JP6177215B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
ここで、「協調制御」とは、副変速機構の変速段を変更する際、バリエータと副変速機構の変速タイミングを同期させるとともに、副変速機構の変速比変化方向と逆の方向にバリエータの変速比を変化させる変速をいう。この協調制御による変速を行えば、変速機全体の変速比(以下、「スルー変速比」という。)を、副変速機構の変速モードや変速段間差にかかわらず、バリエータによる変速自由度の範囲内で可能なスルー変速比にすることができる。
この自動変速機の制御装置において、自動変速機は、高入力回転数側のアップ変速判定回転数と低入力回転数側のアップ変速到達先回転数に挟まれた入力回転数範囲内で、有段変速を疑似して目標入力回転数を往復変動させた目標入力回転数特性を設定し、該目標入力回転数特性を用いてアップ変速する疑似有段アップ変速モードを有する。
バリエータの変速比が所定変速比よりもハイ側になってアップ変速要求があると、副変速機構の架け替えアップ変速を開始し、副変速機構でのアップ変速に同期させてバリエータのダウン変速を実施する協調制御を行うことによりスルー変速比としてアップ変速を達成するアップ変速協調制御手段を設ける。
アップ変速協調制御手段は、疑似有段アップ変速モードの作動を条件とし、副変速機構によるアップ変速と疑似有段アップ変速モードによる疑似アップ変速が重なるとき、副変速機構の架け替えアップ変速でイナーシャフェーズが開始されると、副変速機構のアップ変速側への実変速比の進行が確認されるまでバリエータの変速比を固定し、副変速機構のアップ変速側への実変速比の進行が確認されるとバリエータによるダウン変速を開始する。
すなわち、アップ変速要求に基づき、副変速機構で架け替えアップ変速が開始されると、準備フェーズ→トルクフェーズ→イナーシャフェーズと遷移し、イナーシャフェーズが開始されると実変速比を進行させる制御が行われる。一方、バリエータ側では、イナーシャフェーズが開始されるとダウン変速を開始するのではなく、副変速機構側での実変速比の進行が確認されるまで変速比を固定して待機する。このように、副変速機構によるアップ変速側への実変速比の進行が確認されてからバリエータのダウン変速を開始する協調制御とされる。このため、架け替えアップ変速を行う副変速機構側で実変速比の進行が遅れることがあっても、イナーシャフェーズ開始域でスルー変速比が意図しないダウン変速になることがなく、アクセル踏み込み加速走行シーン等における変速機入力回転数の上昇が抑えられる。
この結果、副変速機構とバリエータの協調制御によりアップ変速するとき、変速機入力回転数が過回転になるのを防止することができる。
加えて、アップ変速要求があると、疑似有段アップ変速モードの作動を条件としてアップ変速協調制御が行われる。このため、副変速機構によるアップ変速と疑似有段アップ変速モードによる疑似アップ変速が重なるとき、疑似有段アップ変速モードが目指す有段変速感を確保することができる。
実施例1における副変速機付き無段変速機(自動変速機の一例)の制御装置の構成を、「全体システム構成」、「変速マップによる変速制御構成」、「1→2アップ変速要求時の協調制御構成」、「アップ変速協調制御処理構成」に分けて説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された副変速機付き無段変速機が搭載された車両の概略構成を示し、図2は、変速機コントローラの内部構成を示す。以下、図1及び図2に基づき、全体システム構成を説明する。
なお、以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転数を当該変速機構の出力回転数で割って得られる値である。また、「最Low変速比」は当該変速機構の最大変速比を意味し、「最High変速比」は当該変速機構の最小変速比を意味する。
図3は、変速機コントローラ12の記憶装置122に格納される変速マップの一例を示す。以下、図3に基づき、変速マップによる変速制御構成を説明する。
低速モード(1速)から高速モード(2速)に切り替える1→2アップ変速要求があった時の協調制御としては、通常協調制御とアップ変速協調制御を有する。以下、通常協調制御とアップ変速協調制御について説明する。
図5は、実施例1の変速機コントローラ12で実行されるアップ変速協調制御処理の流れを示す(アップ変速協調制御手段)。以下、アップ変速協調制御処理構成をあらわす図5の各ステップについて説明する。
このアップ変速協調制御が開始されると、副変速機構30において、架け替えアップ変速での準備フェーズが開始される。
ここで、副変速機構30での架け替え変速をタイマー管理により行っている場合には、準備フェーズ時間とトルクフェーズ時間とイナーシャフェーズ時間が予め設定されている。したがって、副変速機構30で架け替え変速の開始時からタイマーカウントを開始し、タイマーカウント値が、(準備フェーズ時間+トルクフェーズ時間)に相当する値になるまでは、準備フェーズ又はトルクフェーズと判定するようにしても良い。
