本発明に係るタッチパネルの実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るタッチパネル5は、携帯電話や携帯ゲーム機等の電子機器1に備えられ、タッチ入力デバイスとして機能する。本実施形態では、電子機器1の一種としての多機能携帯電話(スマートフォン)に搭載された、静電容量方式のタッチパネル5を例として説明する。なお、以下の説明では、タッチパネル5の入力面(後述する操作面26a)が位置している側を「正面側」と称する。この「正面側」は、電子機器1を操作するユーザーに対して正対する側でもある。これとは反対に、電子機器1を操作するユーザーから見た場合における奥側を「背面側」と称する。
図1及び図2に示すように、電子機器1は、略直方体状の筐体3と、この筐体3に内蔵された表示装置4と、表示装置4に対して正面側に重ねて配置されたタッチパネル5とを備えている。筐体3は、合成樹脂で構成されている。筐体3は、正面側に向かって矩形状に開口する凹部3aを備えている。凹部3aは段差を有するように形成されており、この段差部分は、タッチパネル5を背面側から支持する支持部3bとして機能する。支持部3bは、凹部3aの形状に対応して、矩形枠状(額縁状)に形成されている。支持部3b(段差部分)よりも背面側の領域(第一収納凹部)には表示装置4が収納され、正面側の領域(第二収納凹部)には、支持部3bによって支持された状態でタッチパネル5が収納されている。なお、表示装置4は、例えば液晶表示パネルや有機EL表示パネルにより構成される。
凹部3a(第一収納凹部及び第二収納凹部)の形状及び寸法は、表示装置4やタッチパネル5の形状及び寸法に応じて適宜設定することができる。本実施形態では、一例として、表示装置4及びタッチパネル5はいずれも略直方体状の形状を有しており、平面視(正面側から見た状態)での寸法は表示装置4よりもタッチパネル5の方が大きい。そして、凹部3aは、第一収納凹部の側面と表示装置4の側面とが接するとともに第二収納凹部の側面とタッチパネル5の側面とが接し、かつ、表示装置4の表面と支持部3bの表面とが略同じ高さとなるともに筐体3の表面とタッチパネル5の表面とが略同じ高さとなるように形成されている。
本実施形態では、タッチパネル5は、ユーザーが指又はスタイラス等で操作面26aをタッチしたときに、操作面26a上の押圧位置に加えて、操作面26aに対する押圧力の大きさをも同時に検出するように構成されている。すなわち、本実施形態に係るタッチパネル5は、感圧機能付きタッチパネルとして構成されている。
図3に示すように、タッチパネル5は、第一電極形成部材10と、第二電極形成部材20と、感圧層30とを備えている。また、本実施形態に係るタッチパネル5は、保護層40をさらに備えている。第一電極形成部材10、感圧層30、及び保護層40は、背面側から正面側に向かって記載の順に積層されている(図5を参照)。第一電極形成部材10の上に感圧層30が配置され、感圧層30の上に保護層40が配置されている。また、第二電極形成部材20は、保護層40に対して正面側に、所定間隔を隔てて配置されている。
また、本実施形態では、第一電極形成部材10及び第二電極形成部材20は、いずれも矩形状に形成されており、平面視で重なるように配置されている。そして、当該矩形状を形成する4辺のうちの1辺に沿った方向を、本実施形態では「X軸方向」と定義し、その1辺に交差(本例では直交)する他の1辺に沿った方向を、本実施形態では「Y軸方向」と定義する。本実施形態では、互いに直交するX軸方向とY軸方向とに基づいて、X−Y座標系(X−Y直交座標系)が構成されている。本実施形態では、X軸方向が本発明における「第一方向」に相当し、Y軸方向が本発明における「第二方向」に相当する。なお、非直角に互いに交差するX軸方向とY軸方向とに基づいて、X−Y座標系が構成されても良い。また、本実施形態では、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向を「Z軸方向」と定義する。このZ軸方向は、タッチパネル5を構成する各部材の積層方向(厚み方向)でもある。
