従来の回転カッタ研削装置は、グラインダの姿勢を変えて、回転カッタの刃の逃げ面やすくい面を、設定された角度(逃げ角、すくい角、リード角及び研ぎ角)で正しく研削できる。確かに、回転カッタは、逃げ面及びすくい面が両方とも研削される方が、草木がどのように当たっても切断することができるために好ましいし、切断できない刃で回転カッタを使い続けるよりも製品寿命が延びる利点もある。しかし、このように回転カッタの逃げ面及びすくい面を共に研削することは、研削作業に係る労力及び時間を増加させる問題がある。
まず、レバー操作しながら回転カッタを刃1つずつ又は2つずつ回転させながら、すべての刃を研削する研削作業は、どうしても時間が掛かる。また、回転カッタの刃の逃げ面及びすくい面を同時に研削できないので、いずれかの研削作業に対応してグラインダの姿勢を変更しなければならず、これも研削作業の時間を増加させていた。しかも、従来の回転カッタ研削装置は、草刈り機から回転カッタを取り外さなければ利用できず、グラインダを作動させる電源が必要であった。こうしたことから、回転カッタは、回転カッタ検索装置を用いて草刈り作業途中に研削されることがほとんどなかった。
ここで、草刈り作業に限って言えば、回転カッタは、逃げ面及びすくい面を共に研削する必要がなく、逃げ面の研削だけでも十分草刈りできることが経験から分かっている。また、対象物の切断ではなく、刃が当たれば逃げる草木を切断する場合、逃げ角=0度であっても、摩擦熱が発生して切断性能を低下させる心配がない。そこで、回転カッタの逃げ面を逃げ角=0度で研削して回転方向前縁(切り刃)が先鋭になれば実用上十分として、草刈りに装着したままの回転カッタの刃を逃げ角=0度で逃げ面を研削する回転カッタ研削装置を開発すべく、検討した。
検討の結果開発したものが、草刈り機に装着したままの回転カッタの裏面側にある中心凸部を載せ、前記回転カッタを水平姿勢にしたまま前後動自在に支持するベースと、前記回転カッタの前進方向を中心とし、前記回転カッタの外周縁に倣って左右方向に湾曲させた平面視円弧状の周面である研削面とから構成される回転カッタ研削装置である。本発明の回転カッタ研削装置は、装置側に回転するグラインダがなく、草刈り機に装着したままの回転カッタを回転させながら、動かない研削面に接近又は離反させて間断的に押し当てることにより、回転カッタの外周縁に沿って、刃の逃げ面を円弧状に研削し、回転方向前縁(切り刃)を先鋭にする。
ベースは、回転する回転カッタが安定して水平姿勢を維持して前後動できるように、前記回転カッタの裏面側にある中心凸部(ボルト又はナットやこれらのカバー)を載せる。ここで、ベース表面に何もなければ、回転カッタの中心凸部は、前記ベースに直接擦れて移動する(摺動する)が、ベースに設けた別部材に摺接させたり、ベースに設けたスライダに前記中心凸部を載せて移動させたりしてもよい。また、「水平姿勢」は、作業者から見た草刈り作業時の回転カッタの姿勢で、例えばベースが地面と平行な平坦面を有し、前記平坦面に中心凸部を摺動させる場合、前記ベースの平坦面と平行に回転しながら前後動する回転カッタは水平姿勢である。
研削面は、回転カッタの外周縁(刃の逃げ面を結んだ仮想的な円周)に倣って湾曲していることにより、一度に多数の刃を押し当て、前記刃の逃げ面を一度に研削できる。ここで、研削面が回転カッタの外周縁に倣うとは、研削面の曲率半径が前記外周縁の半径にほぼ同じ大きさであることを意味する。後述するように、研削面が弾性を備えた場合、研削面が弾性変形可能な範囲で、研削面の曲率半径が回転カッタの外周縁の半径より大きくても、小さくてもよい。ベースが平面である場合、前記ベースと平行に水平姿勢で前後動する回転カッタに対し、研削面はベースに直交する周面とし、研ぎ角を0度にすることを基本とするが、研削面をベースに対して傾かせることにより、研ぎ角(回転カッタの平面に対する逃げ面の傾き)を若干プラス又はマイナスにすることもできる。
