本発明の課題は、光散乱の厳密な計算の方法を用いて、光散乱体の大きさ・形状や光散乱体間の距離を精度よく評価することであり、また、この評価を用いて、粒子の形状・大きさ複素屈折率、粒子間の距離を高速に計測することであり、さらに、この計測手段を用いて、回折限界を超える密度の光メモリを実現することである。本発明のこれらの課題を、さらに従来の問題点とともに、以下、説明する。
まず、一つの光散乱体における課題について説明する。一つの光散乱体の大きさ、形状の評価について、従来、光散乱から粒径を評価する検討はなされてきたが、粒子を球形で近似したり、フラウンホーファー近似で計算したりしていたため、その精度はあまり高くなかった。そのため、たとえば、光学的手段による粒度分布の計測は簡便ではあるが、信頼性が不十分であった。
光散乱体の大きさと形状を正確に評価できれば、複素屈折率の値を仮定することで、光散乱の散乱パターンを計算によって取得できるはずである。そのためには、散乱の角度分布を厳密に計算する必要があったが、任意の形状について厳密に計算する手段は存在しなかった。
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的とするものであり、屈折率を発生する部材による光の散乱パターンと、屈折率を発生する部材の複素屈折率および分布の形状の関係を明らかにして、屈折率を発生する部材の複素屈折率および分布を、精度よく、非破壊で、高速に測定する技術を実現することを課題とする。
具体的には、本発明は、光散乱の角度分布の実験値と計算値を比較することで、複素屈折率を求め、この複素屈折率に基づいて、吸収スペクトルを得る課題の一つとする。
例えば、散乱光の波長を変えて複素屈折率を求めれば、各波長ごとの複素屈折率の虚部にあたる消光係数kを求めることができる。消光係数から、吸光係数αが定まるので、単位長さに対する吸収スペクトルを得ることができる。さらに、粒子形状・大きさと複素屈折率から、特定の波長における粒子の吸収スペクトルを得ることができる。
従来は、吸光度は試料形状の影響を受けるので定量は難しかった。そのため、前処理として、細かく砕いてフィルムにしたり、溶媒に溶かしたりしていた。しかし、上記のように、微粒子試料の吸収スペクトルを、そのまま、定量的に計測できれば、試料の前処理を省略で、非破壊で分析可能となる。
このような分析が可能となれば、微小細胞の分析においても役に立つ。即ち、細胞懸濁液を細い流路に通すことで、細胞が1列に並んで流れるが、この1列に流れる細胞に対してレーザー光を照射することで、細胞ごとの散乱光を解析するフローサイトメトリーとよばれている(非特許文献26)技術にも適用可能となる。
一例をあげると、循環腫瘍細胞(CTCs)と呼ばれるがん細胞は、赤血球や白血球よりもサイズが大きいため、区別が容易にできる(特許文献6)。また、この細胞は、近赤外におけるラマン散乱が正常細胞と異なることが分かっている(非特許文献27)。散乱光から、定量的な、ラマン散乱のスペクトルが得られれば、循環腫瘍細胞を見つける精度が向上できる。
次に、二つの光散乱体間の距離計測における課題について説明する。2つの屈折率を発生する部材間の距離について、フラウンホーファー回折に基づいたスリットのような光軸方向に高さのない形状に適用される距離の測定方法を、例えば凹凸等の高さのある形状に適用すると、次のような問題があることが、本発明の技術開発の過程で明らかとなっている。
(1)屈折率を発生する部材の形状によっては、フーリエ変換によって得られる距離が、実際の距離と異なる。
(2)屈折率を発生する部材の形状が同じでも、高さや幅が異なる場合、フーリエ変換によって得られる距離が、実際の距離と異なる。
(3)上記(1)(2)のように高さの影響が考慮できないので、平板に埋め込まれており、平板と屈折率差が小さいが高さのある領域について、取り扱いができない。
また、スリットを記録媒体に用いた場合、次のような問題がある。
(1)透過率が低くなるので多層化が難しい。
(2)多数の屈折率を発生する部材がある場合、端の屈折率を発生する部材からの距離を求めるには、端の屈折率を発生する部材にあたる入射光の輝度を上げるという光源側の工夫が必要である。
(3)スリットの作成が面倒であり、さらに、いったんスリットを形成するとスリットの位置を変更できないので、書き換えができない等の問題がある。
ところで、従来の光記録技術である相変化型記録は、記録密度が記録用レンズの集光径によって制約を受けるため、記録密度を上げるのが難しいという問題がある。また、ホログラム記録は、その実施に必要な装置は複雑であり、さらに、記録面の屈折率分布も複雑であるため、記憶媒体等の作成、品質管理等が面倒であるという問題がある。
一方、従来の計測技術である共焦点顕微鏡についても、対物レンズの集光径によって制約を受けるため、計測精度を上げるのが難しいという問題がある。
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的とするものであり、屈折率を発生する部材が2つの屈折率を発生する部材である場合、該部材による光の散乱パターンと2つの屈折率を発生する部材間の距離および分布の形状の関係を明らかにして、2つの屈折率を発生する部材間の距離を、精度よく、非破壊で、高速に測定する技術を実現することを課題とする。
さらに、本発明は、多層化が可能で記録密度を大きく向上でき、記録媒体の作成、品質検査が容易にでき、計測が非破壊で高精度にできる、高密度記録媒体の計測、読取等に利用可能な光学的計測技術を実現することを課題とする。
以下、課題を解決するための手段として、本発明の光学的測定方法、光学的記録媒体及び光学的測定装置について、それぞれ3つの態様を、光学的測定方法(1)〜(3)、光学的記録媒体(1)〜(3)、光学的測定装置(1)〜(3)として説明する。
(光学的測定方法(1))
本発明は上記課題を解決するために、入射光の光軸から0.05ラジアン(rad)以上はずれた散乱光の強度分布と、周期的な構造に関する光学的計算手法を周期の1/3よりも長径が短い孤立した光散乱体に適用して算出した散乱光の強度分布を比較することによって、光散乱体を計測することを特徴とする光学的測定方法を提供する。
光散乱体の長径より、計算の周期を3倍以上にすることになる。より好ましくは、計算の周期を長径の10倍以上とする。長径に対する周期が大きいほど、より正確な散乱強度が計算できる。周期的な構造に関する光学的計算手法とは、一般に、周期的回折格子やプリズムアレイなどの周期的な構造の光散乱を計算する方法である。
周期の1/3より長径が短いとは、計算に用いる周期の1/3より、計算に用いる構造の長径が短いということである。計算に用いる構造は、散乱体の構造を一部切り出したものであってもよい。散乱光の強度分布とは、透過光や反射光の角度分布や波長分布である。
本発明の技術的な要点は、計算の周期が、散乱体の大きさより十分大きければ、孤立した散乱体の光散乱特性と一致することを利用して、任意の形状について厳密かつ高速に光散乱特性を計算することにある。また、この計算結果から、様々な形状で、散乱パターンの変動周期から、大きさを読み取ることができることを見出した点にある。
本発明はまた、入射光の光軸から0.05ラジアン(rad)以上はずれた散乱光の角度又は波長に対する強度分布を用い、周期的な構造に関する光学的計算手法を用いて計算した散乱光の強度分布と、強度が変動する周期を比較することによって、光散乱体の大きさや形状を計測する光学的測定方法を提供する。
散乱光の強度は、散乱体が一つの微粒子である場合、典型的には入射光の光軸近傍に強い一つのピークが現れる。その角度から少し離れた角度に小さいピークが角度の正弦に対して等間隔に現れる。(非特許文献8参照)このピークの間隔は粒子の径が大きくなると、小さくなるので、計算と実験結果を対応させることで粒子の径を見積もることができる。
このピークの間隔を評価する方法の一つにフーリエ変換がある。フーリエ変換したデータをプロットするとピークが得られる。このピークの横軸は、散乱光のピーク間隔の逆数に対応している。
角度分布でなく、波長分布についても、波長の逆数に対して、散乱強度が周期的に変動する。波長の逆数に対する変動をフーリエ変換すると、ピークの横軸から、粒子の径を見積もることができる。
周期的な構造に関する光学的計算手法としてはフーリエモーダル法が好ましく。その一種である厳密結合波解析(RCWA)が、精度の検証等がなされており信頼性が高いことから、特に好ましい。なお、散乱光の計測後に計算するのではなく、あらかじめ、予想される散乱強度の分布を計算したデータを用意しておいてもよい。
周期的な構造に関する光学的計算手法において、粒径よりも周期をずっと大きくすることで、任意の形状の孤立した粒子の散乱強度を計算できる。なお、周期は、粒子の長径の3倍以上が好ましい。より好ましくは6倍以上である。周期を大きくする方が、より孤立した状態で計算することができるので値が正確になる。
散乱体が二つの微粒子あるいは凸部である場合については、後で詳述し、ここではその概略を述べる。散乱光の角度分布のピーク間隔が等間隔になることは、微粒子が一つの場合と同様である。また、散乱光の波長分布の場合についても、微粒子が一つの場合と同様、ピーク間隔が等間隔となる。さらに、微粒子が一つの場合と同様、この間隔の逆数が、距離に対応している。
本発明はまた、入射光の光軸から0.05ラジアン(rad)以上はずれた散乱光の強度分布を用い、周期的な構造に関する光学的計算手法を用いて計算した散乱光の強度分布と、散乱強度を比較することによって、光散乱体の複素屈折率を計測する方法を提供する。
屈折率分布として、ここでは微粒子を考える。微粒子に入射した光は、前方散乱、後方散乱または吸収される。微粒子に入射した光量でそれらの値を割ることで、前方散乱された光や後方散乱された光の割合を知ることができる。
入射光から散乱光量を引くことで、吸収光量を得ることができる。微粒子の形状と複素屈折率のおおよその実部が分かれば、複素屈折率の虚部(消光係数)を得ることができる。消光係数から吸収の割合を計算できるので、実験値と対応させることで、消光係数の実験値を得ることができる。
本発明はまた、散乱光の波長に対する強度分布を用い、周期的な構造に関する光学的計算手法を用いて計算した散乱光の消光係数から、光吸収や光路長を算出する、分光スペクトルの光学的測定方法を提供する。
波長ごとに、複素屈折率評価を行うことで、粒子の吸収スペクトルを算出することができる。フィルムでは、波長によって光路長は変化しないが、粒子では波長ごとに、光路長が異なると考えられる。そこで、光路長を計算と実験から評価する。評価の方法としては、消光係数をわずかに変えた時に、前方散乱あるいは後方散乱される光量から、どのくらい吸収量が変化するかを計算する。
消光係数から得られる吸光係数と光路長の積から、吸収量を見積もることができる。吸収量の変化から、光路長が得られるので、単位長さ当たりの吸収スペクトルを得ることができる。同様にして、単位長さ当たりの散乱スペクトルを得ることもできる。散乱スペクトルの例として、ラマン散乱が挙げられる。
本発明は、光散乱体の形状を計測すること及び該光散乱体の散乱光を計測することを、該光散乱体を動かさずにでき、該形状に基づいて散乱強度を周期的な構造に関する光学的計算手法を用いて計算することにより、光散乱体を計測する光学的測定方法を提供する。
光散乱体の形状を計測した後、光散乱体を動かさずに散乱光を計測することにより、光散乱体の正確な位置情報を元にした光散乱の計算結果が得られるので計測精度が上がる。
光散乱体の固定方法の一つとしては、平滑で透明なガラス板の上に載せる方法が挙げられる。必要であれば、光散乱体をマッチングオイルに浸して、散乱光の集光のために液浸レンズを用いてもよい(特許文献3参照)。もう一つの方法として、カーボンナノチューブの先端に固定する方法が挙げられる(特許文献4参照)。さらに、第3の固定方法として、特許文献5のように集光位置に光圧で試料を固定する方法が挙げられる。
光散乱体に入射する光量の測定方法としては、市販のパワーメータ及びビームプロファイラを使うことができる。白色光源としては、市販のハロゲンランプや白色LEDレーザーを用いることができる。
散乱光の角度分布を測定する装置としては、市販のスペクトラムアナライザや、CCDイメージセンサ、パワーメータが挙げられる。波長分布を測定する方法としては市販のスペクトラムアナライザを挙げることができる。前方散乱または後方散乱の総量を知る方法として、市販の積分球が挙げられる。
(光学的測定方法(2))
本発明は上記課題を解決するために、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.4λ以上100λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得て、角度の正弦または1/波長を横軸としたデータを元に、フーリエ変換したときのピークの横軸を算出することで、2つの光散乱体間の距離を求めることを特徴とする光学的測定方法を提供する。
2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長は、所定の波長範囲λ1からλ2(λ1≦λ2)を使用し、100×λ1>λ2であって、前記2つの光散乱体の屈折率n2は、空気の屈折率n0と異なり、前記2つの光散乱体は、互いに同じ種類の形状で1組または2組以上が、互いに距離wm(m=1,2,3・・・mmax)を隔てて、屈折率n1の平板上に存在する構成、または屈折率n3(n3≠n1)の平板内部に存在する構成であり、2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度は、該散乱光を、2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向で、2つの光散乱体を通った光が干渉した光を測定し、この2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向は、入射光と光散乱体を結ぶ軸を含む面内においては、軸となす角度を入射光の進行方向と同じ向きに180°、または、入射光の進行方向と逆向きに180°とした範囲にあって、2つの光散乱体を結ぶ軸方向を含まない範囲の方向であることが好ましい。
λ1とλ2の範囲は、光源や散乱光測定機の測定範囲と2つの光散乱体を通った散乱光が干渉できる距離wによって制約を受けるため、100×λ1>λ2であることが好ましい。
2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ1からλ2であり(ここでλ1≦λ2)、空気の屈折率がn0、2つの光散乱体を設けた平板の屈折率がn1であり、2つの光散乱体は、互いに同じ種類の形状で1組または2組以上設けられており、屈折率がn2(n2≠n0)で、各組の2つの光散乱体間の距離がwm(m=1,2,3・・・mmax)であって、平板上に存在する構成または屈折率がn3(n3≠n1)で、2つの光散乱体間の距離がwmで平板内部に存在する構成であり、2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度は、該散乱光を、2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向で干渉させることによって測定することが好ましい。
また、2つの領域に隣接して距離wm+1の別の2つの領域が存在する場合は、wm+1のいずれかはwmと同じではない方が、違う距離として認識できるので好ましい。さらに、n2−n1の絶対値が2.5以下である方が、透過光を多くできるので好ましい。
2つの屈折発生体の重心を結ぶ軸を含み入射光に平行な平面における光散乱体の断面が矩形、楕円形または正弦形の場合には、光散乱強度角度分布を角度の正弦を横軸としてフーリエ変換し、三角形の場合には、ある角度で観測した光散乱強度波長分布について、波長を横軸としてフーリエ変換することが好ましい。
この光学的測定方法では、2つの屈折発生体の重心を結ぶ軸を含み入射光に平行な平面における2つの光散乱体の断面の面積が5%以上異なるときに、ピークの横軸から読み取った2つの光散乱体の距離を1%以上補正するようにしてもよい。
この光学的測定方法では、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで求められた2つの光散乱体間の距離を、2つの光散乱体の高さや幅が異なるとき、フーリエモーダル法、時間領域差分法(FDTD法)または境界要素法で得られた光散乱分布についてフーリエ変換した結果に基づいて、補正するようにしてもよい。
(光学的測定方法(3))
2つの光散乱体は、3つ以上の光散乱体Sm(m=1,2,3・・・)があるときの2つであり、そのうち1つの光散乱体S1だけの散乱強度を変えて測定し、変える前と後の波長分布または角度分布を比較することで、光散乱体S1と他の散乱体の距離を測定することが好ましい。
2つの光散乱体に対して入射光路の前方にピンホールまたはスリット設けるとともに、該ピンホールまたはスリットと光散乱体との間にレンズを配置して2つの光散乱体に光源からの光を集光し、散乱光の光散乱強度角度分布の角度が前記レンズの光軸から20°以上ずれた角度を含み、前記ンホールまたはスリットを通過できる光源からの光の強度が10μW以上であり、ピンホールの直径またはスリットの短軸の幅が100μm以下であり、さらに2つの光散乱体の散乱光を平行化するために光散乱強度角度分布の中央付近の角度または所定の散乱角度の軸上に別のレンズを配置し、さらに、散乱光を計測するためのイメージセンサを備えていることが好ましい。
白色光源の光を集光するために、ピンホールまたはスリットと該光源の間に第1のレンズを配置し、2つの光散乱体に集光するために前記ピンホールまたはスリットと2つの光散乱体との間に第2のレンズを配置し、散乱光の所定の散乱角度が第2のレンズの光軸から20°以上ずれた角度を含み、前記ピンホールまたはスリットを通過できる光源からの光の強度が10μW以上であり、前記ピンホールの直径または前記スリットの短軸の幅が100μm以下であり、さらに光散乱体の散乱光を集光するために所定の散乱角度の軸上に第3のレンズを配置し、第3のレンズと受光部を、受光部に該散乱光の焦点が来るよう配置し、さらに、受光部で受けた光をスペクトラムアナライザに伝播させる機構を備え、受光部を100μm以下の精度で動かせるようにすることが好ましい。
(光学的記録媒体(1))
本発明は上記課題を解決するために、平面の板の上または内部に、複数の光散乱体が存在し、板に平行な面内における光散乱体(散乱体)の平均の短径が0.001μm以上、0.32μm以下であり、最も近くに隣接する光散乱体の重心間の平均距離wが0.3μm以上1.6μm以下であり、光散乱体間距離wの80%以上が該平均距離の±45%にあり、かつ光散乱体間距離の80%を含む範囲がw−xからw+xであるとき、w−x/2からw+x/2の範囲には光散乱体間距離が60%以下しかないことを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
