用語の定義
本明細書に提供された実施例の理解を容易にするために、特定の頻繁に使用される方法及び/用語を説明するものである。
「薬剤」という用語は、ポリペプチド、ポリペプチドの混合物、空間的に局在化させた化合物のアレイ(例えばVLSIPSペプチドアレイ、ポリヌクレオチドアレイ及び/若しくはコンビナトリアル小分子アレイ)、生物学的高分子、バクテリオファージペプチドディスプレイライブラリ、バクテリオファージ抗体(例えばscFv)ディスプレイライブラリ、ポリソームペプチドディスプレイライブラリ、若しくは細菌、植物、真菌或いは動物(特定の哺乳類)細胞或いは組織などの生物学的物質から作られた抽出物を意味するために本明細書で使用されている。薬剤は、本明細書で後に記載されるスクリーニングアッセイにおける試験対象によって、抗悪性腫瘍、抗炎症作用或いはアポトーシス修飾因子としての潜在的な活性を評価される。薬剤は、本明細書で後に記載されるスクリーニングアッセイにおける試験対象によって、特定のタンパク質相互作用阻害剤(すなわち2つの既定のポリペプチド間の結合相互作用を選択的に阻害するが、細胞生存率は実質的には妨害しない薬剤)としての潜在的な活性を評価される。
本明細書で用いられたように「アミノ酸」という用語は、アミノ基(――NH2)及びカルボキシル基(――COOH);好ましくは遊離基或いはペプチド結合の一部として縮合した後の代替基を含有するあらゆる有機化合物を意味するものである。「20個の天然にコード化されたポリペプチド−形成アルファ−アミノ酸」は、本分野では理解されており、アラニン(ala或いはA)、アルギニン(arg或いはR)、アスパラギン(asn或いはN)、アルパラギン酸(asp或いはD)、システイン(cys或いはC)、グルタミン酸(glu或いはE)、グルタミン(gln或いはQ)、グリシン(gly或いはG)、ヒスチジン(his或いはH)、イソロイシン(ile或いはI)、ロイシン(leu或いはL)、リシン(lys或いはK)、メチオニン(met或いはM)、フェニルアラニン(phe或いはF)、プロリン(pro或いはP)、セリン(ser或いはS)、スレオニン(thr或いはT)、トリプトファン(trp或いはW)、チロシン(tyr或いはY)及びバリン(val或いはV)を意味している。
「複製」という用語は、ポリヌクレオチドのコピー数を増加させることを意味するものである。
本明細書で用いられたように、「抗体」という用語は、無傷免疫グロブリン分子、さらには抗原のエピトープに結合できるFab、Fab'(Fab')2、Fv及びSCA断片などの免疫グロブリン分子の断片を意味するものである。これらの抗体断片は、それらが由来する前記抗体の抗原(例えばポリペプチド抗原)へ選択的に結合するいくらかの能力を保持しており、その抗体断片は本分野ではよく知られた方法を用いて作られ(例えばHarlow and Lane,supraを参照のこと)、以下でさらに記載する。抗体は、免疫親和性クロマトグラフィによって調製量の抗原を単離するために使用され得る。そのような抗体の様々な他の使用法としては、疾患(例えば腫瘍)の診断及び/若しくはステージング、及び例えば腫瘍、自己免疫疾患、AIDS、心血管疾患、感染症及びそれらと同等物などの疾患を治療するための治療適応などがある。キメラ、ヒト様(human−like)、ヒト化或いは完全なヒト抗体は、ヒト患者への投与に対して特に有用である。
Fab断片は、抗体分子の一価抗原−結合断片から成り、無傷軽鎖から成る断片及び重鎖の一部を得るために、酵素パパインによる完全抗体分子の消化によって産生され得る。
抗体分子のFab'断片は、無傷軽鎖から成る断片及び重鎖の一部を得るために、ペプシンで完全抗体分子を処理し、その後還元するによって得られる。2つのFab'断片は、このやり方で処理された抗体分子を通じて得られる。
抗体の(Fab')2断片は、その後の還元なしに酵素ペプシンで完全抗体分子を処理することによって得られる。(Fab')2断片は、2つのジスルフィド結合で結合している、2つのFab'断片の二量体である。
Fv断片は、2本鎖として発現された軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含有する一般的に設計された断片として定義される。
一本鎖抗体(「SCA」)は、適切で可動性のあるポリペプチドライナーによって連結された、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含有する、一般的に設計された一本鎖分子である。
「バイオ後続品」という用語、及び「後続の生物製剤」という用語は、特許或いは独占権終了後の、革新的な生物製剤の正式に承認された新しいバージョンを意味する。
「細胞産生宿主」或いは「製造宿主」という用語は、タンパク質を産生或いは製造するために使用される細胞株を意味するものである。これに限定されるものではないが、ヒト、マウス、ハムスター、ラット、サル細胞株、さらには酵母、昆虫及び植物細胞株を含む哺乳類細胞などの真核細胞である。原核生物細胞は、代替として利用され得る。1つの観点において、哺乳類細胞産生宿主は、3T3マウス線維芽細胞;BHK21シリアンハムスター線維芽細胞;MDCKイヌ上皮細胞;Helaヒト上皮細胞;PtK1ラットカンガルー上皮細胞;SP2/0マウス形質細胞;及びNS0マウス形質細胞;HEK293ヒト胚性腎細胞;COSサル腎細胞;CHO、CHO−Sチャイニーズハムスター卵巣細胞;R1マウス胚細胞;E14.1マウス胚細胞;H1ヒト胚細胞;H9ヒト胚細胞;PER C.6ヒト胚細胞から成る群のメンバーから選択される。別の観点において、前記細胞産生宿主は、GS−NS0或いはGS−CHOK1細胞株である。別の観点において、前記細胞産生宿主は、出芽酵母(S.cerevisiae)細胞:及びピキア酵母細胞から選択されるものである。別の観点において、前記細胞産生宿主は、細菌細胞株である。
「キメラ性質」を有する分子は:1)第一の参照分子に対して一部分は相同であり一部分は異種である;一方2)同時に第二の参照分子に対して一部分は相同であり一部分は異種であるが;3)同時に1若しくはそれ以上の付加的な参照分子に対しても一部分は相同であり一部分は異種である可能性を妨げることがない分子である。制限されない実施形態において、キメラ分子は、部分的な分子配列の再集合を構築することによって調合される。制限されない観点において、キメラポリヌクレオチド分子は、結果生じるキメラポリヌクレオチドが大多数の鋳型の特性を有するように、大多数の分子鋳型を用いてキメラポリヌクレオチドを合成することによって調合される。
本明細書で用いられたように「同族」という用語は、種間で進化的に及び機能的に関連した遺伝子配列を意味するものである。例えば、これに限定されるものではないが、ヒトゲノムにおいて、ヒトCD4遺伝子はマウス3d4遺伝子と同族遺伝子であると言え、なぜなら、これら2つの遺伝子の配列及び構造は高度に相同であり、両遺伝子は、MHCクラスII−制限抗原認識を通じたT細胞活性化のシグナル伝達において機能しているタンパク質をコード化しているということを意味するからである。
「工業規模」という用語は、再販売に適切な規模でタンパク質或いは抗体を産生することを意味するものである。
本明細書で用いられたように「比較ウィンドウ」は、少なくとも20の近接するヌクレオチド位置の概念的なセグメントを意味しており、ここにおいて、ポリヌクレオチド配列は、少なくとも20の近接するヌクレオチドの参照配列と比較されるものであり、さらに、比較ウィンドウにおける前記ポリヌクレオチド配列の一部は、この2つの配列の最適アライメントに対して参照配列(付加或いは欠失を有さない)と比較した場合、20%或いはそれ以下の付加或いは欠失(すなわちギャップ)を有するものである。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適アライメントは、Smith and Waterman((1981)Adv.Appl.Math.2:482)の局所相同性アルゴリズムによって、Needlemen and Wuncsch(J.Mol.Biol.48:443(1979))の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman(Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85;2444(1988))の類似法の検索によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)のコンピュータ化実行によって若しくは検査によって実行され、様々な方法によって作成されたベストアライメント(すなわち比較ウィンドウに対して最も高いパーセンテージの相同性を生じるもの)が選択される。
本明細書で用いられたように「相補性決定領域」及び「CDR」という用語は、Kabat及びChothiaによって例示されたような、本分野で認識されている用語を意味するものである。CDRの定義はさらに、高可変(supervariable)領域、或いは超可変(hypervariable)ループとしても一般的に知られている(Chothia and Leks,1987;Clothia et al.,1989;Kabat et al.,1987;及びTramontano et al.,1990)。多少短い或いは長い可変領域ドメインは一本鎖抗体を形成するのにも適してはいるが、可変領域ドメインは典型的に、天然由来の免疫グロブリン鎖の約105〜110アミノ酸のアミノ末端(例えばアミノ酸1〜110)を有している。CDRは、前記分子の特異性を決定し、特異的なリガンドと結合する免疫グロブリンの一部である。CDRは、分子の最も可変的な部位であり、これら分子の多様性に寄与している。各Vドメインには3つのCDR、すなわちCDR1、CDR2及びCDR3が存在する。CDR−Hは可変重鎖のCDR領域を表し、CDR−Lは可変軽鎖のCDR領域に関連するものである。Hは可変重鎖を意味し、Lは可変軽鎖を意味する。Ig−由来領域のCDR領域は、Kabat(1991)、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edit.,NIH Publication no.91−3242 U.S.Department of Health and Human Services、Chothia(1987)J.Mol.Biol.196,901−917及びChothia(1989)Nature,341,877−883に記載されたように決定されるものである。
「包括的」という用語は、進化の技術を意味するために本明細書で用いられており、ここにおいて、全ての可能な変化が鋳型ポリヌクレオチド或いは鋳型ポリペプチドの各位置でなされ、前記ポリヌクレオチド或いはポリペプチドは意図した変化が生じたか確認するためにテストされるものである。
「保存的アミノ酸置換」とは、同様な側鎖を持つ残基の互換性を意味するものである。例えば、脂肪族側鎖を持つアミノ酸の一群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を持つアミノ酸の一群は、セリン及びスレオニンであり;アミド−含有側鎖を持つアミノ酸の一群は、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を持つアミノ酸の一群は、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を持つアミノ酸の一群は、リシン、アルギニン及びヒスチジンであり;硫黄−含有側鎖を持つアミノ酸の一群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。
「一致する」という用語は、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全て或いは一部と相同(すなわち同一であるが厳格に進化的には関連しない)であること、若しくはポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であることを意味するために本明細書で使用されるものである。対照的に、「相補的である」という用語は、相補的配列が参照ポリヌクレオチド配列の全て或いは一部と相同であることを意味するために本明細書で使用される。例示的には、前記ヌクレオチド配列「TATAC」は、参照配列「TATAC」と一致し、参照配列「GTATA」と相補的である。
「分解有効」量という用語は、酵素と接触していない基質と比較して、基質の少なくとも50%が処理されるのに必要とされる酵素の量を意味するものである。好ましくは、基質の少なくとも80%が消化されるものである。
本明細書で用いられたように「定義された配列フレームワーク」という用語は、ランダムではない方式で、通常実験データ或いは構造データに基づいて選択される1セットの定義された配列を意味するものであり、例えば、定義された配列フレームワークは、β−シート構造を形成すると予想される1セットのアミノ酸配列を有する、若しくは他のバリエーションの中でロイシンジッパー7アミノ酸繰り返しモチーフ、亜鉛フィンガードメインを有するものである。「定義された配列カーネル(kernal)」とは、限定された範囲の可変性を含む1セットの配列である。その一方で、(1)20の従来のアミノ酸の相補的ランダム10−mer配列は(20)10配列のいずれかである、(2)20の従来のアミノ酸の疑似ランダム10−mer配列は(20)10配列のいずれかであるが、特定の位置及び/或いは全体での特定の残基に対する偏りを示す、(3)各残基位置が許容可能な20の従来のアミノ酸(及び/若しくは許容可能な非通常性のアミノ/イミノ酸)のいずれかであることが可能であれば、定義された配列カーネルはサブセットの配列である。定義された配列カーネルは一般的に、変異及び不変異残基を有している、及び/若しくは、断片的に或いは完全長の個別に選択されたライブラリメンバー配列の、定義されたサブセットのアミノ酸残基から選択される残基及びそれらと同等物を有する変異残基位置を有しているものである。定義された配列カーネルは、アミノ酸配列或いはポリヌクレオチド配列を参照することができる。例示するためであり限定するためではないが、配列(NNK)10及び(NNM)10は定義された配列カーネルであり、ここにおいて、NはA、T、G或いはCを示し、KはG或いはTを示し、MはA或いはCを示すものである。
本明細書で用いられたように「脱免疫化(deimmunization)」という用語は、前記変異体をヒトにおいて非免疫原性或いは少ない免疫原性にすることによってオリジナル野生型分子と比較して修飾されている、鋳型結合分子の変異体の産生を意味するものである。本発明に従って脱免疫化された分子は、非ヒト起源の抗体或いはその一部(フレームワーク及び/若しくはCDRのような)に関連するものである。一致する実施例としては、米国特許第4,361,549号に記載されたような抗体或いはその断片がある。さらに「脱免疫化」という用語は、T細胞エピトープを産生するための傾向(propensity)が減少した分子にも関連するものである。本発明に従うと、「T細胞エピトープを産生するための傾向が減少した」という用語は、特異的T細胞活性化を導くT細胞エピトープの除去に関連するものである。
さらに、T細胞エピトープを産生するための傾向の減少は、T細胞エピトープの形成に寄与するアミノ酸の置換、すなわちT細胞エピトープの形成に重要なアミノ酸の置換を意味する。言い換えると、T細胞エピトープを産生するための傾向の減少は、抗原非依存性T細胞増殖を誘導する免疫原性の減少或いは能力の減少に関連するものである。加えて、T細胞エピトープを産生するための傾向の減少は、抗原非依存性T細胞増殖を含むアミノ酸配列の潜在的T細胞エピトープの欠失或いは減少を意味する、抗原脱免疫化と関連するものである。
本明細書で用いられたように「T細胞エピトープ」という用語は、ペプチド、ポリペプチド或いはタンパク質の分解の間細胞内に放出され、その後T細胞活性化の引き金を引くために主要組織適合複合体(MHC)の分子によって提示される、短いペプチド配列に関連するものである;とりわけ国際特許第WO02/066514号を参照のこと。MHCクラスIIによって提示されたペプチドに対して、そのようなT細胞の活性化は次に、B細胞の直接刺激によって抗体反応を誘導し、前記抗体を産生するものである。
DNAの「消化」とは、DNAの特定の配列にのみ作用する制限酵素でのDNAの触媒切断を意味するものである。本明細書で使用される様々な制限酵素は、商業的に利用可能であり、それらの反応条件、補因子及び他の必要条件は、本分野の当業者に知られているように使用するものである。解析目的としては、一般的に1μgのプラスミド或いはDNA断片に対して、約20μlの緩衝液中で約2ユニットの酵素が使用される。プラスミド作成のためにDNA断片を単離する目的においては、一般的に5〜50μgのDNAが、大量の緩衝液中で20〜250ユニットの酵素で消化される。特定の制限酵素に対する適切な緩衝液及び基質量は、製造者によって特定されている。37℃で約1時間のインキュベーション時間が通常使用されるが、供給元の使用説明書に従って変えられる。消化後、その反応物はゲル上で直接電気泳動され、望ましい断片が単離されるものである。
「DNAシャッフリング」という用語は、実質的に相同であるが同一ではない配列間の組換えを示すために本明細書において使用され、いくつかの実施形態において、DNAシャッフリングは、cer/lox及び/或いはflp/frtシステム及びそれらと同等物を介するなどの非相同的組換えを介したクロスオーバーに関連するものである。DNAシャッフリングは、ランダム或いは非ランダムである。
本発明で用いられたように「エピトープ」という用語は、フィターゼ−特異的抗体などの抗体のパラトープが結合する、フィターゼポリペプチドなどの抗原上の抗原決定基を意味するものである。抗原決定基は通常、アミノ酸或いは糖側鎖などの分子の化学的活性表面基から成り、特異的な3次元構造特徴、さらには特異的電荷特徴を持つことができる。本明細書で用いられたように「エピトープ」とは、抗体の可変領域結合体と相互作用する結合相互作用を形成することができる抗原或いは他の高分子の一部を意味するものである。一般的に、そのような結合相互作用は、CDRの1若しくはそれ以上のアミノ酸残基との分子間接触として顕在化されるものである。
「進化」という用語は、鋳型タンパク質或いは抗体と比較した場合、遺伝的に或いは合成的に修飾されたタンパク質或いは抗体の少なくとも1つの性質、特徴或いは活性における変化を意味するものである。
参照ポリペプチドを参照する場合の「断片」、「誘導体」及び「類似体」という用語は、参照ポリペプチドのそれと少なくとも本質的に同じである、少なくとも1つの生物学的機能或いは活性を保持するポリペプチドを意味するものである。さらに、「断片」、「誘導体」及び「類似体」という用語は、切断によって修飾され有意に高い活性を有する成熟酵素を産生する低活性プロタンパク質などの「代用形(pro−form)」分子によって例示されるものである。
「全範囲の単一アミノ酸置換基」が各アミノ酸位置で表される、鋳型ポリペプチドから1セットの子孫ポリペプチドを産生するための方法が本明細書において提供される。本明細書で用いられたように「全範囲の単一アミノ酸置換基」とは、本明細書で記載されたように、天然でコード化された20のポリペプチド−形成アルファ−アミノ酸を言及するものである。
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖を生成する際に関連するDNAの断片を意味するものであり;それには先行する及びその後続くコード化領域(リーダー及びトレーラー)、さらには個々のコード化断片(エクソン)間の介在配列(イントロン)が含まれる。
本明細書で用いられたように「遺伝的不安定性」とは、反復配列の欠損を通じた配列単純化に一般的に関連する還元的イベントの過程において失われる高度反復配列の自然な傾向を意味するものである。欠失は、反復配列の1コピー、及び反復配列間の全ての欠損に関連する傾向がある。
「異種」という用語は、1つの一本鎖核酸配列は、別の一本鎖核酸配列或いはその相補鎖とハイブリダイズできないことを意味するものである。従って、異種の領域とは、ポリヌクレオチドの領域或いはポリヌクレオチドは、それらの配列内に別の核酸或いはポリヌクレオチドとハイブリダイズできない領域或いは区域を持っていることを意味するものである。そのような区域或いは領域は、例えば変異の領域である。
「相同」或いは「同祖(homeologous)」という用語は、1つの一本鎖核酸配列が相補的な一本鎖核酸配列にハイブリダイズすることを意味するものである。ハイブリダイゼーションの程度は、配列間の同一性の量、及び以下で説明されるような温度や塩濃度などのハイブリダイゼーション条件を含む多数の因子に依存している。好ましくは、同一の領域は約5bp以上であり、より好ましくは前記同一の領域は10bp以上である。
「ヒト化」という用語は、例えばマウスなどの哺乳動物からの相補性決定領域(CDR)がヒトフレームワーク領域と連結されたような抗体を記載するために使用される。しばしば単離CDRをコード化するポリヌクレオチドは、適切な可変領域フレームワーク(及び任意には定常領域)をコード化するポリヌクレオチドへ接合され、完全な抗体(例えばヒト化或いは完全なヒト抗体)、抗体断片及びそれらと同等物をコード化するポリペプチドを形成する。別の観点において、マウス以外に、例えば他のげっ歯類、ラクダ、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ウシ、サカナ、ラマ及びサメなどの他の種がヒト化され得る。広い観点において、抗体を産生するあらゆる種はヒト化抗体の産生において利用され得る。加えて、本発明の抗体は、それらの標的に対する親和性を減らすことなしにそれらの潜在的な抗原性を減らすために、キメラ、ヒト様、ヒト化或いは完全なヒト抗体である。キメラ、ヒト様及びヒト化抗体は一般的に本分野に記載されていた。ほんの少しの外来配列をハイブリッド抗体に組み入れることによって、その抗原性は軽減される。これらのハイブリッド抗体の調合は、本分野でよく知られた方法によって実行される。
代わりの観点において、負の免疫反応からそれらを保護する一方でそのレシピエント種に対する治療を提供するために、ヒト或いはマウス抗体は、絶滅危惧種などの異なるレシピエント種へ適応されるものである。この観点において、レシピエント種からのフレームワークは、既知の抗体或いは第二の種の抗体からのCDRとの組み合わせで利用されるものである。
免疫グロブリン軽鎖或いは重鎖可変領域は、3つの超可変領域によって中断される「フレームワーク」領域から成るものであり、CDRとも呼ばれている。フレームワーク領域及びCDRの程度は、正確に定義されている(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」Kabat et al.,1987を参照のこと)。異なる軽鎖或いは重鎖のフレームワーク領域の配列は、種の中で比較的保存されている。本明細書で用いられるように「ヒトフレームワーク領域」とは、天然由来のヒト免疫グロブリンのフレームワークに対して実質的に同一(約85或いはそれ以上、通常90〜95若しくはそれ以上)であるフレームワーク領域である。構成要素である軽鎖及び重鎖の組み合わされたフレームワーク領域である、抗体のフレームワーク領域は、CDRを配置し整列させるように働く。CDRは、抗原のエピトープへの結合に主として関与する。本発明に従うと、フレームワーク領域は、抗原と結合する超可変相補性決定領域(CDR)に対するタンパク質足場を提供する免疫グロブリンのVドメイン(VH或いはVLドメイン)における領域と関連するものである。各Vドメインにおいて、FR1、FR2、FR3及びFR4と命名された4つのフレームワーク領域が存在する。フレームワーク1は、VドメインのN末端からCDR1の開始までの領域を含み、フレームワーク2は、CDR1及びCDR2の間の領域に関連しており、フレームワーク3は、CDR2及びCDR3の間の領域を含み、フレームワーク4は、CDR3の末端からVドメインのC末端までの領域を意味する;とりわけJanewat、Immunobiology、Garland Publishing,2001、5th edを参照のこと。従って、前記フレームワーク領域は、VH或いはVLドメインにおけるCDR領域の外の全ての領域を含むものである。
本分野の当業者は、所定の配列からフレームワーク領域、及びCDRを容易に推定することができる:Kabat(1991)Sequences of Protein of Immunological Interest,5th edit.,NIH Publication no.90−3242、U.S.Department of Health and Human Services,Chothia(1987)J.Mol.Biol.196,901−917、及びChothia(1989)Nature,342,877−883を参照のこと。
本発明の利益は、「工業的応用」(或いは工業的過程)へと広がり、この用語は、民間産業プロパー(或いは単純に産業)における適用、さらには公共産業適用(例えば非営利施設での生物医学研究)を含めるために使用されるものである。関連のある適用には、診断、医薬、農業、製造業及び学術研究機関の領域における適用が含まれるものである。
「同一の」或いは「同一性」という用語は、2つの核酸配列は、同じ配列或いは相補的な配列を持っていることを意味するものである。従って、「区域の同一性」とは、ポリヌクレオチド若しくは全体のポリヌクレオチドの領域或いは区域は、別のポリヌクレオチド或いは前記ポリヌクレオチドの区域と同一或いは相補的であることを意味するものである。
「単離された」という用語は、そのオリジナル環境(例えばもしそれが天然由来であれば自然環境)からその物質を除去することを意味するものである。例えば、生きている動物に存在する天然由来のポリヌクレオチド或いは酵素は単離されないが、天然システムに共存する物質のいくらか或いは全部から分離された、同じポリヌクレオチド或いは酵素は単離されていると言える。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部となる、及び/若しくはそのようなポリヌクレオチド或いは酵素は組成物の一部となるものであり、そのようなベクター或いは組成物はその天然環境の一部ではないという点で単離されていると言える。
「単離された核酸」とは、例えば、由来する生物の天然由来ゲノムにおいて存在する場合は通常すぐに近接するのであるが、5'及び3'隣接配列とすぐに近接しない、DNA或いはRNA分子などの核酸を意味するものである。従ってこの用語は、例えば、プラスミド或いはウイルスベクターなどのベクター内に取り込まれた核酸;異種細胞のゲノム(或いは同種細胞のゲノムであるが、天然由来の場合とは異なる部位)内へ取り込まれた核酸;及び別の分子として存在する核酸、例えばPCR複製或いは制限酵素消化によって産生されたDNA断片などを意味するものである。この用語はさらに、例えば融合タンパク質の産生において使用され得る付加的なポリペプチド配列をコード化しているハイブリッド遺伝子の一部を形成する組換え核酸も意味するものである。
本明細書で用いられたように「リガンド」とは、特定の受容体によって認識される、ランダムペプチド或いは可変セグメント配列などの分子を意味するものである。本分野の当業者には、分子(或いは高分子複合体)とは、受容体及びリガンドの両者であることが理解されるであろう。一般的に、小さい分子量をもつ結合パートナーとはリガンドとして言及され、大きい分子量をもつ結合パートナーを受容体として言及している。
「ライゲーション(核酸連結)」とは、2つの二本鎖核酸断片間のリン酸ジエステル結合を形成する過程を意味するものである(Maniatis et al.,1982,p.146)。他に特に指定がない限り、ライゲーションは、0.5μgのほぼ等モル量の連結されるDNA断片当たり10ユニットのT4 DNAリガーゼ(「リガーゼ」)既知緩衝液及び条件を用いて達成される。
本明細書で用いられたように「リンカー」或いは「スペーサー」とは、DNA結合タンパク質及びランダムペプチドなどの2つの分子を連結する分子或いは分子群を意味し、例えば、前記ランダムペプチドが前記DNA結合タンパク質から最小立体障害で受容体へ結合できるように、前記2つの分子を好ましい配置に置くように働くものである。