図3に示すように、第一電極形成部材10は、第一基板12と、この第一基板12上に形成された複数(本例では8本)の第一電極14とを有する。第一基板12は、透明性、柔軟性、及び絶縁性等に優れた材料を用いて構成されていることが好ましい。このような要求を満足する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやアクリル系樹脂等の汎用樹脂、ポリアセタール系樹脂やポリカーボネート系樹脂等の汎用エンジニアリング樹脂、ポリスルホン系樹脂やポリフェニレンサルファイド系樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂等が例示される。第一基板12の厚みは、例えば、25μm〜100μmとすることができる。本実施形態では、ポリエチレンテレフタレートフィルムにより第一基板12が構成されている。
第一電極14は、本実施形態では、第一基板12における正面側(第二電極形成部材20側)の面に形成されている。複数の第一電極14は、X軸方向に所定間隔を隔てて並ぶように互いに平行に配置されている。本実施形態では、第一電極14は、ストライプ状(一定幅を有する直線状)に形成されている。なお、第一電極14は、例えば波状やジグザグ状に形成されても良い。いずれにしても、第一電極14のそれぞれは、全体として、Y軸方向に沿って延在するように形成されている。
第一電極14は、透明性に優れた材料を用いて構成されていることが好ましい。このような要求を満足する材料としては、例えば酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、及びITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物、銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等が例示される。第一電極14は、これらの材料を用いて構成された透明導電膜であり、その厚みは、例えば5nm〜5000nmとすることができる。本実施形態では、ITO薄膜により第一電極14が構成されている。
第一電極14の形成方法としては、例えば第一基板12に全面的に透明導電膜を形成してから不要部分をエッチング除去する方法が例示される。透明導電膜の全面的な形成は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法、及びロールコーター法等によって行うことができる。エッチングは、電極として残したい部分にフォトリソグラフィ法又はスクリーン印刷法等によりレジストを形成した後、塩酸等のエッチング液に浸漬することによって行うことができる。また、エッチングは、レジストの形成後、エッチング液を噴射してレジストが形成されていない部分の透明導電膜を除去し、その後、溶剤に浸漬することによりレジストを膨潤又は溶解させて除去することにより行うこともできる。また、エッチングは、レーザーにより行うこともできる。
図3に示すように、第二電極形成部材20は、第二基板22と、この第二基板22上に形成された複数(本例では8本)の第二電極24とを有する。第二基板22も、透明性、柔軟性、及び絶縁性等に優れた材料を用いて構成されていることが好ましい。第二基板22を構成する材料や第二基板22の厚みに関しては、第一基板12と同様に考えることができる。第二基板22は、矩形枠状のスペーサ35を介して、第一基板12に対して所定間隔を隔てて対向するように配置されている。なお、スペーサ35としては、例えば芯材(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)とその両面にそれぞれ形成された粘着剤(アクリル系の接着糊等)とを有する両面粘着テープを用いることができる。或いは、スペーサ35として、紫外線硬化性接着剤や熱硬化性接着剤等を用いても良い。スペーサ35の厚みは、例えば2μm〜300μmに設定されている。
