JP6167644B2 - 気象観測装置、気象観測プログラム及び気象観測方法 - Google Patents

気象観測装置、気象観測プログラム及び気象観測方法 Download PDF

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Description

本発明は、風速又は風向などを観測する気象観測装置、該気象観測装置を実現するための気象観測プログラム及び気象観測方法に関する。
ウィンドプロファイラは、地上から上空に向けて電波(ビームとも称する)を発射し、大気中の風の乱れ(空気の屈折率のゆらぎ)などによって生じる電波の散乱を受信することにより、上空の風速、風向を測定する。大気中で散乱された電波は風の流れに応じて変化するので、ドップラー効果を利用して、受信した信号を処理してドップラースペクトルを求めることにより、風速、風向を推定することができる(非特許文献1)。
気象庁におけるウィンドプロファイラ観測業務、加藤美雄、阿保敏広、小林健二、泉川安志、石原正仁、天気、50、2003年、891−907頁
ウィンドプロファイラが大気から受け取る信号(大気エコー)はごく微弱であるのに対し、鳥(渡り鳥)群れ、昆虫の群れ、あるいは航空機などの飛翔体から受け取る信号(鳥エコー又は飛翔体エコーなどと称する)は比較的強く、風の測定に影響を与える場合がある。このため、ドップラースペクトルを求めるときに、鳥エコーに起因すると思われる大きな信号強度を示すスペクトルを除去する鳥エコー除去処理を行うことにより、観測精度を高めている。
一方で、降水があると降水粒子が散乱体となるとともに、降水粒子から受け取る信号(降水エコーと称する)も鳥エコーと同様に比較的強いため、大きな信号強度を示すスペクトルが、鳥などの飛翔体に起因するものであるのか、あるいは降水粒子に起因するものなのか区別をすることが困難であった。このため、例えば、鳥エコーに起因するものでないスペクトルを鳥エコーに起因して誤って除去すると観測精度が低下する可能性がある。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、気象観測の精度を向上させることができる気象観測装置、該気象観測装置を実現するための気象観測プログラム及び気象観測方法を提供することを目的とする。
第1発明に係る気象観測装置は、大気に向かって複数の方向に発射した電波ビームの散乱電波を受信する受信部と、該受信部を用いて得られた時間領域の受信データから周波数領域の受信データを生成する生成部と、時間領域及び周波数領域の少なくとも一方の受信データに基づいて、飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれているかどうかを判定する飛翔体判定部と、該飛翔体判定部の判定結果に従って、前記飛翔体による散乱成分を含む受信データの除外処理を行う除外処理部と、一の方向の電波ビームに対する前記周波数領域の受信データと、他の方向の電波ビームに対する前記周波数領域の受信データとの差分に基づいて、前記除処理部による除外処理を利用するかどうかを決定する決定部とを備える。
第2発明に係る気象観測装置は、第1発明において、前記決定部は、さらに、前記周波数領域の受信データにおいて振幅が最大となる位相と前回位相値との位相回転量に基づいて前記除処理部による除外処理を利用するかどうかを決定する。
第3発明に係る気象観測装置は、第1発明又は第2発明において、前記決定部は、さらに、異なる高度に対する前記周波数領域の受信データ間の連続性に基づいて、前記除処理部による除外処理を利用するかどうかを決定する。
第4発明に係る気象観測装置は、第1発明から第3発明のいずれか1つにおいて、前記飛翔体判定部は、前記周波数領域の受信データにおける振幅又は該受信データの電力の最大値が閾値を越える場合に、前記飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれていると判定する。
第5発明に係る気象観測装置は、第1発明から第3発明のいずれか1つにおいて、前記飛翔体判定部は、前記周波数領域の受信データの電力の積分値が閾値を越える場合に、前記飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれていると判定する。
第6発明に係る気象観測装置は、第1発明から第3発明のいずれか1つにおいて、前記飛翔体判定部は、前記時間領域の受信データの絶対値の最大値が閾値を越える場合に、前記飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれていると判定する。
第7発明に係る気象観測装置は、第1発明から第3発明のいずれか1つにおいて、前記飛翔体判定部は、前記時間領域の受信データの最大値から最小値を引いた差分値が閾値を越える場合に、前記飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれていると判定する。
発明に係る気象観測プログラムは、第1発明から第発明のいずれか1つに係る気象観測装置としてコンピュータを機能させる。
