以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による冷凍装置を示す構成図である。図において、冷凍装置1は、冷凍サイクル本体部2と、インジェクション回路部3と、ホットガス回路部4とを有している。
冷凍サイクル本体部2は、室外(例えば冷凍庫外等)に設置されている熱源ユニット7に設けられた熱源ユニット側構成部5と、室内(例えば冷凍庫内等)に設置されている冷却ユニット8に設けられた冷却ユニット側構成部6とを有している。熱源ユニット7及び冷却ユニット8間には、熱源ユニット側構成部5から冷却ユニット側構成部6へ冷媒を導く冷媒流路である第1の連絡管9と、冷却ユニット側構成部6から熱源ユニット側構成部5へ冷媒を導く冷媒流路である第2の連絡管10とが連結されている。
熱源ユニット側構成部5は、圧縮機11と、凝縮器12と、凝縮器用送風機13と、レシーバ14とを有している。熱源ユニット側構成部5では、第2の連絡管10、圧縮機11、凝縮器12、レシーバ14及び第1の連絡管9が熱源ユニット7内の冷媒流路を介して順次連結されている。
冷却ユニット側構成部6は、主減圧装置である主膨張弁15と、蒸発器である冷却器16と、冷却器用送風機17とを有している。冷却ユニット側構成部6では、第1の連絡管9、主膨張弁15、冷却器16及び第2の連絡管10が、冷却ユニット8内の冷媒流路を介して順次連結されている。
これにより、冷凍サイクル本体部2では、圧縮機11、凝縮器12、レシーバ14、主膨張弁15、冷却器16が順次連結され、圧縮機11、凝縮器12、レシーバ14、主膨張弁15、冷却器16、圧縮機11の順に冷媒が循環可能になっている。この例では、冷凍装置1の冷媒としてR410Aが用いられている。
圧縮機11は、低段側圧縮部111と、低段側圧縮部111の冷媒下流側に設けられた高段側圧縮部112と、低段側圧縮部111及び高段側圧縮部112を駆動する駆動モータ(図示せず)とを有する二段圧縮機である。圧縮機11は、冷却器16からの冷媒を低段側圧縮部111で圧縮して、冷媒の圧力を吸入圧力よりも高く吐出圧力よりも低い中間圧にした後、高段側圧縮部112で冷媒をさらに圧縮して冷媒の圧力を吐出圧力にし、冷媒を吐出する。また、圧縮機11は、低段側圧縮部111と高段側圧縮部112との間の中間圧部分に冷媒を注入可能なインジェクション圧縮機になっている。この例では、圧縮機11の駆動モータの回転数が調整可能になっている。
凝縮器12には、凝縮器用送風機13によって凝縮器外部熱源である外気が通される。凝縮器12は、凝縮器12を流れる冷媒と外気との間で熱交換を行うことにより冷媒を凝縮させる空冷凝縮器である。即ち、凝縮器12は、凝縮器12を流れる冷媒の熱を外気へ放出させることにより冷媒を凝縮させる。凝縮器12から出た液冷媒は、レシーバ14内に溜められる。
主膨張弁15は、液冷媒を減圧して冷媒を飽和蒸気にする。主膨張弁15で減圧された冷媒は、冷却器16へ送られる。冷却器16には、冷却器用送風機17によって冷却器外部熱源である冷凍庫の室内の空気が通される。主膨張弁15で減圧された冷媒が冷却器16に流れると、冷却器16は、冷却器16を流れる冷媒と室内の空気との間で熱交換を行うことにより冷媒を蒸発させる。即ち、冷却器16は、主膨張弁15で減圧された冷媒に室内の空気から熱を取り込ませることにより冷媒を蒸発させる。
インジェクション回路部3は、熱源ユニット7に設けられている。また、インジェクション回路部3は、レシーバ14の冷媒下流側の冷媒流路に接続されているとともに圧縮機11の中間圧部分(即ち、低段側圧縮部111と高段側圧縮部112との間の部分)に接続されたインジェクション流路18と、インジェクション流路18に設けられたエコノマイザ膨張弁19と、レシーバ14の冷媒下流側の冷媒流路を流れる冷媒とインジェクション流路18を流れる冷媒との間で熱交換を行うエコノマイザ20とを有している。
