又は積層して入射光を散乱させることにより、光電特性を向上させることができる。この場合、50〜500nmの平均粒径の半導体微粒子を使用することが好ましい。
電子輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、スパッタリング等の真空中で薄膜を形成する方法や、湿式成膜法などを使用することができる。製造コストの観点から、湿式成膜法を使用することが好ましく、半導体微粒子の粉末又はゾルを分散したペースト又は分散液を調製し、これを電子集電電極基板上に塗布する方法を使用することがより好ましい。
湿式成膜法を使用する場合、ペースト又は分散液の塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、又は、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーンなどの印刷法などを使用することができる。
分散液を作製する場合、半導体微粒子を、単独で又は樹脂との混合物を、後述する溶媒中に、機械的粉砕又はミルなどを使用して分散させることができる。
樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のビニル化合物の重合体又は共重合体、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリニビルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
半導体微粒子を分散する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、α‐テルピネオールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル又は酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン又はジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド又はN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン又は1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン又はクメン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。これは、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
半導体微粒子の分散液又はゾル−ゲル法等によって得られた半導体微粒子のペーストは、粒子の再凝集を防ぐために、塩酸、硝酸、酢酸等の酸、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等の界面活性剤、アセチルアセトン、2−アミノエタノール、エチレンジアミン等のキレート化剤等を添加することが好ましい。また、成膜性を向上させる目的で、増粘剤を添加しても良い。増粘剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の高分子、エチルセルロース等の増粘剤が挙げられる。
半導体微粒子は、塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせ、膜強度を向上させ、かつ、基板との密着性を向上させるために、焼成、マイクロ波照射、電子線照射、レーザー光照射又はプレス処理することが好ましい。これらの処理は、1種類を単独で施しても良いし、2種類以上を併用して施しても良い。
焼成する場合、焼成温度の範囲としては、特に制限はないが、30〜700℃の範囲内であることが好ましく、100〜600℃の範囲内であることがより好ましい。焼成温度が700℃を超える場合、基板の抵抗が高くなることがある。また、基板が溶融することがある。また、焼成時間としては、特に制限はないが、10分〜10時間の範囲内であることが好ましい。
焼成後には、半導体微粒子の表面積を増大させる目的及び/又は光増感化合物から半導体微粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタンの水溶液や有機溶剤との混合溶液を用いた化学メッキや、三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行っても良い。
また、マイクロ波を照射する場合、照射は、電子輸送層形成側から照射しても良いし、その裏側から照射しても良い。照射時間としては、特に制限はないが、1時間以内で行うことが好ましい。
プレス処理を採用する場合、プレス圧としては、100kg/cm2以上とすることが好ましく、1000kg/cm2以上とすることがより好ましい。プレス処理を施す時間としては、特に制限がないが、1時間以内とすることが好ましい。なお、プレス処理時には、熱を印加しても良い。
電子輸送層のラフネスファクターは20以上であることが好ましい。なお、ラフネスファクターとは、基板に塗布した半導体微粒子の面積に対する多孔質内部の実面積を表す数値である。通常、直径が数十nmの半導体微粒子を焼結などによって積層した膜は、ナノ多孔質状態を形成し、高い表面積を有する。
光変換効率を向上させるため、第2の電子輸送層7には、光増感化合物を吸着させることが好ましい。光増感化合物とは、使用される励起光により光励起される化合物であり、具体的には、特表平7−500630号公報、特開平10−233238号公報、特開2000−26487号公報、特開2000−323191号公報、特開2001−59062号公報等に記載の金属錯体化合物、特開平10−93118号公報、特開2002−164089号公報、特開2004−95450号公報、J. Phys. Chem. C, 7224, Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物、同特開2004−95450号公報、Chem. Commun., 4887(2007)等に記載のポリエン化合物、特開2003−264010号公報、特開2004−63274号公報、特開2004−115636号公報、特開2004−200068号、特開2004−235052号公報、J. Am. Chem. Soc., 12218, Vol.126(2004)、Chem. Commun., 3036(2003)、Angew. Chem. Int. Ed., 1923, Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物、J. Am. Chem. Soc., 16701, Vol.128(2006)、J. Am. Chem. Soc., 14256, Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物、特開平11−86916号公報、特開平11−214730号公報、特開2000−106224号公報、特開2001−76773号公報、特開2003−7359号公報等に記載のシアニン色素、特開平11−214731号公報、特開平11−238905号公報、特開2001−52766号公報、特開2001−76775号公報、特開2003−7360号等に記載メロシアニン色素、特開平10−92477号公報、特開平11−273754号公報、特開平11−273755号公報、特開2003−31273号等に記載の9−アリールキサンテン化合物、特開平10−93118号公報、特開2003−31273号等に記載のトリアリールメタン化合物、特開平9−199744号公報、特開平10−233238号公報、特開平11−204821号公報、特開平11−265738号、J. Phys. Chem., 2342, Vol.91(1987)、J. Phys. Chem. B, 6272, Vol.97(1993)、Electroanal. Chem., 31, Vol.537(2002)、特開2006−032260号公報、J. Porphyrins Phthalocyanines, 230, Vol.3(1999)、Angew. Chem. Int. Ed., 373, Vol.46(2007)、Langmuir, 5436, Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物等の光増感化合物を使用することができる。