発明に係る気象観測方法は、大気に向かって複数の方向に発射した電波ビームの散乱電波を受信するステップと、該受信するステップを経て得られた時間領域の受信データから周波数領域の受信データを生成するステップと、一の方向の電波ビームに対する前記周波数領域の受信データと、他の方向の電波ビームに対する前記周波数領域の受信データとの差分に基づいて、飛翔体による散乱成分を含む受信データの除外処理を利用するかどうかを決定するステップとを含む。
第1発明から第7発明、第発明及び第発明にあっては、受信部は、複数のビーム方向毎に大気に向かって発射したビームにより大気中で散乱された電波を受信する。複数のビーム方向は、例えば、天頂方向、及び天頂から所定角度(例えば、14度)傾けた東西南北方向の5方向とすることができる。ビームは、例えば、地面近くに水平に設置したアンテナから複数のビーム方向に順次発射させることができる。なお、ビームは、間欠的なパルスとして発射され、発射されていない間に散乱された電波を受信する。
生成部は、受信部を用いて得られた時間領域の受信データを周波数領域の受信データに変換・生成する。変換・生成は、例えば、複素FFT(高速フーリエ変換)を用いてもよいし、ウェーブレット変換を用いることもできる。また、ビームの発射時刻と散乱された電波の受信時刻との時間差から電波が散乱された高度を求めることができる。なお、観測高度は、例えば、100m程度から10km程度までの所要の高度を決定することができる。
決定部は、方向の異なる電波ビームに対する周波数領域の受信データ同士の共通性に基づいて、除去処理部による除外処理を利用するかどうかを決定する。例えば、降水粒子は、大気中の比較的広い範囲で鉛直下向き方向あるいは水平風に応じて略鉛直方向に落下する。ウィンドプロファイラ等で使用される指向性を持ったアンテナのビームパターンは、主軸方向に強いメインローブと、副次的にその他の方向に漏れてしまうサイドローブからなる。例えば、天頂角が14度程度の略天頂にしか電波ビームを振らないウィンドプロファイラの場合、比較的広い範囲で略鉛直方向に落下する降水粒子からの散乱は、ビームの方向によらず主にメインビームで捉えることになり、いずれのビーム方向でも同じ高度に同程度の散乱強度が得られる等、異なるビーム方向間で共通性がある。一方、鳥の群れなどの飛翔体は、比較的低い高度で、且つ比較的狭い領域に存在し、略水平方向に移動するので、殆どの場合、サイドローブで捉えることになる。従って、ある特定のビーム方向では鳥エコーを捉えるものの、別のビーム方向では鳥エコーを捉えることができない、またあるビーム方向では高度100mに鳥エコーが存在しているが、異なるビーム方向では、例えば、300mに存在する等、異なるビーム間で共通性が見られない。これらの特徴を利用することにより、飛翔体に起因する受信データと降水粒子に起因する受信データとを区別することができ、風速、風向などの観測精度を向上させることができる。
第2発明にあっては、決定部は、さらに、周波数領域の受信データにおいて振幅が最大となる位相と前回位相値との位相回転量に基づいて除去処理部による除外処理を利用するかどうかを決定する。周波数領域の受信データにおける振幅Aとは、複素数の実数部をR、虚数部をIとすると、(I×I+R×R)の平方根、すなわち振幅A=√(I×I+R×R)で表すことができ、その最大値をAmaxとする。位相は、Amaxにおける位相値αを表し、複素数の実数部をR、虚数部をIとすると、(I/R)のアークタンジェント、すなわち位相α=arctan(I/R)で表すことができる。また、位相回転量Δαは今回位相値αと前回位相値α2との差分、すなわちΔα=α−α2で表すことができる。飛翔体による散乱成分を含む受信データの除外処理を利用するかどうかの決定においては、例えばΔαを上下限閾値と比較し、下限閾値以上で且つ上限閾値以下のものは降水エコーとみなし、除去処理部による除外処理を利用しないと決定することもできるし、さらに前回の位相回転量Δα2=α2−α3との差分、すなわち位相回転量の変化量を閾値と比較し決定することもできる。
第3発明にあっては、決定部は、さらに異なる高度に対する周波数領域の受信データ間の連続性に基づいて、除去処理部による除外処理を利用するかどうかを決定する。例えば、降水粒子は、高度数kmにわたって存在するため、同程度の散乱強度が高度数kmにわたって得られる等、高度方向に連続性がある。一方、鳥の群れなどの飛翔体は、数kmの高度にわたって存在することは無いため、これらの特徴を利用することにより、飛翔体に起因する受信データと降水粒子に起因する受信データとを区別することができ、風速、風向などの観測精度を向上させることができる。
第4発明にあっては、飛翔体判定部は、周波数領域の受信データにおける振幅又は受信データの電力の最大値が閾値を越える場合に、飛翔体による散乱成分が散乱電波に含まれていると判定する。周波数領域の受信データにおける振幅Aとは、複素数の実数部をR、虚数部をIとすると、(I×I+R×R)の平方根、すなわち振幅A=√(I×I+R×R)で表すことができ、また電力Pはその2乗、すなわちP=(I×I+R×R)で表すことができる。これら振幅値又は電力値の最大値を求め、例えば、その最大値が閾値以上であれば飛翔体エコーが含まれていると判定できる。
第5発明にあっては、飛翔体判定部は、周波数領域の受信データの電力の積分値が閾値を越える場合に、飛翔体による散乱成分が散乱電波に含まれていると判定する。周波数領域の受信データにおける電力Pとは、複素数の実数部をR、虚数部をIとすると、P=(I×I+R×R)で表すことができる。電力の積分値Psumは、この電力Pを全周波数点、または電力Pの最大値周辺の複数の周波数点において積分した、すなわちPsum=ΣPで表すことができる。例えば、この電力の積分値が閾値以上であれば飛翔体エコーが含まれていると判定できる。
