JP6170265B1 - 冷却構造体用の有底型冷却管構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷却水を流入させるスリーブ5が熱膨張変形力あるは締付け変形力を受けた際、蛇腹辺65a、65bの微小な塑性変位を可能とする冷却構造体用の有底型冷却管構造を提供する。【解決手段】有端リング状のスペーサ18を設けたので、スリーブ5の冷却孔3への挿入操作に伴い、スリーブ5と冷却孔3との間に均等幅の環状空隙19を形成し、スリーブ5が冷却孔3に対して芯出しされて冷却孔3と同芯配置となり、冷却孔3に対する同芯性の確保が十全となる。また、スリーブ5が熱膨張変形力あるは締付け変形力を受けた際、スペーサおよび二枚の蛇腹辺65a、65bの相互の変形により二枚の蛇腹辺65a、65bの微小な塑性変位を許容させている。【選択図】図10

Description

本発明は、金型などの冷却構造体に装着される有底型冷却管構造に関する。
金型などの冷却構造体にあっては、金型の冷却に用いる冷却孔の内部に、冷却水を受けるスリーブを有底型冷却管として挿入している。スリーブを設けることで、万一、金型にクラックが発生しても、冷却水が外部に漏れないようになっている。
この一例として、図15(a)に示すように、金型59の冷却孔60に圧入拡管として装着するスリーブ61がある。また、他の冷却構造では、図15(b)に示すように、スリーブ61をSUS製管体として冷却孔60に挿入し、冷却孔60とスリーブ61との間に生じる環状間隙60aには、銅粉グリスを充填している。
図15(a)の冷却構造では、スリーブ61は弾性限度内の変形のため、スプリングバックが発生し、冷却孔60とスリーブ61との間に二次的に隙間が生じる懸念がある。
また、図15(b)の冷却構造では、冷却孔60とスリーブ61との間の隙間が拡がって冷却性能が低下する不具合が生じる。これに伴い、冷却孔60とスリーブ61との芯ずれが生じて両者間の同芯性を保持することができず、両者間の熱伝達性能が低下する虞がある。併せて、450−550℃の使用温度付近でSUSの鋭敏化現象が起こり、SUS製管体を早期に破損させる不都合が生じる。
本発明の他の背景技術としては、下記の引用する特許文献1−4が例示として挙げられる。すなわち、特許文献1では、ケーシングの外周面と冷却孔の内周面との間に、低融点合金(例えば、溶融半田材料)が流し込まれて、両者の間に空気層が介在しないように設定し、かつ低融点合金が冷えて固化することで冷却孔内にケーシングを固定している。
特許文献2には、外筒体と内筒体との隙間に溶融金属が注入固化されている密着伝熱材を形成する金型用溶湯冷却ピンが開示されている。
特許文献3では、スリーブの挿入に先立って、被冷却物の冷却孔内にサーモグリスなどの伝熱部材を充填しておいた場合にも、この伝熱部材が冷却孔から流出することを防止することができる。これにより、スリーブを被冷却物の冷却孔内に挿入する際に、外周溝により第1のシール部材がスリーブの軸線方向に移動してしまうことを防止する。第1のシール部材による密閉性を確保し、サーモグリスなどの伝熱部材を冷却孔から流出することを防止している
特許文献4では、成形機のスリーブを断熱性で環状のスペーサを間に挟んで加熱バレルの周囲を取り囲むように配置している。互いに隣接するスペーサによって取り囲まれた中にリング状の空間を形成し、この空間に冷却媒体を送り込むことで、加熱バレルを冷却して内部過熱を防いでいる。
特開2006−289382号公報 特開平9−29416号公報 特開平2011−104604号公報 特開平2004−314400号公報
特許文献1では、例えば、ケーシングを交換などする際に、金型を低融点金属の融点以上の温度(600℃前後)に上げて低融点金属を取り出す作業が必要となる。即ち、特許文献1では、空気層が介在しないよう低融点金属を適量に固化させ、または溶融させるのに労力を必要とし、使い勝手がよくない。
また、ケーシングが金型 (冷却孔の壁) へ固着する場合、低融点合金の収縮時における2次型割れが生じ、あるいはケーシングも破損する可能性があるので、内膜としての機能を損なうことになる。
特許文献2に係る金型用溶湯冷却ピン、ならびに、特許文献3に係るサーモグリスで密閉するスリーブも、特許文献1に挙げる問題がある。とりわけ、特許文献3のスリーブでは、量産などの場合、金型温度が耐熱グリスの耐熱温度以上になると、液化して洩れたりグリスの油分が気化して急膨張することも想定し得る。
特許文献4では、スリーブの外周部に隣接するスペーサ間の環状空間を重視し、この空間に冷却媒体を送り込む構成のため、スペーサの同芯配置とは無関係である。
また、従来では、スリーブが高温度で使用時に受ける軸方向の熱膨張変形力ならびに、有底型冷却管が組付け時に受ける軸方向の締付け変形力に対して、変形回避機構を備えていないものである。このため、スリーブが熱膨張に起因する変形および締付け変形を生じ、スリーブの熱源に近い熱交換の激しい箇所の破損変形を起こして冷却効率の低下を招く虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされ、冷却孔への装着に伴い、冷却孔に対する同芯性を十全に確保できるとともに、併せて有底型冷却管の熱源に近い熱交換の激しい箇所での破損変形を防ぐ冷却構造体用の有底型冷却管を提供することにある。
(請求項1について)
