JP6183746B2 - 遅延性アレルギー抑制剤 - Google Patents

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本発明は、IV型アレルギーに分類される遅延性アレルギーの予防や治療に有効な遅延性アレルギー抑制剤に関するものである。
アレルギー疾患は過剰な免疫反応により引き起こされる疾患の総称であり、主にI型からV型に分類される。
これらのうちIV型アレルギーは、他のアレルギーが抗体が関与する液性免疫に関するものであるのに対して、T細胞やマクロファージなどが関与する細胞性免疫に関するものである点で特徴的である。より詳しくは、T細胞が抗原と反応して感作されると、マクロファージの活性化因子など様々な生理活性物質を遊離し、組織障害を引き起こす。IV型アレルギーは、リンパ球の集簇、増殖、活性化などに時間がかかるため、他の急性アレルギーに比べて抗原との接触から発症まで24〜48時間程度と時間がかかることから、遅延性アレルギーとも呼ばれる。
遅延性アレルギーとしては、例えば、接触性皮膚炎、ツベルクリン反応、各種臓器移植片の拒絶反応、インスリン依存型糖尿病、シューグレン症候群、慢性肉芽種症、ギラン・バレー症候群などが挙げられる。また、アトピー性皮膚炎は、I型アレルギーとIV型アレルギーの複合型であるといわれている。
遅延性アレルギーの抑制剤としては、炎症を抑えるという観点から、従来、ステロイド系薬剤が主に使われていた。しかし、ステロイド系薬剤には副作用の懸念があることから、副作用がより少ない薬剤が求められている。例えば非特許文献1には、褐藻類由来のカロテノイドであるフコキサンチンにより、遅延性アレルギーが抑制されたとの報告がされている。
Sakai,S.ら,Biosci.Biotechnol.Biochem.,75(5),pp.1013-1015(2011)
上述したように、ステロイド系薬剤以外にも、天然のカロテノイド化合物であるフコキサンチンが遅延性アレルギーの抑制効果を示すことが知られている。しかし、近年、アレルギー性疾患が問題となってきていることから、より優れた遅延性アレルギー抑制剤が求められている。
そこで本発明は、遅延性アレルギーに対して優れた抑制効果を示す遅延性アレルギー抑制剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定のカロテノイド化合物が、上記のフコキサンチンよりも優れた遅延性アレルギー抑制効果を示すことを見出して、本発明を完成した。
本発明に係る遅延性アレルギー抑制剤は、下記式(I)で表されるカロテノイド化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
[式中、R1〜R3は、独立して水素原子またはC1-18アルカノイル基を示す]
上記カロテノイド化合物(I)としては、下記式(I1)の立体構造を有するもの、
[式中、R1〜R3は上記と同義を示す]
1およびR2が水素原子であるもの、また、R3がアセチル基であるものが好適である。
本発明に係る遅延性アレルギー抑制剤の剤形としては外用剤が好ましい。外用剤は、遅延性アレルギーの中でも接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の予防や治療に適している。
本発明に係る遅延性アレルギー抑制剤は、遅延性アレルギーを効果的に抑制することができる。特に、遅延性アレルギーの発症メカニズムのうち、エオタキシンへの好酸球の遊走や好酸球の集簇を抑制し、炎症などを軽減することができる。また、本発明に係る遅延性アレルギー抑制剤は、カロテノイド化合物であり、ステロイド系薬剤に比べて副作用が少なく安全性が高いといえる。よって本発明に係る遅延性アレルギー抑制剤は、遅延性アレルギーを有効に予防および治療できるものとして非常に有用である。
図1は、遅延性アレルギーによる炎症(耳部厚さ)に対する本発明に係るペリジニン、比較例であるフコキサンチン、および副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの効果を比較するためのグラフである。 図2は、遅延性アレルギーによる炎症部位での好酸球の生成の抑制に関する、ペリジニン、フコキサンチンおよびコルチゾールの効果を比較するためのグラフである。 図3は、遅延性アレルギーによる末梢血での好酸球の生成の抑制に関する、ペリジニン、フコキサンチンおよびコルチゾールの効果を比較するためのグラフである。 図4は、遅延性アレルギーによる炎症部位における、好酸球のケモカイン受容体のリガンドであるエオタキシンの生成の抑制に関する、ペリジニン、フコキサンチンおよびコルチゾールの効果を比較するためのグラフである。 図5は、エオタキシンによる好酸球の走化性に対する、ペリジニン、フコキサンチンおよびコルチゾールの抑制効果を比較するためのグラフである。