第6発明にあっては、飛翔体判定部は、時間領域の受信データの絶対値の最大値が閾値を越える場合に、飛翔体による散乱成分が散乱電波に含まれていると判定する。時間領域の受信データは正負の電圧値で表すことができる。すなわち、飛翔体判定部は、時間領域の受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値を超える場合、飛翔体散乱信号が含まれていると判定し、受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値以下である場合、飛翔体散乱信号が含まれていないと判定することができる。電圧のピーク値をスキャンして、所定の閾値を超えるか否かを判定するだけなので、飛翔体散乱信号が含まれているか否かを判定する処理を軽くすることができるとともに、判定処理に要する時間を短縮して、処理結果を素早く得ることができる。
第7発明にあっては、飛翔体判定部は、時間領域の受信データの最大値から最小値を差し引いた差分値が閾値を越える場合に、飛翔体による散乱成分が散乱電波に含まれていると判定する。時間領域の受信データは正負の電圧値で表すことができる。すなわち、飛翔体判定部は、時間領域の受信データのピーク電圧差(電圧の最大値と最小値の差)が所定の閾値を超える場合、飛翔体散乱信号が含まれていると判定し、受信データのピーク電圧差(電圧の最大値と最小値の差)が所定の閾値以下である場合、飛翔体散乱信号が含まれていないと判定することができる。電圧のピーク値をスキャンして、所定の閾値を超えるか否かを判定するだけなので、飛翔体散乱信号が含まれているか否かを判定する処理を軽くすることができるとともに、判定処理に要する時間を短縮して、処理結果を素早く得ることができる。
本発明によれば、気象観測の精度を向上させることができる。
本実施の形態の気象観測装置の構成の一例を示すブロック図である。 空中線装置の構成の一例を示す模式図である。 送受信装置が送出するパルス信号の一例を示す説明図である 空中線装置から発射されたビームが大気中で散乱される様子を示す模式図である。 受信データの一例を示す説明図である。 ドップラースペクトルの一例を示す説明図である。 発射されたビームの様子の一例を示す模式図である。 ビーム方向毎のドップラースペクトルのピーク値の一例を示す説明図である。 降水判定結果に応じた鳥エコー除去処理の一例を示す説明図である。 インコヒーレント積分後のドップラースペクトルの一例を示す説明図である。 ドップラースペクトルの表示の一例を示す説明図である。 ドップラースペクトルの表示の他の例を示す説明図である。 風ベクトルを矢羽根表示した一例を示す説明図である。 気象観測装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。 気象観測装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
(実施の形態1)
以下、本発明に係る気象観測装置の実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の気象観測装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、気象観測装置100は、空中線装置10、送受信装置20、信号処理装置30、信号処理装置30に対するユーザインタフェースを提供するデータ処理装置40などを備える。気象観測装置100は、いわゆるウィンドプロファイラレーダであり、中心周波数が約1.3GHzのパルスドップラーレーダである。
図2は空中線装置10の構成の一例を示す模式図である。空中線装置10は、例えば、アクティブ・フェーズド・アレイ・アンテナを有する。アンテナの開口面積は、例えば、1平方メートルから20平方メートル程度であり、ビーム走査(ビーム方向)は、天頂方向、及び所定の天頂角(例えば、14度)を有する東西南北方向の5方向である。なお、複数の方向(ビーム方向とも称する)は、例えば、天頂方向、及び天頂から所定角度(例えば、14度)傾けた東西南北方向の5方向のうち、少なくとも2方向をいう。
送受信装置20は、所定のパルス幅のパルス信号を所定の繰返し周期で送出する。所定のパルス幅は、例えば、0.6μs〜4μs程度とすることができる。また、所定の繰返し周期は、例えば、50μs〜200μs程度とすることができる。本実施の形態では、繰返し周期は、100μsとして説明する。
図3は送受信装置20が送出するパルス信号の一例を示す説明図である。図3に示すように、送受信装置20は、繰返し周期T1(100μs)で所定のパルス幅のパルス送出をコヒーレント積分の回数である所定回数(例えば、64回)繰り返す。これらを、さらにFFT点数分(例えば、128回)繰り返す。すなわち、送受信装置20は、1つのビーム方向(ビーム走査)に対して、64×128個のパルスを送出する。
送受信装置20は、受信部としての機能を有し、図3に示す、パルス信号1がビームとして発射された後、2つ目のパルス信号2が送出されるまでの間に、大気中で散乱された電波を受信する。
