<重合体>
本発明の正極に用いる重合体は、複数のペンダント基が主鎖に結合した分子構造を有しており、前記ペンダント基は、カルボキシル基、スルホン酸基またはそれらの塩より選択される官能基と、前記官能基と主鎖との間に介在する基とで構成されている。
前記ペンダント基に係るカルボキシル基およびスルホン酸基の塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。金属塩の場合、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩(1価の金属塩)でもよく、2価以上の価数の金属塩であってもよい。2価の金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩が例示される。なお、前記ペンダント基に係るカルボキシル基およびスルホン酸基の塩が2価以上の金属塩の場合には、前記重合体の分子内で複数のペンダント基を含む環構造が形成されたり、前記重合体の分子間で複数のペンダント基による架橋構造が形成されたりする。
前記ペンダント基に係る前記官能基と主鎖との間に介在する基は、炭化水素基(炭化水素鎖)で構成されているか、パーフルオロカーボン基(炭化水素基における水素の全てがフッ素で置換された基)で構成されているか、炭化水素基(炭化水素鎖)と、エステル基(エステル結合)、アミド基(アミド結合)およびカーボネート基(カーボネート結合)のうちのいずれかの基との組み合わせで構成されているか、またはパーフルオロカーボン基と、エステル基、アミド基およびカーボネート基のうちのいずれかの基との組み合わせで構成されている。これらの基は、エーテル基(エーテル結合)などと比べて酸化分解し難いことから、前記重合体の耐酸化性が良好となる。
前記ペンダント基に係る前記官能基と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基と、エステル基、アミド基およびカーボネート基のうちのいずれかの基との組み合わせである場合の、より具体的な構造としては、例えば、前記官能基が炭化水素基と結合しており、この炭化水素基が、エステル基、アミド基またはカーボネート基を介して主鎖と結合している構造が挙げられる。また、前記ペンダント基に係る前記官能基と主鎖との間に介在する基が、パーフルオロカーボン基と、エステル基、アミド基およびカーボネート基のうちのいずれかの基との組み合わせである場合の、より具体的な構造としては、例えば、前記官能基がパーフルオロカーボン基と結合しており、このパーフルオロカーボン基が、エステル基、アミド基またはカーボネート基を介して主鎖と結合している構造が挙げられる。
前記ペンダント基に係る前記官能基と主鎖との間に介在する炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐状のアルキレン基(アルキレン鎖)が挙げられる。後述するように、前記の炭化水素基(例えば、直鎖状または分岐状のアルキレン基)は、前記官能基に対し、そのα位またはβ位の水素の少なくとも一部がフッ素で置換されている必要がある。炭化水素基における炭素数は、例えば、1〜20であることが好ましい。
すなわち、前記ペンダント基に係る前記官能基がカルボキシル基またはその塩である場合、カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素は、前記ペンダント基中の炭化水素基またはパーフルオロカーボン基の有する炭素と直接結合している。そして、前記カルボニル炭素と結合する基が、前記炭化水素基である場合、前記カルボニル炭素のα位にのみ炭素を有する構造であれば、α位の炭素に結合する水素のうち少なくとも1つはフッ素に置換されていることが必要であり、また、前記カルボニル炭素のα位とβ位のどちらにも炭素を有する構造であれば、α位とβ位の少なくとも一方の炭素に結合する水素のうち少なくとも1つはフッ素に置換されていることが必要である。
また、前記カルボニル炭素と結合する基が、パーフルオロカーボン基である場合には、前記の通り、カルボニル炭素が、前記パーフルオロカーボン基の有する炭素と直接結合しているため、カルボニル炭素のα位に位置する炭素には、2つのフッ素が結合していることになる。
前記ペンダント基において、カルボキシル基またはその塩のカルボニル炭素のα位またはβ位の炭素に、電子吸引性の強いフッ素が結合していることで、カルボキシル基またはその塩の有する酸素上の電子密度が低くなるため、水素(カルボキシル基の場合)や対イオン(カルボキシル基の塩の場合)が解離しやすくなる。よって、本発明の正極に用いられる重合体は、有機溶媒中においても、良好なイオン解離性を示すものとなる。
なお、前記ペンダント基に係る前記官能基がスルホン酸基またはその塩である場合、官能基におけるイオウ元素についても、前述したカルボニル炭素と同様に考えることができるので、詳細な説明は省略する。