ベースは、回転カッタの前後動方向に延在するV字溝(屈曲断面で、底面に稜線を有する溝)又はU字溝(湾曲断面で、側面から底面が連続して稜線を有さない溝)を設けた摺接ガイドを設けると、V字溝又はU字溝に落し込んだ中心凸部を、前記V字溝又はU字溝から逸脱させずに摺接させ、回転カッタを直線的に前後動させることができる。V字溝又はU字溝は、大きさや形状が異なる中心凸部を左右一対の傾斜面それぞれに摺接させ、ガタツキのない安定した姿勢を確保する。摺接ガイドは、金属ブロックの上面を切削してV字溝又はU字溝を形成してもよいし、板材をV字状又はU字状に折り曲げてV字溝又はU字溝を形成してもよい。また、ベースに対して、ボルト及びナットにより着脱自在に固定してもよいし、溶接により分離不能に固定してもよい。
ベースは、回転カッタの前後動方向に延在する左右一対の棒材又は板材からなる摺接ガイドを設けると、左右一対の摺接ガイドの間に嵌め込んだ中心凸部を、前記摺接ガイドの間から逸脱させずに前記棒材又は板材の一方又は双方に摺接させることにより、回転カッタを直線的に前後動させることができる。摺接ガイドを構成する棒材又は板材は、回転カッタの中心凸部より高さ(設置するベースの表面の直交方向の厚み)より低く、また回転カッタの前後動方向に直交する間隔が中心凸部の幅(設置するベースの表面に平行で、回転カッタの前後動方向に直交する長さ)以上に設定できれば、断面形状を問わず、また左右の断面形状が異なってもよい。
ここで、左右一対の棒材又は板材からなる摺接ガイドは、回転カッタの前後動方向に直交する棒材又は板材の間隔を調整自在とすれば、大きさや形状の異なる様々な中心凸部を、左右一対の摺接ガイドの間に嵌め込ませ、上述同様、回転カッタを直線的に前後動させることができる。摺接ガイドは、左右の摺接ガイドの一方又は双方に間隔の調整手段を設ける。調整手段は、例えば左右方向に延在するスリットをベースに設け、前記スリットを貫通するボルトにより、前記スリットの適当位置で摺接ガイドをベースに固定する構成がある。また、調整手段は、例えば左右方向に並ぶネジ孔をベースに設け、選択したネジ孔で摺接ガイドをネジ止めしてベースに固定する構成でもよい。
研削面は、一面に研削砥粒を付着させたバネ鋼板からなり、前記研削砥粒を付着させた一面を接近する回転カッタに向けてベースに位置固定して構成する。研削面の構成部材としてバネ鋼板を用いれば、回転カッタの外周縁に倣って研削面を弾性変形させ、研削面が延在する範囲で回転カッタの刃を均等に押し当てることができる。バネ鋼板は、左右方向に長尺な正面視長方形を基本とするが、回転カッタの外周縁に倣って弾性変形できれば正面視形状を問わない。研削砥粒は、前記バネ鋼板の一面全域に付着させることが望ましいが、回転カッタが押し付けられる範囲に付着されていれば足りる。
また、研削面は、ベースに位置固定した支持体に左右方向の両端を固定して湾曲させ、前記支持体を介してベースに位置固定されるとよい。支持体は、研削面の弾性力や回転カッタの押付力に負けない剛性を備えた構造部材であれば足り、例えば屈曲した壁面やベースに立設した棒体又は板体である。研削面の左右方向の両端を支持体に固定する場合、前記両端の長さ(研削面の左右方向の幅)より支持体の左右方向の間隔を短くすれば、研削面を無理なく湾曲させることができる。特に研削面を弾性変形するバネ鋼板で構成した場合、支持体に両端を固定させた研削面は、元の直線状態に戻ろうとする復元力(弾性力)を発生させることができる。
支持体を介して研削面をベースに位置固定する場合、ベースに固定した昇降基礎に昇降自在に固着される支持体とすることにより、研削面をベースに対して昇降自在に位置固定させるとよい。昇降基礎は、支持体を介した回転カッタの押付力に負けない剛性を備えた構造部材であれば足り、例えば屈曲した壁面やベースに立設した棒体又は板体である。支持体は、昇降手段を介して昇降基礎に支持される。昇降手段は、例えば上下方向に延在するスリットを昇降基礎に設け、前記スリットを貫通するボルトにより、前記スリットの適当位置で支持体を昇降基礎に固定する構成がある。また、昇降手段は、例えば上下方向に並ぶネジ孔を昇降基礎に設け、選択したネジ孔で摺接ガイドをネジ止めして昇降基礎に固定する構成でもよい。
本発明の回転カッタ研削装置は、草刈り機に装着したままの回転カッタを前記草刈り機の動力を利用して回転させながら、刃の逃げ面を円弧状に研削し、特に回転方向前縁(切り刃)を先鋭にできる。これにより、グラインダの角度を調節したり、草刈り機から回転カッタを取り外したりする研削作業を長くする問題がなくなり、何よりもグラインダを作動させる電源が不要になることから、草刈り作業の合間に、草刈り作業の現場で簡単かつ短時間に研削作業ができる利点が得られる。また、本発明の回転カッタ研削装置は、装置自体に可動部分がないため、故障する虞が少ない利点もある。