インジェクション流路18は、レシーバ14からエコノマイザ20を通ってインジェクション流路18に入った冷媒を圧縮機11の中間圧部分へ導く。エコノマイザ膨張弁19は、インジェクション流路18を流れる冷媒を減圧して飽和蒸気にする。
エコノマイザ20には、レシーバ14からインジェクション流路18に達するまでの冷媒流路と、エコノマイザ膨張弁19の冷媒下流側のインジェクション流路18とが通されている。エコノマイザ20は、レシーバ14から出てインジェクション流路18に至る前の冷媒と、エコノマイザ膨張弁19で減圧された冷媒との間で熱交換を行う。インジェクション流路18を流れる冷媒は、エコノマイザ20を通過した後、インジェクション流路18を通ってインジェクション冷媒として圧縮機11の中間圧部分へ吸入される。
圧縮機11の冷媒入口の冷媒流路(即ち、圧縮機11の冷媒上流側の冷媒流路)には吸入圧力センサ21が設けられ、圧縮機11の冷媒出口の冷媒流路(即ち、圧縮機11の冷媒下流側の冷媒流路)には吐出圧力センサ22が設けられている。圧縮機11の冷媒吸入圧力は吸入圧力センサ21により検出され、圧縮機11の冷媒吐出圧力は吐出圧力センサ22により検出される。
また、熱源ユニット7には、レシーバ14から第1の連絡管9への冷媒の供給を実行及び停止する第1の冷却モード切替弁23と、圧縮機11の冷媒吐出圧力を調整する吐出圧力調整装置である圧力調整弁24とが設けられている。
第1の冷却モード切替弁23は、エコノマイザ20の冷媒下流側の冷媒流路に設けられた電磁開閉弁である。これにより、第1の冷却モード切替弁23が閉じているときには、レシーバ14からエコノマイザ20を通過した冷媒のすべてがインジェクション流路18に入って圧縮機11の中間圧部分へ送られる。一方、第1の冷却モード切替弁23が開いているときには、レシーバ14からエコノマイザ20を通過した冷媒の一部がインジェクション流路18に入り、残りの冷媒が第1の連絡管9を通って冷却ユニット8へ送られる。
圧力調整弁24は、圧縮機11と凝縮器12との間の冷媒流路に設けられている。また、圧力調整弁24は、冷媒の流動抵抗を調整可能な電磁圧力調整弁である。圧力調整弁24は、圧縮機11から凝縮器12への冷媒の流量を調整することにより圧縮機11の冷媒吐出圧力を調整する。
冷却ユニット8には、熱源ユニット7から主膨張弁15への冷媒の供給を実行及び停止する第2の冷却モード切替弁25が設けられている。第2の冷却モード切替弁25は、主膨張弁15の冷媒上流側の冷媒流路に設けられた電磁開閉弁である。第2の冷却モード切替弁25が開いているときには、熱源ユニット7から第1の連絡管9を通って冷却ユニット8に達した冷媒が主膨張弁15へ供給され、第2の冷却モード切替弁25が閉じているときには、熱源ユニット7から冷却ユニット8に達した冷媒の主膨張弁15への供給が停止される。
ホットガス回路部4は、熱源ユニット7に設けられた熱源ユニット側回路部26と、冷却ユニット8に設けられた冷却ユニット側回路部27とを有している。
熱源ユニット側回路部26は、圧縮機11の冷媒出口の冷媒流路(即ち、圧縮機11と圧力調整弁24との間の冷媒流路)に接続されているとともに第1の冷却モード切替弁23の冷媒下流側の冷媒流路に接続された第1のホットガス流路261と、第1のホットガス流路261に設けられた電磁開閉弁である第1の除霜モード切替弁262とを有している。
第1の除霜モード切替弁262が開くと、圧縮機11から吐出された冷媒の一部が凝縮器12及びレシーバ14をバイパスして冷却ユニット8へ直接供給され、第1の除霜モード切替弁262が閉じると、圧縮機11から吐出された冷媒のすべてが凝縮器12へ送られる。
冷却ユニット側回路部27は、第2の冷却モード切替弁25の冷媒上流側の冷媒流路に接続されているとともに主膨張弁15と冷却器16との間の冷媒流路に接続された第2のホットガス流路271と、第2のホットガス流路271に設けられた電磁開閉弁である第2の除霜モード切替弁272とを有している。