第二電極24は、本実施形態では、第二基板22における背面側(第一電極形成部材10側)の面に形成されている。複数の第二電極24は、複数の第一電極14とZ軸方向に所定間隔(いわゆるエア・ギャップ)を隔てて対向するように配置されている。また、複数の第二電極24は、Y軸方向に所定間隔を隔てて並ぶように互いに平行に配置されている。本実施形態では、第二電極24は、ストライプ状(一定幅を有する直線状)に形成されている。なお、第二電極24は、例えば波状やジグザグ状に形成されても良い。いずれにしても、第二電極24のそれぞれは、全体として、X軸方向に沿って延在するように形成されている。これにより、第一電極14と第二電極24とは、平面視で互いに交差(本例では直交)するように配置されている。また、第二電極24は、透明性に優れた材料を用いて構成されていることが好ましい。第二電極24を構成する材料や第二電極24の厚みに関しては、第一電極14と同様に考えることができる。また、第二電極24の形成方法に関しても、第一電極14と同様に考えることができる。
複数の第一電極14は、それぞれ引き回し配線を介して、検出回路(図示せず)に接続されている。また、複数の第二電極24も、それぞれ引き回し配線を介して、検出回路に接続されている。なお、引き回し配線は、金、銀、銅、及びニッケル等の金属、又はカーボン等の導電ペーストを用いて構成される。
本実施形態では、タッチパネル5は、ハードコート層26をさらに備えている。ハードコート層26は、タッチパネル5における最正面側に配置されており、具体的には第二基板22の正面側に接着されている。ハードコート層26は、透明性、耐傷性、及び防汚性等を具備していることが好ましい。このようなハードコート層26は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂やアクリル樹脂等の樹脂材料を用いて構成することができる。第二基板22とハードコート層26とは、例えば感圧接着剤(Pressure Sensitive Adhesive;PSA)等によって互いに貼り合わされている。また、ハードコート層26は、その正面側の表面に操作面26aを有する。この操作面26aは、ユーザーが電子機器1に対して所定操作を入力する際に、ユーザーの指等によってタッチされる(操作対象となる)面である。
図3に示すように、感圧層30は、少なくとも複数の第一電極14の全体を覆うように設けられている。本実施形態では、感圧層30は、複数の第一電極14の全体のみを覆うように、1つだけ設けられている。言い換えれば、本実施形態では、感圧層30は、第二電極24側には設けられていない(図5も参照)。感圧層30は、外力(加えられた押圧力)に応じて電気特性が変化する性質を有している。このような感圧層30は、バインダ32と、このバインダ32中に分散された複数の導電性粒子33とを含む組成物を用いて構成されている。
バインダ32は、絶縁性の材料で構成され、導電性粒子33どうしが平時は導通しないように、複数の導電性粒子33を分散保持する。バインダ32は、例えばポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂等の樹脂材料を用いて構成することができる。中でも、透明性に優れた樹脂材料を好ましく用いることができる。また、バインダ32として、ゴムやエラストマー等を用いても良い。
導電性粒子33は、例えば金属材料を用いて構成することができる。導電性粒子33は、それ自体は外力が作用しても変形しない定形性を有する。導電性粒子33は、例えば針状の不規則な表面構造を有する金属粒子とすることができる。導電性粒子33としては、量子トンネル効果が期待できるものを用いることが好ましい。導電性粒子33は、視認性に影響を与えることがなく、かつ、押圧時には通電可能となるような分布密度で、バインダ32内に分散保持されている。このようなバインダ32と導電性粒子33とを含む組成物としては、例えば英国のペラテック社(Peratech Ltd)から商品名「QTC Clear」で入手可能な、量子トンネル現象複合材料(Quantum Tunneling Composite)を用いることができる。
なお、感圧層30は、上記組成物(ここでは“QTC組成物”と称する)を例えば塗布することによって、第一基板12上に形成することができる。QTC組成物の塗布方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、及びフレキソ印刷等の印刷法を例示することができる。感圧層30の厚み(ここでは特に、バインダ32からなる層の厚み)は、第一電極14の厚みよりも厚く、例えば1μm〜5μmに設定されている。なお、本実施形態では、全体として1つの感圧層30が複数の第一電極14の全体を覆うように設けられるので、単一の工程で感圧層30を形成することができる。このような構成では、タッチパネル5全体としても製造工程を簡素化できるという利点がある。