図4は空中線装置10から発射されたビームが大気中で散乱される様子を示す模式図である。所定の方向に発射されたビームは、大気中の空気の屈折率のゆらぎにより散乱され、散乱電波は空中線装置10で受信される。ビームを発射した時刻を0とし、散乱電波の受信時刻をt1、t2、t3とすると、それぞれの時刻で受信した電波が大気中のいずれの高度で散乱されたかが解る。すなわち、発射したビームの発射時点及び散乱された電波の受信時点に基づいて受信データの観測高度を算出することができる。なお、観測高度の算出は、信号処理装置30で行う。また、観測高度は、例えば、100m程度から10km程度までの所要の高度を決定することができる。
信号処理装置30は、装置全体を制御するCPU31、信号処理部32、決定部33、飛翔体判定部34などを備える。
信号処理部32は、ADコンバータ、DAコンバータ、コヒーレント積分機能、高速フーリエ変換機能、インコヒーレント積分機能などを有する。
信号処理装置30は、散乱電波を空中線装置10で受信して得られた受信データを取得する。受信データは、観測高度毎に、当該高度で散乱された電波の強度を示す時系列データである。
図5は受信データの一例を示す説明図である。図5において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。前述のように、送受信装置20は、繰返し周期T1(例えば、100μs)で所定のパルス幅のパルスをコヒーレント積分の回数である所定回数(例えば、64回)繰り返して送出する。これらを、さらにFFT点数分(例えば、128回)繰り返すことにより、受信データは128個の電圧値を示す時系列データとなる。
図5は、I相の時系列データと、I相に対して90度位相が遅れたQ相の時系列データとを、それぞれ128個プロットしたものである。図5の例は、例えば、ビーム方向が天頂方向であって、観測高度がh1の受信データを示す。すなわち、図5と同様のデータが、天頂方向の他の観測高度について得られるとともに、同様に他のビーム方向についても各観測高度について得られる。
信号処理部32は、図5に例示するような時系列データを1個の受信データとしたときに、例えば、64個分の受信データを積分(コヒーレント積分)することにより、受信データの信号対雑音比(S/N比)を大きくする。なお、コヒーレント積分は、64個分の受信データの位相情報を保存しながら各受信データを加算することに相当する。
飛翔体判定部34は、受信データのピーク値が所定範囲を超えるか否かに応じて、当該受信データに飛翔体による飛翔体散乱信号が含まれているか否かを判定する。図5に例示したように、受信データは、所定の高度で散乱された電波の強度を示す時系列データであり、各データは、例えば、正負の電圧値で表すことができる。なお、受信データに飛翔体散乱信号が含まれているか否かは、時間領域の受信データを用いて判定することができるとともに、周波数領域のスペクトルを用いて判定することもできる。
大気から受け取る信号(大気エコー)はごく微弱であるのに対し、鳥(渡り鳥)の群れ、昆虫の群れ、あるいは航空機などの飛翔体から受け取る信号(鳥エコー又は飛翔体エコーなどと称する)は比較的強いという傾向がある。
すなわち、飛翔体判定部34は、受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値を超える場合、受信データに飛翔体散乱信号が含まれていると判定し、受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値以下である場合、受信データに飛翔体散乱信号が含まれていないと判定する。
飛翔体判定部34は、飛翔体散乱信号が含まれていると判定した受信データに対応付けて、飛翔体散乱信号ありのフラグをオンにする。なお、飛翔体判定前は、予めフラグをすべてオフにしてある。すなわち、飛翔体判定の結果、飛翔体ありとなったもののみフラグをオンにする。また、飛翔体散乱信号の有無の区別は、フラグをオンする方法の他に適宜の方法を用いることができる。
前述のように、受信データの電圧のピーク値をスキャンして、所定の閾値を超えるか否かを判定するだけなので、受信データに飛翔体散乱信号が含まれているか否かを判定する処理を軽くすることができるとともに、判定処理に要する時間を短縮して、処理結果を素早く得ることができる。すなわち、時系列的な受信データの電力が所定の電力閾値以上であるか否かに応じて飛翔体エコーを判別する方法の場合には、受信データの電力を算出する必要があり、飛翔体エコーを判別する処理が重くなり、処理時間が長くなり、素早く判定結果を得ることができない。このため、観測点を少なくするなどの対策が必要となるが、本実施の形態では、そのような問題を解決することができる。
信号処理部32は、除去処理部としての機能を有し、飛翔体判定部34の判定結果に従って、飛翔体による散乱成分を含む受信データの除外処理を行う。
信号処理部32は、生成部としての機能を有し、図5に例示するような受信データをフーリエ変換のような直交変換やその他の変換操作によりビーム方向毎にスペクトル(例えば、ドップラースペクトル)を生成する。直交変換は、例えば、複素FFT(高速フーリエ変換))又はウェーブレット変換であり、時間・周波数変換を行う。