本発明に係る遅延性アレルギー抑制剤は、上記カロテノイド化合物(I)を有効成分として含有することを特徴とする。
本発明に係るカロテノイド化合物(I)のR1〜R3である「C1-18アルカノイル基」は、ホルミル基またはC1-17アルキル−カルボニル基をいい、ここで「C1-17アルキル基」は、炭素数1以上、17以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和炭化水素基をいう。C2-18アルカノイル基としては、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、ピバロイル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ノニルカルボニル基、6−メチルオクチルカルボニル基、7−メチルオクチルカルボニル基、n−デシルカルボニル基、8−メチルノニルカルボニル基、n−ウンデシルカルボニル基、9−メチルデシルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、10−メチルウンデシルカルボニル基、n−トリデシルカルボニル基、11−メチルドデシルカルボニル基、n−テトラデシルカルボニル基、n−ペンタデシルカルボニル基、n−ヘキサデシルカルボニル基、n−ヘプタデシルカルボニル基などが挙げられる。C1-18アルカノイル基としては、C1-8アルカノイル基またはC9-18アルカノイル基が好ましく、C1-6アルカノイル基がより好ましく、C1-4アルカノイル基がさらに好ましく、C1-2アルカノイル基がさらに好ましく、アセチル基が特に好ましい。
本発明に係るカロテノイド化合物(I)としては、下記式(I1)で表されるものが好適である。下記カロテノイド化合物(I1)の立体構造は、渦鞭毛藻であるSymbiodinium sp.OTCL2A株などから単離される天然のカロテノイド化合物であるペリジニンの立体構造に相当する。
また、R1およびR2としては水素原子が好ましく、R3としてはC1-18アルカノイル基が好ましい。なお、R1およびR2が水素原子であり且つR3がアセチル基であるカロテノイド化合物(I1)は、上述したペリジニンである。
上記の好適化合物の優れた遅延性アレルギー抑制効果は、後記の実験結果により実証されている。
本発明化合物、特に上記のペリジニンは、Symbiodinium sp.OTCL2A株などの渦鞭毛藻から単離精製することができる。
本発明に係るカロテノイド化合物(I)を産生する渦鞭毛藻の中でもSymbiodinium sp.は、海産の無脊椎動物と共生関係を持つ共生性のものである。宿主である海産動物としては、有孔虫類、放散虫類、扁形動物の無腸類、クラゲ類、サンゴ類、二枚貝類などを挙げることができる。よって、カロテノイド化合物(I)を天然から単離するには、渦鞭毛藻Symbiodinium sp.を上記海産動物から単離した上で培養し、培養した渦鞭毛藻をホモジェナイズなどした後、抽出すればよい。
抽出溶媒は、適宜選択すればよいが、例えば、メタノールやエタノールなどのアルコール系溶媒;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;ジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;ベンゼンやトルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸メチルや酢酸エチルなどのエステル系溶媒;ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;濃度60v/v%以上の、これら有機溶媒のうち水混和性有機溶媒と水との混合溶媒を挙げることができる。
抽出条件は適宜調整すればよい。例えば、抽出は常温で行うことができるが、抽出効率を高めるために、気温によっては30〜60℃程度に加温してもよい。また、抽出効率を高めるために抽出時には撹拌することが好ましい。或いは、渦鞭毛藻に抽出溶媒を加えた後に、渦鞭毛藻を抽出溶媒中で粉砕してもよい。また、抽出時間は特に制限されないが、例えば、1時間以上、10日以下程度にすることができる。
抽出操作後は、さらに、遅延性アレルギーの抑制作用を測定したり、既知化合物の物性データを参照するなどしつつ、薄層クロマトグラフィ、HPLC、分取クロマトグラフィなどのクロマトグラフィにより活性成分を特定していけばよい。