これらの化合物の中でも、金属錯体化合物、クマリン化合物、ポリエン化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物を使用することが好ましい。
第2の電子輸送層7中に光増感化合物を吸着させる方法としては、光増感化合物溶液又は光増感化合物分散液中に、半導体微粒子を有する電子集積電極1を浸漬する方法、又は、光増感化合物溶液又は光増感化合物分散液を電子輸送層に塗布して吸着させる方法などが挙げられる。前者の場合、具体的には、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等が挙げられ、後者の場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等が挙げられる。また、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で吸着させる方法を採用しても良い。
光増感化合物を吸着させる場合、縮合剤を併用しても良い。縮合剤とは、無機物表面に物理的又は化学的に光増感化合物と電子輸送化合物とを結合する反応を触媒するもの、又は化学両論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるものなどを使用することができる。また、縮合助剤として、チオールやヒドロキシ化合物を添加しても良い。
光増感化合物を溶解又は分散する溶媒としては、水、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル又は酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、又はジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド又はN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン又は1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン又はクメン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらは1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
使用する光増感化合物によっては、化合物間の凝集を抑制することにより、より効果的に機能を発現するものが存在するため、凝集解離剤を併用して使用しても良い。凝集解離剤としては、コール酸、ケノデオキシコール酸などのステロイド化合物、長鎖アルキルカルボン酸又は長鎖アルキルホスホン酸などを使用することが好ましい。凝集解離剤の添加量としては、後述する色素1質量部に対して0.01〜500質量部の範囲内とすることが好ましく、0.1〜100質量部の範囲内とすることがより好ましい。
光増感化合物、又は光増感化合物と凝集解離剤とを吸着する際の温度としては、−50℃以上200℃以下とすることが好ましい。吸着は、静置状態で実施しても良いし、攪拌しながら実施しても良い。攪拌しながら実施する場合、攪拌方法としては、限定されないが、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー又は超音波分散等の方法が挙げられる。吸着処理の時間は、5秒以上1000時間以下とすることが好ましく、10秒以上500時間以下とすることがより好ましく、1分以上150時間とすることが更に好ましい。なお、吸着処理は、暗所で実施することが好ましい。
(ホール輸送層)
本実施形態におけるホール輸送層8は、第1の電極側から、第1のホール輸送層9及び第2のホール輸送層10を積層した構造を有し、第2のホール輸送層10は、高分子材料を含む。成膜性に優れる高分子材料を含むことにより、多孔質状の第2の電子輸送層の表面をより平滑化にすることができ、光電変換特性を向上することができる。また、高分子材料は、多孔質状の電子輸送層内部へ浸透することが困難であるため、多孔質状の第2の電子輸送層表面の被覆性に優れ、電極を設置する際の短絡防止にも効果を発揮する。
本実施形態において、第1の電極3側の第1のホール輸送層9に用いられるホール輸送性化合物は、芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が結合された芳香族化合物が重合した重合体を含む。また、本実施形態の好ましい実施形態において、ホール輸送性化合物は、前記芳香族化合物が、硬化触媒によって、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離して重合することにより形成される重合体を含む。
芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が結合された芳香族化合物の具体例としては、一般式(1)で表される芳香族化合物を使用することができる。
一般式(1)中、Xは、−CH
2−、−O−、−CH=CH−、−CH=CH−Ph−CH=CH−、−Ph−又は単結合であり、Phはフェニレン基である。また、R
1、R
2は、各々独立して、水素原子又はメチル基である。
以下に、一般式(1)で表される芳香族化合物の具体的な例示化合物を表1乃至表3に示すが、本発明はこの例示化合物に限定されない。
芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が複数結合された芳香族化合物が、硬化触媒によって、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離して重合することにより形成される重合体を含むホール輸送性化合物は、特異的に抵抗が低くなり、ホール輸送性が向上する。
表1乃至表3で示した化合物例の中でも、共役拡張π電子系を有する化合物を含むことが、ホール輸送性化合物の抵抗が下がり、ホール輸送性が更に向上するため、好ましい。
また、本実施形態において、第1のホール輸送層9に用いられるホール輸送性化合物は、前記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とが重合した重合体を含むことが、好ましい。
(一般式(2)中、R
3及びR
4はメチル基であり、a、bは、各々独立して、0から5までの整数である。)
以下に、一般式(2)で表される芳香族化合物の具体的な例示化合物を表4に示すが、本発明は、この例示化合物に限定されない。
芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が結合された芳香族化合物は、酸触媒などの触媒によって、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離しながら重合し、3次元の網目状の巨大分子を形成する。
重合反応としては、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物同士の重合反応と、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物と一般式(2)で表される電荷輸送性化合物との重合反応と、が挙げられる。
後者の反応において、発明者らは、トリアニールアミン化合物の中でも、窒素原子と結合する置換基を有さないフェニル基、ナフチル基、ピレン基は、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離しながら重合する重合反応における、良好な重合性官能基として機能することを見出した。置換基を有するフェニル基、ナフチル基又はその他の芳香族炭化水素基は、重合性官能基として機能しない。また、ピレン基は、フェニル基やナフチル基と比較して、架橋密度が向上しやすい。
したがって、前述の一般式(2)で表される電荷輸送性化合物は、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物と重合反応した場合、より好ましい3次元架橋膜を形成する。
表1乃至表3で示した[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する芳香族化合物の硬化触媒による重合は、後述する反応様式1乃至6(若しくはこれらの反応様式の組み合わせ)によって進行すると推定される。得られる重合体は、3次元の網目状に重合した巨大分子であるため、一般式で示すことは困難であるが、重合時には、(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基の一部が切断されて脱離する反応を伴うため、反応後に重量が減少する。したがって、上記芳香族化合物を硬化触媒と共に示差熱熱重量同時測定(TG−DTA)装置を用いて加熱することで、重量減少が観察される。
また、重合時に発生するガス成分を、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)することで、(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基の一部が切れたことを示す、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、5−ヒドロキシペンタナール等の脱離生成物を検出することができる。
次に、推定される具体的な反応様式1乃至3について説明する。
[反応様式1]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する芳香族化合物の硬化触媒による重合の反応様式1における、概略的な反応式は下記の通りである。
なお、上記の反応式における、Arは、任意の芳香環を表す。
反応様式1においては、第1の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基のテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基部分が切れて脱離し、第2の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離し、ジメチレンエーテル結合を形成しながら重合反応が進行する。
[反応様式2]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する芳香族化合物の硬化触媒による重合の反応様式2における、概略的な反応式は下記の通りである。
なお、上記の反応式における、Arは、任意の芳香環を表す。
反応様式2においては、第1及び第2の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の、(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離し、エチレン結合を形成しながら重合反応が進行する。
[反応様式3]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する芳香族化合物の硬化触媒による重合の反応様式3における、概略的な反応式は下記の通りである。
なお、上記の反応式における、Arは、任意の芳香環を表す。
反応様式3においては、第1の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離し、他の芳香族化合物の芳香環に結合して、メチレン結合を形成しながら重合反応が進行する。
[反応様式4、5及び6]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する芳香族化合物の硬化触媒による重合の反応様式4乃至6における、概略的な反応式は下記の通りである。
なお、上記の反応式における、Arは、任意の芳香環を表す。
これらの反応は、片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基部分が切れて脱離しながら、前記一般式(2)で表される化合物における窒素原子に結合された、置換基を有さないフェニル基、ナフチル基本又はピレン基に結合してメチレン基を形成する反応である。
本実施形態の芳香族化合物の硬化触媒による重合は、これら反応様式1乃至6の組み合わせによって、3次元の網目状に巨大分子化しながら重合する反応である。
硬化触媒としては、上述した反応様式に示すように、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離して重合させる反応を触媒するものであれば、特に限定されないが、酸性化合物を使用することが好ましく、有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸誘導体を使用することがより好ましい。硬化触媒の具体例としては、ビニルスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
また、硬化触媒として、有機スルホン酸塩や、所定の温度以上に保持することにより酸性度が発現する熱潜在性化合物を使用しても良い。この場合の具体例としては、NACURE2500、NACURE5225、NACURE5543、NACURE5925(いずれもキングインダストリー社製)等のアミンによりブロックさせた熱潜在性プロトン酸触媒、SI−60(三進化学社製)、アデカオプトマーSP−300、アデカオプトマーCP−66、CP−77(いずれも旭電化社製)などが挙げられる。
なお、硬化触媒は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