QTC組成物からなる感圧層30は、外力が作用していない状態(非押圧状態)で、実質的に絶縁体として機能する。例えば感圧層30は、非押圧状態で1MΩ以上の抵抗値を示す。一方、外力が作用している状態(押圧状態)では、互いに近接している複数の導電性粒子33間で、直接的な接触の有無とは無関係にトンネル電流が流れて、感圧層30は導電体として機能する。このとき、感圧層30の抵抗値(電気特性の一例)は、外力の大きさに応じて変化する。つまり、感圧層30の抵抗値変化は、外力の大きさに応じたものとなる。例えば感圧層30は、押圧状態で10kΩ未満の抵抗値を示し得る。
タッチパネル5を備えた電子機器1には、CPU等の演算処理装置を含む制御部(図示せず)が備えられており、この制御部が位置検出演算及び押圧力検出演算を行うように構成されている。具体的には、タッチパネル5(操作面26a)に対してユーザーの指等がタッチされると、タッチされた箇所において第一電極14と第二電極24とが接触し、当該位置における電極14,24間の抵抗値が変化する。制御部は、これらの抵抗値の変化を検出することにより、操作面26aにおけるX−Y座標系での押圧位置を決定することができる。また、タッチパネル5(操作面26a)に対してユーザーの指等がタッチされると、上述したように感圧層30の抵抗値は、加えられた押圧力の大きさに応じて変化する。制御部は、感圧層30の抵抗値変化を検出することにより、操作面26aと直交する方向(Z方向)に加えられた押圧力の大きさを決定することができる。
ところで、本実施形態で使用するQTC組成物中に含まれる導電性粒子33は、例えば図4に示されるような粒径分布を示す。つまり、感圧層30に分散配置された複数の導電性粒子33は、それぞれ異なる粒径を有している。本実施形態では、導電性粒子33の粒径は、一例として、1μm〜10μmの範囲内でまちまちである。およそ2μm〜4μmの範囲内に最頻値が存在するものの、感圧層30の厚み(ここでは特に、バインダ32からなる層の厚み)よりも大きい粒径を有する導電性粒子33も、中には存在する。このため、感圧層30(ここでは特に、バインダ32からなる層)の正面側の表面から、一部の導電性粒子33が露出している(図5を参照)。
そこで本実施形態では、図5に示すように、感圧層30(ここでは、バインダ32からなる層)と第二電極24との間に、保護層40が設けられている。本実施形態では、保護層40は、感圧層30に接するように1つだけ設けられている。より具体的には、感圧層30の表面から露出する導電性粒子33の少なくとも一部を覆うように、保護層40が設けられている。保護層40は、導電性粒子33を構成する材料よりも柔らかい材料で構成されている。また、保護層40は、透明性に優れた材料を用いて構成されていることが好ましい。さらに、保護層40は、表面抵抗率の高い(例えば、1MΩ/□以上の)材料を用いて構成されていることが好ましい。このような要求を満足する材料としては、例えば金属酸化物ナノ粒子を含有する樹脂材料や導電性ポリマー等を例示することができる。
金属酸化物ナノ粒子としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、及びITO(Indium Tin Oxide)等が例示される。これらの中では、ITOナノ粒子を好ましく用いることができる。金属酸化物ナノ粒子の粒径は、例えば10nm〜100nmであることが好ましい。金属酸化物ナノ粒子を含有する樹脂材料としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の活性線硬化樹脂や、熱硬化性樹脂を用いることができる。紫外線硬化性樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、エポキシアクリル系樹脂、及びアルコキシアクリル系樹脂等が例示される。電子線硬化性樹脂としては、例えばウレタン変性アクリレート樹脂やアクリル変性ポリエステル樹脂等が例示される。熱硬化性樹脂としては、例えばエチルセルロース、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化ポリイミド等が例示される。