第2の除霜モード切替弁272が開くと、熱源ユニット7から第1の連絡管9を通って冷却ユニット8に達した冷媒が主膨張弁15をバイパスして冷却器16へ供給され、第2の除霜モード切替弁272が閉じると、熱源ユニット7から冷却ユニット8に達した冷媒のすべてが主膨張弁15へ送られる。
冷凍装置1が通常の冷却運転を行うと、冷却器16には霜が付着する。冷却器16に霜が付着すると冷却器16での伝熱状態が霜によって悪化するので、冷凍装置1は、通常の冷却運転を行う冷却運転モードと、冷却器16に付着した霜を融解して除去する除霜運転モードとの間で、図示しない制御部により切り替え可能になっている。この例では、冷却運転モードと除霜運転モードとの間で冷凍装置1の運転モードが定期的に自動で切り替えられる。
冷却運転モード時には、第1の冷却モード切替弁23及び第2の冷却モード切替弁25のそれぞれが開き、第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272のそれぞれが閉じるように制御される。除霜運転モード時には、第1の冷却モード切替弁23及び第2の冷却モード切替弁25のそれぞれが閉じ、第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272のそれぞれが開くように制御される。
これにより、除霜運転モード時には、圧縮機11が駆動すると、圧縮機11から吐出した冷媒の一部がホットガスとして、第1のホットガス流路261、第1の連絡管9及び第2のホットガス流路271の順に流れながら凝縮器12、レシーバ14及び主膨張弁15をバイパスして、冷却器16へ導かれる。一方、冷却運転モード時には、圧縮機11が駆動すると、圧縮機11から吐出した冷媒が第1及び第2のホットガス流路261,271を通って冷却器16へ導かれることはなく、圧縮機11から吐出した冷媒のすべてが凝縮器12へ送られる。
(冷却運転モード)
次に、冷凍装置1の冷却運転モード時の動作について説明する。図2は、図1の冷凍装置1の冷却運転モード時の状態を示す構成図である。また、図3は、図1の冷凍装置1の冷却運転モード時の冷凍サイクル動作を示す圧力−エンタルピ線図である。冷却運転モード時には、冷凍装置1の制御部の制御により、第1の冷却モード切替弁23及び第2の冷却モード切替弁25のそれぞれが開き、第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272のそれぞれが閉じる。また、冷却運転モード時には、冷凍装置1の制御部の制御により、圧力調整弁24の開度が強制的に最大に固定される。
冷却運転モード時には、圧縮機11から吐出した高温冷媒(状態C1)が、圧力調整弁24を通過した後、凝縮器12へ送られる。圧縮機11からの冷媒が圧力調整弁24を通過すると、高温冷媒の状態が状態F1となる。このとき、圧力調整弁24の開度が最大に固定されているため、圧力調整弁24を通過するときの冷媒の圧力損失は非常に小さくなっている。なお、圧力調整弁24をバイパスする大口径の電磁開閉弁を圧力調整弁24に並列して配置し、この電磁開閉弁を開くことにより圧力調整弁24を無効化して、圧縮機11から凝縮器12へ送られる冷媒の圧力損失を小さくしてもよい。
この後、状態F1で凝縮器12に入った高温冷媒は、凝縮器12で外気に熱を放出して凝縮液化した後、凝縮器12からレシーバ14へ送られる。これにより、冷媒の状態が状態G1となる。レシーバ14内には、冷凍サイクル内の余剰冷媒が溜められており、気液界面が形成されている。従って、状態G1の冷媒は高圧の飽和液冷媒である。
この後、レシーバ14から出た液冷媒(状態G1)は、エコノマイザ20を通過する。このとき、エコノマイザ20では、レシーバ14からの液冷媒と、エコノマイザ膨張弁19で減圧されて低温の二相冷媒になったインジェクション冷媒との間で熱交換が行われる。これにより、レシーバ14からの液冷媒の過冷却度が大きくなり、冷媒の状態が状態D1となる。
この後、レシーバ14からエコノマイザ20を通過した冷媒のうち、一部がインジェクション流路18に入り、残りが第1の連絡管9を通って冷却ユニット8へ送られる。