ここで、変速比閾値は、イナーシャフェーズ開始時の副変速機構30の変速比よりもアップ変速比側であって、イナーシャフェーズ開始変速比からの乖離幅が、副変速機構30でのアップ変速の進行を確認可能な最小限乖離幅領域の変速比に設定される。
ここで、バリエータ20をダウン変速する際のバリエータ変速速度は、イナーシャフェーズ所要時間と変速比を固定している待機時間に基づき、副変速機構30のアップ変速終了タイミングとバリエータ20のダウン変速終了タイミングが一致するように補正する。
実施例1の副変速機付き無段変速機の制御装置における作用を、「アップ変速協調制御処理作用」、「比較例でのアップ変速協調制御作用」、「実施例1でのアップ変速協調制御作用」、「他の特徴作用」に分けて説明する。
以下、アップ変速協調制御処理作用を、図5に示すフローチャートに基づき説明する。
まず、1→2アップ変速以外での変速要求に基づき、変速が開始されると、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→エンドへと進む流れが繰り返される。ステップS2では、バリエータ20のみで変速要求に応じてアップ変速やダウン変速が行われる。
以下、比較例でのアップ変速協調制御作用を、図6に示すタイムチャートに基づき説明する。図6において、時刻t1は低速モードアップ変速開始時刻、時刻t2は低速モードアップ変速終了時刻、時刻t3は架け替え変速開始時刻、時刻t4はトルクフェーズ開始時刻、時刻t5は協調変速開始時刻、時刻t6は協調変速終了時刻である。また、時刻t3〜t4は準備フェーズ区間、時刻t4〜t5はトルクフェーズ区間、時刻t5〜t6はイナーシャフェーズ区間である。
以下、実施例1でのアップ変速協調制御作用を、図7に示すタイムチャートに基づき説明する。なお、図7に示すタイムチャートでの時刻t1〜t6や各区間は、図6と同様である。
実施例1では、1→2アップ変速要求があると、図4に示す目標入力回転数特性を用いてアップ変速するATライクアップ変速モードの作動を条件としてアップ変速協調制御を行う構成とした(図5のS1→S3→S5)。
すなわち、アップ変速協調制御は、副変速機構30での1→2アップ変速に同期させてバリエータ20のダウン変速を実施する協調制御を行うことによりスルー変速比としてアップ変速を達成する制御である。
したがって、副変速機構30による1→2アップ変速とATライクアップ変速モードによる疑似アップ変速が重なるとき、ATライクアップ変速モードが目指す有段変速感が確保される。
すなわち、イナーシャフェーズが開始されると、副変速機構30の実副変速機構変速比を監視し、実副変速機構変速比が変速比閾値に達すると、バリエータ20のダウン変速を開始する。
したがって、副変速機構30の実副変速機構変速比を監視するだけで、副変速機構30によるアップ変速側への実変速比の進行が確認されたタイミングに同期させてバリエータ20のダウン変速を開始する協調制御が精度良く行われる。
すなわち、加速走行シーンにおいて、イナーシャフェーズの開始に合わせてアップシフトが開始されないと、図7に示すように、プライマリ回転数Npriが加速勾配によりアップ変速判定回転数を超えて上昇する。つまり、プライマリ回転数Npriが過回転と判定されない上昇に抑える必要がある。
これに対し、変速比閾値を、イナーシャフェーズ開始変速比からの乖離幅が最小限乖離幅領域の変速比に設定したことで、副変速機構30でのアップ変速の進行が遅れたとしてもバリエータ20によるダウン変速の早期に開始される。
したがって、加速走行シーンにおいて、プライマリ回転数Npriの上昇が、過回転と判定されないまでの回転数上昇に抑えられる。
すなわち、バリエータ20によるダウン変速の変速速度として、固定値による変速速度を与えると、バリエータ20でのダウン変速の終了時期が、変速比を固定している待機時間だけ副変速機構30でのアップ変速の終了時期から遅れる。
これに対し、バリエータ20によるダウン変速の変速速度を補正することで、アップ変速協調制御において、副変速機構30でのアップ変速の終了時期とバリエータ20でのダウン変速の終了時期を一致させることが可能となる。
実施例1の副変速機付き無段変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
バリエータ20の変速比が所定変速比よりもハイ側になってアップ変速要求(1→2アップ変速要求)があると、副変速機構30の架け替えアップ変速を開始し、副変速機構30でのアップ変速に同期させてバリエータ20のダウン変速を実施する協調制御を行うことによりスルー変速比としてアップ変速を達成するアップ変速協調制御手段(図5)を設け、
アップ変速協調制御手段(図5)は、副変速機構30の架け替えアップ変速でイナーシャフェーズが開始されると、副変速機構30のアップ変速側への実変速比の進行が確認されるまでバリエータ20の変速比を固定し、副変速機構30のアップ変速側への実変速比の進行が確認されるとバリエータ20によるダウン変速を開始する。
