JP6172640B2 - 核酸の定量方法、検出プローブ、検出プローブセット、及び核酸の検出方法 - Google Patents
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Description
miRNA標的DNAマイクロアレイを用いたmiRNAの定量方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。先ず、生体サンプルからmiRNAを抽出し、該miRNAを蛍光標識した後に、miRNA標的DNAマイクロアレイに添加し、基板上の核酸プローブにハイブリダイズさせる。次いで、基板に非特異的に吸着したmiRNAを洗浄した後、蛍光強度を指標にmiRNA量を見積もる。
生体サンプルからmiRNAを調製する際には、生体サンプルから全RNAを抽出・精製し、miRNAを含む全RNAを蛍光標識した後に、蛍光標識miRNAを含む蛍光標識全RNAを、miRNA標的DNAマイクロアレイに接触させる。
しかしながら、以下のように蛍光標識法がボトルネックとなり、全自動化への組み込みが進んでいない。
しかし、これらの方法では全ての核酸が非特異的に蛍光標識されるため、基板上の核酸プローブにハイブリダイゼーションさせる前に、予め蛍光標識された標的miRNAから未反応の蛍光試薬等を取り除く必要がある。これらの分離にはゲルろ過クロマトグラフィーを用いるのが一般的であり、約22塩基と短いmiRNAを、未反応の蛍光試薬から精度良く分離する必要がある。例えば、μ−TASを用いて分離する場合には、生体サンプルを、樹脂の詰まった領域を長距離移動させる工程が必要であり、スペースの限られたチップ内でかかる工程を行うのは極めて難しい。また、例え可能であっても、連続して実験を繰り返すためには、未反応の蛍光試薬を洗い流すために長時間の洗浄が必要であり、現実的ではない。
係るサンドイッチ型マイクロアレイ法の第1の方法として、具体的には、以下の工程が挙げられる。先ず、第1の部分100及び第2の部分101からなる各miRNA103に相補的な配列を有する核酸プローブを二分割し、捕捉プローブ104(Capture probe)と検出プローブ105(Detect probe)とする。そして、各miRNA103の第1の部分100に相補的な配列を有する捕捉プローブ104群を基板106上に配列させてマイクロアレイを作製する(図5参照)。
次いで、各miRNA103を、作製したマイクロアレイ基板(基板106)に接触させた後、各miRNA103の第2の部分101に相補的な配列を有する検出プローブ105群を含む溶液をマイクロアレイ基板(基板106)に接触させることで、miRNA103、捕捉プローブ104、検出プローブ105の3者をハイブリダイゼーションさせる(図5参照)。検出プローブ105は、miRNA103の第2の部分101を認識して結合するため、捕捉プローブ104への非特異的な結合は起こらず、未反応の検出プローブ104をクロマトクラフィーなどで分離する必要がない。
また、生体サンプル中には約70塩基のpre−miRNA(miRNAの前駆体)が含まれている。pre−miRNAは約22塩基のmiRNAの配列を含んでいるため、特許文献1の第1の方法では両者を区別できず、遺伝子発現制御機能を有するmiRNAのみを正確に定量できないという根本的な問題を抱えている。
(1)本発明の一実施態様における核酸の定量方法は、
(a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、を含む溶液を、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含む捕捉プローブが固定された基板に接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記基板上に核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記検出プローブの末端と、前記核酸及び前記捕捉プローブの末端と、をライゲーションさせる工程と、
(d)前記基板上に形成された前記核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体中の標識物質を定量的に検出し、検出結果から前記核酸試料中の核酸を定量する工程と、
を有することを特徴とする。
(2)本発明の一実施態様における検出プローブは、核酸試料中の第1の部分及び第2の部分からなる核酸を検出するために用いられる検出プローブであって、相補鎖を形成する2つのステム部と、前記2つのステム部間の領域であり、標識物質により標識されているループ部と、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列からなり、5’突出末端又は3’突出末端と、を備えることを特徴とする。
(3)本発明の一実施態様における検出プローブセットは、核酸試料中の複数種類の第1の部分及び第2の部分からなる核酸を検出するために用いられる複数種類の検出プローブからなる検出プローブセットであって、前記複数種類の検出プローブは、相補鎖を形成する2つのステム部と、前記2つのステム部間の領域であり、それぞれ、異なる種類の標識物質により標識されているループ部と、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列からなり、5’突出末端又は3’突出末端と、を備え、前記ループ部の標識と前記第2の部分の塩基配列が対応づけられていることを特徴とする。
(4)本発明の一実施態様における核酸の検出方法は、
