JP6174861B2 - 皮膚色素沈着抑制物質のスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
従来、皮膚への色素沈着を抑制して肌を白くする物質として、メラノサイトによるメラニン顆粒の生成段階を抑制する物質の探求が行われてきた。このような物質として、メラニン合成経路の重要な酵素であるチロシナーゼの活性を阻害するアルブチン、コウジ酸などが知られている(特許文献1〜3)。
従って、皮膚色素沈着に関与する新たなプロセスを抑制する物質をスクリーニングする方法が求められている。
(i) 内在性の細胞増殖因子の一つである肝細胞増殖因子(以下「HGF」ということもある)が、表皮角化細胞によるメラノソームの取り込みを促進している。
(ii) HGFの存在下で表皮角化細胞のメラノソーム取り込み活性を低下させる物質は、HGF刺激による表皮角化細胞のメラノソーム取り込み促進を抑制し、その結果、皮膚の色素沈着を抑制する。
(iii) HGFの存在下で表皮角化細胞のメラノソーム取り込み活性を低下させる物質として選択されたルテオリン配糖体、及びルテオリン配糖体を含有する植物の抽出物は、低濃度で、皮膚の色素沈着を効果的に抑制する。
(iv) HGF及び表皮角化細胞増殖因子(以下「KGF」ということもある)の刺激により表皮角化細胞のメラノソーム取り込みは格段に促進される。従って、HGF及びKGFの存在下で表皮角化細胞のメラノソーム取り込み活性を低下させる物質を選択すれば、色素沈着抑制物質の選択の感度が高くなる。
項1. (a) 被験物質の存在下又は非存在下で表皮角化細胞を処理し、かつこの処理の前、同時、又は後に表皮角化細胞を肝細胞増殖因子と接触させる工程、
(b) 被験物質存在下で処理した表皮角化細胞の微粒子取り込み活性を、被験物質非存在下で処理した表皮角化細胞の微粒子取り込み活性と比較する工程、及び
(c) 表皮角化細胞の微粒子取り込み活性を低下させる被験物質を選択する工程
を含む、皮膚色素沈着抑制物質のスクリーニング方法。
項2. 微粒子がメラノソーム、又は表皮角化細胞が貪食できる微粒子である項1に記載の方法。
項3. 表皮角化細胞が貪食できる微粒子が、メラニン、又は発色物質を含有する高分子微粒子である項2に記載の方法。
項4. 濃度1〜1000ng/mLのHGFの存在下で表皮角化細胞を処理する項1〜3の何れかに記載の方法。
項5. 表皮角化細胞を肝細胞増殖因子と共に表皮角化細胞増殖因子と接触させる項1〜4の何れかに記載の方法。
項6. ルテオリン配糖体、又はルテオリン配糖体を含有する植物抽出物を含む、HGFによる表皮角化細胞のメラノソーム取り込み促進による皮膚色素沈着を抑制するための剤。
項7. ルテオリン配糖体がルテオリン−7−O−グルコシドである項6に記載の剤。
項8. ルテオリン配糖体を含有する植物が、ペパーミント、オレンジミント、アップルミント、又はペニーロイヤルミントである項6又は7に記載の剤。
また、ルテオリン配糖体及び植物物抽出物は天然由来の物質であるため、安全性を重視する近年の消費者の嗜好に合致しており、また、安価かつ大量に調製できる点で、従来の美白剤より優れている。
(I)スクリーニング方法
本発明の色素沈着抑制物質のスクリーニング方法は、下記の(a)〜(c)の工程を含む方法である。
(a) 被験物質の存在下又は非存在下で表皮角化細胞を処理し、かつこの処理の前、同時、又は後に表皮角化細胞をHGFと接触させる工程、
(b) 被験物質の存在下で処理した表皮角化細胞の微粒子取り込み活性を、被験物質の非存在下で処理した表皮角化細胞の微粒子取り込み活性と比較する工程、及び
(c) 表皮角化細胞の微粒子取り込み活性を低下させる被験物質を選択する工程
HGFは、生体内において、肝臓、胎盤、真皮、血小板などから分泌されている。