このため、副変速機構30とバリエータ20の協調制御によりアップ変速(1→2アップ変速)するとき、変速機入力回転数(プライマリ回転数Npri)が過回転になるのを防止することができる。
アップ変速協調制御手段(図5)は、アップ変速要求(1→2アップ変速要求)があると、疑似有段アップ変速モード(ATライクアップ変速モード)の作動を条件としてアップ変速協調制御を行う(S1→S3→S5)。
このため、(1)の効果に加え、副変速機構30によるアップ変速(1→2アップ変速)と疑似有段アップ変速モード(ATライクアップ変速モード)による疑似アップ変速が重なるとき、疑似有段アップ変速モード(ATライクアップ変速モード)が目指す有段変速感を確保することができる。
このため、(2)の効果に加え、副変速機構30によるアップ変速側への実変速比の進行が確認されたタイミングに同期させてバリエータ20のダウン変速を開始する協調制御を精度良く行うことができる。
このため、(3)の効果に加え、加速走行シーンにおいて、変速機入力回転数(プライマリ回転数Npri)の上昇を、過回転と判定されないまでの回転数上昇に抑えることができる。
このため、(2)〜(4)の効果に加え、アップ変速協調制御において、副変速機構30でのアップ変速の終了時期とバリエータ20でのダウン変速の終了時期を一致させることができる。
2 ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ
3 第1ギヤ列
4 無段変速機
5 第2ギヤ列
6 終減速装置
7 駆動輪
11 油圧制御回路
12 変速機コントローラ(アップ変速協調制御手段)
20 バリエータ
21 プライマリプーリ
22 セカンダリプーリ
23 Vベルト
30 副変速機構
31 ラビニョウ型遊星歯車機構
32 Lowブレーキ(摩擦締結要素)
33 Highクラッチ(摩擦締結要素)
34 Revブレーキ(摩擦締結要素)
Claims (4)
- 自動変速機として、変速比を無段階に変化させるバリエータと、該バリエータに対して直列に設けられ、摩擦締結要素の架け替えにより変速する有段階の変速段を有する副変速機構と、を備えた自動変速機の制御装置において、
前記自動変速機は、高入力回転数側のアップ変速判定回転数と低入力回転数側のアップ変速到達先回転数に挟まれた入力回転数範囲内で、有段変速を疑似して目標入力回転数を往復変動させた目標入力回転数特性を設定し、該目標入力回転数特性を用いてアップ変速する疑似有段アップ変速モードを有し、
前記バリエータの変速比が所定変速比よりもハイ側になってアップ変速要求があると、前記副変速機構の架け替えアップ変速を開始し、前記副変速機構でのアップ変速に同期させて前記バリエータのダウン変速を実施する協調制御を行うことによりスルー変速比としてアップ変速を達成するアップ変速協調制御手段を設け、
前記アップ変速協調制御手段は、前記疑似有段アップ変速モードの作動を条件とし、前記副変速機構によるアップ変速と前記疑似有段アップ変速モードによる疑似アップ変速が重なるとき、前記副変速機構の架け替えアップ変速でイナーシャフェーズが開始されると、前記副変速機構のアップ変速側への実変速比の進行が確認されるまで前記バリエータの変速比を固定し、前記副変速機構のアップ変速側への実変速比の進行が確認されると前記バリエータによるダウン変速を開始する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
前記アップ変速協調制御手段は、前記副変速機構の変速比として、イナーシャフェーズ開始変速比よりもアップ変速側に変速比閾値を設定し、実副変速機構変速比が前記変速比閾値に達するまで前記バリエータの変速比を固定し、実副変速機構変速比が前記変速比閾値に達すると前記バリエータによるダウン変速を開始する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項2に記載された自動変速機の制御装置において、
前記アップ変速協調制御手段は、前記副変速機構の変速比閾値として、イナーシャフェーズ開始変速比からの乖離幅が、前記副変速機構でのアップ変速の進行を確認可能な最小限乖離幅領域の変速比を設定した
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項2又は請求項3に記載された自動変速機の制御装置において、
前記アップ変速協調制御手段は、前記バリエータによるダウン変速を開始するとき、イナーシャフェーズ所要時間と変速比を固定している待機時間に基づき、ダウン変速速度を補正する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
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