(a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、を含む溶液を、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含む捕捉プローブが固定された基板に接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記基板上に核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記検出プローブの末端と、前記核酸及び前記捕捉プローブの末端と、をライゲーションさせる工程と、
(d)前記基板上に形成された前記核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、
を有することを特徴とする。
(5)本発明の一実施態様における核酸の検出方法は、
(a’)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料を、前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含む捕捉プローブが固定された基板に接触させる工程と、
(b’)ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブを、前記基板に接触させて前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記基板上に核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記検出プローブの末端と、前記核酸及び前記捕捉プローブの末端と、をライゲーションさせる工程と、
(d)前記基板上に形成された前記核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、
を有することを特徴とする。
検出対象の核酸としては、特に限定されないが、miRNAや転写が途中で止まった短鎖mRNA等の短鎖RNAが好ましく、生体内に多種類存在し、遺伝子発現の制御に関与しているmiRNAがより好ましい。
一例として、本実施形態の核酸の定量方法は、
(a)第1の部分及び第2の部分からなるmiRNAを含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、を含む溶液を、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含む捕捉プローブが固定された基板に接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記基板上にmiRNA−検出プローブ−捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記検出プローブの末端と、前記miRNA及び前記捕捉プローブの末端と、をライゲーションさせる工程と、
(d)前記基板上に形成された前記miRNA−検出プローブ−捕捉プローブ複合体中の標識物質を定量的に検出し、検出結果から前記核酸試料中のmiRNAを定量する工程と、
を有する。
図1に示すように、検出対象のmiRNA3を、第1の部分1及び第2の部分2に2分割する。即ち、miRNA3は、第1の部分及び第2の部分からなる。
捕捉プローブ4及び検出プローブ5は、それぞれ、miRNA3の第1の部分1及び第2の部分2にハイブリダイズし得るものである。そのため、第1の部分1及び第2の部分2の長さは、5〜17塩基が好ましく、約22塩基からなるmiRNAを2分割した塩基数という観点から、7〜15塩基がより好ましい。
これら第1の部分1及び第2の部分2の長さは、(1)第1の部分1及び第2の部分2のTm値がT4DNAリガーゼの至適温度(37℃)付近であること、及び(2)配列特異性が保たれること、の2点が担保されていれば上記塩基数に限定されない。上記2点は、第1の部分1及び第2の部分2のGC含有量や標的miRNAに類似の核酸の存在などによって影響される。
本実施形態においては、miRNA3の5’側の部分を第1の部分1とし、miRNA3の3’側の部分を第2の部分2とする。
miRNA3を高精度に定量する観点から、捕捉プローブ4は、miRNA3の第2の部分2とハイブリダイズしないように、miRNA3の第2の部分2に相補的な配列を含まないことが好ましい。
基板6に固定された捕捉プローブ4が、miRNA3とハイブリダイゼーションするためには、分子的な自由度が必要であることから、捕捉プローブ4は、基板6と結合する3’末端にスペーサー4aを有していることが好ましい。スペーサー4aの長さとしては、特に限定されないが、3〜50塩基が好ましく、5〜25塩基がより好ましい。ただし、スペーサーに用いられる塩基は、同程度の長さと柔らかさを持ったPEG等のリンカーで代替可能である。係る場合には、スペーサー4aに用いられる塩基数は0塩基でもよい。
捕捉プローブ4の長さは、プローブとして機能するために必要な長さであれば特に限定されないが、第1の部分1及びスペーサー4aの塩基数を勘案し、3〜50塩基が好ましく、5〜40塩基がより好ましい。
また、工程(d)において、基板6上に形成されたmiRNA3―検出プローブ5−捕捉プローブ4複合体を定量するに際し、捕捉プローブ4は、検出プローブ5を標識する標識物質とは異なる種類の標識物質で標識されていることが好ましい。捕捉プローブ4を標識する標識物質としては、後述する検出プローブ5の標識に用いられるものと同様のものが挙げられる。
光リソグラフ技術を利用する場合には、基板6上で捕捉プローブ4を合成してもよい。スポッティングにより捕捉プローブ4を固定する場合には、捕捉プローブ4に固相結合部位を設け、基板6に固相結合部位認識部位を設けておくことが好ましい。
