JP6181963B2 - 電子放出素子 - Google Patents

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Description

本発明は、電圧を印加することにより電子を放出する電子放出素子に関する。
従来知られている電子放出素子として、電界電子放出を利用したものがある。電界電子放出は、電子を放出させるために2つの電極間に電圧を印加する。この印加電圧により両電極間に高電界を形成することで、一方の電極(エミッタ)からトンネル効果により電子を放出させる方法である。エミッタの構造の違いにより、スピント型、カーボンナノチューブ(CNT)型などの電界電子放出素子が知られている。
また、電子放出素子を大気中で使いたいという要望がかねてから存在する。しかし、上記の電界電子放出を用いた電子放出素子を、大気中で動作させることには原理的な困難を伴う。なぜなら、電界電子放出を実現するためには高電界が必要であり、放出された電子は高いエネルギーを有する。高エネルギーの電子が大気中の気体分子と衝突すると、気体分子を電離させる。電離により生じた陽イオンは、素子近傍に形成されている高電界により素子表面へ向かって加速され衝突しスパッタリングを起こす。このスパッタリングにより、電子放出素子が破壊される。また、高エネルギーの電子が、酸素分子に衝突した場合は、電離せずにオゾンを生成することが知られている。オゾンは非常に活性が高く、有害物質であり、加えて様々な物質を劣化させる。
上記の理由から、一般的に電界電子放出を用いた電子放出素子は、真空中に封止して使用する。電子を真空中から取り出す必要がある場合には、真空層と大気を隔てる電子透過窓を設置して、電子を真空層から大気中へ透過させる必要がある。
また、別のタイプの電子放出素子として、MIM(Metal Insulator Metal)型およびMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電子放出素子が知られている。
これらは、素子内部の量子サイズ効果および強電界を利用して電子を加速し、平面状の素子表面から電子を放出させる面放出型の電子放出素子である。また、これらは、素子内部の電子加速層で加速した電子を放出するため、素子外部に強電界を形成する必要がない。したがって、MIM型およびMIS型の電子放出素子は、スピント型、CNT型およびBN型の電子放出素子のように、気体分子の電離によるスパッタリングで破壊されるという問題、および、オゾンが発生するという問題を克服できる。
さらに、先に、抗酸化力の高い金属微粒子と絶縁体微粒子から成る電子放出素子を発明し、既に特許出願されている(特許文献1)。特許文献1に記載の電子放出素子は、真空中だけでなく大気中でも安定して電子放出可能であり、オゾンやNOx等の有害物質を生成することもない。
特開2009−146891号公報(公開日:2009年7月2日)
上述のようなMIM型およびMIS型電子放出素子において、電子放出素子を大型化することによって、電子を放出可能な領域の面積を大面積化したいというニーズがある。しかし、従来のMIM型およびMIS型電子放出素子は、電子を放出可能な領域の面積を大面積化した際に、電子放出素子から均一に電子を放出することが難しいという課題を有する。この課題について、図8を参照しながら説明する。
図8は、従来の典型的なMIM型電子放出素子である電子放出素子110の構成の概略を示す図である。図8の(a)は断面図であり、図8の(b)は上面図である。電子放出素子110は、下部電極102、表面電極103および電子加速層104を備えている。電子加速層104は、絶縁体微粒子と、絶縁体微粒子中に分散されている導電体微粒子とからなるものとする。
電子放出素子110における電子放出のしやすさは、電子加速層104の厚さ、電子加速層104に分散されている導電体微粒子の分布、表面電極103の膜厚など、多くのパラメータに依存する。これらのパラメータは、電子放出素子110を製造する過程において、空間的にある程度のばらつきを有するものである。電子放出素子110における電子放出のしやすさの空間的な不均一性は、端的には上述の各パラメータのばらつきを掛け合わせた結果として生じる。図8の(b)は、電子放出のしやすさが空間的に不均一である場合の電子放出素子110を示す上面図である。なお、電子加速層104は、図8の(b)には図示していない。電子放出素子110における電子を放出する面である表面電極103には、電子を放出しやすい領域R1および領域R2と、電子を放出しにくい領域R3とが形成されている。したがって、下部電極102と表面電極103とに、電源120によって電圧が印加された場合、電子を放出しやすい領域R1および領域R2は、容易に電子を放出する。その一方、電子を放出しにくい領域R3は、領域R1および領域R2と比較して、少ない量の電子を放出する。
このように、電子放出素子110に電子を放出しやすい領域と、電子を放出しにくい領域とが形成されていることによって、電子放出素子110が放出する電子の分布は、空間的に不均一になる。そして、放出する電子の分布は、電子放出素子110の電子を放出する領域を大面積化すればするほど不均一になりやすい傾向を有する。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、大面積であっても面内均一性の高い電子を放出可能な電子放出素子を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電子放出素子は、下部電極と表面電極とを備え、当該下部電極と表面電極との間に電圧を印加することによって、当該下部電極と表面電極との間において電子を加速させて、当該表面電極から当該電子を放出させる電子放出素子であって、上記下部電極と上記表面電極との間には、少なくとも絶縁体物質からなる電子加速層が設けられており、上記下部電極および上記表面電極のうち少なくとも一方の電極は、規則的に配置されている複数の単位電極を備え、さらに、上記複数の単位電極から電圧を印加する単位電極を順次選択する電極選択部を備えている。