冷却構造体に形成された冷却孔に環状空隙を介して挿入固定される銅製あるいは銅合金製の有底型冷却管を有する冷却構造体用の有底型冷却管構造であって、冷却孔の内底部に半球状の窪み部を形成し、有底型冷却管の外底部に半球状の突状部を設けている。
環状空隙には、金属粉末、エポキシ系樹脂および硬化剤を含む混合体の状態から揮発性溶媒で溶解されるようになっており、有底型冷却管の使用時には受熱により希酸素状態で固化炭化して灰状になる充填剤が注入充填されるようになっている。
有底型冷却管の外周面の単一箇所あるいは複数箇所に径方向の内部に断面くの字の周溝状に窪み、有底型冷却管の軸方向に塑性変形可能な複数枚の蛇腹辺を変形力吸収機構として設けている。有底型冷却管が使用時に受ける軸方向の熱膨張変形力ならびに、有底型冷却管が組付け時に受ける軸方向の締付け変形力を複数枚の蛇腹辺の微小な塑性変位で吸収させている。
請求項1では、スリーブが使用時に受ける熱膨張変形力ならびに、組付け時に受ける締付け変形力は、複数枚の蛇腹辺の微小な塑性変位で吸収される。
このため、有底型冷却管が熱膨張に起因する変形および締付け変形がなくなり、有底型冷却管の熱源に近い熱交換の激しい箇所の破損変形を防ぎ、冷却効率の低下を抑制し、スリーブの初期の良好な状態を長期間使用することができて長寿命化に資する。
(請求項2について)
小球状の金属製あるいは合成樹脂製のボールを複数枚の蛇腹辺の間に複数配置し、ボールを蛇腹辺に二点接触させるている。これと同時に、ボールを冷却孔の内周面に一点接触により当接させ、有底型冷却管が熱膨張変形力あるは締付け変形力を受けた際、ボールおよび複数枚の蛇腹辺の相互の変形により複数枚の蛇腹辺の微小な塑性変位を許容させるように設定している。この状態で、冷却孔に対する有底型冷却管の同芯配置を維持させている。
請求項2では、請求項1と同様に、有底型冷却管が熱膨張に起因する変形および締付け変形がなくなり、熱源に近い熱交換の激しい箇所の破損変形を防ぎ、冷却効率の低下を抑制することができる。
(請求項3について)
弾性変形可能な合成樹脂により形成された有端リング状のスペーサを複数枚の蛇腹辺の間に嵌合配置し、スペーサの外表面の全面を冷却孔の内周面に当接させている。有底型冷却管が熱膨張変形力あるは締付け変形力を受けた際、スペーサおよび複数枚の蛇腹辺の相互の変形により複数枚の蛇腹辺の微小な塑性変位を許容させるように設定している。併せて、冷却孔に対する有底型冷却管の同芯配置を維持させている。
このように構成しても、請求項1と同様な効果が得られる。
(請求項4について)
有端リング状のスペーサに代わって、金属材料から成るスペーサを設けている。このように構成したスペーサでも、請求項3と同一の効果を得ることができる。
(請求項5について)
有端リング状のスペーサを使用時の受熱により充填剤と同化消失する合成樹脂材料により形成している。併せて、スペーサを有底型冷却管の外周面に嵌着し、冷却孔に対する有底型冷却管の同芯配置を維持させている。
請求項5では、スペーサの合成樹脂材料として、例えばPPまたはABSなどの材質を適用することにより、金型冷却機構の稼働時に合成樹脂材料が500℃付近で希酸素雰囲気の環境下で炭化する。炭化したスペーサは、環状空隙内の充填剤と渾然一体化して混ざり合って同化消失するため、廃棄処理時にスペーサを別部材として区分けする必要がなくなる利点がある。
(請求項6について)
有端リング状のスペーサを金属材料から構成し、スペーサを有底型冷却管の外周面に嵌着し、冷却孔に対する有底型冷却管の同芯配置を維持させている。このように構成したスペーサでも、請求項3と同一の効果を得ることができる。
(請求項7について)
有底型冷却管の内周面には、複数の縦溝が有底型冷却管の軸方向に沿うように形成されているとともに、有底型冷却管の内底面には、径寸法が大小異なる複数の周溝を同芯状に形成している。
請求項7では、複数の縦溝や周溝により、内周面に凹凸形状が形成されて、有底型冷却管の内周面積および内底面積が広くなるため、冷却水に対する接触領域が増加して、冷却性能の向上が可能となる。
(請求項8について)
有底型冷却管の内底面には、錐体状の整流突起体が有底型冷却管に流入する冷却水を受けるように立設されている。
請求項8では、有底型冷却管内に冷却水が流入する際、この冷却水を整流突起体が受けるので、冷却水を整流突起体の表面に沿わせて澱みなく円滑に流すことができる。
(請求項9について)
整流突起体の外表面には、整流突起体の頂点から基端部に向けて複数の流水溝を形成している。このため、有底型冷却管内に冷却水が流入する際、冷却水を整流突起体の流水溝に沿わせて澱みなく円滑に流すことができる。
(請求項10について)
冷却孔の窪み部には、切欠き部を有する有底短筒状のカラーが嵌め込まれている。冷却孔に対する有底型冷却管の挿入時、有底型冷却管の突状部がカラーの内底部に挿嵌されるようになっている。
請求項10では、冷却孔に対する有底型冷却管の挿入時に、冷却孔に対する有底型冷却管の同芯配置が可能となる。また、冷却孔の窪み部にカラーを嵌め込む際、冷却孔の窪み部に存する空気を押し出して切欠き部から逃がすエア抜き効果が得られる。
(請求項11について)
有底型冷却管は、両端が開口された長尺管と短尺有底管とから成り、長尺管および短尺有底管のいずれか一方の開口端部を径小に形成した縮径端部としている。縮径端部を他方の開口端部内に嵌合接続し、長尺管の外周面と短尺有底管の外周面とが面一となるように設定している。