このような固相結合部位/固相結合部位認識部位の組み合わせとしては、捕捉プローブ4をアミノ基、ホルミル基、SH基、スクシミジルエステル基等の官能基で修飾して設けられた固相結合部位と、基板6をアミノ基、ホルミル基、エポキシ基、マレイミド基等を有するシランカップリング剤で表面処理して設けられた固相結合部位認識部位との組み合わせや、金-チオール結合を利用した組合せが挙げられる。
また、スポッティングにより捕捉プローブを固定する他の方法として、シアノール基を有する捕捉プローブを、ガラス基板に吐出し、配列させ、シランカップリング反応により共有結合させる方法も挙げられる。
miRNA3を高精度に定量する観点から、検出プローブ5は、miRNA3の第1の部分1とハイブリダイズしないように、miRNA3の第1の部分1に相補的な配列を含まないことが好ましい。
本実施形態において、検出プローブ5は、5’末端側から、相補鎖を形成する2つのステム部5c,5dと、該2つのステム部5c,5d間の領域であるループ部5eと、第2の部分2とハイブリダイズし得る配列5bとからなる。即ち、検出プローブ5は、3’突出末端を有している。検出プローブは、突出末端を有しており、検出プローブが有する突出末端が、5’突出末端であるか3’突出末端であるかは、捕捉プローブと基板とが捕捉プローブの5’末端を介して結合しているか3’末端を介して結合しているかによる。
検出プローブ5におけるループ部の長さは、ステム部の長さとの兼ね合いによって決まり、検出プローブ5が安定してステムループ構造を形成できる長さであれば特に限定されないが、3〜200塩基が好ましく、5〜100塩基がより好ましい。
検出プローブ5の長さは、ステムループ構造を形成でき、プローブとして機能するために必要な長さであれば特に限定されないが、第2の部分2の塩基数及びステムループ構造形成に必要な塩基数を勘案し、14〜200塩基が好ましく、24〜150塩基がより好ましい。
捕捉プローブ4及び検出プローブ5の少なくともいずれか一方が、LNA又はBNAを含むことが好ましく、捕捉プローブ4及び検出プローブ5の両方が、LNA又はBNAを含むことがより好ましい。
標識物質としては、例えば、蛍光色素、蛍光ビーズ、量子ドット、ビオチン、抗体、抗原、エネルギー吸収性物質、ラジオアイソトープ、化学発光体、酵素等が挙げられる。
蛍光色素としては、FAM(カルボキシフルオレセイン)、JOE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ2’ ,7’−ジメトキシフルオレセイン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TET(テトラクロロフルオレセイン)、HEX(5'−ヘキサクロロ−フルオレセイン−CEホスホロアミダイト)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647等が挙げられる。
全RNA中、miRNAはごく微量しか存在しないため、分画せずにmiRNAを高効率に標識することは困難である。一方、本実施形態においては、予め標識した検出プローブを用いるため、高感度に、miRNAを定量することができる。
標的miRNAの有する配列や長さによって、FRET効率が異なるという観点からは、FRETが起こり得ない組合せが好ましい。FRETが起こり得る標識物質の組合せを用いる場合であっても、例えば、捕捉プローブの基板に近い末端をFAMで標識し、検出プローブの基板から最も遠いループ部分をAlexa647で標識する等、両者間でFRETが起きないように設計することもできる。
また、検出プローブが捕捉プローブに連結された場合と基板に吸着した場合とを区別することができるという観点からは、FRETが起こり得る組合せが好ましい。
FRETが起こりうる標識物質の組合せとしては、励起波長が490nm付近の蛍光色素(例えば、FITC、ローダミングリーン、Alexa(登録商標)fluor 488、Body P FL等)と励起波長が540nm付近の蛍光色素(例えば、TAMRA、テトラメチルローダミン、Cy3)、または、励起波長が540nm付近の蛍光色素と励起波長が630nm付近の蛍光色素(例えば、Cy5等)の組み合わせが好ましい。
このように、本実施形態によれば、miRNA中の1塩基の違いも厳密に識別し、高精度に標的miRNAを定量することができる。
本発明者らは、以下の3点によりこの問題を解決できることを見出した。
これは、let−7aとlet−7fの第2の部分とそれぞれハイブリダイズする検出プローブ(let−7a)と検出プローブ(let−7f)を異なる標識物質により標識し、それぞれのシグナルを個別に定量する方法である。標識物質として、例えば波長の異なる蛍光物質であるAlexa532又はAlexa647を用いて、両検出プローブを標識する方法が挙げられる。
これは、類似miRNAのうち、配列の異なる部分にハイブリダイズするプローブを捕捉プローブとして用いる方法である。let−7aおよびlet−7fを例にすると、配列の異なる3’末端側の5’−GUUGUAUAGUU−3’及び5’−AUUGUAUAGUU−3’を第1の部分とし、共通の配列である5’末端側の5’−UGAGGUAGUAG−3’を第2の部分とする。図1に記載の5’末端と3’末端の配置を反転させることで、補足プローブ4の5’末端側を基板上に固定した捕捉プローブ4−検出プローブ5−miRNA3複合体を形成させることが可能になる。この場合、let−7a及びlet−7fに対する検出プローブ5は同一の配列であり、標識される標識物質も同一となる。
let−7aは8塩基の検出プローブ(D−probe−let7a−D8)のみと反応して2者複合体を形成し、さらに14塩基の捕捉プローブ(C−probe−let7a−D8)とハイブリダイゼーションして3者複合体を形成し、T4 DNA ligaseにより共有結合される。