本発明の一態様によれば、電圧を印加されている下部電極、および、電圧を印加されている表面電極が互いに重畳している(交差している)領域からのみ電子が放出される。また、電極選択部は、下部電極および表面電極のうち少なくとも一方の電極に電圧を印加する際に、複数の単位電極から単位電極を順次選択する。すなわち、電子が放出される領域は、電極選択部が選択する単位電極に応じて順次移動する。したがって、電子を放出しやすい一部の領域から多量の電子が放出されるということがなく、大面積であっても面内均一性の高い電子を放出可能な電子放出素子を提供可能である。
本発明の実施形態1に係る電子放出素子の構成の概略を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は上面図である。 本発明の実施形態1に係る電子放出素子における、下部電極および表面電極の配置を示す上面図である。 本発明の実施形態1に係る電子放出素子を駆動する際の流れを表す図である。 本発明の実施形態2に係る電子放出素子の構成の概略を示す上面図である。 本発明の実施形態3に係る電子放出素子の構成の概略を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は上面図である。 本発明の実施形態4に係る帯電装置の構成の概略を示す図である。 本発明の実施形態5に係る電子線硬化装置の構成の概略を示す図である。 従来の電子放出素子の構成の概略を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は上面図である。
〔実施形態1〕
以下、実施形態1に係る電子放出素子10について、図1〜3を参照しながら説明する。電子放出素子10は、電源部である電源20とともに本発明の一態様に係る電子放出装置1を構成する。電子放出素子10は、下部電極と表面電極との間に、電源20から供給される電圧を印加することによって、下部電極と表面電極との間において電子を加速させて、表面電極から電子を放出させる電子放出素子である。
(電子放出素子10の概要)
図1は、電子放出素子10の構成の概略を示す図である。図1の(a)は、電子放出素子10の断面図であり、より詳細には、表面電極13を構成する単位電極の長手方向と平行であって、単位電極の1つである単位電極13aを通る直線における断面図である。図1の(b)は、下部電極12および表面電極13の構成を示すための上面図である。なお、図1の(b)において、電子加速層14は図示していない。
図1の(a)および(b)に示すように、電子放出素子10は、基板11、下部電極12、表面電極13、電子加速層14、下部電極ドライバ18および表面電極ドライバ19を備えている。電子加速層14は、下部電極12と表面電極13との間に挟まれている。また、電子加速層14は、図1の(a)に示すように、絶縁体微粒子15が充填した層、すなわち絶縁体微粒子層からなる。また、本実施形態においては、電子加速層14の中には、導電体微粒子16を分散している。上記のように構成されている電子放出素子10は、半導体的な電気輸送特性を示す。
電源20は、下部電極12と表面電極13との間に印加する電圧を供給するための電源である。下部電極12と表面電極13との間に電圧が印加されると、電子加速層14に電流の担い手として電子が流れる。それと同時に、下部電極12と表面電極13とに挟まれた電子加速層14には、印加された電圧により高電界が形成される。下部電極12と表面電極13との間を流れる電子は、この高電界によって加速され、それらの電子の一部が弾道電子として電子加速層14から放出される。電子加速層14から放出された弾道電子は、表面電極13をトンネルして電子放出素子10の外部へと放出される。
(基板11)
基板11は、電子放出素子10を支持する支持体としての働きを有する。また、下部電極12は、基板11における一方の表面上に形成される。したがって、基板11は、(i)強度がある程度高いこと、(ii)じかに接する物質との密着性が良好なこと、(iii)抵抗率が高いこと、が要求される。基板11は、上記の条件を満たした上で、加工の容易さ、耐久性、コストなどを考慮して適宜選択すればよい。基板11の具体例として、樹脂基板、ガラス基板、シリコン基板などが挙げられる。
(下部電極12)
下部電極12は、表面電極13と対になり電圧を印加されることによって、電子加速層14の内部に高電界を形成するものである。図1の(a)および(b)に示すように、下部電極12は、規則的に配置されている6つの単位電極12a〜12fからなるストライプ状の電極である。本実施形態において、単位電極12a〜12fのそれぞれは、長方形である。また、単位電極12a〜12fのそれぞれは、基板11の表面上に、互いに平行に配置されている。より詳しくは、各単位電極12a〜12fの形状は、電子放出素子10の上面図(図1の(b))における上下方向を長手方向とする長方形である。下部電極12が単位電極12a〜12fからなるストライプ状の電極であることによって、電子放出素子10内に、効率よく(無駄なく)各単位電極12a〜12fを配置することが可能である。したがって、限られた電子放出素子10の面積を有効利用し、可能な限り広い領域から電子を放出することを可能とする。
なお、本実施形態において、6つの単位電極12a〜12fからなる下部電極12を例にして説明しているが、下部電極12を構成する単位電極の数は6つに限定されるものではない。また、単位電極の形状(たとえば長方形の縦横比)および各単位電極を配置する間隔は限定されるものではない。
下部電極12は、良好な導電性を有することが好ましい。下部電極12を構成する物質の具体例として、アルミニウム、チタン、銅およびステンレスなどの金属、ならびに、シリコン、ゲルマニウム、およびガリウム砒素などの半導体を挙げられる。
また、電子放出素子10に対して、大気中における安定動作を望む場合は、下部電極12として利用する物質として抗酸化力の高い導電体を用いることが好ましい。このような物質の例としては、貴金属が挙げられる。また、電子放出素子10の用途に応じて、酸化物導電材料として透明電極に広く利用されているスズ添加酸化インジウム(ITO)薄膜も有用である。また、強靭な薄膜を形成できるという点において、例えば、ガラス基板表面にチタンを200nm成膜し、さらに重ねて銅を1000nm成膜することによって下部電極12を構成してもよい。ただし、下部電極12は、これら材料および数値に限定されることはない。