摺接ガイドは、回転している回転カッタをふらつかせることなく、安定して前後動させて、回転カッタがベースからずれ落ちたり、研削面以外に当たって予想外の方向へ跳ねたりする危険の生ずることを抑制又は防止する効果を有する。V字溝又はU字溝を設けた摺接ガイドは、大きさや形状の異なる回転カッタの中心凸部を載せるだけで、前記回転カッタの安定した前後動を実現する。また、棒材又は板材からなる摺接ガイドは、前記棒材及び板材で回転カッタの中心凸部を挟むことで、特に回転カッタが左右にふらつく虞をなくす。更に、前記棒材又は板材の間隔を調整自在として、中心凸部の大きさが変わっても対応できる。このように、前記各摺接ガイドは、より多様な草刈り機(正確には回転カッタ)に対応できる汎用性を本発明の回転カッタ研削装置にもたらす。
バネ鋼板の一面に研削砥粒を付着させて構成する研削面は、自身が備える弾性により、例えば湾曲した研削面の中心と回転カッタとの中心とがずれていたり、回転カッタの半径と研削面の曲率とが一致しなかったりしても、前記回転カッタの外周縁に倣うように弾性変形させ、多数の刃を均等に押し当てることができる。これは、一度に多数の刃を一様に研削できることから、研削作業に掛かる時間を短縮する効果のほか、研削面の曲率を正確に設定しなくても問題なく回転カッタを研削できることから、回転カッタ研削装置の製造に際する部品の寸法管理が容易になる効果をもたらす。
研削面の両端を固定する支持体は、研削面を無理なく湾曲させることから、研削面を湾曲させながら位置固定する組立を容易にする。また、バネ鋼板からなる研削面は、前記支持体の左右方向の間隔を短くすることで、研削面に復元力(弾性力)を発揮させ、上述した回転カッタの外周縁に倣って刃を均等に押し付けることのできる効果を容易に実現できる。また、支持体を介して研削面をベースに位置固定する場合、ベースに固定した昇降基礎に前記支持体を昇降自在に固着することができ、結果として研磨面をベースに対して昇降自在にできる。これにより、ベースに対して回転カッタの回転面の高さが変わらなくても、研削面に回転カッタが押し付けられる部分を変えることができ、研削面の耐久性を向上させることができる。
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の回転カッタ研削装置1は、図1〜図7に見られるように、草刈り機2に装着したままの回転カッタ21の裏面側にある中心凸部211(後掲図9〜図13参照)を載せる摺接ガイド13を設け、前記回転カッタ21を水平姿勢にしたまま前後動自在に支持するベース11と、前記回転カッタ21の前進方向を中心とし、前記回転カッタ21の外周縁に倣って左右方向に湾曲させた平面視円弧状の周面である研削面12とから構成される。
本例の回転カッタ研削装置1は、回転カッタ21の前後動方向に延在するV字溝131を設けた摺接ガイド13をベース11に設けた例である。研削面12は、ベース11に昇降基礎固定ボルト165及び昇降基礎固定ナット166により固定された昇降基礎16に、支持体固定ノブネジ164により昇降自在に固着された支持体15に対して、左右方向の両端にある固定端122,122を固定リベット123で固定することにより湾曲させ、前記支持体15及び昇降基礎16を介してベース11に位置固定される。
本例のベース11は、厚さ2.3mmの鋼板(熱間圧延軟鋼板)を用いた板金製部材で、平面視長方形の平坦面111と、前記平坦面111の四辺から下方に折り曲げて形成した4枚の折返フランジ112とから構成される。平坦面111を、平面視長方形(平面視正方形を含む)として直交する直線の2辺を形成することにより、一方の辺と平行に設けて載せた摺接ガイド13に回転カッタ21を載せて平坦面111と平行移動させる際、直交する2辺により回転カッタ21が正しく前後方向を往復しているか否か等を確認できる利点が得られる。
