JP6170805B2 - 導電性カーボン - Google Patents

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Description

本発明は、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池を与える導電性カーボン及びその製造方法に関する。
携帯電話やノート型パソコンなどの情報機器の電源として、エネルギー密度が高い非水系電解液を使用したリチウムイオン二次電池が広く使用されているが、これらの情報機器の高性能化や取り扱う情報量の増大に伴う消費電力の増加に対応するために、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度の向上が望まれている。また、石油消費量の低減、大気汚染の緩和、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量の低減などの観点から、ガソリン車やディーゼル車に代わる電気自動車やハイブリッド自動車などの低公害車に対する期待が高まっており、これらの低公害車のモーター駆動電源として、高いエネルギー密度を有する大型のリチウムイオン二次電池の開発が望まれる。
上記リチウムイオン二次電池は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出する正極活物質を含む正極と、リチウムを可逆的に吸蔵・放出する負極活物質を含む負極と、リチウム塩を非水系溶媒に溶解させた電解液とを有する。正極及び負極を構成する正極活物質及び負極活物質は、それぞれ導電剤との複合材料の形態で使用されるのが一般的である。導電剤としては、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブ等の導電性カーボンが使用される。導電性カーボンは、導電性の低い活物質と併用されて、複合材料に導電性を付与する役割を果たすが、これだけでなく、活物質のリチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化を吸収するマトリックスとしても作用し、また、活物質が機械的な損傷を受けても電子伝導パスを確保するという役割も果たす。
ところで、これらの活物質と導電性カーボンとの複合材料は、活物質の粒子と導電性カーボンを混合する方法により製造されるが、導電性カーボンは基本的にリチウムイオン二次電池のエネルギー密度の向上に寄与しないため、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池を得るためには、単位体積あたりの導電性カーボン量を減少させて活物質量を増加させる必要がある。そこで、導電性カーボンの分散性を向上させ、或いは、導電性カーボンのストラクチャを低下させることにより、活物質粒子間の距離を接近させて単位体積あたりの活物質量を増加させる検討が行われている。
例えば、特許文献1(特開2004−134304号公報)には、平均一次粒子径が10〜100nmの粒径の小さいカーボン材(実施例ではアセチレンブラック)を含み且つ1.20以上の黒化度を有する正極を備えた非水二次電池が開示されている。正極作成に用いられる塗料は、正極活物質と上記カーボン材とバインダと溶媒との混合物を、高速回転ホモジナイザー型分散機、3本以上の回転軸を有するプラネタリーミキサーのような強せん断分散装置で分散するか、或いは、正極活物質とバインダと溶媒との混合物を分散させたペーストに、上記カーボン材とバインダと溶媒との混合物を強せん断分散装置で分散させた分散体を添加し、さらに分散させることによって得られている。強せん断力を有する装置を用いることにより、粒子径が小さいため分散されにくいカーボン材が均一に分散される。
また、特許文献2(特開2009−35598号公報)には、BET比表面積が30〜90m/g、DBP吸収量が50〜120mL/100g、及びpHが9以上であるアセチレンブラックからなる非水系二次電池電極の導電剤が開示されている。このアセチレンブラックと活物質との混合物をバインダを含む液体に分散してスラリーを調製し、このスラリーを集電体に塗布・乾燥することにより、二次電池の電極が構成される。上記特性を有するアセチレンブラックは、ケッチェンブラックや従来のアセチレンブラックに比較して低いストラクチャを有するため、活物質との混合物の嵩密度が向上し、電池容量が向上する。
特開2004−134304号公報 特開2009−35598号公報
リチウムイオン二次電池には、エネルギー密度のさらなる向上が常に求められている。しかし、発明者らが検討したところ、特許文献1或いは特許文献2のような方法であっても、活物質粒子間に導電性カーボンを効率よく進入させることが困難であり、したがって活物質粒子間の距離を接近させて単位体積あたりの活物質量を増加させることが困難であった。そのため、活物質と導電性カーボンとの複合材料を用いた正極及び/又は負極によるエネルギー密度の向上には限界があった。
そこで、本発明の目的は、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池へと導く導電性カーボン及びその製造方法を提供することである。