(下部電極ドライバ18)
下部電極ドライバ18は、6つの単位電極12a〜12fの中から、電圧を印加する1つの単位電極を順次選択する電極選択部である。下部電極ドライバ18は、電源20のプラス端子から電圧を供給されている。図1の(b)は、下部電極ドライバ18が電圧を印加する1つの単位電極として単位電極12eを選択している様子を示している。
詳しくは後述するが、電子放出素子10は、下部電極ドライバ18と表面電極ドライバ19とを協調制御することによって、電子を放出する領域を順次切り替える。
(表面電極13)
表面電極13は、下部電極12と対になり電子加速層14内に電圧を印加するための電極である。図1の(a)および(b)に示すように、表面電極13は、規則的に配置されている6つの単位電極13a〜13fからなるストライプ状の電極である。本実施形態において、単位電極13a〜13fのそれぞれは、長方形であり、平行に配置されている。より詳しくは、各単位電極13a〜13fの形状は、電子放出素子10の上面図(図1の(b))における左右方向を長手方向とする長方形である。表面電極13が単位電極13a〜13fからなるストライプ状の電極であることによって、電子放出素子10内に、効率よく(無駄なく)各単位電極13a〜13fを配置することが可能である。したがって、限られた電子放出素子10の面積を有効利用し、可能な限り広い領域から電子を放出することを可能とする。
また、表面電極13が備えている単位電極13a〜13fのそれぞれは、下部電極12が備えている単位電極12a〜12fのそれぞれに交わるように配置されている。より詳細には、本実施形態において、下部電極12が備えている各単位電極12a〜12fと、表面電極13が備えている各単位電極13a〜13fとは互いに直交するように構成されている。なお、本実施形態において、6つの単位電極13a〜13fからなる表面電極13を例にして説明しているが、表面電極13を構成する単位電極の数は6つに限定されるものではない。また、単位電極の形状(たとえば長方形の縦横比)および各単位電極を配置する間隔は限定されるものではない。
表面電極13として用いる物質は、良好な導電性を有し、均一に電圧を印加可能である物質であれば特に限定されるものではない。ただし、電子放出素子10の動作環境として大気中を想定する場合、表面電極13に用いる物質としては、金が最適である。金は、非常に反応性が低い金属であり、大気中に存在する物質と反応して酸化物および硫化物を生成する確率が極めて低いためである。また、酸化物を生成する反応確率が比較的低い銀、パラジウム、タングステンなども、表面電極13として問題なく使用可能な物質である。
電子放出素子10における電子放出効率は、表面電極13の膜厚に大きく依存する。すなわち、表面電極13の膜厚は、電子放出素子10における重要なパラメータである。電子放出効率を高めるために、表面電極13の膜厚は、10〜55nmの範囲とすることが好ましい。
電子放出素子10において、表面電極13を平面電極として機能させるための最低膜厚は、10nmである。表面電極13の膜厚を10nm未満とすると、平面電極として要求される良好な導電性を確保することが困難となる。
一方、電子放出素子10から外部へ電子放出を可能とするために許容される表面電極13の最大膜厚は、55nmである。表面電極13の膜厚が55nmより厚くなると、(i)弾道電子のトンネル確率が著しく減少するために、あるいは、(ii)電子加速層14との界面において弾道電子が反射され電子加速層14への再捕獲されるために、電子放出素子10における電子放出効率が低下する。以上の理由から、表面電極13の膜厚は、10〜55nmの範囲とすることが好ましい。
(表面電極ドライバ19)
表面電極ドライバ19は、6つの単位電極13a〜13fの中から、電圧を印加する1つの単位電極を順次選択する電極選択部である。表面電極ドライバ19は、電源20のマイナス端子から電圧を供給されている。図1の(b)は、下部電極ドライバ18が電圧を印加する1つの単位電極として単位電極12eを選択し、表面電極ドライバ19が電圧を印加する1つの単位電極として単位電極13aを選択している様子を示している。すなわち、単位電極12eと単位電極13aとが重畳する(交差する)領域Reaにおいてのみ、電子加速層14の内部には高電界が形成されている。したがって、上記の状態においては、領域Reaからのみ電子が放出される。
詳しくは後述するが、電子放出素子10は、下部電極ドライバ18と表面電極ドライバ19とを協調制御することによって、電子を放出する領域を順次切り替える。
(電子加速層14)
電子加速層14は、少なくとも絶縁体物質によって構成されるものである。電子加速層14は、その抵抗率を制御するために、絶縁体物質の中に、導電体微粒子を分散させることによって構成されていてもよい。本実施形態において、電子加速層14は、単分散の絶縁体微粒子15が整列して充填した層、すなわち絶縁体微粒子層からなる(図1の(a)参照)。また、電子加速層14の中には、導電体微粒子16を分散している。
絶縁体微粒子15および導電体微粒子16からなる電子加速層14を形成するための方法として、たとえばスピンコート法を好適に用いることができる。具体的には、基板11および下部電極12上に、単分散の絶縁体微粒子15および導電体微粒子16の分散液を塗布した後に、スピンコート法を適用する。分散液とは、単分散の絶縁体微粒子15および導電体微粒子16を水などの溶媒中に分散させたものである。スピンコート法によって形成された電子加速層14は、電子放出素子として用いるために要求される平坦性を満足することができる。
電子加速層14の厚さは、分散液の濃度、スピンコート時の回転数および回転時間などを適宜調整することによって、所望の厚みに制御可能である。すなわち、電子加速層14の抵抗値は、容易に制御可能である。