以上のとおり、カロテノイド化合物(I)は、渦鞭毛藻から単離するか、或いは単離された化合物を誘導体化することにより製造すればよい。例えば、R1〜R3の何れか1以上がC1-18アルカノイル基であるカロテノイド化合物(I)は、所定の水酸基をエステル化することにより製造することができる。かかるエステル化は、C1-18アルカノイル基に対応する酸、またはその活性化エステル化合物や酸クロライド化合物、さらには必要に応じて縮合剤を用い、当業者にとり公知の方法で行うことができる。但し、カロテノイド化合物(I)のうち天然化合物であるペリジニンのR3はアセチル基である。
本発明に係るカロテノイド化合物(I)は、遅延性アレルギー抑制剤の有効成分として用いることができる。なお、本発明における「抑制」には、遅延性アレルギーの発症の抑制、即ち「予防」と、発症した遅延性アレルギーの軽減、即ち「治療」の両方の概念が含まれる。従って、本発明の遅延性アレルギー抑制剤は、遅延性アレルギーの発症前に予防的に使用してもよいし、症状が比較的軽度なうちに治療するか或いは症状の進行を阻害するために使用してもよいし、重度な症状を軽減するために使用してもよい。
本発明の遅延性アレルギー抑制剤の剤形は特に制限されず、例えば、軟膏剤、ローション剤、溶液剤、懸濁剤、貼付剤、リニメント剤、パップ剤などの外用剤;トローチ剤や坐剤などの粘膜用製剤;注射剤;散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、エキス剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、チンキ剤、シロップ剤などの経口剤とすることができるが、遅延性アレルギーの中でも一般的な接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎が皮膚疾患であることから、外用剤とすることが好ましい。
本発明の遅延性アレルギー抑制剤は、有効成分であるカロテノイド化合物(I)の他、その剤形などに応じて、基材、賦形剤、着色剤、滑沢剤、矯味剤、乳化剤、増粘剤、湿潤剤、安定剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、抗酸化剤、佐薬、緩衝剤、pH調整剤、甘味料、香料などを配合することができる。
本発明に係るカロテノイド化合物(I)の投与量は、患者の症状、年齢、性別、患部の面積、予防的な使用であるか治療的な使用であるかなどに応じて適宜調整すればよいが、例えば、ヒトに投与する場合には、皮膚などへの塗布で1回当たり0.01mg以上、10mg以下程度、経口投与で0.1mg/kg体重/日以上、50mg/kg体重/日以下程度とすることができる。また、1日当たりの投与回数も、症状の重篤度、特に痒みの程度などに応じて適宜調整すればよいが、例えば、1回/日以上、3回/日以下程度にすることができる。
その他、本発明に係る遅延性アレルギー抑制剤は、日用品として用いることができる。
例えば、乳液、化粧水、クリーム、洗顔料、ジェル、美容液、パック・マスクなどの基礎化粧品;ファンデーション類、口紅類、白粉・打粉類、頬紅類、眉目類、美爪類などのメーキャップ化粧品;シャンプーやリンスなどの洗髪用化粧品;ヘアスタイリング剤、ヘアトリートメント剤、育毛剤、パーマネントウェーブ用剤、染毛剤、ヘアブリーチなどの毛髪用化粧品;香水やコロンなどの芳香化粧品;石鹸、液体ボディ洗浄料、サンケア製品、ハンドケア製品、防臭化粧品、脱色剤・除毛剤などのボディ化粧品;歯磨類や口中清涼剤などの口腔用化粧品などの化粧品とすることができる。即ち、本発明に係るカロテノイド化合物(I)を、遅延性アレルギーを抑制する目的で、上記化粧品の成分として配合してもよい。
その他、入浴は、肌を清潔にする、汗を流す、湿度を与える、体温を高めるなどの点でアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に有効である。そこで、本発明に係る遅延性アレルギー抑制剤を入浴剤として用いる。即ち本発明に係るカロテノイド化合物(I)をお湯に加えてもよい。
この場合、本発明に係るカロテノイド化合物(I)を湯中に直接入れて使用してもよいし、或いはその溶液を不織布などからなる多孔質袋体に浸み込ませた後に乾燥し、湯中に浸漬して揉み出しながら使用してもよい。また、温泉成分である塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウムなどの無機塩類と配合してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
製造例1:ペリジニンの単離