インジェクション流路18に入った冷媒は、エコノマイザ膨張弁19で減圧された後、エコノマイザ20を流れる液冷媒から熱を取り込んで比エンタルピを増大させ、状態H1の中間圧二相冷媒となる。この後、状態H1の冷媒は、インジェクション流路18を通って圧縮機11の中間圧部分へインジェクション冷媒として吸入される。エコノマイザ膨張弁19は、圧縮機11の吐出ガス冷媒温度が目標温度設定値(例えば90℃)になるように、エコノマイザ膨張弁19を通過する冷媒量を調整している。
一方、冷却ユニット8へ送られた冷媒(状態D1)は、主膨張弁15によって減圧されて状態E1の低圧二相冷媒となる。この後、主膨張弁15で減圧された冷媒は、冷却器16で冷却対象である室内(この例では、冷凍庫内)の空気を冷却しながら蒸発し、状態A1の低圧ガス冷媒となる。
この後、冷却器16で蒸発して低圧ガスとなった冷媒(状態A1)は、冷却器16から第2の連絡管10を通って圧縮機11の冷媒入口に吸入される。冷却器16から圧縮機11に吸入された冷媒は、低段側圧縮部111で圧縮される。圧縮機11の中間圧部分では、低段側圧縮部111で圧縮された冷媒と、インジェクション流路18から圧縮機11の中間圧部分に吸入されたインジェクション冷媒とが合流して中間圧ガス冷媒(状態B1)となる。圧縮機11では、合流した中間圧ガス冷媒が高段側圧縮部112で圧縮される。高段側圧縮部112で圧縮された冷媒は、高温高圧のガス冷媒(状態C1)となり、凝縮器12へ吐出される。圧縮機11から吐出される冷媒温度は、エコノマイザ膨張弁19によって調整される。
冷却運転モード時には、室内の空気の温度を一定の目標温度(例えば−30℃)に保つことが要求される。従って、冷却運転モード時の目標温度が−30℃である場合には、冷却器16を流れる冷媒の蒸発温度が−40℃になるように圧縮機11の駆動モータの回転数が調整される。室内に設置された図示しない温度センサによる空気の検出温度が目標温度である−30℃よりも高い場合には圧縮機11が駆動モータの最大回転数で運転され、室内の温度センサによる空気の検出温度が目標温度に保たれている場合には圧縮機11が駆動モータの最大回転数よりも低い回転数で運転される。冷却運転モード時には、室内の空気に含まれる水分が冷却器16の表面で霜として付着し、冷却器16に付着した霜が徐々に蓄積される。
(除霜運転モード)
次に、冷却器16に付着した霜を除去する除霜運転モード時の動作について説明する。図4は、図1の冷凍装置1の除霜運転モード時の状態を示す構成図である。また、図5は、図1の冷凍装置1の除霜運転モード時の想定の冷凍サイクル動作を示す圧力−エンタルピ線図である。除霜運転モード時には、冷凍装置1の制御部の制御により、第1の冷却モード切替弁23及び第2の冷却モード切替弁25のそれぞれが閉じ、第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272のそれぞれが開く。また、除霜運転モード時には、圧力調整弁24の開度が、冷凍装置1の制御部の制御により、吐出圧力センサ22の情報に基づいて調整される。また、除霜運転モード時での圧力調整弁24の最小開度は、圧力調整弁24の上流及び下流での冷媒の圧力差が予め決められた設定閾値以下になるように(即ち、設定閾値を超えないように)設定されている。
除霜運転モード時には、圧縮機11から吐出した高温ガス冷媒(状態C2)の大半は、除霜用のホットガスとして第1のホットガス流路261を流れながら凝縮器12及びレシーバ14をバイパスした後、第1の連絡管9を通って冷却ユニット8へ送られる。一方、圧縮機11から吐出した残りの高温ガス冷媒は、圧力調整弁24を通過して凝縮器12へ送られる。このとき、圧力調整弁24は、吐出圧力センサ22の情報に基づいて、圧縮機11からの冷媒入口の圧力を50℃相当飽和圧力(即ち、一定の圧力)となるように冷媒の流動抵抗を調整している。圧縮機11から吐出された冷媒は、圧力調整弁24を通過することにより減圧されて状態F2のガス冷媒となり、凝縮器12へ送られる。