前記官能基がカルボキシル基の塩(−COOM)である場合、および、スルホン酸基の塩(−SO3M)である場合、Mは金属またはアンモニウムである。また、金属である場合のMとしては、前記の通り、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属(1価の金属);マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属(2価の金属)、あるいはそれ以上の価数の金属;が挙げられる。
また、前記官能基と結合する構造部分は、例えば、−(CF2)n−で表される炭化水素基(パーフルオロカーボン基)であることが好ましい。前記炭化水素基において、nは1〜20の整数である。
前記ペンダント基が前記構造部分を含む場合、前記ペンダント基は、前記官能基と前記構造部分のみで構成された、−(CF2)n−R(ただし、Rは、−COOM、または、−SO3M)で表される構造であってもよく、−(CF2)n−Rが、さらにエステル基やアミド基やカーボネート基と結合した構造となっていてもよい。
また、1つのペンダント基が、前記構造部分を複数含有していてもよい。具体的には、例えば、前記ペンダント基が、前記構造部分とは別に炭化水素基(例えばアルキレン基)を有する分岐構造を有しており、この分岐した炭化水素基に、−(CF2)n−Rが複数結合した構造となっていてもよい。
本発明の重合体は、前記ペンダント基を分子内に複数含有して構成されており、それぞれのペンダント基は、同一であってもよく、また異なるものであってもよい。
前記重合体の主鎖は、前記重合体の耐酸化性を高める観点から、炭化水素基のみで構成されているか、パーフルオロカーボン基のみで構成されているか、炭化水素基と、エステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されているか、またはパーフルオロカーボン基と、エステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されていることが好ましい。主鎖を構成する炭化水素基としては、例えば、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基(アルキレン基の有する水素の一部が、フッ素で置換されていてもよい)が好ましく、主鎖を構成するパーフルオロカーボン基としては、例えば、直鎖状もしくは分岐状のパーフルオロアルキレン基(アルキレン基の有する水素のうち、前記ペンダント基で置換されている部分を除く全部がフッ素で置換された基)が好ましく、前記重合体のコスト低減や特定の用途で求められる特性(例えば、後述する二次電池内での正極活物質への吸着性)向上の観点からは、フッ素で置換されていない炭化水素基(特に、直鎖状または分岐状のアルキレン基)であることが更に好ましい。
また、前記重合体には、種々の特性を付与するために、前記ペンダント基以外の基を含有させることもできる。例えば、溶媒への溶解性、他の重合体との相溶性、他の物質などへの吸着性、電解質(例えば二次電池に使用される電解質)中での耐分解性、ガス発生特性などを改善し得る基を含有させてもよい。
本発明の重合体の分子量については特に制限はなく、重合体が適用される用途に応じた分子量であればよい。
例えば、本発明に用いる重合体は、耐酸化性に優れると共に、有機溶媒中でのイオン解離性に優れている。このため、電解質溶媒(有機溶媒)中では、イオン解離することで、電解質塩として機能させることもでき、電解質のイオン伝導度の向上に寄与することができる。
そのような用途の場合は、電解質溶媒への溶解性やイオン移動度の点から、重合体の分子量はあまり高すぎないことが好ましく、重合体の数平均分子量が、200以上であることが好ましく、また、50万以下であることが好ましく、1万以下であることがより好ましい。
一方、前記重合体は、正極で、活物質粒子の表面あるいは粒子間に存在させた場合に、活物質の表面保護材として、あるいは非水電解液をゲル化させるポリマー材料として機能させることができる。
前記重合体が活物質の表面保護材として効果を発現する機構は以下のように推測される。すなわち、特定のペンダント基を含有する分子構造を持つ前記重合体は、点状に活物質表面に結着するゴム系のバインダとは異なり、正極内で活物質の粒子表面を広く覆うことが可能である。そのため、特に高電圧においてより大きな問題となる、活物質の活性点による電解液溶媒や電解質塩などの分解・変性などを防ぐことができる。
また、非水電解液をゲル化させるポリマー材料として効果を発現する機構は以下のように推測される。すなわち、粒子間に存在する前記重合体は、非水電解液をゲル化させ正極内部に保持することができるので、電解液の液枯れが生じ難くなり正極の充放電機能の低下が抑制される。