記録媒体の読み取りに用いられる光の波長は、300〜500nmである。この時、十分な光散乱強度を得るためには、短径が0.001μm以上が好ましく、より好ましくは0.01μm以上である。また、高い記録密度を得るためには、短径が短い方がよく、0.32μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以下である。
光散乱体間距離を情報とすることで、光散乱体の有無を情報とする場合に比べて、情報量が増大する。光散乱体間距離の分布は、情報量を増やすために最適な広がりがある。光散乱体間距離wの80%以上が該平均距離の±45%にあるのが好ましく、より好ましくは、±30%である。光散乱体間距離の80%を含む範囲がw−xからw+xであるとき、w−x/2からw+x/2の範囲には光散乱体間距離が60%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下である。
本発明は上記課題を解決するために、平面の板の上または内部に、複数の光散乱体が存在し、板に平行な面内における光散乱体の平均の短径が0.001μm以上、0.32μm以下であり、各光散乱体の最も近くに隣接する光散乱体の重心間の距離(光散乱体間距離)の平均wが0.3μm以上1.6μm以下であり、光散乱体間距離wの95%以上がw1より大きい範囲に存在し、光散乱体間距離が離散的に分布し、分布の最少の間隔がδwであるとき、次式の極大値を与えるw2と、w1との間に85%以上の光散乱体間距離が存在することを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
[LOG2{(w2−w1)/δw+1}]/w2 (1)
光散乱体間距離には、記録媒体の情報量を増やすために最適な値w2がある。この値は、最小値が光学的測定精度で決まる光散乱体間距離の分布の最少の間隔δwと、最少値が分解能で決まる距離w1で定まる。上記の式(1)は単位長さ当たりのビット数(ビットは情報量の単位)を与えている。w2の最適値は式(1)が極大となる値で与えられる。この極大値におけるw2は、数値計算でグラフを描くことで求めることができる。
本発明は上記課題を解決するために、記録媒体の形状が円板であるとき、光散乱体間距離が、円板の中心を通る軸上の光散乱体同士のみを考えるか、円板を中心とする円の円弧上の光散乱体同士のみを考えることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
記録媒体の情報が、一軸方向のみに記録されている時には、光散乱体間の距離の分布は、その方向だけ考えればよい。
(光学的記録媒体(2))
本発明は上記課題を解決するために、円形の軌道の上に2つの光散乱体の組が多数形成されており、2つの光散乱体間の距離が、2つの光散乱体の組毎に一定ではなく、かつ、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ1以上とするとき、全ての2つの光散乱体の組の90%以上について、2つの光散乱体間の距離が0.4λ1以上2λ1以下である光学的記録媒体であって、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定し、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、各組の2つの光散乱体間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
各組の光散乱体の形状は、それぞれ幅vが0.05λ1以上5λ1以下で、高さdが0.05v以上2v以下の矩形であって、各組の2つの光散乱体の距離wが0.4λ1以上であり、各組の2つの光散乱体のうち、ひとつの光散乱体の幅、高さをva、daとし、もうひとつの光散乱体の幅、高さをvb、dbとするとき、da≧dbとして、(da−db)/db<4であり、va≧vbとして、(va−vb)/vb<0.1としてもよい。
各組の光散乱体の形状は、それぞれ幅vが0.1λ1以上10λ1以下で、高さdが0.05v以上2v以下の正弦形であって、各組の2つの光散乱体の距離wが0.4λ1以上であり、各組の2つの光散乱体のうち、ひとつの光散乱体の幅、高さをva、daとし、もうひとつの光散乱体の幅、高さをvb、dbとするとき、da≧dbとして、(da−db)/db<4であり、va≧vbとして、(va−vb)/vb<0.1としてもよい。
各組の光散乱体の形状は、それぞれ幅vが0.5λ1以上5λ1以下で、高さdが0.25v以上2v以下の三角形であって、各組の2つの光散乱体の距離wが0.4λ1以上であり、各組の2つの光散乱体のうち、ひとつの光散乱体の幅、高さをva、daとし、もうひとつの光散乱体の幅、高さをvb、dbとするとき、da≧db、va≧vbとして、0.7<(va/da)/(vb/db)<1.5としてもよい。
本発明は上記課題を解決するために、直線上に形成された三つ以上の光散乱体を含む領域を有し、該領域では、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ1以上とするとき、各光散乱体が互いに距離が0.4λ1以上離れており、且つ、前記領域のもっとも端にある光散乱体の光路差が、他の光散乱体の光路差の平均の1.5倍以上で最も大きいか、または吸収係数が他の光散乱体の平均の1.5倍以上で最も大きい光学的記録媒体であって、前記三つ以上の光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定し、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、三つ以上の光散乱体相互間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
この光学的記録媒体では、各組の2つの光散乱体について、それぞれの光散乱体の重心を直線で結び断面を切り出したときに、平均の充填係数が30〜60%であることが好ましい。
この光学的記録媒体では、各組の2つの発生体は、平板に埋め込まれており、光または熱が付与されると屈折率が変わり、信号を記録または消去することが可能な構成としてもよい。
(光学的記録媒体(3))
本発明は上記課題を解決するために、円形の軌道の上に2つの光散乱体の組が多数形成されており、2つの光散乱体間の距離が、2つの光散乱体の組毎に一定ではなく、かつ、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ1以上とするとき、全ての2つの光散乱体の組の90%以上について、2つの光散乱体間の距離が0.4λ1以上2λ1以下である光学的記録媒体であって、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得ることができ、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、各組の2つの光散乱体間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
光散乱体の組のとりかたの構成は二つある。一つは、円形の軌道の接線方向に隣り合う、光散乱体間の距離を求め情報とする構成である。もう一つは、異なる径の円形の軌道を同心円状に形成し、円の中心方向に直線を引き、同じ直線状に乗った光散乱体間の距離を求め情報とする構成である。
本発明は上記課題を解決するために、直線上に形成された3つ以上の光散乱体を含む領域を有し、該領域では、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ1以上とするとき、各光散乱体が互いに距離が0.4λ1以上離れており、且つ、前記領域のもっとも端にある光散乱体の光路差が、他の光散乱体の光路差の平均の1.5倍以上で最も大きいか、または吸収係数が他の光散乱体の平均の1.5倍以上で最も大きい光学的記録媒体であって、前記3つ以上の光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得ることができ、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、3つ以上の光散乱体相互間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
直線上に形成された3つ以上の光散乱体を含む領域では、入射光波長の最小値をλ1とするとき、各光散乱体が互いに距離0.4λ1以上100λ1以下離れており、且つ、前記領域の最も端にある光散乱体だけが光または熱で屈折率を0.01以上または吸光係数α[cm−1]を1以上変えられるようにすることが好ましい。
本発明は上記課題を解決するために、直線上に形成された2つ以上の光散乱体を含む領域を有し、該領域では、2つの光散乱体の組が多数形成されており、2つの光散乱体間の距離が、2つの光散乱体の組毎に一定ではなく、かつ、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ1以上とするとき、全ての2つの光散乱体の組の90%以上について、2つの光散乱体間の距離が0.4λ1以上2λ1以下である光学的記録媒体であって、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得ることができ、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、各組の2つの光散乱体間の距離が求められる構成であり、前記領域では、光散乱体が10〜300nm離れており、ある散乱体S1から40μm以下の距離にある散乱体Sm(m=2,3・・・)のうち少なくとも1つが散乱体S1との間を結ぶ軸と試料面に垂直な別の軸を含む平面内において、別の軸について非対称であり、かつ、S1と略相似であり、しかも、入射角をθi、散乱角をθdとするとき、該領域の散乱はθi=0の入射光に対して10°<θdの範囲において最大の散乱強度を与えるθdと−θdの散乱強度A(角度)の比A(θd)/A(−θd)が2以上であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
最も端の光散乱体が測定波長範囲内での吸収がなく、他の光散乱体に一部の測定波長のみを透過または散乱するものがあり、測定波長である入射光波長の最小値をλ1とするとき、他の光散乱体間の距離に、λ1の半分未満のものがあるようにすることが好ましい。
最も端の光散乱体以外の散乱体について、特定の偏光が選択的に反射されるよう複屈折を与え、散乱光を偏光選択でき、散乱光を端の散乱体を含め選択的に検出できるようにすることが好ましい。特定の偏光とは、ある方向の直線偏光や円偏光である。
(光学的測定装置(1))
本発明は上記課題を解決するために、白色光源、第1のレンズ、スリット、第2のレンズ、光散乱体、第3のレンズ、遮光フィルタ、分光器の順に並ぶことを特徴とする光学的測定装置を提供する。
スリットを入れることで、光散乱体に当てる光を直線状にすることができ、該直線と入射光の光軸を含む面内で計算ができるので、解析が容易になる。さらに、スリットを該スリットを含む面内で動かしたり、スリットの幅を変えることで光散乱体の照射範囲を制御できる。遮光フィルタを挿入することで、入射光の光軸近傍の光をカットすることができる。
光散乱体が光記録媒体の時、その吸収スペクトルを計測することで、吸収スペクトルの違いを情報とすることができる。たとえば、赤い吸収を持つ色素または青い吸収を持つ色素を混ぜておけば、青と赤で情報量は2となる。
本発明は上記課題を解決するために、分光器がインターフェログラムを計測することを特徴とする光学的測定装置を提供する。
インターフェログラムは、入射光の光軸上の光で解析されてきた。入射光の光軸から外れると、吸光度は増すため、弱い吸収でも解析が可能となる。一方、直進していないので、吸収スペクトルを直接得ることができない。本発明により、観測角度が定まれば、計算で吸収スペクトルを見積もることができるようになったので、光軸から外れた光でも解析可能である。
本発明は上記課題を解決するために、レーザー光源、第1のレンズ、第1の穴あきマスク、第2のレンズ、光散乱体、第3のレンズ、第2の穴あきマスクの順に並び、散乱光の角度分布をCCDイメージセンサで計測することを特徴とする装置を提供する。
穴あきマスクはピンホールやスリットである。第1の穴あきマスクで光散乱体への照射範囲を決定する。第2の穴あきマスクで光散乱体の照射部分だけからの散乱光を選択的に計測する。また、光散乱体を中心として、第3のレンズ、第2の穴あきマスクおよびCCDイメージセンサの受光部を同時に回転させることで、広い散乱角度を計測するのが望ましい。第1及び第2の穴あきマスク、及び光散乱体の位置を動かすことで特定の範囲を計測できる。
光源の光が、単色である場合、レンズは、球面レンズよりも、非球面レンズを用いる方が好ましい。第2のレンズは、開口数NAが0.0001以上0.2以下であることが、望ましい。より好ましくはNAが0.0001以上0.1以下である。
NAを小さくすることで、収差の影響を小さくし、集光系を設計通りにできる。第1のレンズと第2のレンズは、穴あきマスクに合わせて、シリンドリカルレンズを用いてもよい。第1の穴あきマスクと光散乱体の間には光束の範囲を、狭めるために絞りを置くことが好ましい。絞りを置くことで、光散乱体への入射光の角度範囲を調節できる。
光散乱体が光記録媒体の時、その散乱パターンを計測することで、その形状を情報とすることができる。たとえば、三角と矩形では散乱の角度分布が異なり、三角の方が、入射光の光軸からずれたところに光が曲げられる。三角と矩形で情報量は2となる。穴あきマスクを使用することで、光散乱体への照射範囲を容易に制御できる。
(光学的測定装置(2))
本発明は上記課題を解決するために、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.4λ以上100λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定する手段と、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体間の距離を求める手段とを備えた光学的測定装置であって、前記測定手段は、光源と、散乱光を受光する一辺の画素が600以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサと、を備えていることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
この光学的測定装置では、光源からの光の強度分布を、半値幅の縦横比を2倍以上に長くする手段を設けた構成としてもよい。
この光学的測定装置では、光源からの光を通過させ、2つの光散乱体に照射するための長さと幅を調整したスリットと、散乱光を平行光にする開口数0.8以上のレンズを備えていることが好ましい。
この光学的測定装置では、2つの光散乱体に対して入射光側に置いた光源からの光を集光するためのフレネルゾーンプレートと幅10μm以下のスリットと、散乱光の光散乱強度角度分布を測るゴニオメータと幅1cm以下のスリット付きPINフォトダイオードとを備えている構成としてもよい。
本発明は上記課題を解決するために、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.4λ以上100λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度の所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定する分光手段と、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体間の距離を求める手段とを備えた光学的測定装置であって、前記測定手段は、光源と、散乱光を受光する一辺の画素が1000以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサと、を備えていることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
この光学的測定装置では、前記測定手段は、光源からの光を曲げると同時にほぼ同じ強さに分けるハーフミラー及びミラーと、ハーフミラーとミラーの距離をマイクロメータで機械的に調整する手段と、を備えている構成としてもよい。
(光学的測定装置(3))
本発明では、上記いずれかの測定方法に用いることができ、入射光は、略平行光であり、反射光を測定する反射による散乱光を集光または平行化するレンズと同じレンズの中心から外れた部分に光を入射させ、光散乱体への入射平面内で40°<|θi|とできることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
本発明では、上記いずれかの測定方法に用いることができ、入射光は、試料面に垂直なZ軸について、Z軸となす角θzが、40°<θz<90°である入射角θzに60%以上の光量(W単位)があり、Z軸について軸対称であることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
本発明では、上記いずれかの測定方法に用いることができ、光散乱を波長ごとにノッチフィルタで3つ以上に分け、受光することで、波長ごとの角度分布を計測することを特徴とする光学的測定装置を提供する。
上記いずれかの測定方法に用いることができ、直線上に形成された3つ以上の光散乱体に対して用いることができ、時間変調のある入射光AとBの二つを用い、入射光Aと入射光Bの照射部分は隣接しておりかつ、各照射部分の範囲の大きさは、入射光波長の最小値をλ1とするとき、0.4λ1以上100λ1以下であり、入射光AとBの時間変調のタイミングをずらすことができ、該時間変調を測定可能な時間分解能を持っていることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
本発明によると、光散乱体の計測について、次のような効果が生じる。
1.従来は、周期的構造にのみ適用されてきた計算手法が、孤立系の構造にも容易に使える。
2.一般には、レンズを用いて画像情報が得られる。レンズを用いずに、散乱光を解析して画像を得る場合、従来、位相情報を用いて3次元画像再構成を行っていたが、光散乱の強度情報のみで再構成ができる。
3.レンズを用いた、これまでの3次元画像再構成では、光学的な輪郭から距離を算出していたが、これは実際の物理的な輪郭とは必ずしも同じではなく補正が必要である。本発明では、3次元構造の光散乱を厳密に計算することで、正しい形状と大きさを得ることができる。