渦鞭毛藻であるSymbiodinium sp.OTCL2A株を、ヒメシャコガイTridacna croceaから単離した。当該OTCL2A株を、ES培地中、25℃で40日間培養した。132Lの培養液から得られたOTCL2A株細胞82.0gを凍結させ、70v/v%エタノール水(150mL)中、ホモジナイザー(Janke&Kunkel GmbH&Co.KGIKA−Labortechnik,Germany,「ULTRATURRAX T25」)を使ってホモジナイズし、4℃で3日間静置した後、遠心分離した。上清と沈殿を分離し、上記と同条件により70v/v%エタノール水(150mLずつ)で沈殿から再度2回抽出した。各抽出液を合わせ、減圧濃縮した。残渣を水(100mL)に懸濁し、酢酸エチル(200mLずつ)で3回抽出した。抽出液を合わせて減圧濃縮し、酢酸エチル可溶性フラクション(903mg)を得た。当該フラクションの一部(676mg)を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(シリカゲル:ナカライテスク社製「Silica Gel 60」,60mL,溶離液:ジクロロメタン/メタノール=99/1→98/2→96/4→92/8,各120mL)に付した。ジクロロメタン/メタノール=96/4および92/8で溶出したフラクション(264.8mg)のうち一部(199.2mg)を、ODSカラム(ナカライテスク社製,「Cosmosil 75C18−OPN」,19mL)にチャージし、80v/v%メタノール水(40mL)と85v/v%メタノール水(80mL)で溶出した。85v/v%メタノール水で溶出されたフラクション(98.8mg)から、下記条件のHPLCによりペリジニンを精製した(24.7mg)。
HPLC条件
カラム: ナカライテスク社製「Cosmosil 5C18−AR−II」,20mmφ×250mm
溶離液: 85%アセトニトリル水
流速: 6.0mL/min
比較製造例1:フコキサンチンの単離
褐藻であるPetalonia fascia(54.52g)を凍結させ、メタノール(500mLずつ)で4回抽出した。得られた抽出液を合わせ、減圧濃縮した。残渣を90v/v%メタノール水(100mL)に溶解した後、ヘキサン(100mLずつ)で2回、不純物を抽出した。残った90v/v%メタノール水層を濃縮した。残渣を水(100mL)に加えた後、酢酸エチル(100mLずつ)で2回抽出した。酢酸エチル可溶性フラクション(602.1mg)をシリカゲルカラム(ナカライテスク社製,「Silica Gel 60」,12mL)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(170mL)で溶出した。5番目のフラクション(32.4mg)を、ODSカラム(ナカライテスク社製,「Cosmosil 75C18−OPN」,10mL)にチャージし、85v/v%メタノール水(40mL)と90v/v%メタノール水(30mL)で溶出した。90v/v%メタノール水で溶出された3番目のフラクションに、フコキサンチン(12.8mg)が含まれていた。
試験例1:遅延性アレルギーに対する効果
BALB/c雌性マウスを日本クレア株式会社より購入し、8〜10週齢のものを実験に供した。先ず、免疫抑制細胞の増殖を防ぐために、シクロホスファミド水溶液を150mg/kg皮下注射した。2週間後、腹部を剃毛し、2,4,6−トリニトロクロロベンゼン(塩化ピクリル,以下、「PCl」と略記する)をエタノール/アセトン=3/1の混合液に溶解した7質量%溶液(0.05mL)を、剃毛部に塗布することにより免疫感作を行った。感作から2週間後、本発明に係るペリジニン、比較例であるフコキサンチン、または副腎皮質ホルモンであるコルチゾールを10μg耳部に塗布するか、或いは、ペリジニンまたはフコキサンチン50μgを腹腔内投与した。上記の塗布または投与から3時間後、PClをアセトン/オリーブオイル=1/4の混合液に溶解した1質量%溶液(0.02mL)を耳朶に塗布し、抗原曝露を行った。抗原曝露から0時間後、4時間後、24時間後および48時間後に耳部の厚さをダイアルゲージ(尾崎製作所社製)で測定した。また、比較のために、薬剤を投与しない例と、感作のみで抗原曝露を行わない例でも同様に実験した。各実験は10例ずつ行って、平均値を算出した。また、得られた結果を分散分析し、Turkey−Kramer’s事後検定した。結果を図1に示す。図1中、「*」は、p<0.01で薬剤を投与しない例に対して有意差がある場合を示す。