導電性ポリマーとしては、例えばポリアセチレン系高分子、ポリフェニレン系高分子、複素環系高分子、及びイオン性ポリマー系高分子等が例示される。ポリアセチレン系高分子としては、例えばポリアセチレンやポリフェニルアセチレン等が挙げられる。ポリフェニレン系高分子としては、例えばポリパラフェニレンやポリフェニレンビニレン等が挙げられる。複素環系高分子としては、例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)やポリピロール等が挙げられる。イオン性ポリマー系高分子としては、例えばポリアニリンが挙げられる。これらの中では、PEDOTを好ましく用いることができる。
本実施形態では、感圧層30と第二電極24との間に設けられた保護層40は、第二電極24を保護する“電極保護層”として機能する。上述したように粒径の大きな一部の導電性粒子33が感圧層30の表面から露出する場合には、タッチパネル5の繰り返しの使用により、感圧層30に対向する第二電極24が、露出した導電性粒子33と擦れ合って傷付く可能性がある。しかし、“電極保護層”としての保護層40を備えることで、第二電極24と露出した導電性粒子33とが直接的に擦れ合うことを抑制できる。なお、感圧層30上に保護層40が設けられることで、当該保護層40と第二電極24とが直接的に擦れ合うことになるが、保護層40を構成する材料は導電性粒子33を構成する材料よりも柔らかいので、第二電極24が傷付くのを有効に抑制できる。また、導電性粒子33が傷付くことや、導電性粒子33が感圧層30(バインダ32からなる層)から剥離することも、有効に抑制できる。従って、長期に亘って良好な感圧機能を維持することができる。なお、保護層40自体は感圧機能に直接的には関与しないので、仮に保護層40が傷付いたとしても特に問題はない。
保護層40の厚みは、平均粒子間距離Aよりも小さく設定されている。ここで、平均粒子間距離Aとは、互いに隣接する導電性粒子33間の離間距離(粒子間距離D)の平均値を表す概念である。より具体的には、平均粒子間距離Aとは、感圧層30に分散して仮想的に設定される複数の区画C(図6を参照)のそれぞれについて互いに隣接する導電性粒子33間の離間距離(粒子間距離D)の平均値として基礎平均粒子間距離Bを決定し、さらに、各区画Cについて決定された基礎平均粒子間距離Bの平均値(全体平均値)を算出することにより決定される距離を表す。
平均粒子間距離Aの決定方法について、図6の具体例を参照してさらに詳細に説明する。まず、第一電極14が形成された第一基板12上に感圧層30が配置された積層体を準備する。次に、この積層体に、所定の大きさ(例えば500μm×500μm)の複数(図示の例では30ヵ所)の区画Cを設定し、各区画Cを感圧層30側から光学顕微鏡で観察する。この場合の倍率は、例えば150倍〜750倍とすることができる。図6には、1つの区画Cにおいて観察された複数(図示の例では5つ)の導電性粒子33の様子を、拡大して模式的に示している。ここでは、説明の便宜上、それぞれの導電性粒子33を、符号“33a〜33e”により区別する。また、互いに隣接する2つの導電性粒子33間の離間距離を、以下のように“D1〜D8”で表す。
導電性粒子33aと導電性粒子33bとの間の離間距離;D1
導電性粒子33aと導電性粒子33cとの間の離間距離;D2
導電性粒子33bと導電性粒子33cとの間の離間距離;D3
導電性粒子33aと導電性粒子33dとの間の離間距離;D4
導電性粒子33bと導電性粒子33eとの間の離間距離;D5
導電性粒子33cと導電性粒子33dとの間の離間距離;D6
導電性粒子33cと導電性粒子33eとの間の離間距離;D7
導電性粒子33dと導電性粒子33eとの間の離間距離;D8
次に、発見されたそれぞれの導電性粒子33について、その周辺に存在している他の導電性粒子33との間の粒子間距離Dを測定し、得られた粒子間距離Dに基づいて、隣接する他の導電性粒子33を特定する。本例では、粒子間距離Dが最小となる他の導電性粒子33を、“隣接する他の導電性粒子33”として特定する。例えば図6の例において、導電性粒子33aに注目すると、その周辺には導電性粒子33b,33c,33d,33eが存在している。そこで、各導電性粒子33b,33c,33d,33eについて、導電性粒子33aとの間の粒子間距離Dを測定する。その中で最小となる粒子間距離D1を与える導電性粒子33bを“隣接する他の導電性粒子33”として特定し、そのときの粒子間距離D1を、導電性粒子33aに関しての“最小離間距離Sa”とする。導電性粒子33b,33c,33d,33eに関しても、同様にして、最小離間距離Sb,Sc,Sd,Seが決定される。