凝縮器12を通過する冷媒量は、冷却運転モード時と比べて10%程度と少なくなっている。従って、除霜運転モード時には、凝縮器用送風機13の動作が停止していても、わずかな外気風又は自然対流によって凝縮器12での凝縮圧力が外気温度相当の飽和圧力とほぼ等しくなる。除霜運転モード時には、外気によって凝縮圧力が変動しないように、凝縮器12を通過する外気の風量を最小風量にして凝縮器用送風機13が運転される。
冷媒が凝縮器12を通過するときには、状態F2の冷媒が凝縮されて状態G2の飽和液冷媒となる。凝縮器12の冷媒入口での状態F2の冷媒の圧力と、凝縮器12の冷媒出口での状態G2の冷媒の圧力とは、外気温度相当の飽和圧力とほぼ等しくなる。この例では、図5に示すように、状態F2及び状態G2のそれぞれの冷媒の圧力が外気温度25℃相当の飽和圧力とほぼ等しくなる。
この後、冷媒は、凝縮器12から、レシーバ14及びエコノマイザ20の順に流れた後、インジェクション流路18に流入し、エコノマイザ膨張弁19によって圧縮機11の中間圧にまで減圧される。これにより、インジェクション流路18を流れる冷媒が状態H2の飽和冷媒となる。この例では、冷媒がエコノマイザ膨張弁19で15℃飽和圧力まで減圧される。エコノマイザ膨張弁19は、冷却運転モード時と同様に、圧縮機11の吐出ガス冷媒温度が90℃となるように通過冷媒量を調整している。
除霜運転モード時には、第1の冷却モード切替弁23が閉じているので、エコノマイザ20を通過した冷媒のすべてがインジェクション流路18に流入する。従って、エコノマイザ20では、レシーバ14からの高圧側の冷媒の放熱量と、インジェクション流路18を流れる低圧側の冷媒の吸熱量とが等しく、高圧側の冷媒の状態G2及び低圧側の冷媒の状態H2のそれぞれのエンタルピも等しくなる。
この後、状態H2となった冷媒がインジェクション流路18を通って圧縮機11の中間圧部分に吸入される。ここで、圧力調整弁24がなく、圧縮機11から吐出した冷媒が減圧されないまま凝縮器12へ送られる場合には、圧縮機11の冷媒吐出圧力が外気温度相当飽和圧力となるので、外気が低温であるときには圧縮機11の中間圧と吐出圧力との間の差圧が小さくなる。これにより、圧力調整弁24がない場合には、除霜運転モード時において除霜熱源となる圧縮機入力が小さくなってしまう。これに対して、本実施の形態での除霜運転モード時には、圧縮機11から吐出した冷媒を圧力調整弁24によって減圧するので、圧縮機11から吐出した冷媒の圧力が凝縮器12の外気の温度によらず一定に維持される。
圧縮機11から吐出して第1のホットガス流路261に入った状態C2の冷媒は、第1の除霜モード切替弁262で減圧されて状態D2のガス冷媒となる。第1の除霜モード切替弁262を通過した冷媒は、凝縮器12及びレシーバ14をバイパスして冷却ユニット8へ送られる。
この後、冷却ユニット8に達した状態D2のガス冷媒は、第2のホットガス流路271を流れながら主膨張弁15をバイパスして冷却器16へ送られる。このとき、第2のホットガス流路271を流れる状態D2の冷媒は、第2の除霜モード切替弁272を通過することにより状態E2の冷媒となる。即ち、圧縮機11から吐出して第1のホットガス流路261に入った状態C2の冷媒は、第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272によって減圧されて状態E2の冷媒となる。
この例では、ホットガス回路部4において、第1の除霜モード切替弁262を通過する冷媒の圧力損失がほとんど生じないように第1の除霜モード切替弁262の口径が大口径に設計されている。これに対して、第2の除霜モード切替弁272は、第2の除霜モード切替弁272の冷媒上流側と冷媒下流側とで冷媒圧力に相当する飽和温度の差が50℃程度になるように、第1の除霜モード切替弁262よりも小口径に設計されている。即ち、熱源ユニット7から第1の連絡管9を通って冷却ユニット8にホットガスとして到達した高温高圧の冷媒が、第2の除霜モード切替弁272によって飽和温度0℃相当の圧力以下まで減圧される。この例では、第2の除霜モード切替弁272に対する冷媒の通過により、冷媒が飽和温度−5℃相当圧力の過熱ガス冷媒となる。