第2の電極4側の第2のホール輸送層10で用いられる高分子材料としては、公知のホール輸送性高分子材料であれば特に限定されず、例えば、ポリ(3−n−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−n−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9'−ジオクチル−フルオレン−コ−ビチオフェン)、ポリ(3,3'''−ジドデシル−クォーターチオフェン)、ポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(2,5−ビス(3−デシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルチオフェン−コ−チエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン−コ−チエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(3,6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン−コ−チオフェン)、ポリ(3.6−ジオクチルチエノ[3,2−b]チオフェン−コ−ビチオフェン)等のポリチオフェン化合物、ポリ[2−メトキシー5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[2−メトキシー5−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[(2−メトキシ−5−(2−エチルフェキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)−コ−(4,4'−ビフェニレンービニレン)]等のポリフェニレンビニレン化合物、ポリ(9,9'−ジドデシルフルオレニル−2,7−ジイル)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレン)−alt−コ−(9,10−アントラセン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレン)−alt−コ−(4,4'−ビフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレン)−alt−コ−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−(2,5−ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]等のポリフルオレン化合物、ポリ[2,5−ジオクチルオキシ−1,4−フェニレン]、ポリ[2,5−ジ(2−エチルヘキシルオキシー1,4−フェニレン]等のポリフェニレン化合物、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−コ−(N,N'−ジフェニル)−N,N'−ジ(p−ヘキシルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−コ−(N,N'−ビス(4−オクチルオキシフェニル)ベンジジン−N,N'−(1,4−ジフェニレン)]、ポリ[(N,N'−ビス(4−オクチルオキシフェニル)ベンジジン−N,N'−(1,4−ジフェニレン)]、ポリ[(N,N'−ビス(4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン−N,N'−(1,4−ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ−1,4−フェニレンビニレン−2,5−ジオクチルオキシ−1,4−フェニレンビニレン−1,4−フェニレン]、ポリ[p−トリルイミノ−1,4−フェニレンビニレン−2,5−ジ(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン−1,4−フェニレン]、ポリ[4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ−1,4−ビフェニレン]等のポリアリールアミン化合物、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−コ−(1,4−ベンゾ(2,1',3)チアジアゾール]、ポリ(3,4−ジデシルチオフェン−コ−(1,4−ベンゾ(2,1',3)チアジアゾール)等のポリチアジアゾール化合物などが挙げられる。これらの化合物の中でも、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルなどの観点から、ポリチオフェン化合物、ポリアリールアミン化合物を使用することが好ましい。なお、上述した化合物は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
また、上述のホール輸送性化合物に、添加剤を添加しても良い。添加剤としては、例えば、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉄、ヨウ化銀等の金属ヨウ化物、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム、ヨウ化ピリジニウム等の4級アンモニウム塩、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウム等の金属臭化物、臭化テトラアルキルアンモニウム、臭化ピリジニウム等の4級アンモニウム化合物の臭素塩、塩化銅、塩化銀等の金属塩化物、酢酸銅、酢酸銀、酢酸パラジウム等の酢酸金属塩、硫酸銅、硫酸亜鉛等の金属硫酸塩、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン等、ヨウ化16−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾイニウム塩、ヨウ化1−メチル−3−n−ヘキシルイミダゾリニウム塩、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムトリフロオロメタンスルホン酸塩、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムノナフルオロブチルスルホン酸塩、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチル)スルホニルイミド、1−メチル−3−n−ヘキシルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−メチル−3−n−ヘキシルイミダゾリウムジシアナミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド/リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、等のイオン液体、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ベンズイミダゾール等の塩基性化合物、リチウムトリフルオロメタンスルホニルイミド、リチウムジイソプロピルイミド等のリチウム化合物などが挙げられる。これらの添加剤の中でも、ビス(トリフルオロメチル)スルホニルイミドアニオンを有するイオン液体を使用することが好ましい。なお、添加剤は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
また、上述のホール輸送性化合物に、必要に応じてアクセプター材料を加えても良い。アクセプター材料としては、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などが挙げられる。これらのアクセプター材料は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