図6はドップラースペクトルの一例を示す説明図である。図6において、横軸はドップラー周波数であり、縦軸はスペクトルの強度を示す。図6の例では、ドップラー周波数を-10Hzから10Hzの範囲で示しているが、これに限定されるものではない。図6に示すように、ドップラースペクトルは、ドップラー効果によって生ずる発射したビームの周波数と受信した電波の周波数との周波数差であるドップラー周波数に対するスペクトル強度の分布を示すものである。
図6の例は、例えば、ビーム方向が天頂方向であって、観測高度がh1のドップラースペクトルを示す。すなわち、図6と同様のデータが、天頂方向の他の観測高度について得られるとともに、同様に他のビーム方向についても各観測高度について得られる。
信号処理部32は、約2秒かけて、天頂方向、東西南北方向の5つのビーム方向それぞれについて図6に例示するようなドップラースペクトルを生成する。そして、信号処理部32は、約1分かけて同様の処理を30回繰り返す。すなわち、天頂方向、東西南北方向の5つのビーム方向それぞれについて、図6に例示するようなドップラースペクトルを30回生成する。なお、生成回数は30回に限定されるものではない。
次に、飛翔体による散乱成分を含む受信データの除去処理を利用するか否かの決定方法について説明する。決定部33は、方向の異なる電波ビームに対する周波数領域の受信データ同士の共通性に基づいて、信号処理部32(除去処理部)による除外処理を利用するかどうかを決定する。
図7は発射されたビームの様子の一例を示す模式図である。簡便のため、図7Aでは天頂方向の天頂ビームを例示し、図7Bでは東方向の東ビームを例示している。降水粒子は、大気中の比較的広い範囲で鉛直下向き方向あるいは水平風に応じて略鉛直方向に落下する。ウィンドプロファイラ等で使用される指向性を持ったアンテナのビームパターンは、主軸方向に強いメインローブと、副次的にその他の方向に漏れてしまうサイドローブからなる。例えば、天頂角が14度程度の略天頂にしか電波ビームを振らないウィンドプロファイラの場合、比較的広い範囲で略鉛直方向に落下する降水粒子からの散乱は、ビームの方向によらず主にメインビームで捉えることになり、いずれのビーム方向でも同じ高度に同程度の散乱強度が得られる等、異なるビーム方向間で共通性がある。
一方、鳥の群れなどの飛翔体は、比較的低い高度で、且つ比較的狭い領域に存在し、略水平方向に移動するので、殆どの場合、サイドローブで捉えることになる。従って、ある特定のビーム方向では鳥エコーを捉えるものの、別のビーム方向では鳥エコーを捉えることができない、またあるビーム方向では高度100mに鳥エコーが存在しているが、異なるビーム方向では、例えば、300mに存在する等、異なるビーム間で共通性が見られない。これらの特徴を利用することにより、飛翔体に起因する受信データと降水粒子に起因する受信データとを区別することができ、風速、風向などの観測精度を向上させることができる。
すなわち、決定部33は、方向の異なる電波ビームに対する周波数領域の受信データ同士に共通性がある場合、散乱電波に降水粒子による散乱成分が含まれているとして、信号処理部32による除外処理を利用しないと決定する。一方、決定部33は、方向の異なる電波ビームに対する周波数領域の受信データ同士に共通性がない場合、散乱電波に飛翔体による散乱成分が含まれているとして、信号処理部32による除外処理を利用すると決定する。
次に、共通性有無の判定方法について説明する。決定部33は、ビーム方向毎のドップラースペクトルのピーク値の差分値を算出する。複数のビーム方向が、天頂方向及び東西南北方向の5方向である場合、差分値は、5方向のいずれか2方向でもよく、あるいは3方向、4方向、あるいはすべての方向でもよい。
図8はビーム方向毎のドップラースペクトルのピーク値の一例を示す説明図である。図8に示すように、ビーム方向が、天頂、東西南北の5方向であるとし、それぞれのビーム方向のドップラースペクトルのピーク値を、Pz、Pe、Pw、Ps、Pnとする。決定部33は、算出した差分値が所定の差分閾値Pth以下である場合、共通性があるとして降水散乱信号が含まれていると判定する。例えば、|Pz-Pe|<Pthである場合、共通性があると判定することができる。なお、共通性の有無の判定の精度を高めるためには、任意の2つのビーム方向間の共通性だけでなく、5方向間の差分値が所定の差分閾値Pth以下であるか否かで判定するのが好ましい。上述のように、異なるビーム方向のドップラースペクトルのピーク値同士を比較するという簡便な構成で降水の有無を判定することができる。
次に、降水判定結果と飛翔体判定結果との関係について説明する。信号処理部32は、飛翔体判定部34で受信データに飛翔体散乱信号が含まれていると判定した場合に、決定部33で降水散乱信号が含まれていないと判定したときは、当該受信データを除外してドップラースペクトルを生成する。すなわち、受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値を超えるとして、当該受信データに飛翔体散乱信号が含まれていると判定した場合に、降水散乱信号が含まれていない判定したときは、受信データに含まれている散乱信号は、降水粒子に起因するものではなく、飛翔体に起因するものであるとして、当該受信データを除外して(例えば、鳥エコー除去処理を行って)、ドップラースペクトルを生成する。