この後、第2の除霜モード切替弁272で減圧された状態E2の冷媒は、冷却器16の表面に付着した霜を融解させながら冷却器16を流れる。これにより、冷媒の温度が氷温0℃とほぼ一致する。しかし、冷却器16を流れる冷媒の圧力は飽和温度−5℃程度の圧力であるため、冷媒の温度が氷温0℃で冷却され続けても凝縮液化することはない。従って、冷却器16を流れた冷媒は、およそ0℃の過熱ガス(状態A2)となって冷却器16の出口から流出する。この後、状態A2の冷媒は、第2の連絡管10を通って圧縮機11の冷媒入口に吸入され、低段側圧縮部111で圧縮される。
このように、第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272によって圧縮機11の冷媒吸入圧力が調整され、圧縮機11の冷媒吸入圧力が飽和温度0℃相当の圧力以下に減圧されることにより、圧縮機11への液バック現象の発生が防止される。従って、この例では、圧縮機11の冷媒吸入圧力を調整する吸入圧力調整装置が第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272となっている。
この後、圧縮機11の中間圧部分では、低段側圧縮部111で圧縮された冷媒と、インジェクション流路18から圧縮機11の中間圧部分に吸入されたインジェクション冷媒とが合流して中間圧ガス冷媒(状態B2)となる。圧縮機11では合流した中間圧ガス冷媒が高段側圧縮部112で圧縮され、状態C2の高温ガス冷媒が圧縮機11から吐出される。除霜運転モード時の除霜熱量は圧縮機11の入力であるため、除霜運転モード時では、圧縮機11の駆動モータの回転数が圧縮機11の容量における最大回転数で運転される。
即ち、本実施の形態では、除霜運転モード時に、圧縮機11から吐出する冷媒の圧力が凝縮器12の外気の温度に影響されずに50℃飽和圧力で一定に調整され、冷却器16を流れる冷媒の圧力(即ち、圧縮機11の冷媒吸入圧力)が−5℃飽和圧力で一定に調整される。
このような冷凍装置1では、除霜運転モード時に圧縮機11の冷媒吐出圧力を調整する圧力調整弁24が圧縮機11と凝縮器12との間の冷媒流路に設けられ、除霜運転モード時に圧縮機11の冷媒吸入圧力を調整する第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272が第1のホットガス流路261及び第2のホットガス流路271に設けられているので、除霜運転モード時に凝縮器12の外気の温度に影響されずに圧縮機11の冷媒吐出圧力を一定にすることができ、圧縮機11の中間圧部分に冷媒をより確実に供給することができる。これにより、冷却器16に付着した霜を除去するための除霜熱量をより確実に確保することができる。また、除霜運転の終盤に冷却器16の出口の冷媒温度が徐々に上昇し始める状況になっても、冷凍サイクルの動作圧力が一定に保たれるので、除霜運転モード時における例えば液バック現象、高圧異常上昇、低圧異常低下、圧縮機11の冷媒吐出温度の異常上昇等の不具合の発生を防止することができる。従って、凝縮器12の外気の温度に影響されることなく安定して除霜運転を行うことができる。
また、圧力調整弁24は、冷媒の流動抵抗を調整可能な圧力調整弁であるので、圧縮機11の冷媒吐出圧力を簡単な構成で容易に調整することができる。
また、第1の除霜モード切替弁262が第1のホットガス流路261を開閉する開閉弁であり、第2の除霜モード切替弁272が第2のホットガス流路271を開閉する開閉弁であるので、冷却運転モードと除霜運転モードとの切り替えと、圧縮機11の冷媒吸入圧力の調整とを第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272で兼用することができ、部品点数を少なくすることができる。