平坦面111は、研削面12を取り付けた支持体15が前記研削面12と一体となって上下方向に通過できる平面視V字状の昇降用開口113を、中央の凸が奥側(図2中上側)、左右端が手前側(図2中下側)に向けて設けている。昇降用開口113は、支持体15の平面視形状に倣って左右方向に延在する直線縁と左右手前側に延びる折れ曲がり縁とからなる奥側縁と、研削面12に倣って湾曲した円弧状の手前側縁から構成される。本例の平坦面111は、昇降用開口113を挟む奥側左右に、設置面(例えば地面)に杭(図示略)を打ち込む杭挿通孔114,114を設けている。杭挿通孔114を通して設置面に杭を打ち込むことにより、ベース11を設置面に位置固定できる。
前後左右の折返フランジ112は、平坦面111の剛性を高める。また、左右の折返フランジ112は、平坦面111を左右から挟む一対の垂直保護面17を取付部位を提供する。垂直保護面17は、上側及び手前側半分を占める側面視長方形の保護面171と、左右の折返フランジ17と同じ長さで下半分を占める側面視長方形の取付面172とからなる厚さ2.3mmの鋼板(熱間圧延軟鋼板)の板材である。取付面172は、下縁中間を切り欠いて前後端から下方に突出する接地脚173を構成する。接地脚173は、取付面172が設置面に対して4点支持されるようにして、取付面172の下縁が全部接地する場合に比べてがたつきを抑える働きがある。
取付面172は、上下方向に3個の垂直保護板側保護板固定ボルト孔176が並ぶボルト孔列を前後均等間隔で3列設け、各列で選択した垂直保護板側保護板固定ボルト孔176に通した保護板固定ボルト174に保護板固定ナット175を締めて、垂直保護面17を折返フランジ112に固定させる。ボルト孔列における垂直保護板側保護板固定ボルト孔176の選択は、平坦面111の設置面からの距離=高さを調整する。これにより、作業者によって平坦面111を好ましい高さに調整できる。
昇降基礎16は、昇降用開口113の奥側を左右に跨ぐ正面視台形状の昇降面161と、前記昇降面161の左右端から後方に向けて水平に折り曲げたフランジの取付面162,162とからなる厚さ2.3mmの鋼板(熱間圧延軟鋼板)を用いた板金製部材である。昇降面161は、左右の取付面162の折り返しを除く中間部分を平坦面111の昇降用開口113から下方に突出させ、前記突出部分の左右中央から上方に向けて延びる昇降用スリット163を設けている。
昇降用スリット163は、背面側から通した支持体固定ノブ164を支持体15に締め付けさせ、前記支持体15を昇降面161に対して任意の高さで位置固定させる。本例の支持体固定ノブ164は、1つであるが、支持体15の直立姿勢を昇降用スリット163と完全に一致できるように、上下に2つ以上設けてもよい。左右一対の取付面162,162は、昇降基礎固定ボルト165及び昇降基礎固定ナット166により平坦面111に固定され、昇降面161を平坦面111に直交姿勢で立設させる。
支持体15は、厚さ2.3mmの鋼板(熱間圧延軟鋼板)を屈曲させ、平坦面111に対して直立姿勢で昇降基礎16に位置固定される連結面152と、前記連結面152の左右端縁から平坦面111に対して直立姿勢で斜め前方へ張り出す取付面151,151とからなる板金製部材である。連結面152は、正面視中央付近に背面側から前面側に向けて突出するバーリング凸部158を設け、前記バーリング凸部158に雌ネジを刻んでいる。昇降基礎16の昇降用スリット163を通して突出する支持体固定ノブネジは、前記バーリング凸部158に螺着する。バーリング凸部158は、連結面152と一体に形成されるほか、孔明けと雌ネジを刻む凸部分とを同時に形成できる利点がある。
取付面151は、それぞれ研削面12の両端に設けられた固定端122,122それぞれを上下2段の固定リベット123,123によりリベット止めし、連結面152に背面が接しないように湾曲させた研削面12を弾性変形自在に取り付けさせる。これにより、研削面12及び支持体15が一体のモジュールとなり、研削面12の交換は前記モジュール単位での交換になる。研削面12は、支持体15に対して両端が位置固定されるだけで全体の弾性変形が許容されるため、弾性変形して、回転カッタ21の外周縁に倣うことができる。図示を省略するが、リベット止めに代えて、支持体15に対して研削面12を着脱自在にするボルト及びナットの組み合わせを用いてもよい。この場合、研削面12のみを交換できるようになる。