さらに、NiおよびCoより選択される少なくとも1種の元素と、Mg、Mn、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、MoおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含むリチウム複合酸化物であって、リチウムおよび酸素を除く構成元素中、NiおよびCoの合計量が60〜99.7mol%である複合酸化物は、LiCoO2などの複合酸化物と比べ、結晶構造の安定性や耐電圧性に優れ、充放電サイクルに伴う粒子の微細化や構成元素の溶出が抑制されるため、前記重合体に被覆されない新たな表面の生成や溶出した元素により、前記重合体の機能が低下するのを防ぐことができる。
前記の課題および本発明の前記効果は、電池の充電電圧が4.3V以上となったときに生じやすくなり、4.35V以上でより明確となり、4.4V以上でさらに明確となる。
前記重合体を正極に用いる場合には、電解質溶媒への溶解を防ぐため、電解質塩として機能させる場合とは異なり、むしろ重合体の分子量は高い方が好ましく、具体的には、重合体の数平均分子量が、500以上であることが好ましく、1万以上であることがより好ましく、3万以上であることが更に好ましく、また、500万以下であることが好ましい。
本明細書でいう前記重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される数平均分子量(ポリスチレン換算値)である。
本発明の重合体に導入するペンダント基の量は、主鎖を構成する単量体に対して5モル%以上であることが好ましく、また、10モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましい。前記重合体におけるペンダント基の導入量の上限については特に制限はなく、用いる溶媒への溶解性、合成の容易さや立体障害などによる制約、コストなどに応じて選択すればよい。通常の単量体1個あたりにペンダント基1個が導入可能な場合には、主鎖を構成する単量体に対してペンダント基100モル%が上限であるが、単量体の分子構造によっては単量体1個あたりにペンダント基複数個が導入可能な場合があり、その場合は主鎖を構成する単量体に対するペンダント基導入量の上限値は100モル%以上となる。
本明細書でいう前記重合体へのペンダント基の導入量は、プロトンおよびフッ素19核磁気共鳴分光法(NMR)測定から得られる各元素の比率から求められる、主鎖を構成する単量体に対するペンダント基のモル比である。
本発明に用いる重合体の製造方法については特に制限はなく、いずれの方法を採用してもよい。ペンダント基の官能基がカルボキシル基である場合の代表的な製造方法としては、ポリビニルアルコールの水酸基にフッ素化二カルボン酸無水物を反応させる方法;ポリ酢酸ビニルのアセチル基とフッ素化二カルボン酸とでエステル交換する方法;ポリエチレンイミンのアミノ基にフッ素化二カルボン酸無水物を反応させる方法;などが挙げられる。また、このような方法で主鎖に導入したペンダント基のカルボキシル基に、対イオンとなる金属やアンモニウムを含む水酸化物や炭酸塩などの弱酸の塩などを反応させることで、カルボキシル基の塩を含有するペンダント基を有する重合体を得ることができる。また、予めフッ素化カルボン酸やその塩を含有するペンダント基を有するモノマーを用意し、これを重合することで本発明の重合体を製造することもできる。
また、ペンダント基の官能基がスルホン酸基である場合の、重合体の代表的な製造方法としては、ポリビニルアルコールの水酸基にフッ素化二スルホン酸無水物を反応させる方法;ポリ酢酸ビニルのアセチル基とフッ素化二スルホン酸とでエステル交換する方法;ポリエチレンイミンのアミノ基にフッ素化二スルホン酸無水物を反応させる方法;などが挙げられる。また、このような方法で主鎖に導入したペンダント基のスルホン酸基に、対イオンとなる金属やアンモニウムを含む水酸化物や炭酸塩などの弱酸の塩などを反応させることで、スルホン酸基の塩を含有するペンダント基を有する重合体を得ることができる。また、予めフッ素化スルホン酸やその塩を含有するペンダント基を有するモノマーを用意し、これを重合することで本発明の重合体を製造することもできる。
また、カップリング剤を併用して、前記重合体を活物質表面に化学的に結合させることも効果的である。非水二次電池内での前記特定の重合体の活物質表面からの脱離が抑えられることから、この重合体による電解質成分の分解抑制作用を良好に発揮させることが可能となる。
前記カップリング剤は、正極活物質の表面に、前記重合体を固定する機能を有する物質である。カップリング剤の具体例としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられるが、これらと同様の機能を有する物質であれば、本発明において使用可能である。