次に、各導電性粒子33について算出された最小離間距離Sの平均値である基礎平均粒子間距離Bを算出する。図6の例における基礎平均粒子間距離Bは、具体的には以下のように算出される。
B=(Sa+Sb+Sc+Sd+Se)/5
このようにして算出される基礎平均粒子間距離Bは、その区画Cにおける任意の2つの近接する導電性粒子33間の離間距離を代表するものとなる。
以上の手順を、全ての区画Cについて実行し、区画C毎の基礎平均粒子間距離Bを算出する。最後に、各区画Cについて決定された基礎平均粒子間距離Bの平均値(全体平均値)として、平均粒子間距離Aを算出する。ここで、図6の例における計30個の区画Cにおける基礎平均粒子間距離Bをそれぞれ“B1〜B30”で表すと、具体的には以下のように算出される。
A=(B1+B2+B3+・・・+B30)/30
このようにして算出される平均粒子間距離Aは、感圧層30の全体に含まれる任意の2つの近接する導電性粒子33間の離間距離を代表するものとなる。
本実施形態では、保護層40の厚みが平均粒子間距離Aよりも小さく設定されるので、当該保護層40において、X軸方向及びY軸方向に通電しにくく、逆にZ軸方向には通電しやすい構造となる。この点について補足すると、保護層40における、注目している通電方向の抵抗値は、当該方向の長さに比例するとともに、当該方向に直交する平面での断面積に反比例する。そして、保護層40の厚みを相対的に小さくすることは、Z軸方向の長さ及びYZ平面での断面積の両方を相対的に小さくすることに相当する。これらを合わせて考慮すると、保護層40の厚みを相対的に小さくすることにより、Z軸方向の抵抗値を相対的に小さくするとともに、X軸方向及びY軸方向の抵抗値を相対的に大きくすることができる。つまり、保護層40において、X軸方向及びY軸方向には通電しにくく、逆にZ軸方向には通電しやすくなる。
X軸方向の抵抗値を相対的に大きくすることで、互いに隣接する第一電極14間での絶縁が確保されやすくなる。これにより、位置検出機能が適切に実現される。また、Z軸方向の抵抗値を相対的に小さくすることで、押圧時における感圧層30及び保護層40を介した第一電極14と第二電極24との間の通電が確保されやすくなる。これにより、感圧機能が適切に実現される。よって、追加の保護層40を設けることに起因して位置検出機能や感圧機能が損なわれることもない。
保護層40の厚みは、概念的には、以下のような基準をさらに満足するように設定されると好適である。すなわち、保護層40の厚みは、平均粒子間距離Aよりも小さいことに加え、
(a)導電性粒子33の露出する部分の多くを覆うこと、
(b)保護層40の厚み方向(Z軸方向)の通電が確保されること、
(c)保護層40に沿った方向(ここでは特にX軸方向)に通電しないこと、
(d)表示装置4の視認性を良好に維持すること、
の1つ以上を満足するように設定されると好適である。
保護層40の厚みは、(a)の基準に基づき、導電性粒子33の平均粒径よりも大きくなるように設定されることが好ましい。このようにすれば、多くの導電性粒子33について、感圧層30(バインダ32からなる層)の表面から露出する部分の全体を保護層40で覆うことができる。また、他の導電性粒子33についても、その露出する部分の多くを保護層40で覆うことができる。よって、第二電極24と導電性粒子33とが擦れ合うことをさらに有効に抑制でき、感圧機能をさらに良好に維持することができる。なお、例えば導電性粒子33の最大粒径よりも大きくなるように、保護層40の厚みが設定されても好適である。このように設定すれば、感圧層30(バインダ32からなる層)の表面から導電性粒子33が露出しないように、保護層40で導電性粒子33を完全に覆うことができる。なお、導電性粒子33の平均粒径や最大粒径は、例えばレーザー回折散乱法により測定することができる。
但し、保護層40の厚みをより大きく設定することにより、当該保護層40の導通性や透視性に影響が及ぶ可能性がある。そこで、保護層40の厚みの好適な上限値を規定するべく、上記(b)〜(d)の基準が設定されている。