本発明では、ヒト由来、又は非ヒト動物由来の何れのHGFを用いてもよいが、ヒトHGFを用いることが好ましい。ヒトHGFとしては、配列番号1(NCBI、アクセッション番号 NP_000592.3)のアミノ酸配列からなるHGF、及びこのHGFから5アミノ酸が欠損した配列番号2(NCBI、アクセッション番号NP_00101932.1)のアミノ酸配列からなる5残基欠損HGFなどの天然型ヒトHGFが挙げられる。
また、本発明のHGFには、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の同一性、中でも95%以上の同一性、中でも98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ肝細胞増殖活性を有するタンパク質(ヒトHGF類縁体)も含まれる。また、本発明のHGFには、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列において、1個〜数個(例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、さらにより好ましくは1〜3個)のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列からなり、かつ肝細胞増殖活性を有するタンパク質(ヒトHGF類縁体)も含まれる。
被験物質の種類は、特に限定されず、低分子化合物、植物、動物、微生物などの天然物の抽出物、タンパク質、ペプチド、核酸、合成高分子化合物などが挙げられる。
表皮角化細胞は、ヒト又は非ヒト動物由来の何れの表皮角化細胞であってもよいが、ヒト表皮角化細胞が好ましい。
工程(a)では、HGFを接触させた表皮角化細胞を被験物質の存在下又は非存在下で処理する。処理は、例えば約28〜40℃、好ましくは約35〜37℃で、例えば約1〜92時間、好ましくは約1〜24時間静置することにより行える。即ち、表皮角化細胞を、被験物質を含む媒体、及び被験物質を含まない他はこれと同じ媒体と、それぞれ、接触することにより行える。
この処理は、表皮角化細胞を生存させておくことができる媒体中で行えばよく、例えば、細胞培養用の培地、又は繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリン、ヒドロコルチゾン、脳下垂体抽出物、ブドウ糖、アミノ酸等を添加した緩衝液中で行えばよい。好ましくは、細胞培養用の培地、例えば、HKGSなどのサプリメントを含有したEpilife(GIBCO社)などの市販されている表皮角化細胞培養液等の中で行えばよい。 被験物質による処理濃度は、被験物質の種類によって異なるが、約0.00001〜1000μg/mLが好ましく、約0.001〜500μg/mLがより好ましい。上記範囲であれば、過剰量の被験物質を使用せずに、十分なスクリーニング感度が得られる。
スクリーニング感度が良くなる点で、HGFの存在下に、表皮角化細胞を被験物質の存在下又は非存在下で処理するのが好ましい。即ち、HGFと表皮角化細胞との接触は、表皮角化細胞の被験物質の存在下又は非存在下での処理と同時に行うのが好ましい。この場合、処理は、表皮角化細胞を、被験物質及びHGFを含む媒体、又は被験物質を含まない他はこれと同じ媒体と接触することにより行える。また、表皮角化細胞を被験物質の存在下又は非存在下で処理した後、例えば約0.1〜24時間後に、表皮角化細胞とHGFとを接触させる場合も、スクリーニング感度が良くなる。
この接触は、例えば約28〜40℃、好ましくは約35〜37℃で、例えば約1〜96時間、好ましくは約1〜24時間行えばよい。
本発明方法では、HGFと共にKGFを表皮角化細胞と接触させるのが好ましい。これにより、HGF単独の時に比べて、スクリーニング感度が格段に向上する。即ち、僅かなメラノソーム取り込み抑制活性しかない物質でも検出することができる。