発明者らは、鋭意検討した結果、空隙を有する導電性カーボンに強い酸化処理を施こすことにより得られた導電性カーボンと活物質との複合材料を用いてリチウムイオン二次電池の電極を構成すると、電極密度が大幅に上昇することを発見した。そして、使用した導電性カーボンを詳細に分析した結果、導電性カーボンの一次粒子内に認められる半径1.2nmの細孔の数が原料として用いた導電性カーボンにおける半径1.2nmの細孔の数より顕著に減少しており、また導電性カーボンに含まれる親水性固相成分が、特定範囲の結晶子サイズを有し、且つ、導電性カーボンの共役二重結合が酸化されて形成された炭素が単結合で結合したアモルファス成分を多く含んでいると、電極密度が著しく向上することを発見した。
したがって、本発明はまず、空隙を有するカーボン原料を酸化処理することにより得られる、リチウムイオン二次電池の電極のための導電性カーボンであって、親水性固相成分を含み、該親水性固相成分の、ラマンスペクトルから算出された、グラフェン面方向のねじれを含まない結晶子サイズLaと、グラフェン面方向のねじれを含む結晶子サイズLeqとが、1.3nm≦La≦1.5nm、且つ、1.5nm≦Leq≦2.3nm、且つ、1.0≦Leq/La≦1.55の関係を満たし、上記親水性固相成分のラマンスペクトルにおける、1510cm−1付近のアモルファス成分バンドのピーク面積の、980〜1780cm−1の範囲のピーク面積に対する割合が、13〜19%の範囲であり、且つ、上記導電性カーボンにおける半径1.2nmの細孔の数が、上記カーボン原料における半径1.2nmの細孔の数の0.4〜0.6倍であることを特徴とする導電性カーボンに関する。
本発明では、半径1.2nmの細孔の数の比は、JIS Z8831−2に従った細孔分布測定における半径1.2nmの細孔の数の比を意味する。また、導電性カーボンの「親水性固相成分」とは、以下の方法で採取された部分を意味する。すなわち、純水20〜100mLに純水の1/1000の質量の導電性カーボン粉末を添加し、10〜60分間の超音波照射を行なうことによって導電性カーボンを純水に十分に分散させ、この分散液を10〜60分間静置した後、上澄み液を採取する。この上澄み液から遠心分離により固体として採取された部分が「親水性固相成分」である。さらに、親水性固相成分におけるラマンスペクトルは、以下のように波形分離されて使用される。レーザラマン分光光度計(励起光:アルゴンイオンレーザ;波長514.5nm)を用いて得られたラマンスペクトルについて、解析ソフト(spectra manager)のフィッティング解析ソフトを用いて、
成分a:ピーク;1180cm−1付近
成分b:ピーク;1350cm−1付近:Dバンド
成分c:ピーク;1510cm−1付近
成分d:ピーク;1590cm−1付近:Gバンド
成分e:ピーク;1610cm−1付近
成分f:ピーク;2700cm−1付近:2Dバンド、
成分g:ピーク;2900cm−1付近:D+Gバンド
の7つの成分について、ガウス/ローレンツ混合関数の波形を用い、各成分の波数と半値幅が以下の範囲内になるように波数と半値幅を変動させて、最小二乗法により波形分離を行う。
成分a:波数1127−1208cm−1、半値幅144−311cm−1
成分b:波数1343−1358cm−1、半値幅101−227cm−1
成分c:波数1489−1545cm−1、半値幅110−206cm−1
成分d:波数1571−1598cm−1、半値幅46−101cm−1
成分e:波数1599−1624cm−1、半値幅31−72cm−1
成分f:波数2680−2730cm−1、半値幅100−280cm−1
成分g:波数2900−2945cm−1、半値幅100−280cm−1
波形分離の結果得られた成分d、すなわちGバンドのピーク面積、成分b、すなわちDバンドのピーク面積、及び、成分f、すなわち2Dバンドのピーク面積を用いて、La及びLeqが以下の式に従って算出される。
La=4.4×(Gバンドのピーク面積/Dバンドのピーク面積)nm
Leq=8.8×(2Dバンドのピーク面積/Dバンドのピーク面積)nm
以下に、LaとLeqとの関係を概念的に示す。(A)はグラフェン面にねじれが存在する結晶子を、(B)はグラフェン面にねじれが存在しない結晶子を示している。Leq/Laの値が1から離れるほど、(A)に示すねじれの部分を有する結晶子が多く含まれていることになる。また、Laの値が大きくなるにつれて、Leq/Laの値も大きくなることもわかっている。
以下に、ラマンスペクトルにおける成分a〜eとその由来及び炭素の結合状態を示す。このうち、1510cm−1付近のバンド、すなわち、成分cは、導電性カーボンの共役二重結合(SP混成)が強く酸化されて形成された炭素単結合(SP混成)に由来するピークであるため、アモルファス成分バンドと言われる。そして、上記波形分離の結果得られた成分cのピーク面積が、アモルファス成分バンドのピーク面積である。980〜1780cm−1の範囲のピーク面積は成分a〜eのピーク面積の合計と一致する。以下、親水性固相成分のラマンスペクトルにおける、1510cm−1付近のアモルファス成分バンドのピーク面積の、980〜1780cm−1の範囲のピーク面積に対する割合を、「アモルファス成分率」と表わす。
本発明の導電性カーボンにおける親水性固相成分は、リチウムイオン二次電池の電極形成のために従来使用されているケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの親水性固相成分に比較して、La及びLeqの値が小さく、Leq/Laの値を尺度として判断されるグラフェン面におけるねじれも少なく、アモルファス成分率が高いという特徴を有する。