例えば、カップリング剤としてシランカップリング剤を使用した場合、このシランカップリング剤、前記重合体および活物質などを含み、これらが溶媒に分散または溶解しているスラリー状やペースト状の合剤層形成用組成物を、集電体に塗布し、乾燥するなどして合剤層を形成する過程で、シランカップリング剤の有するアルコキシ基が外れ、シラノール基が活物質表面へ吸着して結合を形成し、また、シランカップリング剤の有するシラノール基同士の結合による架橋形成も生じるなどして、シランカップリング剤が活物質表面に固定される。
また、カップリング剤は、アルコキシ基とは別に反応性の官能基を有しており、合剤層形成用組成物の集電体への塗布、乾燥するなどして合剤層を形成する過程で、前記重合体の有する官能基と反応することによって結合を形成できる。これにより、前記重合体が、カップリング剤由来の鎖を介して活物質表面に固定されるため、前記重合体による電解質成分の分解反応抑制作用が良好に発揮される。
カップリング剤に含まれる反応性の官能基としては、前記重合体の何れかの部位と反応し得るものであればよく、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、酸無水物基などが好ましい。特に、正極においては、耐酸化性が要求されるため、前記例示の反応性の官能基の中でも、前記重合体との反応によって耐酸化性が良好なエステル基(エステル結合)を形成することのできるエポキシ基や酸無水物基がより好ましい。
カップリング剤の使用量の好適な上限値は、カップリング剤由来の皮膜が活物質表面に均一に形成されたと仮定した場合に得られる前記皮膜の厚みを基準として判断することができる。すなわち、前記の仮定の下では、カップリング剤の使用量(g)は、「活物質量(g)×{カップリング剤由来の皮膜の厚み(nm)×10−7}×{活物質の比表面積(m2/g)×104]}×カップリング剤の密度(g/cm3)」を計算することで求められるが、具体的な使用量は、前記式における「カップリング剤由来の皮膜の厚み」が50nm以下となる量であることが好ましく、30nm以下となる量であることがより好ましく、10nm以下となる量であることが更に好ましい。これより膜厚が大きくなる量でカップリング剤を使用すると、活物質表面の前記重合体の量が多くなりすぎ、それが抵抗成分となって電池特性の低下を引き起こす虞がある。
また、カップリング剤の使用量の好適な下限値は、カップリング剤由来の単分子層が活物質表面に均一に形成されたと仮定した場合のカップリング剤の必要量を基準として判断することができる。すなわち、前記仮定の下では、単分子層形成に必要なカップリング剤の量(g)は、「活物質量(g)×{活物質の比表面積(m2/g)×104}÷カップリング剤の最小被覆面積(m2/g)」を計算することで求められるが、具体的な使用量は、前記式で求められるカップリング剤の必要量の、1/100以上であることが好ましく、1/30以上であることがより好ましく、1/10以上であることが更に好ましい。これより少ない量でカップリング剤を使用すると、前記重合体を活物質表面に固定する作用が小さくなる虞がある。
なお、カップリング剤の最小被覆面積は、カップリング剤のメーカーから提示されており、前記の使用量の検討に際しては、これらの値を用いればよい。
本発明の非水二次電池に係る正極に前記重合体およびカップリング剤を使用する場合には、正極合剤層を形成するための前記正極合剤層形成用組成物に、前記重合体およびカップリング剤も含有させ、前記の手法によって正極合剤層を形成すればよい。
また、本発明の二次電池に係る負極に前記重合体およびカップリング剤を使用する場合には、負極合剤層を形成するための前記負極合剤層形成用組成物に、前記重合体およびカップリング剤も含有させ、前記の手法によって負極合剤層を形成すればよい。
<正極>
本発明に用いる重合体は、正極の中で、正極活物質の粒子表面あるいは粒子間に存在させればよい。
負極においては、エチレンカーボネートなどの電解質溶媒やビニレンカーボネートなどの添加剤を含有する電解質を用いることにより、前記添加剤の還元分解によって負極表面に保護皮膜として作用する固体電解質界面(SEI)層が形成され、負極と電解質との接触による電解質成分の分解反応を抑制できることが知られている。
一方、前記重合体は、正極活物質の表面に存在していることで、非水電解質と正極活物質との接触を抑制して、前記SEI層と同様に電解質成分の分解反応を抑える効果が期待できる。すなわち、前記重合体はイオン解離性が高いため、正極活物質の表面に存在していてもイオンの挿入、脱離を阻害しない一方で、電子は透過しないと考えられるため、電解質成分の酸化分解を抑制できると推測される。
前記重合体を正極活物質の保護材とする場合、負極表面のSEI層とは異なり、電池内で、添加剤を分解、重合させて形成する必要がない。前記重合体を正極活物質表面に予め存在させておいたり、前記重合体を電解質中に含有させておき、正極内に電解質を含浸させる際に、正極活物質の表面に前記重合体を吸着させて保護材としたり、前記重合体を溶解させた溶媒と、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する組成物により正極の合剤層を形成するなどの方法を用いることができる。