請求項11では、径寸法に比べて軸長が大きな長尺となる細長な有底型冷却管とする場合に好都合である。すなわち、径小・長尺となる細長な有底型冷却管は、押出し成型で一度に形成することが難しいため、長尺管と短尺有底管とから構成したものである。一方の縮径端部を他方の開口端部内に嵌合接続することで、有底型冷却管を簡素な構成で素早く実現させることができる。
(請求項12について)
冷却孔における上面開口部の内面には、雌ねじ部が刻設されており、雄ねじ部を有して且つ面取り状テーパ部を形成した栓体を雌ねじ部に螺進させる。これにより、面取り状テーパ部が冷却孔内の有底型冷却管の上面開口端部を押圧し、弾性域を超えて外方に拡開変形させて冷却孔の内周面に水密状態に当接させる構造を成す。
請求項12では、栓体を冷却孔の雌ねじ部に螺進させることで、面取り状テーパ部が有底型冷却管の上面開口端部を押圧して拡開変形させて冷却孔の内周面に水密状態に当接させている。このため、有底型冷却管の上面開口端部が冷却孔の内周面に加圧圧着するようになり、冷却孔に対して有底型冷却管を止水状態で完全に同芯配置とすることが可能となる。
(a)はスリーブを備えた有底型冷却管構造を示す縦断面図、(b)は図1(a)のA−A線に沿う横断面図である(実施例1)。 (a)はスリーブを備えた有底型冷却管構造を示す縦断面図、(b)は図2(a)のE−E線に沿う横断面図、(c)は図2(a)のK−K線に沿う横断面図である(実施例2)。 (a)はスリーブの内底部を示す展開図、(b)は図3(a)のB−B線に沿う横断面図、(c)は図3(a)のC−C線に沿う縦断面図である(実施例3)。 (a)はスリーブを備えた有底型冷却管構造を示す簡略的な縦断面図(実施例4)、(b)は有底型冷却管と短筒状のカラーとの分解斜視図(実施例4)、(c)はカラーの製造過程を示す斜視図である(実施例4の変形例)。 長尺管と短尺有底管とから成るスリーブの縦断面図である(実施例5)。 フランジ部の拡開変形前のスリーブを示す縦断面図である(実施例6)。 フランジ部の拡開変形後のスリーブを示す縦断面図である(実施例6)。 (a)、(b)はスリーブに設けるスペーサを示す斜視図である(スペーサの変形例)。 (a)、(b)、(c)はスリーブに設けるスペーサを示す斜視図である(スペーサの変形例)。 (a)は有底型冷却管構造を示す簡略的な縦断面図、(b)−(d)はスリーブの蛇腹辺が塑性変位する態様を示す簡略図である(実施例7)。 有底型冷却管構造を示す部分的縦断面図である(実施例8)。 (a)、(b)、(c)は金属製のボールを用いた場合の蛇腹辺が塑性変形する態様を示す縦断面図、(c)、(d)、(e)は合成樹脂製のボールを用いた場合の蛇腹辺が塑性変形する態様を示す縦断面図である(実施例9)。 (a)は蛇腹辺に合成樹脂製のスペーサを用いた場合の有底型冷却管構造を示す部分的縦断面図、(b)はスペーサの平面図、(c)はスペーサの斜視図である(実施例9)。 (a)は有底型冷却管構造におけるスリーブを示す概略的縦断面図、(b)はスペーサの斜視図である(実施例10)。 (a)、(b)は冷却用のスリーブを金型の冷却孔に装着した構造を示す縦断面図である(従来例)。
本発明では、有底型冷却管としてのスリーブにおいて、外周面の単一箇所あるいは複数箇所に有端リング状のスペーサを設けている。冷却孔への挿入時に、スリーブと冷却孔との間に均等幅となる環状空隙を形成し、併せて、スリーブが冷却孔に対して芯出しされて冷却孔と同芯配置とすることを技術的特徴とする。
以下、本発明の実施例1について図1(a)、(b)を参照しながら説明する。
本発明に係る冷却構造体用の有底型冷却管構造は、冷却構造体としての金型冷却機構に適用されている。金型冷却機構の金型2はSUS系またはSKD系金属により形成され、冷却対象物として鋳物を型造るキヤビティ面(図示せず)と、このキヤビティ面の反対面側(「型面」とも称する)に金型2を冷却する冷却孔3を有底筒状空間として形成している。
この冷却孔3において、段付き状に形成された上部を径大な開口部3aとしている。冷却孔3は、上端3cから下端3dに到る軸方向の全長にわたって連続して同一径のストレートに設定されており、冷却孔3の内底部は半球状の窪み部4を形成している。
なお、冷却孔3は、その孔径が後述する有底型冷却管(以後、単にスリーブ5と称す)と同一径といえども、スリーブ5の外径と対応するというべきであり、スリーブ5を挿入できるように、スリーブ5の外径よりも若干径大となっている。スリーブ5は、例えば200mm−300mmの長尺管であり、厚みは外径寸法によって異なるが略0.3mmから0.5mmの範囲としている。
開口部3aの内周面には雌ねじ部6が形成され、開口部3aと冷却孔3の上端部との境界に設けられた段部7には、スライドパイプ8の鍔部8aがロウ付けなどの溶着手段により固定されている。すなわち、スライドパイプ8は、上端開口部に鍔部8aを一体形成し、短尺でストレートなスカート管部8bを所定深さの冷却孔3内に遊嵌させている。
金型冷却機構9は、冷却孔3内に後述する環状空隙19を介して遊嵌状態に挿入配置され、所定の長さ寸法を有する有底型冷却管としてのスリーブ5と、このスリーブ5を挿入手段として冷却孔3の所定位置で確実に位置決めするロックナット10と、スリーブ5に接続される配管継手11を有している。これら配管継手11とスリーブ5とは、通水媒体としての冷却水をスリーブ5に連続的に供給して排出する通水冷却循環経路の一部を構成する。