本発明では、ヒト由来、又は非ヒト動物由来の何れのKGFを用いてもよいが、ヒトKGFを用いることが好ましい。ヒトKGFとしては、配列番号3(NCBI,アクセッション番号NP_002000.1)のアミノ酸配列からなる天然型のKGFが挙げられる。また、配列番号3のアミノ酸配列からなるKGFの類縁体も使用できる。類縁体の定義は、ヒトHGFについて述べたのと同じである。
微粒子は、メラノソーム、又は表皮角化細胞が貪食できる微粒子であればよく、特に限定されない。表皮角化細胞が貪食できる微粒子は、表皮角化細胞に貪食されるメラノソーム貪食を模倣したものである。
微粒子としてメラノソーム自体を用いる場合、メラノソームは、メラノサイト(色素細胞)、好ましくはヒト由来のメラノサイトのホモジネートから調製できる。
表皮角化細胞とメラノソームとを約1〜120時間接触させた後に、メラノソーム取り込み活性を検出又は定量すればよい。表皮角化細胞のメラノソーム取り込み活性は、例えば、取り込み後の細胞をリン酸緩衝液など適当な緩衝液で十分に洗浄した後、遠心等の操作で細胞を集め、該細胞を溶解させ(例えば、2N NaOH溶液、あるいは1%(W/V)のSDS溶液で溶解させ)、その溶液の405nmの波長の光に対する吸収を指標として定量評価が出来る。あるいは、フォンタナ・マッソン染色で表皮角化細胞を染色し、黒〜茶褐色に染色された部分の面積を光学顕微鏡で観察することにより検出又は定量できる。フォンタナ・マッソン染色は、メラノソームが銀イオンを吸着して還元する性質を利用した染色法である。
表皮角化細胞とメラニンとを約1〜120時間接触させた後に、メラニン取り込み活性を検出又は定量すればよい。表皮角化細胞のメラニンの取り込み活性は、例えば、取り込み後の細胞をリン酸緩衝液など適当な緩衝液で十分に洗浄した後、遠心等の操作で細胞を集め、該細胞を溶解させ(例えば、2N NaOH溶液、あるいは1%(W/V)のSDS溶液で溶解させ)、その溶液の405nmの波長の光に対する吸収を指標として定量評価が出来る。あるいは、黒〜茶褐色に染色された部分の面積を光学顕微鏡で直接観察することにより検出又は定量できる。
表皮角化細胞と着色高分子微粒子とを約1〜120時間接触させた後に、着色高分子微粒子の取り込み活性を検出又は定量すればよい。蛍光物質を含有する高分子微粒子の取り込み活性は、表皮角化細胞を蛍光顕微鏡観察した後、一細胞当たりに取り込まれた微粒子の数を計数したり、フローサイトメーターを使用すること等により検出、又は定量できる。
表皮角化細胞の微粒子取り込み活性を、被験物質の有無で比較する場合、両活性を測定した上で測定値を比較してもよく、顕微鏡観察像などを直接比較してもよい。何れにしても、微粒子取り込み活性を低下させる被験物質を選択すればよい。被験物質のうち、微粒子取り込み活性を約90%以下にする物質を選択するのが好ましく、約70%以下にする物質を選択するのがより好ましい。
本発明の皮膚色素沈着抑制剤は、ルテオリン配糖体、又はルテオリン配糖体を含有する植物抽出物を含む剤であり、HGF(又はHGF及びKGF)による表皮角化細胞のメラノソーム取り込み促進による皮膚での色素沈着を抑制するために使用される。従って、シミ、ソバカス、又はクスミの予防、改善、又は抑制や、透明感の付与等の美白(ホワイトニング)に有用である。
ルテオリン配糖体を含む抽出物は、植物の好ましくは乾燥葉を熱水(例えば、約70〜85℃)で抽出することにより調製できる。この熱水抽出物から濾過等により固形物を除去し、液体分を回収するか、又はさらに乾燥して乾燥物を回収することによっても調製できる。
化粧品用の添加剤としては、酸化防止剤、防腐剤、安定化剤、キレート剤、界面活性剤、増粘剤、還元剤、pH調整剤、緩衝剤、無機塩類、噴射剤、清涼化剤、収斂剤、芳香剤、香料、色素等が挙げられる。
具体的な商品用途としては、化粧水、乳液、美容液、日焼け止め化粧料、パック、ハンドクリーム、ボディローション、ボディークリーム、洗顔料、メイク落とし等が挙げられる。