また、前記重合体を、非水電解液をゲル化させるポリマー材料として機能させる場合は、正極活物質と前記重合体とを混合し、前記重合体を正極活物質の粒子間に存在させるなどの方法を用いることができる。
なお、前記重合体を正極に用いる場合、特に、電池が4.3V以上の高電圧で充電される場合には、微細化による新たな表面の生成が少なく、構成元素の溶出が少なく、また高電圧でも安定に作動する正極活物質を選択する必要がある。
そのような正極活物質として、層状の結晶構造を有し、NiおよびCoより選択される少なくとも1種の元素と、Mg、Mn、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、MoおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含むリチウム複合酸化物であって、リチウムおよび酸素を除く構成元素中、NiおよびCoの合計量が60〜99.7mol%である複合酸化物が好ましく用いられる。
前記構成のリチウム複合酸化物の中でも、一般式Li1+xCo1−a−bNiaM1 bO2(ただし、−0.1≦x≦0.1、0≦a≦0.07、0.003≦b≦0.05であり、0.005≦b≦0.02であることが好ましく、M1は、Li、NiおよびCo以外の元素または元素群であって、Mg、Mn、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、MoおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む)で表される複合酸化物や、一般式Li1+sNi1−y−z−tCoyMnzM2 tO2(ただし、−0.1≦s≦0.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0.003≦z+t≦0.4であり、M2は、Li、Ni、CoおよびMn以外の元素または元素群であって、Mg、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、MoおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む)で表される複合酸化物が好ましく用いられる。
前記リチウム複合酸化物の割合は、正極活物質の総量中で30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、正極活物質の全量が前記リチウム複合酸化物であるのが最も好ましい。
一方、高温での安全性向上などの点から、他の活物質をさらに含有させることも可能である。前記リチウム複合酸化物以外の正極活物質としては、スピネル構造の複合酸化物〔LiMn(2−x)MxO4(0≦x<0.5、M:Co、Ni、Fe、Al、Mgなど)など〕、オリビン構造の複合化合物〔LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Feなど)など〕などを例示することができる。
本発明の正極には、例えば、前記正極活物質、前記重合体、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用される
正極合剤層に係るバインダには、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが好適に用いられる。また、正極合剤層に係る導電助剤としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などの黒鉛(黒鉛質炭素材料);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカ−ボンブラック;炭素繊維;などの炭素材料などが挙げられる。
正極の集電体は、従来から知られている非水二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚みが5〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
正極は、例えば、正極活物質、バインダおよび導電助剤などを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。ただし、正極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
前記重合体を、正極活物質の粒子表面または粒子間に配置するには、例えば、前記の正極合剤含有組成物の溶媒に前記重合体を溶解あるいは分散させるなどして、前記重合体も含有する正極合剤含有組成物を調製し、これを用いて前記の方法により正極合剤層を形成すればよい。