4.散乱光について、位相情報を用いた3次元画像再構成を行う場合、フラウンホーファー近似に基づいて、フーリエ変換で計算していた。本発明は、フラウンホーファー近似より厳密な解を与える方法を用いることで、正しい距離を得ることができる。
さらに、上記効果を生じる本発明を用いることで、次のことができる。
1.散乱光から散乱体の大きさを精度よく測定することができる。
2.一つの光散乱体の光路長と大きさの関係を見積もることができる。
3.散乱光から一つの光散乱体の吸収スペクトルを得ることができる。
本発明によると、光散乱体が二つ以上の分布に分けられる場合にその距離の計測において次のような効果が生じる。
(1)回折限界の制約がない方法のため、従来より10倍以上の精度で、孤立した2つの光散乱体間の距離を測定可能となる。
(2)屈折率の違いはわずかでも、光軸方向に長い光散乱体があれば、検出できる。
(3)フーリエ変換を使うのでノイズに対して強い。
(4)光学的記録媒体の記録密度が大きく向上でき、作成、品質検査が容易にできる。
(5)計測が、非破壊で高速、高精度でできる。
本発明は、上記のような効果が生じるので、本発明の技術を使用することを前提とした光学的記録媒体、その光学的読取、光学測定等に広く応用できる。応用としては、主に次の3つがあるが、これをその応用面における効果とともに説明する。
(1) 光吸収スペクトルの計測
吸収スペクトルの定量的な計測においては、溶媒に溶かしたり、フィルム化したりという前処理が必要である。また、タンパク質の結晶のように、試料量がもともと少ない場合は、これらの前処理を行うことも難しい。微光散乱体から直接、光吸収スペクトルを得ることができれば、前処理の簡略化とともに、少ない試料量でも、定量的な計測が可能となる。
(2)光学的記録媒体、光学的読取
光学的記録媒体としては、凸と凸あるいは凹と凹の間隔を記録データとする光学的記録媒体に適用可能である。単純な凹凸構造なので、光学的記録媒体の作製や品質検査が容易になる。凹凸の周囲との屈折率差が小さくても、光軸方向に高さがあるので十分光を拡散させることができる。たとえば、相変化で屈折率を変えて記録する場合に有効である。また、透過率を高くできるので、一枚のディスクに複数の記録層を設ける場合にも有効である。一方で、吸収スペクトルを情報とすれば、さらに、情報量を増やすことができる。
(3)光学測定方法、測長装置
光学測定方法、測長装置に適用すると、高速で精度の高い検査が可能となる。投影像でなく、光軸方向の分布を含めた重心で距離を出すことができる。
本発明に係る光学的記録媒体の光学的測定方法、光学的測定装置及び光学的記録媒体を実施するための形態を、図面を参照して、まず発明の原理、構成を説明して、さらに実施例に基づいて以下に説明する。
(発明の原理1)
本発明者らは、光学的記録媒体、該光学的記録媒体の光学的測定方法及び光学的測定装置等の研究開発を通して、反射光または透過光を照射した際に光の屈折率分布を発生する部材である孤立した凸部(矩形や三角形等の凸部)について、RCWAで精度良く散乱光を計算する手段を見出した。
このように光の屈折率分布を発生する凸部等の部材を、本明細書では、「光散乱体」と称する。なお、このRCWAによる計算手法自体は、光強度分布等の解析に通常用いられる周知の計算手段であり、本発明の特徴とする構成ではない。
入射光の波長λに関して、RCWAによる計算によって、孤立した光散乱体の長径が30λ以下であれば、計算上の周期を、長径+17λ以上とすることで散乱パターンの包絡線を得ることができた。この手段を用いることで、これまでスリットや楕円形、円形以外には計算例が少なく、精度も低かった、光散乱体の散乱パターンを、ある程度の精度で数多く得ることができた。
従来、一つのスリットについては、その散乱光強度分布の周期的変動とスリット幅との関係は明らかになっていた(非特許文献8)。しかし、矩形や三角形等のような、光軸方向に高さのある2つの光散乱体については散乱光の強度分布の周期的変動とスリット幅との関係は、明らかでなかった。また、周期的に変動すること自体が明確でなかった。
今回、本発明によって厳密な計算手法を開発できたことで、任意の形状について、角度分布の周期的変動と長径との間に関係があることを明らかにできた。周期的変動の周期の逆数は長径に比例しており、その比例係数は、形状によって異なる。この比例係数は、RCWAで計算することで得られる。また、周期の逆数を得る方法として、角度分布をフーリエ変換する方法が挙げられる。
また、散乱光から微粒子の吸光係数についても、算出することができる。既知の粒子サイズ・形状の透過散乱光または反射散乱光から、直接、吸光係数が分かれば、波長ごとにこれを算出することで、吸収スペクトルが得られる。
特定の粒子サイズ・形状について、屈折率の実部を仮定しその消光係数を増やしていくと、その吸収により透過散乱光や反射散乱光が単調に減少する。実験的に得られた、透過散乱量や反射散乱量を、対応する計算値と比較することで、消光係数を求めることができる。さらに、消光係数から吸光係数を求めることができる。
本発明者らは、図1のような矩形の光散乱体10について、パラメータTLを用いて、幅vと深さdの比率を変え、また、計算上の周期Λを変えて、ある角度における散乱強度を計算した。入射光は、光散乱体10を載せた透明な平板(基板)20について垂直に入射した。30は出射角θの散乱光を示す。
図4から図7はその結果である。波長をλとするとき、横軸がΛ/λであり、Λ/λが3や6では安定していないが、大きくなると数値が一定に近づくことがわかる。なお、領域2の透明な平板(基板)20の厚みは、十分厚く、裏面での反射を考慮しなくてよいとした。
ここで、v=2/TL、d=2×TL/4とし、TLを1から4まで変えた。光散乱体10及び透明な平板(基板)60の屈折率は1.5である。図4と図5は散乱角度θが19.47°であり、入射光の偏光は図4がTE、図5がTMである。図6と図7は散乱角度θが41.8°であり、入射光の偏光は図6がTE、図7がTMである。TEとTMの定義は、非特許文献19にTEがHモード、TMがEモードとして記載されている。以下、特に記載がない場合、入射光は偏光がTEである。
図4から図7では、Λ/λを3から48まで3ずつ変えた。回折角度は、Λ/λによって、取り得る値が定まるが、いずれの周期Λ/λにも、回折角度19.47°と41.8°が存在する。計算の周期が大きくなると、回折角度の間隔が狭まるため、見かけ上の回折効率(散乱強度)が小さくなる。
また、図1および図2で明らかなように、計算の1周期Λに占める散乱体の幅vが小さくなる。この効果を打ち消すために、散乱強度にΛ/vの二乗を掛けた値を相対散乱強度として図にプロットした。図6や図7で、TLが3のとき、Λ/λが6までは変化が大きいが、Λ/λが6以上では比較的安定していることがわかる。また、図6でTLが4のとき、Λ/λが21以上で安定していることがわかる。
以上の知見から、周期構造に適用される計算手法で、孤立系の計算ができることが分かった。一般に、周期構造に適用される計算手法は短い計算時間で厳密な解を与えるので、有効な手段となる。
本発明者らは、光散乱体10の形状が図1に示すように矩形の凸部の場合には、図8〜図10に示すように、光散乱体10に起因する散乱パターン(図8〜図10では相対散乱強度で示す)は、散乱角θ(入射光40の光軸に対する透過または反射による散乱光30の角度。より正確には、測定したい粒子の距離に対応する軸と入射光40の直線を含む面内において、入射光40の光軸に対する角度。)に対して、周期的に変化するという知見を得た。
光散乱の角度分布の周期的な変化は、図2の三角形の光散乱体50や、図3の円形の光散乱体70についても同様にみられる。矩形の光散乱体10の場合には、図8〜図10に示したように、透過散乱光の強度が周期的に変化する。この周期の逆数は、図11〜図12に示したようなフーリエ変換によって求めることができる。この結果のピークの横軸が周期に対応する。
入射光の波長を1としたとき、この値は図11は3.8で、図12は4.8となっており、幅vの3および5に対応して大きくなることが分る。なお、領域2の板の厚みは、十分厚く、裏面での反射を考慮しなくてよいとした。
反射散乱光の強度については、図13、図14のように、周期性はあるが、40°付近の角度だけが強度が強くなっており、周期の解析が難しくなっている。
また、図1と入射光の向きを逆にして、矩形の光散乱体10(矩形凸部)側から光を入射したとき、図15、図16のように、散乱の角度範囲が狭くなる。解析は少し難しくなる。
円形の光散乱体70の場合についての透過散乱光についての計算も行った。入射光の波長を1としたとき、図17、図18は、直径が3および5の場合の計算結果である。この粒径はMie散乱の領域である。Mieの散乱理論は球に対して解析的な散乱パターンを与える(非特許文献20参照)。図17と図18の計算結果は、同サイズの球の散乱パターンと似ているが、厳密には円でなく球で計算する。
この理論を直径3の球に適用し、RCWAの3次元の計算結果と比較した。計算範囲を幅Λ=31、奥行きΛ2=4とし、入射の偏光がTEおよびTMのそれぞれの場合について、透過散乱光の角度分布を検討した。RCWAの計算結果では、40°と60°近傍にピークがあり、Mie散乱理論の予測値と一致した。
特定の角度で、波長分布を観察することで、光散乱体の径に関する情報を得ることもできる。図2の三角形の光散乱体60の場合について、散乱角θが45°の場合について、計算した結果が図19と図20である。
図19は、vが1μmの場合について、波長λを0.2μmから1μmまで変えて計算した散乱強度の変化である。1/λに関して、周期的に変化していることがわかる。さらに、これをフーリエ変換することで、図20のように周期の逆数が得られる。図20のピークの横軸は1μm近傍にあり、vが求められたことがわかる。
(発明の原理2)
以上は一つの散乱体のサイズに関するものであるが、二つの散乱体間の距離についても、類似の計算で、距離を算出することができる。RCWAによる計算によって、孤立した2つの光散乱体間の距離(正確には、2つの光散乱体のそれぞれ重心を結ぶ距離)が30λ以下であれば、計算上の周期を、距離+17λ以上とすることで散乱パターンの包絡線を得ることができた。この手段を用いることで、これまで計算例が少なく、精度も低かった2つの光散乱体の散乱パターンを、ある程度の精度で数多く得ることができた。
従来、2つのスリットについては、その散乱光強度分布の計算をする手段はあるが、矩形や三角形等の突起のような、光軸方向に高さのある2つの光散乱体については散乱光の強度分布の計算は困難で、簡便な手段はなく、どのような分布か明らかでなかった。
本発明者らは、図24(a)に示すように、基材(基板)である平板1040上に形成された光散乱体1060の形状が矩形の凸部の場合には、図27に示すように、光散乱体1060に起因する散乱パターン(図27では相対散乱強度で示す)は、散乱角θ(入射光1020の光軸に対する透過または反射による散乱光1030の角度、より正確には、2つの光散乱体1060の重心を結ぶ直線と入射光1020の直線を含む面内において、2つの光散乱体1060の重心を結ぶ直線に垂直な方向に対する角度である。図24(a)参照)に対して、周期的に変化するという知見を得た。
また、この周期が2つの光散乱体1060間の距離(正確には、受光側の屈折率×2つの光散乱体間の距離w)によって定まることを見出した。「受光側の屈折率」とは、図24において平板1040側から散乱強度を計測し散乱光測定機と平板1040の間に別の屈折率層がない場合は、平板1040の屈折率であり、空気層等別の屈折率層が存在するか、凹凸側から空気層等の中で計測する場合は、空気層等の屈折率となる。
このように屈折率によって、2つの光散乱体間の距離が変化する理由は、図24における角度θが散乱光測定機と光屈折率発生体の間の屈折率で変化するためである。「2つの光散乱体間の距離」は、正確には、2つの光散乱体1060の重心間の距離である。
さらに、この結果を散乱角θの正弦を横軸として、フーリエ変換すると、詳細は実施例3で説明するが、図28に示すように、横軸が2つの光散乱体1060間の距離wに対応したピークが得られるという知見を得た。要するに、ピークのでている横軸の箇所は、光散乱体1060間の距離wに対応した部分である。この知見に基づき、2つの光散乱体間の距離を求めることが可能となる。
図25(a)、(b)は、基材である平板1040上に形成された光散乱体1070が三角形の凸部の形状をしている。このように光散乱体1070が三角凸部の形状をしている場合には、光散乱体1070に起因する散乱パターンは、散乱角に対しては周期的でないこともあるが、図38に示すように、ある散乱角θで観測した波長に対しては、周期的に変動することを見出した。また、この周期が2つの光散乱体1070間の距離w、w1によって定まることを見出した(図38のw/λ参照)。
さらに、この図38に示す光散乱強度分布を、波長λを横軸として、フーリエ変換すると、図39に示すように、横軸が距離に対応したピークが得られるという知見が得られた。この知見は、2つの光散乱体1070間の距離を求めるのに応用できる。
上記のとおり、同じまたはほぼ同じ種類の形状の2つの光散乱体間の距離については、光散乱強度角度分布または光散乱強度波長分布をフーリエ変換することで、高速・高精度に算出できる。本発明では、フーリエ変換を使うことで、検出がノイズに強くなり、繰り返し測定が不要なので高速に測定可能である。
なお、本明細書で、2つの光散乱体について「同じ種類の形状」における「種類」とは、三角形、矩形、正弦等の形状の種類を言う。従って、「同じ種類の形状」例えば、とは、2つの光散乱体が共に、三角形、矩形、正弦等の形状の種類について同じ意味で使用する。
光散乱の計測は、実施例において後記するが、CCDイメージセンサを用いることで高速にできる。フーリエ変換は、2つの光散乱体の形状が矩形または矩形に近いときには、角度分布(図27に示す散乱角に対する光散乱強度)から、三角形または三角形に近いときには波長分布(図38に示す波長λに対する光散乱強度)から算出して行われる。
なお、本明細書記載の実施例では、光散乱の計測は、CCDイメージセンサを用いる例で説明するが、CMOSイメージセンサ(相補型金属酸化膜半導体)を用いてもよい。
ここで、光散乱体が「矩形に近い」と「三角形に近い」の数学的な意味は、散乱特性に影響する高さと幅(図24(a)ではvで示される)の2つのパラメータのうち、幅の影響が大きい場合が三角形であり、高さの影響も大きい場合が矩形である(星野鉄哉、伊藤雅英、谷田貝豊彦:”高次の回折効率を持つ透明回折格子の簡便な特性予測”、第35回光学シンポジウム予稿集、2010年、p .23〜p .26参照)。
本発明の基本的な原理は以上のとおりであるが、より細かい点を補足すると、次のとおりである。なお、本明細書では、光散乱体の寸法を表現するとして、「高さ」、「深さ」、「高さまたは深さ」という用語を使用しているが、いずれも光散乱体の下端と上端の間の長さ寸法を表現しており同じである。
2つの光散乱体の、それぞれの高さや幅が、互いに異なっているときには、測定データをフーリエ変換をして読み取った距離が、実際の距離とずれてしまう。そこで、光散乱体の高さや幅が別の手段により分かっている場合には、ずれの大きさを計算し補正する。ずれ補正の計算には、計算条件をうまく設定することで、RCWA法を適用する。つまり、周期構造でない孤立構造について、正しい計算ができるよう、計算上の周期等を設定する。
矩形で高さが違う場合は高さの違いに応じて、計算された距離がずれる。各光散乱体が、中心軸に対して、線対称でない場合も、計算した距離が上から見た距離とはずれる。これを逆に利用して、高さの違いや、分布の線対称からのずれを知ることができる。
例えば、幅が同じで、高さが未知で奥行きが幅や高さに比べて十分大きい2つの矩形が存在したとする。上面からしか観察できない場合や、光散乱体が平板に埋まっている場合が、これに相当する。
あらかじめ、予想される高さの近傍で、2つの高さのずれと距離のずれの関係を計算しておく。光散乱を計測して、角度分布または波長分布から本願で述べているやり方に従い距離を計算した結果、測定値と距離がずれれば、あらかじめ計算した距離と対応させることで、高さのずれを見積もることができる。
ところで、光散乱体を、光学的記録媒体として適用するとき、温度変化により材料が伸縮すると、2つの光散乱体間の距離が変わることにより、読み取りデータが変化してしまう。これを防ぐために、校正用のデータを、余分に付け加え、どの程度伸縮したかを知ることができる。
例えば、長さを校正することで、線膨脹係数の大きな材料でも正確な値が出るので、ポリイミドや無機ガラスなど特殊な材料だけでなく、ポリカーボネートやアクリルなどの汎用の透明材料が使えるようになる。
(発明の構成)
以上は本発明の原理であるが、このような原理に基く発明に係る光学的測定方法、光学的測定装置及び光学的記録媒体のそれぞれの構成について、以下説明する。
<光学的測定方法1>
本発明の光学的測定方法についてまず、基本的な構成を説明する。1つの光散乱体に光を入射させ、その透過散乱光の強度分布を測定する。この測定の条件は、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる1つの光散乱体の短径が0.4λ以上100λ以下であり、1つの光散乱体での全光線透過率または光線反射率が50%以上である。全光線透過率または全光線反射率が50%以上である方が、多層の屈折率分布を測る際に、散乱強度を十分取ることができるので好ましい。
なお、周囲と屈折率の異なる1つの光散乱体の短径は、0.4λ以上100λ以下であることが好ましい。散乱光の分布は、一つの光散乱体の測定対象とする幅vを結ぶ軸を含み入射光と平行な平面内において計測される。
全光線透過率と全光線反射率の測定方法は、日本工業規格のJIS K7375に従う。ただし、入射光を粒子内に集光するためにレンズを用い、「平行入射光束」の代わりに立体角が(4π/12)ステラジアン以下の入射光を用いる。
上記測定により得られた光散乱強度の角度分布(光散乱強度角度分布)、またはある角度での光散乱強度の波長分布(光散乱強度波長分布)を、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、光散乱体の測定対象とする幅vを求めることができる。
ここで、入射光の波長は、測定対象とする散乱光の波長に対応する波長である。例えば、入射光の波長分布が200nmから800nmである場合でも、測定対象の波長が400から700nmであれば、ここで光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値λとする波長は400nmである。
屈折率は、複素屈折率を用いる。光散乱体は、内部でほぼ同じ屈折率をもっているとする。光散乱体の幅vは入射光に垂直な面内において、測定対象となる端から端までの距離である。