図9は降水判定結果に応じた鳥エコー除去処理の一例を示す説明図である。図9は、例えば、ビーム方向が天頂方向であり、高度がh1の場合を例示している。図9に示すように、時間T2(例えば、1分)の間に時間的に分割された30個の受信データ「1」、「2」、…「30」があるとする。1つの受信データは、図5で例示した、I相及びQ相それぞれ128個の時系列データを含むものである。
受信データ「1」、「2」、…「30」を複素FFTすることにより、ドップラースペクトル「1」、「2」、…「30」を生成する。
図9に示すように、4個目の受信データ「4」のピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値を超えるとして、当該受信データに飛翔体散乱信号が含まれていると判定したとする。すなわち、受信データ「4」に鳥エコーが含まれていると判定したとする。
この場合において、決定部33で降水散乱信号が含まれていない判定したときは、すなわち降水エコーなしと判定したときは、4個目の受信データ「4」を複素FFTして得られたドップラースペクトル「4」を除外した残りの29個のドップラースペクトルを用いてインコヒーレント積分することにより、平滑化されたドップラースペクトルを生成する。これにより、鳥エコーなどの飛翔体散乱信号を確実に除去することができ、風速、風向などの観測を精度高く行うことができる。
一方、信号処理部32は、受信データに飛翔体散乱信号が含まれていると判定した場合に、降水散乱信号が含まれていると判定したときは、当該受信データを除外することなくドップラースペクトルを生成する。すなわち、受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値を超えるとして、当該受信データに飛翔体散乱信号が含まれていると判定した場合に、降水散乱信号が含まれていると判定したときは、受信データに含まれている散乱信号は、降水粒子に起因するものであり、飛翔体に起因するものではないとして、当該受信データを除外することなく(例えば、鳥エコー除去処理を行わず)、ドップラースペクトルを生成する。
すなわち、決定部33で降水散乱信号が含まれていると判定したときは、すなわち降水エコーありと判定したときは、4個目の受信データ「4」を複素FFTして得られたドップラースペクトル「4」を除外することなく30個のドップラースペクトルを用いてインコヒーレント積分することにより、平滑化されたドップラースペクトルを生成する。これにより、飛翔体散乱信号として誤って受信データを除去することを防止することができ、風速、風向などの観測を精度高く行うことができる。
図10はインコヒーレント積分後のドップラースペクトルの一例を示す説明図である。図10において、横軸はドップラー周波数であり、縦軸はスペクトルの強度を示す。図10の例では、ドップラー周波数を-10Hzから10Hzの範囲で示しているが、これに限定されるものではない。また、図10の例は、例えば、ビーム方向が天頂方向であって、観測高度がh1のドップラースペクトルを示す。すなわち、図10と同様のデータが、天頂方向の他の観測高度について得られるとともに、同様に他のビーム方向についても各観測高度について得られる。
また、飛翔体判定部34は、ビーム方向毎に飛翔体散乱信号が含まれているか否かを判定することもできる。例えば、ビーム方向毎に、異なる又は同一の閾値を設定しておき、飛翔体判定部34は、異なるビーム方向毎に、受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値を超える場合、受信データに飛翔体散乱信号が含まれていると判定し、受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値以下である場合、受信データに飛翔体散乱信号が含まれていないと判定する。これにより、異なるビーム方向毎に飛翔体散乱信号の混入を判定することができ、気象観測の精度を向上させることができる。
また、飛翔体判定部34は、高度毎に飛翔体散乱信号が含まれているか否かを判定することもできる。例えば、高度毎に、異なる又は同一の閾値を設定しておき、飛翔体判定部34は、異なる高度毎に、受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値を超える場合、受信データに飛翔体散乱信号が含まれていると判定し、受信データのピーク電圧(電圧の絶対値の最大値)が所定の閾値以下である場合、受信データに飛翔体散乱信号が含まれていないと判定する。これにより、異なる高度毎に飛翔体散乱信号の混入を判定することができ、気象観測の精度を向上させることができる。
なお、全ビーム方向、及び全高度の中で受信データの電圧の絶対値の最大値が閾値を超えるか否かで鳥エコー等の有無を判定するようにしてもよい。
図11はドップラースペクトルの表示の一例を示す説明図である。図11の例では、簡便のため、ビーム方向が東及び西のドップラースペクトルの表示例を示しているが、図11に例示するようなドップラースペクトルの表示例は、天頂方向及び東西南北方向の5方向について求めることができる。図11において、横軸はドップラー周波数を示し、縦軸は高度を示す。また、スペクトルの強度を色の違い又は濃淡の違いで等高線状に表している。なお、図11の例では、簡便のためスペクトル強度を5段階で示しているが、実際には、さらに多くの段階、あるいは連続的に表示させることができる。
