JP6188335B2 - 漏洩検出器、漏洩位置特定方法および配管装置 - Google Patents

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Description

この発明は、漏洩検出器、漏洩位置特定方法および配管装置に関し、特に、水道管、建物配管、工場内配管などからなる各種配管において、精度よく流体の漏洩を検出する漏洩検出器ならびにこれを用いた漏洩位置特定方法および配管装置に関する。
従来より、漏水による水道管の振動をセンサーで検知することが一般になされている。例えば、特許文献1においては圧電素子を内蔵した検出部と剛性材料からなる台座部をゴム材料で連結した漏洩検出器が開示されている。これによれば、合成樹脂管に伝わる低周波振動を共振により増幅させることができるとされている。
また、水道管路における消火栓等に2個の検出器を設置し、得られた相関波形を解析することで漏水箇所を特定する方法がある。例えば、特許文献2には、導管の漏れを特定する方法が開示されている。
特許第3223337号公報 特開平8−226865号公報
管の材質が合成樹脂製であったり、管の口径が大きいと、流体漏洩によって起きる振動の減衰が大きい。上記従来のものでは、合成樹脂管や大口径の金属管における微小な振動に対する感度が十分でなく、例えば消火栓に設置する場合、検出器の設置スパンを短くする必要があり、広域の漏水調査を行おうとすると労力が大きいという問題があった。
この発明の目的は、合成樹脂管や大口径管の流体漏洩による振動音に対して感度が高く、設置スパンを長くとれるため、より効率的な流体漏洩調査が可能となる漏洩検出器を提供することにある。
この発明による漏洩検出器は、流体の主通路および主通路の所定箇所から分岐し、かつ、通常時は閉鎖された分岐通路を有する配管において、流体に接するように配管の分岐通路内部に配置されて流体を伝わる漏洩音を検出する漏洩検出器であって、配管内を流れる流体の振動を電気信号に変換する高分子材料製圧電素子と、圧電素子を両面から挟む1対の電極と、電極と流体との間および電極と配管との間を絶縁するとともに、フィルム状に構成され前記圧電素子および前記電極を挟み込むようにラミネートされる有機材料製絶縁体とを備えており、前記圧電素子は、弾性定数が2〜5×10(N/m)であるポリフッ化ビニリデンの延伸フィルムによって形成されており、前記絶縁体の音響インピーダンスは、10×10(kg/ms)以下であることを特徴とするものである。
圧電素子が高分子材料によって形成されていることにより、圧電素子の弾性定数が低くなり、圧電素子の共振周波数も低くなる。したがって、流体漏洩による振動音に対して感度が高くなり、設置スパンを長くすることができる。
圧電素子を形成する高分子材料には銀やニッケル銅などの電極が取り付けられ、流体内での使用を可能とするために、電極と流体とがショートしないように絶縁体によって絶縁される。
流体の漏洩に伴う振動は、配管によって伝搬されるとともに、流体によっても伝搬される。流体内を伝搬する振動は、より遠方まで伝搬するので、漏洩検出器が流体に接するように配置されることで、設置スパンをより長くすることができる。
本発明における圧電素子用高分子材料は特に限定されないが、ポリフッ化ビニリデンの延伸フィルムや多孔性のポリプロピレン延伸フィルムなどが挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデンは耐久性が高く、好適である。また、圧電材料は複数積層するなどしてさらに感度を高めることができる。
異なる物質に音が伝わる際、音響インピーダンスの整合がとれていないと界面で振動音の音波が反射して減衰するという問題が生じる。したがって、圧電材料の音響インピーダンスは、漏洩を検出する対象である流体の音響インピーダンスに近いことが好ましい。ポリフッ化ビニリデン(高分子材料の一例)の音響インピーダンスは、2.7×10(kg/ms)であり、漏洩検出対象の流体の一例である水の音響インピーダンスは1.5×10(kg/ms)、また、空気の音響インピーダンスは428(kg/ms)である。ポリフッ化ビニリデンは、水や空気に対して音響インピーダンスが近く、効率よく振動音が伝達する。ポリフッ化ビニリデンは、特に水に対して音響インピーダンスが極めて近いので、漏水検出に使用することで、顕著な効果が得られる。