また、導電性を向上させる目的で、上述のホール輸送性化合物の一部をラジカルカチオンにするための酸化剤を添加しても良い。酸化剤としては、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4−ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀などが挙げられる。なお、酸化剤の添加によって全てのホール輸送性化合物を酸化する必要はなく、一部が酸化されていれば良い。また、添加した酸化剤は、添加した後に、系外に取り出しても良いし、取り出さずに残留していても良い。
ホール輸送層8は、光増感化合物を担持した電子輸送層7の上に形成する。ホール輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、真空蒸着などの真空中で薄膜を形成する方法や、湿式成膜法などの方法を採用することができる。製造コストの観点からは、湿式成膜法を採用することが好ましい。
湿式製膜法を用いる場合のホール輸送性化合物や各種添加剤を溶解又は分散する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらは、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
湿式成膜における塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、又は、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーンなどの印刷法などを使用することができる。また、超臨界流体又は亜臨界流体中で成膜しても良い。
超臨界流体としては、気体と液体とが共存できる臨界(臨界点)を超えた温度、圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上かつ臨界圧力以上の状態にある流体である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものを使用することが好ましい。具体的には、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、メタノール、エタノール、n−ブタノールなどのエルコール系溶媒、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどのハロゲン系溶媒、ジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒を好ましく使用することができる。これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であり、容易に超臨界状態を作り出せると共に、不燃性で取り扱いが容易であるため、好ましく使用することができる。なお、上述した流体は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在することができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。上述した超臨界流体として挙げた化合物は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度としては、−273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下がより好ましい。
また、上述の超臨界流体及び亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーと併用することも好ましい。有機溶媒及びエントレーナーの添加により、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行うことができる。このような有機溶媒としては、特に制限はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル又は酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン又はジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド又はN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン又は1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。
本実施形態では、光増感化合物12を被覆した第2の電子輸送層7を有する第1の電極3上に、ホール輸送層8を設けた後に、プレス処理を施すことが好ましい。プレス処理を施すことによって、ホール輸送層8が、より多孔質電極と密着するため、光電効率が向上すると思われる。
プレス処理方法としては、特に制限はないが、錠剤成型器に代表されるような平板を用いたプレス成型法、ローラーなどを用いたロールプレス法などが挙げられる。プレス処理の圧力としては、10kgf/cm2以上とすることが好ましく、30kgf/cm2以上とすることがより好ましい。プレス処理する時間としては、特に制限はないが、1時間以内で行うことが好ましい。また、プレス処理時には、熱を印加しても良い。また、プレス手段と第1の電極3との間には、離型材を配置することが好ましい。離型材としては、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂などが挙げられる。
プレス処理を施した後には、ホール輸送層8と後述する第2の電極4との間に金属酸化物層11が配置されるよう、金属酸化物層11を形成しても良い。金属酸化物層11の金属酸化物としては、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケルなどが挙げられ、この中でも酸化モリブデンを使用することが好ましい。
金属酸化物の形成方法としては、特に制限はないが、スパッタリングや真空蒸着などの真空中で薄膜を形成する方法や、湿式成膜法などを採用することができる。
湿式成膜法としては、金属酸化物の粉末又はゾルを分散したペーストを調製し、ホール輸送層8上に塗布する方法を採用することが好ましい。
湿式成膜法を採用する場合、塗布方法としては特に制限はなく、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、又は、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等の印刷法などが挙げられる。
金属酸化物層11の膜厚としては、0.1〜50nmの範囲内であることが好ましく、1〜10nmの範囲内であることがより好ましい。
(ホール集電電極)
ホール集電電極である第2の電極4は、ホール輸送層8又は金属酸化物層11上に形成される。第2の電極4の材料としては、前述した第1の電極3と同様のものを用いることができる。また、強度や密封性が十分に保たれる構成の場合、支持体はなくても良い。
第2の電極4の材料の具体例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素系化合物、ITO、FTO、ATO等の導電性金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子などが挙げられる。これらの材料は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