また、例えば、0.000001〜20重量%が好ましく、0.00001〜15重量%がより好ましく、0.0001〜10重量%がさらにより好ましい。
皮膚色素沈着抑制剤中の、ルテオリン配糖体を含む植物抽出物の含有量は、ルテオリン配糖体の含有量が上記範囲となるようにすればよい。
上記範囲であれば、皮膚外用組成物の通常の使用量で十分な美白作用が得られる。
使用方法
本発明の皮膚色素沈着抑制剤の使用量は、使用対象の皮膚の状態、年齢、性別などによって異なるが、例えば以下の方法とすればよい。即ち、1日数回(例えば、約1〜5回、好ましくは1〜3回)、1回当たり適量(例えば、約1〜5g)を、顔、首、腕、手、足、指などの皮膚に塗布、又は噴霧等すればよい。また、ルテオリン配糖体の1日使用量が、例えば、約0.025〜250μg/皮膚のcm2となるように組成物を使用すればよい。
本発明の皮膚色素沈着抑制剤は、シミ、ソバカス、クスミを有する人、肌の透明感が低下している人が好適な使用対象となる。また、これらの皮膚トラブルの予防のため、正常な肌を有する人も好適な使用対象となる。
試験例1−1:HGFの影響
<単離メラノソームの調製>
ヒト由来の正常色素細胞(NHEM neonatal)(TOYOBO社製、クラボウ社より購入)を、直径が150mmのディッシュ4枚に播種し、予めサプリメントとしてHMGS−2(Invitrogen社)を添加したMedium254培地(GIBCO社)、で90%コンフルーエントに至るまで培養した。培養はCO2インキュベーター(95容量% 空気/5容量% 二酸化炭素)内、37℃の条件下で行った。
その後、培地をアスピレートし、PBS(137mM NaCl,2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、 1.47mM KH2PO4、pH 7.4)で細胞を洗浄した後、EDTAを含有したトリプシンを各プレートに3mL加え、細胞を剥離した。
その後、等量のトリプシン中和溶液で中和し、細胞懸濁液を50mLのファルコンチューブへ移した後、4℃、1000rpmで遠心した。上述の細胞懸濁溶液の遠心後、上清をアスピレートし、残った細胞ペレットに、ホモジネートバッファーを5mL加えペレットを懸濁した後、4℃、1000×gの条件で10分遠心した。細胞のホモジネートバッファーは、プロテアーゼインヒビター(Complete, EDTA−Free;Roche社)を加えたCHM−1溶液(0.25M Sucrose, 10mM HEPES,pH7.5)を調整し、0.22μmのフィルター(Millipore社)に通して除菌することにより調製した。
再度上清をアスピレートした後、冷えたホモジネートバッファーを新たに2mL加え、細胞懸濁溶液とし、ガラス製のホモジナイザーへ移して、氷上で細胞を破砕した。得られた破砕溶液を冷えた15mLのファルコンチューブへ移し、新たに冷えたホモジネートバッファーを4mL加えた後、4℃、1000×gで10分遠心した。上清を新たに50mLの冷えた遠心管へ移し、更に冷えたホモジネートバッファーで10mLに合わせ、4℃、19000×gの条件で30分遠心を行った。遠心後、上清をアスピレートし、あらかじめ0.22μmのフィルターで除菌したPBS溶液2mLにてペレットを懸濁した。なお、最後に用いたPBS溶液はプロテアーゼインヒビターを加えてフィルター滅菌を行ったものを用いた。
このようにして得た懸濁液をメラノソームとして用いた。
TOYOBO社より購入したヒト由来の正常表皮角化細胞(NHEK neonatal)を用い、HGF(Peprotech社)の刺激が単離メラノソームの貪食能に及ぼす影響について、以下のようにして検討した。