図8から図10に示すように、光散乱強度分布が散乱角を横軸とする場合(光散乱強度角度分布の場合)は、角度の正弦に対する光散乱強度についてフーリエ変換する(図11および図12参照)。また、図19に示すように、光散乱強度分布が波長を横軸とする場合(光散乱強度波長分布の場合)は、1/波長に対する光散乱強度についてフーリエ変換する。フーリエ変換後のグラフのピークはゼロ近傍とそれ以外に生じる(図20参照)。
光散乱強度分布が角度を横軸とする場合におけるフーリエ変換後のグラフ(図11および図12参照)では、ゼロ近傍以外のピークの横軸の値を散乱光の観測される側(例.空気中、水中等)の複素屈折率の実部nで割った値が、光散乱体の幅vに対応している。この屈折率は、空気中での散乱光観測では空気の屈折率で1、水中での観測では水の屈折率で1.3となる。
ある散乱角θでの光散乱強度波長分布について、フーリエ変換したグラフのピークの横軸は、[実部n×sin(散乱角度)]で割った値が、光散乱体の幅vに対応している。散乱角度は、測定対象の幅vを結ぶ直線と入射光の直線を含む面内において、測定対象の幅vを結ぶ直線に垂直な方向に対する角度である。
上記本発明に係る光学的測定方法では、測定対象の幅vを求めるための測定波長範囲がλ1からλ2である(ここでλ1≦λ2)。ここで、測定対象の幅vを求めるための測定波長範囲とは、フーリエ変換等の解析に用いる波長範囲であり、通常、入射光の波長分布より狭い範囲となる。測定対象である光散乱体は、次のような態様がある。
一つは、図1や図2のように、透明な平板(基板)20の上に光散乱体10、50が載っている場合である。もう一つは、図3のように、光散乱体70が全く孤立している場合である。光散乱体の形状は、その内部がほぼ均一であればどのような形状でもよい。ここで、光散乱体の形状とは、平面に接することが可能なすべての点を結んだ多面体で囲まれる領域のことを意味する。
散乱光の測定は、1つの光散乱体で散乱した光を、測定対象の幅vを結ぶ軸から外れた方向で干渉させることによって測る。測定対象の幅vを結ぶ軸から外れた方向とは、入射光と測定対象の幅vを結ぶ軸を含む面内においては、軸となす角度を入射光の進行方向と同じ向きに180°、または、入射光の進行方向と逆向きに180°とした範囲にあって軸方向を含まない範囲である。
即ち、散乱光は、測定対象の幅vを結ぶ直線と入射光の直線を含む面内において、測定対象の幅vを結ぶ直線に垂直な方向に対して、±90°の範囲について観測する。図1においては、光散乱体10を結ぶ軸は透明な平板(基板)60に平行な方向であり、透過光の観測範囲はθが±90°の範囲となり、反射光の観測範囲はθが180±90°の範囲となる。
なお、λ1、λ2は赤外域では2.5−20μm、UV可視域では、400−800nm、硬X線領域では0.05−0.25nm、軟X線領域では1−4nmである。
光散乱体の断面が矩形または矩形に近い場合には、光散乱強度角度分布についての解析が、容易であり、フーリエ変換後の信号強度も強い。光散乱体の断面が三角形の場合には、ある角度で観測した光散乱強度波長分布について、波長を横軸としてフーリエ変換する方が、解析が容易であり、フーリエ変換後の信号強度も強い。
従って、本発明に係る光学的測定方法においては、光散乱体の断面が矩形、または矩形に近い楕円若しくは正弦の場合には、光散乱強度角度分布を角度の正弦を横軸としてフーリエ変換することが好ましく、光散乱体の断面が三角形の場合には、ある角度で観測した光散乱強度波長分布について、波長を横軸としてフーリエ変換することが好ましい。
なお、矩形と三角形の中間の形状、たとえば、正弦形、台形の場合には、どちらの方法を用いてもよいが、散乱光の角度分布の方が、入射光を単色にできるので、実施上では制約が比較的少ない。
フラウンホーファー近似より高い精度の結果を得ることが可能な、フーリエモーダル法を用いることで、光散乱体による光散乱の角度分布を正確に求めることができる。また、フーリエモーダル法は、時間領域差分法(FDTD法)や境界要素法より、プログラムの時間および計算時間を考慮したときに、短い時間で様々な形状に適用できる。
<光学的測定方法2>
以上は、光散乱体が一つの場合であるが、二つの光散乱体では、それらの間の距離を求めることができる。2つの光散乱体に光を入射させ、その透過散乱光の強度分布を測定する。この測定の条件は、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の距離が0.4λ以上100λ以下であり、2つの光散乱体での全光線透過率または光線反射率が50%以上である。全光線透過率または全光線反射率が50%以上である方が、多層の屈折率分布を測る際に、散乱強度を十分取ることができるので好ましい。
なお、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の距離は、0.7λ以上15λ以下であることがより好ましい。
全光線透過率と全光線反射率の測定方法は、波長が200nm以上の場合は、日本工業規格のJIS K7375に従う。波長が200nm以下では、2つの屈折発生体を結ぶ軸を含み入射光と平行な平面内において、全光線透過率は全ての透過光を、全光線反射率はすべての反射光を測定する。
上記測定により得られた光散乱強度の角度分布(光散乱強度角度分布)、またはある角度での光散乱強度の波長分布(光散乱強度波長分布)を、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体の距離を求めることができる。
ここで、入射光の波長は、測定対象とする散乱光の波長に対応する波長である。例えば、入射光の波長分布が200nmから800nmである場合でも、測定対象の波長が400から700nmであれば、ここで光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値λとする波長は400nmである。
屈折率は、複素屈折率を用いる。2つの光散乱体は、ほぼ同じ屈折率をもっており、光散乱体の位置はその重心とする。2つの光散乱体の距離は、2つの光散乱体のそれぞれの位置の間の長さとする。全光線透過率は、光散乱体の重心を通る波長λの光が、透過散乱される光量と入射光量の比率である。
図27に示すように、光散乱強度分布が散乱角を横軸とする場合(光散乱強度角度分布の場合)は、角度の正弦に対する光散乱強度についてフーリエ変換する(図28参照)。また、図38に示すように、光散乱強度分布が波長を横軸とする場合(光散乱強度波長分布の場合)は、1/波長に対する光散乱強度についてフーリエ変換する。フーリエ変換後のグラフのピークはゼロ近傍とそれ以外に生じる(図39参照)。
光散乱強度分布が角度を横軸とする場合おけるフーリエ変換後のグラフ(図28参照)では、ゼロ近傍以外のピークの横軸の値を散乱光の観測される側(例.空気中、水中等)の複素屈折率の実部nで割った値が、2つの光散乱体の距離に対応している。この屈折率は、空気中での散乱光観測では空気の屈折率で1、水中での観測では水の屈折率で1.3となる。
ある散乱角θでの光散乱強度波長分布について、フーリエ変換したグラフのピークの横軸は、[実部n×sin(散乱角度)]で割った値が、2つの光散乱体の距離に対応している。散乱角度は、2つの光散乱体の重心を結ぶ直線と入射光の直線を含む面内において、2つの光散乱体重心を結ぶ直線に垂直な方向に対する角度である。
上記本発明に係る光学的測定方法では、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ1からλ2である(ここでλ1≦λ2)。ここで、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲とは、フーリエ変換等の解析に用いる波長範囲であり、通常、入射光の波長分布より狭い範囲となる。測定対象である2つの光散乱体は、次のような態様がある。
ア.2つの光散乱体の組は、1つでも2以上あってもよい。図24(b)では光散乱体1060が3つあり、2つの光散乱体1060の組が2つある構成を示している。m=1,2として、w1が2つの光散乱体1060の距離、vmが幅、dmが高さ、hmが奥行きである。mが2以上の場合には、w(m),v(m+1),d(m+1),h(m+1)をそれぞれの大きさに対応させる。
イ.光散乱体は、平板(基板)の上に設けられていても(図24参照)、平板の内部に埋め込まれて形成されていても(図45参照)よい。
ウ.光散乱体が平板(基板)の上に設けられている場合は、その屈折率は平板と同じであっても異なっていてもよい。
エ.光散乱体が平板(基板)の内部に形成されている場合は、その屈折率は平板と異なる。
これを整理すると、つぎのようになる。本発明では、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ1からλ2であり(ここでλ1≦λ2)、空気の屈折率をn0、光散乱体が形成されている基材(基板)である平板の屈折率をn1とするとき、屈折率n2(n2≠n0)で距離wm(m=1,2,3・・・mmax)の2つの光散乱体の1または2以上の組が平板上に存在するか、または、屈折率n3(n3≠n1)で距離wmの2つの光散乱体の1または2以上の組が平板内部に存在する。
散乱光の測定は、2つの光散乱体それぞれで散乱した光を、2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向で干渉させることによって測る。2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向とは、入射光と光散乱体を結ぶ軸を含む面内においては、軸となす角度を入射光の進行方向と同じ向きに180°、または、入射光の進行方向と逆向きに180°とした範囲にあって軸方向を含まない範囲である。
即ち、散乱光は、2つの光散乱体の重心を結ぶ直線と入射光の直線を含む面内において、2つの光散乱体の重心を結ぶ直線に垂直な方向に対して、±90°の範囲について観測する。図24(a)においては、2つの光散乱体1060を結ぶ軸は平板1040に平行な方向であり、透過光の観測範囲はθが±90°の範囲となり、反射光の観測範囲はθが180±90°の範囲となる。
図24(b)に示すような3つの光散乱体1060の場合は、光散乱体1060がおおよそ同じ種類の形(矩形)であり、距離wm離れた2つの光散乱体1060に隣接して、距離wm+1の別の組の2つの光散乱体60が存在する。
wm+1は必ずしもwmと同じではなく、各光散乱体1060について、その近傍の光散乱体を通る光との光路差または光吸収量に差がある。光散乱体1060は、周囲と屈折率が異なっていればよい。平板の中に平板と屈折率の異なる光散乱体が埋め込まれている場合がひとつである。あるいは、光散乱体が平板と同じ屈折率であっても、凸部となっているか、あるいは、逆に凹部であればよい。
このように、複数の2つの光散乱体1060の組のそれぞれについて、2つの光散乱体1060間の距離が、様々な値の場合についても、距離を測定することができる。
なお、透過光を観測する場合と反射光を観測する場合では、範囲が反対になる。光散乱体が同じ種類の形、例えば、矩形同士や三角形同士である場合、それぞれの領域の散乱分布が似ているため解析が容易になり、得られる信号強度も強い。なお、λ1、λ2はUV可視域では、400−800nm、硬X線領域では0.05−0.25nm、軟X線領域では1−4nmである。
光散乱体の断面が矩形または矩形に近い場合には、光散乱強度角度分布についての解析が、容易であり、フーリエ変換後の信号強度も強い。光散乱体の断面が三角形の場合には、ある角度で観測した光散乱強度波長分布について、波長を横軸としてフーリエ変換する方が、解析が容易であり、フーリエ変換後の信号強度も強い。
従って、本発明に係る光学的測定方法においては、光散乱体の断面が矩形、または矩形に近い楕円若しくは正弦の場合には、光散乱強度角度分布を角度の正弦を横軸としてフーリエ変換することが好ましく、光散乱体の断面が三角形の場合には、ある角度で観測した光散乱強度波長分布について、波長を横軸としてフーリエ変換することが好ましい。
なお、矩形と三角形の中間の形状、たとえば、正弦形、台形の場合には、どちらの方法を用いてもよいが、散乱光の角度分布の方が、入射光を単色にできるので、実施上では制約が比較的少ない。
2つの光散乱体の重心を結ぶ直線と入射光の直線を含む面内において2つの光散乱体のそれぞれの断面の面積が異なると、2つの光散乱体間の実際の距離と本願の方法でフーリエ変換後に得られるピークの横軸から読み取った距離がずれる。
例えば、2つの光散乱体の幅が同じであっても高さが5%異なると、フーリエ変換後の距離が実際の距離から1%以上ずれる。そこで、あらかじめ幅や高さの違いを別の方法で測定し、横軸から読み取った距離に補正を行うことでより正確な距離を得ることができる。
従って、本発明に係る光学的測定方法では、2つの光散乱体の大きさが5%以上異なるときには、ピークの横軸から読み取った2つの光散乱体の距離を1%以上補正することが好ましい。
フラウンホーファー近似より高い精度の結果を得ることが可能な、フーリエモーダル法を用いることで、2つの光散乱体による光散乱の角度分布を正確に求めることができる。また、フーリエモーダル法は、時間領域差分法(FDTD法)や境界要素法より、プログラムの時間および計算時間を考慮したときに、短い時間で様々な形状に適用できる。
例えば、幅が同じで、高さが異なる矩形の光散乱体から求めた距離は、同じ幅のスリットでフラウンホーファー近似を適用した結果とは異なる。ここではRCWA(厳密結合波解析)をフーリエモーダル法に含める。
従って、本発明に係る光学的測定方法では、フーリエ変換して得られた距離wmについて、2つの光散乱体の高さや幅が異なるとき、フーリエモーダル法、時間領域差分法(FDTD法)または境界要素法で得られた光散乱分布についてフーリエ変換した結果に基づいて、2つの光散乱体の距離を補正することが好ましい。
直線上に3個の光散乱体があるとき、計測される距離の数は、3個の組み合わせである3となり、3個の光散乱体の位置関係を把握するのは難しい。この考察から、3個以上の光散乱体の距離を計測するのは難しいことが分かる。
これを解決する方法として、左端(あるいは右端)の光散乱体を大きくすることが挙げられる。他の光散乱体の散乱光よりも、左端の光散乱体による散乱光が強くなるために、左端の光散乱体からの距離を選択的に計測できる。
例えば、図49に示すような光散乱体S1〜S4がある構成において、S1から他の光散乱体S2、S3、S4までのそれぞれの距離を求める場合には、欲しい信号は、S1から他の光散乱体S2、S3、S4までのそれぞれの距離3λ、4λ、5λに対応する信号であり、不要な信号はS2〜S4間の距離λ、2λに対応する信号である。
例えば、光散乱体S1、S2、S3、S4について、左端の光散乱体をS1とした場合、図49で示されるように、欲しい信号(図49の矢印で示した光散乱体S1から光散乱体S2、S3、S4のそれぞれの距離に対応する信号)以外の他の2つの信号(光散乱体S2、S3、S4間の距離に対応する信号)に対応するピーク(図49の矢印で示されていない横軸の目盛1と2(1、2は図示されていない)にあるふたつのピーク)を、欲しい信号(図49の矢印で示した光散乱体S1から光散乱体S2、S3、S4のそれぞれの距離に対応する信号)に対応するピーク(図49の3つの矢印で示すピーク)に比べて相対的に小さくできる。
距離3λ、4λ、5λに相当するピークを大きくするためのひとつの方法として、左端の散乱体の散乱体のサイズを大きくするという方法がある。散乱体の高さが0.2λまでは、S1の散乱強度が増大するので、見掛け上、距離3λ、4λ、5λに相当するピークを大きくできる。実際、図49で、左端の散乱体の散乱体のサイズを大きくすると、矢印の3λ、4λ、5λに相当するピークが大きくなることが分かる。
左端の光散乱体を大きくすることで、左端の散乱体からの距離を計測する方法では、他の光散乱体間の散乱光を完全に除外することは難しい。そこで、左端の光散乱体のサイズや位置を変え、変える前と後で、左端の散乱体とその他の散乱体間の散乱光が変化することを利用する方法を考えた。この方法で、他の光散乱体間の散乱光をほぼ完全に除外することができる。
左端の光散乱体の散乱強度を変える方法として、散乱体の高さや幅を変える方法がある。本発明者らは、本発明の研究開発の過程で、矩形の散乱体の高さと幅が0.2λ以下であるとき、その散乱強度は、高さに比例するこという知見を得た。
解析方法の例として、左端の光散乱体の、散乱強度を強くして、強くする前の信号強度で割る方法がある。散乱強度を強くする前の散乱光の角度分布をフーリエ変換したグラフをF0(n0×wcalc/λ)、強くした後のグラフをF1(n0×wcalc/λ)とする。
F1(n0×wcalc/λ)/F0(n0×wcalc/λ)は、左端の光散乱体の散乱光に由来する強度が大きくなり、左端以外の光散乱体に由来する散乱光はあまり変わらないので、左端の光散乱体からの距離に相当するピークだけが強くなる。その結果、左端の光散乱体からの距離が分かる。
このような方法(左端の光散乱体の散乱強度を変える方法)は、左端の散乱体の大きさを変えるだけでなく、光吸収を変える方法や左端の散乱体に当てる光の強度を変えることでも実現できる。さらに、似たような方法として、左端の散乱体の位置を変えるやり方や、左端の散乱体のみ入射光の入射角度を変えるやり方が挙げられる。
また、本発明者らは、本発明の研究開発の過程で、入射角度を試料面に垂直な方向に対して斜めにずらすことで、分解能を向上させることができるという知見も得た。さらに、散乱光の波長分布を測定する場合には、反射光の測定では正反射角、透過光の測定では直進の透過光の角度からの角度が大きいほど、分解能が向上するという知見も得た。
このような測定をする光学系として、光源、第1のレンズ、ピンホール(または第1のスリット)、第2のレンズ、試料の散乱体、第3のレンズ、受光部(第2のスリットまたは光ファイバの先端)の順で並べられた光学系が考えられる。ここで、受光部は第3のレンズで集光された光を受ける部分であって、試料の散乱光の焦点位置に置かれる。
第3のレンズと光ファイバの先端の間に遮るものがない場合は光ファイバの先端が受光部に該当するが、該先端とレンズの間に第2のスリットを置く場合は、該スリットが受光部に該当するよう配置する。散乱体と受光部の間に第2のレンズを置く理由は、散乱光を集めて信号強度を稼ぐためと、散乱体の特定の部分の特定の散乱角度だけを選択して観測するためである。
ピンホールまたは第1のスリットは、光軸方向に0.1mm単位で精密に移動できるような可動部に固定されている構成とすることが好ましい。試料の散乱体の固定台には、3軸方向にμm単位で精密に移動できる可動部があり、かつ、入射光の光軸と測定する散乱光の光軸を含む面内で回転できる回転軸がある構成とすることが好ましい。さらに、受光部の固定台には、散乱光の光軸を含む3軸方向にμm単位で精密に移動できる可動部があり、かつ、入射光の光軸と測定する散乱光の光軸を含む面内で回転できる回転軸がある構成とすることが好ましい。