ここで、絶縁体の音響インピーダンスが圧電素子を形成している高分子材料に比べて大きすぎると、上記の効率よく振動音が伝達する効果が減少することになる。絶縁体が有機材料とされることで、上記の効率よく振動音が伝達する効果を維持することができる。絶縁体の音響インピーダンスは、10×10(kg/ms)以下が好ましい。絶縁体の音響インピーダンスの下限は、対象とする流体(例えば水)に比べて小さすぎなければよく、例えば1×10(kg/ms)程度であればよい。絶縁体を形成する有機材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子有機材料が挙げられる。高分子に限らず、パラフィン、ろうなどの有機材料であってもよい。中でもポリエチレンテレフタレートのフィルムで圧電素子および電極を挟み込み、ラミネートする方法が容易であり好ましい。
この発明による漏洩位置特定方法は、上記の漏洩検出器を複数箇所に設置し、各漏洩検出器で得られた波形を相関解析することで、漏洩位置を特定することを特徴とするものである。
波形を相関解析することで、振動発生源である漏洩位置を特定することは公知であり、上記の漏洩検出器を使用することで、漏洩検出器の設置スパンを長くすることができ、効率的な流体漏洩調査が可能となる。
また、この発明による配管装置は、流体の主通路および主通路の所定箇所から分岐しかつ通常時は閉鎖された分岐通路を有する配管と、分岐通路に設けられて配管からの流体漏洩を検知する漏洩検出器とを備えており、漏洩検出器が上記のものとされていることを特徴とするものである。
流体の主通路においては、流体の流れによる雑音が入るので漏洩検出器の設置場所としては好ましくなく、主通路の所定箇所から分岐しかつ通常時は閉鎖された分岐通路に漏洩検出器を設置することで、流体の流れによる雑音を無くすことができる。
配管装置は、消火栓が設けられた水道施設であり、漏洩検出器は、分岐通路にある消火栓の取水口に設けられた蓋に取り付けられていることがある。
水道の配管における漏水の検出は、重要でかつ困難な課題となっており、上記漏洩検出器を消火栓の蓋に取り付けることで、この課題が解決される。消火栓の蓋は、容易に着脱可能となっており、漏洩検出器は、既存の蓋に取り付けるようにしてもよく、漏洩検出器および漏洩検出に必要な機器を組み込んだ蓋を製作しておき、これを既存の蓋に置き換えるようにしてもよい。
配管装置において、漏洩検出器が複数箇所に設置されており、各漏洩検出器で得られた波形を相関解析することで、漏洩位置が特定されるようになされていることが好ましい。
このようにすることで、漏洩検出器の設置スパンを長くすることができ、効率的な流体漏洩調査が可能となる。
この発明の漏洩検出器によると、圧電素子が高分子材料によって形成されているので、圧電素子の弾性定数が低くなり、共振周波数も低くなる。したがって、流体漏洩による振動音に対して感度が高くなり、設置スパンを長くすることができる。また、電極と流体との間を絶縁する有機材料製絶縁体を備えていることで、流体内に配置することができる。そして、この漏洩検出器が流体に接するように配置されることで、管の外周に設置する場合に比べて、設置スパンをより長くすることができ、効率的な流体漏洩調査が可能となる。
図1は、この発明による漏洩検出器が使用される配管装置の一例としての消火栓装置を模式的に示す図である。 図2は、漏洩検出器の分解斜視図である。
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
図1は、この発明による漏洩検出器が使用される配管装置の一例を示している。
配管装置(1)は、消火栓(4)が設けられた水道施設であり、水の主通路(3)および主通路(3)の所定箇所から消火用水を取り出すことを可能とする消火栓(分岐通路)(4)を有する配管(2)と、通常時に消火栓(4)の取水口を閉鎖している着脱可能な蓋(5)と、蓋(5)の下面に取り付けられて配管(2)からの水の漏洩を検知する漏洩検出器(6)と、漏洩検出器(6)からの出力を取り込んで記録するデータロガー(7)と、漏洩検出器(6)に接続された端子(8)とデータロガー(7)とを接続する電線(9)と、蓋(5)の上面に取り付けられたエア抜きのためのバルブ(10)とを備えている。