スリーブ5は、その外形を冷却孔3と同一形状としており、スリーブ5を冷却孔3へ挿入配置した後、その軸芯P1が冷却孔3の軸芯P2(図1(a)の二点鎖線参照)と同一となる管状体を成す。スリーブ5は、ストレート部5Aと、その上端側に開放端部5Bが形成され、開放端部5Bをスライドパイプ8の外周面に外嵌固定している。
斯かるスリーブ5は、純銅あるいは銅合金(例えば、Cuに対して0.01重量%〜0.3重量%以内で、Sn、Ni、In、Zn、Cr、Al、Pのうち一種または二種以上の添加を許容)により断面円形状に押出し成型されている。
スリーブ5の外底部には、冷却孔3の窪み部4に対応して嵌合する半球状の突状部12が一体的に形成されている。また、突状部12を含むスリーブ5の軸方向長さは、窪み部4を含む冷却孔3の軸方向の長さL1よりも短く設定されている。
ここで翻って、前述の金型冷却機構9を参照すると、冷却孔3の開口部3a内に配置されたロックナット10の内周面には、雌ねじ部10aを形成し、外周面には、雌ねじ部6に螺合する雄ねじ部10bを設けている。六角レンチなどの専用具を用いて、ロックナット10を雌ねじ部6に螺進させて締め付けることにより、環状のシール部材13が押圧変形されて段部7に対するシール性を強化する。
金型冷却機構9の配管継手11は、接続管部11a、取付管部11bおよび案内管部11cから成り、案内管部11cには、冷却水の流入パイプ14および流出パイプ15が連結されている。接続管部11aの外周面に形成された雄ねじ部11dは、スライドパイプ8の内周面に設けた雌ねじ部8cに螺合されている。
接続管部11aの下端には、スライドパイプ8内を挿通し、スリーブ5内に同芯配置された吸込みパイプ16および吐出パイプ17が二重管体として接続されている。吸込みパイプ16は、スライドパイプ8内を挿通し、その一部がスリーブ5内の同芯線に沿って突き出ている。吐出パイプ17は、吸込みパイプ16内を同軸状態で挿通し、その下端部はスリーブ5の突状部12付近まで延出している。
さて、スリーブ5の外周面には、単一箇所あるいは複数箇所に有端リング状のスペーサ18を設け、冷却孔3への挿入時に、スリーブ5の外周面と冷却孔3の内周面との間に均等な環状空隙19を形成する。
環状空隙19には、充填剤(図示せず)が良熱伝導材料として注入充填される。この充填剤は、例えば、金属粉末、エポキシ系樹脂および硬化剤を含む混合体から成っており、使用時には当該混合体が揮発性溶媒で溶解されるように設定されている。注入充填時に液体状などである充填剤は、使用時には受熱により希酸素雰囲気下で固化炭化して灰状になる。
なお、硬化剤として用いるポリアミン系(例えば変成ポリアミン)は液状であるが、粉末状の硬化剤を用いてもよい。充填剤の混合体には、難燃剤として燐系やハロンゲン系などの物質を加えてもよい。
スペーサ18の配置に伴い、スリーブ5が冷却孔3に対して芯出しされて冷却孔3と同芯配置となるように設定している。実施例1の場合、スペーサ18は互いに所定の間隔を置きながら軸方向に沿って上下二箇所に設けているが、スペーサ18は三箇所あるいは多数箇所に設定してもよい。
この場合、スペーサ18の内周長は、スリーブ5の外周全長の半分よりも若干大きく設定されている。なお、スペーサ18の横断面形状については、円形は勿論、楕円形、方形、矩形あるいは五角形や六角形などの多角形であってもよい。スペーサ18は、金材、銀材、銅材、アルミニウム材、ステンレス鋼材あるいはフェルトなどの多様な素材から最適なものを選択して形成してもよい。この断面形状は、スリーブ5について適用可能である。
上記構成において、冷却源を水道水とした場合、水道水は冷却水として蛇口を介して流入口15に入り、配管継手11の案内管部11c、取付管部11bおよび接続管部11aを順に通って吐出パイプ17からスリーブ5内に流出する。スリーブ5内に流出した冷却水は、吸込みパイプ16に流入し、接続管部11a、取付管部11bおよび案内管部11cを通って流出パイプ15から外部に排出される。
冷却水がスリーブ5内に流出して吸込みパイプ16に流入する循環過程で、冷却水がスリーブ5を介して金型2と継続的に熱交換されて金型2を冷やす。すなわち、スリーブ5内に送られる冷却水は、キャビティに溶湯を注湯された金型2を冷却し、熱交換で熱せられた冷却水は、スリーブ5内から配管継手11および流出パイプ15を介して外部に排出される。
〔実施例1の効果〕
実施例1では、有端リング状のスペーサ18を設けたので、スリーブ5の冷却孔3への挿入操作に伴い、スリーブ5が冷却孔3に対して芯出しされて冷却孔3と同芯配置となり、冷却孔3に対する同芯性の確保が十全となる。また、スリーブ5が銅製あるいは銅合金製のため熱伝導性が優れ、冷却孔3に沿って変形し易くて密着性もよくなる。
また、有端リング状のスペーサ18の内周長は、スリーブ5の外周全長の半分よりも若干大きく設定されている。このため、スペーサ18の内周長は、冷却孔3に対するスリーブ5の同芯配置可能な最小限の長さで済み、簡素な構造で材料の節約となる。
図2は本発明の実施例2を示す。
実施例2におけるスリーブ5の内底面には、図2(a)に示すように、錐体状の整流突起体20がスリーブ5に流入する冷却水を受けるように立設されている。すなわち、整流突起体20の頂部は、吐出パイプ17の流出口17aに図示上下に同軸となるように対向状態に配されている。この場合の錐体状とは、錐台状、円錐状、三角錐状、四角錐状および多角錐状を含む立体的概念である。