導電性カーボンにおける半径1.2nmの細孔の数がカーボン原料における半径1.2nmの細孔の数に対して上述の範囲を満たしており、親水性固相成分のLaとLeqとが上述の範囲を満たしており、親水性固相成分のアモルファス成分率が上述の範囲を満たしていると、導電性カーボンが高い柔軟性を有するようになり、導電性カーボンに圧力が印加されると、カーボンの粒子が変形して糊状に広がるようになる。そのため、正極活物質又は負極活物質と、本発明の導電性カーボンとを、必要に応じてバインダを溶解した溶媒に添加して十分に混練し、得られた混練物をリチウムイオン二次電池の正極又は負極を構成するための集電体上に塗布し、必要に応じて乾燥した後、塗膜に圧延処理を施すと、その圧力により、本発明の導電性カーボンが糊状に広がって活物質粒子が互いに接近し、隣り合う活物質の間に形成される間隙部に本発明の導電性カーボンが押し出させて充填される。その結果、圧延処理後に得られる正極又は負極の単位体積あたりの活物質量が増加し、高い電極密度を有する電極が安定に得られるようになる。導電性カーボンにおける半径1.2nmの細孔の数がカーボン原料における半径1.2nmの細孔の数に対して上述の範囲より大きく、或いは、La、Leq、及びLeq/Laの値が上述の範囲より大きく、或いは、アモルファス成分率が上述の範囲より小さいと、導電性カーボンの柔軟性が低下する傾向が認められ、したがって圧延処理後に得られる正極又は負極の電極密度が低下する傾向が認められる。導電性カーボンにおける半径1.2nmの細孔の数がカーボン原料における半径1.2nmの細孔の数に対して上述の範囲より小さく、La、Leq、及びLeq/Laの値が上述の範囲より小さく、アモルファス成分率が上述の範囲より大きい導電性カーボンは製造しにくく、また電極密度向上の効果が飽和する傾向が認められる。
本発明の導電性カーボンは、空隙を有するカーボン原料を酸化処理することにより製造することができる。この酸化処理によって、カーボン原料の破砕や表面官能基の反応等により、カーボン原料の一次粒子内の細孔が潰れ、同時に、導電性カーボンの共役二重結合が酸化されて炭素単結合が生成し、グラフェン面方向の結晶子が特にねじれの部分で切断されて、上記特定範囲のアモルファス成分率を有し且つ上記特定範囲のLa及びLeqを有する親水性固相成分を含む柔軟な導電性カーボンが得られる。中実のカーボン原料を使用する酸化処理によっては、上記特定範囲のアモルファス成分率を有し且つ上記特定範囲のLa及びLeqを有する親水性固相成分を含む導電性カーボンを得ることは困難である。
本発明の導電性カーボンは、高い柔軟性を有し、導電性カーボンに圧力が印加されると、カーボンの粒子が変形して糊状に広がる。リチウムイオン二次電池の電極の製造において、リチウムを可逆的に吸蔵・放出可能な活物質と本発明の導電性カーボンとを混合した複合材料に圧力を印加すると、その圧力により、本発明の導電性カーボンが糊状に広がって活物質粒子が互いに接近し、隣り合う活物質の間に形成される間隙部に本発明の導電性カーボンが押し出させて充填される。その結果、電極における単位体積あたりの活物質量が増加し、電極密度が増加するため、電池のエネルギー密度の向上がもたらされる。
実施例と比較例の導電性カーボンの細孔分布を比較した図である。 実施例と比較例の導電性カーボンの圧入解析結果を比較した図である。 実施例と比較例の導電性カーボンの水溶性部分についての紫外可視スペクトルを比較した図である。 実施例と比較例の導電性カーボンの親水性固相成分のラマンスペクトルを比較した図である。 実施例と比較例の導電性カーボンのSEM写真である。 Leqと電極密度の関係を示した図である。 アモルファス成分率と電極密度の関係を示した図である。
本発明の導電性カーボンは、高い柔軟性を有し、導電性カーボンに圧力が印加されると、カーボンの粒子が変形して糊状に広がるが、この性質は、カーボン原料の強い酸化による破砕や表面官能基の反応と、導電性カーボンに含まれる親水性固相成分に主に起因する。カーボン原料の強い酸化の結果得られる導電性カーボンにおける半径1.2nmの細孔の数が、カーボン原料における半径1.2nmの細孔の数の0.4〜0.6倍に減少する。また、親水性固相成分のラマンスペクトルから算出されたグラフェン面方向のねじれを含まない結晶子サイズLaと、グラフェン面方向のねじれを含む結晶子サイズLeqとは、1.3nm≦La≦1.5nm、且つ、1.5nm≦Leq≦2.3nm、且つ、1.0≦Leq/La≦1.55の関係を満たし、この親水性固相成分のラマンスペクトから算出されたアモルファス成分率は、13〜19%、好ましくは14〜18%の範囲である。本発明の導電性カーボンにおける親水性固相成分は、リチウムイオン二次電池の電極形成のために従来使用されているケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの親水性固相成分に比較して、La及びLeqの値が小さく、Leq/Laの値を尺度として判断されるグラフェン面におけるねじれが少なく、またアモルファス成分率が高いという特徴を有する。
本発明の導電性カーボンは、空隙を有するカーボン原料に強い酸化処理を施すことにより得られる。上記空隙には、多孔質炭素粉末の孔隙のほか、ケッチェンブラックの内部空孔、カーボンナノファイバやカーボンナノチューブのチューブ内空隙及びチューブ間空隙が含まれる。強い酸化処理の過程で、カーボン原料の破砕や表面官能基の反応等により、導電性カーボンの比表面積が減少し、カーボン原料の一次粒子内の細孔が潰れる。得られる導電性カーボンにおける半径1.2nmの細孔の数は、カーボン原料における半径1.2nmの細孔の数の0.4〜0.6倍に減少する。また、得られる導電性カーボンの比表面積は、一般に650〜800cm/gの範囲である。なお、比表面積はJIS Z8830に従って測定された値を意味する。さらに、強い酸化処理の過程で、導電性カーボンの共役二重結合が酸化されてアモルファス成分が多く生成し、結晶子の破砕、特にグラフェン面のねじれの部分における破砕が起こり、上述した特定の関係を満たすLa、Leq及びアモルファス成分率を有する親水性固相成分を含む導電性カーボンが得られる。