「哺乳類細胞表層ディスプレイ」という用語は、その技術によってタンパク質或いは抗体、若しくは抗体の一部が発現され、例えば電磁ビーズ及び蛍光標識細胞分取による特異的な抗原結合に対するスクリーニングなどによる、スクリーニング目的で哺乳類宿主細胞表面上に提示されるような技術を意味する。1つの観点において、哺乳類発現ベクターは、分泌及び細胞表面結合形態の両者としての免疫グロブリンの同時発現に対して使用され、これはDuBridge et al.,米国出願第2009/0136950号に記載されており、この参照によって本明細書に組込まれるものである。別の観点において、Gaoらの技術は、抗体のライブラリをコード化しているウイルスベクターに対して使用される、若しくはGao et al.,米国出願第2007/0111260号(この参照によって本明細書に組込まれる)にあるように、細胞内で発現される場合抗体断片は細胞表面上に提示されるものである。哺乳類細胞上の全IgG表層ディスプレイは既知である。例えば、Akamatsuuらは、それらの抗原−結合親和性及び生物活性に基づいて直接IgG分子を単離するのに適している、哺乳類細胞表層ディスプレイベクターを開発した。エプスタイン−バーウイルス−由来エピソームベクターを用いて、抗体ライブラリは、全IgG分子として細胞表面上に提示され、電磁ビーズ及び蛍光標識細胞分取の組み合わせを用いて特異的抗原結合に対してスクリーニングされた。望ましい結合特徴を有する抗体をコード化するプラスミドは、選別された細胞から回収され、可溶性IgGを産生するための形態へ変換された。Akamatsuu et al.J.Immunol.Methods 2007 327(1−2):40−52、これはこの参照によって本明細書に組込まれるものである。Hoらは、親和性成熟のために一本鎖Fv抗体の細胞表層ディスプレイにおける一過性のタンパク質発現に対して広く用いられているヒト胚性腎臓293T細胞を用いた。より高い親和性を有するまれな変異抗体を発現している細胞は、わずかに低い親和性を有するWT抗体を発現している過剰の細胞からの1回通過(single−pass)細胞選別によって240倍に濃縮された。さらに、高度に濃縮された変異体は、内因性抗体ホットスポットをランダム化している結合ライブラリの単一選択後のCD22に対する増加した結合親和性を用いて得られた。Ho et al.Isolation of anti−CD22 Fv with high affinity by Fv display on human cells,Proc Natl Acad Sci USA2006 June 20;103(25):9637−9642、これはこの参照によって本明細書に組込まれるものである。
Beerliらは、ヒトドナーの末梢血単核球(PBMC)から直接単離された、目的の抗原に特異的なB細胞を用いた。組換え、抗原−特異的一本鎖Fv(ScFv)ライブラリは、B細胞のこのプールから産生され、シンドビスウイルス発現システムを用いることによる哺乳類細胞表層ディスプレイによってスクリーニングされた。この方法によって、一回のFACSによる抗原−特異的抗体の単離が可能になった。重鎖(HCs)及び軽鎖(LCs)の可変領域(VRs)は、ポジティブクローン及び全IgG或いはFab断片として産生された組換え完全ヒト抗体から単離された。このやり方において、QBウイルス様粒子(VLP)に結合しているいくつかの高度に変異された(hypermutated)高−親和性抗体、モデルウイルス抗原、さらにはニコチンに特異的な抗体が単離された。全ての抗体は、細胞培養において高度の発現レベルを示した。ヒトニコチン−特異的mAbsは、マウスモデルにおいて前臨床的に検証された。Beerli et al.,Isolation of human monoclonal antibodies by mammalian cell display,Proc Natl Acad Sci USA.2008 September 23;105(38):14336−14341;これはこの参照によって本明細書に組込まれるものである。
酵母細胞表面ディスプレイも知られており、例えば、Kondo and Ueda 2004,Yeast cell−surface display−applications of molecular display,Appl.Microbiol.Biotechnol.,64(1):28−40では、酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いた細胞表面エンジニアリング・システムなどについて説明している。酵母S.cerevisiaeの発現については、Lee et al,2003,Microbial cell−surface display, TRENDS in Bitechnol.21(1):45−52でいくつか代表的なディスプレイ系が報告されている。また、Boder and Wittrup 1997,Yeast surface display for screening combinatorial polypeptide libraries, Nature Biotechnol.,15(6):553にも報告がある。
「製造」という用語は、治療用タンパク質の少なくとも第I相臨床試験が可能となる十分な量、または診断用タンパク質の規制認可を受けるために十分な量でタンパク質を生産することを指す。
「ミスセンス変異」という用語は、単一のヌクレオチドが変化し、異なるアミノ酸をコードするコドンが生じる点突然変異を指す。アミノ酸が終止コドンに変化する変異はナンセンス変異と呼ばれる。
本明細書に用いるとおり、「進化する分子の特性」には、ポリヌクレオチド配列を有する分子、ポリペプチド配列を有する分子、および一部ポリヌクレオチド配列、一部ポリペプチド配列を有する分子の言及が含まれる。進化する分子の特性について、特に関連するが制限する意図のない例には、温度、塩分、圧力、pH、グリセロール、DMSO、界面活性剤、および/または反応環境中で接触する他の分子種に関連するような特定条件での酵素活性が含まれる。進化する分子の特性について、さらに特に関連するが制限する意図のない例には、安定性、例えば、保存中に生じるような特定環境で特定曝露時間後に残った分子の特性の量などが含まれる。
「変異する」という用語は、核酸配列に変異が生じることを指し、前記変異がタンパク質のコード領域で発生した場合は、コドンが変化し、これによってアミノ酸が変化することもあれば、変化しないこともある。
「変異」という用語は、野生型核酸配列の配列変化またはペプチドまたはポリペプチドの配列変化を意味する。そのような変異は遷移またはトランスバージョンなどの点突然変異であることもある。前記突然変異は欠失、挿入、または複製であることもある。
本明細書で使用するとおり、変性した「N,N,G/T」のヌクレオチド配列は、考えられる32種類の3ヌクレオチド配列を表しており、「N」はA、C、GまたはTを取ることができる。
本明細書で使用するとおり、変性した「N,N,N」のヌクレオチド配列は、考えられる64種類の3ヌクレオチド配列を表しており、「N」はA、C、GまたはTを取ることができる。
「天然型」という用語は本明細書で使用するとおり、物体に使用する場合、物体が天然に認められるという事実を指す。例えば、自然の発生源から単離することができ、実験室で人によって意図的に修飾されていない(ウイルスを含む)生命体に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然型である。天然型という用語は、当該種に典型的であるなど、病的ではない(疾患に罹患していない)個体に存在する物体を指す。
本明細書に用いるとおり、「核酸分子」はそれぞれ一本鎖または二本鎖であるか否かにより、少なくとも1つの塩基または1つの塩基対を有する。さらに、核酸分子は、これに限定されるものではないが、以下の核酸分子群などのヌクレオチドを含む分子のいずれかの群に排他的または化学的に属することがあり、その核酸分子群は、RNA、DNA、ゲノム核酸、非ゲノム核酸、天然型および非天然型核酸、および合成核酸である。これには、これに限定されるものではないが、1若しくはそれ以上の天然型成分に加えて非天然型要素を有するミトコンドリア、リボソームRNA、核酸分子など、いずれかの細胞小器官と関連した核酸が含まれる。
さらに、「核酸分子」は、一部に、これに限定されるものではないが、アミノ酸および糖などの非ヌクレオチドベースの成分を1若しくはそれ以上含むことがある。従って、これに限定されるものではないが、例として、一部ヌクレオチドを基本とし、一部タンパク質を基本としたリボザイムは「核酸分子」と考えられる。
さらに、これに限定されるものではないが、例として、放射性または代わりに非放射性標識などの検出可能な成分で標識された核酸分子は、同様に「核酸分子」と考えられる。
特定タンパク質の「核酸配列コード」または「DNAコード配列」または「ヌクレオチド配列コード」という用語、および他の同意語は、適切な調節配列の制御下に置いた場合、酵素に転写および翻訳されるDNA配列を指す。「プロモーター配列」は、細胞のRNAポリメラーゼに結合することができ、下流の(3'方向)コード配列の転写を開始することのできるDNA調節領域である。前記プロモーターはDNA配列の一部である。この配列領域は3'末端に開始コドンを有する。前記プロモーター配列には最小数の塩基が含まれ、その元素はバックグラウンド以上の検出可能なレベルで転写を開始するために必要である。しかし、前記RNAポリメラーゼが前記配列に結合し、(3'末端にプロモーターが結合し)開始コドンで転写が開始された後、転写は3'方向で下流に進む。前記プロモーター配列内には、転写開始部位(ヌクレアーゼS1でマッピングすることにより便宜上定義される)、およびRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が認められる。
「タンパク質をコードする核酸」または「タンパク質をコードするDNA」という用語および他の同意語は、タンパク質のコード配列のみを含むポリヌクレオチドおよび追加のコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを含む。
1つの好適な実施形態では、「特異的核酸分子種」は、これに限定されるものではないが、その一次配列など、その化学構造によって定義される。別の好適な実施形態では、特異的な「核酸分子種」が核酸種の機能または核酸種に由来する生成物の機能によって定義される。従って、これに限定されるものではないが、例として「特異的核酸分子種」は、その発現された生成物に起因する活性または性質を含め、1若しくはそれ以上のそれに起因する活性または特性によって定義される。
「作業中の核酸サンプルを核酸ライブラリにアセンブルする」の簡単な定義には、ベクターへの連結および宿主の形質転換などにより、核酸サンプルをベクターを基本とした一群に組み込むプロセスを含む。関連するベクター、宿主、および他の試薬、および特定の制限されない例の説明については、以下に提供される。「作業中の核酸サンプルを核酸ライブラリにアセンブルする」の簡単な定義には、アダプターへの連結などにより、核酸サンプルをベクター以外を基本とした一群に組み込むプロセスも含む。好ましくは、前記アダプターはPCRによる増幅を促すPCRプライマーにアニールすることができる。
従って、制限されない実施形態では、「核酸ライブラリ」がベクターを基本とした、1若しくはそれ以上の核酸分子の一群を有する。別の好適な実施形態では、「核酸ライブラリ」がベクター以外を基本とした、核酸分子の一群を有する。さらに別の実施形態では、「核酸ライブラリ」が、一部ベクターを基本とし、一部ベクター以外を基本とした核酸分子の複合群を有する。好ましくは、ライブラリを有する分子の一群が個々の核酸分子種に照らして、検索可能および分離可能である。
本発明では、「核酸構成成分」または代わりに「ヌクレオチド構成成分」または代わりに「DNA構成成分」を提供する。「構成成分」という用語は、本明細書ではポリヌクレオチド(例えば、フィチン酸ポリヌクレオチド)などの分子を説明するために使用され、ベクター、またはベクターの一部など、選択的に、1若しくはそれ以上の追加分子部分に化学的に結合していることがある。これに限定されるものではないが、特定の態様では、ヌクレオチド構成成分は宿主細胞の形質転換に適したDNA発現によるDNA発現構成成分で例示される。
「オリゴヌクレオチド」(または同意語として「オリゴ」)は、化学的に合成可能な1本鎖ポリデオキシヌクレオチドまたは2つの相補的なポリデオキシヌクレオチド鎖を指す。そのような合成オリゴヌクレオチドは5'リン酸塩を有していることもあれば、有していないこともある。リン酸塩を有していない合成オリゴヌクレオチドは、キナーゼ存在下ATPを用いてリン酸塩を付加しないと、別のオリゴヌクレオチドとは結合しない。合成オリゴヌクレオチドは脱リン酸化されていないフラグメントに結合する。(PCRを用いるなどして)ポリメラーゼにより増幅するため、「少なくとも第一相同配列、変性N,N,G/T配列、第二相同配列を順番に有する32回折り畳まれた変性オリゴヌクレオチド」について言及される。このような文脈で使用されるとおり、「相同」はポリメラーゼによる増幅を受けるオリゴポリヌクレオチドと親ポリヌクレオチドとの相同性を言及する用語である。
本明細書で用いるとおり、「操作可能な結合を持つ」という用語は、機能的関連性において、ポリヌクレオチド要素の結合を指す。核酸は、別の核酸配列と機能的に関連するように配置された場合、「操作可能な結合を持つ」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響する場合、コード配列に操作可能な結合を持つ。「操作可能な結合を持つとは、結合されるDNA配列が典型的には隣接し、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合は、連続し、リーディング・フレーム内にあることを意味する。
コード配列はRNAポリメラーゼが2つのコード配列を単一のmRNAに転写する場合、別のコード配列に「操作可能な結合を持ち」、次にmRNAは両方のコード配列に由来するアミノ酸を有する単一のポリペプチドに翻訳される。発現された配列が最終的にプロセシングされ、望みのタンパク質を産生する限りは、前記コード配列は互いに隣接している必要はない。
本明細書に用いるとおり、「生理的条件」とは、生存能力のある生命体に適合する、および/または典型的には、生存能力のある培養酵母細胞または哺乳類細胞の細胞内に存在する温度、pH、イオン強度、粘度などの生化学的パラメーターを指す。例えば、典型的な実験室の培養条件で増殖した酵母細胞の細胞内条件は生理的条件である。in vitro転写混合物用の適切なin vitro反応条件は、生理的条件である。一般に、in vitroの生理的条件は、50〜200mM NaClまたはKCl、pH 6.5〜8.5、20〜45℃、および0.001〜10mMの二価陽イオン(例えば、Mg++、Ca++)を含み、好ましくは約150mM NaClまたはKCl、pH 7.2〜7.6、5mMの二価陽イオンであり、0.01〜1.0%の非特異的タンパク質を含むことも多い(例えば、BSA)。非イオン洗剤(Tween、NP−40、Triton X−100)が存在することも多く、通常は約0.001〜2%、典型的には0.05〜0.2%(v/v)とすることができる。特定の水性条件は、従来の方法に従い、実行者が選択することができる。一般的な指針として、以下の緩衝水性条件を適用可能であり、その条件とは、10〜250mM NaCl、5〜50mM Tris HCl、pH 5〜8であり、二価陽イオンおよび/または金属キレート剤および/または非イオン洗剤および/または膜画分および/または消泡剤および/または火花を発する物質(scintillants)を選択的に追加することができる。
本明細書で用いる「集団」という用語は、ポリヌクレオチド、一部またはポリヌクレオチドまたはタンパク質などの成分の一群を意味する。「混合集団」は、同じ核酸またはタンパク質ファミリーに属し(つまり、関連し)、配列が異なるため(つまり、同一ではない)、生物活性も異なる成分の一群を意味する。
「プロフォーム」を有する分子は、途中で共有結合および非共有結合による化学的修飾(例えば、グリコシル化、タンパク質分解的切断、二量化またはオリゴマー化、温度またはpHで誘導される構造変化、補因子との結合など)1種類若しくはそれ以上の組み合わせを受け、参照プロフォーム分子と比較して特性に違いを有する(活性が上昇するなど)、より成熟した分子を実現する分子を指す。2若しくはそれ以上の化学的修飾(例えば、タンパク質分解的切断2箇所、またはタンパク質分解的切断1箇所と脱グリコシル化1箇所)を成熟分子を生成する途中で区別できる場合、参照前駆体分子は「プレプロフォーム」分子と呼ぶことができる。
「特性」は、最適化されるタンパク質または抗体の物理的、化学的、または活性上の特有の性質を含む特徴を表す可能性がある。例えば、特定の態様では、最適化される所定の特性、特徴または活性は、タンパク質−タンパク質凝集の抑制、タンパク質安定性の向上、タンパク質溶解性の向上、タンパク質pH安定性の向上、タンパク質温度安定性の向上、タンパク質溶媒安定性の向上、選択性の向上、選択性の低下、グリコシル化部位の導入、抱合部位の導入、免疫原性の低下、タンパク質発現の亢進、抗原親和性の上昇、抗原親和性の低下、結合親和性の変化、免疫原性の変化、触媒活性の変化、pHの最適化、または特異性の向上から選択することができる。「最適化された」特性とは、それぞれテンプレートタンパク質、抗体または細胞と比較し、変異タンパク質、抗体または細胞の特定の性質における望ましい変化を指す。
本明細書で用いるとおり、「疑似ランダム」は、例えば別の位置での残基の変動度など、変動が限られた一連の配列を指すが、すべての疑似ランダム位置では、ある程度の残基の変動が可能であるが、その変動は限局している。
本明細書で用いるとおり、「疑似反復単位(Quasi−repeated unit)」は再集合した反復単位を指し、定義上は同一ではない。実際、前記方法は、同一の開始配列の突然変異誘発により生成した実質上同一のコード単位だけではなく、一部の領域では大きく異なる、同様または関連配列の再集合について提案されている。それでも、前記配列にこのアプローチで再集合される十分な相同性が含まれている場合、「疑似反復」単位と呼ぶことができる。
本明細書で用いるとおり、「ランダムペプチドライブラリ」は、一連のランダムペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、およびこれらのポリヌクレオチド配列でコードされる一連のランダムペプチド、またこれらのランダムペプチドを含む融合タンパク質を指す。
本明細書で用いるとおり、「ランダムペプチド配列」は、2若しくはそれ以上のアミノ酸モノマーから成り、確率的過程またはランダム過程によって作成されるアミノ酸配列を指す。ランダムペプチドには、不変配列を含むフレームワークまたは足場モチーフが含まれる可能性がある。
本明細書で用いるとおり、「受容体」は特定のリガンドに親和性を有する分子を指す。受容体は自然に発生するか、合成分子である可能性がある。受容体は不変の状態で、または他の種との凝集体として利用される可能性がある。受容体は、直接または特異的結合物質を介して、結合膜に共有結合的または非共有結合的に結合することができる。受容体の例には、これに限定されるものではないが、(ウイルス、細胞、または他の物質など)特定の抗原決定基と反応するモノクローナル抗体および抗血清を含む抗体、細胞膜受容体、複雑な炭水化物および糖タンパク質、酵素、およびホルモン受容体を含む。
「組み換え」タンパク質は、組み換えDNA技術により生成した、つまり、望みの酵素をコードする外因性DNA構成成分により変換された細胞から生成したタンパク質を指す。「合成」タンパク質は、化学的合成により調整されたタンパク質である。
「関連ポリヌクレオチド」という用語は、ポリヌクレオチドの領域または部分が同一であり、ポリヌクレオチドの領域または部分が非相同的であることを意味する。
「還元的再集合(reductive reassortment)」は本明細書で用いるとおり、反復配列が介在した欠失(および/または挿入)事象を発生させる分子多様性の増加を指す。
以下の用語は、2若しくはそれ以上のポリヌクレオチド間の配列の関連性を説明するために使用され、その用語とは、「参照配列」、「比較枠」、「配列同一性」、「配列同一性の割合」、および「実質的同一性」である。
「参照配列」は、配列比較の基準として使用される確定した配列であり、参照配列は例えば全長cDNAまたは配列表に記載された遺伝子配列の一部分として、より大きな配列のサブセットであることもあり、完全なcDNAまたは遺伝子配列を有することもある。参照配列は少なくとも20ヌクレオチド長であり、少なくとも25ヌクレオチド長であることが多く、少なくとも50ヌクレオチド長であることが多い。2つのポリヌクレオチドはそれぞれが(1)2つのポリヌクレオチド間で同一の配列(つまり、完全なポリヌクレオチド配列の一部)を有し、(2)さらに、2つのポリヌクレオチド間で相違する配列を有していることもあるため、2つ(若しくはそれ以上)のポリヌクレオチドの配列比較は、典型的には、「比較枠」で2つのポリヌクレオチド配列を比較し、局所領域の配列相同性を同定、比較することにより行う。
本明細書で用いる「反復指数(RI)」は、クローニングベクターに含まれる疑似反復単位の平均コピー数である。
「飽和」という用語は、可能なすべての変化がテンプレートポリヌクレオチドまたはテンプレートポリペプチドの各位置で起こる、進化(evolution)の技術を指すが、各位置の変化は試験により確認されないが、可能な変化の大部分または可能なほぼすべての変化が、テンプレートの各位置で発生すると推定される場合に統計的に仮定されるにすぎない。
「配列同一性」という用語は、2つのポリヌクレオチド配列が比較枠全体で(すなわち、ヌクレオチド1つずつで)同一であることを意味する。「配列同一性の割合」という用語は、比較枠全体で2つの選択的に整列された配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列で発生した位置の数を決定し、マッチした位置の数を求め、マッチした位置の数を比較枠内の位置の合計数(すなわち枠の大きさ)で割り、その結果に100をかけ、配列同一性の割合を求めることにより、計算する。本明細書で用いるこの「実質的同一性」は、ポリヌクレオチド配列の特徴を示し、前記ポリヌクレオチドは、少なくとも25〜50ヌクレオチドの比較枠の参照配列と比較し、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも85%の同一性、しばしば90〜95%の同一性、最も一般的には少なくとも99%の同一性を有する配列を含み、配列同一性の割合は、欠失または付加を含み、比較枠全体で参照配列が合計20%以下となるポリヌクレオチド配列と参照配列を比較することにより計算される。
「サイレント変異」という用語は、発現したポリペプチドのアミノ酸が変化しないコドンの変化を指し、アミノ酸挿入にコドンを使用する冗長性に基づいている。
当該分野で既知のとおり、2つの酵素の「類似性」は、1つのタンパク質のアミノ酸配列およびその保存アミノ酸の置換を第2のタンパク質の配列と比較することで決定される。類似性は、例えばBLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information)など、当該分野で既知の手順により決定することができる。
本明細書で用いるとおり、「一本鎖抗体」という用語は、スペーサーペプチド(例えば、[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]x)で結合されたポリペプチド結合中のVHドメインおよびVLドメインを有するポリペプチドを指し、アミノ−および/またはカルボキシ−末端に追加アミノ酸配列を有する。例えば、一本鎖抗体はコードポリヌクレオチドに結合する連結セグメントを有することがある。例として、scFvは一本鎖抗体である。一本鎖抗体は、免疫グロブリンスーパーファミリーの遺伝子によって実質的にコードされる少なくとも10個の隣接アミノを含む1若しくはそれ以上のポリペプチドセグメントから成るタンパク質であり(例えば、この参照により本明細書に組み込まれるWilliams and Barclay,1989,pp.361−368を参照)、齧歯類、非ヒト霊長類、鳥類、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、またはヒト重鎖または軽鎖配列でコードされていることが最も多い。機能的一本鎖抗体には、特異的標的分子、典型的には受容体または抗原(エピトープ)に結合する性質を保持するため、十分な量で免疫グロブリンスーパーファミリー遺伝子産物の一部が含まれる。
分子ペアの構成要素(例えば、抗体−抗原ペアまたは核酸ペア)は、互いに結合し、他の非特異的分子よりも親和性が大きい場合、互いに「特異的に結合している」と言われる。例えば、非特異的タンパク質よりも効率的に結合する抗原に対して産生された抗体は、前記抗原に特異的に結合するとして説明することができる。(同様に、核酸プローブは塩基ペアの相互作用により標的と特異的二本鎖を形成する場合、核酸プローブは核酸に対して特異的に結合していると説明することができる(上記参照)。)
「特異的ハイブリダイゼーション」は、本明細書において第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチド(例えば、第1のポリヌクレオチドとは明らかに異なるが、実質的に同一の配列)とのハイブリッド形成として定義され、前記混合物中では実質的に関連性のないポリヌクレオチド配列はハイブリッドを形成しない。
「特異的ポリヌクレオチド」とは、特定のエンドポイントを有し、特定の核酸配列を有するポリヌクレオチドを意味する。1つのポリヌクレオチドが第2のポリヌクレオチドの一部として同一の配列を有するが、末端が異なる2つのポリヌクレオチドは、2つの異なる特異的ポリヌクレオチドを含む。
「厳密なハイブリダイゼーション条件」とは、配列間で少なくとも90%の同一性、好ましくは95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97%の同一性がある場合にのみ、ハイブリダイゼーションが起こることを意味する。この参照により全体が本明細書に組み込まれるSambrookらの文献(1989)を参照のこと。
本明細書で開示された配列ID番号の1つなど、ポリペプチド配列に「実質的に同一」の配列を有するポリペプチドも本発明に含まれる。「実質的に同一の」アミノ酸配列は、保存的なアミノ酸置換、例えば、1つのアミノ酸と同一クラスの別のアミノ酸との置換(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンなど、1つの疎水性アミノ酸と別のアミノ酸との置換、またはアルギニンとリジン、グルタミン酸とアスパラギン酸、またはグルタミンとアスパラギンとの置換など、1つの極性アミノ酸と別のアミノ酸との置換)のみが参照配列と異なる配列である。
さらに、「実質的に同一」のアミノ酸配列は、参照配列とは、すなわち1若しくはそれ以上の非保存的置換、欠失、または挿入が異なる配列であり、特にそのような置換が分子の活性部位ではない部位で起こる場合、および前記ポリペプチドが本質的にその行動特性を保持しているという条件で異なる配列である。例えば、1若しくはそれ以上のアミノ酸がフィターゼポリペプチドから削除され、その生物活性に重要な変更を生じずに、ポリペプチドの構造が変化する可能性がある。例えば、フィターゼの生物活性に必要のないアミノ−またはカルボキシ−末端のアミノ酸は、削除される可能性がある。そのような変化により、より小さな活性フィターゼポリペプチドが生じる可能性がある。
本発明では、「実質的に純粋な酵素」を提供する。「実質的に純粋な酵素」という用語が本明細書で使用されており、実質的に他のタンパク質、脂質、炭水化物、核酸、および天然で関連性のある他の生物学的物質が含まれない、ポリペプチド(例えばフィターゼポリペプチド、またはそのフラグメント)などの分子を説明する。例えば、ポリペプチドなどの実質的に純粋な分子は、乾燥重量で対象分子の少なくとも60%である可能性がある。ポリペプチドの純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)、カラム・クロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC))、アミノ末端アミノ酸配列解析を含む標準的な方法により決定することができる。