一般的に、基板11および下部電極12の表面は疎水性であり、水を溶媒とする分散液は親水性である。そこで、分散液の基板11および下部電極12への濡れ性を改善するために、基板11および下部電極12の表面を親水性に処理しておくことが好ましい。
以上のように、少なくとも絶縁体微粒子15からなる電子加速層14を、スピンコート法を用いて形成することによって、大面積の電子加速層14を、高いスループットかつ低いコストにて製造可能である。
絶縁体微粒子15の直径(平均径)は、5〜1000nmであることが好ましく、15〜500nmであることがより好ましい。これによって、電子加速層14は、電子加速層14内を電流が流れる際に発生するジュール熱を効率よく逃がすことができる。したがって、電子放出素子10が駆動時の発熱により破壊されることを防止する。なお、電子放出素子10の抵抗値(下部電極12および表面電極13の間の抵抗値)は、導電体微粒子16を分散させることに加えて、電子加速層14の厚さを変更することによっても、任意かつ容易に調整可能である。
また、絶縁体微粒子15の直径は、単分散であり均一であることが好ましい。電子加速層14が単分散の絶縁体微粒子が整列して充填することによって構成されていると、絶縁体微粒子の粒界における接点および導通路は、空間的に均一に生じる。そのため、上記のように構成された電子加速層14は、電子を効率的にトラップしながら伝導させることが可能であり、表面電極13の直下に多量の弾道電子を生成することを実現する。したがって、単分散の絶縁体微粒子15を用いることによって、多量の電子を放出可能とし、電子放出素子10の電子放出効率を向上させることができる。
絶縁体微粒子15に用いる物質としては、酸化シリコン、酸化アルミニウムおよび酸化チタンといったものが実用的である。販売されている製品としては、例えば日産化学工業株式会社が製造販売するコロイダルシリカが利用可能である。
電子加速層14の厚さは、8〜3000nmであるのが好ましく、30〜1000nmとすることがより好ましい。このように構成することによって、電子加速層14の表面を平坦化すること、および、厚さ方向における電子加速層14の抵抗値を好ましい範囲内に制御可能となる。
(電子放出素子10の駆動方法)
図2は、電子放出素子10における、下部電極12が備えている単位電極12a〜12f、および、表面電極13が備えている単位電極13a〜13fの配置を示す上面図である。なお、図2には図示していないが、単位電極12a〜12fのそれぞれは、下部電極ドライバ18に接続されており、単位電極13a〜13fのそれぞれは、表面電極ドライバ19に接続されている。図3は、電子放出素子10を駆動する際の流れを表す図である。以下に、電子放出素子10を駆動する工程について、図3を参照しながら説明する。
ステップS10:下部電極ドライバ18および表面電極ドライバ19(各ドライバ)に電源20より電圧が供給される。
ステップS12:表面電極ドライバ19は、単位電極13aを選択する。
ステップS14:下部電極ドライバ18は、単位電極12a〜12fを所定の時間づつ選択する。以下において、所定の時間をtミリ秒間として説明する。下部電極ドライバ18が単位電極12aを選択している間、単位電極13aと単位電極12aとが重畳する領域Raaの電子加速層14の両端には電圧が印加される。したがって、電子放出素子10は、領域Raaから電子を放出する。一方、領域Raa以外の領域からは、電子が放出されない。次に、下部電極ドライバ18が、単位電極12bをtミリ秒間選択すると、電子放出素子10は、領域Rbaから電子を放出する。さらに、下部電極ドライバ18が、単位電極12cをtミリ秒間選択すると、電子放出素子10は、領域Rcaから電子を放出する。さらに、下部電極ドライバ18が単位電極12d〜12fをtミリ秒間づつ選択すると、電子放出素子10は、領域Rda、領域Rea、領域Rfaから順番に電子を放出する。
ステップS16:表面電極ドライバ19は、次の単位電極を選択する。具体的には、ここまでにおいて表面電極ドライバ19は単位電極13aを選択しているので、表面電極ドライバ19は、次の単位電極である単位電極13bを選択する。
ステップS18:下部電極ドライバ18および表面電極ドライバ19(各ドライバ)は、電源20より電圧が供給されているか否かを判定する。電源20より電圧が供給されていれば(Yes)、処理はステップS14へ戻る。電源20より電圧が供給されていれば(No)、電子放出素子10の駆動工程は終了する。
ステップS14:下部電極ドライバ18は、単位電極12a〜12fをtミリ秒間づつ選択する。この際、表面電極ドライバ19は、単位電極13bを選択しているので、電子放出素子10は、領域Rab、Rbb、Rcb、Rdb、RebおよびRfbから、tミリ秒間づつ電子を放出する。
ステップS16:表面電極ドライバ19は、次の単位電極を選択する。具体的には、ここまでにおいて表面電極ドライバ19は単位電極13bを選択しているので、表面電極ドライバ19は、次の単位電極である単位電極13cを選択する。
ステップS18:下部電極ドライバ18および表面電極ドライバ19は、電源20より電圧が供給されているか否かを判定する。電源20より電圧が供給されていれば(Yes)、処理はステップS14へ戻る。電源20より電圧が供給されていれば(No)、電子放出素子10の駆動工程は終了する。
以降の処理(表面電極ドライバ19が単位電極13c〜13fを選択している際の処理)は、ステップS14〜ステップS18の繰り返しとなる。よって、その説明を省略する。
以上のように、下部電極ドライバ18が電圧を印加する単位電極を単位電極12a〜12fから順次選択し、表面電極ドライバ19が電圧を印加する単位電極を単位電極13a〜13fから順次選択することによって、電子放出素子10は、電子を放出する領域を、領域Raa〜領域Rffまで順次移動させる。言い換えれば、電子放出素子10は、領域Raa〜領域Rffまで移動する1周期に相当する時間(36×tミリ秒間)を、電子放出素子が備えている領域の数(本実施形態では36)に時分割する。そして、時分割された時間(tミリ秒間)ごとに、領域Raa〜領域Rffまでの各領域から電子を放出するものである。