漏洩検出器(6)は、図2に示すように、配管(2)内を流れる水の振動を電気信号に変換する方形薄板状の高分子材料製圧電素子(11)と、圧電素子(11)を上下両面から挟む1対の電極(12)(13)と、圧電素子(11)および1対の電極(12)(13)を上下両面から挟んでいる1対の有機材料製絶縁体(14)(15)と、各電極(12)(13)に設けられた1対の電線(16)(17)とを備えている。
圧電素子(11)は、高分子材料であるポリフッ化ビニリデンの延伸フィルム(PVDFフィルム)によって形成されている。
1対の電極(12)(13)は、圧電素子(11)の両面に銀ペーストを塗布することで薄膜状に形成されている。
1対の有機材料製絶縁体(14)(15)は、電極(12)(13)が水に接してショートすることを防ぐためのもので、圧電素子(11)および1対の電極(12)(13)をポリエチレンテレフタレートのフィルムで挟み込んで、ラミネートすることで形成されている。
配管(2)内で漏水が発生すると、振動音が生じる。これに伴って、蓋(5)に取り付けられた漏洩検出器(6)の圧電素子(11)に付与される圧力が変動し、圧電素子(11)において、圧力変動が電荷信号に変換され、上側の電極(12)と下側の電極(13)との間に電位差が生じる。電位差は、電線(16)(17)によって地表に設けられたデータロガー(7)に送信されて記録され、記録されたデータは無線により相関器(図示略)に伝送される。
漏洩検出器(6)は、別の場所にある消火栓(4)にも同様にして設置される。離れた位置にある2つの漏洩検出器(6)では、漏水発生箇所からの距離が異なることから、振動が伝わる時間が異なる。したがって、時間差を求めて、距離差に換算することにより、漏水位置を特定することができる。時間差は、通常、公知の相関器を用いた相関解析を行うことで求めることができる。複数箇所で得られた波形を相関器で処理することにより、漏水箇所を特定することができる。
漏洩検出器(6)は、蓋(5)の裏面に接着剤等で貼り付けられて、配管(2)内の水に接するように配置されている。圧電素子(11)の周囲に空気が存在すると、水の振動を適切に計測できないので、漏洩検出器(6)の設置時には、バルブ(10)によってエア抜きされ、圧電素子(11)の周囲に空気溜りができることが防止される。
従来、この種の検出器に用いられる圧電材料は、チタン酸バリウムやジルコン酸チタン酸鉛などの圧電性セラミックが一般的であった。これに対し、この実施形態の漏洩検出器(6)では、圧電素子がポリフッ化ビニリデン(高分子材料の一例)によって形成されている。
ポリフッ化ビニリデンの弾性定数Eは2〜5×10(N/m)である。それに対し、ジルコン酸チタン酸鉛(セラミック圧電材料)の弾性定数は、2〜10×1010(N/m)であり、一桁大きい。このため、セラミック系の圧電素子を使った振動センサーは高い共振周波数に設計しやすく、共振周波数を数kHzとされることが多い。特許文献1のように、ゴム材料を用いて共振周波数を低周波にシフトさせることも可能であるが、ゴム材料によって振動が減衰するために、圧電素子に効率よく振動を伝達することが出来ない。この実施形態の漏洩検出器(6)では、高分子材料から圧電素子が構成されることで、圧電材料自体の弾性定数を低くし、低い共振周波数にしている。これにより、漏水による振動音に対して感度が高くなり、漏洩検出器(6)の設置スパンを長くすることができる。
漏水に伴う振動は、水の通路を形成している配管(2)によって伝搬されるとともに、通路内を流れている水によっても伝搬される。水によって伝搬される振動は、より遠方まで伝搬するので、漏洩検出器(6)が水に接するように配置されることで、漏洩検出器(6)の設置スパンをより長くすることができる。