本明細書で用いるとおり、「実質的に純粋」は、対象種が存在している主な種である(つまり、モル基準で組成中の他の個別高分子種よりも多量に含まれている)、および好ましくは実質的に純粋な画分が、前記対象種が存在する全高分子種の(モル基準で)少なくとも約50%を有する組成であることを意味する。実質的に純粋な組成は、前記組成中に存在する全高分子種の約80〜90%以上を有する。最も好ましくは、前記対象種が本質的に均一となるように(従来の検出方法では前記組成中の汚染種を検出できない)精製され、前記組成は本質的に単一の高分子種から成る。溶媒種、小分子(<500ダルトン)、および元素イオン種は高分子種と考えない。
本明細書に用いるとおり、「テンプレートオリゴペプチド」は第2ライブラリの変異体が望ましいタンパク質を意味する。当業者が理解するとおり、いかなる数のテンプレートも本発明におけて使用できることに気付く。特に「タンパク質」または「オリゴペプチド」の定義内に含まれるものは、酵素ドメイン、結合ドメインなどの機能的ドメイン、およびターン、ループなどのそれよりも小さなフラグメントを含む既知タンパク質のフラグメントおよびドメインである。つまり、タンパク質の一部も使用することができる。さらに、本明細書で使用した「タンパク質」には、タンパク質、オリゴペプチド、ペプチドを含む。さらに、タンパク質変異体、つまり、非天然タンパク質の類似体構造を利用することもできる。
適切なタンパク質には、これに限定されるものではないが、リガンド、細胞表面受容体、抗原、抗体、サイトカイン、ホルモン、転写因子、シグナル伝達モジュール、細胞骨格タンパク質、および酵素を含む産業用および医薬用タンパク質を含む。適切な酵素クラスには、これに限定されるものではないが、プロテアーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼなどの加水分解酵素、ラセマーゼ、エピメラーゼ、互変異性化酵素、またはムターゼなどの異性化酵素、トランスフェラーゼ、キナーゼ、酸化還元酵素、およびホスファターゼを含む。適切な酵素は、Swiss−Prot酵素データベースに掲載されている。適切なタンパク質の骨格には、これに限定されるものではないが、Research Collaboratory for Structural Bioinformatics(RCSB、かつてのBrookhaven National Lab)が編集、提供しているタンパク質データベースに見られるすべての骨格を含む。
本明細書で用いるとおり、「可変部」という用語は、ランダム、疑似ランダム、または既定のカーネル配列を有する新生ペプチドの一部を指す。「可変部」は、ランダム、疑似ランダム、または既定のカーネル配列を有する新生ペプチドの一部を指す。可変部は、変異および不変異の残基位置をいずれも有する可能性があり、変異残基位置の残基の変化度が制限されることもあり、実行者の判断でいずれの選択肢も選択される。典型的には、可変部は約5〜20アミノ酸残基長(例えば、8〜10)であるが、可変部はさらに長くてもよく、抗体フラグメント、核酸結合タンパク質、受容体タンパク質などの抗体の一部または受容体タンパク質を有することもある。
「野生型」という用語は、前記ポリヌクレオチドが変異を有することを意味する。「野生型」タンパク質は、前記タンパク質が自然界に認められる活性レベルで活性であることを意味し、自然界に認められるアミノ酸配列を有する。
本開示では、単一系での製造用哺乳類宿主において、(抗体を含む)治療用タンパク質の作成および/または選択、進化および発現を統合する方法について提供する。CIAO法の1つの実施形態では、同じ哺乳類宿主系において、抗体を含む治療用タンパク質を作成、最適化、製造する。別の実施形態では、タンパク質の治療学が発見され、同じ宿主で製造される。このため、非常に初期から製造が最適化され、コスト(時間および資源)が節約される。
歴史的には、抗体の発見は真核生物(euk)および原核生物(prok)宿主で行われてきた。典型的には、細菌(大腸菌)において、部分的な長さの抗体が発見されている。例えば、ファージディスプレイ技術では、Fabsが回復され、下流で全長に変換されることもある。これらのアプローチにはいくつか潜在的に不都合な点がある。
一例では、FcおよびFv領域が情報をやりとりし、結合および発現などの抗体特性を生じさせるという根拠がある。そのため、抗体フラグメントの発現などの特性が最適化されている場合、その改善は必ずしも全長を集合させた抗体の発現改善に翻訳できない。例えば、Fcライブラリは、あらゆるFvに結合し、あらゆる宿主の発現を向上させることのできるFcの「聖杯」を見つける試みとして作成された。
1つの態様では、哺乳類の細胞発現を最適化させるため、コドンの突然変異誘発が定常領域で行われた。具体的には、定常領域で326種類の変異体が作成され、HEK 293およびCHO−S細胞で発現された。ELISAによりスクリーニングが行われた。いくつかのFcが発現改善の基準を満たし、特定の最適化されたFcは、複数の細胞株間でプラスの作用を伝達することも同定されたが、異なるFvがFcに結合すると、発現の改善は翻訳されなかった。このことは、FcおよびFvが情報をやりとりしていることを証明している。
抗体フラグメントの組み換え時の予期しない結果を回避するため、1つの好適な態様では、前記CIAO法を利用し、全長抗体分子が発見された。別の好適な態様では、前記CIAO法でeuk宿主を利用している。
1つの実施形態では、前記真核細胞系が哺乳類系であり、CHO、HEK293、IM9、DS−1、THP−1、Hep G2、COS、NIH 3T3、C33a、A549、A375、SK−MEL−28、DU 145、PC−3、HCT 116、Mia PACA−2、ACHN、Jurkat、MM1、Ovcar 3、HT 1080、Panc−1、U266、769P、BT−474、Caco−2、HCC 1954、MDA−MB−468、LnCAP、NRK−49F、およびSP2/0細胞株、およびマウス脾細胞およびウサギPBMCから成る群の1つから選択される。1つの態様では、前記哺乳類系がCHOまたはHEK293細胞株から選択される。1つの具体的な態様では、前記哺乳類系がCHO−S細胞株である。別の具体的な態様では、前記哺乳類系がHEK293細胞株である。別の実施形態では、前記真核細胞系が酵母細胞系である。1つの態様では、前記真核細胞系がS. cerevisiae酵母細胞またはpicchia酵母細胞から選択される。
別の実施形態では、哺乳類細胞株の作成を委託研究またはカスタム製造組織が商業的に行うことができる。例えば、組み換え抗体または他のタンパク質については、Lonza(Lonza Group Ltd、スイス、バーゼル)がベクターを作成し、GS Gene Expression System(商標)技術を利用し、CHOK1SVまたはNSO宿主細胞株を用いて産物を発現させることができる。
別の実施形態では、(大腸菌などの)prok宿主で進化が行われ、製造用宿主と同じ宿主でスクリーニングが行われる限り、euk宿主(例えばCHO)でスクリーニングを行うことができる。
リード候補タンパク質の選択
様々な方法を利用して、1若しくはそれ以上の進化される治療用タンパク質候補を発見、作成、および/または選択することができる。選択された分子は、既存の組み換えタンパク質である可能性があり、または酵素、ホルモン、および抗体を含む組み換えタンパク質の一群に由来する可能性もある。治療用タンパク質には、クローンヒト酵素およびホルモンを含む可能性がある。組み換え抗体は、いかなる数の利用できる発生およびスクリーニング基盤を用いても発見することができる。抗体は一本鎖、完全ヒト、Fab、Fv、Fc、二官能性、キメラ、ヒト化、または完全ヒト抗体またはそのフラグメントを含むいずれの形態であってもよい。1つの好適な態様では、全長抗体分子を発見するために前記CIAO法が利用される。組み換え抗体ライブラリは、最適化または非最適化哺乳類宿主の選択またはスクリーニング系により作成およびスクリーニングし、進化の候補を生み出すことができる。例えば、哺乳類または酵母細胞系など、いくつかの真核生物発現系が発表されている。
本発明の方法において、そのような哺乳類発現系、特にスクリーニングおよび選択に細胞表面分子ディスプレイを利用した特定の系を利用し、製造または製造後の進化の候補を選択する。好ましくは、そのような哺乳類宿主とは、線維芽細胞(マウス3T3、シリアンハムスターBHK21)、上皮細胞(イヌMDCK、ヒトHela、ネズミカンガルーPtK1)、形質細胞(マウスSP2/0およびNS0)、腎臓細胞(ヒト293、サルCOS)、卵巣細胞(チャイニーズハムスターCHO)、胚細胞(マウスR1およびE14.1、ヒトH1およびH9、ヒトPER C.6)である。細胞表面ディスプレイ技術を利用し、スクリーニング用に哺乳類細胞の表面にタンパク質を表示させる。タンパク質は、例えば、急速ハイスループット・スクリーニング用に細胞表面タンパク質を発現してディスプレイした場合、膜分子との融合体としてクローニングされる。
特定の実施形態では、その開示が最適化された抗体を提供する方法を提供する。1つの実施形態では、抗原が選択され、ヒト抗体ライブラリが哺乳類系、例えばCHO−S細胞で作成および発現される。前記ライブラリは、例えば蛍光活性化細胞分類(FACS)など、完全ヒト抗体のヒットを同定するためにスクリーニングされる。前記完全ヒト抗体のヒットは、次に、少なくとも1つの所定の特性、特徴、または活性に関する何らかの関連アッセイによってさらにスクリーニング/特徴解析が行われる。1つの態様では、例えば改善された機能および発現など、進化した分子が同時に複数の特徴についてスクリーニングされる。前記関連アッセイは、例えばELISAまたは配列技術を有する可能性がある。テンプレート抗体は前記ヒト抗体のヒットから選択される。あらゆる進化の方法は、前記テンプレート抗体、またはそのフラグメントポリペプチドについて行われ、一連の変異抗体を作成する。1つの態様では、前記進化が、一連の変異抗体を作成するために設計された包括的なタンパク質工学の方法により行われる。包括的なタンパク質工学の方法は、例えば、Comprehensive Positional Evolution(CPE(商標))、Comprehensive Protein Synthesis(CPS(商標))、フレックス進化、相乗的進化、Comprehensive Positional Insertion evolution(CPI(商標))、またはComprehensive Positional Deletion evolution(CPD(商標))の1つまたは複数から選択することができる。別の態様では、前記変異抗体が、前記ヒト抗体ライブラリを作成するために使用される同一の哺乳類系で発現される。
変異抗体のセットは、少なくとも1つの所定の特性、特徴、または活性について特徴解析/スクリーニングが行われる。1つの態様では、変異抗体のセットが、例えば改善された機能および発現について、同時にスクリーニングされる。1つの態様では、当該分野で既知の1若しくはそれ以上のタンパク質進化技術により、さらに最適化するため、機能的位置マップ(EvoMap(商標))の形態で分子特異的データベースが使用され、その後上位変異体(up−mutant)の同定と特徴解析が行われる。最適化抗体は、少なくとも1つの所定の特性、特徴、または活性に関して、テンプレート抗体と比較することにより選択される。
1つの態様では、選択された最適化抗体がグラムスケールで発現され、続いて非GLP毒性学的検査が行われる。安定細胞株のトランスフェクション、プロセス開発、マスター・セル・バンクの作成が行われる。例えばCHO−S細胞など、ヒト抗体ライブラリの作成に使用される同じ哺乳類細胞系においてGMP製造が行われ、最適化された治療用組み換えmABsが得られる。
別の実施形態においては、テンプレートのハイブリドーマまたは組み換え抗体の選択、哺乳類細胞系において抗体細胞表面ディスプレイを利用することによりスクリーニングされる変異抗体のセットを提供するための前記抗体の進化、およびスクリーニングに使用されたものと同じ哺乳類細胞系で行われる製造からの選択から、前記CIAO法を開始する。
別の実施形態では、前記選択されたテンプレートハイブリドーマ/組み換え抗体がヒト化され、製造用宿主においてスクリーニングされた後、製造用宿主で生産されるが、この場合、最適化(進化)段階が完全に省略される。
本発明の他の観点では、前記抗体のFc領域、前記抗体のサイレントコドン、および/またはタンパク質の発現に利用されるベクターおよび/または宿主遺伝子を進化させることにより、製造用宿主の下流発現の最適化が行われる。1つの態様では、Fcライブラリが進化的手法により作成される。発現の最適化に関する1つの具体的な態様では、抗体のFcドメインでCPEが行われ、あらゆるFvの最適なパートナーを選択するために利用可能なFc変異体ライブラリを作成する。最適化は、すべてのFc CPE変異体を各新規Fv領域に迅速に結合するためにデザインされる。代わりに、これらのFcsサブセットを利用し、異なるFvsに結合させることができる。これらのFc CPE変異体/Fvの各組み合わせは、最適な発現を求めるための哺乳類細胞(例えば、CHO、費用効率の高い培地)で発現された全長抗体としてスクリーニングされる。さらに、発現改善用の哺乳類細胞において、これらのCPEヒット12種類までまたはそれ以上のすべての理論的置換をスクリーニングするため、CPSを行うことができる。発現が向上したクローンを同定するため、特定の望みのコドン変化も選択することができる。サイレントコドンが同定され、これらの位置でCPEが行われる。このCPEライブラリをスクリーニングし、最適な発現ヒットを同定する。さらに、12種類までまたはそれ以上のCPEヒットすべての理論的置換をCPSプロセスに使用し、発現改善用に哺乳類細胞で新しいライブラリを作成することができる。上位のCPSサイレント変異ヒットを利用し、特殊細胞株および培地において最適な発現をしたタンパク質をカスタマイズする。これにより、バイオシミラーな微細構造を管理する機会が提供される。
発現を強化する他の領域には、プロモーター、スプライス部位、5'および3'末端、フランキング配列、遺伝子欠失および再配列の減少、宿主細胞遺伝子活性の改善、宿主糖鎖付加酵素の最適化、および染色体の広域宿主細胞突然変異誘発および選択を含むベクターの最適化などがある。5'アミノ酸配列は発現強化に重要であることが証明された。
リード候補の進化
タンパク質進化のすべての方法は、タンパク質の性能および発現を最適化する同時進化を目的として採用することができる。タンパク質性能の最適化には、親和性、薬物動態学的特徴、組織ターゲッティング、タンパク質−タンパク質凝集など、様々な特徴の改善、アッセイのばらつきが大きいことへの対処、および他のin vivo特徴の修正を含む可能性がある。
本発明の選択された候補を含む、分子を進化させる方法には、確率論的および非確率論的方法を含む。既発表の方法には、ランダムおよび非ランダム突然変異誘発アプローチを含む。これらのアプローチのいずれかを採用し、異なる温度またはpH環境での安定性の改善、または宿主細胞での発現改善など、望ましい特徴を得るため、本発明の治療用タンパク質の特性を進化させることができる。進化の実験では、触媒活性の改善、様々な条件でのタンパク質安定性の改善、選択性および/または溶解性の改善、凝集抑制などの特徴改善による発現結果の改善など、考えられる他の望みの特性を選択することができる。
進化は、哺乳類細胞宿主または酵母細胞宿主などの真核生物宿主で直接行われ、この宿主は前記治療用タンパク質の下流での産生に使用される。候補は、スクリーニングおよび/または進化および製造に用いるものと同一の宿主において、最適な発現となるように進化させることができる。発現の最適化は、使用するベクターの最適化(プロモーター、スプライスサイト、5'および3'末端、およびフランキング配列などのベクター構成要素)、宿主細胞の遺伝子組み換えによる遺伝子欠失および再配列の減少、関連遺伝子を進化させるin vivoまたはin vitroでの方法による宿主細胞遺伝子活性の進化、関連遺伝子の進化による宿主糖鎖付加酵素の最適化、および/または染色体広域宿主細胞の突然変異誘発および発現能力が向上した細胞の選択戦略により達成することができる。宿主細胞については、本明細書でさらに詳述する。
細胞表面ディスプレイの発現およびスクリーニング技術(例えば、上記に定義したものなど)を採用し、製造される候補の進化タンパク質ライブラリをスクリーニングすることができる。
出発分子から代替タンパク質を作成するため現在広く利用されている方法は、オリゴヌクレオチドに対する突然変異誘発技術、変異性ポリメラーゼ連鎖反応およびカセット式変異誘発であり、これらの方法では、最適化される特定領域が合成突然変異オリゴヌクレオチドと置換される。このような場合、多数の変異部位が、元の配列の特定部位周辺で生成する。
オリゴヌクレオチドに対する突然変異誘発では、短い配列が合成突然変異オリゴヌクレオチドと置換される。変異性PCRでは、忠実度の低い重合条件を利用し、長い配列にわたり低レベルの点突然変異をランダムに誘導する。未知配列のフラグメント混合物では、変異性PCRを利用し、前記混合物を突然変異誘発することができる。カセット式変異誘発では、単一テンプレートの配列ブロックが典型的には(部分的に)ランダムな配列で置換されることが多い。
キメラ遺伝子は、制限酵素により作成した適合する付着末端を用い、2ポリヌクレオチドフラグメントを結合させることにより作成し、各フラグメントは別の前駆(または親)分子に由来する。別の例は、親ポリヌクレオチドにおける単一コドン位置の突然変異誘発(すなわち、コドンの置換、付加、または欠失を達成させるため)であり、単一部位を突然変異させたポリヌクレオチドに対して単一の子孫ポリヌクレオチドのコードを作成する。
さらに、in vivoの部位特異的組み換え系を利用し、遺伝子ハイブリッド、またin vivo組み換えのランダム法、およびプラスミドにおける相同的であるが、切断された遺伝子間の組み換えが作成された。突然変異誘発についても、重複伸長およびPCRにより報告されてきた。
非ランダム法は、さらに多数の点突然変異および/またはキメラ化を達成するために利用されてきたが、例えば、変異体の特定グループ内ですべての分子種を作成するために、包括的または徹底的アプローチが利用され、機能性がテンプレート分子中の特定構造群(例えば、2若しくはそれ以上のアミノ酸位置から成る、特定の単一アミノ酸の位置または配列)に起因し、特定の突然変異群を分類および比較する。表題「Whole cell engineering my mutagenizing a substantial portion of a starting genome, combining mutations, and optionally repeating」の米国特許第7033781号明細書では、生命体を望みの特徴を持つように進化させる方法について説明している。表題「Saturation mutagenesis in directed evolution」の米国特許第6764835号明細書および表題「Synthetic ligation reassembly in directed evolution」の米国特許第6562594号明細書では、分子に望みの特徴を徹底的に進化させ、それをスクリーニングする方法について説明している。そのような方法は、いずれも本発明の方法で利用されてもよい。
これまで知られてきた「飽和突然変異誘発」法と本明細書で好適な「包括的」進化法との間には差がある。飽和突然変異誘発は、テンプレートポリヌクレオチドまたはテンプレートポリペプチドの各位置であらゆる可能な変化が起こる進化の技法を指すが、各位置での変化は検査で確認されず、統計的に推測されるにすぎない。包括的進化は、テンプレートポリヌクレオチドまたはテンプレートポリペプチドの各位置であらゆる可能な変化が起こる進化の技術を指し、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、意図された変化が起こったことを確認するために検査される。
飽和法は本質的に統計的な非包括的方法であり、すべての段階で(例えば、変異誘発、変異の同定、変異タンパク質の発現、変異タンパク質のスクリーニング、再結合上位変異体の作成、同定、発現、およびスクリーニングにわたり)真に包括的なものではなかった。包括的な進化技術では、最初の突然変異誘発段階、さらには上位変異体またはヒットを再結合する第2段階で各分子をスクリーニングし、確認する。
飽和突然変異誘発がシークエンシングまたは他の何らかの方法により確認されていない限り、その技術は、いくつか考えられる理由により包括的であるとは考えられない。例えば、1)クローニングまたは合成の誤り、または分子をクローニングすることが困難なため、クローニングシステムは100%効率的ではない、または2)一部のタンパク質は発現されたときに毒性があるため、効率的に発現させることができない、という理由がある。従って、各段階でシークエンシングまたは他の何らかの技術により確認することが重要である。発現のスクリーニングを行うため、すべての段階をスコア化することは有用であるため、これまでの研究では、非発現クローンは「陰性」に指定されず、単に発現不可能とスコア化されている。従って、包括的な技術は「確認」段階で確認されるとおり、飽和化技術よりも純粋で非確率論的系であると考えられる。
包括的位置進化
図1を参照し、単純な例として直鎖ペプチドを利用すると、第1段階において、位置1からn(nはポリペプチド鎖の残基数に相当する)の各コドンにおける一連の天然型アミノ酸変異体(またはそのサブセット、またはアミノ酸誘導体)は、本明細書で包括的位置進化(CPE(商標))と呼ばれるプロセスにより作成される。この方法は、標的分子の各ポリペプチド鎖に繰り返される。最小のアミノ酸変異体セットには、天然アミノ酸19種類それぞれのコドン1つのみが含まれる。しかし、各発現系はコドンのバイアスを受けている可能性があることが認められており、この場合、不十分なtRNAプールにより、翻訳の行き詰まり、早まった翻訳終結、翻訳フレームシフト、およびアミノ酸の誤った取り込みが行われる可能性がある。従って、発現を最適化するため、各セットが停止コドンを含め、最高63種類のコドンを含む。次の段階では、新しい各分子のシークエンシングにより、突然変異を確認する。他の確認方法を採用することもできる。
次に、各アミノ酸セットを以下の少なくとも一点についてスクリーニングする。
− 機能の改善
− 中立変異
− 抑制変異
− 発現
− 宿主系とクローンとの適合性
好ましくは、例えば、機能および発現の改善など、複数の特徴を同時にスクリーニングする。
各セットのデータは、ポリペプチド鎖全体に組み合わせ、標的分子の詳細な機能マップ(本明細書ではEvoMap(商標)と呼ぶ)を作成する。このマップには、各変異が標的分子の性能/発現および/またはクローニング能力にどのように影響するかについて、詳細な情報が含まれる。
この方法では、タンパク質の機能(例えば、抗体の場合は抗原/受容体の結合)を失わずに、変化が起こる可能性のないすべての部位を同定することが可能である。また、機能に影響せずに変化が起こる場所も示す。さらに、宿主系で発現しない分子が生じる変化を同定するため、変異の影響を評価しない。
仮想EvoMap(商標)の図を図1に示す。テンプレートの各位置は、制限部位(突然変異しない)、完全に突然変異する部位、部分的に突然変異する部位、または特定アミノ酸置換の上位変異体として同定される。部分的に突然変異する各部位は、さらに、置換の影響を受けやすいもの、例えば、荷電残基、または非極性残基の置換、および宿主系ではクローニングすることができない非発現クローンおよび/または分子として指定することができる。
有益な単一アミノ酸置換を認識、再結合し、標的分子の望みの特徴をさらに最適化することを目的としてスクリーニングするため、EvoMap(商標)を利用することが可能である。しかし、特定の特徴の進化では、観察できるようになるまで、2若しくはそれ以上の同時変異が必要な場合もある。前記EvoMap(商標)は、効率的、また費用対効果よく、非ランダム的に一連の複数部位の変異ポリペプチドを産生するために利用することができる。前記一連の複数部位の変異ポリペプチドは、次に複数部位の上位変異体をスクリーニングすることができる。
CPEでは、完全にin vivoで確認されたタンパク質変異マップが可能である。上位変異体セット全体を同定すると、さらにコンビナトリアルな進化段階が可能となる。CPEは、非表面変異の選択、T細胞エピトープの削除、および体細胞変異の模倣により、進化したタンパク質の免疫原性リスクを低下させるために利用可能である。
1つの態様では、CPEは5、10、または15アミノ酸のライブラリ、または、最高19アミノ酸すべてを作成するために使用することができる。前記タンパク質では各部位で変化が起こり、結合親和性または発現など、望みの特徴についてこの変化をスクリーニングし、前記EvoMap(商標)を作成する。19アミノ酸すべてのデータを作成するため、後半の変異およびスクリーニングを利用することができる。前記マップから、完全に変異する部位が同定される。これらの部位は、新しい特徴を作成および検討することのできる、新しい分子一群を作成するため、修飾可能な位置を同定するために有用である。例えば、情報科学を利用し、配列中のHLAハプロタイプを同定することができ、望みの変化を起こし、前記マップで同定された「中立」(「完全に突然変異する」)部位で特定の標的とする変化を作成することにより、これらのハプロタイプを回避することができるが、この場合、主要な特徴は影響を受けない。これにより、免疫原性リスクを低下させることができる可能性がある(非表面変異を選択し、T細胞エピトープを削除し、体細胞超変異(hypersomatic mutations)を模倣することができる)。さらに、前記マップは、様々な特徴を改善する部位特異的変異(糖鎖付加および化学的結合)の部位を示している可能性がある。また、サイレント変異の最適化は様々な宿主でタンパク質発現を改善する可能性がある。
相乗的進化
本発明の1つの実施形態では、図2に示すとおり、相乗的進化のEvoMap(商標)が作成され、利用される。相乗的進化では、2〜20箇所の選択された部位で同時変異を組み合わせ、コンビナトリアルな効果を生み出すことができる。前記テンプレートポリペプチドのEvoMap(商標)を利用し、特定の単一アミノ酸点突然変異を選択し、複数部位のポリペプチド変異に集合させる。
相乗的進化では、EvoMap(商標)で突然変異しない部位付近にある、部分的に突然変異する部位内から、非不活性化アミノ酸点突然変異を選択する。1つの態様では、選択された前記非不活性化アミノ酸点突然変異が突然変異しない部位に隣接する。相乗的進化では、2〜20箇所の前記選択された部位におけるアミノ酸の同時変異が行われ、コンビナトリアルな効果が生じる。1つの態様では、2〜20箇所の選択された突然変異を再結合することにより、複数部位の変異ポリペプチドの集合をコードするコドン変異ライブラリを作成する。クローニングおよび発現後、作成した前記複数部位の変異ポリペプチドを、少なくとも1つの所定の特性、特徴、または活性について、テンプレートポリペプチドと比較し、スクリーニングする。こうして、複数部位の上位変異体ポリペプチドを同定することができる。1つの態様では、複数部位の変異ポリペプチドをコンビナトリアルなタンパク質合成により作成する。相乗的進化の1つの利点は、前記テンプレートポリペプチドの進化誘導にタンパク質X線結晶構造が必要ないことである。この技術は、アッセイ間のばらつきが大きいタンパク質および他の複数部位の効果に特に有用である。
本発明によれば、相乗的進化の応用には、これに限定されるものではないが、複雑な分子機構的変化の進化、アッセイ間のばらつきが大きいタンパク質の進化、タンパク質特異性の進化、様々な発現宿主の発現の改善、タンパク質の触媒活性、安定性、およびpH最適化の改善を含む。相乗的進化は、これに限定されるものではないが、ホルモン、酵素、サイトカイン、および抗体を含むすべてのタンパク質の治療タイプに適用される。