保護層40の厚みは、(b)及び(c)の基準に基づき、Z軸方向に通電し、かつ、X軸方向には通電しないように設定されることが好ましい。例えば、Z軸方向の抵抗値が1kΩ未満となり、かつ、X軸方向の抵抗値が1MΩ以上となるように、保護層40の厚みが設定されることが好ましい。これにより、押圧時における感圧層30及び保護層40を介した第一電極14と第二電極24との間の通電を、適切に確保することができる。また、互いに隣接する第一電極14間での絶縁を適切に確保することができる。よって、位置検出機能及び感圧機能の両方を良好に維持することができる。さらに、保護層40の厚みは、(d)の基準に基づき、予め定められた基準閾値以上の透過率が確保されるように設定されることが好ましい。これにより、タッチパネル5の背面側に配置される表示装置4の良好な視認性を維持することができる。
保護層40の厚みは、上記(a)〜(d)の各基準を総合的に考慮して設定されることが好ましい。この場合において、各基準どうしの間に、異なる重み付けが設定されていても良い。例えば、(a)の基準に比べて、(b)〜(d)の基準がより重要視されても良い。また、(d)の基準に比べて、(b)及び(c)の基準がより重要視されても良い。一例として、保護層40におけるX軸方向の絶縁性及びZ軸方向の導通性が十分に確保され、かつ、透視性がある程度確保される範囲内で、極力多くの導電性粒子33を覆うことができるように、保護層40の厚みが設定されると好適である。保護層40の厚みは、その構成材料にも依存するが、例えば2μm〜5μmに設定することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るタッチパネル5は、感圧層30と第二電極24との間に、感圧層30に接するように配置された保護層40を備えている。このため、粒径の大きな一部の導電性粒子33が感圧層30の表面から露出する場合であっても、保護層40が“電極保護層”として機能し、第二電極24が傷付くのを有効に抑制できる。また、導電性粒子33が傷付くことや、導電性粒子33が感圧層30(バインダ32からなる層)から剥離することも、有効に抑制できる。従って、長期に亘って良好な感圧機能を維持することができる。
図7のグラフは、耐久性試験の前後でのF−R特性の比較を示している。この図において、太線は本実施形態に係るタッチパネル5を用いた場合のF−R特性を示し、一方、細線は、比較例として保護層を備えていないタッチパネルを用いた場合のF−R特性を示している。また、それぞれにおいて、破線は試験初期におけるF−R特性を示し、一方、実線は試験終了時におけるF−R特性を示している。この図7のグラフを参照すれば、保護層40を備える本実施形態に係るタッチパネル5では、比較例のタッチパネルに比べて、耐久性試験の前後における抵抗値の変化量が小さく抑えられていることが容易に理解できる。これにより、長期に亘って良好な感圧機能を維持できることが確認された。
なお、この耐久性試験において、保護層40を設けたことによる予期せぬ効果として、押圧力の検出精度の向上が認められた。これは、保護層40を設けたことで、導電性粒子33の感圧層30の表面からの露出高さが低減され、感圧層30の表面粗さが改善されたためであると考えられる。これにより、押圧力の検出感度を安定化することができ、結果的に押圧力の検出精度が向上したのだと考えられる。
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るタッチパネルの、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態では、感圧層30上に1つの保護層40が設けられた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。感圧層30と第二電極24との間であれば、例えば図8に示すように、複数の第二電極24の全体を覆うように第二基板22上に1つの保護層40が設けられても良い。このような構成であっても、少なくとも第二電極24や露出した導電性粒子33が傷付くことを抑制できる。よって、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、例えば図9に示すように、感圧層30上と第二基板22上との両方にそれぞれ1つずつ、計2つの保護層40が設けられても良い。この場合、2つの保護層40の厚みは、それらの合計によって上記(a)〜(d)の各基準がバランス良く達成されるように、それぞれ設定されると良い。