また、第2の電極4の膜厚としては、特に制限はない。
第2の電極4の形成方法については、用いられる材料の種類やホール輸送層8の種類などにより、塗布、ラミネート、蒸着、CVD、貼り合わせなどの手法を採用することができる。
本実施形態の光電変換素子を色素増感型太陽電池として使用する場合、第1の電極3と第2の電極4の少なくとも一方が透明であれば良い。しかしながら、本実施形態においては、電子集電電極である第1の電極3側が少なくとも透明であり、太陽光を電子集電電極3側から入射させる方法を採用することが好ましい。この場合、ホール集電電極側には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、+チック又は金属薄膜を使用することが好ましい。
また、太陽光の入射側に、反射防止膜を設けることも好ましい。
なお、本実施形態の色素増感型太陽電池は、太陽電池及び/又は太陽電池を用いた電源装置などにも応用可能である。他にも、従来から太陽電池や太陽電池を用いた電源装置を利用している機器類であれば、いずれのものにも応用可能であり、例えば電子卓上計算機や腕時計用の太陽電池、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等の電源装置に応用することができる。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源としても使用することができる。
(実施例)
先ず、実施例及び参考例で使用した各化合物の合成例について説明する。
[合成例1(ハロゲン中間体の合成)]
合成例1で想定する反応式は、
4−ブロモベンジルアルコール:50.43g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:45.35g、テトラヒドロフラン:150mlを四つ口フラスコに入れ、5℃で撹拌しながらパラトルエンスルホン酸:0.512gを投入した。室温下で2時間撹拌した後、酢酸エチルを用いた抽出処理、硫酸マグネシウムを用いた脱水処理、次いで活性白土及びシリカゲルを用いた吸着処理を行った。その後、濾過、洗浄、濃縮して、合成例1化合物を得た(収量72.50g、無色オイル状物)。
図3に、本実施形態の合成例1化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例2(表1乃至3の例示化合物No.1の合成)]
合成例2で想定する反応式は、
4,4'−ジアミノジフェニルメタン:2.99g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下で室温にて撹拌しながらトリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下した。80℃で1時間、還流にて更に1時間撹拌した。トルエンにて希釈し、合成例1と同様に硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌した。その後、濾過、洗浄、濃縮して、黄色オイル状の物質を得た。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行い、単離して、合成例2化合物を得た(収量5.7g、薄黄色アモルファス状物)。
図4に、本実施形態の合成例2化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例3(表1乃至3の例示化合物No.3の合成)]
合成例3で想定する反応式は、
メチロール化合物:1.35g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:2.7g、テトラヒドロフラン:50mlを四つ口フラスコに入れ、5℃で撹拌しながらパラトルエンスルホン酸:15mgを投入した。室温下で2時間撹拌した後、酢酸エチルを用いた抽出処理、硫酸マグネシウムを用いた脱水処理、次いでシリカゲルカラム精製(ジクロロメタン/酢酸エチル=20/1)を行い、合成例3化合物を得た(収量1.25g、薄黄色アモルファス状物)。
図5に、本実施形態の合成例3化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例4(表1乃至3の例示化合物No.4の合成)]
合成例4で想定する反応式は、
4,4'−ジアミノジフェニルエーテル:3.0g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下、室温で撹拌した。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下し、80℃にて1時間、還流にて更に1時間撹拌した。トルエンにて希釈し、合成例1と同様に硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌した。その後、濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物を得た。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行い、単離して、合成例4化合物を得た(収量5.7g、薄黄色オイル状物)。
図6に、本実施形態の合成例4化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例5(表1乃至3の例示化合物No.7の合成)]
合成例5で想定する反応式は、
4,4'−ジアミノスチルベン・ジヒドロクロリド:1.42g、合成例1化合物:6.51g、ターシャルブトキシナトリウム:9.61g、ビス(トリ−t−ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:50mlを四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下、室温で撹拌し、還流にて更に1時間撹拌した。トルエンにて希釈し、合成例1と同様に硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌した。その後、濾過、洗浄、濃縮を行い、黄色オイル状物を得た。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行い、単離して、合成例5化合物を得た(収量1.6g、薄黄色アモルファス状物)。
図7に、本実施形態の合成例5化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例6(表1乃至3の例示化合物No.10の合成)]
合成例6で想定する反応式は、
メチロール化合物:1.47g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:2.7g、テトラヒドロフラン:50mlを四つ口フラスコに入れ、5℃で撹拌しながらパラトルエンスルホン酸:15mgを投入した。室温下で2時間撹拌した後、酢酸エチルを用いた抽出処理、硫酸マグネシウムを用いた脱水処理、次いでシリカゲルカラム精製(ジクロロメタン/酢酸エチル=20/1)を行い、合成例6化合物を得た(収量1.45g、黄色アモルファス状物)。