異なる物質に音が伝わる際、音響インピーダンスの整合がとれていないと界面で振動音の音波が反射して減衰する。圧電セラミックの音響インピーダンスは30×10(kg/ms)程度である。それに対してポリフッ化ビニリデンの音響インピーダンスは2.7×10(kg/ms)と小さい。一方、水の音響インピーダンスは1.5×10(kg/ms)、空気の音響インピーダンスは428(kg/ms)である。ポリフッ化ビニリデンの方が水や空気に対して音響インピーダンスが近く、効率よく振動音が伝達することが分かる。ポリフッ化ビニリデンからなる圧電素子(11)は、音響インピーダンスが水に極めて近いため、上記の漏水検出用として使用する場合に、特に顕著な効果が得られる。
ここで、絶縁体(14)(15)の音響インピーダンスが圧電素子(11)を形成している高分子材料に比べて大きすぎると、上記の効率よく振動音が伝達する効果が減少することになる。絶縁体(14)(15)がポリエチレンテレフタレートとされていることで、上記の効率よく振動音が伝達する効果を維持することができる。絶縁体の音響インピーダンスは、10×10(kg/ms)以下が好ましい。絶縁体の音響インピーダンスの下限は、水に比べて小さすぎなければよく、例えば1×10(kg/ms)程度であればよい。絶縁体(14)(15)を形成する材料は、ポリエチレンテレフタレートの他に、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどの高分子有機材料であってもよく、高分子に限らず、パラフィン、ろうなどの有機材料であってもよい。
なお、高分子材料の圧電素子(11)は、セラミック系の圧電素子と比較して圧電出力定数が高い。例えば、ポリフッ化ビニリデンの圧電出力定数g33が300×10−3(Vm/N)程度であることに対し、ジルコン酸チタン酸鉛の圧電出力定数g33は20×10−3(Vm/N)程度である。これは、高分子材料の方が一定の力Fをかけた時に下記の式で得られる出力電圧Vが高く、この点でも漏水検出に有利であることを示している。
V=F・g33・t/A
V:出力電圧 g33:圧電出力定数 F:圧電材料にかかる力 t:厚み A:断面積
上記の漏洩検出器(6)によると、配管(2)がポリ塩化ビニル製のような合成樹脂管製や金属製の大径の管で形成されている場合であっても、漏水による振動音に対して感度が高いものとなっており、したがって、漏洩検出器(6)の設置スパンを長くとれるため、効率的な脂管(2)の漏水調査が可能となる。
上記においては、消火栓(4)を利用して水道の配管装置からの漏水を検出する例を示したが、上記漏洩検出器(6)によって漏洩を検出する対象は、これに限られるものではなく、主通路および主通路の所定箇所から分岐しかつ通常時は閉鎖された分岐通路を有する配管の分岐通路に上記漏洩検出器(6)を取り付けることによって、水道以外の各種配管内の漏水を検出することができ、また、例えば工場内の薬液等の配管における薬液等の流体の漏洩を検出することもできる。
絶縁体(14)(15)は、材料については、上記のように有機材料であることが好ましいが、形状は、上記のものに限定されるものではない。例えば、蓋(5)が合成樹脂製(絶縁体製)であれば、下側の絶縁体(16)1層だけであってもよい。
(1) 配管装置
(2) 配管
(3) 主通路
(4) 消火栓(分岐通路)
(5) 蓋
(6) 漏洩検出器
(11) 圧電素子
(12)(13) 電極
(14)(15) 絶縁体

Claims (2)

  1. 流体の主通路および主通路の所定箇所から分岐し、かつ、通常時は閉鎖された分岐通路を有する配管において、流体に接するように配管の分岐通路内部に配置されて流体を伝わる漏洩音を検出する漏洩検出器であって、
    配管内を流れる流体の振動を電気信号に変換する高分子材料製圧電素子と、圧電素子を両面から挟む1対の電極と、電極と流体との間および電極と配管との間を絶縁するとともに、フィルム状に構成され前記圧電素子および前記電極を挟み込むようにラミネートされる有機材料製絶縁体とを備えており、
    前記圧電素子は、弾性定数が2〜5×10(N/m)であるポリフッ化ビニリデンの延伸フィルムによって形成されており、前記絶縁体の音響インピーダンスは、10×10(kg/ms)以下であることを特徴とする漏洩検出器。
  2. 請求項1に記載の漏洩検出器を複数箇所に設置し、各漏洩検出器で得られた波形を相関解析することで、漏洩位置を特定することを特徴とする漏洩位置特定方法。
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