一方、let−7aとD−probe−let7a−D8の2者複合体は、13塩基のC−probe−let7b−D9とハイブリダイゼーションすることが可能だが(但し、塩基同士が横に並んだ場合に起こるStacking効果がないので親和性は低い)、図7右上のように1塩基分ニックが入るため、ライゲーションされない。後述する実施例2で述べるようにライゲーションされない場合、シグナルが5万分の1になるため、let−7aのシグナルはC−probe−let7b−D9が固定されたスポット上には表れない。
その逆に、let−7bは9塩基の検出プローブ(D−probe−let7b−D9)のみと反応して2者複合体を形成し、さらに13塩基のC−probe−let7b−D9とハイブリダイゼーションして3者複合体を形成し、T4 DNA ligaseにより共有結合される。
一方、let−7bとD−probe−let7b−D9の2者複合体は、14塩基のC−probe−let7b−D9とハイブリダイゼーションすることが可能だが、図7右下のように1塩基分余るため、ライゲーションされない。
後述する実施例4では、図7左上のように捕捉プローブと検出プローブが隣り合う場合にはシグナルが得られるが、図7右上のように1塩基不足する場合にはシグナルが全く得られなくなることを確認している。具体的には、let−7aとD−probe−let7a−D8に対して、基板に固定するための捕捉プローブとしてC−probe−let7a−D8またはC−probe−let7b−D9を混合し、溶液中で反応させたのち、アクリルアミド電気泳動により3者複合体の形成を確認した。その結果、C−probe−let7a−D8と混合した時のみ3者複合体が形成されることが確認されている。
ハイブリダイゼーションは、特に限定されるものではなく、各プローブのTm値等を考慮した上で、温度、pH、塩濃度、緩衝液等の通常の条件下で行うことができるが、高精度にmiRNAを定量する観点から、ストリンジェントな条件で行うことが好ましい。
ストリンジェントな条件とは、例えば、30℃程度の温度条件(プローブの配列のTmより5℃〜10℃程高い温度条件)、1M未満の塩濃度条件等が挙げられる。
捕捉プローブ4及び検出プローブ5にハイブリダイズしたmiRNA3が、これらのプローブから解離することを防ぐために、検出プローブ5の5’末端と、miRNA3の3’末端と、をライゲーションさせ、検出プローブ5の3’末端と、捕捉プローブ4の5’末端と、をライゲーションさせる。
ライゲーションすることにより、工程(e)において、miRNA3が複数に亘って検出されることを防ぐことができる。
ライゲーションに用いる酵素としては、DNAリガーゼが好ましく、例えばT4DNAリガーゼが挙げられる。
上記の様に、検出プローブ5は標識物質5aで標識されているため、miRNA3―検出プローブ5−捕捉プローブ4複合体中の標識物質5aを定量的に検出する。その際、段階希釈した既知量のmiRNAを用いて、標準曲線を作製し、該標準曲線を利用することが好ましい。かかる検出結果を用いて核酸試料中のmiRNA3を定量することができる。
工程(d)における、標識物質の検出方法は、特に限定されるものではなく、例えば、核酸マイクロアレイ自動検出装置を用いて、複合体の蛍光強度を測定する等、核酸を検出する場合に通常行われる方法を用いて行うことができる。
また、本実施形態のmiRNAの定量方法によれば、ステムループ構造を形成する検出プローブを用いるため、pre−miRNAを認識することなく、miRNA中の1塩基の違いも厳密に識別し、高精度に標的miRNAを定量することができる。
図2に示すように、本実施形態の検出プローブは、核酸試料中の第1の部分及び第2の部分からなる核酸を検出するために用いられる検出プローブ5である。検出プローブ5は、5’末端側から、相補鎖を形成する2つのステム部5c,5dと、前記2つのステム部5c,5d間の領域であり、標識物質により標識されているループ部5eと、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列5bと、からなる。即ち、検出プローブ5は、3’突出末端を有している。また、本実施形態の検出プローブは、5’突出末端を有していてもよい。係る場合、本実施形態の検出プローブは、5’末端領域側に前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を有する。
また、類似miRNAを厳密に区別して認識できる観点から、前記ループ部の標識は、前記第2の部分の塩基配列と対応づけられていることが好ましい。
また、検出プローブ5の標的核酸は、miRNAであることが好ましい。
標識物質5a1,5a2として、同じ物質を用いた場合には、標識の強度を上げることができ、より高感度に標的miRNAを検出することができる。
また、標識物質5a1,5a2として、異なる物質を用いた場合、例えば、上述したFRETが起こりうる組合せの標識物質を用いることにより、検出プローブのステムループ構造形成の有無を、FRETを指標に確認することができる。
また、本実施形態の検出プローブセットの標的核酸は、miRNAであることが好ましい。
上述したように、検出対象の複数のmiRNAの中には、該miRNAを構成する第1の部分の塩基配列が同じものが複数存在する。
本実施形態の検出プローブセットによれば、この検出プローブセットを構成する検出プローブが認識する標的miRNAの配列情報(第2の部分の塩基配列)を、それぞれ異なる種類の標識によって対応付けているため、各miRNAを厳密に識別することができる。
[第1実施形態]
本実施形態の核酸の検出方法は、