本発明の1つの態様では、相乗的進化を利用し、タンパク質分子の一部であるポリペプチドの1若しくはそれ以上の態様を最適化することができる。前記タンパク質分子は、ゼロでポリペプチドをコードする1若しくはそれ以上の変異核酸、つまり、当該分野で既知のクローニング、翻訳、および発現技術により変異タンパク質を作成するためのフレームワークポリペプチドをコードする1若しくはそれ以上の核酸を連結することにより、集合させることができる。1つの態様では、フレームワークポリペプチドが野生型タンパク質分子に由来する。この態様では、相乗的進化を抗体のヒト型化技術と同時に利用することができる。例えば、進化およびヒト型化を行うため、マウスモノクローナル抗体を選択することができる。前記抗体のCDR領域をクローニングおよびシークエンシングし、個々のCDR領域(CDR1、CDR2、CDR3)を合成し、ヒト抗体フレームワークペプチドをコードする他のヌクレオチドに連結し、その後、ヒト変異型IgGライブラリを作成してもよい。次に、前記ヒト変異型IgGライブラリは、マウスmAbと比較し、例えば、機能および発現の改善を含む2若しくはそれ以上の特性など、少なくとも1つの特性についてスクリーニングする。別の態様では、フレームワークポリペプチドが人工骨格ポリペプチドである。ds DNAフラグメントの作成、核酸の連結および集合、クローニング、トランスフェクション、発現、ライブラリの固相合成、ライブラリの液相合成、包括的位置進化、ELISA定量化およびβ−ガラクトシダーゼアッセイによる発現の定量化、および機能的ELISAといった特殊な技術が例のセクションで紹介されている。
本発明の別の実施形態では、相乗的進化を利用し、抗体の結合親和性を高めることができる。この実施形態では、前記抗体の可変領域が最適化される。例えば、抗体変異体の作成では、選択した抗体の軽鎖および重鎖可変領域についてCPEを行い、EvoMap(商標)を作成する。変異体は再集合させるために選択し、例えば、前記軽鎖の変異体および前記重鎖の変異体を選択して集合させる。非不活性化アミノ酸点突然変異は、突然変異しない部位付近にある、部分的に突然変異する部位の中から選択する。CPSを利用した再集合化技術を利用し、重鎖のライブラリを作成することができる。前記軽鎖変異体を前記重鎖変異体と組み合わせ、クローニング、発現させることができ、前記変異体は真核細胞株の上清から完全なIgGとしてスクリーニングする。例えば、ELISA、BIAコア、および/またはSapidyne器具使用アッセイ、または当該分野で既知の他の技術を利用することにより、特定の変異体の結合親和性を評価する。
フレックス進化
別の実施形態では、前記CPE/EvoMapを利用し、完全に突然変異する部位を同定、開発する。1つの態様では、複数の完全に突然変異する部位の開発がフレックス進化と呼ばれ、糖鎖付加(例えば、N−またはO−結合型糖鎖付加をするアミノ酸のコドン、コンセンサス配列Asn−Aa−Ser−ThrまたはSer/Thr内のAsn)および化学的結合の導入など、標的とする変化を起こすために利用する。プロテアーゼ開裂部位のデザイン、精製および/または検出用のタグ導入、部位特異的ラベリングなどに利用することもできる。さらに、サイレント変異のコドン最適化は、タンパク質発現の改善に利用することができる。この実施形態では、タンパク質発現後のフレックス進化と呼ばれる進化、作成された変異ポリペプチドライブラリを、テンプレートポリペプチドと比較し、少なくとも1つの所定の特性、特徴、または活性について、再スクリーニングする。1つの態様では、前記所定の特性に、タンパク質−タンパク質凝集の抑制、タンパク質安定性の向上、またはタンパク質溶解性の向上が含まれる。1つの態様では、前記変異ポリペプチドライブラリを、1若しくはそれ以上の特性について同時にスクリーニングする。別の態様では、真核生物発現系において、例えば、哺乳類、植物、酵母、および昆虫細胞株など、糖鎖付加部位の導入にグリコシル化を利用できる。
フレックス進化において、関連タンパク質、またはテンプレートタンパク質またはポリペプチドのバイオインフォマティクスおよびタンパク質X線結晶構造を評価することは、テンプレートを最適化するために有用である。1つの態様では、選択された部位が接触残基にはない。別の態様では、非表面タンパク質の変異を選択することで、免疫原性リスクを低下させることができる。
フレックス進化の応用には、これに限定されるものではないが、タンパク質−タンパク質凝集の抑制、タンパク質安定性の改善、糖鎖付加ライブラリによる薬物動態の最適化、タンパク質の二次および三次構造の最適化、および直接変異セットを介するか、間接的に糖鎖付加のマスキングによる抗原部位の脱免疫化(deimmunization)を含む。
フレックス進化の1つの態様では、EvoMap(商標)を利用して完全に突然変異する部位を同定し、完全に突然変異する部位(または翻訳作用のサイレント変異)に糖鎖付加残基を挿入することでCPSを作成し、解析的分析(例えば、マススペクトロスコピー解析、動的光散乱)、(バイオインフォマティクスまたはアッセイによる)免疫原性の抑制、および/または(例えば、Foxn1nuマウスにおける)薬物動態解析により、コンビナトリアルグリコシル化ライブラリのスクリーニングを行う。
1つの態様では、フレックス進化を脱免疫化に利用し、機能を維持しながら免疫原性を除去する。フレックス進化による脱免疫化は、糖鎖付加により免疫原性をマスキングし、機能を維持しながら免疫原性を除去しうるヒト超体細胞変異スペクトル(hypersomatic mutation spectra)アミノ酸置換を同定し、免疫原性の可能性を回避するために用量を減量し、非表面アミノ酸残基の変化を最小化することにより行うことができる。さらに、免疫原性データベースおよびアルゴリズムを用い、考えられるMHC結合エピトープを同定、置換することができる。1つの態様では、コンピュータによる修飾予測をCPE/CPSデータと合わせ変異体を作成する。
T細胞エピトープおよび/または脱免疫化を発生させる傾向の低下は、当該分野で既知の技術により測定することができる。好ましくは、タンパク質の脱免疫化はT細胞増殖分析によりin vitroで検討する。この分析では、野生型または脱免疫化ペプチドのいずれかに反応した増殖について、世界中で80%を超えるHLA−DR対立遺伝子を示すドナーのPBMCをスクリーニングする。理想的には、細胞増殖は、野生型ペプチドを用いて抗原提示細胞を負荷したときに検出されるにすぎない。脱免疫化のさらなるアッセイには、ヒトin vitro PBMC再刺激アッセイ(例えば、インターフェロンγ(TH1)またはIL4(TH2)ELISA)を含む。代わりに、すべてのハプロタイプを示すHLA−DR四量体を発現させることで、脱免疫化を検討することもできる。脱免疫化ペプチドがHLA−DRハプロタイプに提示されているか否かを検討するため、例えば蛍光標識ペプチドのPBMCへの結合を測定することができる。HLAクラスIおよびクラスIIトランスジェニックマウスの標的抗原(例えば、インターフェロンγまたはIL4)に対する反応を測定する。代わりに、感作T細胞(MHCI 9mer;MHCII 20mer)を用い、PBMCおよび/またはトランスジェニックマウスアッセイよりエピトープライブラリをスクリーニングする。さらに、脱免疫化は、患者への投与後に脱免疫化分子に対する抗体が生成したか否かを判断することにより証明できる。
別の実施形態では、本発明のフレックス進化技術を発現の最適化に利用できる。1つの態様では、本発明において、真核細胞の発現を改善し、サイレント突然変異コドンを最適化したFc変異体を作成するタンパク質工学の方法の利用について開示する。サイレント突然変異は、DNA配列の変化がタンパク質のアミノ酸配列の変化につながらない突然変異である。1つの態様では、真核細胞の発現を最適化させるため、コドンの突然変異誘発が定常領域で行われる。エフェクター機能を調整する能力を維持しながら、コドンを最適化し、発現特性が改善したFc変異体は、治療用抗体の産生を改善する。この態様では、例えば、CHO、HEK293、およびCOS−7を利用した哺乳類細胞株発現スクリーニングなど、異なる発現宿主をスクリーニングするため、抗体分子の定常領域を進化させることができる。哺乳類細胞の発現に関する定常領域のコドン突然変異誘発により発現を最適化する1つの例は、図3に示し、例19で説明している。示される発現レベルはそれぞれ4データポイントの平均であり、複数の実験により確認されている。複数の細胞株の能力については、HEK293およびCHO細胞株発現系で検討した最初の変異株で証明された。
さらに、前記EvoMap(商標)を利用し、オリゴペプチド、またはその特定領域の3次元コンピューター分子モデルを作成し、例えば、抗体−エピトープ特異性および安定性などに関与する構造機構を調査することができる。仮想的な3次元EvoMap(商標)を図13に示す。
EvoMapの情報を(利用できる場合は)構造情報と組み合わせ、例えば、安定性を向上させる/凝集を抑制する変異を起こす表面残基のみを選択することもできる。
包括的位置挿入進化
1つの実施形態では、当該開示により、テンプレートポリペプチドから、またはこれに基づき形成した変異ポリペプチドを同定、マッピングする方法を提供する。図8を参照し、単純な例として直鎖ペプチドを利用すると、第1段階では、位置2からn(nはポリペプチド鎖の残基数に対応する)の各コドンにおける一連の天然型アミノ酸変異体(またはそのサブセット、またはアミノ酸誘導体)は、本明細書で包括的位置挿入(CPI(商標))進化と呼ばれるプロセスにより作成される。
CPI(商標)では、テンプレートポリペプチド全体で一度に1つずつアミノ酸を各アミノ酸の後に挿入し、一連の伸長ポリペプチドを作成する。CPIを利用し、一度に1、2、3、4、または最高5つの新しい部位に挿入することができる。20アミノ酸それぞれを新しい各位置に一度に1つずつ追加し、テンプレートに追加された新しい各位置で20種類の分子セットを作成する。この場合、位置1はメチオニンで不変であるが、スキップされる。この方法は、標的分子の各ポリペプチド鎖に繰り返される。最小のアミノ酸変異体セットには、天然アミノ酸20種類それぞれのコドン1つのみが含まれる。
本発明は、テンプレートポリペプチドから、またはこれに基づき形成した変異ポリペプチドを同定、マッピングする方法に関する。典型的には、前記ポリペプチドがnアミノ酸残基を有し、前記方法が(a)n+[20×(n−1)]個の別個のポリペプチドを作成し(この場合、(図1に図示するとおり)20アミノ酸それぞれのテンプレートで各位置の後に一度に1つずつ挿入されるという点で、各ポリペプチドはテンプレートポリペプチドとは異なる)、少なくとも1つの所定の特性、特徴、または活性について各ポリペプチドをアッセイする段階、および(b)テンプレートポリペプチドと比較した上記特性、特徴、または活性の変化を各ポリペプチドについて同定する段階を有する。
1つの実施形態において、1若しくはそれ以上の領域の突然変異誘発が選択され、上述のとおり、一度に1つの位置が追加される。そのような場合、nは上記テンプレートポリペプチドのサブセットまたは領域を示す。例えば、前記ポリペプチドが抗体の場合、抗体全体または1若しくはそれ以上の抗体の相補性決定領域(CDRs)は突然変異誘発を受け、各位置の後にテンプレートポリペプチドで一度に1つの位置を追加する。
従って、本発明には、少なくとも1個、好ましくは6個の相補性決定領域(CDRs)を有するテンプレート抗体によって形成される、一連の変異抗体のマッピング法を含み、前記CDRsは一緒にn個のアミノ酸残基を有し、前記方法は(a)n+[20×(n−1)]個の別個の抗体を作成する段階(テンプレート配列の各位置の後で一度に1つずつ単一の所定の位置に挿入したという点で、各抗体はテンプレート抗体とは異なる)、(b)各セットを少なくとも1つの所定の特性、特徴、または活性をアッセイする段階、および(c)テンプレートポリペプチドと比較した特性、特徴、または活性の変化を各ポリペプチドについて同定する段階を有する。抗体については、所定の特性、特徴、または活性が、例えば、結合親和性および/または免疫原性である。
さらに、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を有するテンプレート抗体から作成した一連の変異抗体を産生する方法が提供され、前記CDRはn個のアミノ酸残基を有し、前記方法は、(a)n+[20×(n−1)]個の別個の抗体を作成する段階を有し、CDRの所定の単一の位置に余分なアミノ酸が追加されるという点で、各抗体はテンプレート抗体とは異なる。別の実施形態では、前記抗体が6個のCDRsを有し、同時に前記CDRsはn個のアミノ酸残基を有する。
別の実施形態では、上述の新たな伸長ポリペプチドがスクリーニング後にさらに変異、マッピングされ、短縮ポリペプチドと比較した特性、特徴、または活性の変化が同定される。典型的には、前記伸長ポリペプチドがn個のアミノ酸残基を有し、前記方法は(a)n個(最初の残基がメチオニンの場合はn−1個)の別個のポリペプチドセットを作成し、各セットが前記ポリペプチドの単一の所定位置でX個の異なる所定のアミノ酸残基を有する構成ポリペプチドを有し、各ポリペプチドセットは単一の所定の位置で異なり、各セットの少なくとも1つの所定の特性、特徴、または活性をアッセイする段階、(b)テンプレートポリペプチドと比較した上記特性、特徴、または活性の変化を各ポリペプチドについて同定する段階、選択的に(c)そのような変化を反映した機能マップを作成する段階を有する。好ましくは、作成された異なる構成ポリペプチドの数はn×X(または場合によって[n−1]×X)に等しい。
別の方法では、前記方法が前記伸長ポリペプチドから変異したポリペプチドのセットを有する単一の集団を作成する段階を有する。この実施形態では、新しい集団全体がスクリーニングされ、個々のポリペプチドが同定され、前記機能マップが作成される。
典型的には、天然型各アミノ酸が使用される場合、Xは19である(天然型アミノ酸残基20種類に相当し、テンプレートポリペプチドの特定の位置に存在する特定の残基を除外する)。しかし、どのサブセットのアミノ酸も完全に使用することができ、各ポリペプチドセットは、集団全体で使用されるすべてまたは合計Xのサブセットで置換することができる。
しかし、各発現系はコドンのバイアスを受けている可能性があることが認められており、この場合、不十分なtRNAプールにより、翻訳の行き詰まり、早まった翻訳終結、翻訳フレームシフト、およびアミノ酸の誤った取り込みが行われる可能性がある。従って、発現を最適化するためには、各セットが63種類のコドンを含む。
次に、各アミノ酸セットは、機能改善、中立突然変異、抑制突然変異、および発現などの少なくとも1つ、好ましくは2若しくはそれ以上の望ましい特徴についてスクリーニングされる。
1つの態様では、前記伸長ポリペプチドをマッピングし、「野生型」と比較し、短縮ポリペプチドで得られた特性、特徴、または活性の変化を同定することができる。各セットのデータはポリペプチド全体、または「標的分子」で組み合わせる。次に、伸長ポリペプチド(標的分子)のスクリーニングからのヒットは、以下に説明するとおり、さらに包括的な突然変異誘発鎖およびスクリーニングに使用することができる。突然変異誘発のデータは、前記標的分子の詳細な機能マップ(本明細書ではEvoMap(商標)と呼ぶ)を提供し、これが作成される。このマップには、各変異が標的分子の性能/発現にどのように影響するかについて、詳細な情報が含まれる。この方法では、タンパク質の機能(または、抗体の場合は抗原/受容体の結合)を失わずに、変化が起こる可能性のないすべての部位を同定することが可能である。また、機能に影響せずに変化が起こる場所も示す。
1つの態様では、CPEは対象となる各位置で5、10、または15までのアミノ酸のライブラリ、または、最高19アミノ酸すべてを作成するために使用することができる。
Comprehensive Positional Deletion Evolution
Comprehensive Positional Deletion Evolution(CPD(商標))は、テンプレート・ポリペプチドから形成される、または、テンプレート・ポリペプチドに基づく変異体ポリペプチドを同定する、及びマッピングする方法に関するものである。CPD進化は、一つの位置のタンパク質を介して同時に全てのアミノ酸を欠失させる。典型的には、そのポリペプチドはnアミノ酸残基を有し、その方法は、(a)n−1(最初の残基がメチオニンの場合にはn−2)分離ポリペプチドを生成する工程、ここにおいて、各ポリペプチドは単一の所定位置が欠けているという点でテンプレート・ポリペプチドとは異なるものであり、少なくとも一つの所定の性質、特徴、または活性を分析する工程、と(b)各メンバーにおいて、テンプレート・ポリペプチドに関連する前記性質、特徴または活性における任意の変化を同定する工程とを有する。
CPD進化の一実施形態において、一つまたはそれ以上の領域は、一度に一つの位置を削除する突然変異生成において選択される。このような場合、nはサブセットまたはテンプレート・ポリペプチドの領域を表す。例えば、ポリペプチドが抗体である場合、抗体全体または抗体の一つまたはそれ以上の相補性決定領域(CDR)は、テンプレート・ポリペプチドにおいて同時に一つの位置を削除する突然変異生成が行われる。
一実施形態において、CPDはこのように、少なくとも一つ、好適には六つの相補性決定領域(CDR)を有するテンプレート抗体から形成される変異抗体のセットをマッピングするための方法を含む。このCDRは共にnアミノ酸残基を有するものであり、この方法は、(a)(n−1)分離抗体を生成する工程、ここにおいて、各抗体は単一の所定位置が欠けているという点でテンプレート抗体とは異なるものであり、(b)少なくとも一つの所定の性質、特徴または活性におけるそれぞれのセットを分析する工程、と(c)各メンバーにおいてテンプレート・ポリペプチドに関連する性質、特徴または活性における任意の変化を同定する工程とを有するものである。抗体において、所定の性質、特徴または活性は、例えば、結合親和性及び/または免疫原性であることがある。
CPD進化の一態様は、少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を有するテンプレート抗体から形成される変異抗体のセットを製造する方法を含む。このCDRはnアミノ酸残基を有し、この方法は、(a)n−1分離抗体を生成する工程を有する。ここにおいて、各抗体は、CDRの単一の所定位置が欠けているという点においてテンプレート抗体とは異なるものである。他の実施形態において、抗体は六つのCDRを有し、共にこのCDRはnアミノ酸残基を有する。
CPD進化の他の実施形態において、上記の新しい短くなったポリペプチドは、この短くなったポリペプチドに関連する性質、特徴または活性における変化を同定するためにスクリーニングされた後、さらに変異され、マッピングされる。典型的には、この短くなったポリペプチドは、nアミノ酸残基を有し、ここにおいて、この方法は、(a)n(最初の残基がメチオニンである場合にはn−1)ポリペプチドの分離セットを生成する工程、各セットは、ポリペプチドの単一の所定位置において異なる所定のアミノ酸残基のX数を有するメンバーポリペプチドを有し、ポリペプチドの各セットは、単一の所定位置において異なるものであり、少なくとも一つの所定の性質、特徴または活性において各セットを分析する工程と、(b)各メンバーにおいて、テンプレート・ポリペプチドに関連する前記性質、特徴または活性における任意の変化を同定する工程、と(c)このような変化を反映する機能的マップを作成する工程、とを有する。好適には、生成された異なるメンバーポリペプチドの数は、n×X(または場合によっては[n−1]×X)に等しい。
選択的に、CPD方法は、短くなったポリペプチドから変位されたポリペプチドのセットを有する単一集団を生成する工程を有する。この実施形態において、新規の集団全体はスクリーニングされ、個々のメンバーは同定され、機能的マップが生成される。典型的には、各天然に存在するアミノ酸残基が用いられる場合、Xは19となる(20の天然に存在するアミノ酸残基を表し、及び、テンプレート・ポリペプチドの特定の位置に存在する特定の残基を除外する)。しかしながら、アミノ酸の任意のサブセットは全体に用いられることがあり、及び、ポリペプチドの各セットは、全て、または、全集団において使用される全体のXのサブセットによって置換されることがある。
任意の変異的または合成手段は、CPD進化において変異体のセットを生成するために用いることができる。一実施形態において、ポリペプチドの生成は、(i)テンプレート・ポリペプチドにおけるポリヌクレオチド・エンコーディングを含むコドンを、各コドンを突然変異誘発するために64−フォールド変性オリゴヌクレオチドを使用する増幅に基づいたポリメラーゼにさらす工程、ここにおいて各64−フォールド変性オリゴヌクレオチドは、子孫ポリヌクレオチドを生成するように、第一相同配列及び変性N,N,Nトリプレット配列からなり、(ii)子孫ポリヌクレオチドによってエンコードされたポリペプチドが発現されるように、子孫ポリヌクレオチドのセットをクローン増幅にさらす工程と、を有する。
CPD進化の一実施形態において、短くなったポリペプチド全体は飽和突然変異生成にさらされる。他の実施形態において、一つまたはそれ以上の領域が飽和突然変異生成のために選択される。このような場合において、nはテンプレート・ポリペプチドのサブセットまたは領域を表す。例えば、このポリペプチドが抗体である場合、抗体全体、または、抗体の一つまたはそれ以上の相補性決定領域(CDR)は、飽和突然変異生成にさらされる。
CPD進化は、このように少なくとも一つ、及び好適には六つの相補性決定領域(CDR)を有する短くなったテンプレート抗体から形成された変異抗体のセットをマッピングする方法を含む。このCDRは共にnアミノ酸残基を有するものであり、この方法は、(a)抗体のn分離セットを生成する工程、各セットは、CDRの単一の所定位置における異なる所定アミノ酸残基のX数を有するメンバー抗体からなり、ここにおいて抗体の各セットは、単一の所定位置において異なるものであり、及び、生成された異なるメンバー抗体の数は、n×Xと等しいものであり、(b)少なくとも一つの所定の性質、特徴または活性において各セットを分析する工程、(c)各メンバーにおいて、テンプレート・ポリペプチドに関連する性質、特徴、または活性における任意の変化を同定する工程、及び、(d)このような変化の構造的位置マップを作成する工程を有する。抗体において、所定の性質、特徴または活性は結合親和性及び/または免疫原性であることがある。前述のように、選択的に、変異された抗体の全てのセットを有する単一の集団が生成されることがある。
加えて、少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を有する短くなったテンプレート抗体から形成される変異抗体のセットを製造する方法が提供される。このCDRはnアミノ酸残基を有し、この方法は、(a)抗体のn分離セットを生成する工程を有する。各セットは、CDRの単一所定位置において異なる所定のアミノ酸残基のX数を有するメンバー抗体を有し、ここにおいて、抗体の各セットは、単一所定位置において異なるものであり、及び、生成された異なるメンバー抗体の数はn×Xに等しいものである。他の実施形態において、抗体は六つのCDRを有し、及び、共にCDRはnアミノ酸残基を有する。
CPD(商標)進化の方法は、本明細書に記載された方法によってつくられた機能的位置マップ(EvoMap(商標))を含む。さらなる実施形態において、変化に特に感受性の高い特定の残基は、EvoMap(商標)に特に示されることができる。さらなる最適化は、これらの高い位置の外でさらなる突然変異変化をもたらすことによって行うことができる。Combinatorial Protein Synthesis(CPS(商標))と呼ばれる方法で、有益な単一のアミノ酸置換を認識し、組み換えるために、EvoMap(商標)を利用し、標的分子における所望の特徴をさらに最適化するためにスクリーニングすることも可能である。
Combinatorial Protein Synthesis
Combinatorial Protein Synthesis(CPS(商標))は、二つまたはそれ以上の突然変異を結合させるために、CPE、CPI、CPDまたは任意の他の進化の技術から個々のヒットを結合させることを含む。CPSは、最適化された遺伝子及びタンパク質の特徴においてスクリーニングされた結合された突然変異とタンパク質を合成するのに使用される。CPS(商標)の図解は図3に示されている。一態様において、結果としてアップ変異体または中立突然変異となる二つまたはそれ以上の点突然変異はCPSにおいて結合される。
一実施形態において、CPEは突然変異を作成するためCPSと結合され、所望の性質のためにスクリーニングされる。一態様において、時間及び供給源は、一度に一つに対して、一度に2aaまたは3aaまたは4aasを変化させることでCPEプロセスにおいて保存されることができる。よって、タンパク質におけるaaの数がNである場合、一度に2aaにおいて生成され、及びスクリーニングされる全数は、(202)×1/2Nとなり、一度に3aaにおいて生成され、及びスクリーニングされる全数は、(203)×1/3Nなどとなる。例えば、一態様において(2aaの例において)、第一aa位置における第一aaは、第二aa位置における全20と結合され、及び、全ての他のaaは同じままである。そして、第一aa位置での第二aaは第二aa位置で全20と結合され、全ての他のaaは同じままである。全集団は、アップ変異体においてスクリーニングされ、そして、次の2つのaaの第二セットで突然変異が全面的に行われる。同様の態様において、これは一度に3aasまたは一度に4aasにおいて行われることもできる。他の態様において、任意にアップ変異体(それらの任意のサブセットを含む)によりCPEプロセスに続く。
一態様において、添付され関連した論文Neumann et al.Encoding multiple unnatural amino acids via evolution of a quadruplet−decoding ribosome Nature 464, 441−444(2010年2月14日)に記載された四つ組コドンのような新規の技術を用いることにより、非天然アミノ酸はこの方法に組み込まれることができる(つまり、全19の他のアミノ酸、またはこれらのサブセット、加えて非天然アミノ酸)。この態様において、CPE/CPSは非天然アミノ酸の組み込みにおいて行われる。
さらなる態様において、全CPEライブラリは合成的に作成できる(市販の機械で全分子を合成する)。この場合において、合成機械は十分に大きならせん構造を作成することはできず、フラグメントが合成され、それから全長分子を生成するためにライゲートされる。このライブラリは、スクリーニングされ、所望の突然変異を結合するためにCPSが続く。これは2つの工程プロセスであり、CPEの後にCPSが続き、CPEのみの一工程ではない。
他の態様において、CPEライブラリは、生成され、及びスクリーニングされる。それから、以下の様にアップ変異体を結合するCPSが続く。10のアップ変異体がある場合、単一分子を全10の変化でテストし、そして、群の1つが任意の以前の群から改良された分子を発見しなくなるまで、9つの突然変異の全ての変化、それから、8、7、6、5などとテストする。一度改良された分子が確認されると、プロセスは終了されることがある。
さらなる態様において、CPEは親和性及び発現のためのアップ変異体及び中立突然変異を同定するために行われ、それから、CPSは、アップ変異体及び中立突然変異の組み合わせによって実行される。及びライブラリは機能、親和性及び/または発現のような特徴においてさらなる改良のために再びスクリーニングされる。
さらなる態様において、CPEは、グリコシル化のためにFcのコドンまたは他のドメインにおいて行われる。
他の態様において、CPEまたはマイクロRNA またはイントロンのCPSによって結合されたCPEが行われる。
さらなる態様において、CPEまたは齧歯類抗体CDRのCPSによって結合されたCPEが行われ、それから、アップ変異体のためにスクリーニングされ、そして、ヒト化される。
一態様において、CPEまたはCPSによって結合されたCPEは、例えばウラシルに変換するメチル化されたシトシンのような、最終反応において所望の変異を導く選択的な中間体ヌクレオチドを製造するために行われる。
一態様において、CPEまたはプラスインフォマティクスなCPSと結合したCPEは、マウスCDRからヒトCDRへの変換及びその逆に利用される。
一態様において、CPEまたはCPSと結合したCPEは、タンパク質全体にわたって間隔をおかれた2及び3の突然変異によって利用される。
他の実施形態において、CPEまたはCPSと結合したCPEは、増加感度におけるスクリーニング評価のための二重鎖ベクターにおいて使用される。
さらなる態様において、CPEまたはCPSと結合したCPEは、アロステリック変化におけるスクリーニングのために利用される。