なお、本実施形態において、ステップS12において表面電極ドライバ19は単位電極13a〜13fのいずれかを選択し、ステップS14において下部電極ドライバ18は単位電極12a〜12fをtミリ秒間づつ選択するものとして説明している。しかし、領域Raa〜領域Rffの各領域を選択する処理は、上記の処理に限定されるものではない。たとえば、ステップS12において下部電極ドライバ18は単位電極12a〜12fのいずれかを選択し、ステップS14において表面電極ドライバ19は単位電極13a〜13fをtミリ秒間づつ選択するように構成されていてもよい。電子放出素子10において、1周期に相当する時間内に、領域Raa〜領域Rffの各領域から、等しい時間づつ電子が放出されるように、下部電極ドライバ18は各単位電極12a〜12fを順次選択し、表面電極ドライバ19は各単位電極13a〜13fを順次選択するように構成されていればよい。
(電子放出素子10のメリット)
上述の通り、電子放出素子10は、領域Raa〜領域Rffの各領域から、等しい時間づつ電子を放出するものである。すなわち、電子を放出する領域は、下部電極ドライバ18および表面電極ドライバ19が選択する各単位電極に応じて、一定の時間ごとに順次移動する。
電子放出素子10において、電子加速層14の厚さ、電子加速層14中に分散されている導電体微粒子16の分布、表面電極13の膜厚などの各パラメータがばらつき、その結果として、電子放出のしやすさに空間的なばらつきが生じているとする。このように電子放出のしやすさが空間的にばらついている状態であっても、電子放出素子10は、時分割で領域Raa〜領域Rffの各領域を順次移動させることにより、各領域から電子を放出する。すなわち、電子放出素子10は、電子を放出しやすい領域、または、電子を放出しにくい領域であるかに関わらず、等しい時間に渡って電子を放出するように構成されている。
下部電極12を構成する各単位電極の幅、および、表面電極13を構成する各単位電極の幅は、電子放出素子10のサイズ(面積)とは独立に設定可能である。言い換えれば、電子放出素子10を大面積化することとは独立して、1つの期間に電子を放出する領域(Raa〜Rff)の面積を決定することが可能である。
したがって、電子放出素子10は、電子を放出しやすい一部の領域から多量の電子を放出することがなく、電子放出素子を大面積化しても、1周期に相当する時間を通じれば、均一な分布の電子を放出可能である。すなわち、電子放出素子10によれば、大面積であっても面内均一性の高い電子を放出可能な電子放出素子を提供可能である。
なお、電子放出素子10は、後述する電子放出素子30と比較して、1つの期間に電子を放出する領域(Raa〜Rff)の面積を、より小さく構成可能である。したがって、電子放出素子10は、放出する電子の面内均一性をより高めることが可能である。
〔実施形態2〕
以下、実施形態2に係る電子放出素子30について、図4を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。図4は、電子放出素子30の構成の概略を示す上面図である。
図4に示すように、電子放出素子30は、実施形態1に係る電子放出素子10と比較して、単位電極に分割されていない(1つの)表面電極33を備えている点が異なる。また、表面電極33は、下部電極12を覆うように構成されている。
電子放出素子30を駆動する際、表面電極33には、電源20から、常時電圧が印加されている。一方、下部電極ドライバ18は、6つの単位電極12a〜12fから電圧を印加する1つの単位電極を順次選択する。電子放出素子30は、下部電極ドライバ18によって選択された単位電極と、表面電極33との間に電圧を印加することによって電子を加速し、表面電極33のうち当該選択された単位電極と対向している領域から電子を放出する。
たとえば図4は、下部電極ドライバ18が電圧を印加する単位電極として、単位電極12eを選択している状態を示している。この状態において、電子放出素子30は、単位電極12eと対向する領域Reから電子を放出する。下部電極ドライバ18が電圧を印加する単位電極として、単位電極12fを選択している際には、電子放出素子30は、表面電極33のうち、単位電極12fと対向する領域から電子を放出する。下部電極ドライバ18が、電圧を印加する単位電極として単位電極12a〜12dのそれぞれを選択している場合も同様である。
上述の通り、電子放出素子30において同時期に電子を放出する領域は、表面電極33のうち下部電極ドライバ18が電圧を選択した単位電極と対向する領域のみである。したがって、電子放出素子30は、電子を放出しやすい一部の領域から多量の電子が放出するということがなく、電子放出素子を大面積化しても、1周期に相当する時間を通じて均一な分布の電子を放出可能である。すなわち、電子放出素子30によれば、大面積であっても均一な分布の電子を放出可能な電子放出素子を提供可能である。
また、表面電極33は、1つの電極からなるため、単位電極に分割する必要がない。それに伴い、電子放出素子30は、表面電極ドライバを備える必要がない。すなわち、電子放出素子30は、電子放出素子10より簡易に構成されている。したがって、電子放出素子30は、電子放出素子10と比較して製造工程の簡略化が可能であり、その結果として、製造コストの抑制および歩留まりの向上を実現する。
なお、本実施形態において、電子放出素子30は、下部電極および表面電極のうち、下部電極が規則的に配置されている複数の単位電極を備えているものとして説明した。しかし、本実施形態に係る電子放出素子において、下部電極および表面電極のうち少なくとも一方の電極が、規則的に配置されている複数の単位電極を備えていればよい。すなわち、本実施形態に係る電子放出素子は、1つの電極からなる下部電極と、規則的に配置されている複数の単位電極を備えている表面電極と、を含むように構成されていてもよい。
〔実施形態3〕