(2)上記の実施形態では、複数の第一電極14の全体を覆うように、感圧層30が1つだけ設けられた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、複数の第一電極14の全体に加え、複数の第二電極24の全体をも覆うように、2つの感圧層30が設けられても良い。この場合でも、それぞれの感圧層30において一部の導電性粒子33が表面に露出するため、少なくとも導電性粒子33が傷付いたり剥離したりする可能性がある。このため、2つの感圧層30の間(第一基板12側の感圧層30と第二電極24との間でもある)に少なくとも1つの保護層40を設けることで、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。もちろん、2つの感圧層30のそれぞれを覆うように、各感圧層30上にそれぞれ1つずつ、計2つの保護層40が設けられても良い。
(3)上記の実施形態では、第一電極形成部材10、感圧層30、保護層40、及び第二電極形成部材20が、背面側から正面側に向かって記載の順に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば図10に示すように、第一電極形成部材10、感圧層30、保護層40、及び第二電極形成部材20が、正面側から背面側に向かって記載の順に配置されても良い。この場合、第一電極形成部材10、感圧層30、及び保護層40が、正面側から背面側に向かって記載の順に積層され、第二電極形成部材20が、保護層40に対して背面側に所定間隔を隔てて配置されても良い。また、第一基板12の正面側に、ハードコート層26が設けられても良い。
(4)上記の実施形態では、保護層40の厚みが、上記(a)〜(d)の各基準を総合的に考慮して設定される例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。保護層40の厚みは少なくとも平均粒子間距離Aよりも小さく設定されていれば良く、(a)〜(d)の基準のうちの1つ以上が全く考慮されなくても良い。
(5)上記の実施形態では、区画Cにおける任意の2つの近接する導電性粒子33間の離間距離を代表する基礎平均粒子間距離Bの算出の基礎となる値を、各導電性粒子33についての最小離間距離Sとする例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、各導電性粒子33についての平均離間距離に基づいて、基礎平均粒子間距離Bを算出しても良い。ここで、平均離間距離は、周辺に存在する1つ以上の導電性粒子33との間の粒子間距離Dの平均値を表す。或いは、平均離間距離に限らず、周辺に存在する1つ以上の導電性粒子33との間の粒子間距離Dに対して統計的処理を施した値(例えば、中央値や加重平均値等)に基づいて、基礎平均粒子間距離Bを算出しても良い。
(6)上記の実施形態では、複数の第一電極14がX軸方向に並ぶように互いに平行に配置され、複数の第二電極24がY軸方向に並ぶように互いに平行に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。X軸方向とY軸方向との取り方は任意であり、複数の第一電極14がY軸方向に並ぶように互いに平行に配置され、複数の第二電極24がX軸方向に並ぶように互いに平行に配置されても良い。この場合、Y軸方向が本発明における「第一方向」に相当し、X軸方向が本発明における「第二方向」に相当する。
(7)上記の実施形態では、タッチパネル5がハードコート層26を備える構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、そのようなハードコート層26がタッチパネル5に設けられなくても良い。この場合、第二基板22の正面側の面が、ユーザーの指等によってタッチされる(操作対象となる)操作面となる。
(8)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。