(a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、を含む溶液を、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含む捕捉プローブが固定された基板に接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記基板上に核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記検出プローブの末端と、前記核酸及び前記捕捉プローブの末端と、をライゲーションさせる工程と、
(d)前記基板上に形成された前記核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、
を有する。
本実施形態の核酸の検出方法における各工程は、上述した≪核酸の定量方法≫の各工程と同様であるため、その説明を省略する。
本実施形態の核酸の検出方法は、
(a’)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料を、前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含む捕捉プローブが固定された基板に接触させる工程と、
(b’)ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブを、前記基板に接触させて前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記基板上に核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記検出プローブの末端と、前記核酸及び前記捕捉プローブの末端と、をライゲーションさせる工程と、
(d)前記基板上に形成された前記核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、
を有する。
本実施形態の核酸の検出方法においては、先ず、核酸試料を捕捉プローブが固定された基板に接触させた後に、検出プローブを該基板に接触させる。他の工程については、第1実施形態の核酸の検出方法と同様である。
(標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの合成)
標的miRNAとして、miR−141の配列を有するRNAを合成した。また、これに相補的な配列を有する捕捉プローブと検出プローブの2種の核酸プローブを設計・合成した。
用いた標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの配列を以下に示す。
(1)標的miRNA:miR−141
[配列:5’−UAACACUGUCUGGUAAAGAUGG−3’] (配列番号1:22mer)
[配列:5’−p−X1−fS−3’]
X1は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、Sはチオール基を表し、fは6−FAM(6−フルオロセイン)を表す。
X1:ACCAGACAGTGTTAACAACAACAACAACAACAACA(配列番号2:35mer)
[配列:5’−p−X2−Al−X3−3’]
X2、X3は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、AlはAlexa647−AminoC6−dAを表す。
X2:CTCAACTGGTGTCGTGG(配列番号3:17mer)
X3:GTCGGCAATTCAGTTGAGCCATCTTT(配列番号4:26mer)
表1中、20×SSC bufferの組成は、3M NaCl,0.3M クエン酸ナトリウムである。
結果を図3に示す。プローブを固定した各スポットにおいて、Alexa647標識された検出プローブの蛍光像が観察され、ハイブリダイゼーション反応に用いたmiR−141の分子数0.5fmol〜50fmolの範囲で線形性が確認された。このことから、スポット全体の蛍光強度はmiRNA濃度に依存してシグナルが上昇していることが確認された。
(標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの合成)
別種の標的miRNAとして、miR−143の配列を有するRNAを合成した。また、これに相補的な配列を有する捕捉プローブと検出プローブの2種の核酸プローブを設計・合成した。
用いた標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの配列を以下に示す。
(1)標的miRNA:miR−143
[配列:5’− UGAGAUGAAGCACUGUAGCUC−3’] (配列番号5:21mer)
[配列:5’−p−X4−fS−3’]
X4は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、Sはチオール基を表し、fは6−FAM(6−フルオロセイン)を表す。
X4:GTGCTTCATCTCAACAACAACAACAACAACAACA(配列番号6:34mer)
[配列:5’−p−X5−Al−X6−3’]
X5、X6は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、AlはAlexa647−AminoC6−dAを表す。
X5:CTCAACTGGTGTCGTGG(配列番号7:17mer)
X6:GTCGGCAATTCAGTTGAGGAGCTACA(配列番号8:26mer)
実施例2において、T4 DNA ligaseを加えない以外は、実施例2と同様の方法で、マイクロアレイを作製し、ハイブリダイゼーションを行い、基板上のスポット全体の蛍光強度を測定した。
(標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの合成)