図1に示す結果のとおり、フコキサンチンは塗布投与でも腹腔内投与でも遅延性アレルギーを抑制することはできなかった。それに対して副腎皮質ホルモンであるコルチゾールは遅延性アレルギーを強力に抑制し、抗原曝露から24時間後および48時間後における抑制率はそれぞれ22.4%および18.2%であった。また、本発明に係るぺリジニンは、ステロイドホルモンではないが遅延性アレルギーを有意に抑制することができ、抗原曝露から24時間後および48時間後における抑制率は、耳に塗布した場合でそれぞれ8.9%および9.2%であり、腹腔内投与した場合でそれぞれ12.7%および11.7%であった。
試験例2:炎症部位における好酸球の抑制効果
好酸球は、遅延性アレルギーの炎症部で増加することが知られている。そこで、本発明に係るペリジニンの遅延性アレルギーに対する効果の指標として、好酸球を用いた。
具体的には、上記試験例1と同様にして、PClによる感作、ペリジニン、フコキサンチンまたはコルチゾールの塗布投与または腹腔内注射投与、および抗原曝露を行った。抗原曝露から48時間後、耳朶から組織を採取し、試料をヘマトキシリン/ギムザ溶液により染色した後、断面を400倍に拡大し、200μm×200μmの皮膚組織に浸潤している好酸球の数を計数した。計数は少なくとも10ヶ所で行い、上記試験例1と同様に平均値を算出し、また、Turkey−Kramer’s有意差検定を行った。結果を図2に示す。図2中、「*」は、p<0.01で薬剤を投与しない例に対して有意差がある場合を示す。
図2に示す結果のとおり、フコキサンチンでは塗布投与でも腹腔内投与でも炎症部位における好酸球の増加を抑制することはできなかった。それに対して副腎皮質ホルモンであるコルチゾールを塗布した場合、薬剤を投与しなかった場合に比べ、好酸球の数を68.5%抑制した。また、本発明に係るぺリジニンは、耳に塗布した場合で79.9%、腹腔内投与した場合で60.3%、炎症部位における好酸球数を抑制した。
試験例3:末梢血における好酸球の抑制効果
上記試験例1と同様にして、PClによる感作、ペリジニン、フコキサンチンまたはコルチゾールの塗布投与または腹腔内注射投与、および抗原曝露を行った。抗原曝露から48時間後、後眼窩叢から血液を採取し、スライドガラス上に塗布し、ギムザ溶液で染色した。得られた試料において、少なくとも200以上の白血球中に占める好酸球の割合を求めた。測定は10以上の試料について行い、上記試験例1と同様に平均値を算出し、また、Turkey−Kramer’s有意差検定を行った。結果を図3に示す。図3中、「*」は、p<0.01で薬剤を投与しない例に対して有意差がある場合を示す。
図3に示す結果のとおり、フコキサンチンでは塗布投与でも腹腔内投与でも、末梢血においても好酸球の増加を抑制することはできなかった。それに対して副腎皮質ホルモンであるコルチゾールを塗布した場合、薬剤を投与しなかった場合に比べ、末梢血における好酸球の数を83.1%抑制した。また、本発明に係るぺリジニンは、耳に塗布した場合で82.2%、腹腔内投与した場合で78.4%、末梢血における好酸球数を抑制した。
なお、別途、ペリジニンで処理したマウスの末梢血の血清におけるIL−5の濃度を測定したが、その生成は抑制されていなかった。IL−5は好酸球の増殖を選択的に誘導するものであることから、ペリジニンにより好酸球の生成が抑制されるのは、炎症部位において好酸球の遊走を強力に誘導するエオタキシンが抑制されていることが考えられる。
試験例4:エオタキシンの抑制効果
上記試験例1と同様にして、PClによる感作、ペリジニン、フコキサンチンまたはコルチゾールの塗布投与または腹腔内注射投与、および抗原曝露を行った。抗原曝露から48時間後、各マウスから耳部を採取し、界面活性剤(Tween 20)を0.1v/v%含むPBSを耳部試料10mg当たり100μL加え、さらに直径5mmのジルコニアビーズを加え、ミキサーミル(Retsch社製,「MM300」)を使って30Hzで2分間ホモジェナイズした。得られたホモジネートを12,000rpmで10分間遠心分離した。エオタキシンの測定まで、上清を−80℃で保存した。当該上清中におけるエオタキシンの濃度を、測定キット(Ray Biotech社製,「Mouse eotaxin ELISA kit」)で測定した。また、得られた結果を分散分析し、Turkey−Kramer’s事後検定した。なお、上記条件におけるエオタキシンの検出限界は、組織1mg当たり0.01pgである。結果を図4に示す。図4中、「*」は、p<0.01で薬剤を投与しない例に対して有意差がある場合を示し、「**」はp<0.05で有意差がある場合を示す。
図4に示す結果のとおり、PClによる抗原曝露により、好酸球のケモカイン受容体のリガンドであるエオタキシンの産生が促進された。かかるエオタキシン産生は、フコキサンチンの塗布投与では抑制されなかったが、腹腔内投与では抑制率19.4%と少し抑制された。一方、本発明に係るペリジニンでは、腹腔内投与では抑制効果は無かったが、塗布投与では30.6%という阻害率で阻害が見られた。かかる阻害率は、コルチゾールの42.1%という阻害率に匹敵するものであった。