また、除霜運転モード時での圧力調整弁24の最小開度は、圧力調整弁24の上流及び下流での冷媒の圧力差が設定閾値以下になるように設定されているので、凝縮器12への冷媒の供給量が過少になることを防止することができ、圧縮機11の吐出ガス温度の異常上昇を抑制することができる。また、圧力調整弁24の上流及び下流での冷媒の圧力差が大きくなりすぎないので、圧縮機11の中間圧部分の冷媒圧力が外気温度相当飽和圧力よりも高くなることをより確実に防止することができる。これにより、圧縮機11からインジェクション流路18を通って凝縮器12へ冷媒が逆流することを防止することができ、凝縮器12に冷媒が溜まってしまうことを防止することができる。
また、エコノマイザ膨張弁19は、圧縮機11の中間圧部分に注入される冷媒流量を調整して、圧縮機11の冷媒吐出温度を一定(例えば90℃)に調整するので、圧縮機11の冷媒吐出圧力及び冷媒吐出温度を気にすることなく圧縮機11の容量の最大出力で圧縮機11を常に運転することができる。これにより、除霜熱量を多くすることができ、除霜時間の短縮化を図ることができる。
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2による冷凍装置の圧力調整弁24によって調整される圧縮機11の冷媒吐出圧力の目標値と、凝縮器12の外気の温度との関係を示すグラフである。図6に示すように、圧力調整弁24によって調整される圧縮機11の冷媒吐出圧力の目標値は、凝縮器12の外気(即ち、凝縮器外部熱源)の温度が設定温度(この例では、15℃)よりも高いときには凝縮器12の外気の温度が変化しても変化せずに一定値に保たれるが、凝縮器12の外気の温度が設定温度以下になると、凝縮器12の外気の温度に応じて変化する。即ち、圧力調整弁24は、凝縮器12の外気の温度が設定温度よりも高いときには圧縮機11の冷媒吐出圧力の目標値を一定に保ち、凝縮器12の外気の温度が設定温度以下になると圧縮機11の冷媒吐出圧力の目標値を凝縮器12の外気の温度に応じて変化させる。従って、凝縮器12の外気の温度が設定温度である15℃以下であるときには、凝縮器12の外気の温度が低くなるほど、圧縮機11の冷媒吐出圧力の目標値も低下する。なお、凝縮器12の外気の温度は、凝縮器12の外部に設置された図示しない温度センサからの情報に基づいて、冷凍装置1の制御部により求められる。また、図6では、圧力調整弁24による減圧量をP1で示し、第1の除霜モード切替弁262及び第2の除霜モード切替弁272による減圧量をP2で示している。
圧縮機11の冷媒中間圧は、圧縮機11の冷媒吐出圧力と圧縮機11の冷媒吸入圧力とで決定される。これに対して、凝縮器12の凝縮圧力は、凝縮器12の外気温度相当飽和圧力とほぼ等しくなる。従って、凝縮器12の外気温度の低下に伴って凝縮器12の凝縮圧力が低くなり、凝縮器12の凝縮圧力が圧縮機11の中間圧を下回ってしまうおそれがある。凝縮器12の凝縮圧力が圧縮機11の中間圧を下回ると、インジェクション流路18から圧縮機11の中間圧部分へ冷媒が吸入されなくなってしまい、圧縮機11の冷媒吐出温度の制御性が失われてしまう。
本実施の形態では、図6に示すように、凝縮器12の外気の温度が設定温度以下になると、圧力調整弁24での圧縮機11の冷媒吐出圧力の目標値を下げて、凝縮器12の凝縮圧力が圧縮機11の中間圧を下回らないようになっている。他の構成は実施の形態1と同様である。
このような冷凍装置1では、圧力調整弁24が、凝縮器12の外気の温度が設定温度以下になると、圧縮機11の冷媒吐出圧力の目標値を凝縮器12の外気の温度に応じて変化させるので、凝縮器12の外気の温度が設定温度以下に低下しても、凝縮器12の凝縮圧力が圧縮機11の中間圧を下回ることを回避することができ、冷媒が圧縮機11の中間圧部分へ吸入されなくなる不具合を防止することができる。これにより、冷凍装置1の除霜運転をさらに安定して行うことができる。
実施の形態3.