この整流突起体20の外表面には、図2(c)に示すように、整流突起体20の頂点から基端部に向けて複数の流水溝21を形成している。整流突起体20は、スリーブ5および冷却孔3の軸芯P1、P2(図1(a)参照)の双方に同軸となるように配置している。
また、スリーブ5の内周面には、図2(b)に示すように、複数の縦溝22がスリーブ5の軸方向に沿うように延出形成されている。縦溝22については、所定の軸長Hにわたって延出形成したが、スリーブ5の全長あるいは部分的に形成してもよい。
実施例2では、スリーブ5内に冷却水が流入する際、この冷却水を整流突起体20が受けるので、冷却水を整流突起体20の表面に沿わせて澱みなく円滑に流すことができる。また、スリーブ5内に冷却水が流入する際、冷却水を整流突起体20の流水溝21に沿わせて澱みなく円滑に流すことができる。
さらに、複数の縦溝22により、内周面に凹凸形状が形成されて、スリーブ5の実質的な内周面積が広くなり、冷却水に対する接触領域が増加するため、冷却性能を向上させることができる。
図3は本発明の実施例3を示す。
実施例3では、実施例2の縦溝22に加えて、スリーブ5の内底面に、互いの径寸法が大小異なる複数の周溝23を同芯配置となるように形成している(図3(a)、(b)、(c)参照)。
実施例3では、複数の縦溝22および周溝23により、スリーブ5の実質的な内底面積が広くなり、冷却水に対する接触領域が増加するため、冷却性能の向上を図ることができる。なお、互いに同芯配置となる複数の周溝23に代わって、螺旋状の条溝としてのスパイラル溝を形成してもよい。
図4は本発明の実施例4を示す。
実施例4では、冷却孔3の窪み部4には、切欠き部24aを有する有底短筒状のカラー24が嵌め込まれている(図4(a)、(b)参照)。冷却孔3に対するスリーブ5の挿入時、スリーブ5の突状部12がカラー24の内底部24eに挿嵌されるようになっている。
実施例4では、冷却孔3に対するスリーブ5の挿入時に、冷却孔3に対するスリーブ5の同芯配置が可能となる。また、冷却孔3の窪み部4にカラー24を嵌め込む際、冷却孔3の窪み部4に存する空気を押し出して切欠き部24aから逃がすエア抜き効果が得られる。
なお、実施例4の変形例としてカラー25を作製する場合、図4(c)に示すように、上下複数枚(例えば、二枚)の帯板25aの間に円盤部25bを一体に形成した板材25dを用意する。この板材25dを押出し成型により、二箇所の切欠き部25eを有するカラー25としてもよい。
図5は本発明の実施例5を示す。
実施例5におけるスリーブ5は、両端が開口された長尺管26aと短尺有底管26bとから成り、長尺管26aの開口端部を径小に形成した縮径端部26cとしている。
縮径端部26cを短尺有底管26bの開口端部内に溶接や冷し嵌めなどの固定手段で嵌合接続し、長尺管26aの外周面と短尺有底管26bの外周面とが面一となるように設定している。
実施例5では、とりわけ、径寸法に比べて軸長が大きな長尺なスリーブ5とする場合に有効である。すなわち、径小で長尺となる細長なスリーブ5は、押出し成型で一度に形成することが難しいため、長尺管26aと短尺有底管26bとから構成し、縮径端部26cを短尺有底管26bの開口端部26d内に嵌合接続したものである。
これにより、実質的に径小・長尺となったスリーブ5を簡素な構成で素早く実現させることができる。なお、上記とは逆に、縮径端部26cを短尺有底管26bに形成し、この縮径端部26cを長尺管26aの開口端部内に溶接や冷し嵌めなどの固定手段で嵌合接続してもよい。
図6および図7は本発明の実施例6を示す。実施例6が実施例1と異なるところは、図6に示すように、ロックナット10が栓体としてスライドパイプ8を一体的に連続形成し、スリーブ5の開放端部5Bに幅狭なフランジ部5eを上面開口端部として設けたことである。この場合、スライドパイプ8は、スリーブ5の内周面に沿って密着状態で、軸方向Zおよび回転方向Tにそれぞれ摺動可能に配されている。
ロックナット10がスライドパイプ8に対して境界となる外側面には、フランジ部5eの角部5fに対向する面取り状テーパ部10eを形成している。この面取り状テーパ部10eは、その径寸法D1を図示上部に向かって次第に拡開する傾斜部を有している。
この状態で、図7に示すように、ロックナット10を冷却孔3における開口部3aの雌ねじ部6に締め付けて図示下方Fに螺進させる。これにより、ロックナット10の面取り状テーパ部10eがフランジ部5eの角部5fに当たって角部5fが押圧され、弾性域を超えて外方に拡開変形する。この結果、変形されたフランジ部5eが冷却孔3の内周面3sに水密状態に当接する。
実施例6では、栓体としてのロックナット10を冷却孔3の雌ねじ部6に螺進させることで、面取り状テーパ部10eがスリーブ5のフランジ部5eを押圧する。これにより、フランジ部5eの角部5fが弾性域を超えて外方に拡開変形して冷却孔3の内周面3sに水密状態に当接する。この結果、スリーブ5のフランジ部5eが冷却孔3の内周面3sに加圧圧着するようになり、冷却孔3に対してスリーブ5を止水状態としたまま完全に同芯配置させることが可能となる。
〔変形例〕
図8および図9は本発明に係るスペーサ18の変形例を示す。
図8(a)に示す変形例1では、有端リング状のスペーサ18に代わって、両端に径方向Mに指向する突部18e、18fを有するスペーサ18Aを設けている。スリーブ5の外周面には、突部18e、18fに対応する底付き孔5j、5kを形成している。スペーサ18Aを外方に若干拡開して突部18e、18fを底付き孔5j、5kに係合させることで、スペーサ18Aがスリーブ5に装着される構成としている。