上記のとおりの可動部や、回転軸を用いることで、光軸合わせが容易かつ正確にできる。例えば、光源からの光をピンホール1またはスリット1に通したのち、レンズを通して散乱体への入射光を作る光学系において、レンズの位置を調節して、倍率を0.5倍から2倍まで調整するということも容易に行うことができる。倍率を変えることで、測定対象となる距離を変えられる。光軸合わせは、最初は目視で行い、さらに厳密には光量をモニターして、最大の信号が得られるよう可動部を調整することで行う。
<光学的記録媒体1>
本発明に係る光学的測定方法では、1つの光散乱体を光学的に測定し、その幅や消光係数を測定することができる点を特徴とするが、この光散乱体を多数(n個)、円形の軌道上に沿って直列的に作成し、光学的記録媒体として応用可能である。
多数の光散乱体について、光散乱体の幅v1〜nや消光係数k1〜nが、波長λ1について一定でなく、多数の光散乱体間の幅w1〜nのうち90%以上が0.4λ1以上2λ1以下の距離を持つのが記録密度を高める上で好ましい。
<光学的記録媒体2>
本発明に係る光学的測定方法では、2つの光散乱体を光学的に測定し、その距離を測定することができる点を特徴とするが、この2つの光散乱体の組を多数(n個)、円形の軌道上に沿って直列的に作成し、光学的記録媒体として応用可能である。
多数の2つの光散乱体の組について、2つの光散乱体間の距離w1〜nが、一定でなく、多数の2つの光散乱体間の距離w1〜nのうち90%以上が0.4λ1以上2λ1以下の距離を持つのが記録密度を高める上で好ましい。
また、別の光学的記録媒体の構成として、径の異なる円形の軌道を同心円状に複数形成し、円の中心方向に向かって、光散乱体が直列的に作成されている構成がある。この場合は、隣接する円と円の間に多数の2つの光散乱体の組があり、2つの光散乱体間の距離w1〜nが、一定でなく、多数の2つの光散乱体間の距離w1〜nのうち90%以上が0.4λ1以上2λ1以下の距離を持つ。
なお、多数の2つの光散乱体間の距離w1〜nのうち90%以上については、上記のとおり、0.4λ以上2λ以下であることが好ましいが、0.4λ1以上1.0λ1以下であることがさらに好ましい。
このような本発明に係る光学的記録媒体においては、2つの光散乱体の間隔が短すぎると、発明に係る光学的測定方法にて、フーリエ変換した後のピークが分離しない。また、2つの光散乱体の間隔が長すぎると光学的記録媒体の記録密度が小さくなる。光学的記録媒体の記録密度は、円形の軌道の単位長さ当たりの、ビット数で求めることができる。
1ビットは0または1を与える情報量を表し、2進数では1単位となっている。2ビットでは2の2乗で情報量は4である。2穴の間隔を16階調で変化させる多値記録により0から15まで記録できたとすると、2の4乗で4ビットの情報量を記録できたことになる。これは距離wを1.2λから1.6λまで、間隔0.025λの精度で測定できれば可能となる。1ビットを一つの穴に対応させる従来方式では2つの穴で2ビット記録できる。2つの穴で多値記録する場合、4ビット記録できれば情報量の密度は倍になる。
通常、光学的記録媒体の読み取り用波長λ1は、300から500nmにあることが多く、405nmが好まれる。光散乱体の幅や高さは、光散乱強度が、検出するために十分なだけ大きくし、かつ、記録密度を高くするのに障害にならないよう小さくする。
そして、2つの光散乱体の距離は、フーリエ変換後のピークが分離するのに十分大きくし、且つ記録密度を高くするのに障害にならないように決める。2つの光散乱体の大きさの違いは、高い記録密度と、十分なフーリエ変換後のピーク強度を得られるよう設定するのが好ましい。ここで、大きさとは、2つの光散乱体の形状が同じ矩形や三角である場合、その高さおよび幅を意味する。
このようなことを考慮し、本発明者らは最適な構成を検討した結果、光散乱体の形状を矩形、正弦形、三角形とした場合における幅、高さについて検討した。その結果は、それぞれ次のとおりである。
本発明に係る光学的記録媒体の光散乱体を矩形とする場合には、各光散乱体の形状は、幅vが0.05λ1以上5λ1以下で、高さdが0.05v以上2v以下の矩形であって、2つの光散乱体の距離wが0.4λ1以上であり、ひとつの形状の幅と高さをva、daとし、もうひとつの形状の幅高さをvb、dbとするとき、da≧dbとして、(da−db)/db<4であり、va≧vbとして、(va−vb)/vb<0.1とすることが好ましいことが分かった。
なお、2つの光散乱体の距離は、入射角によらず解像できることから、0.7λ1以上であることがより好ましい。
また、本発明に係る光学的記録媒体の光散乱体を正弦形とする場合には、各光散乱体の形状は、幅vが0.1λ1以上10λ1以下で、高さdが0.05v以上2v以下の正弦形であって、2つの光散乱体の距離wが0.4λ1以上であり、ひとつの形状の幅と高さをそれぞれva、daとし、もうひとつの形状の幅高さをvb、dbとするとき、da≧dbとして、(da−db)/db<4であり、va≧vbとして、(va−vb)/vb<0.1とすることが好ましいことが分かった。
さらに、本発明に係る光学的記録媒体の光散乱体を三角形とする場合には、各光散乱体の形状は、幅vが0.5λ1以上5λ1以下で、高さdが0.25v以上2v以下の三角形であって、2つの光散乱体の距離wが0.4λ1以上であり、ひとつの形状の幅と高さをそれぞれva、daとし、もうひとつの形状の幅高さをvb、dbとするとき、da≧dbとして、va≧vbとして、0.7<(va/da)/(vb/db)<1.5とすることが好ましいことが分かった。
本発明に係る光学的記録媒体の光散乱体は、二つだけでなく、三つ以上から成る構成としてもよい。三つ以上を一組とする場合は、別の組との間隔は情報としては扱わないのが好ましい。距離情報を得るための解析が、複雑になるためである。
このように三つ以上の光散乱体を設ける場合には、複数の光散乱体のうち一つの光散乱体だけ、大きな光散乱強度をもたせることで、その光散乱体から他の光散乱体までの距離を与えるピークを大きくすることができる。大きな光散乱強度をもつ光屈折率発生体以外の光屈折率発生体同士でも、ピークが発生するが、相対的に小さくなる。
つまり、フーリエ変換後のピークにおいて、他のピークと区別できる。大きな光散乱強度をもたせるには、該当する光散乱体だけを、サイズを大きくするか、まわりの屈折率との差を大きくする方法がある。
このようなことを考慮して、本発明に係る光学的記録媒体では、3つ以上の光散乱体を含む拡大的な構成においては、各光散乱体が互いに距離が0.4λ1以上離れており、各光散乱体が直線上に存在しており、さらに、この拡大的な構成のもっとも端にある光散乱体の光路差が、他の光散乱体の光路差の平均の1.5倍以上で最も大きいか、または吸収係数が他の光散乱体の平均の1.5倍以上で最も大きい構成とすることが好ましい。
本発明に係る光学的記録媒体では、2つの光散乱体について、それぞれの光散乱体の重心を直線で結び、該直線を含み入射光に平行な平面で断面を切り出したときに、平均の充填係数が30−60%であることが好ましい。
ここで、充填係数は、図25(c)のような、入射光1020と2つの光散乱体1070の重心を結ぶ直線1072を含む面内にあって、さらにいずれかの重心を含みその直線1072に対して垂直な2つの平面1074に挟まれた領域において、2つの光散乱体に接する2つの直線1076に囲まれた領域1078における2つの光散乱体の面積の和の割合で定義する。要するに、[領域1078における2つの光散乱体の面積の和]/[領域1078の面積]である。充填係数が50%に近い方が、光散乱強度が大きくなる。
本発明に係る光学的記録媒体を平板(基板)に実装する構造としては、平板の上に2つの光散乱体が凸部として形成されている構成だけでなく、平板内に2つの光散乱体が埋め込まれた矩形格子であり、平板の表面はほぼ平坦な構成としてもよい(実施例8、図45参照)。このような光学的記録媒体は、平板の表面がほぼ平坦であるために、光散乱体以外の凹凸で散乱する光量を減らすことができる。また、光または熱で2つの光散乱体の屈折率を変えれば、信号を記録または消去することが可能となる。
以上、本発明に係る光学的記録媒体の構成について説明したが、本発明に係る光学的記録媒体は、例えば、2つの光散乱体である凸部と凸部の間隔を記録データとする光学的記録媒体であり、単純な凹凸構造なので、作製や品質検査が容易になる。
また、凹凸の周囲との屈折率差が小さくても、光軸方向に高さがあるので十分光を拡散させることができる。たとえば、相変化で屈折率を変えて記録する構成としても有効である。また、透過率を高くできるので、一枚のディスクに複数の記録層を多層化して設ける構成としても有効である。
本発明に係る光学的記録媒体を適用したディスク(本明細書では「FTディスク」と称する)と他の記録方式との多重記録の比較を表3に示す。表3において、「Blu-ray」は、現行のブルーレイディスクの記録方式、ホログラムはホログラム記録方式、FTは本願の記録方式を意味している。
記録方式の「多層化」は、一枚のディスクの面に平行にディスクの内側に何層も重ねる方式である(非特許文献21参照)。「吸収波長による多重化」は、例えば、赤を吸収する色素と青を吸収する色素を同じピットに配置することで、赤い光と青い光で別の情報を得て、多重化する。「入射角多重」は入射角度を変えたときに、別の情報が取り出せるよう、記録に角度選択性を持たせることで、多重化する(非特許文献21)。
「強度変調」は、例えば、異なるピットで反射強度を変えることで、反射強度に応じた数値を割り当てることで多重化する手段である。
本発明者らは、本発明の研究開発の過程において、直線上に形成された三つ以上の光散乱体のうち、最も端の散乱体の散乱強度を変えることで、それを起点とした距離計測ができるという知見を得た。そのような目的に使える記録媒体としては、最も端にある光散乱体だけが、光または熱で光散乱体の屈折率を0.01以上または吸光係数α[cm−1]を1以上変えられる媒体が挙げられる。このとき、他の光散乱体の屈折率または吸光係数α[cm−1]は変わらないことが好ましい。
さらに、本発明者らは、本発明の研究開発の過程において、直線上に形成された二つ以上の光散乱体に対し、光散乱体の試料面に垂直な軸からずらして光を入射することで、分解能が向上するという知見を得た。
そのような、測定方法に好適な光学的記録媒体として、ある散乱体S1から40μm以下の距離にある散乱体Sm(m=2,3・・・)のうち、少なくとも1つがS1との間を結ぶ軸と試料面に垂直な軸を含む平面内において、上記垂直な軸について非対称であることを特徴とする光学的記録媒体が挙げられる。
非対称とすることで、斜めからの入射光を観測方向に効率よく曲げることができる。代表的でかつ作製の容易な非対称な形状として、不等辺三角形や左右非対称の台形が挙げられる。また、各光散乱体の散乱の角度分布を統一して、測定しやすくするために、各光散乱体の形状は略相似である構成とすることが好ましい。
このような光散乱体は、各散乱体を含む試料面に垂直な軸と平行に入射する光に対して、非対称な散乱特性を持つ。つまり、光散乱体が垂直入射光に対して10°<θd1の範囲において最大の散乱強度を与えるθd1と−θd1の散乱強度A(角度)の比A(θd1)/A(−θd1)が2以上となることが期待できる。この散乱角度分布の異方性を利用して散乱強度の強くなる角度で効率的に斜め入射光の散乱を計測できる。
計測で重要な因子は、2つの散乱体がどのくらい近づいても、別の散乱体として計測できるかを示す分解能と、2つの散乱体の距離をどの程度正確に計測できるかを示す精度に分けられる。本発明の光学的測定方法では、回折限界より10倍以上高い精度で計測できるが、分解能については、回折限界の倍以上とするのは困難である。
精度が高くても分解能が低くては、記録媒体における散乱体の密度を高められず、記録密度を上げるのは難しい。本発明の光学的測定方法における高い精度を、記録密度の向上に生かすためには、隣接する散乱体の散乱光を別の方法で、分離することになる。一つは、隣接する散乱体の散乱光の波長分布を変える方法である。
たとえば、左端を白色の散乱体とし、右に赤緑青のそれぞれの波長を散乱ピークに持つ散乱体を並べ、散乱光の観測角度を固定し、その波長分布を計測すると、赤い領域と、緑の領域と、青い領域とでそれぞれの距離に相当する異なる3つの情報が得られる。角度分布の計測の場合には、散乱光を赤緑青の3つのフィルタのいずれかに通して、それぞれのフィルタについて計測してもよい。
同様の方法は、複屈折のある散乱体を用いて散乱光の偏光を隣接する散乱体で変えても可能である。この場合は、受光部の前に偏光子を入れて、直交するそれぞれの偏光を計測する。
上記表3に示すように、FTディスクの特徴は以下のようになる。
(1)多層化
対物レンズによる集光・測定で、ディスク内垂直位置を選択することが可能である。
(2)吸収波長多重化
凹凸だけでなく、光吸収でも散乱がおこるので波長多重化可能である。
(3)入射角多重
入射角を変えても、像は同じである。
(4)強度変調
反射あるいは透過量を変えることで、多値化が可能となる。
以下、光学的測定装置の実施の形態として、光学的測定装置(1)、(2)の2つの例を挙げて説明する。
<光学的測定装置(1)>
本発明に係る光学的測定装置(1)について、以下説明する。この光学的測定装置の基本的な構成は、図21に示すように、単色光源330からの光を、偏光子305を通してレンズ320で透明な光散乱体270の幅v以上に広げ、偏光子で直線偏光の方向を定め、スリットまたはピンホール300で光照射範囲を調整し、その光をレンズで平行化して平板(基板)290上の光散乱体270に照射し、鏡筒230内のレンズ250で集光し、ピンホール295で観測する散乱部分を限定し、散乱光260をCCDイメージセンサ240(CCD:電荷結合素子)で受光して計測し、該計測データは計算機210に送られ、処理される構成である。
レンズ320はスリットまたはピンホール300に光を集め、レンズ310は、光散乱体270に光を集める。レンズ320とスリットまたはピンホール300は、共通の台の上にあり、該台がゴニオメータで光軸方向の位置を調整できることが好ましい。光散乱体270に対する照射範囲を調整するのに有効である。なお、260は光散乱体270では散乱されない光である。
光の強度分布が楕円に近いとき、この楕円の長径の軸を、長方形のCCDイメージセンサ240の長い方の辺と平行にする。楕円の長径が光散乱体の幅vより大きくなるようにする。これによって、十分な精度の角度分解能を持ったデータを得ることができる。
本実施例では、イメージセンサは、CCDイメージセンサを用いた例で説明するが、CMOSイメージセンサ(相補型金属酸化膜半導体)を用いてもよい。また、光源からの光の強度分布を半値幅の縦横比を2倍以上に長くした方が良い。半値幅はビームスポット内の光の強度分布の最大値の半分を持つ境界で囲まれた強度分布の幅である。半値幅の縦横は、該強度分布の幅で最大のものを縦とし、縦に直交する方向の幅を横とする。
別の構成例として、白色光源450、第1のレンズ440、スリット430、第2のレンズ420、光散乱体410、第3のレンズ400、遮光フィルタ390、分光器340の順に並ぶ光学的測定装置を図22に示す。この光学的測定装置では、光源450からの光を光散乱体410に照射し、反射または透過された散乱光360を受光する散乱光測定機370、分光器340及び測定データを処理する計算機350を備えている。(実施例1参照)。
光源450からの光を1つの光散乱体410に均等に照射する手段として、図22に示すように、スリット430にレンズ440で集光した後、さらに、レンズ420で平行化する方法がある。また、光散乱体からの散乱光のみを計測する手段として、散乱されていない光のみを遮蔽物390でカットする手段が挙げられる。遮蔽物390の例として、ガラス基板に円形にクロム蒸着したテストターゲットが挙げられる。
特定の角度への散乱光を分光器で測定する手段として、図23のような手段が挙げられる。
白色光源490からの入射光460を、入射光用レンズ520、ゴニオメータ500上のピンホールまたはスリット510、入射光用レンズ530を通して、第2の回転ステージ600上の3軸ゴニオメータ590に取り付けられた光散乱体(試料)580に照射する。
第2の回転ステージ600は、第1の回転ステージ560上に設けられている。第1の回転ステージ560には、検出光用レンズ540、ゴニオメータ500に取り付けられたた光ファイバ570が設けられている。光ファイバ570は分光器550に接続されている。
610は、第1の回転ステージ560及び第2の回転ステージ600の2つの回転ステージの共通の回転軸を示しており、それぞれ630及び620で示す回転方向に回転するように構成されている。要するに、620は第2の回転ステージ600の回転方向を示し、630は第1の回転ステージ560の回転方向を示す。
入射光460は、光散乱体580で散乱された、散乱光はレンズ540を用いて、光ファイバ570の入光部先端の測定点470 に集光され、分光器550に送られ、さらにそのデータは計算機480に送られて処理される。
<光学的測定装置(2)>
本発明に係る光学的測定装置(2)について、以下説明する。本発明に係る光学的測定装置の基本的な構成として、図26に示すように、光源1090から出た光は、スリット1110、ビームスプリッタ 1120、対物レンズ1130を通して2つの光散乱体に照射する。2つの光散乱体1060から反射または透過された散乱光をビームスプリッタ1120を通して散乱光測定機1160で受光する構成を備えている。
散乱光測定機1160は、例えば、CCDイメージセンサ(CCD:電荷結合素子)から構成する(実施例3参照)。以下の実施例では、イメージセンサは、CCDイメージセンサを用いた例で説明するが、CMOSイメージセンサ(相補型金属酸化膜半導体)を用いてもよい。
光源からの光を2つの光散乱体に均等に照射する手段として、図47に示すように、ハーフミラー1490とミラー1500を設け、光源1090からスリット1110と通して入射した光1470を、曲げると同時にほぼ同じ強さの入射光1100に分けビームスプリッタ1120及び対物レンズ1130と通して、測定対象物1140に照射する構成としてもよい。また、入射光の強度を高めるために、ハーフミラー1490とビームスプリッタ1120の間、およびミラー1500とビームスプリッタ120の間にレンズを置いてもよい。
このような構成により、ハーフミラー1490とミラー1500の距離をマイクロメータで機械的に調整し、光源1090からの光1470を2つの光散乱体の形成された測定対象物1140にちょうど合うように均等に分布させることで、高い光散乱強度を得ることができる。なお、図中、1160は、散乱光測定機である。
また、光源からの光の強度分布は半値幅の縦横比を2倍以上に長くした方が良い。半値幅はビームスポット内の光の強度分布の最大値の半分を持つ境界で囲まれた強度分布の幅である。半値幅の縦横は、該強度分布の幅で最大のものを縦とし、縦に直交する方向の幅を横とする。