以下、実施形態3に係る電子放出素子40について、図5を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。図5は、電子放出素子40の構成の概略を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は上面図である。
図5の(a)に示すように、電子放出素子40は、導電体微粒子(図示せず)を含んでいる樹脂からなる電子加速層44を備えている点において、実施形態1に係る電子放出素子10と異なる。図5の(b)に示すように、電子放出素子40は、単位電極12a〜12fからなる下部電極12と、単位電極13a〜13fからなる表面電極13とを備えている。下部電極12および表面電極13の構成は、電子放出素子10と同様である。
図5の(b)は、下部電極ドライバ18が単位電極12eを選択し、表面電極ドライバ19が単位電極13aを選択している状態を示している。この状態において、電子放出素子40は、単位電極12eおよび単位電極13aが重畳する領域Reaから電子を放出する。このように、電子放出素子40は、電子放出素子10と同様の方法によって駆動される。
本発明の一態様に係る電子放出素子が備えている電子加速層は、少なくとも絶縁体物質からなればよく、上述のように、導電体微粒子を含んでいる樹脂によって構成されていてもよい。上記の構成によれば、電子放出素子が放出する電子の面内均一性を、より向上させることが可能である。
一般的に、絶縁体微粒子は、その粒子径が小さくなるほど互いに凝集しやすくなる傾向を有する。そのため、粒子径が小さい絶縁体微粒子を含む電子加速層を形成すると、電子加速層において絶縁体微粒子の凝集が生じ、電子加速層の膜厚が不均一になる虞がある。電子放出素子が放出する電子放出量は、印加電圧によって電子加速層の内部に形成される電界強度が強いほど増加する。電子加速層の膜厚が不均一であると、電子加速層の内部に形成される電界強度は不均一となり、結果として、電子放出素子が放出する電子の面内均一性が低下する。電子加速層を、導電体微粒子を含んでいる樹脂によって形成することによって、電子加速層の膜厚をより均一にすることが可能である。したがって、電子放出素子が放出する電子の面内均一性を、より向上させることが可能である。
〔実施形態4〕
(帯電装置50)
図6に、実施形態1において説明した電子放出素子10を備えている帯電装置の一例を示す。図6は、実施形態4に係る帯電装置50の構成の概略を示す図である。帯電装置50は、電子放出素子10と、これに電圧を印加するための電源20とを備える電子放出装置1と、感光体ドラム51とからなる。本発明に係る画像形成装置は、この帯電装置50を備えている。
本発明に係る画像形成装置において、帯電装置50における電子放出素子10は、被帯電体である感光体ドラム51に対向して設置される。電源20を用いて電子放出素子10に電圧を印加することにより、電子放出素子10は電子を放出し、放出された電子は感光体ドラム51の表面を帯電させる。ここで、帯電装置50に備えられる電子放出素子10は、感光体ドラム51の表面から、例えば3〜5mmの間隔をもって配置するのが好ましい。また、電子放出素子10への印加電圧は25V程度が好ましい。電子放出素子10における電子加速層14は、例えば電源20より25Vの電圧を印加された時に、単位時間当たり1μA/cmの電子が放出されるように構成されていればよい。
なお、本発明に係る画像形成装置において、帯電装置50以外の構成部材は従来公知のものを用いればよい。電子放出素子10は、電子放出効率が高い。よって、帯電装置50は、効率よく感光体ドラム51を帯電可能である。
帯電装置50として用いられる電子放出素子10は、電子放出素子の外部に電界を形成しないため、大気中において動作しても放電を伴わない。したがって、帯電装置50は、大気中にて使用してもオゾンを発生しないというメリットを有する。オゾンは人体に有害であり、環境に対する各種規格によって規制されている。よって、帯電装置50がオゾン発生を伴わないことは、画像形成装置の設計において自由度を増す効果を奏する。
従来の帯電装置において、オゾンが装置外に放出されない構造に設計しても、装置内において発生したオゾンは、装置内の有機材料、例えば感光体ドラム51やベルトなどを酸化し劣化させる。上記の画像形成装置におけるオゾン発生に関する課題を、電子放出素子10を備える電子放出装置1を帯電装置50に用いることによって解決可能である。
また、帯電装置50が備えている電子放出素子10は、素子表面から2次元の電子を放出する面電子放出源である。よって、帯電装置50は、感光体ドラム51の回転方向に対して幅を持って帯電させることが可能である。このことは、感光体ドラム51の特定箇所を帯電させる機会を多く有することを意味する。このように面電子放出源を備える帯電装置50は、線状に帯電するワイヤ帯電器などと比較して、より均一な帯電を実現する。
また、帯電装置50を用いて感光体ドラム51を帯電させる際に、電子放出素子10が必要とする印加電圧は25V程度である。一方、コロナ放電器を利用したワイヤ帯電器の場合は、感光体ドラムを帯電するために数kVの印加電圧を必要とする。このように、電子放出素子10を備えた帯電装置50は、コロナ放電器を備えたワイヤ帯電器と比較して、格段に低い印加電圧による動作を実現している。
〔実施形態5〕
(電子線硬化装置60)
図7に、実施形態1において説明した電子放出素子10を備えた電子線硬化装置の一例を示す。図7は、実施形態5に係る電子線硬化装置60の構成の概略を示す図である。電子線硬化装置60は、電子放出素子10と、これに電圧を印加する電源20と、を備えている電子放出装置1と、放出された電子を加速させる加速電極61とを備えている。
電子線硬化装置60は、電子放出源として電子放出素子10を備え、放出された電子を加速電極61によって加速してレジスト62へと衝突させる。その結果、レジスト62は電子線のエネルギーを吸収することにより硬化する。