図8(b)に示す変形例2では、有端リングのスペーサ18に代わって、C型リング18Bを設け、スリーブ5に周方向に形成された周溝5gに嵌め込むことで、C型リング18Bをスリーブ5に装着する構成としている。
図9(a)に示す変形例3では、有端リングのスペーサ18に代わって、スリーブ5の外周面に周方向に沿って間欠形成した複数の突辺スペーサ18Cを設けている。この突辺スペーサ18Cはスリーブ5の軸方向Wに指向していてもよいし、軸方向Wに対して傾斜状態に配されてもよい。
図9(b)に示す変形例4では、有端リングのスペーサ18に代わって、スパッタリングやメッキなどにより、スリーブ5の外周面に周方向に沿って形成した隆起帯スペーサ18Dを設けている。
図9(c)に示す変形例5では、有端リング状のスペーサ18に代わって、スリーブ5の外周面に周方向に沿って嵌合溝5hを形成し、嵌合溝5hに配置した複数の金属球体をスペーサ5mとして設けている。金属球体のスペーサ5mは、嵌合溝5hに滑動自在に嵌合してもよく、あるいは溶着などの取付手段で固定しておいてもよい。スペーサ5mの金属球体としては、金材、銀材、銅材、アルミニウム材、これらの合金あるいはステンレス鋼材などから形成してもよい。
なお、冷却構造体の概念は、実施例1で示す金型2は勿論、エンジンなどを含む。冷却構造体には、例えば、建物のワンフロア内に収容する規模の大きな装置に組み込まれたスーパーコンピュータのCPUなども含む。
この一方、本発明では、冷却の場合に限らず、冷却構造体を使用前に加温して予熱する場合にも適用可能である。この一例として、金型交換後あるいは金型の運転開始時などに、例えば100℃程度の湯をスリーブ5に通水させてもよい。
金型の概念としては、例えば、溶湯に直接接触する溶湯冷却ピンや外筒体などを含む考えである。この溶湯冷却ピンは、金型の鋳造時における型の一部を構成し、且つ冷却孔を有するからである。すなわち、本発明では、スリーブ5を溶湯冷却ピンの冷却孔内に挿入するようにしてもよい。また、金型は、例えば、固定側の金型に配置される湯口装置あるいは可動側の金型に配置される分流子などを含む概念である。すなわち、本発明では、スリーブ5を金型本体または分流子などに形成される冷却孔へ装着してもよい。
図10は本発明の実施例7を示す。この実施例7が実施例1と異なるところは、有端リング状のスペーサ18に代わって、変形力吸収機構65を設けたことである。
変形力吸収機構65では、図10(a)に示すように、スリーブ5の外周面の単一箇所あるいは複数箇所(実施例7では一箇所)に径方向の内部に断面くの字を成す周溝状に窪むベローズ状の二枚の蛇腹辺65a、65bを設けている。蛇腹辺65a、65bの製作は、例えば当接ローラを用いた転造あるいは型を用いたプレス加工で行っている。
二枚の蛇腹辺65a、65bは、スリーブ5の軸方向(長手方向)に微小変位範囲で塑性変形可能になった変形力吸収機構65として機能する。由来、スリーブ5が使用時に軸方向の熱膨張変形力を受け、あるいは、部材間の寸法が幾何学的に適合していないことなどにより、組付け時に軸方向の締付け変形力を受けることがある。この際に受ける熱膨張変形力および締付け変形力は、二枚の蛇腹辺65a、65bの微小な塑性変位で吸収させるように設定されている。
スリーブ5が軸方向の引張力を受けた際には、蛇腹辺65a、65bの間が拡開するように塑性変位し、図10(c)の通常時から図10(b)のように伸長変形する。また、スリーブ5が軸方向の圧縮力を受けた際には、蛇腹辺65a、65bの間が塑性変位で縮むことにより、図10(d)に示すように縮小変形する。この際に受ける蛇腹辺65a、65bの軸方向の拡縮変位は僅かなものである(熱膨張変位量程度)。
実施例7では、スリーブ5が使用時に受ける熱膨張変形力ならびに、組付け時に受ける締付け変形力は、二枚の蛇腹辺65a、65bの微小な塑性変位で吸収される。
このため、長尺なスリーブ5が熱膨張に起因する変形および締付け変形がなくなり、熱源に近い熱交換の激しい箇所の破損変形を防ぎ、冷却効率の低下を抑制し、スリーブ5の初期の良好な状態を長期間使用することができて長寿命化に資する。
なお、環状空隙19に充填剤が注入充填されている場合、注入時の充填剤は液状などであり、使用時の充填剤は、受熱により液状などから固化炭化した灰状になるため、蛇腹辺65a、65bが軸方向に微小変位を行う際の妨げにはならない。
図11および図12は本発明の実施例8を示す。この実施例8が実施例7と異なるところは、金属製(鉄、スチールを含む)または合成樹脂製の材料から小球状に形成されたボール66を二枚の蛇腹辺65a、65bの間に複数配置したことである。
この場合、図11に示すように、各ボール66を蛇腹辺65a、65bに対して二点接触させると同時に、ボール66を冷却孔3の内周面3sに一点接触により当接させ、全体として三点接触状態に配置している。
スリーブ5が熱膨張変形力あるいは締付け変形力を受けた際、ボール66および二枚の蛇腹辺65a、65bの相互の変形により、二枚の蛇腹辺65a、65bの塑性変形による軸方向の微小変位を許容させるように設定している。この設定に伴って、冷却孔3に対するスリーブ5の同芯配置を維持可能にさせている。