図33において、光の強度分布が楕円でなく円形に近いと、トラック1340の隣のトラックにも光が当たり、散乱光に隣のトラックからの光も含まれてしまうということと、円形であることによりビームスポットの面積が広がり、集光度が落ちて、結果として散乱光の強度が弱くなることによる。
散乱光を受光するCCDイメージセンサとしては、一辺の画素が600以上で応答時間100μs以下のものが良い。このように、空間分解能の高いCCDイメージセンサで受光することで、高い精度で距離を測ることができ、さらに、応答時間を短くすることで、測定速度を向上できる。
本発明に係る光学的測定装置では、光源からの光を2つの光散乱体に均等に照射する手段として、光源からの光を長さと幅を調整したスリットを通して2つの光散乱体に当て、散乱光を開口数0.8以上のレンズで平行光にして照射または透過させる構成としてもよい。この場合でも、上記同様に、一辺の画素数が600以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサで受光する。
このような構成とすると、上記同様に、高い精度で距離を測ることができる。さらに、応答時間を短くすることで、測定速度を向上できる。そして、開口数の大きいレンズを使うことで、広い散乱角度の光を拾えるので、得られる距離の分解能が向上する。
本発明に係る光学的測定装置として、図48のように、2つの光散乱体1070を測定対象物の前の入射光1100側にフレネルゾーンプレート1510と幅10μm以下のスリット1110を置き、光源1090からの入射光1100の散乱光の角度分布について、ゴニオメータ1400と、幅1cm以下のスリット1390と、PINフォトダイオードとを備えた散乱光測定機1410とで光散乱強度を測る構成としてもよい。なお、1370はスリットであり、1380はゴニオメータ1400で移動して測定する測定点を示す。
散乱光測定機1410は、粉末X線回折装置としてX線散乱光の測定に使われている市販の装置を用いればよい。市販の装置としては、例えば、Rigaku製の試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IV がある。
ただし、本願では、波長の数倍のサイズの光散乱体間の距離を計測するため、従来の条件ではmm程度であったX線のビームスポットを、数μm以下の狭いい範囲に照射することが好ましい。そのためには、最適なフレネルゾーンプレート1510を選択し、平行な入射光1100を用意することになる。平行な入射光1100がないと限られた範囲に、フレネルゾーンプレート1510で集光するのが難しいからである。
なお、強く平行な入射光としては、高エネルギー加速器による放射光がある。実験室内で、狭い領域に平行で強い入射光を作る方法の例として、非特許文献22、非特許文献23がある。
本発明に係る光学的測定装置では、光源からの光を、2つの光散乱体に当てた後、ある散乱角度の散乱光を分光し、一辺の画素が1000以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサで受ける構成としてもよい。
このような構成では、光源としては、可視光域では波長分布のあるキセノンランプや水銀ランプを用いることができる。また、一辺の画素を1000以上とし、十分画素の数を多くすることで、フーリエ変換後のピークの分解能を上げることができる。応答時間を十分小さくすることで、計測時間を実用になるよう短くすることができる。
本発明に係る光学的記録媒体を適用したディスク(FTディスク)の光学的測定装置(光学的読取装置)を図32に示す。この光学的測定装置では、光源1090から出た入射光1100はスリット1110及びビームスプリッタ1120を通ってから、対物レンズ1130で集光され、FTディスク1280にビームスポット1290として照射され、FTディスク1280の表面に形成された光散乱体で散乱(散乱光1300)される。
光散乱強度は、散乱光測定機1160で計測され、その結果が計算機1170に読み込まれ、フーリエ変換される。散乱光測定機1160は、角度分布の測定ではCCDイメージセンサを使用する。波長分布の測定では分光器とCCDイメージセンサを使用する。
FTディスク1280は、図33に示すように、円周上に複数の光散乱体(ピット)1340が間隔をおいて並べられて構成されており、光源1090からのビームスポット1320が、FTディスク1280が回転すると、相対的に実線の状態から点線の状態に移動する。
実線及び左側の点線で示すビームスポット1320は、2つの光散乱体1340を含む領域を照射する状態を示しており、真ん中の点線1330が一つだけの光散乱体1340を含む領域を照射する状態を示している。
本発明の光学的測定装置を記録装置として利用する場合を考慮すると、記録装置としては、記録密度と読み取り速度が重要である。読み取り速度に関しては、本発明の光学的測定装置では、フーリエ変換を行うため、信号のON、OFFから直接データを読み取る場合に比べ、計測に時間がかかる。それを補う手段として、イメージセンサまたはスペクトラムアナライザで測定したデータについて、フーリエ変換をFTチップを並列に用いて行うことができる。あるいは、散乱光の角度分布のフーリエ変換をレンズを用いて光学的に行うことも可能である。
その場合は、レンズを含めた光学系で散乱光の角度分布を、RCWAやFDTD法、境界要素法などの波動光学に基づいた方法を用いて計算をすることになる。レンズを含めた光学系の計算結果と実験結果を比較することで、厳密な距離を求めることができる。また、一旦、電気信号に変換してからフーリエ変換を行うので、電気信号に変換するのにも時間がかかる。それを補う一つの手段として、散乱光の情報を、光ファイバや光増幅器を通して送信し、最終的なユーザまで、直接データを受け渡しする方法が挙げられる。
記録密度に関しては、斜め入射により光学的記録媒体の記録密度を向上させることができる。その手段として、反射光測定と同じレンズの中心から外れた部分に光を入射させ、入射平面内で40°<|θi|とすることができる。
媒体の光学的測定装置(光学的読取装置)読み取り装置として、信号強度を稼ぐためには、なるべく広い角度範囲から光を入射するのが好ましい。例えば、試料面に垂直なZ軸について、Z軸となす角θzが、40°<θz<90°である入射角θzに60%以上の光量(W単位)があり、Z軸について軸対称であることで実現できる。
また、斜め入射による、光学的記録媒体の記録密度向上を最大限に生かすためには、入射平面内で40°<θdまたは−40°>θiであって、sin(θd)−sin(θi)>sin(40°)であることが好ましい。sin(θd)−sin(θi)が大きいほど、分解能を高くできる。
分解能を向上させ、記録密度を向上する手段の一つとして、隣接する散乱体の散乱特性を変える方法がある。異なる色情報を持つ場合には、カラーフィルタやノッチフィルタを使うことで実現できる。波長の異なる複数の信号を含む散乱光を、ノッチフィルタで3つ以上に分け、色ごとにフィルタした後に検出することで、分解能を向上できる。カラーフィルタの代わりに偏光子を使えば、偏光情報で分離できる。寿命の異なる蛍光体を使えば、時間分解測定して散乱強度の減衰を解析することで、寿命情報で分離できる。
直線上に形成された三つ以上の光散乱体を含む領域の各散乱体間の距離を解析する場合、端の散乱体からの距離が分かれば計測できる。このためには、本発明者らは、左端の散乱体からの散乱強度を変えればよいという知見を得た。
散乱強度を変える手段の一つとして、入射光AとBの二つを用い、左端の散乱体には入射光Aを、それ以外の散乱体には入射光Bを照射し、入射光Aの入射角を1°以上90°以下変えて散乱光の角度分布を測定する方法が挙げられる。
もう一つの手段として、パルスを用いた時間分解計測が挙げられる。時間変調のある入射光AとBの二つを用い、最も端の散乱体には入射光Aを、その他の散乱体には入射光Bを照射でき、入射光AとBの時間変調のタイミングがずれており、該時間変調を測定可能な時間分解能で計測することで実現できる。
時間変調のある入射光は、多層化された光学的記録媒体にも適用できる。複数層にわたり直線上に形成された三つ以上の光散乱体に適用でき、スリットまたはピンホールもしくは導波路を通る時間変調のある入射光AとBの光源を用い、入射光AとBの光源、レンズ、光検出器の順に並んでおり、光散乱体が三つ以上形成された直線と垂直な断面について、入射光の軸から10°以上ずれた光散乱を検出する。
多層化された光学的記録媒体の各層には、レンズの焦点位置は、光軸方向に長くてもよい。各層で光散乱体が三つ以上形成された直線と垂直な断面について散乱体に異方性を持たせ、散乱光を光散乱体が三つ以上形成された直線の軸周りに入射光の光軸に対して斜め方向に出射させ、光検出器の検出位置を変えることで、各層の信号を別々に検出することが可能である。以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
<光学的測定試験1>
実施例1では、断面が矩形の棒状の光散乱体に光を入射し、その散乱光の角度分布から、サイズと吸光係数(消光係数kと比例する)を求める本発明の光学的測定方法を光学的測定試験1において説明する。
図1のような、透明な板上の矩形の光散乱体を用いる。幅vが3で、高さdが1.5.屈折率の実部が1.5、消光係数kが0.02の光散乱体を計測する。板の屈折率は1.5であり、その厚みは、裏面からの反射を無視できる程度に厚い。
条件1:
v=3λ
d=0.5×v
奥行き:h=1000λ
消光係数k=0.02
計測に先だって、3次元形状測定できる共焦点顕微鏡、あるいは微分干渉顕微鏡で光散乱体の大まかな形状と大きさを把握する。また、屈折率の実部については、その値を予測できる光散乱体を使う。または、別途、ある波長について、屈折率計で計っておきその値をそのまま用いる。第3の方法として、光散乱の全光線反射率と全光線透過率の比を計測し、形状から予測される本発明の方法を用いた計算値の比を算出し、この二つを比較することで、屈折率の実部を予測してもよい。ここで、光学的測定には、光源としてアルゴンレーザーの波長λ=0.5145μmの光を用いる。
この計測は、図21のようにスリットで、光散乱体への入射光の照射範囲が光散乱体の幅vよりも大きくなるように調整し、散乱光の角度分布をCCDイメージセンサで計測する。CCDイメージセンサとしては、JAIのCV−M4+CLを使うことができる。
これは、2/3型プログレッシプスキャンCCDであり、有効画素数が1492(H)×1040(V)の145万画素、画素サイズが6.45×6.45μm、フレームレートが24fps、映像出力が10bit カメラリンクである。このイメージセンサをRS−232Cのボードを介して計算機につなぐ。また、計算機でのデータ取り込みのために、National Instruments CorporationのLabVIEWというソフトでプログラムを組む。レンズとしては、シグマ光機の合成石英レンズを用いる。
散乱光の角度分布は図9の“3−0.02”に示されたようになる。解析に先立ち、この角度分布の0近傍のピークの影響を小さくするために、1/(|sin(θ)|+0.001)を窓関数として掛ける。なお、定数0.001は、0°以外の角度の光強度の平均(図9ではゼロ以外にマーカーのある観測点の平均)と0°の光強度との比から設定する。
さらに、角度分布の変動周期を求めるために、フーリエ変換を行うと図11のようになる。このとき、3.7にピークがある。この3.7は、幅vが3に相当する。このようにして計測から、幅vが求められる。
レンズの焦点距離の調整、および、光散乱体に光が当たっていることの確認は、別途用意したレンズ付きの小型CCDカメラをモニターにつないで、光散乱体を観察することで行う。
また、図9では、散乱角度の絶対値が0.05ラジアン以上の強度は、入射光量を1、集光範囲を31波長として、14%となっている。kが0,0.02,0.04と変化すると、該散乱強度が順に16%、14%、12%と変化するので、これを元に、kの値を決めることができる。吸収係数αは4πk/λで与えられる。あるいは、光吸収量によって、kを決めることもできる。
表1と表2は屈折率において、実部を1.5とし、虚部のkを変えて計算した吸収の値である。表1は面積無限大とみなせる厚みdの平面のフィルムに関する結果、表2は図1の矩形に関する結果であり、kは矩形部分のみ変え、板部分は0とした。矩形は深さdでv=2dである。板部分の厚みは無限大とみなした。
また、表1と比較するために、表2では、吸収の値をΛ/v倍してある。吸収の値は1から全ての反射率と透過率を引いた値である。表2は表1と同様、吸収の値が、kおよびdに対して単調に増加することから、dがきまれば、kを決めることができる。
この測定方法としては図22のように、散乱角度の絶対値が0.05ラジアン以下の光および光散乱体によって散乱されていない光を遮蔽物390でカットする方法を使うことができる。また、光源を白色光とし、分光器で計測することによって、波長スペクトルを得ることができる。各波長ごとの入射光量を、分光器で計測し、各波長ごとのkを計算することになる。入射光量の測定方法は、例えば、遮蔽物390と光散乱体410を除いて計測することで可能となる。
レンズの焦点距離の調整、および、光散乱体に光が当たっていることの確認は、別途用意したレンズ付きの小型CCDカメラをモニターにつないで、光散乱体を観察することで行う。
(実施例2)
<光学的測定試験2>
実施例2では、断面が三角形の棒状の光散乱体に光を入射し、ある特定角度における散乱光の波長分布から、大きさと消光係数を求める本発明の光学的測定方法を光学的測定試験2において説明する。
図2のような、透明な板上の三角形の光散乱体を用いる。1/波長を2から10まで変えて、幅vが1で、高さdが0.5、屈折率の実部が1.5、消光係数kが0.05の光散乱体を計測する。
条件2:
v=1
d=0.5×v
奥行き:h=1000
消光係数:k=0.05
なお、ここでは計測する波長範囲の内、最長の波長1000nmを1とし、最短の波長200nmを0.2とする。計測は、図23のようにスリットで、光散乱体への入射光の照射範囲が光散乱体の幅vよりも大きくなるように調整し、散乱角45°における散乱光の波長分布を分光器で計測する。
分光器としては、オーシャンオプティクスのMAYA2000PRO分光器を使うことができる。分光器に光を入れるための光ファイバーとしては、オーシャンオプティクスのコア径450μmで耐紫外線性のあるエクストリームSRを使うことができる。レンズとしては、エドモンド・オプティクスのアクロマティックレンズを用いることができる。
波長分布は図19のk=0.05に示されたようになる。さらに、波長分布の変動周期を求めるために、フーリエ変換を行い、横軸の単位をμmに直すと図20のようになる。このとき、1.07μmにピークがある。この1.07μmは、幅vが1μmに相当する。このようにして計測から、幅vが求められる。また、幅vが定まれば、図19のように、散乱光を測定することで、実施例1と同様にして、波長スペクトルを得ることができる。
(実施例3)
本発明の実施例3を説明する。実施例3では、2つの光散乱体1060は、互いにサイズ及び形状が同じであり、図24(a)に示すように、形状は矩形であり、奥行き(図中、紙面に垂直方向の幅)が測定範囲に比べて十分大きい充填係数が50%の矩形の凸部であり、基材である平板1040上に形成されている。
光散乱体60が多数ある場合には、図24(b)のように、m番目の形状の高さまたは深さと幅をdm、vmとし、m=1,2,3、・・・とする。また、m番目とm+1番目の光散乱体60の重心間の距離をwmとする。
平板1040と光散乱体1060の屈折率はともに1.5である。dsは平板の厚みであり計算上は無限大と考える。dは光散乱体1060の高さであり、wは2つの光散乱体の間(重心間)の距離であり、本実施例3では、光散乱体1060の幅はw/5(充填係数が20%)とした。ΛはRCWAにおける計算上の周期である。入射光1020は平板1040に垂直な方向から入射し、散乱光の一部が散乱角θ方向に進む。
<光学的測定試験3>
実施例3において、2つの光散乱体の組について、次のような条件3で実証的な光学的測定試験3を行う。その結果を、図27及び図28で説明する。光散乱体の配置は、図24(a)のようにする。図24(a)の2つの光散乱体は形状とサイズが同じである。また、ビームスポットは図29(a)のように配置する。
条件3:
w=1.2λまたは1.4λ、1.6λ、1.8λ
v=w/5
d=0.25×v
奥行き:h=1000λ
ここで、光学的測定には、光源としてアルゴンレーザーの波長λ=0.5145μmの光を用いる。このとき、奥行きh1、h2、h3は、測定領域つまり光の当たっているビームスポットの領域に対して十分大きいと考える。
実施例3の光散乱体1060の作製は次のようにして行うことができる。1mm厚の透明なガラス基板(平板の材料)にネガ型電子線レジストを乾燥後膜厚が2μとなるようスピンコートする。ガラスきりで1cm角にガラスを切り出す。目的とするパターンを電子線で露光する。露光したレジストを洗い流す。四塩化炭素や酸素などの混合ガスでドライエッチングを行いガラス基板に溝を掘り、残ったレジストを溶剤で洗い流して試料とする。
図26は、本発明の実施例3の光学的測定方法及び光学的測定装置の全体構成を説明する図であり、また、光学的測定方法及び光学的測定装置により、光散乱体1060を反射で測定する場合の配置を示す図である。
光源1090から出た光は、スリット1110を通ってから、対物レンズ1130で集光され、2つの光散乱体1060で散乱される。対物レンズ1130で平行化された散乱光1150の光散乱強度は、散乱光測定機1160(角度分布の測定ではCCDイメージセンサを使用。波長分布の測定では分光器とCCDイメージセンサを使用。)で計測され、その結果が計算機1170に読み込まれ、フーリエ変換される。
2つの光散乱体1060及び平板(ガラス基板)1040から成る測定対象物(試料)1140は、裏面反射を防ぐためにダブプリズムに透明接着剤を用いて平板1040の裏面をはりつけてもよい。
対物レンズ1130は、スリット1110のサイズにあわせて、中心部分を平らにする方が、2つの光散乱体1060に入射光が当たり、かつ、反射散乱光1150が対物レンズ1130で平行光となるので、好ましい。2つの光散乱体1060に入射光を当てるために、スリット1110の代わりに、縦横で焦点距離の異なる楕円レンズを用いてもよい。
対物レンズ1130は、開口数NAが0.8以上1未満のものを用いるのが好ましい。NAが大きいと検出される角度範囲を広くできる。ビームスポットのサイズを奥行き方向(h方向:図26の紙面に垂直な方向)に1.6λ、水平軸の方向(w方向:図26の紙面に沿って上下方向)に4λとなるよう光源からの光をスリット1110で遮るのが好ましい。