本例の支持体15は、弾性変形する研削面12を安定して支持するため、連結面152に対して取付面151が曲がったり、撓んだりしないように、左右の取付面151,151及び連結面152の前側上縁及び下縁それぞれにわたって、厚さ2.3mmの鋼板(熱間圧延軟鋼板)からなる保形板153,153を溶接により固定している。保形板153は、図示では研削面12に接しているように見えるが、実際は研削面12と前後方向に離しており、前記研削面12の弾性変形を妨げないようにしている。
また、本例の支持体15は、研削面12に当接した回転カッタ21が上方に跳ね上がることを防止するため、取付面151,151に架け渡した研削面12上方を覆う水平保護板154を、上方の保形板153に対して位置固定している。本例の水平保護板154は、透明な厚さ3.0mmのPET樹脂板で、支持体15に倣った奥側縁と取付面151,151の先端と左右に結ぶ前縁とに囲まれた平面視台形状をしている。本例の水平保護板154は、カラー155を通して下ろした保護板固定長ネジ156を上方の保形板153に貫通させ、前記保形板153の下面側で保護板固定ナット157を締め付けて、支持体15に対して固定している。
研削面12は、焼き入れしてベイナイト化することによりビッカース硬さで370HV〜420HVとし、固定リベット123を挿通するリベット孔(図示略)を有する固定端122,122を両端それぞれに設け、前記固定端を除く前面側に粒度80のダイアモンド砥粒を電着して砥粒付着面121を形成した厚さ0.4mm、幅(上下方向の長さ)50mmの鋼板(熱間圧延軟鋼板)である。研削面12は、常態として直線状で、固定端122,122を支持体15の取付面151,151に固定することにより、弾性変形自在に湾曲する。
研削面12は、バネ鋼、ステンレス鋼、黄銅、りん青銅又はベリリウム銅等の帯板でもよい。研削面12の幅と厚みとは、回転しながら押し当てられる回転カッタ21に対抗しながら、適度な弾性変形を実現する観点から、幅が30mm〜45mmで厚さを0.5mm、幅が45mm〜60mmで厚さを0.4mm、そして幅が60mm以上であれば厚さを0.3mmにするとよい。ダイアモンド砥粒は、粒度40〜120であればよい。ダイアモンド砥粒に代えてCBN(立方晶窒化ホウ素)を使うこともできる。ダイアモンド砥粒は、電着のほか、メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンドによる接着や溶着により研削面12の前面に固着し、砥粒付着面121を構成してもよい。
摺接ガイド13は、厚さ1.6mmの鋼板(熱間圧延軟鋼板)を折り曲げ加工し、回転カッタ21の中心凸部211を摺接させるV字溝131と、前記V字溝131の左右上端縁それぞれから下ろされる支持脚132,132とを一体に形成した板金製部材である。本例の摺接ガイド13は、例えば回転カッタ21の回転軸下端(ボルト頭等)を覆う円筒状の中心凸部211の下周縁を、V字溝131の対向する斜面それぞれに左右2ヶ所で摺接させながら、前記回転カッタ21を前後動させる(後掲図10)。下方に突な円錐状の中心凸部211を有する回転カッタ21は、V字溝131の斜面角度を前記中心凸部211の側面角度に一致又は若干大きくしておくと、中心凸部211をV字溝131に摺接させやすい。
摺接ガイド13は、研削作業中、回転カッタ21の中心凸部211を押し付けるように、前後動を繰り返して摺接し続けることから、強度の高い材料で構成するか、焼き入れ(例えば浸炭窒化焼き入れによりロックウェル硬度HRC55以上)する。本例の摺接ガイド13は、V字溝131の底の稜線と、支持脚132の下縁とを等しく平坦面111に接地させ、前記平坦面111に設けられた昇降用開口113の前縁と前面側の折返フランジ112との間で、V字溝131が左右の折返フランジ112と平行に延在する向きにして、前記V字溝131の前端(手前側)及び後端(奥側)とを摺接ガイド固定ボルト133及び摺接ガイド固定ナット134により固定される。