ちなみに、金属製のボール66の場合、スリーブ5が軸方向の引張力を受けた際には、蛇腹辺65a、65bの間が拡開して伸長変形し、図12(a)の通常時からボール66を図12(b)のように冷却孔3の内周面3sに強く押圧する。
また、スリーブ5が圧縮力を受けた際には、塑性変形により蛇腹辺65a、65bの間が縮むことにより、図12(c)のように蛇腹辺65a、65bがボール66の外表面に沿って縮小変形する。
合成樹脂製のボール66の場合、スリーブ5が軸方向の引張力を受けた際には、蛇腹辺65a、65bの間が拡開して伸長変形し、図12(d)の通常時からボール66を図12(e)のように冷却孔3の内周面3sに強く押圧する。
また、スリーブ5が圧縮力を受けた際には、塑性変形により蛇腹辺65a、65bの間が縮むことにより、図12(f)のように蛇腹辺65a、65bがボール66の外表面を弾性変形させて変形して縮小変形する。このように構成した実施例8でも、実施例7と同様な効果が得られる。
なお、図12(a)−(f)では、ボール66と蛇腹辺65a、65bとの挙動を把握する上での容易性から、挙動の態様を誇張して描いている。
図13は本発明の実施例9を示す。この実施例9が実施例8と異なるところは、ボール66に代わって、有端リング状のスペーサ67を二枚の蛇腹辺65a、65bの間に嵌合配置したことである(図13(a)参照)。
有端リング状のスペーサ67は、図13(b)、(c)に示すように、弾性変形可能な合成樹脂により形成されており、スペーサ67の外表面の全面を冷却孔3の内周面3sに当接させている。
スリーブ5が熱膨張変形力あるいは締付け変形力を受けた際、スペーサ67の弾性変形および二枚の蛇腹辺65a、65bの塑性変形による相互変形を行う。これにより、二枚の蛇腹辺65a、65bが塑性変形による軸方向の微小変位を許容させるように設定している。これに伴い、冷却孔3に対するスリーブ5の同芯配置を維持可能としている。実施例9でも、実施例7と同様な効果が得られる。蛇腹辺65a、65bは二枚に限らず、三枚や四枚など複数枚だけ設けてもよい。
実施例9の変形例としてスペーサ67を合成樹脂に代わって、第1実施例のスペーサ18と同様に、銅などを含む金属材料により形成してもよい。金属材料のなかでも、ハンダなどの低融点金属によりスペーサ67を形成した場合、アルミ鋳造における低融点金属は、金型最適温度(300℃付近)で融解する。
このため、鋳造製品の量産後に抜き取ったスリーブ5におけるスペーサ67の状態を目視することにより検知可能となる。この結果、熱電対や温度センサーなどの高価な検知手段を用いることなく、低融点のスペーサ67を金型内部の実体温度を検知する簡易型温度センサーとして利用することができる。
図14は本発明の実施例10を示す。この実施例10が実施例7−9と異なるところは、スリーブ5にスライドパイプ8および鍔部8aを一体化するとともに、合成樹脂材料から有端リング状のスペーサ68を形成したことである。
この場合、スリーブ5の上端開口部5sの近傍に変形力吸収機構65の蛇腹辺65a、65bを形成している。このため、蛇腹辺65a、65bが鍔部8aの上端開口部5sに近接し、冷却孔3に対するスリーブ5の挿脱時に、手指を掛けるための引掛け部として利用することができる(図14(a)参照)。
また、図14(b)に示すスペーサ68は、スリーブ5の外周面に嵌着され、軸方向に沿って離間状態に配置されている。すなわち、スペーサ68の両端部68x、68yを弾性変形により拡開した状態にしてスリーブ5に嵌め込んで解放する。解放後にスペーサ68が弾性力によりスリーブ5の外周面に巻き締まって嵌着される。
スペーサ68の合成樹脂材料として、例えばPPまたはABSなどの材質を適用することにより、金型冷却機構9の稼働時に合成樹脂材料が500℃付近で希酸素雰囲気の環境下で炭化する。
炭化したスペーサ68は、環状空隙19内の充填剤と渾然一体化して混ざり合って同化消失するため、廃棄処理時にスペーサ68を別部材として分別する必要がなくなる利点がある。この場合、冷却孔3に対するスリーブ5の同芯性は、スリーブ5の挿入時にスペーサ18により確保され、一旦確保された両者の同芯性は、スペーサ68が同化消失した後も維持されるものとする。このことは、実施例9によるスペーサ67についても同様である。
実施例10の変形例としてスペーサ68を合成樹脂に代わって、第1実施例のスペーサ18と同様に、銅などを含む金属材料により形成してもよい。金属材料のなかでも、ハンダなどの低融点金属によりスペーサ68を形成した場合、アルミ鋳造における低融点金属は、金型最適温度(300℃付近)で融解する。このため、実施例10の変形例でも、実施例9の変形例と同様な効果が得られる。
なお、このスペーサ68は、図10(a)に示す変形力吸収機構65を有する実施例7のスリーブ5の外周面に嵌合配置してもよい。
1 金型
3 金型の冷却孔
3a 金型の開口部
3s 冷却孔の内周面
4 冷却孔の窪み部
5 スリーブ(有底型冷却管)
5e フランジ部(上面開口端部)
8 スライドパイプ
9 金型冷却機構
12 スリーブの突状部
18、67、68 スペーサ
19 環状空隙
20 整流突起
21 流水溝
22 縦溝
23 周溝
24 カラー
26a 長尺管
26b 短尺有底管
26c 縮径端管
26d 開口端部
65 変形力吸収機構65
65a、65b 蛇腹辺

Claims (12)

  1. 冷却構造体に形成された所定の深さの冷却孔に環状空隙を介して同芯配置される銅製あるいは銅合金製の有底型冷却管を有する冷却構造体用の有底型冷却管構造であって、