あるいは、予め正極活物質表面に前記重合体を付着させておき、前記重合体を溶解しない溶媒を用いて正極合剤含有組成物を調製し、これを用いて前記の方法により正極合剤層を形成するのであってもよく、また、非水電解液に前記重合体を溶解させ、その電解液を正極合剤層に含浸させて、前記重合体を正極活物質表面に吸着させるのであってもよい。
このような手法によって非水二次電池の正極活物質の粒子表面または粒子間に前記重合体を存在させる場合、前記重合体の量は、前記重合体による作用をより良好に確保する観点から、正極活物質100質量部に対して、0.002質量部以上とすることが好ましく、0.01質量部以上とすることがより好ましい。
ただし、非水二次電池内の前記重合体の量が多すぎると、コストを増大させて電池の生産性低下を引き起こしたり、イオン伝導度の低下や内部抵抗の増大を引き起こして電池特性を低下させたりする虞がある。よって、前記重合体の量は、正極活物質100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、5質量部以下とすることがより好ましい。
<非水二次電池>
本発明の非水二次電池は、前述した本発明の正極、負極、セパレータおよび非水電解質を用いて構成される。
非水二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
また、正極には、必要に応じて、非水二次電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
正極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質の量が60〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜15質量%であることが好ましく、導電助剤の量が3〜20質量%であることが好ましい。
非水二次電池の負極には、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤を含有する負極合剤からなる負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものや、負極活物質からなる箔で構成されたものなどが使用できる。
負極活物質には、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素を含む単体、化合物およびその合金、リチウム含有窒化物またはリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金、更にはLi4Ti5O12で表されるようなTi酸化物も負極活物質として用いることができる。
また、負極のバインダおよび導電助剤には、正極に使用し得るものとして先に例示したものと同じものが使用できる。
負極に集電体を使用する場合、その集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は5μmであることが望ましい。
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて使用される導電助剤を、NMPや水などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。また、負極活物質が前記の各種合金やリチウム金属など場合には、それらの箔を単独、もしくは集電体上に負極剤層として積層して、負極とすることもできる。ただし、負極は、これらの製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
また、負極には、必要に応じて、非水二次電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
負極合剤層を有する負極の場合、負極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、負極合剤層の組成としては、例えば、負極活物質を80.0〜99.8質量%とし、バインダを0.1〜10質量%とすることが好ましい。更に、負極合剤層に導電助剤を含有させる場合には、負極合剤層における導電助剤の量を0.1〜10質量%とすることが好ましい。
非水二次電池のセパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステルなどのポリエステル;などで構成された多孔質膜であることが好ましい。セパレータは、100〜140℃において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましい。そのため、セパレータは、融点、すなわち、日本工業規格(JIS)K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100〜140℃の熱可塑性樹脂を成分とするものがより好ましく、ポリエチレンを主成分とする単層の多孔質膜であるか、ポリエチレン層とポリプロピレン層とを2〜5層積層した積層多孔質膜であることが好ましい。ポリエチレンとポリプロピレンなどのポリエチレンより融点の高い樹脂を混合または積層して用いる場合には、多孔質膜を構成する樹脂としてポリエチレンが30質量%以上であることが望ましく、50質量%以上であることがより望ましい。