別例の摺接ガイド14は、図8に見られるように、長さ180m×幅16mm×高さ6mmの断面角形の板材141,141(熱間圧延軟鋼材)を、左右の折返フランジ112と平行に延在する向きに揃えて左右一対並べた構成でもよい。回転カッタ21の中心凸部211は、前記板材141,141の間に嵌め込んで、前記中心凸部211を平坦面111に直接摺接させる。別例の摺接ガイド14を構成する板材141は、板材141の延在方向に直交する調整用スリット116を平坦面111に設け、前記調整用スリット116を通って下方から固定蝶ネジ受142に捩じ込まれるガイド固定蝶ネジ(図示略)により、平坦面111に位置固定される。
ガイド固定蝶ネジは、緩めることにより調整用スリット116の範囲で左右に移動させ、板材141,141を平坦面111の任意の位置へ個別に位置固定する。これにより、板材141,141の間隔や回転カッタ21を前後動させる左右方向位置を調整できる。このため、平坦面111に板材141の位置固定する平坦面111上の位置を確認できる調整用目盛117を設けている。また、前側の折返フランジ112は、ガイド固定蝶ネジを締めたり、緩めたりする際に作業者が手を入れやすいように、平坦面111と設置面との間隔を拡げる切欠部115を設けている。
本例の回転カッタ研削装置1を用いて、草刈り機2に装着したままの回転カッタ21の刃212を研削する手順を説明する。回転カッタ21は、草刈り機2のロッド先端に装着したまま、図9〜図11に見られるように、回転面を平坦面111と平行にして回転軸下端にある中心凸部211を摺接ガイド13のV字溝131の範囲に載せる。このとき、回転カッタ21の回転面が平坦面111に少し傾いていたり、回転カッタ21の中心凸部211がV字溝131の中心から少しずれていたりしても構わない。研削面12は、予め高さを調整しておき、回転カッタ21が研削面12の幅(高さ)の範囲に収まるようにする。
回転カッタ21は、回転させずに中心凸部211を摺接ガイド13に載せても、回転させたまま載せても構わない。本例では、摺接ガイド13に中心凸部211を載せた状態で回転カッタ21の一部が水平保護板154に少しかかっていることから、回転カッタ21は斜め上方から平坦面111及び水平保護板154の間に差し込むように、中心凸部211を摺接ガイド13に載せることになる。これから、安全上、回転カッタ21は回転を止めた状態で中心凸部211を摺接ガイド13に載せることが望ましい。
こうして摺接ガイド13に中心凸部211を載せた回転カッタ21は、回転を開始させてから草刈り機2ごと前進させる。これにより、図12及び図13に見られるように、回転する回転カッタ21が研削面12に押し付けられ、前面の砥粒付着面121に接触する複数の刃212の逃げ面213周縁、特に逃げ面213の前縁である切り刃214(図14参照)が研削される。刃212は、回転カッタ21の回転に従って、外周縁の周方向1/3の範囲で砥粒付着面121に摺接しながら次々と入れ替わるため、個々の研削時間が短く、一般的な外径255mm、刃数が40の回転カッタ21の場合、30秒程度で研削を終える。回転カッタ21は、前後動を繰り返し、研削面12に断続的に押し当ててもよい。
研削面12は、回転カッタ21の厚みに比べて十分な幅(高さ)があるから、摺接ガイド13に従って前進する回転カッタ21が研削面12の中段付近に押し当てられる限り、回転カッタ21が多少傾いても、研削面12の範囲から外れることはなく、刃212は必ず砥粒付着面121に摺接する。また、研削面12は、弾性変形自在であるから、回転カッタ21が斜めに押し付けられたり、また傾いて押し付けられたりしても、回転カッタ21の外周縁に倣って弾性変形することにより、多数の刃212を砥粒付着面121に均等に押し付けることができるため、研削の程度に差が生じない。
研削面12は、回転カッタ21が斜めや傾いて押し付けられても、概ね研削に利用される幅方向(高さ方向)の部分が特定されるため、何度も研削作業を繰り返すと、砥粒付着面121の一部のダイアモンド砥粒のみが少なく又はなくなり、刃212を研削できなくなる虞がある。そこで、時折、昇降基礎16に対する支持体15の位置固定する高さを変更することにより、研削面12の高さを変えて、回転カッタ21が押し当てられる部位を変更するとよい。これにより、研削面12の寿命を延ばすことができる。そして、こうした研削面12の高さ調整によっても研削しづらくなったら、研削面12及び支持体15が一体になったモジュールごと交換する。支持体15に対して研削面12のみが交換可能であれば、研削面12のみを交換してもよい。