    前記冷却孔の内底部に半球状の窪み部を形成し、前記有底型冷却管の外底部に半球状の突状部を設けており、
    前記環状空隙には、金属粉末、エポキシ系樹脂および硬化剤を含む混合体の状態から揮発性溶媒で溶解されるようになっており、前記有底型冷却管の使用時には受熱により希酸素雰囲気下で固化炭化して灰状になる充填剤が注入充填されるようになっており、
    前記有底型冷却管の外周面の単一箇所あるいは複数箇所に径方向の内部に断面くの字の周溝状に窪み、前記有底型冷却管の軸方向に塑性変形可能な複数枚の蛇腹辺を変形力吸収機構として設け、
    前記有底型冷却管が使用時に受ける前記軸方向の熱膨張変形力ならびに、前記有底型冷却管が組付け時に受ける前記軸方向の締付け変形力を前記複数枚の蛇腹辺の微小な塑性変位で吸収させることを特徴とする冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  2. 金属製または合成樹脂製の材料から小球状に形成されたボールを前記複数枚の蛇腹辺の間に複数配置し、前記ボールを前記蛇腹辺に二点接触させると同時に、前記ボールを前記冷却孔の内周面に一点接触により当接させ、前記有底型冷却管が前記熱膨張変形力あるは前記締付け変形力を受けた際、前記ボールおよび前記複数枚の蛇腹辺の相互の変形により前記複数枚の蛇腹辺の前記微小な塑性変位を許容させるように設定するとともに、前記冷却孔に対する前記有底型冷却管の同芯配置を維持させたことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  3. 弾性変形可能な合成樹脂により形成された有端リング状のスペーサを前記複数枚の蛇腹辺の間に嵌合配置し、前記スペーサの外表面の全面を前記冷却孔の内周面に当接させ、前記有底型冷却管が前記熱膨張変形力あるは前記締付け変形力を受けた際、前記スペーサおよび前記複数枚の蛇腹辺の相互の変形により前記複数枚の蛇腹辺の前記微小な塑性変位を許容させるように設定するとともに、前記冷却孔に対する前記有底型冷却管の同芯配置を維持させたことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  4. 前記有端リング状のスペーサに代わって、金属材料から成るスペーサを設けたことを特徴とする請求項3に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  5. 有端リング状のスペーサを使用時の受熱により前記充填剤と同化消失する合成樹脂材料により形成し、前記スペーサを前記有底型冷却管の外周面に嵌着し、前記冷却孔に対する前記有底型冷却管の同芯配置を維持させたことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  6. 有端リング状のスペーサを金属材料から構成し、前記スペーサを前記有底型冷却管の外周面に嵌着し、前記冷却孔に対する前記有底型冷却管の同芯配置を維持させたことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  7. 前記有底型冷却管の内周面には、複数の縦溝が前記有底型冷却管の軸方向に沿うように形成されているとともに、前記有底型冷却管の内底面には、径寸法が大小異なる複数の周溝を同芯状に形成していることを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  8. 前記有底型冷却管の内底面には、錐体状の整流突起体が前記有底型冷却管に流入する冷却水を受けるように立設されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  9. 前記整流突起体の外表面には、前記整流突起体の頂点から基端部に向けて複数の流水溝を形成していることを特徴とする請求項8に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  10. 前記冷却孔の前記窪み部には、切欠き部を有する有底短筒状のカラーが嵌め込まれており、前記冷却孔に対する前記有底型冷却管の挿入時、前記有底型冷却管の前記突状部が前記カラーの内底部に挿嵌されることを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  11. 前記有底型冷却管は、両端が開口された長尺管と短尺有底管とから成り、前記長尺管および前記短尺有底管のいずれか一方の開口端部を径小に形成した縮径端部とし、前記縮径端部を他方の開口端部内に嵌合接続し、前記長尺管の外周面と前記短尺有底管の外周面とが面一となるように設定したことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
  12. 前記冷却孔における上面開口部の内面には、雌ねじ部が刻設されており、雄ねじ部を有して且つ面取り状テーパ部を形成した栓体を前記雌ねじ部に螺進させることにより、前記面取り状テーパ部が前記冷却孔内の前記有底型冷却管の上面開口端部を押圧し、弾性域を超えて外方に拡開変形させて前記冷却孔の内周面に水密状態に当接させる構造を成すことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体用の有底型冷却管構造。
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