また、カーボン原料に対する強い酸化処理の過程で、ストラクチャが切断される。ストラクチャの高低はDBP吸油量により表わされるが、本発明の導電性カーボンの好ましい形態では、DBP吸油量が100〜200mL/100gの範囲である。なお、DBP吸油量はJIS K 6217−4に従って測定された値である。
本発明の導電性カーボンは、
(a1)空隙を有するカーボン原料を酸で処理する工程、
(b1)酸処理後の生成物と遷移金属化合物とを混合する工程、
(c1)得られた混合物を粉砕し、メカノケミカル反応を生じさせる工程、
(d1)メカノケミカル反応後の生成物を非酸化雰囲気中で加熱する工程、及び、
(e1)加熱後の生成物から、前記遷移金属化合物及び/又はその反応生成物を除去する工程
を含む第1の製造方法によって、好適に得ることができる。
第1の製造方法では、カーボン原料として、多孔質炭素粉末、ケッチェンブラック、カーノンナノファイバ及びカーボンナノチューブのような空隙を有するカーボンが使用される。このようなカーボン原料としては、ケッチェンブラックが好ましい。中実のカーボンを原料として使用し、第1の製造方法と同様の処理を行っても、本発明の導電性カーボンを得ることは困難である。
(a1)工程では、上記カーボン原料を酸に浸漬して放置する。酸としては、硝酸、硝酸硫酸混合物、次亜塩素酸水溶液等のカーボンの酸化処理に通常使用される酸を使用することができる。浸漬時間は酸の濃度や処理されるカーボン原料の量などに依存するが、一般に5分〜1時間の範囲である。酸処理後のカーボンを十分に水洗し、乾燥した後、(b1)工程において遷移金属化合物と混合する。
(b1)工程においてカーボン原料に添加される遷移金属化合物としては、遷移金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等の無機金属塩、ギ酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等の有機金属塩、或いはこれらの混合物を使用することができる。これらの化合物は、単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。異なる遷移金属を含む化合物を所定量で混合して使用しても良い。また、反応に悪影響を与えない限り、遷移金属化合物以外の化合物、例えば、アルカリ金属化合物が共に添加されていても良い。本発明の導電性カーボンは、リチウムイオン二次電池の電極の製造において、リチウムを可逆的に吸蔵・放出可能な活物質と混合されて使用されることから、活物質を構成する元素の化合物をカーボン原料に添加すると、活物質に対して不純物となりうる元素の混入を防止することができるため好ましい。
(c1)工程では、(b1)工程で得られた混合物を粉砕し、メカノケミカル反応を生じさせる。この反応のための粉砕機の例としては、ライカイ器、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、ローラミル、攪拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ハイブリダイザー、メカノケミカル複合化装置及びジェットミルを挙げることができる。粉砕時間は、使用する粉砕機や処理されるカーボンの量などに依存し、厳密な制限が無いが、一般には5分〜3時間の範囲である。(d1)工程は、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの非酸化雰囲気中で行われる。加熱温度及び加熱時間は使用される遷移金属化合物に応じて適宜選択される。続く(e1)工程において、加熱後の生成物から遷移金属化合物及び/又はその反応生成物を酸で溶解する等の手段により除去した後、十分に洗浄し、乾燥することにより、本発明の導電性カーボンを得ることができる。
第1の製造方法では、(c1)工程において、遷移金属化合物がメカノケミカル反応によりカーボン原料の酸化を促進するように作用し、カーボン原料の酸化が迅速に進む。この酸化によって、カーボン原料の破砕や表面官能基の反応等により、カーボン原料の一次粒子内の細孔が潰れ、同時に、導電性カーボンの共役二重結合が酸化されてアモルファス成分が多く生成し、グラフェン面方向の結晶子が特にねじれの部分で切断されて、柔軟な導電性カーボンが得られる。
本発明の導電性カーボンはまた、
(a2)空隙を有するカーボン原料と遷移金属化合物とを混合する工程、
(b2)得られた混合物を酸化雰囲気中で加熱する工程、及び、
(c2)加熱後の生成物から、前記遷移金属化合物及び/又はその反応生成物を除去する工程
を含む第2の製造方法により、好適に得ることができる。
第2の製造方法でも、カーボン原料として、多孔質炭素粉末、ケッチェンブラック、カーノンナノファイバ及びカーボンナノチューブのような空隙を有するカーボンが使用される。このようなカーボン原料としては、ケッチェンブラックが好ましい。中実のカーボンを原料として使用し、第2の製造方法と同様の処理を行っても、本発明の導電性カーボンを得ることは困難である。