ヒト由来正常表皮角化細胞を2ウェルのスライドガラス型カルチャープレート(NUNC社)に1×104個播種し、HKGS(GIBCO社)を予めサプリメントとして添加したEpilife培地(Gibco社)で100%コンフル―エントに達するまで培養した。培養はCO2インキュベーター(95容量% 空気/5容量% 二酸化炭素)内、37℃の条件下で行った。
その後、培地をアスピレートし、あらかじめHGFを最終濃度20ng/mLとなるように溶解したEpilife培地を用意した。対照としてDMSOを最終濃度0.1容量%となるようにEpilife培地へ溶解したものを用意し、また、条件を合わせる目的で、上記HGF含有Epilife培地にもDMSOを最終濃度0.1容量%となるように加えた。これら培地で細胞を37℃で24時間処理した。
次いで、培地をアスピレートした。上述の方法で単離したメラノソームを10容量%となるようにEpilife培地に溶解した培地を用意し、該培地で細胞をさらに24時間培養した。
その後、該培地をアスピレートし、フォンタナ・マッソン染色キット(Diagnosteic Biosystems社)を用いて、細胞内に取り込まれたメラノソームを染色した。倍率1000倍率光学顕微鏡で細胞を観察し、メラノソームの取り込みを評価した。結果を図1に示す。
被験物質として、シソ科ハッカ属のセイヨウハッカの成分として知られるルテオリン−7−O-グルコシドを20mMとなるようにDMSO溶液に調整しストック溶液を用意した。その後、該化合物を最終濃度20μMとなるように、HGF(最終濃度20ng/mL)と共にEpilife培地に溶解し、該培地により細胞を37℃で24時間処理した。
次いで、培地をアスピレートした。上述の方法で単離したメラノソームを10容量%となるようにEpilife培地に溶解した培地を用意し、該培地で細胞をさらに24時間培養した。
その後、該培地をアスピレートし、フォンタナ・マッソン染色キット(Diagnosteic Biosystems社)を用いて、細胞内に取り込まれたメラノソームを染色した。倍率1000倍率光学顕微鏡で細胞を観察し、メラノソームの取り込みを評価した。結果を図1に示す。
図1から明らかなように、HGFの添加により、表皮角化細胞によるメラノソーム取り込みは顕著に促進された。
また、被験物質であるルテオリン−7−O−グルコシドは、HGF存在下でのメラノソームの取り込みを顕著に抑制した。このことは、ルテオリン−7−O-グルコシドが、実際の皮膚中でヒト表皮角化細胞によるメラノソームの貪食を顕著に抑制する物質であることを示している。
<HGFの影響>
本試験例では、ヒト由来の正常表皮角化細胞(NHEK neonatal)による単離メラノソームの貪食能に与えるHGFの影響を、蛍光ビーズの貪食を蛍光顕微鏡観察することで評価した。
ヒト由来正常表皮角化細胞を2ウェルのスライドガラス型カルチャープレート(NUNC社)に1×104個播種し、HKGSを予めサプリメントとして添加したEpilife培地で100%コンフルーエントに達するまで培養した。培養はCO2インキュベーター(95容量% 空気/5容量% 二酸化炭素)内、37℃の条件下で行った。
その後、該培地をアスピレートして除去し、あらかじめHGFを20ng/mLの濃度で溶解したEpilife培地を用意した。対照としてHGFを含まないEpilife培地を用意した。
これら培地で細胞を37℃で24時間処理した。
処理後、培地をアスピレートし、蛍光ビーズ含有培地で置換して更に6時間培養した。蛍光ビーズ含有培地は、径が0.5μmである蛍光ビーズ(Molecular Probe社)の原液をEpilife培地中に1/2500倍の希釈率で溶解して調製した。
培養後、蛍光ビーズ含有培地をアスピレートし、PBSを各ウェルに1mL加えて細胞の洗浄を行った。本洗浄操作を更に4回行った。PBSをアスピレートした後、界面活性剤としてTriton X 100を最終濃度0.1容量%となるようにPBSへ溶解し、該溶液で細胞を処理した。なお、本界面活性剤処理は室温で、5分間行った。