このような樹脂多孔質膜としては、例えば、従来から知られている非水二次電池などで使用されている前記例示の熱可塑性樹脂で構成された多孔質膜、すなわち、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸法などにより作製されたイオン透過性の多孔質膜を用いることができる。
前記の正極と前記の負極とは、前記のセパレータを介して重ね合せて構成した積層体(積層電極体)や、更にこの積層体を渦巻状に巻回した巻回電極体として、非水二次電池に使用される。
非水二次電池の電解質には、電解質塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンスルトンなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、これらの2種以上を併用してもよい。また、アミンイミド系有機溶媒や、含イオウまたは含フッ素系有機溶媒なども用いることができる。
非水電解液に係る電解質塩としては、リチウムの過塩素酸塩、有機ホウ素リチウム塩、トリフロロメタンスルホン酸塩などの含フッ素化合物の塩、またはイミド塩などが好適に用いられる。このような電解質塩の具体例としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li2CnF2n(SO3)2(1≦n≦8)、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCnF2n+1SO3(2≦n≦8)、LiN(Rf3OSO2)2〔ここで、Rfはフルオロアルキル基を表す。〕、LiCnF2n+1CO2(2≦n≦17)、Li2CnF2n(CO2)2(1≦n≦8)、などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、これらの2種以上を併用してもよい。これらの中でも、LiPF6やLiBF4などが、充放電特性が良好なことからより好ましい。これらの含フッ素有機リチウム塩はアニオン性が大きく、かつイオン分離しやすいので前記溶媒に溶解しやすいからである。非水電解液中における電解質塩の濃度は特に限定されないが、通常0.5〜1.7mol/Lである。
また、電池の安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンスルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を、非水電解液に適宜加えることもできる。
また、非水電解液には、公知のゲル化剤を添加してゲル状としたもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
非水二次電池において、前記重合体を非水電解液に溶解させる場合、前記重合体の使用による作用(正極活物質表面に吸着することによる保護作用や、非水電解液のイオン伝導度向上作用)をより良好に発揮させる観点から、非水電解液における前記重合体の濃度を、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.1質量%以上とすることがより好ましい。ただし、非水電解液中における前記重合体の量が多すぎると、非水電解液の粘度が上昇してイオン伝導性が低下する虞がある。よって、非水電解液における前記重合体の濃度は、20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましく、5質量%以下とすることが更に好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
磁性攪拌器、加熱油浴、滴下装置、冷却管および窒素導入口を備えた100mLの三つ口反応フラスコに、ポリビニルアルコール(クラレ社製「PVA203」)0.39g、およびジメチルアセトアミド(和光純薬工業社製)20mLを入れ、攪拌しながら油浴を100℃に加熱してポリビニルアルコールを溶解した。油浴を外して室温まで放冷した三つ口反応フラスコ内に、ピリジン4mLにヘキサフルオログルタル酸無水物3.1gを混合した溶液を滴下し、滴下終了後1時間撹拌を継続した。その後、三つ口反応フラスコ内に水70μLを加えて20分攪拌し、更に水酸化リチウム1水和物0.76gを加えて溶解した後、1N水酸化リチウム水溶液を当量まで加えた。
このようにして得られた三つ口反応フラスコ内の溶液をテトラヒドロフラン(和光純薬工業社製)300mLに滴下して沈殿させ、回収した沈殿をテトラヒドロフランで洗浄後エタノール10mLを加えて溶解し、沈殿化を繰り返した。最終的に得られた沈殿を水に溶解した後凍結乾燥して本発明の重合体を得た。収率は40%であった。