(a2)工程においてカーボン原料に添加される遷移金属化合物としては、遷移金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等の無機金属塩、ギ酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等の有機金属塩、或いはこれらの混合物を使用することができる。これらの化合物は、単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。異なる金属を含む化合物を所定量で混合して使用しても良い。また、反応に悪影響を与えない限り、遷移金属化合物以外の化合物、例えば、アルカリ金属化合物が共に添加されていても良い。この導電性カーボンは、リチウムイオン二次電池の電極の製造において活物質と混合されて使用されることから、活物質を構成する元素の化合物をカーボン原料に添加すると、活物質に対して不純物となりうる元素の混入を防止することができるため好ましい。
(b2)工程は、酸素含有雰囲気、例えば空気中で行われ、カーボンが消失しない温度、好ましくは200〜350℃の温度で行われる。続く(c2)工程において、加熱後の生成物から遷移金属化合物及び/又はその反応生成物を酸で溶解する等の手段により除去した後、十分に洗浄し、乾燥することにより、本発明の導電性カーボンを得ることができる。
第2の製造方法では、遷移金属化合物が、酸化雰囲気中での加熱工程において、カーボン原料を酸化する触媒として作用し、カーボン原料の酸化が迅速に進む。この酸化によって、カーボン原料の破砕や表面官能基の反応等により、カーボン原料の一次粒子内の細孔が潰れ、同時に、導電性カーボンの共役二重結合が酸化されてアモルファス成分が多く生成し、グラフェン面方向の結晶子が特にねじれの部分で切断されて、柔軟な導電性カーボンが得られる。
本発明の導電性カーボンは、空隙を有するカーボン原料に強い酸化処理を施すことにより得られ、第1の製造方法、第2の製造方法以外の方法でカーボン原料の酸化を促進することも可能である。
本発明の導電性カーボンは、リチウムイオン二次電池の正極活物質又は負極活物質として動作可能な活物質粒子との複合材料の形態で、この電池の電極を製造するために使用される。一般的には、正極活物質又は負極活物質と、本発明の導電性カーボンとを、必要に応じてバインダを溶解した溶媒に添加して十分に混練し、得られた混練物をリチウムイオン二次電池の正極又は負極を構成するための集電体上に塗布し、必要に応じて乾燥した後、塗膜に圧延処理を施すことにより電極が製造される。
正極活物質及び負極活物質としては、従来のリチウムイオン二次電池において使用されている活物質が特に限定なく使用される。活物質は、単独の化合物であっても良く、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
正極活物質の例としては、まず、層状岩塩型LiMO、層状LiMnO−LiMO固溶体、及びスピネル型LiM(式中のMは、Mn、Fe、Co、Ni又はこれらの組み合わせを意味する)が挙げられる。これらの具体的な例としては、LiCoO、LiNiO、LiNi4/5Co1/5、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi1/2Mn1/2、LiFeO、LiMnO、LiMnO−LiCoO2、LiMnO−LiNiO、LiMnO−LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMnO−LiNi1/2Mn1/2、LiMnO−LiNi1/2Mn1/2−LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMn、LiMn3/2Ni1/2が挙げられる。
正極活物質の例としてはまた、イオウ及びLiS、TiS、MoS、FeS、VS、Cr1/21/2などの硫化物、NbSe、VSe、NbSeなどのセレン化物、Cr、Cr、VO、V、V、V13などの酸化物の他、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiVOPO、LiV、LiV、MoV、LiFeSiO、LiMnSiO、LiFePO、LiFe1/2Mn1/2PO、LiMnPO、Li(POなどの複合酸化物が挙げられる。
負極活物質の例としては、Fe、MnO、MnO、Mn、Mn、CoO、Co、NiO、Ni、TiO、TiO、SnO、SnO、SiO、RuO、WO、WO、ZnO等の酸化物、Sn、Si、Al、Zn等の金属、LiVO、LiVO、LiTi12などの複合酸化物、Li2.6Co0.4N、Ge、Zn、CuNなどの窒化物が挙げられる。
集電体としては、白金、金、ニッケル、アルミニウム、チタン、鋼、カーボンなどの導電材料を使用することができる。集電体の形状は、膜状、箔状、板状、網状、エキスパンドメタル状、円筒状などの任意の形状を採用することができる。
バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニル、カルボキシメチルセルロースなどの公知のバインダが使用される。バインダの含有量は、混合材料の総量に対して1〜30質量%であるのが好ましい。1質量%以下であると活物質層の強度が十分でなく、30質量%以上であると、負極の放電容量が低下する、内部抵抗が過大になるなどの不都合が生じる。