一般的なレジストを硬化させるために必要とされるエネルギーは、10eV以下である。電子放出素子10が放出する電子は、10eV以上のエネルギーを有しているので、レジストを単純に硬化させるという観点においては、当該電子をさらに加速する必要はない。ただし、電子のレジストへの浸透深さは、電子のエネルギーに依存することが知られている。例えば厚さ1μmのレジスト62を厚さ方向に対して完全に硬化させるには、約5kVの加速電圧が必要となる。このように、レジスト62の膜厚に応じて、必要十分なエネルギーを放出された電子に与えるために加速電極61が必要となる。
従来からある一般的な電子線硬化装置は、電子放出源を真空封止し、電子放出源に高電圧(50〜100kV)を印加することによって電子を放出させる。大気中にてレジストを硬化させる場合は、真空相と大気相とを隔てる電子透過窓が別途に必要とある。そして、当該電子透過窓を通じて真空中より大気中に電子を透過させた後に、電子を被照射物に照射する。当該照射方法においては、放出電子が電子透過窓を透過する際に、大きなエネルギーが電子透過窓に吸収される。また、電子放出源に電界放出型の素子を用いるために、レジストに到達した電子は必要以上の高エネルギーを有する。そのため、多くの電子がレジストの膜厚を透過してしまい、レジストを硬化させる際のエネルギー利用効率が低下する。さらに、電界放出型の電子放出素子は点電子放出源であるため、一度に照射できる範囲は、狭い範囲に限られる。したがって、レジストを硬化させる際のスループットは低い。
これに対し、電子放出素子10を用いた電子線硬化装置60は、大気中にて動作可能であり、電子放出素子10を真空封止する必要がない。また、電子放出素子10が高い電子放出効率を有するため、電子線硬化装置60は、効率よく電子線を照射できる。また、電子放出素子10から放出される電子は、電子透過窓を透過しないのでエネルギーのロスもない。よって、放出電子を加速するための加速電圧を下げることが可能となる。さらに、電子放出素子10は面電子放出源であるため、レジストを硬化させる際のスループットが、従来の電子線硬化装置と比較して格段に高くなる。また、パターンに従って電子を放出させれば、マスクレス露光も可能となる。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る電子放出素子(30)は、下部電極(12)と表面電極(33)とを備え、下部電極(12)と表面電極(33)との間に電圧を印加することによって、下部電極(12)と表面電極(33)との間において電子を加速させて、表面電極(12)から電子を放出させる電子放出素子であって、下部電極(12)と表面電極(33)との間には、少なくとも絶縁体物質(絶縁体微粒子15または樹脂)からなる電子加速層(14または44)が設けられており、下部電極(12)および表面電極(33)のうち少なくとも一方の電極(下部電極12)は、規則的に配置されている複数の単位電極(12a〜12f)からなるストライプ状の電極であり、さらに、複数の単位電極(12a〜12f)から電圧を印加する単位電極を順次選択する電極選択部(18)を備えている。
上記の構成によれば、下部電極(12)を構成する各単位電極(12a〜12f)の幅などの寸法は、電子放出素子(30)のサイズ(面積)とは独立に設定可能である。言い換えれば、電子放出素子(30)を大面積化することとは独立して、1つの期間に電子を放出する領域(Ra〜Rf)の面積を決定することが可能である。
したがって、電子放出素子(30)は、電子を放出しやすい一部の領域から多量の電子を放出することがなく、電子放出素子を大面積化しても、1周期に相当する時間を通じれば、均一な分布の電子を放出可能である。すなわち、電子放出素子(30)によれば、大面積であっても面内均一性の高い電子を放出可能な電子放出素子を提供可能である。
本発明の態様2に係る電子放出素子(10または40)は、上記態様1において、下部電極(12)および表面電極(13)は、いずれも、規則的に配置されている複数の単位電極(12a〜12fおよび13a〜13f)からなるストライプ状の電極であり、下部電極(12)が備えている複数の単位電極(12a〜12f)、および、表面電極(13)が備えている複数の単位電極(13a〜13f)は、互いに交わるように配置されており、電極選択部(18および19)は、下部電極(12)が備えている複数の単位電極(12a〜12f)から電圧を印加する単位電極を順次選択するとともに、表面電極(13)が備えている複数の単位電極(13a〜13f)から電圧を印加する単位電極を順次選択することが好ましい。
上記の構成によれば、電子放出素子(10)は、1つの期間に電子を放出する領域(Raa〜Rff)の面積を、より小さく構成可能である。したがって、電子放出素子(10)は、放出する電子の面内均一性をより高めることが可能である。
本発明の態様3に係る電子放出素子(30)は、上記態様1において、下部電極(12)は、規則的に配置されている複数の単位電極(12a〜12f)からなるストライプ状の電極であり、表面電極(33)は、下部電極(12)を覆う1つの薄膜電極からなることが好ましい。
上記の構成によれば、下部電極(12)が各単位電極(12a〜12f)からなるストライプ状の電極であり、互いに平行に配置されていることによって、電子放出素子(30)内に、効率よく(無駄なく)各単位電極(12a〜12f)を配置することが可能である。したがって、限られた電子放出素子(30)の面積を有効利用し、可能な限り広い領域から電子を放出することを可能とする。また、表面電極(33)は、1つの薄膜電極からなるため、電子放出素子(30)は簡易な構成である。したがって、電子放出素子30は、製造工程の簡略化が可能であり、その結果として、製造コストの抑制および歩留まりの向上を実現する。
本発明の態様4に係る電子放出素子(10または30)は、上記態様1〜3のいずれか一態様において、電子加速層(14)は、少なくとも絶縁体微粒子(15)からなることが好ましい。
少なくとも絶縁体微粒子(15)からなる電子加速層(14)は、たとえばスピンコート法を用いて作製可能である。上記の構成によれば、大面積の電子加速層(14)を、高いスループットかつ低いコストにて製造可能であるため、電子放出素子(10または30)の製造コストを抑制可能である。
本発明の態様5に係る電子放出素子(10または30)は、上記態様4において、絶縁体微粒子(15)は単分散であり、かつ整列して充填していることが好ましい。