この散乱光の角度分布のRCWAによる計算結果は図27のようになる。計算では奥行き方向h方向は無限大として、奥行きのh方向の散乱の影響は考えていない。Λ=31λとし、入射角は、h方向に直交する面内において、θ=0°とした。入射角について、h方向に直交する面内にする理由および、θを0°とする理由は、測定及び解析を容易にするためである。横軸は散乱角度である。横軸をsin(θ)に直すと、図27は一定間隔で並ぶので、そのまま、離散的フーリエ変換を行うことができる。
図28はその結果であり、横軸をλ/n0倍することで2つの光散乱体の距離wcalcを得ることができる。したがって、横軸は空気の屈折率n0×wcalc/λに対応している。n0=1なので横軸はwcalc/λとなる。ピークの横軸が1.2,1.4,1.6,1.8となり、実際に、2つの光散乱体の間の距離wに対応していることが分かる。
2つの光散乱体1200の組1190を複数設けた場合の、それらの並べ方と入射光のビームスポット180の関係の例を図29に示す。2つの光散乱体1200は、図29(a)に示すように、1組ずつ別々にする構成としてもよいし、図29(b)に示すように、一つの光散乱体200を左右の光散乱体の組1210で共有する構成としてもよい。
<光学的測定試験4>
本実施例3において、試験1と同様にして、次のような条件4の2つの光散乱体について、実証的な光学的測定試験4を行った。ここで、vm2を光散乱体の幅、dm2を高さまたは深さ、hm2を奥行き、wm1を各光散乱体の重心間の距離と定義する。m1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図24(b)のようにする。また、ビームスポットは図29(b)のように配置する。
条件4:
w1=3λ
w2=4λ
w3=5λ
v1=v2=v3=v4=0.5λ
d1=d2=d3=d4=0.5λ
h1=h2=h3=1000λ
光学的測定試験4の結果を、図30及び図31に示す。図30は、散乱角に対する相対散乱強度を示すグラフである。図31は、図30の光散乱強度分布をフーリエ変換して示される相対散乱強度分布である。図31において、wcalc/λ=3, 4, 5の位置にピークがあり、2つの光散乱体の距離が3λ,4λ,5λであることを示している。
<光学的測定試験5>
図34は、光散乱体1060が複数存在する多点の光散乱用に形成された、複数の矩形凸部の構成を示している。図35は、同様に多点の光散乱用に形成された複数の矩形の光散乱体の構成例、及び光散乱体1200、1360とビームスポット1350の位置関係の例を示している。この構成例では、左端の光散乱体1360の高さが他の光散乱体1200より高い。
図34に示す構成について、次のような条件5で複数の矩形の光散乱体を、前記光学的測定試験3の場合と同様な作製法で作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から矩形の光散乱体の多点間の距離計測でw1,w2,w3を求める光学的測定試験5を行った。
ここでは、平板1040と複数の光散乱体1060の屈折率は1.5とした。dm2が高さ、vm2が幅、wm1が左端の矩形からm1+1番目の矩形までの距離を示している。ここでm1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図34のようにする。
条件5:
w1=3λ
w2=4λ
w3=5λ
v1=v2=v3=v4=Minimum(w3−w2,w2−w1,w1)/5
d1=v1
d2=d3=d4=v1/2
h1=h2=h3=h4=1000λ
Minimum()は最小値を選ぶ関数である。
図36は、光学的測定試験5で得られた光散乱強度角度分布をフーリエ変換したグラフである。図36に示すように、3、4、5λにピークが出て、w1,w2,w3に対応していることも分かる。また、w3−w1(図34参照)に対応する2λのピークが小さいことが分かる。以上のように、最も端の光散乱体の光散乱強度を大きくすることで、左端の光散乱体1360と他の光散乱体1200との間の距離を求めることができる。
図34に示す構成及びこの光学的測定方法の利点の一つは、一度に得られる情報量が多いので、単位時間当たりのデータの取得量を増やすことができる点である。もう一つの利点は、一つのピークを基準に他のピークの大きさを規格化することで、強度変調ができることである。強度変調により、さらに、情報量を増やすことができる。
<光学的測定試験6>
図34に示す構成について、次のような条件6の複数の矩形の光散乱体を、前記光学的測定試験3の場合と同様に作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から矩形の光散乱体の多点間の距離計測でw1,w2,w3を求める光学的測定試験6を行った。
光学的測定試験6は、光学的測定試験5と同様、矩形の光散乱体の多点間の距離計測であるが、間隔を変えて比較した。すべての間隔をr倍している。rは0.6から0.9まで変えた。ここでは、平板1040と複数の光散乱体1060の屈折率は1.5とした。dm2が高さ、vm2が幅、wm1が左端の矩形からm1+1番目の矩形までの距離を示している。ここでm1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図34のようにする。
条件6:
r=0.6,0.7,0.8または0.9
w1=3λ×r
w2=4λ×r
w3=5λ×r
v1=v2=v3=v4=Minimum(w3−w2,w2−w1,w1)/5
d1=v1
d2=d3=d4=v1/2
h1=h2=h3=h4=1000λ
Minimum()は最小値を選ぶ関数である。
図37は、光学的測定試験6で得られた光散乱強度角度分布をフーリエ変換したグラフである。図34に示すように垂直入射では、rが0.6、0.7では、ピークの分離が悪いことから、光散乱体の距離は0.7から0.8λに最小値の測定限界があることが分かる。
光学的測定試験6は次のように行う。計測には波長λ=0.5145μmのアルゴンレーザーを用いる。図34において、ビームスポット1350のサイズを、奥行きは最小のhm2(m=1,2,3,4)より十分小さくなるように、横方向は最大のwm1より十分大きくなるように設定する。
例えば、奥行きh方向に1.6λ、水平軸のw方向(図34の左右方向)に7λとなるよう設定する。計算では奥行き方向hは無限大として、奥行き方向hの散乱の影響は考えていない。また、入射光20は空気と平板1040の界面に対して、垂直入射とした。
光学的測定装置は、図40のようにレーザー光をスリットを通し、さらに、光散乱体である光散乱体及び平板から成る試料面に隣接して設置したスリットを通して散乱させる。光散乱体が矩形凸部である場合、レーザー光を長さ3mm幅10μmのスリットを通して、2つの光散乱体1060に照射して光を散乱させる。検出は、ゴニオメータとスリット付きPINフォトダイオード(CCDを用いてもよい)により行い、角度と光散乱強度を検出する。
光学的測定装置によって光散乱強度角度分布を測定し、この測定データのデータ処理において、横軸を屈折率×(角度の正弦)として、フーリエ変換を行うと、前記図37に示すように、ゼロ以外にピークがでる。このピークの横軸が矩形の光散乱体の多点間の距離である。屈折率は、散乱光検出機器と光散乱体の間を満たす媒体の屈折率で、空気中では1である。
(実施例4)
本発明の実施例4を説明する。実施例4では、2つの光散乱体1070は互いにサイズ及び形状が同じであり、図25(a)、(b)に示すように、形状は二等辺三角形の凸部であり、基材である平板1040上に形成されている。この図25(a)、(b)に示す例では、wは2つの光散乱体70間の距離であり、これは、二等辺三角形の凸部の底部の左右方向の幅と同じである。
<光学的測定試験7>
図25(a)に示す2つの光散乱体1070が二等辺三角形の凸部である構成について、次のような条件7で二等辺三角形凸部及び平板1040から成る試料を作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度からwを求める光学的測定試験7を行う。図25(a)の2つの光散乱体は形状とサイズが同じである。また、ビームスポットは図29(a)のように配置する。
ここでは、平板1040と複数の光散乱体1070の屈折率は1.5とした。dが光散乱体1070のそれぞれの高さ、vが2つの光散乱体1070間の距離である。hは奥行きである。
条件7:
w=λ
v=λ
d=λ
奥行き:h=1000λ
試料の作製は、機械加工で金型に1μm間隔で2つの三角形の溝を掘る。作成した金型を用い、2mm厚の透明なアクリルの板にUV硬化で、UV硬化樹脂を転写する。これを試料とする。
図40は、光学的測定試験7において透過で測定する場合の光学的測定方法及び光学的測定装置を説明する全体構成を示す。キセノンランプの白色光源である光源1090からの入射光1100を、長さ3mm幅10μmのスリット1110を通して、試料の2つの光散乱体1070に照射し散乱させ、スリット1370を通して出射する。スリット1110と光源1090の間と光散乱体1070とスリット1110の間のいずれかまたは両方にレンズを置いて入射光1100の強度を上げてもよい。
散乱光測定機(スペクトラムアナライザ(分光器とCCDイメージセンサでできている))1410を、ゴニオメータ1400で測定点1380の位置の角度に固定し、スリット1390付きで、波長ごとの光散乱強度を検出する。さらに、光散乱強度を光源1090の波長の強度分布で規格化され、その光散乱強度は、計算機1170に読み込まれ、フーリエ変換される。
図38は、光学的測定試験7によって得られた2つの光散乱体が三角形の場合に関する、ある散乱角θでの透過光散乱強度の波長依存性を示すグラフである。散乱角θを47.2°または19.5°とした。計算ではΛ=47λとした。
図39は、図38のグラフに示すある散乱角θでの光散乱強度の波長依存性を、フーリエ変換し、さらに、数値処理したものである。このフーリエ変換及び数値処理は次のようにした。w/λ2=1とすると、w/λ軸のサンプリング間隔が0.05であり、この値は全測定幅/観測数N=9/180で求まる。ここで、9は、波長λ1から波長λ2まで測定するとき(ただし、λ1<λ2)、w(1/λ1−1/λ2)で、180は等間隔に取った観測点数である。
例えば、波長変化に伴う光散乱強度の変動周期が2のとき、逆数の0.5、周期が3.3のとき、逆数の0.3がフーリエ変換で得られる。変動周期は、光散乱体の幅やアスペクト比に鈍感で、測定散乱角θとwと屈折率nで決まる。屈折率は、光散乱体から測定器までの間が大気中の場合、空気の屈折率の1である。
変動周期がL1となった時、w/λ=1に対応する周期をL0とすると、実際のwはL1/L0で与えられる。ここで、L0はnsinθである。nは測定系の媒体の屈折率である。
(実施例5)
本発明の実施例5を説明する。実施例5では、3以上の複数の光散乱体が備わっており、複数の光散乱体1080は正弦凸部である、複数の正弦凸部の光散乱体1080は、基材である平板上に形成され、互いにサイズ及び形状が同じである。
<光学的測定試験8>
実施例5について、図24(c)に示すように、正弦凸部として形成された4つの光散乱体1080と基材である平板1040から成る試料を作成し、次の条件8について、光学的測定試験8として、光散乱体の多点間の距離計測を行った。図24(c)の2つの光散乱体は形状とサイズが同じである。また、ビームスポットは図29(a)のように配置する。wは2つの光散乱体間の距離、vは光散乱体の幅、dは高さ、hは奥行きである。
条件8:
w=3λ、4λ、または5λ
v=w
d=v/2
h=1000λ
光学的測定試験8では、試料の作製は次のように行った。1mm厚の透明なガラス基板に可視域で透明なポジ型電子線レジストを乾燥後膜厚が2μmとなるようスピンコートする。ガラスきりで1cm角にガラスを切り出す。目的とするパターンを電子線で露光する。四塩化炭素や酸素などの混合ガスでドライエッチングを行いガラス基板に溝を掘って、さらに残ったレジストを溶剤で除去して試料とする。
図41は、光学的測定試験8で得られる光散乱強度角度分布のデータを計算し、フーリエ変換を行った結果を示すグラフである。w1=3λ、w2=4λ、w3=5λに相当するピークがあることが分かる。
(実施例6)
本発明の実施例6を説明する。実施例6では、3以上の複数の光散乱体を備えたものであり、複数の光散乱体は矩形凸部、三角形凸部及び正弦凸部のいずれも有するものである。
<光学的測定試験9>
実施例6の構成例1として、複数の光散乱体として、図示はしないが、矩形凸部、三角形凸部、矩形凸部及び正弦凸部の4つの光散乱体が順番で並べられ、基材である平板上に形成された試料について、光学的測定試験9を行った。試料の作製は、実施例5の光学的測定試験8で使用した試料と同様にできる。
光学的測定試験9では、次の条件9で、複数の光散乱体(順次並べられた矩形凸部、三角形凸部、矩形凸部及び正弦凸部)の多点間の距離計測を行った。ここで、vm2を光散乱体の幅、dm2を高さ、hm2を奥行き、wm1を各光散乱体の重心間の距離と定義する。m1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図34のようにする。
条件9:
w1=6λ
w2=7.5λ
w3=9λ
v1=v3=λ/4
v2=v4=λ/2
d1=λ/2
d2=d3=d4=λ/4
h1=h2=h3=h4=1000λ
図42は、光学的測定試験9によって得られた光散乱強度角度分布についてフーリエ変換を行った結果である。図42において、w1=6λ、w2=7.5λ、w3=9λに相当するピークがあることが分かる。矩形と矩形の距離に相当するw2のピークがやや大きくなっている。
<光学的測定試験10>
実施例6の構成例2として、複数の光散乱体として、図示はしないが、三角形凸部、矩形凸部、三角形凸部、矩形凸部及び正弦凸部の5つ光散乱体が順番で並べられ、基材である平板上に形成された試料について、次の条件10で、多点間の距離計測を内容とする光学的測定試験10を行った。
複数の光散乱体と平板から成る試料の作製は、実施例5の光学的測定試験8で使用した試料と同様に作成した。ここで、vm2を光散乱体の幅、dm2を高さ、hm2を奥行き、wm1を各光散乱体の重心間の距離と定義する。m1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図34のようにする。
条件10:
w1=3λ
w2=4λ
w3=5λ
w4=6λ
v1=λ
v2=v4=λ/4
v3=v5=λ/2
d1=v1
d2=d3=d4=d5=v1/2
h1=h2=h3=h4=h5=1000λ
図43は、光学的測定試験10によって得られたある角度における光散乱強度波長分布を計算し、横軸を1/λとしてフーリエ変換を行った後、1/(nsin(θ))倍した結果である。nは測定系の媒体の屈折率で、通常は空気の屈折率である。
計算する波長範囲は、波長最長を最も短い屈折率分布間の距離程度とし、波長最短をその半分以下とするのが好ましい。ここでは波長をλからλ/6まで変えた。データは1/波長を0.02/λ間隔で計算し、251点分計算した。さらに、0.02/λ間隔でゼロを加え、全部で2048点とするゼロフィリングをした後、離散的フーリエ変換を行った。
変換後の各値それぞれに、共役な値を掛けて、絶対値の二乗を得た。得られた値について、横軸を1/(nsin(θ))倍して、フーリエ変換の結果とした。横軸を1/(nsin(θ))倍したときに、観測角が、30°以下では、分解能が悪いので、35°以上とした。
図43において、三角形凸部と三角形凸部の間のw2=4λに相当する矢印で示したピークが最も大きく、次に大きいのが、三角形凸部と正弦凸部の間のw4=6λに相当するピークである。三角形凸部と矩形凸部の間のピークは、それらに比べてかなり小さい。このように、左端の三角形凸部と形状が似ている方が、大きいピークが得られる。なお、これらのピークの横軸の値は、図43のように、実際の距離より15%ほど大きめになった。
(実施例7)
本発明の実施例7を説明する。実施例7では、2つの光散乱体は互いに異なるサイズの矩形凸部であり、基材である平板上に形成されている。
<光学的測定試験11>
実施例7について、下記の条件11で、光学的測定試験10として異なるサイズの矩形凸部の2点間の距離計測を行った。試料の作製は、実施例4の光学的測定試験7における試料の作製と同様の方法である。ここでは、平板と複数の光散乱体の屈折率は1.5とした。w1は2つの光散乱体間の間隔であり、d1、d2が光散乱体のそれぞれの高さ、v1、v2が2つの光散乱体の横幅である。h1、h2は奥行きである。
条件11:
w1=3λまたは6λ
v1=w1/2
d1=v1
v2=v1×x
d2=v2
h1=h2=1000λ
ここでx=0.9〜1.1である。
図44は、光学的測定試験11によって得られた光散乱強度角度分布について、フーリエ変換を行って得られたグラフである。フーリエ変換で求めた距離が、片方の矩形凸部のサイズが変化したときに、真の値からどのくらいずれるかを示している。ここで矩形凸部の幅は約0.9から1.1倍まで変化させた。2つの矩形凸部の高さと幅が異なると、計算値が真の値とずれることが分かる。
(実施例8)
本発明の実施例8を説明する。実施例8では、2つの光散乱体1440は、図45に示すように、平板1430内に埋め込まれた矩形格子として形成されている。
<光学的測定試験12>
実施例8について、平板1430に埋め込まれた矩形格子として形成された2つの光散乱体1440の2点間の距離計測をする光学的測定試験1210を行った。測定対象物(試料)1420は、平板1430と平板に埋め込まれた2つの矩形の屈折発生体1440から成るものであり、この試料1420の作製は、有機の光導波路の作製と同様で、次のとおりである。
2mm厚のガラス板に屈折率を調整した樹脂をスピンコートする。熱で硬化後、ネガ型電子線レジストをスピンコートする。目的とする形状に露光する。未露光部のレジストとその下の屈折率を調整した樹脂を溶剤で洗い流す。ガラス板と同じ屈折率の樹脂でスピンコートする。熱で硬化する。ドライエッチングで目的とする光散乱体が表面に出るまで削る。
光学的測定試験12の条件12は次のとおりである。n0,n1,n2はそれぞれ、空気、板、板に埋め込まれた光散乱体の屈折率である。w1は2つの光散乱体間の間隔であり、d1、d2が光散乱体のそれぞれの高さまたは深さ、v1が2つの光散乱体間の横幅である。h1、hは奥行きである。
条件12:
w1=3λ
v1=v2=w1/2
d1=d2=v1
h1=h2=1000λ
n0=1
n1=1.5
n2=1.5+δ
但し、δ=−0.02,−0.01,0.01,0.02である。
図46は、光学的測定試験12によって得られた光散乱強度角度分布について、フーリエ変換を行って得られたグラフであり、ピークの屈折率依存性を表している。屈折率差が小さいとピークの大きさは小さくなる一方で、ピークの横軸は動かない。