以上の結果より、ペリジニンとフコキサンチンとでは、エオタキシンに対する産生抑制メカニズムが異なっており、ひいては活性化される内皮細胞、上皮細胞およびマクロファージなどによるエオタキシン産生の抑制メカニズムが異なっているといえる。また、ペリジニンとフコキサンチンとでは、皮膚浸透性も異なると考えられる。
試験例5:エオタキシンによる好酸球の走化性の抑制効果
Tominaga,A.ら,J.Exp.Med.,173,pp.429-437(1991)に従って、IL−5トランスジェニックマウス(C3H/HeN−TgN(IL−5)−Imeg)を作製し、特定病原体未感染(SPF)状態で維持した。8〜15週齢のIL−5トランスジェニックマウスから、Watanabe,Y.ら,DNA Cell Biol.,20,pp.189-202(2001)に記載のパーコール比重勾配遠心法の変法により、好酸球が富化された組成物を得た。Krebs Ringer PBS(154mM塩化ナトリウム、6mM塩化カリウムおよび1mM塩化マグネシウムを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)。以下、「KRP」と略記する)の10×溶液を使って等張パーコール液を調製し、KRPで60v/v%、70v/v%および80v/v%に希釈した。15mLのコニカルポリプロピレンチューブに、20〜50×106個の細胞を含むKRP懸濁液2mLを入れた後、上記各パーコール液を濃度の低いものから2.5mLずつ慎重に積層した。当該チューブを室温、1000×gで20分間遠心分離した。70〜80v/v%パーコール画分中のBリンパ球とTリンパ球を抗B220および抗Thy1.2結合ビーズ(DYNAL A.S.社製,「Dynabeads」)に結合させ、永久磁石を使って当該ビーズを除去することによって、好酸球の純度を高めたフラクションを得た。当該フラクションから一部を分離し、上記J.Exp.Med.(1991)記載の方法に従って好酸球をペルオキシダーゼ染色し、その割合を測定したところ、全細胞のうち93%が好酸球であった。
上記で得た好酸球細胞4×105個を、BSAを0.1質量%含むRPMI1640培地300μLに懸濁し、5μmの孔径を有する24ウェル走化性チャンバー(クラボウ社製)の上部ウェルに添加した。下部チャンバーにはBSA0.1%とマウス由来エオタキシン20ng/mLを含むRPMI1640培地800μLを加えた。次いで、1μgまたは3μgのペリジニンまたはフコキサンチンを各トランスウェルに添加した。アッセイプレートを、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、フィルターを透過して下部チャンバーに移動した細胞の数を計数した。比較のために、薬剤を添加しない場合とエオタキシンを添加しない場合でも同様に実験した。。また、得られた結果を分散分析し、Turkey−Kramer’s事後検定した。結果を図5に示す。図5の結果は、660μm×840μmの範囲における細胞数で表している。各群の実験は6ウェルで行い、各ウェルにおいて3例の上記範囲における好酸球数を計数した。即ち、図5の結果は、18例の平均である。図5中、「*」はp<0.01で有意差がある場合を示す。
図5に示す結果のとおり、好酸球のエオタキシンへの走化性は、1μgまたは3μgのフコキサンチンにより、それぞれ24.2%および61.7%抑制されたが、さらに、1μgまたは3μgのペリジニンにより、それぞれ57.4%および72.8%抑制された。このように、ペリジニンは、好酸球のエオタキシンへの走化性を、フコキサンチンよりも有効に抑制できることが証明された。

Claims (5)

  1. 下記式(I)で表されるカロテノイド化合物を有効成分として含有することを特徴とする遅延性アレルギー抑制剤。

    [式中、R1〜R3は、独立して水素原子またはC1-18アルカノイル基を示す]
  2. カロテノイド化合物が下記式(I1)の立体構造を有するものである請求項1に記載の遅延性アレルギー抑制剤。

    [式中、R1〜R3は上記と同義を示す]
  3. 1およびR2が水素原子である請求項1または2に記載の遅延性アレルギー抑制剤。
  4. 3がアセチル基である請求項1〜3のいずれかに記載の遅延性アレルギー抑制剤。
  5. 外用剤である請求項1〜4のいずれかに記載の遅延性アレルギー抑制剤。
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