任意のいくつかのスクリーニング技術は、CPE/CPS変異体を評価するために使用されることができる。一態様において、CPEまたはCPS変異体と結合したCPEは、真核生物宿主において分泌され、表示される。あるいは、CPEまたはCPS変異体と結合したCPEはE.coliにおいて製造され、真核生物宿主においてスクリーニングされることができる。他の態様において、CPEは15aaまたは10aaで開始され、CPSが続き、それから残りの残留19aaが続く。他の態様において、CPEまたはCPSと結合したCPEは、非表面アミノ酸変化による特異的タンパク質を進化させるために使用される。一態様において、CPEは、多次元エピトープ・マッピングにおいて使用されることができる。他の態様において、CPEまたはCPSスクリーニングと結合したCPEは、真核生物細胞において一過性に実行されることができる。更なる態様において、CPEまたはCPSと結合したCPEが実行され、そして、全クローンの塩基配列決定及び配列は、例えば、発現及びスクリーニングにおいてベースとなるチップまたはベースとなるウェル・フォーマットにおいて実行される。他の態様において、CPEまたはCPSと結合したCPEは、イオン濃度変化において選択することによって金属イオン配位を進化させることのために利用される。さらなる態様において、CPEまたはCPSと結合したCPEが実行され、及び、タンパク質が無細胞条件及び人間外の生きている有機体において発現され、及びスクリーニングされる。一態様において、CPEまたは幹細胞のCPSスクリーニングと結合したCPEは、分化及びタンパク質及びRNA及びmRNA発現に対する効果を変化させるために実行される。さらなる態様において、CPEまたはCPS多重スクリーニングと結合したCPEは、発現及び結合のような複数のタンパク質の特徴において実行される。別の態様において、CPEまたはCPSと結合したCPEは、脳輸送及び膜横断に関係するテンプレート分子で実行され、変異体は改善された特徴のためにスクリーニングされる。一態様において、CPEまたはCPS変異体と結合したCPEは、タンパク質の吸湿性特徴においてスクリーニングされる。他の態様において、CPEまたはCPS変異体と結合したCPEは、動的なタンパク質を選択するために分析される。一態様において、CPEまたはCPSスクリーニングと結合したCPEは、標的条件及びその逆において変異体を同定するために標的条件の外で実行される。
一実施形態において、CPEまたはCPSによって結合されたCPEの前記態様は、CPI、CPD、及び、CPI結合によるCPDから選択される方法によって組み合わせて利用される。
他の実施形態において、CPEまたはCPSによって結合されたCPEの前記態様は、テンプレートから実行されるFlex進化及びSynergy進化から選択される方法によって併用して利用される。
用語「テンプレート」は、例えばポリペプチドをエンコーディングするベースポリペプチドまたはポリヌクレオチドを意味することがある。当業者において認められているように、任意のテンプレートは、本発明の方法及び組成物において使用されることがある。変異され、及びそれにより進化されたテンプレートは、本発明において記載されたように、他のポリペプチドまたはポリペプチドのライブラリの合成を導くために使用されることができる。本明細書においてさらに詳しく記載されているように、進化可能なテンプレートは、ポリペプチドの合成をエンコードし、その後、ポリペプチドを間接的に増幅するため、及び/またはポリペプチドを進化(つまり、多様化、選択及び増幅)させるために、ポリペプチドの合成履歴を解読することに使用されることができる。特定の実施形態において、進化可能なテンプレートは核酸である。本発明の特定の態様において、テンプレートは核酸に基づく。他の態様において、テンプレートはポリペプチドである。
本発明において使用された核酸テンプレートは、DNA、RNA、DNA及びRNAのハイブリッド、またはDNA及びRNAの誘導体からつくられ、及び、それらは一本鎖または二本鎖であることがある。テンプレートの配列は、ポリペプチド、好適には核酸または核酸類似体(例えば、不自然なポリマーまたは小分子)ではない、またはそれらと似ていない化合物の合成をエンコードするために使用される。特定の天然でないポリマーの場合において、核酸テンプレートは、ポリマーに出現する配列におけるモノマー単位を整列するため、及び、それらが反応し、共有結合で結合されるように、テンプレートに沿った隣接するモノマー単位と近い位置にそれらを運ぶために使用される。特定の他の実施形態において、テンプレートは、ヌクレオチドのランダム領域からなる合成DNAテンプレートライブラリのPCR増幅によって、非天然のポリマーを生成するために利用されることができる。
テンプレートが塩基数において非常に変化することができるのは認められている。例えば、特定の実施形態において、テンプレートは、10〜10,000塩基長であることがあり、好適には、10〜1,000塩基長である。テンプレートの長さは、もちろん、コドンの長さ、ライブラリの複雑さ、合成される天然でないポリマーの長さ、合成される小分子の複雑さ、配列スペースの使用などに依存する。核酸配列は、核酸配列を調製するための当業者において既知の任意の方法を使用して調製されることがある。これらの方法は、PCR、プラスミド調製、エンドヌクレアーゼ消化、固相合成、生体外転写、らせん構造分離などを含む生体内及び生体外療法の方法を含む。特定の実施形態において、核酸テンプレートは、自動DNA合成機を使用して合成される。
前述したように、本発明の特定の実施形態において、この方法は、核酸または核酸類似体ではない、またはそれらと似ていないポリペプチドを合成するために使用される。このように、本発明の特定の実施形態において、核酸テンプレートは、天然でないポリマーまたは小分子の合成をエンコードする塩基の配列を有する。核酸テンプレートにおいてエンコードされるメッセージは、好適には、重合が起こりうるところから所定の位置に化学的反応位置を持ってくる特定のコドンから開始する、または小分子を合成する場合、「開始コドン」は小分子足場材または第一反応体に関連するアンチコドンにおいてエンコードされることがある。本発明の「開始」コドンは、アミノ酸メチオニンのためにエンコードする「開始コドン」、ATGに類似する。
本発明のさらに他の実施形態において、核酸テンプレートそのものは、ポリマー合成(例えば求核試薬)、または小分子足場材における開始部位を含むために変更されることがある。特定の実施形態において、核酸テンプレートは、モノマー単位の重合を開始するのに用いる反応基を終端とする末端の1つにおけるヘアピン・ループを含む。例えば、DNAテンプレートは、5'−アミノ基を終端とするヘアピン・ループを有することがあり、これは保護されることもされないこともある。アミノ基から不自然なポリマーの重合が始まることもある。反応アミノ基は、小分子ライブラリを合成するために核酸テンプレート上に小分子足場材を連結するために使用されることもある。
天然に存在しないポリマーの合成を終了するために、「停止」コドンは、核酸テンプレートにおいて好適にはエンコード配列の末端において含まれなければならない。本発明の「停止」コドンは、mRNA転写物において見つかる「停止」コドン(つまり、TAA、TAG、TGA)に類似している。これらのコドンは、タンパク質合成の終了にいたる。特定の実施形態において、「停止」コドンは、天然に存在しないポリマーをエンコードするために使用される人工的な遺伝子コードと互換性をもつよう選択される。例えば、「停止」コドンは、合成をエンコードするために使用される他の任意のコドンとも対立してはならず、テンプレートで使用される他のコドンとして同じ一般的なフォーマットでなければならない。「停止」コドンは、さらなる付着のための反応基を提供しないことによって重合を終了するモノマー単位においてエンコードされることがある。例えば、停止モノマー単位は、主要なアミンよりもむしろアセトアミドのような阻害反応基を含むことがある。これまでに他の実施形態において、停止モノマー単位は、重合工程及び結果として生じるポリマーを生成する工程のベンチな方法を提供するビオチン化末端を有する。
一実施形態において、変異DNA産物は、対応する変異タンパク質の生体外合成においてテンプレートとして直接使用される。全19のアミノ酸置換が単一残基において生成されることができることによる高い効率性のため、単独でも、または、タンパク質内における他の突然変異と組み合わせても、対象となる多数の残基で飽和突然変異生成を行うことが可能である。本明細書で使用されているように、「完全な飽和」突然変異生成は、他の19の天然に存在するアミノ酸と、タンパク質内で所与のアミノ酸とを置き換えるように定義される。例えば、遺伝子位置飽和突然変異生成は、タンパク質配列に沿って、最小限全ての可能な単一アミノ酸置換を探査するものであり、これは、Kretz et al., Methods in Enzymology, 2004, 388:3−11; Short,米国特許第6,171,820号;及びShort米国特許第6,562,594号において開示されている。各文献は参照により本明細書に組み込まれる。
一態様において、各アミノ酸位置で表される単一アミノ酸置換の全範囲において子孫ポリペプチドが生成されるように、ポリヌクレオチド内に点突然変異を誘導するために、本発明は、コドン・プライマー(変性N,N,G/T配列を含む)の使用を提供する(米国特許第6,171,820号、及び米国特許第5,677,149号参照、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。使用されるオリゴは、第一相同配列、変性N,N,G/T配列、及び必ずしもではないが好適には第二相同配列を隣接して有する。このようなオリゴの使用からの下流子孫翻訳産物は、ポリペプチドに沿った各アミノ酸位置における全ての可能なアミノ酸変化を含む。その理由は、N,N,G/T配列の変性は全20のアミノ酸におけるコドンを含むからである。
コドンの使用は、真核生物遺伝子発現における重要な要因のうちの1つである。異なるコドンが用いられる頻度は、異なる宿主間で、及び同じ有機体内で高いまたは低いレベルで表されたタンパク質間で、著しく変化する。この変化において最もありそうな理由は、好適なコドンが、細胞中で利用可能である豊富な同族のtRNAと相関することである。コドンの使用及びtRNAアクセプタ濃度は共進化することができ、この共進化における選択圧は低いレベルで表される遺伝子よりも高いレベルで表される遺伝子においての方がより顕著である。
一態様において、変性オリゴ(1つの変性N,N,G/Tカセットを有する)は、親ポリヌクレオチドテンプレートにおいて各最初のコドンを全コドン置換にさらすのに使用される。他の態様において、少なくとも2つの変性N,N,G/Tカセットは、同じオリゴまたはそうでないオリゴにおいてどちらでも、親ポリヌクレオチドテンプレートにおいて少なくとも2つの最初のコドンを全コドン置換にさらすのに使用される。このように、N,N,G/T配列の1つ以上は、1つ以上の位置でアミノ酸変異を誘導するために1つのオリゴにおいて含まれることができる。この複数のN,N,G/T配列は直接隣接することがあるか、または1つまたはそれ以上の付加ヌクレオチド配列によって分離されることがある。他の態様において、付加及び欠失の誘導において有用なオリゴは、アミノ酸付加、欠失、及び/または置換の任意の組合せまたは置換を誘導するために、単独で、または、N,N,G/T配列を有するコドンと結合のどちらでも使用されることができる。
他の態様において、本発明は、N,N,G/T配列よりも少ない変質を有する変性カセットの使用のために提供する。例えば、これは、1つのNのみを有する変性トリプレットを使用するいくつかの場合において(例えば、オリゴにおいて)望ましいことがある。前記Nはトリプレットの第1、第2、または第3の位置にあることがある。任意の組合せ及びそれらの順列を含む任意の他の基剤はトリプレットの残りの2つの位置において用いられることができる。あるいは、変性N,N,Nトリプレット配列を使用することはいくつかの例において望ましいことがある。
しかしながら、本明細書に開示された変性N,N,G/Tトリプレットの使用はいくつかの理由において有利であることが認められる。一態様において、この発明は、ポリペプチド内の各アミノ酸及び全アミノ酸位置内で可能なアミノ酸(全部で20のアミノ酸において)の全範囲の置換を、系統的に、及び、かなり容易に生成するための方法を提供する。このように、100のアミノ酸ポリペプチドにおいて、本発明は、2000の異なる種(つまり20の可能なアミノ酸で1つの位置につきX100アミノ酸位置)を系統的に及びかなり容易に生成する方法を提供する。変性N,N,G/Tトリプレット、20の可能なアミノ酸においてコードする32の個々の配列を含むオリゴの使用によって、提供されることが認められる。このように、親ポリヌクレオチド配列がこのようなオリゴを使用する飽和突然変異生成にさらされる反応槽において、20の異なるポリペプチドをエンコードする32の異なる子孫ポリヌクレオチドが生成される。対照的に、位置指定突然変異生成における非変性オリゴの使用は、反応槽につき、1つの子孫ポリペプチド産物のみにつながる。
このように、好適な実施形態において、各飽和突然変異生成反応槽は、全20アミノ酸が、親ポリヌクレオチドにおいて突然変異したコドン位置に対応する1つの特異的アミノ酸位置に表れるように、少なくとも20の子孫ポリペプチド分子をエンコーディングするポリヌクレオチドを有する。各飽和突然変異生成反応槽から生成された32フォールド変性子孫ポリペプチドは、クローン増幅(例えば、発現ベクターを使用する適当なE.coli宿主内にクローンされる)及び発現スクリーニングにさらされる。個々の子孫ポリペプチドが、性質における変化を示すためのスクリーニングによって同定されるときに、そこに含まれるこのような変化に関与するアミノ酸置換を同定するために配列決定されることがある。
テンプレート・ポリペプチドは、任意のタンパク質であってもよいが、触媒活性またはリガンド結合のような活性において便利な分析を有するタンパク質は好適である。本明細書で使用されるように、リガンドは、より大きなもの、例えばタンパク質と結合している小分子と特異的に結合する任意の分子である。標的相互作用の代表的な例は、触媒作用、酵素−基質相互作用、タンパク質−核酸相互作用、受容体−リガンド相互作用、タンパク質−金属相互作用及び抗体−抗原相互作用を含む。代表的な標的タンパク質は、酵素、抗体、サイトカイン、受容体、DNA結合性タンパク質、キレート剤、及びホルモンを含む。
任意の化学合成または組換え突然変異誘発方法は、変異体ポリペプチドの集合を生成するために用いられることがある。本発明の実施は、特に明記しない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、細菌学、組換えDNA及び免疫学の従来の技術を使用することができ、それらは当業者において既知である。これらの技術は文献において完全に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989); DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed., 1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed., 1984); Mullis et al., U.S. Patent No: 4,683,195; Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Cabs eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymnology, Vols. 154 and 155 (Wu et al. eds.), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I−IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986); Manipulating the Mouse Embiyo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照のこと。
一実施形態において、テンプレート・ポリペプチドは抗体である。この抗体は、本明細書に記載された方法、例えば、CDRの中のどの位置が結合親和性をもたらすのかマプする及び理解する方法にさらされる。コンストラクト及びそれらのフラグメントに基づいた様々な抗体を調製及び使用するための技術は、当業者に公知である。本発明の重要な態様は、対象となる相互作用(例えば、抗原−抗体相互作用、金属キレート化、受容体結合、置換結合など)において役割を果たすまたは役割を果たす可能性の高い残基の同定である。任意の抗体または抗体フラグメントは本発明にしたがって使用されることがある。
一実施形態において、任意の進化プラットフォームCPE、CPI、CPD及びCPSは、アゴニスト抗体の生成、つまり抗体の活性化において利用されることがある。これらの進化技術は、より単純なタンパク質を架橋するタイプの作用を超えて、アゴニスト抗体の生成を可能にし、及び、特に、ペプチドによって伝統的に作用されるGPL−1または2のような受容体の作用を可能にする。
一態様において、抗体は、細胞表面受容体が作用するときに、蛍光を発する蛍光発光を有する細胞を使用することにより、わずかに抗体を作用させるためのFACSまたは顕微鏡検査またはそれと同等なものによって選択される。その後、進化の手段はこの作用を強化するために使用される。CPS技術は、それから、アップ突然変異を結合するために利用される。
他の態様において、エピトープ・マッピングによって決定された受容体活性位置を結合する抗体が選択される。CPE、CPI及び/またはCPD技術は、カルシウム・イオン放出に応答する蛍光または当業者に周知の他のアッセイのような細胞内の読出しによって決定される受容体の刺激を引き起こす変異体を選択するために使用される。CPS技術はアップ突然変異を結合するために利用される。
特定の態様において、シングル、ダブルまたはトリプルアミノ酸挿入を有するCPIの鍵となる効果のいくつかは、これらの挿入されたアミノ酸が、受容体を活性化させるために受容体の結合ポケット内に達することができるということである。他の特定の態様において、CPDは、活性化を改善または作用するために受容体と相互作用するアミノ酸を改造及び/または再配置することがあり、及び、最終的に、CPEは受容体活性化に作用するために比較的小さな変更を実行することがある。
抗体の特異性は、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)における相補性決定領域(CDR)によって決定される。抗体のFabフラグメントは、完全抗体の約3分の1のサイズであり、重鎖及び軽鎖可変領域、完全な軽鎖定常領域及び重鎖定常領域の一部を含む。Fab分子は、安定的であり、定常領域配列の寄与とよく関連がある。しかしながら、細菌系で表れる機能性Fabの収率は、重鎖及び軽鎖の可変領域のみを含む小さなFvフラグメントよりも低い。Fvフラグメントは、機能性抗原結合部位を保持する抗体で最も小さい部分である。FvフラグメントはFabと同じ結合特性を有するが、定常領域によって与えられる安定性なしでは、Fvの2つの鎖は希薄条件で比較的容易に分離できる。
一態様において、VH及びVL領域は、抗原結合部位を安定させるために、ポリペプチド・リンカーを介して溶解することができる(Huston et al., 1991)。このシングル・ポリペプチドFvフラグメントは一本鎖抗体(scFv)として知られている。VH及びVLは、最初にどちらのドメインによっても配列されることができる。リンカーは、第二鎖のアミノ末端に第一鎖のカルボキシ末端を結合させる。
一本鎖Fv、重鎖または軽鎖Fv、またはFabフラグメントがこのシステムで用いられることは当業者に認識されるであろう。重鎖または軽鎖は、突然変異生成され、溶液に相補鎖の付加が続く。この2つの鎖は、その後、結合され、機能的な抗体フラグメントを形成することができる。ランダムな非特異的軽鎖または重鎖配列の付加は、様々なメンバーのライブラリを作成するための組み合わせのシステムの生成を可能にする。
一般的に一本鎖発現ポリヌクレオチドが生成される。この発現ポリヌクレオチドは、(1)一本鎖抗体をエンコードするために実施可能に連結されたVH領域、スペーサー・ペプチド、及びVL領域からなる一本鎖抗体カセット、(2)一本鎖抗体をエンコードするmRNAを形成する一本鎖抗体価セットの生体外転写を確実にするために実施可能に連結された、生体外転写に適当なプロモーター(例えば、T7プロモーター、SP6プロモーターなど)、及び(3)生体外転写反応において機能することに適している転写終了配列を含む。任意には、発現ポリヌクレオチドは、複製及び/または選択可能なマーカーの起源を有することもある。適当な発現ポリヌクレオチドの例は、pLM166である。
∨H及び∨L配列は、∨遺伝子系統特異的プライマーまたは∨遺伝子系統特異的プライマーを使用するPCR増幅によって製造される∨H及びVL配列のライブラリから便利に得ることができ(Nicholls et al., J. Immunol. Meth., 1993, 165: 81; W093/12227)、または、利用できる配列情報に基づいた標準技術周知の方法にしたがって設計される。典型的には、マウスまたはヒト∨H及びVL配列は分離される。∨H及びVL配列はそれからライゲートされ、通常スペーサー配列(例えば、フレーム内で可動性ペプチド・スペーサーをエンコードする)を介在し、一本鎖抗体をエンコードするカセットを形成する。典型的には、複数のVH及びVL配列(時おり、表れる複数のスペーサー・ペプチド種も)を有するライブラリが使用される。そこにおいて、ライブラリは、特にCDR残基、時おりフレームワーク残基で多様な配列を増加させるために突然変異された∨H及びVL配列の1つまたはそれ以上からなる。∨領域配列は、cDNAまたは免疫グロブリン発現細胞におけるPCR増幅産物として便利にクローンをつくられることができる。例えば、ヒト・ハイブリドーマ、または、細胞表面または分泌された免疫グロブリンのどちらも合成する他の細胞株がpolyA+RNAを分離するために使用されることがある。RNAは、逆転写酵素を使用するcDNAの合成におけるオリゴdTプライマーの合成のために使用される(一般的な方法においては、Goodspeed et al., Gene 1989, 76: 1; Dunn et al., J. Biol. Chem., 1989, 264: 13057を参照)。一度∨−領域CDNAまたはPCR生成物が分離されると、一本鎖抗体カセットを形成するためにベクター内でクローン化される。
抗体及び抗体フラグメントの構成を達成するために、エンコーディングする遺伝子は分離され、同定される。この遺伝子は、発現ベクターまたは生体外転写/翻訳内でクローニングを可能にするように修飾されることができる。方法が、ハイブリドーマcDNAからのVH及びVLのためのDNAをプローブする(Maniatis et al., 1982)、またはVH及びVLのための合成遺伝子を構成する(Barbas et al., 1992)ように使用されるにもかかわらず、便利な方法は抗体配列を増幅するための方法により誘導されたテンプレートを使用することである。抗体遺伝子の多様な集団は、フレームワークとして知られた可変領域の3'及び5'末端での保存された配列、または抗体の定常領域にプライマーを設計することによって、テンプレート試料から増幅されることができる。プライマーの範囲内で、制限部位は発現ベクターにクローニングを容易にするために配置されることができる。これらの保存領域にプライマーを誘導することによって、抗体集団の多様性は、多様なライブラリの構築を可能にするために維持される。抗体の特定の種及び分類は、参照により本明細書に組み込まれたKabat et al., 1987において与えられた抗体の全タイプにおける多数の配列によって示されたプライマー配列の選択によって定義されることができる。
動物の脾臓または末梢血液から分離されたメッセンジャーRNAは、抗体ライブラリの増幅においてテンプレートとして使用されることができる。特定の環境、細胞表面の抗体フラグメントの均一な集団を示すことが望ましく、mRNAは、モノクローナル抗体の集団から分離されることがある。どちらの供給源からのメッセンジャーRNAも標準的な方法により調製されることができ、直接的に、または、cDNAテンプレートの調製において使用される。抗体をクローニングするためのmRNAの生成は、抗体の調製及び特徴付けのための周知の手順に続くことによって直ちに達成される(例えば、参照により本明細書に組み込まれたAntibodies: A Laboratory Manual, 1988を参照)。
モノクローナル抗体(MAbs)の生成は、一般的に、ポリクローナル抗体を調製するためのものと同じ手順に続く。簡潔には、ポリクローナル抗体は、一致した免疫源性組成物で動物を免疫化すること、及び、免疫動物から抗血清を集めることにより調製される。動物種の広い範囲が抗血清の生産のために用いられることができる。典型的には、抗血清を生成するために用いられる動物は、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはヤギである。ウサギは比較的血液量が多いため、ウサギは通常、ポリクローナル抗体の生成のために好適とされる。
免疫原性組成物は、免疫原性においてしばしば異なる。したがって、ペプチドまたはポリペプチド免疫原を担体にカップリングすることによって達成されるように、宿主免疫系を追加免疫することがしばしば必要である。典型的及び好適な担体は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びウシ血清アルブミン(BSA)である。オバルブミン、マウス血清アルブミンまたはウサギ血清アルブミンのようなアルブミンが担体として用いられることもある。担体タンパク質にポリペプチドを接合するために認識された手段は周知であり、グルタルアルデヒド、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド エステル、カルボジイミド及びビスジアゾ化ベンチジンを含む。
特定の免疫原性組成物の免疫原性は、アジュバントとして公知の免疫応答の非特異性の刺激器を用いて強化されることができる。典型的な及び好適なアジュバントは、完全なフロイントアジュバント(殺されたヒト型結核菌を含む免疫応答の非特異性の刺激器)、不完全なフロイントアジュバント及び水酸化アルミニウムアジュバントを含む。
ポリクローナル抗体の製造において使用される免疫原組成物の量は、免疫化に使用される動物と同様に免疫原の性質によって変化する。様々な経路は、免疫原(皮下、筋肉内、皮内、静脈及び腹膜内)を投与するために用いることができる。ポリクローナル抗体の製造は、免疫化後の様々な時点において免疫化動物の血液を採集することで、ポリクローナル抗体の製造を監視することができる。1秒、ブースター注射が与えられることもある。適切な滴定濃度になるまで、ブースティング及び滴定のプロセスは繰り返される。免疫原性の所望のレベルが得られるとき、免疫動物は採血され、血清が分離、保管され、ポリクローナル性反応からmRNAの分離のために脾臓が収集される。または、免疫動物は、均一な抗体集団からmRNAの分離においてMAbsを生成するために使用されることができる。
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,196,265号で例証されるように、MAbsは周知の技術の使用により直ちに調製されることがある。典型的には、この技術は、適当な動物に、選択された免疫原組成物、例えば、担体に接合される小分子ハプテン、精製された、または部分的に精製されたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドで免疫化することを含む。免疫化組成物は、適当な抗体生成細胞を刺激するために効果的な方法で投与される。マウス及びラットのような齧歯動物は、頻繁に使用される動物である、しかしながら、ウサギ、ヒツジ、カエル細胞の使用も可能である。ラットの使用は特定の効果を提供することができる(Goding,pp.60−61,1986)が、マウスは好適であり、最も頻繁に使用され、安定融合のより高い割合を一般的に与えるBALB/Cマウスは特に好適である。