(実施例9)
図47は、本発明の実施例9を説明する図である。この図47についてはすでに説明したとおり、2つのハーフミラー1490とミラー1500とで入射光を二つに分け、それぞれを2つの光散乱体に別々に照射する構成である。このような構成を用いて、入射光を二つに分けることで、本発明の光学的測定装置において、散乱体ごとに別々に光を当てることができる。また、ハーフミラーを通った光1480あるいは入射光1100の片方に、減光フィルタまたは光チョッパーを入れることで、2つの入射光の強度比を調整することができる。
(実施例10)
図48は、本発明の実施例10を説明する図である。図48の構成はすでに説明したが、光源1090からの入射光1100を、フレネルゾーンプレート1510で集光すると同時に、スリット1110を光散乱体1070に近付ける構成である。このような構成を採用し、スリット1110を光散乱体1070に近付けることで入射光1100の輝度を上げることができる。
(実施例11)
本発明の実施例11を説明する。実施例11では、端の散乱体からの距離を選択的に測定する方法を示す。光源1600からの入射光1610を、可変スリット1620及びレンズ1630を順次通過させて、4つの光散乱体Sm(m=1、2、3、4)を備えた板光散乱板1660に照射する。
この実施例11では、左端のS1だけの散乱強度を変えて測定する。可変スリット1620の大きさを変えることで、集光スポットが、左端のS1を含む場合(入射光分布1640参照)と、含まない場合(入射光分布1650参照)を作り出している。
<光学的測定試験13>
図34に示す構成について、次のような条件13で複数の矩形の光散乱体を、前記光学的測定試験3の場合と同様な作製法で作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から矩形の光散乱体の多点間の距離計測でw1,w2,w3を求める光学的測定試験13を行った。
条件13:
w1=3λ
w2=4λ
w3=5λ
v1=v2=v3=v4=λ/5
d1=0またはv1
d2=d3=d4=v1/2
h1=h2=h3=h4=1000λ
d1=0のときは散乱強度が弱く、d1=v1のときは散乱強度が強い。d1=0とd1=v1の切り替えは、例えば、図49にように、可変スリット1620を使って、上記のとおり入射光の照射範囲を切り替えることで実現できる。図49では、可変スリット1620の幅を狭めたときに、左端の散乱体S1が照射されないようにすることで、左端の散乱体S1の散乱光がなくなるので、実質的にd1=0とすることができる。
散乱強度が弱いときの散乱光の角度分布をフーリエ変換したグラフをF0(n0×wcalc/λ)、後のグラフをF1(n0×wcalc/λ)とする。図50(a)はF1(n0×wcalc/λ)/F0(n0×wcalc/λ)の結果である。左端の矩形から、他の散乱体への距離に相当するn0×wcalc/λ=3,4,5のピークが強調されていることが分かる。
F1(n0×wcalc/λ)−F0(n0×wcalc/λ)の場合にも、縦軸のスケールが異なるのみで、ほぼ相似な分布が得られる。図50(a)では横軸が6から10までの間に、振動しているピークがみられる。この振動は、角度分布が無限の周期的関数でなく、有限の周期的関数であることによる。
この振動を抑えるために、窓関数を角度分布に掛けた後に、フーリエ変換を行う(非特許文献8参照)。ここでは、窓関数として、散乱角0度を中心に対称で山形の、eを基底とする指数関数を用いた。この条件で計算した、F1(n0×wcalc/λ)−F0(n0×wcalc/λ)の結果を図50(b)に示す。横軸が6以上の振動が抑えられており、n0×wcalc/λ=3,4,5のピークだけが強調された。
(実施例12)
本発明の実施例12を説明する。実施例12では、斜めから光を入射して波長分布を測定する方法と測定結果を示す。
図51は、実施例12の光学的測定装置を示し、白色光源1670、入射光用球面レンズ1700、ピンホールまたはスリット1690、入射光用球面レンズ1710、試料の散乱体1760、検出光用球面レンズ1720、受光部(光ファイバ1750の先端またはスリット)の順で並べられた光学系を備えている。
この図では分光器1730は受光用光ファイバ1750とつながっており、光ファイバ1750の先端はゴニオメータ1400上に配置され、レンズで集光された焦点に該先端の中心部が来るように微調整できる。ゴニオメータ1400は、第1の回転ステージ1740の上に乗っている。また、試料は3軸ゴニオメータ1770の上に、3軸ゴニオメータ1770は第2の回転ステージ1772の上に乗っている。
第1の回転ステージ1740は受光用光ファイバ1750を、第2の回転ステージ1772は試料を、同じ回転軸1774の周りに回転する。第1の回転ステージ1740と第2の回転ステージ1772は同じ回転軸1774の周りに独立に回転できる。試料は3軸ゴニオメータ1770上であって、試料の中心が回転軸1774上となるように置かれる。同じ回転軸であることで、光ファイバ用の第1の回転ステージ1740を回したときに、試料のほぼ同じ位置からの散乱光を計測できる。
直観的な例を挙げると、赤道上を回転する人工衛星(集光位置)から、地球を観察すると、北極南極(試料)は、地軸上(回転軸1774)上にあるので、ほぼ同じ場所をみることができるが、北極南極からずれた場所は、人工衛星が回ると、同じ方向には見えなくなる。
また、試料用の第2の回転ステージ1772を回したときに、集光位置はほぼ同じであるため、受光部を動かすことなく、試料からの散乱光を計測できる。直観的な例を挙げると、扇風機の中心軸は、ほぼ同じ位置に見えるが、羽の部分は、回転によって異なる場所に見える。
なお、光源は、白色光源1670を使用しているが、広い波長範囲で強い強度を持つものが好ましい。可視UV光の測定では100W以上のハロゲンランプやキセノンランプ使うことができる。重水素ランプとタングステンランプの組み合わせを用いてもよい。
球面レンズ1700、1710、1720や光ファイバ1750の材質はUV光を通す石英を用いた。光源に用いるライトガイド(図示せず)も石英が好ましい。なお、UV光が必要でない場合は色消しレンズを用いてもよい。分光器1730は分解能1nm程度で、感度が高いものが好ましい。
ところで、図51は、反射光を測定する構成を示しているが、透過光の測定は、白色光源1670を含む入射部分の配置が試料の背面側に配置変更される構成となるだけである。
光学的測定試験13において左端の散乱体S1だけ入射光を変調する手段として、光学的測定試験13に記載のスリット幅を変える方法のほかに次の2つの変調する手段がある。また、以下の光源1670は散乱光の波長分布を計測する場合は、白色光源であるが、散乱光の角度分布を計測する場合は、単色光源でよい。
変調する手段1:
図51において、光源1670とレンズ1700の間に第3のスリットを設け、レンズ1700による集光点がスリット1690のスリット開口部に来るように配置する。ゴニオメータ1680をピエゾ素子で動くようにして、スリット1690の位置を精密に制御する。レンズ1700による集光点の範囲とスリット1690の開口部を精密にずらすことで、レンズ1710による試料への集光範囲を制御することができる。この結果、左端の散乱体S1だけの照射強度を変調できる。
集光範囲の確認には、ズームレンズとUSBカメラの組み合わせを用いることができる。ズームレンズで像を100倍程度に拡大し、USBカメラで、コンピュータに画像データを転送し、ディスプレイで表示させることができる。
変調する手段2:
図51において、光源1670内に、スリットの短軸の幅と同じオーダーの距離だけ離れた2つの発光部を並べる。好ましくは2つのコアを発光部とする持つ光導波路である。また、試料としては、図49の4つの散乱体1660を用いる。第1の発光部からの光を、光散乱体S1に照射し、第2の発光部からの光を、他の光散乱体S2、S3、S4に照射する。第1の発光部からの光を変調することで、散乱体S1の照射強度を変調できる。
(実験例)
次に、図51に示す光学的測定装置を使用して、三角形の回折格子(試料の散乱体1760。以下、回折格子1760という。)の凸部二つを狙って、入射光のビームスポットのサイズを調整し、散乱光の波長分布を測定した実験例を示す。
白色光源1670には重水素ランプとタングステンランプの組み合わせを用い、入射光用には幅5μm長さ3mmのスリットを用いた。スリット1690に光源からの光が集光されるよう、レンズ1700の位置を調整した。回折格子1760の縞方向とスリット1690の長さ方向が平行になるようにスリット1690の傾きを調整した。さらに、入射光の焦点に回折格子1760が来て、かつ、短軸方向の長さが回折格子周期の倍となるように、レンズ1710および回折格子1760の位置を調整した。
散乱光は、レンズ1720を通した後、光ファイバ1750の先端で受けた。散乱光の集光点が光ファイバ1750の先端の中心にある入光部のコア近傍に来るよう暗室内で目視で調整した。光ファイバ1750は分光器1730につないだ。分光器1730はオーシャンオプティクス社製HR2000を用いた。
分光器1730で散乱光を計測しながら、計測される光の強度が最も強くなるよう、スリット1690の光軸方向の位置と回折格子(試料の散乱体)1760の位置の3軸方向の位置をおよび、光ファイバ1750の先端の3軸方向の位置を、ゴニオメータ1740に付属のマイクロメータで調整した。
図52では、異なる周期を持つ3つの三角回折格子それぞれの透過散乱光の波長分布を、図52(a)、(b)、(c)に示す。該波長分布は、スリット1690を通りレンズ1710で集光された光の波長分布で、測定された透過散乱光の波長分布を割り算することで規格化されている。図52(a)は周期1.8μm、図52(b)は周期3μm、図52(c)は周期5μmであり、いずれも凸部が二等辺三角形で、高さ/幅が0.48であり、屈折率1.52のUV硬化樹脂でできている。
それぞれの入射角θi3と散乱角θd1は表4に示すとおりである。この表4は、光散乱波長分布の測定および解析条件と解析結果を示している。入射角は回折格子の板の中でなく空気中での値である。また、解析した1/λの範囲は表で示したように、おおよそ1から3(μm−1)である。解析範囲が図52のそれぞれの図において、1±0.3(μm−1)および3±0.3(μm−1)の範囲で、範囲の端部が谷となるよう調整した。
次に、散乱光の上記図52に示す波長分布から、図53を求める方法を、説明する。入射角をθi3とし散乱角をθd1とし、それぞれの角度を測定している媒体(通常は空気)の屈折率をそれぞれ、nm、n1とする。λ1<λ2として、1/λが1/λ2から1/λ1まで等間隔に変化させ、観測数をN個とる。
フーリエ変換後の横軸をq = |n3 sin(θi3) - n1 sin(θd1)|で割り算する。横軸の最小値を0、最大値を{(N -1)/ [q(1/λ1-1/λ2)]}として、フーリエ変換された値をプロットする。実際には、最大値の半分以下の領域をプロットしている。
一方、白色光源を偏光子を通さずにそのまま使う実験について、シミュレーションで計算する場合は、次のようにする。TEモードとTMモードで別々に計算し(特許文QQ6を参照)、足した値を用いて波長分布とする。波長分布のフーリエ変換以下は上述の方法と同じである。
なお、本願の例では、TEモードとTMモードの与える波長分布の周期に大きな違いはないので、片方の偏光で代用してもよい(非特許文献19参照)。
図53(a)は、図52(a)をフーリエ変換した結果である。また、図53(b)は、図52(b)の散乱光を設計値を元に計算した図をフーリエ変換した結果である。極大値の横軸の値がそれぞれの距離に相当していることが分かる。
これらの結果を表4にまとめた。回折格子作製の設計値wと、実験値wexpと計算値wcalcがよく一致していることが分かり、本発明による測定の正しさが裏付けられた。
回折格子の次に2種の蝶の羽について、反射光の波長分布を計測した。前記回折格子の測定との違いは、透過でなく反射の測定である点と、生体のため形状が複雑な点である。これにより、一般の凹凸形状への適用可能性を検討する。
蝶AはCelastrina argiolus Linnaeus(雄)であり、蝶BはMorpho menelaus (雄)である。蝶の測定には、スリット1690の代わりに50μmφのピンホールを用いた。レンズ1710による集光点の断面は25μmφとなるように調整した(非特許文献24)。白色光源1670にはハロゲンランプを用いた。
蝶の羽の鱗粉は楕円形状であり、羽の面内で鳩の羽のように、楕円の長軸方向に重なって並んでいる。羽の面に垂直に計測した時の反射率が最も高くなる入射光の軸と、羽の面に垂直な軸を含む面に平行に光を入射させている。
図54が測定結果である。図54の(a)と(b)が蝶Aの、(c)と(d)が蝶Bの羽の反射光の波長分布である。入射角をθi1とし散乱角をθd1とするとき、θi1とθd1の組をθi1−θd1で表すと、図54の(a)と(c)のθi1−θd1は30°−0°であり、(b)と(d)のθi1−θd1は45°−(−10°)である。
該測定結果は、ピンホールを通り入射光用球面レンズ1710で集光された光の波長分布で、試料の反射光の波長分布を割り算することで規格化されている。この規格化によって、各波長ごとに、試料に入射した光に対する、試料の反射光の強度が分かる。
蝶A、Bともに大きいブロードなピークと短波長領域の小さいが鋭いピークとが観測される。ブロードなピークは、蝶の羽の面に垂直方向の構造由来と帰属され(非特許文献24参照)、小さいが鋭いピークは、蝶の羽の面に水平方向の構造に由来すると推定される。図中の矢印はほぼ等間隔であり、蝶Bの光学的な周期構造に由来すると思われる。
本発明の測定装置、方法を用いて、この散乱体(蝶の羽に含まれる散乱体)の間隔を計算する場合、フーリエ変換する代わりに矢印の間隔の逆数および角度の正弦値からも見積もることができる。間隔の逆数を前出の変数qで割ればよい。(c)が39μm、(d)が35μmとなり、近い値が得られた。
このように、回折格子のように単純な形状だけでなく、複雑な形状にも適用可能であることが示された。また、フーリエ変換を行わなくても、光散乱強度波長分布がフーリエ変換後のピークの横軸の逆数に相当する周期で変動することを利用して、フーリエ変換後のピークの横軸を求めることができることが分かった。
本発明の光学的測定装置、方法では、散乱光をレンズで集光し、1mm程度の直径を持つ受光部の中心に正確に集光しているが、これには特定の場所だけを観察できるという利点がある。例えば、蝶については、蝶の羽を羽に平行な面と入射平面を含む直線方向に動かして計測することで、散乱光の波長分布のブロードで大きなピークの横軸の値が、140μm周期で変化することが分かった。
この周期は、SEMによっても確認している。140μmは、図54(c)(d)より求めた散乱体の間隔の約4倍に相当しており、蝶の羽が光学的にはさらに微細な構造よりできているとすれば、実験結果を説明できる。このように、散乱光をレンズで集光し、受光部の中心に正確に集光することで、特定の場所の構造だけを測定できる。
(実施例13)
本発明の実施例13を説明する。実施例13では、斜めから光を入射して角度分布あるいは波長分布を計測したとき、どの程度分解能が向上するかを示す。
<光学的測定試験14>
図34に示す構成について、次のような条件14で複数の矩形の光散乱体を、前記光学的測定試験3の場合と同様な作製法で作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から矩形の光散乱体の多点間の距離計測でw1,w2,w3を求める光学的測定試験14を行った。
条件14:
w1=3rλ
w2=4rλ
w3=5rλ
v1=v2=v3=v4=λ/5
d1=v1
d2=d3=d4=v1/2
h1=h2=h3=h4=1000λ
ただし、rは0.1から2までの変数。
図55(a)は、条件14に相当する試料の光散乱体の概ねの構成を示し、1〜4は光散乱体の左端からの順番を示す。散乱角度分布をフーリエ変換した結果を図55(b)(c)に示す。図55(b)(c)の横軸縦軸は図42と同様にして得られる。散乱角度分布を測定する受光部は空気中にあり、空気の屈折率n0は1である。
図55(b)のθi2は25°、図55(c)のθi2は45°とした。(b)のrを0.4から0.6まで変え、(c)のrを0.3から0.5まで変えた。ここでの入射角θi2は、光散乱体およびその基材の屈折率n2=1.5中での値である。
θi2が45°では空気中からはほとんど入射できないが、図56に示すように、凹凸1780を備えた試料の試料面1820(基材の裏面)に、ほぼ同じ屈折率のプリズム1830を、やはりほぼ同じ屈折率の、UV硬化樹脂ではりつけ、プリズム1830の斜面から光1790を入射角θiで入射させ、光1800を散乱角θdで散乱させる。1810は、試料面1820に垂直な軸である。
図55から、入射角25°ではrが0.6以上で、入射角45°ではrが0.5以上で、ピークを分離できていることが分かる。図37(光学的測定試験6で得られた光散乱強度角度分布をフーリエ変換したグラフ)から、入射角0°ではrが0.8以上でピークが分離できていたことから、入射角を大きくすることで、分解能が向上することが分かる。入射角を45°より大きい70°とすれば、rが0.4でも十分ピークを分離できる。したがって、この場合の分解能は0.4λまでできることになる。
<光学的測定試験15>
次に図34に示す構成で矩形の代わりに二等辺三角形の場合について、透過の波長分布から距離を求める検討を行った。次のような条件15で複数の三角形の光散乱体を、前記光学的測定試験3の場合と同様な作製法で作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から三角形の光散乱体の多点間の距離計測でw1,w2,w3を求める光学的測定試験15を行った。観測角は45°で固定し、入射角θi2を変えた。
条件15:
w1=3rλ
w2=4rλ
w3=5rλ
v1=λ/5
v2=v3=v4=λ/10
d1=v1
d2=d3=d4=v1/10
h1=h2=h3=h4=1000λ
ただし、rは0.1から2までの変数。
1/λを2から4まで変え、1/λについて波長分布のフーリエ変換を行い、各ピークの分離を調べた。rを0.1刻みで変えた結果、分解能/λはθi2が0、25、45°のとき、この順で、1.0、0.7、0.7となり、やはり、斜めから入射することで、分解能が向上することが分かった。
以上の検討から、斜め入射により、角度分布または波長分布をフーリエ変換し距離を算出する場合において、分解能が向上することが分かった。
以上、本発明に係る本発明に係る光学的記録媒体の光学的測定方法、光学的測定装置及び光学的記録媒体を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。