図8に本実施形態の合成例6化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例7(表1乃至3の例示化合物No.13の合成)]
合成例7で想定する反応式は、
4,4'−ジアミノ−p−ターフェニル:1.30g、合成例1化合物:6.508g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ−t−ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:50mlを四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌し、還流にて更に1時間撹拌した。トルエンにて希釈し、合成例1と同様に硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌した。その後、濾過、洗浄、濃縮を行い、黄色オイル状物を得た。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行い、単離して、合成例7化合物を得た(収量1.95g、薄黄色アモルファス状物)。
図9に、本実施形態の合成例7化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例8(例示化合物No.16の合成)]
合成例8で想定する反応式は、
メチロール化合物:1.21g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:2.7g、テトラヒドロフラン:50mlを四つ口フラスコに入れ、5℃で撹拌しながらパラトルエンスルホン酸:15.mgを投入した。室温下で2時間撹拌した後、酢酸エチルを用いた抽出処理、硫酸マグネシウムを用いた脱水処理、次いでシリカゲルカラム精製(ジクロロメタン/酢酸エチル=20/1)を行い、合成例6化合物を得た(収量1.25g、薄黄色アモルファス状物)。
図10に、本実施形態の合成例8化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例9(例示化合物No.17の合成)]
合成例9で想定する反応式は、
上記反応式の左式で示した中間体メチロール化合物:1.274g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:1.346g、テトラヒドロフラン:20mlを四つ口フラスコに入れ、5℃にて撹拌した。パラトルエンスルホン酸:14mgを投下し、室温下にて、更に4時間撹拌した。酢酸エチルを用いた抽出処理、硫酸マグネシウムを用いた脱水処理、次いで活性白土及びシリカゲルを用いた吸着処理を行った。その後、濾過、洗浄、濃縮により、黄色オイル状物質を得た。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行い、単離して、合成例9化合物を得た(収量1.48g、黄色オイル状物)。
図11に本実施形態の合成例9化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
次に、実施例、参考例及び比較例で作製した光電変換素子について説明する。
[参考例1]
チタニウムテトラ−n−プロポキシド:2ml、酢酸:4ml、イオン交換水:1ml、2−プロパノール:40mlを混合して、FTOガラス基板上にスピンコートし、室温で乾燥後、大気雰囲気下、450℃で30分間焼成した。再度、上記と同一の溶液を用いて、膜厚が100nmになるようにスピンコートで塗布し、大気雰囲気下、450℃で30分間焼成して、「緻密な」第1の電子輸送層を形成した。
酸化チタン(石原産業社製ST−21):3g、アセチルアセトン:0.2g、界面活性剤(和光純薬社製ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル):0.3gを、水:5.5g及びエタノール:1.0gと共に、12時間ビーズミル処理し、分散液を得た。
得られた分散液に、ポリエチレングリコール(#20,000):1.2gを加えてペーストを作製した。このペーストを、第1の電子輸送層上に、膜厚2μmとなるように塗布し、室温で乾燥後、大気雰囲気下、500℃で30分間焼成し、多孔質状の第2の電子輸送層を形成し、酸化チタン半導体電極を得た。
得られた酸化チタン半導体電極を、増感色素としてアセトニトリル/t−ブタノール(体積比1:1)溶液(三菱製紙製、D358、0.5mM)に浸漬し、1時間暗所にて静置して光増感化合物を吸着させた。
光増感化合物を担持した酸化チタン半導体電極上に、表1の例示化合物(No.1)を溶解したクロロベンゼン(固形分10%)溶液に、パラトルエンスルホン酸(例示化合物に対して1質量%)、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(27mM)を加えて得た溶液を、スピンコート法にて成膜した。その後、80℃で20分間乾燥し、第1のホール輸送層を形成した。
さらに、ポリ(3−n−ヘキシルチオフェン)(アルドリッチ社製)を溶解したクロロベンゼン(固形分2%)に、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロスルホニル)ジイミド(27mM)を加えて得た溶液を、第1のホール輸送層上にスプレー塗布して、第2のホール輸送層を約100nm成膜した。その後、ホール集電電極として金を100nm真空蒸着して、参考例1の光電変換素子を得た。
[参考例2乃至4、6乃至8、実施例5]
実施例1における、ホール輸送性化合物を、表5に示すホール輸送性化合物に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、参考例2乃至4、6乃至8、実施例5の光電変換素子を得た。
[
参考例9]
実施例1における、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドをリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに変更した以外は
参考例1と同様の方法により、
参考例9の光電変換素子を得た。
[参考例10]
実施例1における、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドに変更した以外は参考例1と同様の方法により、参考例10の光電変換素子を得た。
[参考例11]
参考例1における、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド/リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(重量比=1/1)に変更した以外は参考例1と同様の方法により、参考例11の光電変換素子を得た。
[参考例12]
参考例1における、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを過塩素酸リチウムに変更した以外は参考例1と同様の方法により、参考例12の光電変換素子を得た。
[参考例13]
参考例1と同様の方法により、酸化チタン半導体電極を得た。
得られた酸化チタン半導体電極を、増感色素としてアセトニトリル/t−ブタノール(体積比1:1)溶液(三菱製紙製、D358、0.5mM)に浸漬し、1時間暗所にて静置して光増感化合物を吸着させた。