図7は、この発明の実施の形態3による冷凍装置1を示す構成図である。なお、図7では、冷凍装置1の除霜運転モード時の状態が示されている。本実施の形態では、実施の形態1及び2における熱源ユニット側回路部26、冷却ユニット側回路部27、第1の冷却モード切替弁23及び第2の冷却モード切替弁25が冷凍装置1に含まれていない。
ホットガス回路部4は、圧縮機11の冷媒出口の冷媒流路に接続されているとともに主膨張弁15と冷却器16との間の冷媒流路に接続されたホットガス流路31と、ホットガス流路31に設けられホットガス流路31を開閉する除霜モード切替弁32とを有している。
ホットガス流路31は、除霜運転モード時に凝縮器12及び主膨張弁15をバイパスして、圧縮機11の出口での冷媒の一部を冷却器16へ導く。また、ホットガス流路31は、熱源ユニット7及び冷却ユニット8間に連結されたホットガス専用連絡管311と、圧縮機11の冷媒出口の冷媒流路とホットガス専用連絡管311とを繋ぐ熱源ユニット側ホットガス流路312と、主膨張弁15と冷却器16との間の冷媒流路とホットガス専用連絡管311とを繋ぐ冷却ユニット側ホットガス流路313とを有している。
ホットガス専用連絡管311は、第1及び第2の連絡管9,10から独立した連絡管である。熱源ユニット側ホットガス流路312は熱源ユニット7に設けられ、冷却ユニット側ホットガス流路313は冷却ユニット8に設けられている。
除霜モード切替弁32は、熱源ユニット側ホットガス流路312に設けられている。また、除霜モード切替弁32は、除霜運転モード時に圧縮機11の冷媒吸入圧力を冷媒の飽和温度0℃相当の圧力以下に調整する吸入圧力調整装置となっている。この例では、除霜モード切替弁32の上流及び下流のそれぞれの冷媒の圧力に相当する飽和温度の差が50℃程度に調整されるように除霜モード切替弁32の口径が設定され、圧縮機11の冷媒吸入圧力が飽和温度−5℃相当の冷媒の圧力に調整されている。
冷却ユニット8では、主膨張弁15の冷媒上流側の冷媒流路に冷却モード切替弁33が設けられている。冷却モード切替弁33は、主膨張弁15と第1の連絡管9との間の冷媒流路を開閉する電磁開閉弁である。
冷却運転モード時には、冷却モード切替弁33が開き、除霜モード切替弁32が閉じるように制御される。これにより、冷却運転モード時には、圧縮機11が駆動すると、圧縮機11から吐出した冷媒がホットガス流路31を通って冷却器16へ導かれることはなく、圧縮機11から吐出した冷媒のすべてが凝縮器12へ送られる。
また、除霜運転モード時には、冷却モード切替弁33が閉じ、除霜モード切替弁32が開くように制御される。これにより、除霜運転モード時には、圧縮機11が駆動すると、圧縮機11から吐出した冷媒の一部がホットガスとして、ホットガス流路31を流れながら凝縮器12、レシーバ14及び主膨張弁15をバイパスして、冷却器16へ導かれる。他の構成及び動作は実施の形態1と同様である。
このような冷凍装置1では、第1及び第2の連絡管9,10から独立したホットガス専用連絡管311がホットガス流路31に含まれているので、冷却モード切替弁及び除霜モード切替弁を熱源ユニット7及び冷却ユニット8のそれぞれに設ける必要がなくなる。これにより、冷却モード切替弁33及び除霜モード切替弁32の2つの切替弁の開閉動作だけで冷却運転モードと除霜運転モードとを切り替えることができ、実施の形態1及び2よりも切替弁の数を減らすことができる。これにより、コストの低減化を図ることができる。
なお、上記の例では、除霜モード切替弁32が熱源ユニット側ホットガス流路312に設けられているが、冷却ユニット側ホットガス流路313ではなく冷却ユニット側ホットガス流路313に除霜モード切替弁32を設けてもよい。
また、上記の例では、主膨張弁15と第1の連絡管9との間の冷媒流路に冷却モード切替弁33が設けられているが、インジェクション流路18の分岐部と第1の連絡管9との間の冷媒流路に冷却モード切替弁33を設けてもよい。
また、各上記実施の形態では、凝縮器外部熱源として外気を用いた空冷凝縮器が凝縮器12となっているが、例えば水冷凝縮器等を凝縮器12としてもよい。水冷凝縮器を凝縮器12とした場合、凝縮器12の放熱先である凝縮器外部熱源が水となり、凝縮器12では冷媒と水との間で熱交換が行われる。