界面活性剤含有PBSをアスピレートした後、核染色試薬としてDAPI(DOJINDO社)を最終濃度0.1μg/mLとなるよう溶解し、該溶液で細胞を処理した。なお、本処理は室温、10分行った。核染色試薬含有PBSをアスピレートした後、PBSにより洗浄し、10容量%中性ホルマリン溶液を1mL各ウェルに加え、細胞を固定した。その後、ホルマリン溶液を除き、風乾し、カバーガラスをマウントすることで蛍光顕微鏡用試料とした。
HGF処理細胞、及び対照細胞を、蛍光顕微鏡により、350倍の倍率で細胞内に取り込まれた蛍光ビーズを観察した。結果を図2に示す。
図2から明らかなように、HGFで24時間処理した細胞では、処理していない対照に比べ、細胞内に取り込まれた蛍光ビーズの数が多かった。
試験例3−1:HGFの影響
本試験例では、ヒト由来の正常表皮角化細胞(NHEK neonatal)による単離メラノソームの貪食能に与えるHGFの影響を、フローサイトメーターを用いて定量した。
ヒト由来正常表皮角化細胞を6ウェルのカルチャープレート(IWAKI社)に1×105個播種し、HKGSを予めサプリメントとして添加したEpilife培地で100%コンフルーエントに達するまで培養した。その後、該培地をアスピレートして除去し、あらかじめHGFを20ng/mLの濃度で溶解したEpilife培地を用意した。対照としてDMSOを最終濃度0.1容量%となるようにEpilife培地へ溶解したものを用意し、また、条件を合わせる目的で、上記HGF含有Epilife培地にもDMSOを最終濃度0.1容量%となるように加えた。これら培地で細胞を37℃で24時間処理した。
その後、蛍光ビーズの処理を6時間では無く12時間とした他は、試験例2と同様の手順で操作を行い、蛍光ビーズを細胞に与えた。
その後、培地をアスピレートして除去し、続いて2mLのPBSにより各ウェルの細胞を洗浄した。本洗浄操作をさらに4回繰り返した後、EDTAを含有するトリプシン溶液300μLを各ウェルに加えて、37℃のインキュベーター内で5分静置した。細胞の剥離が確認できた後、等量のトリプシン中和液を加え、細胞をピペッティングにより懸濁し、1.5mLのエッペンチューブへ移した。その後、4℃、15000rpmで遠心を行い、上清をアスピレートした。得られた細胞ペレットに600μLの10容量%中性ホルマリン溶液を加え、細胞を懸濁し、フローサイトメーターに供するサンプルとした。
この様な手順で調整したサンプルをフローサイトメーターに供し、各細胞における蛍光強度を定量した。結果を図3に示す。
図3から明らかなように、HGFは、蛍光ビーズの取り込みを1.15倍に増大させた。この結果は、ヒト正常表皮角化細胞の貪食によるメラノソーム取り込みも、HGF刺激により、同様に増大することを示している。
ヒト由来正常表皮角化細胞を6ウェルのカルチャープレート(IWAKI社)に1×105個播種し、HKGSを予めサプリメントとして添加したEpilife培地で100%コンフルーエントに達するまで培養した。その後、該培地を除去し、ルテオリン−7−O−グルコシドを最終濃度20μMとなるように、HGF(最終濃度20ng/mL)と共にEpilife培地に溶解し、該培地により細胞を37℃で24時間処理した。
その後、蛍光ビーズの処理を6時間では無く12時間とした他は、試験例2と同様の手順で操作を行い、蛍光ビーズを細胞に与えた。
その後の細胞の処理、及びフローサイトメーターによる測定は、試験例3−1と同様にした。結果を図3に示す。
図3から明らかなように、ルテオリン−7−O-グルコシドは、HGF存在下での蛍光ビーズの取り込みを、対照の約50%に抑制した。このことは、ルテオリン−7−O-グルコシドが、実際の皮膚中でヒト表皮角化細胞によるメラノソームの貪食を顕著に抑制する物質であることを示している。