類似の標的miRNAとして、miR−141及びmiR−200aの配列を有するRNAを合成した。また、これらに相補的な配列を有する捕捉プローブ1種と検出プローブ2種の合計3種の核酸プローブを設計・合成した。
用いた標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの配列を以下に示す。
(1)標的miRNA:miR−141
[配列:5’−UAACACUGUCUGGUAAAGAUGG−3’] (配列番号1:22mer)
[配列:5’−UAACACUGUCUGGUAACGAUGU−3’] (配列番号9:22mer)
[配列:5’−p−X1−fS−3’]
X1は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、Sはチオール基を表し、fは6−FAM(6−フルオロセイン)を表す。
X1:ACCAGACAGTGTTAACAACAACAACAACAACAACA(配列番号2:35mer)
[配列:5’−p−X2−Al−X3−3’]
X2、X3は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、AlはAlexa647−AminoC6−dAを表す。
X2:CTCAACTGGTGTCGTGG(配列番号3:17mer)
X3:GTCGGCAATTCAGTTGAGCCATCTTT(配列番号4:26mer)
[配列:5’−p−X2−Al−X7−3’]
X2、X3は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、AlはAlexa532−AminoC6−dAを表す。
X2:CTCAACTGGTGTCGTGG(配列番号3:17mer)
X7:GTCGGCAATTCAGTTGAGACATCGTT(配列番号10:26mer)
さらに、miR−141又はmiR−200aと、検出プローブ1及び検出プローブ3を含有するハイブリダイゼーション反応溶液を表3のように調製した。
結果を表4に示す。プローブを固定した各スポットにおいて、Alexa647又はAlexa532で標識された検出プローブの蛍光像がそれぞれ観察され、その蛍光強度からmiR−141及びmiR−200aを定量した。標的miRNAに完全に相補的な配列を有する検出プローブの蛍光強度を100%とすると、2塩基異なる配列を有するmiRNA存在下においては蛍光強度が1%以下となり、検出プローブが高い特異性を有していることが確認された。
(標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの合成)
標的miRNAとして、let−7aの配列を有するRNAを合成した。また、これに相補的な配列を有するが長さの異なる2種の捕捉プローブと検出プローブの合計3種の核酸プローブを設計・合成した。
用いた標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの配列を以下に示す。
(1)標的miRNA:let−7a
[配列:5’− UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU−3’] (配列番号11:22mer)
[配列:5’−p−X9−fS−3’]
X9は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、Sはチオール基を表し、fは6−FAM(6−フルオロセイン)を表す。
X9:AACCTACTACCTCAACAACAACAACAACAACAACA(配列番号12:35mer)
[配列:5’−p−X10−fS−3’]
X10は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、Sはチオール基を表し、fは6−FAM(6−フルオロセイン)を表す。
X10:ACCTACTACCTCAACAACAACAACAACAACAACA(配列番号13:34mer)
[配列:5’−p−X11−Al−X12−3’]
X11、X12は以下の配列を表し、pはリン酸を表し、AlはAlexa647−AminoC6−dAを表す。
X11:CTCAACTGGTGTCGTGG(配列番号14:17mer)
X12:GTCGGCAATTCAGTTGAGAACTATAC(配列番号15:26mer)
結果を図8に示す。検出プローブ4に結合しているAlexa647の蛍光を指標に泳動後のゲルを撮影したところ、捕捉プローブ3を含む場合は約130塩基長の位置に3者複合体のバンドが見られた。一方、捕捉プローブ4を含む場合はシグナルが全く出なかったことから、捕捉プローブの塩基長を変化させることで3者複合体の形成を制御できることが示された。すなわち、捕捉プローブ3および4を基板上の別の領域に固定した場合は、let−7aおよびlet−7bのシグナルが互いに異なる領域で検出されることになる。以上のように、本実施形態によれば、類似miRNA群を特異的に定量できる。
図9に示すマイクロチップをPDMS(Polydimethylsiloxane)で作製し、実施例1の試薬を用いて、マイクロチップ上でmiRNAの定量を試みた。各流路は、幅200μm、高さ20μmであり、かつ溶液導入口が2つ配置されており、それぞれがガス圧により開閉するバルブで区切られている。このような流路セットが30 mm角のガラス基板上に6組並列に並んでいる。
Claims (13)