活物質の粒子は、1μm以上、好ましくは5μm以上の粒径を有する粗大粒子と、隣り合う粗大粒子により形成される間隙部に進入可能な大きさ、好ましくは粗大粒子の1/5以下、特に好ましくは1/10以下の粒径を有する微小粒子と、を含むのが好ましい。活物質粒子の粒径はSEM写真により確認することができる。微小粒子の表面を本発明の導電性カーボンが被覆し、圧延処理後に、微小粒子が本発明の導電性カーボンと共に隣り合う粗大粒子により形成される間隙部に密に充填され、電極における単位体積あたりの活物質量が増加するため、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度がさらに向上する。
また、本発明の導電性カーボンは、従来のリチウムイオン二次電池の電極のために使用されているアセチレンブラック、カーボンナノファイバ等の導電性カーボンと併用されても良い。従来の導電性カーボンの表面を本発明の導電性カーボンが被覆し、圧延処理後に、従来の導電性カーボンが本発明の導電性カーボンと共に隣り合う粗大粒子により形成される間隙部に密に充填され、電極材料全体の導電性が向上するため、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度がさらに向上する。
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(1)Leq、アモルファス成分率及び微小細孔減少率の影響/第1の製造方法
実施例1
60%硝酸300mLにケッチェンブラック(商品名ECP600JP、ケッチェンブラックインターナショナル社製)10gを添加し、得られた液に超音波を10分間照射した後、ろ過してケッチェンブラックを回収した。回収したケッチェンブラックを3回水洗し、乾燥することにより、酸処理ケッチェンブラックを得た。この酸処理ケッチェンブラック0.5gと、Fe(CHCOO)1.98gと、Li(CHCOO)0.77gと、C・HO1.10gと、CHCOOH1.32gと、HPO1.31gと、蒸留水120mLとを混合し、得られた混合液をスターラーで1時間攪拌した後、空気中100℃で蒸発乾固させて混合物を採集した。次いで、得られた混合物を振動ボールミル装置に導入し、20hzで10分間の粉砕を行なった。粉砕後の粉体を、窒素中700℃で3分間加熱し、ケッチェンブラックにLiFePOが担持された複合体を得た。
濃度30%の塩酸水溶液100mLに、得られた複合体1gを添加し、得られた液に超音波を15分間照射させながら複合体中のLiFePOを溶解させ、残った固体をろ過し、水洗し、乾燥させた。乾燥後の固体の一部を、TG分析により空気中900℃まで加熱し、重量損失を測定した。重量損失が100%、すなわちLiFePOが残留していないことが確認できるまで、上述の塩酸水溶液によるLiFePOの溶解、ろ過、水洗及び乾燥の工程を繰り返し、LiFePOフリーの導電性カーボンを得た。
次いで、使用したケッチェンブラックと得られた導電性カーボンについて、比表面積及び細孔分布を測定し、半径1.2nmの細孔の数の比を算出した。得られた導電性カーボンの40mgを純水40mLに添加し、30分間超音波照射を行ってカーボンを純水に分散させた。上澄み液を採取し、この上澄み液を遠心分離し、固相部分を採取し、乾燥して親水性固相成分を得た。得られた親水性固相成分について、顕微ラマン測定装置(励起光:アルゴンイオンレーザ;波長514.5nm)を用いてラマンスペクトルを測定した。得られたラマンスペクトルから、グラフェン面方向のねじれを含まない結晶子サイズLa、グラフェン面方向のねじれを含む結晶子サイズLeq、及びLeq/La、さらにはアモルファス成分率を算出した。
Fe(CHCOO)と、Li(CHCOO)と、C・HOと、CHCOOHとHPOとを蒸留水に導入し、得られた混合液をスターラーで1時間攪拌した後、空気中100℃で蒸発乾固させた後、窒素中700℃で3分間加熱することにより、一次粒子径100nmのLiFePOの微小粒子を得た。次いで、市販のLiFePO(一次粒子径0.5〜1μm、二次粒子径2〜3μm)と、得られた微小粒子と、上記導電性カーボンとを90:9:1の割合で混合し、さらに全体の5質量%のポリフッ化ビニリデンと適量のN−メチルピロリドンを加えて十分に混錬してスラリーを形成し、このスラリーをアルミニウム箔上に塗布して乾燥した後、圧延処理を施して、リチウムイオン二次電池の正極を得た。アルミニウム箔上の電極材料の体積と重量の実測値から電極密度を算出した。
実施例2
実施例1における手順のうち、酸処理ケッチェンブラック0.5gと、Fe(CHCOO)1.98gと、Li(CHCOO)0.77gと、C・HO1.10gと、CHCOOH1.32gと、HPO1.31gと、蒸留水120mLとを混合する部分を、酸処理ケッチェンブラック1.8gと、Fe(CHCOO)1.98gと、Li(CHCOO)0.77gと、C・HO1.10gと、CHCOOH1.32g、とHPO1.31gと、蒸留水250mLとを混合する手順に変更した点を除いて、実施例1の手順を繰り返した。
実施例3
実施例1における手順のうち、酸処理ケッチェンブラック0.5gと、Fe(CHCOO)1.98gと、Li(CHCOO)0.77gと、C・HO1.10gと、CHCOOH1.32gと、HPO1.31gと、蒸留水120mLとを混合する部分を、酸処理ケッチェンブラック1.8gと、Fe(CHCOO)0.5gと、Li(CHCOO)0.19gと、C・HO0.28gと、CHCOOH0.33gと、HPO0.33gと、蒸留水250mLとを混合する手順に変更した点を除いて、実施例1の手順を繰り返した。
比較例1