上記の構成によれば、電子加速層(14)内において、絶縁体微粒子(15)間の接点および導通路が均等に形成される。そのため、両端に電圧が印加されている電子加速層(14)の全領域内において、電子を効率的にトラップしながら伝導させることが可能である。その結果、弾道電子が表面電極(13、33)下において増産され、多量の電子を放出されることが可能となる。したがって、電子放出素子(10または30)の電子放出効率をより一層高めることができる。
本発明の態様6に係る電子放出素子(10または30)は、上記態様4または5において、絶縁体微粒子(15)は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、および酸化チタンの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。
上記の構成によれば、これらの物質の抵抗率(絶縁性)が高いことにより、電子加速層(14)の抵抗値を任意の範囲に制御することが容易になる。
本発明の態様7に係る電子放出素子(10または30)は、上記態様4または6のいずれか一態様において、絶縁体微粒子(15)の平均径は、5〜1000nmであることが好ましい。
上記の構成によれば、電子加速層(14)は、電子放出素子(電子加速層(14))の内部を電流が流れる際に発生するジュール熱を効率よく逃がすことができる。したがって、電子放出素子(10または30)が、動作時の発熱により破壊されることを防ぐことができる。さらに、電子加速層(14)における抵抗値の制御を容易にすることができる。
本発明の態様8に係る電子放出素子(10または30)は、上記態様4または7のいずれか一態様において、電子加速層(14)の厚さは、8〜3000nmであることが好ましい。
上記の構成によれば、電子加速層(14)の表面を平坦化すること、および、厚さ方向における電子加速層(14)の抵抗値の制御が可能となる。また、電子加速層(14)の厚さは、30〜1000nmとすることがより好ましい。
本発明の態様9に係る電子放出素子(40)は、上記態様1から3のいずれか一態様において、電子加速層(44)は、少なくとも導電体微粒子を含む樹脂層からなることが好ましい。
上記の構成によれば、電子加速層の膜厚をより均一にすることが可能である。したがって、電子放出素子が放出する電子の面内均一性を、より向上させることが可能である。
本発明の態様10に係る電子放出装置(1)は、上記態様1から9のいずれか一態様に記載の電子放出素子(10、30、40)と、下部電極(12)と表面電極(13、33)との間に電圧を印加する電源部(20)と、を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、電気的導通を確保して十分な素子内電流を流し、表面電極(13、33)から弾道電子を効率よく安定して放出させることができる。
本発明の態様11に係る帯電装置(50)は、上記態様10に記載の電子放出装置(1)を備え、該電子放出装置(1)から電子を放出して感光体(感光体ドラム51)を帯電することが好ましい。
上記の構成によれば、本発明に係る電子放出素子(10、30、40)を、帯電装置(50)に用いることにより、大気中において使用しても放電を伴わず、オゾンや窒素酸化物を始めとする有害な物質を発生させることなく、長期間安定して被帯電体を帯電させることが可能である。
本発明の態様12に係る電子線硬化装置(60)は、上記態様10に記載の電子放出装置(1)を備え、該電子放出装置(1)から電子を放出して樹脂(レジスト62)を硬化させることが好ましい。
従来の電界電子放出素子は点電子放出源である。それに対して、電子放出素子(10、30、40)は、二次元的に電子を放出する面電子放出源である。すなわち、電子放出素子(10、30、40)は、一度に広い領域に電子を放出(照射)することが可能である。そのため、電子放出素子(10、30、40)を備える電子線硬化装置(60)は、二次元的に電子を照射し、一度に広い範囲のレジストを硬化することを可能とする。また、レジスト硬化時におけるマスクレス化を可能とし、製造コストの抑制および高スループット化を実現する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
本発明に係る電子放出素子は、電子写真方式の複写機、プリンタ、およびファクシミリなどに用いる画像形成装置の帯電装置に適用可能である。また、電子線硬化装置などにも適用可能である。
1 電子放出装置
10、30、40 電子放出素子
11 基板
12 下部電極
12a〜12f 単位電極
13、33 表面電極
13a〜13f 単位電極
14、44 電子加速層
15 絶縁体微粒子
16 導電体微粒子
18 下部電極ドライバ
19 表面電極ドライバ
20 電源

Claims (3)

  1. 下部電極と表面電極とを備え、当該下部電極と表面電極との間に電圧を印加することによって、当該下部電極と表面電極との間において電子を加速させて、当該表面電極から当該電子を放出させる電子放出素子であって、
    上記下部電極と上記表面電極との間には、少なくとも絶縁体物質からなる電子加速層が設けられており、
    上記下部電極および上記表面電極のうち少なくとも一方の電極は、規則的に配置されている複数の単位電極からなるストライプ状の電極であり、さらに、
    上記複数の単位電極から電圧を印加する単位電極を順次選択する電極選択部を備え、
    上記下部電極は、規則的に配置されている複数の単位電極からなるストライプ状の電極であり、
    上記表面電極は、上記下部電極を覆う1つの薄膜電極からなることを特徴とする電子放出素子。
  2. 上記電子加速層は、少なくとも絶縁体微粒子からなることを特徴とする請求項に記載の電子放出素子。
  3. 上記電子加速層は、少なくとも導電体微粒子を含む樹脂層からなることを特徴とする請求項に記載の電子放出素子。
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