<HGF及びKGF併用処理の影響>
本試験例では、ヒト由来の正常表皮角化細胞(NHEK neonatal)による単離メラノソームの貪食能に与えるHGFおよびKGFとの併用処理の影響を、蛍光ビーズの貪食を蛍光顕微鏡観察することで評価した。
ヒト由来正常表皮角化細胞を12ウェルのカルチャープレート(IWAKI社)一ウェル当たり1×104個播種し、HKGSを予めサプリメントとして添加したEpilife培地で100%コンフルーエントに達するまで培養した。培養はCO2インキュベーター(95容量% 空気/5容量% 二酸化炭素)内、37℃の条件下で行った。
その後、該培地をアスピレートして除去し、あらかじめHGFを20ng/mLの濃度で溶解したEpilife培地を用意した。さらに、KGFを20ng/mLの濃度で溶解したEpilife培地と、HGFとKGFをそれぞれ混合したEpilife培地も用意した。これら培地で細胞を37℃で24時間処理した。
処理後、培地をアスピレートし、蛍光ビーズ含有培地で置換して更に24時間培養した。蛍光ビーズ含有培地は、径が0.5μmである蛍光ビーズ(Molecular Probe社)の原液をEpilife培地中に1/125000倍の希釈率で溶解して調製した。
培養後、蛍光ビーズ含有培地をアスピレートし、PBSを各ウェルに1mL加えて細胞の洗浄を行った。本洗浄操作を更に4回行った。PBSをアスピレートした後、界面活性剤としてTriton X 100を最終濃度0.1容量%となるようにPBSへ溶解し、該溶液で細胞を処理した。なお、本界面活性剤処理は室温で、5分間行った。
界面活性剤含有PBSをアスピレートした後、核染色試薬としてDAPI(DOJINDO社)を最終濃度0.1μg/mLとなるよう溶解し、該溶液で細胞を処理した。なお、本処理は室温、10分行った。核染色試薬含有PBSをアスピレートした後、PBSにより洗浄し、10容量%中性ホルマリン溶液を1mL各ウェルに加え、細胞を固定した。その後、蛍光顕微鏡用試料とした。
HGF処理細胞、KGF処理細胞、HGFとKGFの同時処理細胞、及び対照細胞を、蛍光顕微鏡により、350倍の倍率で細胞内に取り込まれた蛍光ビーズを観察し、一視野あたり、蛍光ビーズが10個以上取り込まれている細胞の数をカウントした。一視野あたりの総細胞数をカウントし、上記10個以上のビーズを含む細胞が占める割合(相対占有率)について、対照群を100%とした時どれだけ変化するか各群で比較した。結果を図4に示す。
図4から明らかなように、HGFおよびKGFで24時間処理した細胞では、処理していない対照に比べ、10個以上蛍光ビーズを細胞内に取り込んだ細胞の割合が多かった。また、HGFとKGFの併用処理は該細胞の割合を更に高めた。
Claims (3)
- (a) 被験物質の存在下又は非存在下で表皮角化細胞を処理し、かつこの処理の前、同時、又は後に表皮角化細胞をHGFと共にKGFと接触させる工程、
(b) 被験物質存在下で処理した表皮角化細胞と微粒子とを接触させた後の微粒子取り込み活性を、被験物質非存在下で処理した表皮角化細胞と微粒子とを接触させた後の微粒子取り込み活性と比較する工程、及び
(c) 表皮角化細胞の微粒子取り込み活性を低下させる被験物質を選択する工程
を含む、皮膚色素沈着抑制物質のスクリーニング方法であって、前記微粒子がメラノソーム、又は表皮角化細胞が貪食できる微粒子であることを特徴とする方法。 - 表皮角化細胞が貪食できる微粒子が、メラニン、又は発色物質を含有する高分子微粒子である請求項1に記載の方法。
- 濃度10〜100ng/mLのHGF及び濃度10〜100ng/mLのKGFの存在下で表皮角化細胞を処理する請求項1又は2に記載の方法。
Priority Applications (1)
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