得られた重合体は、主鎖がポリビニルアルコールの主鎖由来のものであり、また、主鎖につながるエステル基と、前記エステル基と結合した−(CF2)3−COOLiで表される構造とを持つペンダント基を有するものである。更に、重合体に導入されたペンダント基の量は、主鎖を構成するビニルアルコール単位に対して約55モル%であった。また、前記重合体の数平均分子量は、約5万であった。
正極活物質である層状リチウム複合酸化物:LiCo0.994Mg0.005Ti0.001O2:47質量部、導電助剤であるカーボン:1質量部、バインダであるPVDF:2質量部、および前記重合体:0.05質量部を、NMPを溶媒として混合して正極合剤層形成用組成物を調製した。この正極合剤層形成用組成物を、厚みが15μmのアルミニウム箔の片面に、アルミニウム箔の露出部が一部に残るように塗布し、乾燥およびカレンダー処理を行い、更に120℃で一晩の真空加熱処理を行って、厚みが20〜25μmの正極合剤層を有する正極を得た。この正極を、所定のサイズに切断した後に、正極合剤層の一部をNMPにより除去して集電体の露出部を形成して、正極合剤層が存在する部分のサイズを25×40mmとし、更にその露出部にタブを取り付けた。
次に、集電体である銅箔の片面に、黒鉛およびバインダ(SBRおよびCMC)を含有する負極合剤層を27×42mmのサイズで形成した負極と、前記の正極を、セパレータ(厚みが18μmのPE製多孔質膜)を介して重ねて積層電極体とした。そして、前記の積層電極体を2枚のラミネートフィルムで挟んで、両ラミネートフィルムの3辺を熱封止し、両ラミネートフィルムの残りの1辺から非水電解液(エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジメチルカーボネートとの1:1:1の混合溶媒に、LiPF6を溶解させた溶液)を注入した。その後、両ラミネートフィルムの前記残りの1辺を真空熱封止して、図1に示す外観で、図2に示す断面構造の非水二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
ここで、図1および図2について説明すると、図1は非水二次電池を模式的に表す平面図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。非水二次電池1は、2枚のラミネートフィルムで構成したラミネートフィルム外装体2内に、正極5と負極6とをセパレータ7を介して積層して構成した積層電極体と、非水電解液(図示しない)とを収容しており、ラミネートフィルム外装体2は、その外周部において、上下のラミネートフィルムを熱融着することにより封止されている。なお、図2では、図面が煩雑になることを避けるために、ラミネートフィルム外装体2を構成している各層、並びに正極5および負極6の各層を区別して示していない。
正極5は、電池1内でリード体を介して正極外部端子3と接続しており、また、図示していないが、負極6も、電池1内でリード体を介して負極外部端子4と接続している。そして、正極外部端子3および負極外部端子4は、外部の機器などと接続可能なように、片端側がラミネートフィルム外装体2の外側に引き出されている。
比較例1
前記重合体を添加しなかった以外は実施例1と同様にして調製した正極合剤層形成用組成物を使用し、実施例1と同様にして正極を作製した。そして、この正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
比較例2
前記正極活物質としてLiCoO2を用いた以外は実施例1と同様にして調製した正極合剤層形成用組成物を使用し、実施例1と同様にして正極を作製した。そして、この正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
実施例1、比較例1および比較例2の非水二次電池について、以下の方法で充放電サイクル特性を評価した。各電池を15mAの電流値で4.4Vまで充電し、更に4.4Vの定電圧で充電する定電流−定電圧充電(総充電時間1時間)を行い、その後15mAの電流値で3.0Vまで放電する一連の操作を1サイクルとして、これらを400サイクル繰り返し、各サイクルでの放電容量を1サイクル目の放電容量で除した値を百分率で表して、各サイクルでの容量維持率を算出した。これらの結果を図3に示す。
図1から明らかなように、特定の元素を含有する層状リチウム複合酸化物を正極活物質とし、前記正極活物質と前記重合体を共存させた正極合剤含有組成物を用いて正極を作製した実施例1の非水二次電池は、正極活物質の表面あるいは活物質粒子間に前記重合体が存在することにより、正極活物質の表面保護あるいは正極内での電解液保持が良好に行われ、前記重合体を含有しない正極を用いた比較例1の電池や、特定の元素を含有しないLiCoO2を正極活物質として用いた比較例2の電池に比べ、充放電サイクル後の容量維持率が高く、充放電特性に優れた電池とすることができた。