免疫化の後に、抗体、特にBリンパ球(B細胞)を製造するための潜在的能を有する体細胞は、Mab生成プロトコルにおける使用のために選択される。これらの細胞は、生検を行われた脾臓、扁桃腺またはリンパ節、または、血液試料から得ることができる。脾臓細胞及び血球は好適である。前者は、形質芽細胞を分裂する段階においての抗体生成細胞の豊かな供給源であるからであり、後者は、血液が容易にアクセス可能であるからである。しばしば、動物のパネルは免疫化され、最も高い抗体価をもつ動物の脾臓が取り出され、そして、脾臓リンパ球がシリンジを有する脾臓を均質にすることによって得られる。典型的には、免疫化マウスからの脾臓は、約5×107から2×108のリンパ球を含む。
免疫動物からの抗体生成Bリンパ球は、不死の骨髄腫細胞、一般的に免疫化された動物と同じ種のうちの1つの細胞と融合する。ハイブリドーマ生成融合手順での使用に適した骨髄腫細胞株は、好適には抗体非生成であり、高い融和効率及び所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの成長を補助する特定の選択的培地において成長できなくなる酵素欠乏を有する。
多くの骨髄腫細胞の任意の1つが用いられることがあり、そのことは当業者において知られている(Goding, pp. 65−66, 1986; Campbell, 1984)。例えば、免疫動物がマウスである場合、1つはP3−X63/Ag8、X63−Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG 1.7及びS194/5XX0 Bulが使用されることがある。ラットにおいては、1つはR210.RCY3、Y3−Ag 1.2.3、IR983F及び4B210;及びU−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2及びUC729−6が使用されることがあり、これらは全てヒト細胞融合と関連して有用である。
一好適なマウス骨髄腫細胞は、NS−1骨髄腫細胞株(またはP3−NS−1−Ag4−1と称される)であり、この細胞株は、細胞株レポジトリー番号GM3573を要求することによりNIGMS Human Genetic Mutant Cell Repositoryから容易に入手することができる。使用され得る他のマウス骨髄腫細胞株は8−アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞SP2/0非生成細胞株である。
抗体を生成する脾臓またはリンパ節細胞及び骨髄腫細胞のハイブリッドを生成するための方法は、2:1の割合で体細胞と骨髄腫細胞を混合する工程を通常有する。細胞膜の融合を促進する(化学的または電気的な)薬剤の存在下において、この割合は約20:1から約1:1まで変化することがある。センダイウイルスを使用する融合方法は、Kohler & Milstein (1975; 1976)によって記載され、及び、37% (v/v) PEGのようなポリエチレングリコール(PEG)を使用する融合方法は、Gefter et al.,(1977)によって記載された。電気的に誘導された融合方法の使用も適当である(Goding pp. 71−74, 1986)。
融合手順は通常、約1×10−6から1×10−8の低頻度で生存可能なハイブリッドを生成する。しかしながら、生存可能な、融合されたハイブリッドが、選択的な培地で培養することにより、親、非融合細胞(特に通常無期限に分裂を続ける非融合骨髄腫細胞)と区別されることは、問題を提起しない。選択的培地は通常、組織培養培地でのヌクレオチドの新規の合成を阻害する薬剤を含む。例証的及び好適な薬剤は、アミノプテリン、メトトレキサート、及びアザセリンである。アミノプロテイン及びメトトレキサートは、プリン及びピリミジン両方の新規の合成を阻害し、それに対し、アザセリンは、プリン合成のみを阻害する。アミノプテリンまたはメトトレキサートが使用される場合、培地は、ヌクレオチド供給源としてヒポキサンチン及びチミジンで補充される(HAT培地)。アザセリンが使用される場合、培地は、ヒポキサンチンで補充される。
好適な選択培地はHATである。作動性ヌクレオチド・サルベージ経路ができる細胞のみがHAT培地で生存することが可能である。骨髄腫細胞は、サルベージ経路の鍵となる酵素、例えばヒポキサンチン・ホスホリボシル転移酵素(HPRT)が欠けており、及び、骨髄腫細胞は生存することができない。B細胞はこの経路を作動することができるが、培養において限られた寿命があり、一般的に約2週間以内に死ぬ。したがて、選択的な培地で生存することができる唯一の細胞は、骨髄腫及びB細胞から形成されるそれらのハイブリッドである。
この培養は、選択された特異的ハイブリドーマからハイブリドーマの集団を提供する。典型的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレートでの単一クローン希釈によって細胞を培養することによって行われる。そして、所望の反応性のために個々のクローンの上澄みを(約2〜3週間後に)検査することが続く。単純及び迅速な分析は、方式免疫検定法、酵素免疫測定法、細胞毒性分析、斑分析、点免疫結合分析などを含む。
選択されたハイブリドーマは、MAbsを提供するために無期限に増殖されることのできるクローンから、個々の抗体生成細胞株内に連続的に希釈され、クローンをつくられる。細胞株は、2つの基本的な方法におけるMAb生成のために利用されることができる。ハイブリドーマの試料は、もとの融合における体細胞及び骨髄腫細胞を提供するために使用されるタイプの組織適合性動物に(しばしば腹膜腔に)注射されることができる。注射された動物は、融合細胞ハイブリッドによってできる特定のモノクローナル抗体を分泌している腫瘍を呈する。動物の体液、例えば、血清または腹水流体は、高濃度でMAbsを提供するためにタップされることができる。MAbsは、それが高濃度で直ちに得られることができる培養培地内で自然に分泌される場合に、個々の細胞株は生体外で培養されることもできる。いずれの手段によっても生成されるMAbsは、必要に応じて、濾過、遠心分離及びHPLCまたは親和性クロマトグラフィのような様々なクロマトグラフィを使用して、さらに精製されることもある。
所望のモノクローナル抗体の分離及び特性評価の後に、mRNAは当業者に既知の技術で分離され、標的配列の増幅におけるテンプレートとして使用される。
多くのテンプレートに依存する手順は、突然変異生成の前後で標的配列を増幅するために利用できる。最良の既知の増幅方法の1つは、ポリメラーゼ鎖反応(PCRに関連)であり、その全体が参照により組み込まれている米国特許第4,683,195号、米国特許第4,683,202号及び米国特許第4,800,159号、及びInnis et al., 1990に記載されている。一時的に、PCRで、2つのプライマー配列は、標的配列の逆相補的らせん構造における領域と相補的であるように調製される。デオキシヌクレオシド三リン酸塩の過剰は、DNAポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼとともに反応混合物に加えられる。標的配列が試料に存在する場合、プライマーは、標的と結合し、及び、ポリメラーゼは、ヌクレオチドの付加により標的配列に沿って延長するようにプライマーを生じる。反応混合物の温度を上下させることによって、延長されたプライマーは、標的から反応性生物を形成するために解離し、過剰なプライマーは、標的及び反応性生物に結合し、この過程が繰り返される。好適には、逆転写PCR増幅手順は、増幅された標的の量を定量化するために実行されることがある。ポリメラーゼ鎖反応方法論は、当業者において周知である。PCRのような酵素増幅技術を使用すると、所望の制御酵素は、プライマー内に設計されることがあり、このように、DNA生成物内に組み込まれる。
増幅における他の方法は、EPA第320 308号に開示されたリガーゼ連鎖反応(LCR)である。EPA第320 308号はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。LCRにおいて、2つの相補的プローブ対が調製され、及び、標的配列の存在下で、それらが当接するように、各対は標的の相補的らせん構造の逆と結合する。リガーゼがある場合には、2つのプローブ対は単一単位を形成するために連結する。温度循環によって、PCRにおいてのように、結合されライゲートされた単位は標的から分離し、それにより、過剰なプローブ対のライゲーションのための「標的配列」として役立つ。米国特許第4,883,750号はプローブ対を標的配列に結合するためのLCRと類似の方法を記載している。
PCT出願第PCT/US87/00880号に記載されたQベータレプリカーゼは増幅方法として用いられることがある。この方法において、標的の領域と相補的な領域を有するRNAの反復可能な配列は、RNAポリメラーゼの存在下で試料に加えられる。ポリメラーゼは、検出できる反復可能な配列を複製する。
等温増幅方法は、制限エンドヌクレアーゼ及びリガーゼが、制限部位の一本鎖におけるヌクレオチド 5'−[アルファ−チオ]−三リン酸を含む標的分子の増幅を達成するために使用され、核酸の増幅においても有用であることがある(Walker et al., 1992)。
鎖置換増幅法(SDA)は、鎖置換及び合成、つまり、ニック翻訳の複数回を含む核酸の等温増幅を行う他の方法である。類似の方法、修復鎖反応(RCR)は、増幅において標的とされる領域の全体にわたっていくつかのプローブをアニールすることを含み、4つの塩基のうち2つのみが存在する修復反応によって続いた。他の2つの塩基は、簡単な検出のためのビオチン化誘導体として付加される。類似の方法がSDAにおいても使用される。標的特異的配列は、周期的プローブ反応(CPR)を使用して検出されることもできる。CPRにおいて、非特異的DNAの3'及び5'配列を有するプローブ及び、特異的RNAの中間の配列は、試料に存在するDNAにハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーションで、反応はRNaseHによって処理され、プローブの生成物は、消化後遊離される特徴的な生成物として同定される。もとのテンプレートは、他の周期的なプローブにアニールされ、反応は繰り返される。
他の増幅方法は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれたGB出願番号第2 202 328号及びPCT出願番号第PCT/US89/01025号に記載され、本発明にしたがって使用されることがある。前者の出願において、「修飾された」プライマーは、PCR同類、テンプレート及び酵素に依存する合成において用いられる。プライマーは、捕捉残基(例えばビオチン)及び/または検出残基(例えば酵素)を有する標識によって修飾されることがある。後者の出願において、過剰な標識プローブは試料に加えられた。標識配列がある場合、プローブは触媒的に結合し、開裂する。開裂後、標的配列は過剰なプローブに結合されるために完全に遊離される。標識プローブの開裂は、標的配列の存在を伝達する。
他の核酸増幅手順は、核酸配列ベースの増幅(NASBA)及び3SRを含む転写ベースの増幅システム(TAS)を含む(Kwoh et al., 1989)。NABSAにおいて、核酸は、標準フェノール/クロロホルム抽出による増幅、臨床試料の熱変性、溶菌緩衝液による処理及びDNA及びRNAの分離のための溶解緩衝液及びミニスピンカラムによる処理またはRNAのグアニジウム塩化物抽出のための調製がなされることができる。これらの増幅技術は、標的特異的配列を有するプライマーをアニーリングすることを含む。重合の後に、DNA/RNAハイブリッドは、二本鎖DNA分子が再び熱変性されるのに対し、消化されたRNaseHである。いずれにせよ、一本鎖DNAは、第二標的特異的プライマーの付加によって完全な二本鎖がつくられる。二本鎖DNA分子は、T7またはSP6のようなポリメラーゼによって複数転写される。等温周期的反応において、RNAは二本鎖DNAに逆転写され、T7またはSP6のようなポリメラーゼに対して転写される。不完全でも完全でも、結果として生じる生成物は標的特異的配列を示す。
Davey et al., EPA第329 822号(その全体は参照により本明細書に組み込まれている)は、本発明によって使用されることのある周期的合成一本鎖RNA(「ssRNA」)、ssDNA及び二本鎖DNA(dsDNA)を含む核酸増幅方法を開示している。ssRNAは、第一プライマー・オリゴヌクレオチドのための第一テンプレートであり、それは逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)によって延長される。RNAは、結果として生じるDNA・RNA二重鎖から、リボヌクレアーゼH(RNaseH、DNAまたはRNAを有する二重鎖におけるRNAに特異的なRNase)の作用によって除去される。結果として生じるssDNAは、第二プライマーのための第二テンプレートであり、それは、テンプレートに相同性であるRNAポリメラーゼ・プロモーター(T7RNAポリメラーゼによって例証される)5'の配列も含む。このプライマーは、DNAポリメラーゼ(E.coliDNAポリメラーゼIの巨大「Kienow」フラグメントによって例証される)によって延長され、結果として二本鎖DNA(「dsDNA」)分子として生じ、プライマー間のもとのRNAと同一の配列を有し、加えて、一端にプロモーター配列を有する。このプロモーター配列は、DNAの多くのRNA複製をつくるために適当なRNAポリメラーゼによって使用されることができる。これらの複製は、非常に迅速な複製につながる周期に再び入れることができる。酵素の適当な選択については、この増幅は、各周期で酵素の追加をすることなく等温でされることができる。この方法の周期的な性質のため、開始している配列は、DNAまたはRNAの形であるように選択されることができる。
Miller et al.,PCT出願番号第WO89/06700号(その全体は参照により本明細書に組み込まれている)は、配列の大奥のRNA複製の転写が続く、標的一本鎖DNA(「ssDNA」)に、プロモーター/プライマー配列のハイブリダイゼーションに基づいた核酸配列増幅方式を開示する。この方式は周期的ではなく、つまり、新しいテンプレートは、結果として生じるRNA転写物からは生成されない。他の増幅方法は、「レース」及び「一方的なPCR」を含む(Frohman, 1990; O'Hara et al., 1989)。
結果として生じる配列を有する核酸がある場合には、2つ(またはそれ以上)のオリゴヌクレオチドのライゲーションに基づく方法、それによるジ・オリゴヌクレオチドの増幅が、増幅の工程において用いられることがある(Wu et al., 1989)。
増幅産物は標準的な方法を用いたアガロース、アガロース−アクリルアミドまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析されることがある(例えば、Maniatis et al., 1982を参照)。例えば、そのうちの1つは、臭化エチジウムで染色されて、紫外線の下で視覚化される1%アガロースゲルを使用することがある。あるいは、増幅産物はラジオまたは蛍光定量的に標識されたヌクレオチドによってすぐに標識されることがある。ゲルは、その後、それぞれ、X線フィルムにさらされる、または適当な刺激スペクトルのもとで視覚化されることができる。
本発明の突然変異誘発性手順は、遺伝子の特定の位置、つまり、位置指定または位置特異的突然変異生成に調整される任意の突然変異誘発性方法を有することがある。本発明は包括的な突然変異生成に依存するものであるので、本発明は、好ましい実施形態として、急速で効率的、及び費用効果的であるそれらの突然変異誘発性手順を考察する。
一実施形態において、突然変異誘発性手順は化学的合成技術を利用する。これにより、遺伝子内の1つまたはそれ以上の特定の位置において置換を正確に配置することが可能となり、更に、変質の性質を特異的に定めることが可能となる。DNAにおける化学的合成方法は、当業者において既知である。固相技術はこの点において好適である。
遺伝子合成の固相法に対する1つの効果は、組合せ合成技術を使用する突然変異生成における有利な条件である。組合せ合成技術は、異なる基本単位を順次結合することにより、化合物の大きなコレクションまたはライブラリを同時に生成する技術として定義される。ライブラリは、溶液内で遊離化合物を使用して構成されることがあるが、好適には、ビーズ、固体粒子のような固体支持体に連結され、または、微生物の表面にさえ示される。
スプリット合成またはパラレル合成を含む組合せ合成においてはいくつかの方法が存在する(Holmes et al., 1995; Burbaum et al., 1995; Martin et al., 1995; Freier et al., 1995; Pei et al., 1991; Bruce et al., 1995; Ohlmeyer et al., 1993)。スプリット合成は、比較的かなりの数の化合物の少量を製造するために使用されることがある。その一方で、パラレル合成は、比較的少ない数の化合物のより大きい量を製造する。一般に、スプリット合成を使用すると、化合物は微粒子の表面で合成される。各工程で、粒子は次の構成要素の付加のためのいくつかのグループに仕切られる。異なるグループは、再結合され、新しいグループを形成するために分割される。このプロセスは、化合物が完了するまで繰り返される。各粒子は、安易な分離及び精製を可能にする同じ化合物のいくつかの複製を保つ。スプリット合成は、固体支持体を使用してのみ実行されることができる。
パラレル合成として知られる選択的技術は、固相または溶液のどちらでも実行されることがある。パラレル合成を使用すると、異なる化合物は、別々の容器において合成され、しばしば、自動制御を使用する。パラレル合成は、異なる試薬が組合せのライブラリを生成するために所定の方法で各ウェルに加えられることができるマイクロタイタープレートにおいて実行されることができる。パラレル合成は、酵素技術との使用における好適な方法である。この技術の多くの修飾が存在し、本発明の使用において適応されることは、周知である。組合せの方法を使用すると、多数の変異遺伝子テンプレートは合成されることができる。
変異遺伝子は、当業者に既知の合成方法によって生成されることもある(Barbas et al., 1992)。フレームワークとして抗体フラグメントの保存領域を使用すると、可変領域は抗体の特性を代えて、特に、有毒または変化しやすい化合物のような免疫化に貢献しない抗原に対する抗体の生成において、新しい結合部位を生成するために、同時に1つまたはそれ以上のランダムな組合せにおいて挿入されることができる。同一株にそって、既知の抗体配列は、ランダムに突然変異を誘導することによって変化することがある。これは、エラー・プローンPCRの使用のような当業者において周知の方法によって達成されることができる。
適当なオリゴヌクレオチドプライマーを使用すると、PCRは、結合タンパク質遺伝子において1つまたはそれ以上の変異を含むDNAテンプレートの迅速な合成のために使用される。下にあるDNAの特異的突然変異生成によって、位置特異的突然変異生成は、個々のペプチド、または生物学的機能等価なタンパク質またはペプチドの調製に有用な技術である。この技術は、さらに、配列変異体を調製し、テストする手早い能力を提供し、1つまたはそれ以上のヌクレオチド変化をDNAにもたらすことによって、前述の考慮すべき問題の1つまたはそれ以上を組み込む。横断している欠失接合の両側で安定的な二重鎖を形成するために、十分なサイズ及び複雑な配列のプライマー配列を提供するため、位置特異的突然変異生成は、所望の変異のDNA配列をエンコードする特異的オリゴヌクレオチド配列の使用による変異の生成を、隣接するヌクレオチドの十分な量の生成と同様に可能にする。典型的には、変更された配列の接合の両側の約5〜10残基については、約17〜25ヌクレオチド長さのプライマーが好適である。
この技術は、典型的には、一本鎖及び二本鎖のどちらにも存在するバクテリオファージ・ベクターを使用する。位置指定突然変異において有用な典型的ベクターは、M13ファージのようなベクターを含む。これらのファージ・ベクターは市販されており、その使用は、当業者において周知である。二本鎖プラスミドは、位置指定突然変異において日常的に使用され、ファージからプラスミドへ対象となる遺伝子を移す工程を除去する。
一般的に、位置指定突然変異は、最初に一本鎖ベクターを得ることによって、または、その配列内に所望のタンパク質をエンコーディングするDNA配列を含む二重鎖ベクターの2つのらせん構造内で溶解することによってで実行される。所望の変異配列と関連するオリゴヌクレオチドプライマーは、合成的に調製される。このプライマーは、ハイブリダイゼーション条件を選択する際に、不適当な組合せの程度を考慮して一本鎖DNA調製によってアニールされ、及び、突然変異を含むらせん構造の合成を完了するために、E.coliポリメラーゼI Klenowフラグメントのような、DNAを重合させている酵素にさらされる。このように、ヘテロ二本鎖が形成され、そこにおいて、第一らせん構造はもとの非変異配列をエンコードし、第二らせん構造は所望の突然変異を担う。このヘテロ二本鎖ベクターは、その後、E.coli細胞のような適当な細胞を変えるために使用され、及び、変異配列配置を担う組換えベクターを含むクローンが選択される。
使用する選択された遺伝子の配列変異体の調製は、潜在的に有用な種を生成する手段として提供され、及び、限定されるわけではないが、遺伝子の配列変異が得られる他の方法がある。例えば、配列変異を得るために、所望の遺伝子をエンコーディングする組換えベクターは、ヒドロキシルアミンのような突然変異誘発剤によって処理されることがある。
特定の適用において、位置指定突然変異によるアミノ酸置換は、低いストリンジェンシー条件が求められることが認められる。これらの条件下で、プローブの配列及び標的らせん構造が完全に相補的でなく、1つまたはそれ以上の位置が誤られる場合であっても、ハイブリダイゼーションは、発生することがある。条件は、延納語の増加及び温度の減少によって厳しくならないことがある。例えば、低ストリンジェンシー条件が約20℃から約55℃の温度範囲において、約0.15M〜約0.9Mの塩によって提供されることがあるのに対し、中間のストリンジェンシー条件は、約37℃〜約55℃で約0.1〜0.25MのNaClによって提供される。このように、ハイブリダイゼーション条件は、直ちに操作されることができ、一般的に、所望の結果によって選択の方法がなされる。
他の実施形態において、ハイブリダイゼーションは、例えば、約20℃〜約37℃で、50mMのトリスHCl(pH8.3)、75mMのKCl、3mMのMgCl2、10mMのジチオスレイトールの条件で達成されることがある。利用される他のハイブリダイゼーション条件は、約40℃〜約72℃の温度範囲で、約10mMのトリスHCl(pH8.3)、50mMのKCl、1.5μMのMgCl2を含むことがある。ホルムアミド及びSDSもハイブリダイセーション条件を変えるために使用されることがある。
特定の実施形態において、重複PCRが用いられることがある。簡潔に、プラスミドは、PCRの第一巡目においてテンプレートとして使用される。重複拡張PCR反応において、第一巡目からのPCR産物は、外側のプライマーと共に精製され、及び使用される。最終生成物は、他の全てのアミノ酸残基を有する所与のアミノ酸の位置指定置換を含む。
対象となるポリペプチドにおける突然変異DNAテンプレートは、生体外転写/翻訳のためのプラスミドにクローンをつくられることができ、または、好適な実施形態において、適当な制御要素は、生体外転写/翻訳におけるPCR生成物内に含まれる。遺伝子の生体外転写/翻訳は、必要な酵素、リボソーム、及びタンパク質因数を提供するために無細胞抽出物を使用する。タンパク質の合成は、所望のDNAテンプレートから合成されるmRNAによって導かれる。DNAテンプレートは、リボソーム結合部位及びプロモーターを含んで強いようされる系のための適当な制御要素を含まなければならない。当業者は、各系のために適当で必要な要素を明らかに認識する。
タンパク質生成のための原核生物の生体外技術が、第一に使用された(Zubay et al., 1970)。その後、真核生物システムは小麦麦芽(Roberts, 1973)及びウサギ網状赤血球(Pelham, 1976)を使用して発達した。いくつかの新規な開発はこれらの技術の効率を上昇させた。例としては、線形DNAテンプレート(Yang, 1980)を使用する結果及びシステムから任意のバックグラウンド発現を下げるためのマイクロ球菌ヌクレアーゼを有する網状赤血球溶解物の処理の改善のためのE.Coliのヌクレアーゼ欠乏系統の発達を含む。
生体外転写/翻訳のために開発されるごく最近のシステムは、SP6及びSP7を含むファージRNAポリメラーゼによる転写に基づくものである(Krieg, 1987, Studier, 1990)。T7プロモーター要素の制御下で配置されるDNAは、T7 RNAポリメラーゼによる生体外転写のための、または、原核生物または真核生物タンパク質合成システムに付加されるポリメラーゼによる生体外転写/翻訳のためのテンプレートとして使用されることができる。本発明の方法が任意の生体外転写/翻訳システムによって使用されることができるのに対し、T7システムは好適には転写のためであり、及び、真核生物翻訳システムの使用は必要とされるRNAの非キャッピングとして好適である。
転写のための生体外における方法を使用すると、アミノ酸誘導体は、アミノ酸誘導体は、タンパク質合成システム混合物への誘導されたアミノ酸の付加によるタンパク質内に組み込まれることができる。誘導体の濃度を変化させると、通常のアミノ酸に関して、混合集団をつくり、及び相対的な効果を測定することができる。
本発明によって精製された変異ポリペプチドは、様々な技術を使用して特徴付けられることがある。一般的に、タンパク質産物は、SDS−PAGEを使用して、正確な見かけ分子量において分析されることがある。これは、ポリペプチドが、事実、合成されたという初期徴候を提供する。天然分子と比較すると、通常のフォールディングまたはプロセシングが変異によって起こっているかどうかも指し示す。この点に関して、ポリペプチドを標識するために有用であることを明確に示すことがある。あるいは、ポリペプチドは、ゲルの染色によって確認されることがある。
単なる合成を超えて、タンパク質は、様々な特性及び機能の広い範囲に従って特徴付けられることがある。特性は、等電点、熱安定性、堆積率及びフォールディングを含む。フォールディングを調べる1つの方法は、同族の結合パートナーによって認識される能力である。この機能の適齢は、抗体抗原相互作用である。多種多様な異なる免疫測定法フォーマットは、この目的のために利用でき、及び、当業者において周知である。主に、タンパク質が関連したリガンドの特異的リガンドまたはパネルと接触するとき、親和性または特性における変化は決定されることができる。
免疫学的アッセイは、一般的に、2つのタイプ:複数の分離工程を必要とする不均一系によるアッセイ及び直接的に実行される均一系によるアッセイに分けることができる。不均一系による免疫学的アッセイは、一般的に、固体マトリックスに固定されるリガンドまたは抗体を含む。リガンドを含む試料は固定された抗体と接触し、及び、マトリックス支持体で形成された複合体の量は固定された複合体に直接的または間接的にとりつけられた標識によって決定される。本発明の文脈において使用されるように、リガンドは、強い結合及び安定的な複合体を形成するために非同一分子と相互作用する種として定義される。実際に、結合親和性は、通常、約106 M−1である、好適には、109〜1015M−1である。リガンドは、脂環式炭化水素、多核芳香族化合物、ハロゲン化合物、ベンゼノイド、多核炭化水素、複素環窒素、複素環硫黄、複素環酸素及びアルカン、アルケン・アルキン炭化水素などを含む数種の有機分子のいずれかであることがある。生体分子は、特に対象となり、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、脂質、糖類、核酸及びそれらの組合せを含む。もちろん、これらは例のみであり、考慮された免疫学的アッセイ方法は、対象のリガンドと結合する抗体を得ることができる限り、化合物の非常に広い範囲を検出することに適用できることは理解される。