光増感化合物を担持した酸化チタン半導体電極上に、表1の例示化合物(No.1)と、同質量の表4の例示化合物(No.A)とを溶解したクロロベンゼン(固形分10%)溶液に、パラトルエンスルホン酸(例示化合物に対して1質量%)、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(27mM)を加えて得た溶液を、スピンコート法にて成膜した。その後、120℃で20分間乾燥し、第1のホール輸送層を形成した。
さらに、ポリ(3−n−ヘキシルチオフェン)(アルドリッチ社製)を溶解したクロロベンゼン(固形分2%)に、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロスルホニル)ジイミド(27mM)を加えて得た溶液を、第1のホール輸送層上にスプレー塗布して、第2のホール輸送層を約100nm成膜した。その後、ホール集電電極として金を100nm真空蒸着して、参考例13の光電変換素子を得た。
[参考例14乃至21、23乃至25、実施例22]
実施例13における、表1の例示化合物と表4の例示化合物とを、表6に示す例示化合物の組み合わせに変更した以外は、参考例13と同様の方法により、参考例14乃至21、23乃至25、実施例22の光電変換素子を得た。
[
参考例26]
参考例13における、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに変更した以外は、
参考例13と同様の方法により、
参考例26の光電変換素子を得た。
[参考例27]
参考例13における、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドに変更した以外は、参考例13と同様の方法により、参考例27の光電変換素子を得た。
[参考例28]
参考例13における、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド/リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(重量比=1/1)に変更した以外は、参考例13と同様の方法により、参考例28の光電変換素子を得た。
[参考例29]
参考例13における、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを、過塩素酸リチウムに変更した以外は、参考例13と同様の方法により、参考例29の光電変換素子を得た。
[比較例1乃至2]
参考例1におけるホール輸送性化合物を、下記化合物No.19又は化合物No.20に変更し、パラトルエンスルホン酸を除いた以外は参考例1と同様の方法により、各々、比較例1、比較例2の光電変換素子を得た。
[比較例3]
参考例1におけるパラトルエンスルホン酸を除いた以外は
参考例1と同様の方法により、比較例3の光電変換素子を得た。
[比較例4]
ホール輸送性化合物形成時にパラトルエンスルホン酸を1質量%加えた以外は比較例1と同様の方法により、比較例4の光電変換素子を得た。
[評価]
各実施例、参考例及び比較例の光電変換素子について、擬似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における光電変換効率を測定した。擬似太陽光は、英弘精機製ソーラーシミュレーターSS−80XIL、評価機器はNF回路設計ブロック社製太陽電池評価システムAs−510−PV03を用いて測定した。
参考例1乃至4、6乃至8、実施例5における、開放電圧、短絡電流密度、形状因子、変換効率については、表5及び表6に示した。
参考例9の光電変換素子は、開放電圧=0.93V、短絡電流密度3.51mA/cm 2 、形状因子=0.48、変換効率=1.57%であった。参考例10の光電変換素子は、開放電圧=0.91V、短絡電流密度3.61mA/cm 2 、形状因子=0.47、変換効率=1.54%であった。参考例11の光電変換素子は、開放電圧=0.91V、短絡電流密度3.69mA/cm2、形状因子=0.49、変換効率=1.65%であった。参考例12の光電変換素子は、開放電圧=0.90V、短絡電流密度3.47mA/cm 2 、形状因子=0.49、変換効率=1.53%であった。
また、参考例26の光電変換素子は、開放電圧=0.92V、短絡電流密度3.64mA/cm 2 、形状因子=0.47、変換効率=1.57%であった。参考例27の光電変換素子は、開放電圧=0.94V、短絡電流密度3.61mA/cm 2 、形状因子=0.50、変換効率=1.70%であった。参考例28の光電変換素子は、開放電圧=0.92V、短絡電流密度3.64mA/cm2、形状因子=0.50、変換効率=1.71%であった。参考例29の光電変換素子は、開放電圧=0.92V、短絡電流密度3.72mA/cm 2 、形状因子=0.50、変換効率=1.71%であった。
表1、表6及び上述の評価結果により、実施例及び参考例の光電変換素子は、良好な光電変換特性を有し、特に、例示化合物No.10、No.16、No.17を使用した実施形態において、より良好な光電変換特性を示した。
また、上記評価と表5と表6との比較から、芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が結合された芳香族化合物と、一般式(2)で表される化合物とが重合した重合体を含む、参考例13乃至21、23乃至29、実施例22の光電変換素子は、更に良好な光電気変換特性を有した。
また、比較例1乃至3の光電変換素子の評価結果について、表7に示す。
表7より、実施例
、参考例の光電変換素子と比較して、比較例1乃至3の光電変換素子は、光電変換特性が低い。また、硬化触媒であるパラトルエンスルホン酸を除いた比較例3においては、特に光電変換特性が低い。
本実施形態のホール輸送性化合物を含むことにより、光電変換特性が向上する理由について、図を参照して説明する。
図12に、本実施形態の光電変換素子のインピーダンス測定による、Cole−Coleプロットの例を示す。インピーダンス測定の測定条件としては、動作面積:0.16cm2、遮光マスクの面積:0.25cm2、スキャン速度:50mV/sとした。
図12において、実線は参考例1における光電変換素子の測定例であり、破線は比較例3における光電変換素子の測定例である。
図12により、参考例1の光電変換素子は、芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が結合された芳香族化合物が、硬化触媒によって、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離して重合することにより形成される重合体を含むことにより、抵抗が下がり、ホール輸送性が向上したと考えられる。
また、比較例4の光電変換素子の評価結果は、開放電圧:0.69V、短絡電流密度:1.85mA/cm 2 、形状因子:0.51、変換効率:0.65%であった。
各実施例、参考例及び比較例4の評価結果の比較から、重合反応性を示さない材料に硬化触媒を添加した比較例4の場合、光電変換特性は低下する。即ち、本実施形態は、芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が結合された芳香族化合物が、硬化触媒によって、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離して重合することにより形成される重合体を含むことにより、特異的に抵抗が下がり、ホール輸送性が向上し、光電変換特性が向上している。