実施例1において得られた酸処理ケッチェンブラックを、振動ボールミル装置に導入し、20hzで10分間の粉砕を行なった。粉砕後の粉体を、窒素中700℃で3分間加熱した。次いで、得られた導電性カーボンについて、比表面積及び細孔分布を測定し、半径1.2nmの細孔について、原料として用いたケッチェンブラックにおける細孔の数との比を算出した。得られた導電性カーボンの40mgを純水40mLに添加し、実施例1における手順と同じ手順で、親水性固相成分のLa、Leq、Leq/La、及びアモルファス成分率を算出した。また、得られた導電性カーボンを用いて、実施例1における手順と同じ手順でLiFePO含有正極を作成し、電極密度を算出した。
比較例2
実施例1で用いたケッチェンブラック原料の40mgを純水40mLに添加し、実施例1における手順と同じ手順で、親水性固相成分のLa、Leq、Leq/La、及びアモルファス成分率を算出した。また、このケッチェンブラック原料を用いて、実施例1と同じ手順でLiFePO含有正極を作成し、電極密度を算出した。
表1には、実施例1〜3及び比較例1,2の導電性カーボンについての、得られる導電性カーボンとカーボン原料との半径1.2nmの細孔の数の比、La、Leq、Leq/La、アモルファス成分率及び電極密度の値を、比表面積の値と共にまとめて示す。細孔数の比が0.6より大きく、親水性固相成分のLa、Leqが、1.3nm≦La≦1.5nm、且つ、1.5nm≦Leq≦2.3nm、且つ、1.0≦Leq/La≦1.55の関係を満たさず、親水性固相成分のアモルファス成分率が13%未満である比較例1,2の導電性カーボンを使用しても、電極密度が上がらず、言い換えると電極材料中の活物質粒子の量を増加させることができないことがわかる。また、表1より、細孔数比の減少と共に、比表面積も大きく減少していることがわかる。
比較例2の導電性カーボン(ケッチェンブラック原料)と、実施例1で得られた導電性カーボンと、を比較することにより、実施例1におけるカーボン原料酸処理→金属化合物混合→粉砕→窒素中加熱の工程(以下、「強酸化工程」と表わす)の効果を確認することができる。
図1は、比較例2と実施例1の導電性カーボンについての細孔分布測定結果を示した図である。強酸化工程の結果、A領域に現れる、発達したストラクチャを有するカーボンに認められる約25nm以上の半径を有する細孔がほとんど消失し、B領域に現れる、一次粒子内に認められる約5nm以下の半径を有する細孔の数が大きく減少していることがわかる。したがって、強酸化工程により、ストラクチャが切断され、一次粒子内の細孔が潰れることがわかった。
図2は、比較例2と実施例1の導電性カーボンの50μmの凝集体に関する圧入解析結果を示した図である。比較例2の導電性カーボンの測定では、押し込み深さ約10μmの付近で押し込み荷重が急激に増加しており、凝集体のカーボン粒子が変形しにくいことがわかる。これに対し、実施例1の導電性カーボンの測定では、押し込み深さ0〜20μmの範囲で、数回の荷重の上下動を示しながら、押し込み荷重がなだらかに上昇した。押し込み深さ約4〜約9μmに認められる荷重の上下動は、一次粒子間の結合のうちの脆弱部分が切断されたことによる荷重変動に対応し、押し込み深さ約9μm以上の範囲におけるなだらかな荷重の上昇は一次粒子の柔軟な変形に対応していると考えられる。そして、この柔軟な変形が、本発明の導電性カーボンの大きな特徴である。
強酸化工程の処理はカーボンの表面官能基の変化を伴い、この表面官能基の変化は導電性カーボンの親水性部分を分析することにより確認することができることから、導電性カーボンの親水性固相成分を採取した残りの部分(上澄み液の液相部分)について、紫外可視スペクトルを測定した。図3に、比較例2と実施例1の導電性カーボンについて、上記液相部分の紫外可視スペクトルを示した。実施例1についてのスペクトルには、比較例2についてのスペクトルには認められない小画分(小サイズのグラフェン)のπ→π遷移が明確に認められ、強酸化工程によりグラフェンが小さなサイズに切断されたことがわかった。
図4は、比較例2と実施例1の導電性カーボンの親水性固相成分の、980〜1780cm−1のラマンスペクトルと、その波形分離結果を示す。実施例1についてのスペクトルでは、比較例2についてのスペクトルと比べて、理想黒鉛に由来する成分dのピーク面積が減少し、アモルファス成分に由来する成分cのピーク面積、及び、表面酸化黒鉛に由来する成分eのピーク面積が増大していることがわかる。このことは、強酸化工程の過程で、カーボン原料のグラフェンの共役二重結合(SP混成)が強く酸化され、炭素単結合(SP混成)部分、すなわちアモルファス成分が多く生成したことを示している。
図5は、実施例1の導電性カーボン、比較例2の導電性カーボン、及び実施例1の導電性カーボンの親水性固相成分をそれぞれ分散媒に分散し、得られた分散物をアルミニウム箔上に塗布し、乾燥した塗膜を撮影したSEM写真、及び、塗膜に300kNの力の圧延処理を行った後に撮影したSEM写真を示す。比較例2の導電性カーボンの塗膜は、圧延処理の前後で、大きな変化を示さなかった。しかし、実施例1の導電性カーボンの塗膜では、SEM写真より把握されるように、圧延処理により表面の凹凸が顕著に減少し、カーボンが糊状に広がっていた。従って、強酸化処理により、カーボンの性状が大きく変化したことがわかる。実施例1の導電性カーボンの親水性固相成分の塗膜のSEM写真と実施例1の導電性カーボンの塗膜のSEM写真とを比較すると、親水性固相成分の塗膜の表面が圧延処理によりさらに平坦になり、カーボンがさらに糊状に広がっていることがわかる。このことから、実施例1の導電性カーボンにおける糊状に広がる性状は、親水性固相成分に主に起因すると考えられた。