図11の例では、ビーム方向が東のドップラースペクトルにおいて、破線で示す高度におけるスペクトル強度が最も大きい箇所のドップラー周波数は、略-50Hzである。電波の波長をλとし、風(乱流)の移動速度をVとし、ドップラー周波数をfとすると、V=λ×f/2の関係があり、風速は略-5.5m/sとなる。例えば、ドップラー周波数が負の場合に遠ざかる方向と定義すれば、東方向は遠ざかっていると判断できる。
一方、ビーム方向が西のドップラースペクトルにおいて、破線で示す高度におけるスペクトル強度が最も大きい箇所のドップラー周波数は、略50Hzであり、風速は略5.5m/sとなる。例えば、ドップラー周波数が負の場合に遠ざかる方向と定義すれば、西方向は近づいている判断できる。これにより、破線で示す高度において、西から近づき、東に遠ざかる、すなわち、西風ということが解る。なお、風速はビームの傾斜角、つまり天頂角を例えば14度とすると、(5.5−(−5.5))/2Sin(14)≒22.7m/sの風速と解る。
図12はドップラースペクトルの表示の他の例を示す説明図である。図12の例では、簡便のため、ビーム方向が天頂のドップラースペクトルの表示例を示しているが、図12に例示するようなドップラースペクトルの表示例は、天頂方向及び東西南北方向の5方向について求めることができる。図12において、横軸はドップラー周波数を示し、縦軸は高度を示す。また、スペクトルの強度を色の違い又は濃淡の違いで等高線状に表している。なお、図12の例では、簡便のためスペクトル強度を5段階で示しているが、実際には、さらに多くの段階、あるいは連続的に表示させることができる。
図12Aは、晴天の場合において、鳥エコー除去処理を行っていないときのドップラースペクトルを示す。図12Aに示すように、高度が比較的低い箇所でドップラー周波数の広い範囲で帯状のスペクトル強度が大きいエリアを確認することができる。これは、鳥の群れなどの場合、鳥の飛び方のばらつき、羽ばたきなどの影響により電波の散乱状態が変動することにより、ドップラー周波数のばらつきも多くなるからと考えられる。
一方、本実施の形態の飛翔体判定部34で判定した結果、鳥エコー除去処理を行った場合には、図12Bに示すように、ドップラー周波数の広い範囲で見られた帯状のスペクトル強度が大きいエリアを除去することができ、精度の高いドップラースペクトルを得ることができる。
図13は風ベクトルを矢羽根表示した一例を示す説明図である。図13において、横軸は時間を示し、例えば、4時間の経過状況を示す。また、図13において、上側が北を示し、下側が南を示し、右側が東を示し、左側が西を示す。矢羽根は、風の向きと強さを示す。
図13Aに示すように、鳥エコー除去処理を行っていない場合には、図中丸で囲んだ部分で風向の乱れがあることが解る。一方、図13Bに示すように、鳥エコー除去処理を行った場合には、風向の乱れが除去されている。
次に、本実施の形態の気象観測装置100の動作について説明する。図14及び図15は気象観測装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。図14及び図15に例示する処理は、主に信号処理装置30での処理であり、便宜上、処理の主体をCPU31として説明する。
CPU31は、ビーム方向を設定し(S11)、設定したビーム方向にビームを発射する(S12)。CPU31は、散乱電波を受信し(S13)、所定の高度の受信データの時系列データを抽出する(S14)。ここで、抽出する時系列データは、図5に例示したものである。
CPU31は、受信データの信号対雑音比(S/N比)を大きくすべく、複数個分(例えば、64個分)の受信データをコヒーレント積分する(S15)。CPU31は、FFT点数分(例えば、128点)の時系列データ(受信データ)を取得する(S16)。CPU31は、受信データに鳥エコーがあるか否かを判定し(S17)、鳥エコーがある場合(S17でYES)、鳥エコーありと判定された当該受信データのフラグ(飛翔体散乱信号ありのフラグ)をオンにする(S18)。鳥エコーがない場合(S17でNO)、CPU31は、ステップS18の処理を行うことなく後述のステップS19の処理を行う。
CPU31は、所定回数(例えば、30回)処理を行ったか否かを判定し(S19)、所定回数でない場合(S19でNO)、ステップS14以降の処理を続ける。所定回数である場合(S19でYES)、CPU31は、所定回数分の受信データそれぞれに対して複素FFT処理を行う(S20)。
CPU31は、すべてのビーム方向について処理を完了したか否かを判定し(S21)、すべてのビーム方向について完了していない場合(S21でNO)、ビーム方向を切り替え(S22)、ステップS12以降の処理を繰り返す。
すべてのビーム方向について完了した場合(S21でYES)、CPU31は、降水エコーがあるか否かを判定する(S23)。降水エコーがある場合(S23でYES)、ステップS18でオンにしたフラグをすべてオフにする(S24)。降水エコーがない場合(S23でNO)、CPU31は、ステップS24の処理を行うことなく後述のステップS25の処理を行う。
CPU31は、ステップS20で複素FFTにより生成されたドップラースペクトルのうち、フラグ(飛翔体散乱信号ありのフラグ)をオンにした受信データに対応するドップラースペクトルを除外して、フラグオフの受信データに対応するドップラースペクトルだけを用いてインコヒーレント積分を行い(S25)、平滑化されたドップラースペクトルを生成し(S26)、処理を終了する。