- (a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、を含む溶液を、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含む捕捉プローブが固定された基板に接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記基板上に核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記検出プローブの末端と、前記核酸及び前記捕捉プローブの末端と、をライゲーションさせる工程と、
(d)前記基板上に形成された前記核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体中の標識物質を定量的に検出し、検出結果から前記核酸試料中の核酸を定量する工程と、
を有することを特徴とする核酸の定量方法。 - 前記工程(a)において、前記溶液は、異なる種類の標識物質により標識されている複数種類の検出プローブを含む請求項1に記載の核酸の定量方法。
- 前記工程(a)において、前記核酸試料は、検出対象の複数種類の核酸を含有し、前記複数種類の核酸の第1の部分がそれぞれ重複しないように、前記捕捉プローブの5’末端と3’末端のうち、どちら側が基板に固定されるかを選択される請求項1又は2に記載の核酸の定量方法。
- 前記工程(a)において、前記溶液は、塩基長の異なる複数の検出プローブと、塩基長の異なる複数の捕捉プローブを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸の定量方法。
- 前記工程(b)及び前記工程(c)は、同時に行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸の定量方法。
- 前記捕捉プローブ及び/又は前記検出プローブはLNA(Locked Nucleic Acid)又はBNA(Bridged Nucleic Acid)を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸の定量方法。
- 核酸試料中の第1の部分及び第2の部分からなる核酸を検出するために用いられる検出プローブであって、
相補鎖を形成する2つのステム部と、
前記2つのステム部間の領域であり、標識物質により標識されているループ部と、
前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列からなり、5’突出末端又は3’突出末端と、を備える検出プローブと、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、基板に固定された捕捉プローブと、を含むことを特徴とするプローブセット。 - 前記ループ部の標識は、前記第2の部分の塩基配列と対応づけられている請求項7に記載のプローブセット。
- 前記核酸は、miRNAである請求項7又は8に記載のプローブセット。
- 核酸試料中の複数種類の第1の部分及び第2の部分からなる核酸を検出するために用いられる複数種類の検出プローブであって、
前記複数種類の検出プローブは、相補鎖を形成する2つのステム部と、前記2つのステム部間の領域であり、それぞれ、異なる種類の標識物質により標識されているループ部と、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列からなり、5’突出末端又は3’突出末端と、を備え、
前記ループ部の標識と前記第2の部分の塩基配列が対応づけられている複数種類の検出プローブと、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、基板に固定された複数種類の捕捉プローブと、を含むことを特徴とするプローブセット。 - 前記核酸は、miRNAである請求項10に記載のプローブセット。
- (a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、を含む溶液を、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含む捕捉プローブが固定された基板に接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記基板上に核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記検出プローブの末端と、前記核酸及び前記捕捉プローブの末端と、をライゲーションさせる工程と、
(d)前記基板上に形成された前記核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、
を有することを特徴とする核酸の検出方法。 - (a’)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料を、前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含む捕捉プローブが固定された基板に接触させる工程と、
(b’)ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブを、前記基板に接触させて前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記基板上に核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記検出プローブの末端と、前記核酸及び前記捕捉プローブの末端と、をライゲーションさせる工程と、
(d)前記基板上に形成された前記核酸−検出プローブ−捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、
を有することを特徴とする核酸の検出方法。
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