図6には、実施例1〜3及び比較例1,2の導電性カーボンの親水性固相成分のLeqと電極密度との関係を示した。この図から明らかなように、Leqが2.35nm(比較例1)から2.20nm(実施例3)に減少する過程で、電極密度が顕著に増加している。このことから、グラフェン面方向の結晶子のねじれ部分が所定量以上に破壊されることが、電極密度の増大に大きく寄与していると考えられた。
図7には、実施例1〜3及び比較例1,2の導電性カーボンの親水性固相成分のアモルファス成分率と電極密度との関係を示した。この図から明らかなように、アモルファス成分率が増加するにつれ、電極密度が顕著に増加するものの、アモルファス成分率が13%以上になると、電極密度の増加率が飽和する傾向がある。このことから、アモルファス成分を13%以上にすることにより、高い電極密度を有するリチウムイオン二次電池の電極が再現性良く安定に得られることがわかった。
(2)ストラクチャの影響
比較例3
上述したように、強酸化工程ではカーボンのストラクチャが切断される。ストラクチャ低下の影響を調査するため、実施例1の導電性カーボンのDBP吸油量130mL/100gとほとんど同じDBP吸油量を有するものの、親水性固相成分のLeqが本発明の範囲より大きく、アモルファス成分率が本発明の範囲より小さい、市販の導電性カーボン(DBP吸油量=134.3mL/100g)を実施例1の導電性カーボンの代わりに使用し、実施例1における手順と同様にしてLiFePO含有正極を製造し、電極密度を算出した。得られた電極密度は2.4g/cmであった。この結果から、ストラクチャの低下だけでは、電極密度の向上が達成されないことがわかった。
(3)カーボン原料の影響
比較例4
実施例1でカーボン原料として使用したケッチェンブラックに代えて、中実のアセチレンブラック(一次粒子径40nm)を使用し、実施例1の手順を繰り返した。その結果、強酸化処理によっても親水性固相成分のLeqが本発明の範囲まで低下せず、アモルファス成分率が本発明の範囲まで増大せず、電極密度は2.35g/cmであり、電極密度の向上が達成されなかった。従って、原料として空隙を有するカーボン材料を使用することが重要であることがわかった。
(4)第2の製造方法
実施例4
ケッチェンブラック(EC300J、ケッチェンブラックインターナショナル社製)0.45gと、Co(CHCOO)・4HOの4.98gと、LiOH・HO1.6gと、蒸留水120mLとを混合し、得られた混合液をスターラーで1時間攪拌した後、ろ過により混合物を採集した。次いで、エバポレーターを用いてLiOH・HO1.5gを混合した後、空気中、250℃で、30分間加熱し、ケッチェンブラックにリチウムコバルト化合物が担持された複合体を得た。濃度98%の濃硫酸、濃度70%の濃硝酸及び濃度30%の塩酸を体積比で1:1:1に混合した水溶液100mLに、得られた複合体1gを添加し、得られた液に超音波を15分間照射させながら複合体中のリチウムコバルト化合物を溶解させ、残った固体をろ過し、水洗し、乾燥させた。乾燥後の固体の一部を、TG分析により空気中900℃まで加熱し、重量損失を測定した。重量損失が100%、すなわちリチウムコバルト化合物が残留していないことが確認できるまで、上述の塩酸水溶液によるリチウムコバルト化合物の溶解、ろ過、水洗及び乾燥の工程を繰り返し、リチウムコバルト化合物フリーの導電性カーボンを得た。
次いで、使用したケッチェンブラックと得られた導電性カーボンについて、比表面積及び細孔分布を測定し、半径1.2nmの細孔の数の比を算出した。得られた導電性カーボンの40mgを純水40mLに添加し、30分間超音波照射を行ってカーボンを純水に分散させた。上澄み液を採取し、この上澄み液を遠心分離し、固相部分を採取し、乾燥して親水性固相成分を得た。得られた親水性固相成分について、顕微ラマン測定装置(励起光:アルゴンイオンレーザ;波長514.5nm)を用いてラマンスペクトルを測定した。得られたラマンスペクトルから、La、Leq、及びLeq/La、さらにはアモルファス成分率を算出した。得られた導電性カーボンは、実施例1の導電性カーボンと略同一の半径1.2nmの細孔数減少率、La、Leq、及びLeq/La、さらにはアモルファス成分率を示した。
本発明の導電性カーボンの使用により、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が得られる。

Claims (1)

  1. 空隙を有するカーボン原料を酸化処理することにより得られる、リチウムイオン二次電池の電極のための導電性カーボンであって、
    親水性固相成分を含み、
    該親水性固相成分の、ラマンスペクトルから算出された、グラフェン面方向のねじれを含まない結晶子サイズLaと、グラフェン面方向のねじれを含む結晶子サイズLeqとが、
    1.3nm≦La≦1.5nm、且つ、
    1.5nm≦Leq≦2.3nm、且つ、
    1.0≦Leq/La≦1.55
    の関係を満たし、
    前記親水性固相成分のラマンスペクトルにおける、1510cm−1付近のアモルファス成分バンドのピーク面積の、980〜1780cm−1の範囲のピーク面積に対する割合が、13〜19%の範囲であり、且つ、
    前記導電性カーボンにおける半径1.2nmの細孔の数が、前記カーボン原料における半径1.2nmの細孔の数の0.4〜0.6倍である
    ことを特徴とする導電性カーボン。
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