不均一系による免疫学的アッセイは、対象となる分子が、高い親和性を有する分子と特異的に結合する固定された抗体と反応するサンドイッチアッセイとして実行されることがある。第二工程において、抗原及びマーカー分子に対する同じであるか異なる抗体から形成される接合体は、固定マトリックス上に抗原抗体複合体と反応される。過剰な遊離したマーカー接合体が除去された後、試料におけるリガンドの量と比例する結合マーカー接合体が測定される。
免疫複合体形成の検出は、当業者に周知であり、多数の方法の応用によって成し遂げられることがある。これらの方法は、典型的には、当業者に知られた放射性、蛍光、化学発光、電子化学発光、生物学的または酵素的タグのいずれかのような標識またはマーカーの検出に基づく。この種の標識の使用に関する米国特許は、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号及び第4,366,241号を含み、各文献は参照により本明細書に組み込まれている。もちろん、第二抗体または当業者に知られているように配置を結合するビオチン/アビジン リガンド結合のような第二結合リガンドの使用により、付加的な利点を発見することができる。
検出のための好適な方法は、放射免疫測定(RIA)または一般的に増加された感度によって最も好適であるELISAによる酵素免疫測定法(ELISA)を含む。ELISAは、生物工学的適用、特に、広範囲にわたる抗原物質における免疫測定法として、広範囲に使用される。ELISAの感度は、シグナルの酵素的増幅に基づいている。
本発明による使用において考察される他の好適なタンパク質は、活性において便利なアッセイを有する。標的相互作用の代表例は、触媒作用、酵素基質相互作用、タンパク質核酸相互作用、受容体リガンド相互作用及びタンパク質金属相互作用を含む。これらのアッセイにおいて、変異タンパク質は、前述の機能のいずれかを実行する能力における変化のために野生型タンパク質と比較されることができる。
本明細書に使用されるように、用語「接触する」は、所望の相互作用を発生することができるように、それぞれの十分に近い付近に反応構成要素を持ってくることとして定義されている。接触させることは、例えば、溶液中に構成要素を混合することによって達成されることがあり、または、構成要素の1つと結合しているカラムまたは固定マトリックスを通る流量接触のような不均一な相互作用によって達成されることがある。
触媒活性を有する変異タンパク質は、触媒率または特性の変更においての変化のために監視されることがある。
本発明の方法により製造され、分離された抗体は、所定の標的に結合するために選択される。典型的には、所定の標的は診断及び/または治療剤としてその適用の観点から選択される。所定の標的は、既知または未知のエピトープであることがある。抗体は、少なくとも約1×107 M−1の親和性、好適には、少なくとも約5×107 M−1の親和性、さらに好適には、少なくとも1×108 M−1から1×109 M−1またはそれ以上、時には最大1×1010 M−1またはそれ以上の親和性を有する所定の抗原(例えば免疫原)に一般的に結合する。しばしば、所定の抗原は、例えばヒト細胞表面抗原(例えばCD4、CD8、IL−2受容体、EGF受容体、PDGF受容体)のようなヒトタンパク質、他のヒト生体高分子(例えばトロンボモジュリン、タンパク質C、炭水化物抗原、シアリル・ルイス抗原、L−セレクチン)または人間以外の疾患関連の高分子(例えば細菌LPS、ビリオン・キップシッド・タンパク質またはエンベロープ・グリコプロテイン)などである。
他の例において、scFvの診断的及び治療的有用性のいくつかの報告が発表された(Gruber et al., 1994 op.cit.; Lilley et al., 1994 op.cit.; Huston et al., Int. Rev. Immunol 1993, 10:a 195, Sandhu JS, Crit. Rev. Biotechnol., 1992,12: 437)。
所望の特異性の高親和性抗体は、様々な系で設計され、及び発現されることができる。例えば、scFVはプラントにおいて製造され(Firek et al. (1993) Plant Mol. Biol. 23: 861)、及び、原核系においてすぐにつくられることができる(Owens RJ and Young RJ, J. Immunol. Meth., 1994,168: 149; Johnson S and Bird RE, Methods Enzymol., 1991, 203: 88)。さらに、一本鎖抗体は、抗体全体またはそれらの様々なフラグメントを構成するための基礎として使用されることができる(Kettleborough et al., Euro J. Immunol., 1994, 24: 952)。配列をエンコードする可変領域は、(例えばPCR増幅またはサブクローニングによって)分離されることがあり、免疫原性が好適には最小化されるヒトの治療への使用にさらに適当なヒト配列抗体をエンコードするための所望のヒト定常領域をエンコードする配列にスプライシングされることがある。完全なヒトエンコード配列を結果として生じるポリヌクレオチドは宿主細胞において発現され(例えば、真核生物細胞における発現ベクターから)及び、医薬製剤のために精製されることができる。
DNA発現コンストラクトは、典型的には、天然に付随した、または、異種プロモーター領域を含む、コーディング配列に実施可能に結合される発現制御DNA配列を含む。好適には、発現制御配列は、真核宿主細胞を変換または転移できるベクター内において真核プロモーターシステムである。ベクターが適当な宿主に一度組み込まれると、宿主は、ヌクレオチド配列の高い発現レベルに適当な条件下で維持され、及び、変異体の収集及び精製が抗体を「設計した」。
前述のように、配列が発現制御配列に実施可能に結合された(つまり、構造居天使の転写及び翻訳を確実にするために配置された)後、DNA配列は宿主内で発現される。これらの発現ベクターは、典型的には、エピソームとして、または、宿主染色体DNAの不可欠な部分として、宿主有機体において複製可能である。共通に、発現ベクターは、所望のDNA配列によって転換されたこれらの細胞を検出できるようにするため、例えばテトラサイクリンまたはネオマイシンのような選択マーカーを含む。
酵母のような真核微生物に加えて、哺乳類組織細胞培養は、本発明のポリペプチドを生成するために使用されることがある(参照により本明細書に組み込まれている、Winnacker, "From Genes to Clones," VCH Publishers, N.Y., N.Y. (1987)を参照)。完全な免疫グロブリンを分泌することができる多くの適当な宿主細胞株が従来技術において発達しているため、真核生物細胞は好適であり、この真核生物細胞には、CHO細胞株、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、B細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞における発現ベクターは、複製の起源、プロモーター、エンハンサーのような発現制御配列(Queen et al., Immunol. Rev. 1986, 89: 49)及びリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写末端配列のような必要なプロセシング情報部位を含むことができる。好適な発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルスなど由来のプロモーターである。
真核細胞DNA転写は、エンハンサー配列をベクター内に挿入することで増加することができる。エンハンサーは、プロモーターによって転写を増加させる10〜30obpの間のシス作用配列である。エンハンサーは、転写ユニットに5'または3'のどちらかであるとき、効果的に転写を増加させることができる。イントロンの中またはコーディング配列自体の中に位置する場合においても、それらは効果的である。典型的には、ウイルス・エンハンサーが用いられ、ウイルス・エンハンサーにはSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス・エンハンサー、ポリオーマ・エンハンサー及びアデノウイルス・エンハンサーを含む。マウス免疫グロブリン重鎖エンハンサーのような哺乳類系からのエンハンサー配列も共通して用いられる。
哺乳類の発現ベクターシステムは、典型的には選択可能なマーカー遺伝子も含む。適当なマーカーの例は、薬剤耐性を与えるジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)または原核遺伝子を含む。最初の二つのマーカー遺伝子は、チミジンの成長培地への付加なしで成長する能力が欠如している変異体細胞株の使用を好む。形質転換された細胞は、その後、非補充の培地で成長する能力によって同定されることができる。マーカーとして有用な原核薬剤耐性遺伝子の例は、G418、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンに耐性を与える遺伝子を含む。
対象のDNAセグメントを含むベクターは、宿主細胞のタイプに応じて既知の方法で宿主細胞内に転移することができる。例えば、リン酸カルシウム処理に対して、塩化カルシウム形質転換は原核細胞において共通に利用される。リポフェクションまたはエレクトロポーレーションが他の宿主細胞において利用されることもある。哺乳類細胞を形質転換するために用いられる他の方法は、ポリブレン、原形質融合、リポソーム、エレクトロポーレーション、及び微量注入法に使用を含む(一般的に、Sambrook et al., supraを参照)。
一度発現すると、本発明の抗体、個々の変異免疫グロブリン鎖、変異抗体フラグメント、及び他の免疫ポリペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿法、分画カラムクロマトグラフィ、ゲル電気泳動などを含む当業者の標準的方法に従って精製されることができる(一般的に、Scopes, R., Protein Purification, Springer−Verlag, N.Y. (1982)を参照)。一度精製されると、部分的に、または所望された均質的に、ポリペプチドはそれによって治療的に、または、発達及び実行アッセイ手順、免疫蛍光染色などで使用されることができる(一般的に、Immunological Methods, Vols. I and II, Eds. Lefkovits and Pernis, Academic Press, N.Y. N.Y. (1979及び1981)を参照)。
本発明のオリゴペプチドは診断及び治療のために使用されることができる。説明の目的において、これに限定されるわけではないが、抗体は癌、自己免疫疾患またはウイルス感染を治療するために使用されることができる。癌の治療において、抗体は、典型的には、erbB−2、CEA、CD33、及び当業者において周知の多くの他の抗原のようながん細胞において選択的に発現される抗原と結合する。自己免疫疾患の治療において、抗体は、典型的には、CD4、IL−2受容体、様々なT細胞抗原受容体及び当業者において周知の多くの他の抗原のようなT細胞において発現される抗原と結合する(例えば、参照により本明細書に組み込まれているFundamental Immunology, 2nd ed., W. E. Paul, ed., Raven Press: New York, N.Y.,を参照)。ウイルス感染の治療において、抗体は、典型的には、疱疹ウイルスの様々なグリコプロテイン(例えばgB、gD、gE)、及びサイトメガロウイルス、及び当業者に周知の多くの他の抗原のような特定のウイルスによって感染した細胞で発現される抗原に結合する(例えば、Virology, 2nd ed., B. N. Fields et al., eds., (1990), Raven Press: New York, N.Y.を参照)。
本発明の抗体を有する医薬組成物は、非経口投与、すなわり、皮下、筋注、または静注において有用である。非経口投与のための組成物は、抗体の溶液または許容な担体、好適には水溶性担体において溶解するそれらのカクテルを共通に有する。様々な水溶性担体が使用可能であり、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどがある。これらの溶液は、無菌であり、一般的には粒子状物質を含まない。これらの組成物は、従来の、周知の殺菌技術によって殺菌されることがある。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤などのような生理的条件を近似させるために必要とされる薬学的に許容な補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、乳酸ナトリウムなどを含むことがある。これらの製剤における変異抗体の濃度は広く変化することができ、つまり、約0.01重量%未満から、通常少なくとも約0.1重量%から5重量%と同じ程度、及び、特定の選択された投与様式による流体体積、粘度などに基づいて主に選択される。
したがって、筋内注射における典型的な医薬組成物は、最大1mlの無菌の緩衝水及び約1mgの変異抗体を含むようにつくられることがある。静脈内点滴における典型的な組成物は、最大250mlの無菌のリンガー溶液及び10mgの変異抗体を含むようにつくられることがある。非経口投与できる組成物を調製するための実際の方法は、公知であり、または当業者において明らかである。及び、さらに詳細には、例えば、参照により本明細書に組み込まれているRemington's Pharmaceutical Science, 20th Ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (2000)に記載されている。
候補及び/または進化した候補の製造
一実施形態において、真核細胞系は、CHO、HEK293、IM9、DS−1、THP−1、Hep G2、COS、NIH 3T3、C33a、A549、A375、SK−MEL−28、DU 145、PC−3、HCT 116、Mia PACA−2、ACHN、Jurkat、MM1、Ovcar 3、HT 1080、Panc−1、U266、769P、BT−474、Caco−2、HCC 1954、MDA−MB−468、LnCAP、NRK−49F及びSP2/0細胞株;及びマウス脾細胞及びラビットPBMCからなる群の1つから選択される哺乳類系である。
一実施形態において、様々な哺乳類宿主細胞が、線維芽細胞(3T3、マウス;BHK21、シリアンハムスター)、上皮細胞(MDCK、イヌ;Hela、ヒト;PtK1、ラットカンガルー)、プラズマ細胞(SP2/0及びNS0、マウス)、腎細胞(293、ヒト;COS、サル)、卵巣細胞(CHO、シャイニーズハムスター)、胚細胞(R1及びE14.1、マウス;H1及びH9、ヒト;PER C.6、ヒト)を含む候補の製造において使用されることがある。
特定の態様において、組換え抗体はCHO及びNS0及びSP2/0細胞株においてつくられる。特定の態様において、哺乳類系はCHO−S細胞株である。最も多用される発現ベクター系はグルタミン合成発現系及びジヒドロ葉酸還元遺伝子に基づくものである。
他の実施形態において、真核細胞系は酵母細胞系である。一つの態様において、酵母細胞系は、出芽酵母またはピキア細胞から選択される。
本発明の方法において、進化した分子をスクリーニングするために使用される宿主は、ヒットの下流製造において使用される宿主と同じである。本発明の他の態様において、タンパク質の発見及び進化において使用される遺伝子系は、市販適用のためのタンパク質の製造にいて用いられる遺伝子系と同様である。
後発生物製剤
後発生物製剤は、特許でもはや保護されていない承認された医療用医薬品として同一のアミノ酸配列(つまり化学的組成物)を有するタンパク質ベースの治療薬である。一態様において、CIAO法は特に後発生物製剤に関連がある。等価な製剤及び組成物において治療的タンパク質を生成するため、市場において競争的であるために重要であるので、後発生物製剤はできる限り急速に、及び安くつくらなければならない。細胞培養培地及びプロセスの開発は、後発生物製剤を調製し、製造する中で最もコストと時間のかかる部分の一部である。
治療的なタンパク質内でサイレント変異をカエルことは、タンパク質翻訳のために使用されるコドンを変化させるが、タンパク質内でアミノ酸配列は保存される。分子内の様々な位置でのこれらのコドン変化は、特にアミノ末端において発現及び場合によってはグルコシル化にさえ重要な影響を及ぼすことがある。一態様において、CIAO方法は、製造のために最終的に使用されるものと類似の宿主細胞内のタンパク質におけるサイレント変異コドンを選択し、進化させるために使用される。したがて、処理時間は、より高いタンパク質収率、及び、タンパク質が宿主細胞株において発現するために選択される事実、大部分の従来の製造問題が分子外から選択されることによって減らされた。さらに、安価な分子、無血清培養培地を選択することによって、分子は、安価な製造及び生成を可能にするコドンによって選択されることができる。
さらなる合成により、当業者が上述の記載を使用して本発明の完全な範囲を利用することができると考えられる。以下の実施例は、例示としてみなされているものであり、このようにいかなる方法においても開示の残りを限定するものではない。
実施例1.抗体ライブラリの作成とスクリーニング
この実施例は、フローサイトメトリー分離とELISAの組合せを用いて、標的抗原への結合活性を持つヒト抗体を単離するために、哺乳類細胞表面提示系のヒト抗体ライブラリを作成しスクリーニングする方法について記載するものである。
フローサイトメトリー解析によるライブラリのスクリーニング
1. ヒト抗体ライブラリを、下記の付録1.1、1.3、及び1.4に記載されているような哺乳類細胞に安定に組み込む。
2. フローサイトメトリー解析の前に、安定完全ヒト抗体ライブラリのクローンを増大させる。
3. フローサイトメトリー解析の日に、1×PBSで1×107個の細胞を洗浄する。
4. Detachin細胞剥離培地を用いて細胞を剥離し、1×PBS中に細胞を収集する。
5. 3000rpmで5分間遠心して細胞を沈殿させる。上清を除去する。
6. 細胞沈殿物を1mlの冷却1×PBS中に再懸濁し、3000rpmで5分間遠心する。
7. 上清を除去し、精製ヒト001タンパク質を2μg/mlで含む冷却1×PBS500μl中に、細胞沈殿物を再懸濁する。
8. 手動で時々かき混ぜながら、1時間氷上でインキュベートする。
9. 3000rpmで5分間細胞を遠心沈殿させる。上清を除去する。
10. 細胞沈殿物を1mlの冷却1×PBS中に再懸濁し、3000rpmで5分間遠心する。
11. 工程7及び8を繰り返す。
12. 上清を除去し、ウサギ抗ヒト001ポリクローナル抗体を1g/mlで含む冷却10%ヤギ血清添加1×PBS500μl中に、細胞沈殿物を再懸濁する。
13. 手動で時々かき混ぜながら、1時間氷上でインキュベートする。
14. 3000rpmで5分間細胞を遠心沈殿させる。上清を除去する。
15. 細胞沈殿物を1mlの冷却1×PBS中に再懸濁し、3000rpmで5分間遠心する。
16. 工程7及び8を繰り返す。
17. 上清を除去し、ヤギ抗ウサギ抗体のFITCコンジュゲート及びヤギ抗ヒトFc抗体のピレトリン(pyroerthrin)コンジュゲートを含む冷却10%ヤギ血清添加1×PBS500μl中に、細胞沈殿物を再懸濁する。
18. 手動で時々かき混ぜながら、1時間氷上でインキュベート(incubate)する。
19. 3000rpmで5分間細胞を遠心沈殿させる。上清を除去する。
20. 細胞沈殿物を1mlの冷却1×PBS中に再懸濁し、3000rpmで5分間遠心する。
21. 工程7及び8を繰り返す。
22. 上清を除去し、冷却2%ヤギ血清添加1×PBS中に細胞沈殿物を再懸濁する。
23. Dako社MoFlo(商標)を用いてフローサイトメトリー解析を次に行う。
24. PE/FITC蛍光強度比が上位0.1%となる細胞が含まれるように分離窓(sort window)を描く。この分離窓の中に入った細胞を収集し、100μlの成長培地の入った96ウェルプレートに入れる。
重鎖及び軽鎖の可変領域配列の再生
1. 前記クローンを96ウェルプレートから6ウェルプレートに拡張する。この6ウェルプレートの中で、細胞が80%の密度(confluence)に達したとき、Qiagen社DNeasy Tissue Kitを用いてゲノムDNA単離を次に行う。
2. 細胞から培地を吸引除去する。500mlの1×PBSを各6ウェルに加える。
3. 細胞を3000rpmで5分間遠心する。
4. 上清を除去し、細胞沈殿物を200μlの1×PBS中に再懸濁する。
5. 20μlのプロテアーゼK及び200μlのバッファーALをサンプルに加え、ボルテックスして(vortex)完全に混合し、56℃で10分間インキュベートする。
6. 200μlのエタノールを加え、ボルテックスして完全に混合する。
7. 工程6で得た混合物をピペットでスピンカラムに移す。8000rpmで1分間遠心分離を行う。得られた通過液を捨てる。
8. 500μlのバッファーAW1を加え、8000rpmで1分間遠心分離を行う。得られた通過液を捨てる。
9. 500μlのバッファーAW2を加え、14000rpmで2分間遠心分離を行う。得られた通過液を捨てる。再度14000rpmで1分間遠心分離を行う。カラムの膜が完全に乾燥していることを確認する。
10. スピンカラムを滅菌済の微量遠心チューブに入れ、200μlのバッファーAEを直接膜上にピペットで入れる。
11. 室温で1分間インキュベートし、8000rpmで1分間遠心分離してゲノムDNAを溶出させる。
12. 1.5ml微量遠心チューブに以下の反応をセットアップすることで、ゲノムDNAの品質確認をする:
gDNA 5μl
10×サンプルローディングバッファー 5μl
総体積 10μl
0.5g/mlのエチジウムブロマイド入り0.8%アガロースTAEゲル上にロードする。1kB DNAラダーを基準として用いる。1×TAEバッファー中、100Vで20〜30分間、ゲル電気泳動を行う。
13. 滅菌済のPCRチューブ中で以下のPCR反応をセットアップする:
gDNA 1μl
2×HotStar Taq Master Mix 12.5μl
可変領域の順方向プライマー* 0.5μl
可変領域の逆方向プライマー* 0.5μl
H 2 O 10.5μl
総体積 25μl
*付録1.2を参照のこと
14. このPCRチューブをサーマルサイクラー中に置き、サイクリングのプログラムを開始させる:
初期活性化段階(initial activation step):15分、95℃
3段階サイクリング
変性(denaturation):40秒、94℃
徐冷(anneealing):40秒、55℃
伸長(extension):2分、72℃
サイクル数:30回
最終伸長段階(final extension step):10分、72℃
12. 1.5ml微量遠心チューブに以下の反応をセットアップすることで、PCR反応物の品質確認をする:
PCR反応物 5μl
10×サンプルローディングバッファー 5μl
総体積 10μl
0.5g/mlのエチジウムブロマイド入り1%アガロースTAEゲル上にロードする。1kB DNAラダーを基準として用いる。1×TAEバッファー中、100Vで20〜30分間、ゲル電気泳動を行う。
16. Invitrogen社のTOPO 2.1 Kitを用いて、1.5ml微量遠心チューブに以下のクローニング反応をセットアップする:
PCR反応物 4μl
塩溶液(Salt Solution) 1μl
TOPOベクター 1μl
総体積 6μl
17. 反応物を穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートする。
18. 工程17のTOPOクローニング反応物を2μl取って、One Shot ケミカルコンピテントE.Coliに加え、穏やかに混合する。
19. 氷上で30分間インキュベートする。
20. この細胞に42℃で30秒間、熱ショックを与える。
21. このチューブを氷上に移し、2分間インキュベートする。
22. 室温のSOC培地を250μl加える。
23. このチューブを37℃、200rpmで1時間、水平方向に振盪する。
24. この形質転換体(transformation)10μlを、再度温めたLB−カルベニシリンのプレート上に播く。
25. プレートを37℃で一晩インキュベートする。
26. それぞれの形質転換体から、シーケンシング(sequencing)のために6クローンを採取する。
27. 重鎖及び軽鎖の可変領域配列を解析する。ELISA法を用いた2段階目のスクリーニングを開始する。
制限酵素によるベクター及びヒト抗体クローンの切断
反応は選択する制限酵素に依存するものであり、製造者の使用説明書に従うものである。幾つかの例を本明細書に記載する。
氷上の微量遠心チューブに、以下の切断反応を準備する:
ベクターDNA(2μg) xμl
10×制限酵素バッファーx 10μl
ヌクレアーゼフリーの水 97μlまでの必要量
制限酵素1(10U/μl) 3μl
制限酵素2(10U/μl) 3μl
総反応体積 100μl
ヒト抗体クローン(5μg) xμl
10×制限酵素バッファーx 10μl
ヌクレアーゼフリーの水 97μlまでの必要量
制限酵素1(10U/μl) 3μl
制限酵素2(10U/μl) 3μl
総反応体積 100μl
1. 微量遠心チューブ中で穏やかに混合し、少しの間(5秒間)遠心する。
2. 反応物を37℃で一晩インキュベートする。
CIPによるベクターの切断及びQIAquick PCR Purification Kitによる精製
3. 2μlのApexホスファターゼを、ベクター切断反応物の入った微量遠心チューブに加える。
4. 37℃で10分間インキュベートする。
5. 70℃で5分間加熱し、Apexホスファターゼを失活させる。
6. この微量遠心チューブに、500μlのバッファーPBIを加える。
7. ボルテックスして混合し、簡単に遠心する。
8. 750μlを一度にカラム上にロードする。
9. 12000×gで1分間遠心し、コレクションチューブ(collection tube)から液体をデカント(decant)する。
10. 全てのサンプルが処理されるまで繰り返す。
11. 750μlのPEバッファー(エタノールを加える)で洗浄する。
9. 12000×gで1分間遠心し、コレクションチューブから液体をデカント(decant)する。
13. カラムをコレクションチューブに戻して、再度遠心する。
14. カラムを新しい遠心チューブに入れ、50μLのEBバッファーで溶出する。
制限酵素で切断したヒト抗体クローンのゲル精製
1. 1.5ml微量遠心チューブに以下の反応をセットアップする:
制限酵素により切断された完全ヒト抗体クローン 100μl
10×サンプルローディングバッファー 3μl
総体積 103μl
2. 0.5g/mlのエチジウムブロマイド入り1%アガロースTAEゲル上にロードする。1kB DNAラダーを基準として用いる。1×TAEバッファー中、100Vで20〜30分間、ゲル電気泳動を行う。
3. 重鎖(HC:heavy chain)及び軽鎖(LC:light chain)の可変領域に対応するバンドを切り出し、QIAquick Gel Extraction Kitを用いて精製する。
4. ゲル1体積に対して3体積のバッファーQGを加える。
5. ゲル切片が完全に溶解するまで、50℃で10分間インキュベートする。ゲル1体積分のイソプロパノールをサンプルに加えて混合する。
6. 添付の2mlコレクションチューブに、QIAquickスピンカラムをセットする。
7. QIAquickカラムにサンプルをアプライ(apply)し、1分間遠心する。
8. 通過液を捨て、QIAquickカラムを同じコレクションチューブに戻す。
9. 0.75mlのバッファーPEをQIAquickカラムに加え、1分間遠心する。
10. 通過液を捨て、QIAquickカラムを17900×g(13000rpm)でさらに1分間遠心する。
11. QIAquickカラムを、滅菌済の1.5ml微量遠心チューブにセットする。
12. 52μlのバッファーEBを、QIAquick膜の中心に加え、このカラムを1分間遠心する。1分間カラムを立てたままにし、次いで1分間遠心する。
ヒト重鎖及び軽鎖の可変領域の、切断したベクターDNAへのライゲーション
以下のライゲーション(ligation)反応を氷上の微量遠心チューブ中に用意した:
切断されたベクターDNA(100ng) xμl
ヒト重鎖及び軽鎖の可変領域 yμl
5×T4リガーゼバッファー 4μl
ヌクレアーゼフリーの水 19μlまでの必要量
T4リガーゼ(2000U/μl) 1μl
総反応体積 20μL
1. 微量遠心チューブ中で穏やかに混合し、少しの間(5秒間)遠心する。
2. 室温で2時間、又は16℃で一晩インキュベートする。
3. 各ライゲーション反応混合物を、スーパーコンピテントE.Coli細胞中に入れて形質転換する。
4. 14mlのBD社Falcon(商標)ポリプロピレン丸底チューブを幾つか、氷上で予冷しておく。SOC培地を42℃で用意する。
5. 前記スーパーコンピテント細胞を氷上で解凍する。解凍後穏やかに混合し、前記予冷しておいたチューブ中に、それぞれ100μlずつ等分して入れる。
6. 等分した細胞に、それぞれ1.7μlのβ−メルカプトエタノールを加える。この細胞を氷上で10分間、2分毎に穏やかに回し混ぜながらインキュベートする。
7. 2μlのライゲーション反応混合物を、等分した細胞の1つに加える。このチューブを穏やかにはじいて混ぜる。
8. このチューブを氷上で30分間インキュベートする。
9. このチューブに42℃の湯浴で45秒間、熱パルスを与える。
10. このチューブを氷上で2分間インキュベートする。
11. 予熱したSOC培地を900μl加え、このチューブを225〜250rpmで振盪しながら37℃で1時間インキュベートする。
12. 20μl及び200μlの形質転換体混合物を、カルベニシリン含有LB寒天プレート上に播く。
13. このプレートを37℃で一晩インキュベートする。
14. プレート上のコロニーを計数し、PCRスクリーニング及びシーケンシングのために6コロニーを採取する。
15.正しい配列を持つクローンを1つ選び、プラスミドDNAを調製し、293F細胞への形質移入(transfection)を次に行う。
293F細胞への形質移入
1. 形質移入の1週間前に、293F細胞を血清添加ダルベッコ変法イーグル培地(D−MEM:Dulbecco's Modified Eagle Medium)中の単層培養に移す。
2. 形質移入の1日前に、96ウェルの形式で、形質移入サンプル毎に、100μlの血清添加D−MEM中に0.1×105の細胞を播く。
3. 各形質移入サンプルのために、DNA−リポフェクタミン複合体を調製する。
4. DNA0.2μgを、50μlのOpti−MEM血清使用量低減培地で希釈する。穏やかに混合する。
5. リポフェクタミン0.125μlを、50μlのOpti−MEM血清使用量低減培地で希釈する。穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートする。
6. 前記希釈DNAと前記希釈リポフェクタミンとを合わせる。穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートする。
7. 100μlの前記DNA−リポフェクタミン複合体を、細胞及び培地の入ったウェルにそれぞれ加える。このプレートを前後に揺すって穏やかに混合する。
8. この細胞を5%CO2のインキュベーター中37℃でインキュベートする。
9. 6時間後、各ウェルに100μlの血清添加D−MEMを加える。この細胞を5%CO2のインキュベーター中37℃で一晩インキュベートする。
10. 各ウェルの培地を吸引除去する。100μlの4mM L−グルタミン入り293 SFM IIで各ウェルを洗浄する。100μlの4mM L−グルタミン入り293 SFM IIを各ウェルに加える。
11. 形質移入の96時間後、ELISAのために上清を収集する。
付録1.1:バッファーの製法
2%ヤギ血清添加1×PBS
・2ml ヤギ血清
・98ml 1×PBS
50×TAEバッファー
・242g トリス塩基
・57.1ml 氷酢酸
・37.2g Na2EDTA−2H2O
・蒸留H2Oを加え最終体積を1リットルとする
1×TAEバッファー
・20ml 50×TAEバッファー
・800ml 蒸留H2O
エチジウムブロマイド入り0.8%アガロースゲル
・0.8g LEアガロース
・100ml 1×TAEバッファー
・電子レンジでアガロースを溶かし、回し混ぜて均一に混ざっていることを確認する
・アガロースを55℃まで冷却する
・2.5μlの20mg/mlエチジウムブロマイドをアガロースに加える
・ゲル型に注ぐ
エチジウムブロマイド入り1%アガロースゲル
・1g LEアガロース
・100ml 1×TAEバッファー
・電子レンジでアガロースを溶かし、回し混ぜて均一に混ざっていることを確認する
・アガロースを55℃まで冷却する
・2.5μlの20mg/mlエチジウムブロマイドをアガロースに加える
・ゲル型に注ぐ
LB
・10g NaCl
・10g トリプトン
・5g 酵母エキス
・蒸留H2Oを加え最終体積を1リットルとする
・5N NaOHを用いてpHを7.0に調整する。
・オートクレーブ(autoclave)する
LB−カルベニシリン寒天
・10g NaCl
・10g トリプトン
・5g 酵母エキス
・20g 寒天
・蒸留H2Oを加え最終体積を1リットルとする
・5N NaOHを用いてpHを7.0に調整する。
・オートクレーブする
・55℃に冷却する
・10mlのフィルター滅菌済10mg/mlカルベニシリンを加える
・ペトリ皿(25ml/100mmプレート)に注ぐ
SOC培地
・0.5g NaCl
・20g トリプトン
・0.5g 酵母エキス
・2ml フィルター滅菌済20%グルコース
・蒸留H2Oを加え最終体積を1リットルとする
・オートクレーブする
・10mlのフィルター滅菌済1M MgCl2及び10mlのフィルター滅菌済1M MgSO4を加えて使用する
洗浄溶液
・PBSで希釈した0.05%Tween−20
ブロッキング溶液
・PBSで希釈した2%Carnation無脂肪牛乳
熱不活性化ウシ胎児血清
・500ml 販売元の瓶に入った熱不活性化ウシ胎児血清
・56℃で30分間、5分毎に混ぜながら加熱する
・50mlに等分し、−20℃で保管する
血清添加ダルベッコ変法イーグル培地
・500ml ダルベッコ変法イーグル培地
・50ml 熱不活性化ウシ胎児血清
・5ml 10mM MEM非必須アミノ酸
4mM L−グルタミン入り293 SFM II
・500ml SFM II
・10ml 200mM L−グルタミン
DEAE−デキストラン溶液
・1g DEAE−デキストラン(ジエチルアミノエチル−デキストラン)
・100mlの蒸留水に溶かす
・フィルター滅菌する
付録1.2:完全ヒト抗体ライブラリの作製
全ての機能的なヒト生殖細胞系列重鎖(VH)及びκ軽鎖(Vk)のV領域は、V base(http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)から得て、アライメントすることができる。このアライメントを、多様性に関して、特にフレームワーク3(framework three)領域において、次いで解析することができる。結果得られた配列クラスターから、所望の数のVH及びVkの遺伝子を、ライブラリ作成のために次いで選択することができる。
V領域のクローニング
重鎖及び軽鎖V領域の遺伝子(フレームワーク1、2、及び3、並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む)を、2つの遺伝子特異的なプライマーを用いて、ヒトゲノムDNAから増幅する。次いで、部分的なV領域の遺伝子を、オーバーラップPCRによって結合する。全長の軽鎖V領域に、哺乳類発現ベクター中にクローニングする前に、ネステッドPCRによってリンカーを追加する。クローニングされた軽鎖可変領域の配列を確認する(軽鎖Vクローンを産生)。重鎖可変領域をTOPOクローニングし、配列を確認する。(重鎖V TOPOクローン)。配列を確認した重鎖V領域を、対応するプラスミドから増幅し、リンカーを3'末端に加え、得られたPCR産物を、前記軽鎖可変領域クローンにクローニングし、Vk/VHの連結物を形成し、哺乳類ベクター中にクローニングする。
全長IgGsの発現
所望の哺乳類ベクターにおける全長κ軽鎖及びIgG1重鎖の発現は、例えばCMVプロモーターのような単一プロモーターで駆動させることができる。それぞれの鎖の前には、新生ポリペプチド鎖を小胞体(ER:endoplasmatic reticulum)に標的させる分泌シグナルを付ける。アンカーシグナルは、重鎖のC末端に結合させることができる。このシグナルは切断除去され、分泌後に前記全長IgGを細胞膜の外側に付着させるアンカーに置き換わる。
付録1.3:形質移入による哺乳類細胞中の安定な完全ヒト抗体ライブラリの作製
1. 形質移入の1週間前に、CHO−S細胞を血清添加ダルベッコ変法イーグル培地(D−MEM:Dulbecco's Modified Eagle Medium)中の単層培養に移す。
2. 形質移入の1日前に、10cmの組織培養プレート中に、形質移入サンプル毎に、15mlの血清添加D−MEM中に6×106の細胞を播く。10枚の10cmプレートを用意する。
3. それぞれの10cmプレートに、工程4〜7に従ってDNA−リポフェクタミン複合体を調製する。
4. マキシプレップ(maxi−prep)した完全ヒト抗体ライブラリのプラスミドDNA25μgを、1.5mlのOpti−MEM血清使用量低減培地で希釈する。穏やかに混合する。
5. 60μlのリポフェクタミンを、1.5mlのOpti−MEM血清使用量低減培地で希釈する。穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートす
6. 前記希釈DNAと前記希釈リポフェクタミンとを合わせる。穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートする。
7. 3mlの前記DNA−リポフェクタミン複合体を、細胞及び培地の入ったプレートにそれぞれ加える。このプレートを前後に揺すって穏やかに混合する。
8. この細胞を5%CO2のインキュベーター中37℃でインキュベートする。
9. 各プレートの培地を15mlの血清添加D−MEMに換える。この細胞を5%CO2のインキュベーター中37℃で48時間インキュベートする。
10. Detachin(商標)細胞剥離培地を用いて細胞を剥離し、血清添加D−MEM中に細胞を再懸濁する。
11. 1枚の10cm組織培養プレート中の、800μg/mlのG418入り血清添加D−MEM10mlに、0.4×106の細胞を播く。形質移入した全ての細胞を移動し、結果150枚の10cmプレートを得る。
12. 1枚の10cm組織培養プレート中の、800μg/mlのG418入り血清添加D−MEM10mlに、0.4×106の形質移入していないCHO−S細胞を播く。
13. 4日毎に、800μg/mlのG418入り血清添加D−MEMを細胞に与える。
14. 14日後、形質移入していないCHO−S細胞のプレートを観察する。プレートには生きた細胞が無いはずである。
15. 残った形質移入した細胞を、Detachin(商標)細胞剥離培地を用いて剥離し、冷凍用培地中に1×107cells/mlで細胞を冷凍する。
付録1.4:レトロウイルス感染による哺乳類細胞中の安定な完全ヒト抗体ライブラリの作製
1. 形質移入の1日前に、10cmの組織培養プレート中に、形質移入サンプル毎に、15mlの血清添加D−MEM中に6×106のEcoPack2(商標)293細胞を播く。10枚の10cmプレートを用意する。
2. MBS添加培地を調製する。この作業は形質移入のすぐ前に行う。それぞれの10cm組織培養プレートについて、12mlのMBS入り培地を調製しなければならない。
3. 12mlのMBS添加培地をそれぞれの10cmプレートに加え、このプレートを37℃のインキュベーターに戻す。この作業は、DNA懸濁液を添加する20〜30分前に行わなければならない。
4. 10gのマキシプレップした完全ヒト抗体ライブラリのプラスミドDNAペレットを、450μlの滅菌済H2O中に懸濁し、このDNAを5mlのBD社Falcon(商標)ポリプロピレン丸底チューブに分注する。
5. このDNAに、Stratagene社Transfection MBS Mammalian Transfection Kitの溶液Iを50μl、溶液IIを500μl加える。
6. このDNA懸濁液中の沈殿物については、500μlにセットしたピペットを使って、沈殿物を吸い上げたり戻したりすることで穏やかに再懸濁する。
7. このDNA懸濁液を室温で10分間インキュベートする。
8. インキュベーターから10cmプレートを形質移入のために取り出し、前記DNA懸濁液をこのプレートに滴下する形で加え、細胞がプレートから飛び出さないように、またDNA懸濁液が均等に行き渡るように、穏やかに回し混ぜる。
9. 細胞培養プレートを、37℃のインキュベーターに戻す。
10. 3時間インキュベートした後、このプレートから培地を除去し、4mlの25μMクロロキン添加血清添加D−MEMに換える。このプレートを37℃のインキュベーターに戻す。
11. さらに6〜7時間インキュベートした後、25μMクロロキン入りの前記成長培地を除去し、4mlのクロロキン無添加血清添加D−MEMに換える。
12. このプレートを37℃のインキュベーターで一晩インキュベートする。
13. このプレートから培地を除去し、3.0mlの新しい血清添加D−MEMに換える。このプレートを37℃のインキュベーターに戻す。
14. このインキュベーターからこのウイルス産生パッケージング細胞を取り出す。
15. 最初のプレートからウイルスを含有する上清を収集し、0.45μmフィルターを通して滅菌済の50mlコニカルチューブに入れる。
16. このウイルス上清を1.5mlのクライオバイアルに分注し、ドライアイス/エタノール浴で瞬間冷凍する。このウイルス上清を−80℃で保管する。
17. 1枚の10cm組織培養プレート中の、D−MEM10mlに、0.5×106のNIH−3T3細胞を播く。
18. 前記上清を、37℃のH2O浴で素早く攪拌させながら急速解凍する。
19. このウイルスを、DEAE−デキストラン溶液入りウシ血清添加DMEMで、0.3×105ウイルス粒子/mlの力価になるよう希釈する。100mmプレート毎に、感染用に3mlの希釈ウイルスを用意する(細胞の20%が感染する)。DAEA−デキストラン入り成長培地である「偽混合物(mock cocktail)」を用意し、ネガティブコントロールとして用いる。
20. NIH−3T3細胞から培地を吸引除去し、各プレートに3.0mlの希釈ウイルスを細胞の上に均等に播く。プレートを37℃のインキュベーターに戻して3時間置く。
21. 3時間インキュベートした後、追加で7.0mlのウシ血清添加D−MEMを各プレートに加え、プレートを37℃のインキュベーターに戻す。プレートを48時間インキュベートする。
22. 10cm組織培養プレートのそれぞれの培地を、10mlの800μg/mlのG418入り血清添加D−MEMに換える。
23. 4日毎に、800μg/mlのG418入り血清添加D−MEMを細胞に与える。
24. 14日後、偽感染のNIH−3T3細胞のプレートを観察する。プレートには生きた細胞が無いはずである。
25. 残った形質移入した細胞を、Detachin(商標)細胞剥離培地を用いて剥離し、冷凍用培地中に1×107cells/mlで細胞を冷凍する。
実施例2.Comprehensive Positional Evolution(CPE)(商標)の反応
変異導入反応
1組のプライマー(プライマー混合物1及びプライマー混合物2)を、挿入するそれぞれのコドンについて設計する。設計は遺伝子配列に依存し、Sequencher(商標)(Gene Codes Corporation社)やVectorNTI(登録商標)(Life Technologies社)などの配列解析データベースを、前記プライマーの設計に使用することができる。CPE(商標)においては、一組のプライマーを、変異させるそれぞれのコドンについて設計する。 目標の縮重コドン(NNK又はNNN)は中間に配置し、その両側に20塩基を配置する(プライマー全長:43塩基、固有の変異をシーケンシングして同定するために9fクローン)。テンプレートDNAは目的の遺伝子を持つベクターDNAである。
氷上の96ウェル薄壁PCRプレート又は0.2ml薄壁PCRチューブに、以下の反応を準備する:
プライマー混合物1(2.5μM) 5μl
プライマー混合物2(2.5μM) 5μl
10×PfuターボDNAポリメラーゼバッファー 2.5μl
DNAテンプレート(5、10、25ng) xμl
dNTPs 2μl
ヌクレアーゼフリーの水 24.5μlまでの必要量
PfuターボDNAポリメラーゼ(2.5Uμl) 0.5μl
総反応体積 25μl
1. 1つの96ウェルプレート毎に、1つのネガティブコントロール反応(プライマーをTEバッファーに置換)を用意する。
2. 穏やかに混合し、卓上遠心分離機中で少しの間(5秒間)遠心する。
3. 下に概要を記したサイクリングパラメーターを用いて、サイクル反応を行う。
品質確認分析
1. 増幅反応物の品質確認をするために、96ウェル薄壁PCRプレート又は0.2ml薄壁PCRチューブに、以下の反応をセットアップする:
変異誘導反応物 5μl
水 4μl
サンプルローディングバッファー 1μl
体積 10μl
2. 0.5g/mlのエチジウムブロマイド入り1%アガロースTAEゲル上にロードする。1kB DNAラダーを基準として用いる。1×TAEバッファー中、100Vで20〜30分間、ゲル電気泳動を行う。
ベクターDNA中にクローニングするのに適切な制限酵素による、変異誘導反応物の切断―制限酵素DpnIの例
1. 0.5μlの制限酵素DpnI(10U/μl)を直接、各反応物に加える。
2. 穏やかに混合し、卓上遠心分離機中で少しの間(5秒間)遠心する。
3. PCR機器の中で、37℃で2時間インキュベートする。
4. 各96ウェルプレートから6つの反応混合物を、XLI Blueスーパーコンピテント細胞に形質転換する。反応物の残りは−20℃で保管する。
5. 0.2mlPCRチューブを幾つか、氷上で予冷しておく。SOC培地を42℃まで温める。
6. 前記XLI Blueスーパーコンピテント細胞を氷上で解凍する。解凍後に穏やかに混合し、前記予冷しておいたチューブ中に、それぞれ50μlずつ等分して入れる。
7. 等分した細胞に、それぞれ0.8μlのβ−メルカプトエタノールを加える。この細胞を氷上で10分間、2分毎に穏やかに回し混ぜながらインキュベートする。
8. 2μlの反応混合物を、等分した細胞の1つに加える。このチューブを穏やかにはじいて混ぜる。
9. このチューブをコールドブロックの上で30分間インキュベートする。
10. このチューブに42℃の湯浴で45秒間、熱パルスを与える。
11. このチューブを氷上で2分間インキュベートする。
12. 予熱したSOC培地を100μl加え、このチューブを225〜250rpmで振盪しながら37℃で1時間インキュベートする。
13. 全ての形質転換体混合物を、カルベニシリン含有LB寒天プレート上に播く。
14. このプレートを37℃で一晩インキュベートする。
15. プレート上のコロニーを計数し、ミニプレップ及びシーケンシングのために12コロニーを採取する。
ラージスケールの形質転換
1. XLI Blueスーパーコンピテント細胞を氷上で解凍する。96の反応のために20のコンピテント細胞のチューブを解凍する。解凍後、4μlのβ−メルカプトエタノールを、250μlのコンピテント細胞の各チューブに加える。この細胞を氷上で10分間、2分毎に穏やかに回し混ぜながらインキュベートする。
2. 0.2mlPCRチューブを幾つか、氷上で予冷しておく。SOC培地を42℃まで温める。
3. 前記予冷しておいたチューブ中に、それぞれ50μlずつ等分して入れる。
4. 2μlの反応混合物を、等分した細胞の1つに加える。このチューブを穏やかにはじいて混ぜる。
5. このチューブをコールドブロックの上で30分間インキュベートする。
6. このチューブに42℃の湯浴で45秒間、熱パルスを与える。
7. このチューブを氷上で2分間インキュベートする。
8. 予熱したSOC培地を100μl加え、このチューブを225〜250rpmで振盪しながら37℃で1時間インキュベートする。
9. 全ての形質転換体混合物を、カルベニシリン含有LB寒天プレート上に播く。
10. このプレートを37℃で一晩インキュベートする。
11. ミニプレップのために、96ウェルブロック中で細胞を培養する。
12. QIAVac96 kitを用いて、製造者の使用説明書に従って、ミニプレップDNAを調製する。
実施例3.抗体親和性改善のためのスクリーニング
形質移入
形質移入の1週間前に、293F細胞を血清添加ダルベッコ変法イーグル培地(D−MEM:Dulbecco's Modified Eagle Medium)中の単層培養に移す。形質移入の1日前に、96ウェルの形式で、形質移入サンプル毎に、100μlの血清添加D−MEM中に0.2×105及び0.4×105の細胞を播く。
1. 各形質移入サンプルのために、DNA−リポフェクタミン複合体を調製する。
2. DNA0.2μgを、50μlのOpti−MEM血清使用量低減培地で希釈する。穏やかに混合する。
3. リポフェクタミン0.125μlを、50μlのOpti−MEM血清使用量低減培地で希釈する。穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートする。
4. 前記希釈DNAと前記希釈リポフェクタミンとを合わせる。穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートする。
5. 100μlの前記DNA−リポフェクタミン複合体を、細胞及び培地の入ったウェルにそれぞれ加える。このプレートを前後に揺すって穏やかに混合する。
6. この細胞を5%CO2のインキュベーター中37℃でインキュベートする。
7. 6時間後、各ウェルに100μlの血清添加D−MEMを加える。この細胞を5%CO2のインキュベーター中37℃で一晩インキュベートする。
8. 各ウェルの培地を吸引除去する。100μlの4mM L−グルタミン入り293 SFM IIで各ウェルを洗浄する。100μlの4mM L−グルタミン入り293 SFM IIを各ウェルに加える。
9. 形質移入の96時間後、ELISAのために上清を収集する。
機能的ELISA
1. Nunc−Immuno Maxisorp96ウェルプレートを、抗原2μg/mlが入ったコーティング溶液100μlでコートする。
2. プレートをシーラーで覆い、4℃で一晩インキュベートする。
3. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
4. 200μlの洗浄溶液を加える。室温で5分間、200rpmで振盪する。
5. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
6. 200μlのブロッキング溶液を加える。室温で1時間、200rpmで振盪する。
7. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
8. コントロール抗体(2μg/ml)入りのブロッキング溶液を100μl/ウェルで二つ組、プレートに加える。
9. 形質移入体(SOP 5A)の上清100μlを二つ組、プレートに加える。
10. 室温で1時間、200rpmで振盪する。
11. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
12. 200μlの洗浄溶液を加える。室温で5分間、200rpmで振盪する。
13. 工程11〜12を3回繰り返す。
14. アフィニティー精製ヤギ抗ヒト抗体とHRPのコンジュゲートを、ブロッキング溶液中に1:5000で希釈した溶液100μlを、各ウェルに加える。
15. 室温で1時間、200rpmで振盪する。
16. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
17. 200μlの洗浄溶液を加える。室温で5分間、200rpmで振盪する。
18. 工程17〜18を3回繰り返す。
19. Sigma社TMB基質100μlを各ウェルに加える。室温でインキュベートし、2〜5分毎にチェックする。
20. 反応を停止させるために100μlの1N HClを加える。
21. 450nmで読み取る。
定量的ELISA
1. Nunc−Immuno Maxisorp96ウェルプレートを、アフィニティー精製Fc特異的ヤギ抗ヒトIgGが10μg/mlで入ったコーティング溶液100μlでコートする。
2. プレートをシーラーで覆い、4℃で一晩インキュベートする。
3. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
4. 200μlの洗浄溶液を加える。室温で5分間、200rpmで振盪する。
5. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
6. 200μlのブロッキング溶液を加える。室温で1時間、200rpmで振盪する。
7. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
8. 標準濃度の精製ヒト血清IgG入りのブロッキング溶液を100μl/ウェルで二つ組、プレートに加える。
9. 形質移入体(SOP 5A)の上清100μlを二つ組、プレートに加える。
10. 室温で1時間、200rpmで振盪する。
11. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
12. 200μlの洗浄溶液を加える。室温で5分間、200rpmで振盪する。
13. 工程11〜12を3回繰り返す。
14. アフィニティー精製ヤギ抗ヒト抗体とHRPのコンジュゲートを、ブロッキング溶液中に1:5000で希釈した溶液100μlを、各ウェルに加える。
15. 室温で1時間、200rpmで振盪する。
16. プレートをデカントし、残った液体を軽く叩いて出す。
17. 200μlの洗浄溶液を加える。室温で5分間、200rpmで振盪する。
18. 工程17〜18を3回繰り返す。
19. Sigma社TMB基質100μlを各ウェルに加える。室温でインキュベートし、2〜5分毎にチェックする。
20. 反応を停止させるために100μlの1N HClを加える。
21. 450nmで読み取る。
実施例4.最適な抗体の発現のためのFcコドン変異体ライブラリの作成及びスクリーニング
本実施例は、Fcコドン変異体ライブラリを作成する方法と、Fcポリペプチドの親型に比べて、生産宿主細胞における発現量向上について最適化されたFc変異体を得るためのスクリーニング方法を提供するものである。
A.Fcコドン変異体ライブラリの設計と作成
標的領域(この場合においてはヒトIgG1分子のFc部位)の各コドンについて、標的コドン及びその両側に20塩基を含むように、1組の縮重プライマー(順行性と逆行性)を設計する。標的コドンの3つ目の位置(ゆらぎの位置)は混合の塩基(表3)を含むので、同じコドンを用いて標的位置において全てのサイレント変異を作成できる(例A)。対応するアミノ酸が別のコドンによってエンコードされうる場合は、同じコドン位置について2つ目の縮重プライマーのセットを設計する(例B)。
対応する順行性及び逆行性の縮重プライマーは1:1の割合で混合され、テンプレートとアニールし、熱安定性DNAポリメラーゼを用いた鎖置換によって伸長して全長の生産物となる。テンプレートをDpnIによって切断し、全長の伸張産物をE.coli中に形質転換する。変異誘導反応毎に12コロニーまでを、シーケンシングする。配列が確認された変異体は96ウェルプレート中に配列し、グリセロールストックにする。このグリセロールストックは、プラスミドDNAをミニプレップし、哺乳類細胞へ形質移入し、スクリーニングするために使われる。
B.発現とELISAによるFcコドン変異体ライブラリのスクリーニング
Fcコドン変異体ライブラリからのクローンを、哺乳類細胞株中へ形質移入した。
全長のIgGが生産され、培地の中に分泌された。発現したFcコドン変異体の上清について、ELISAアッセイを用いて、IgGの発現レベルが親クローンよりも高いものをスクリーニングした。このELISAデータを、形質移入効率を測定するβ−ガラクトシダーゼアッセイを用いて標準化した。最初のスクリーニングにおいて同定した高順位のものについて、3回繰り返し形質移入及びスクリーニングを行い、発現レベルの高さを確認した。