上述の信号処理装置30は、CPU、RAMなどを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図14及び図15に示すような、各処理手順を定めたコンピュータプログラムを記録媒体に記録しておき、当該記録媒体をコンピュータに備えられたRAMにロードし、コンピュータプログラムをCPUで実行することにより、コンピュータ上で信号処理装置30が行う処理を実現することができる。なお、図14及び図15に示すような、各処理手順を定めたコンピュータプログラムは、記録媒体に代えて、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
上述の実施の形態において、図9に例示するように、受信データ「4」に鳥エコーが含まれていた場合、受信データ「4」に対応するドップラースペクトルを除外してインコヒーレント積分する構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、図9に例示するように、受信データ「4」に鳥エコーが含まれていると判定された場合、受信データ「4」の前後の受信データ「3」、「5」に対応するドップラースペクトルを除外してインコヒーレント積分するようにしてもよい。鳥の群れがビームの照射領域に入った直後、あるいは照射領域から出ようとしているときは、鳥エコーと所要信号とのレベル差が小さくなる場合があり、時系列的に除去する範囲を広げることにより、鳥の群れ等による影響を確実に除去することができる。
上述の実施の形態1において、飛翔体判定部34は、時間領域の受信データの最大値から最小値を差し引いた差分値が閾値を越える場合に、飛翔体による散乱成分が散乱電波に含まれていると判定するようにしてもよい。時間領域の受信データは正負の電圧値で表すことができる。すなわち、飛翔体判定部34は、時間領域の受信データのピーク電圧差(電圧の最大値と最小値の差)が所定の閾値を超える場合、飛翔体散乱信号が含まれていると判定し、受信データのピーク電圧差(電圧の最大値と最小値の差)が所定の閾値以下である場合、飛翔体散乱信号が含まれていないと判定することができる。電圧のピーク値をスキャンして、所定の閾値を超えるか否かを判定するだけなので、飛翔体散乱信号が含まれているか否かを判定する処理を軽くすることができるとともに、判定処理に要する時間を短縮して、処理結果を素早く得ることができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、降水判定を複数のビーム方向間のドップラースペクトルの共通性に基づいて行う構成であったが、これに限定されるものではない。実施の形態2では、降水判定を、1つのビーム方向だけで行うものである。以下、実施の形態2の降水判定について説明する。ビーム方向は、天頂方向又は東西南北方向のいずれでもよい。
信号処理部32は、受信して得られた受信データをフーリエ変換してドップラースペクトルを複数回生成する。フーリエ変換は、実施の形態1と同様、例えば、複素FFT(高速フーリエ変換)である。
決定部33は、周波数領域の受信データにおいて振幅が最大となる位相と前回位相値との位相回転量に基づいて、信号処理部32(除去処理部)による除外処理を利用するかどうかを決定する。周波数領域の受信データにおける振幅Aとは、複素数の実数部をR、虚数部をIとすると、(I×I+R×R)の平方根、すなわち振幅A=√(I×I+R×R)で表すことができ、その最大値をAmaxとする。位相は、Amaxにおける位相値αを表し、複素数の実数部をR、虚数部をIとすると、(I/R)のアークタンジェント、すなわち位相α=arctan(I/R)で表すことができる。また、位相回転量Δαは今回位相値αと前回位相値α2との差分、すなわちΔα=α−α2で表すことができる。飛翔体による散乱成分を含む受信データの除外処理を利用するかどうかの決定においては、例えばΔαを上下限閾値と比較し、下限閾値以上で且つ上限閾値以下のものは降水エコーとみなし、除外処理を利用しないと決定することもできるし、さらに前回の位相回転量Δα2=α2−α3との差分、すなわち位相回転量の変化量を閾値と比較し決定することもできる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、天頂方向のビームを用いて、降水判定を行う例について説明する。決定部33は、異なる高度に対する周波数領域の受信データ間の連続性に基づいて、信号処理部32(除去処理部)による除外処理を利用するかどうかを決定する。例えば、降水粒子は、高度数kmにわたって存在するため、同程度の散乱強度が高度数kmにわたって得られる等、高度方向に連続性がある。一方、鳥の群れなどの飛翔体は、数kmの高度にわたって存在することは無いため、これらの特徴を利用することにより、飛翔体に起因する受信データと降水粒子に起因する受信データとを区別することができ、風速、風向などの観測精度を向上させることができる。
(実施の形態4)
上述の実施の形態では、飛翔体判定を受信データの電圧のピーク値が所定範囲を超えるか否かに応じて行うものであるが、これに限定されるものではない。例えば、ドップラースペクトルの電力値として、ドップラースペクトルを周波数軸上で積分した値が所定の電力閾値を超える場合に、鳥エコーありと判定するようにしてもよい。あるいは、ドップラースペクトルのスペクトル強度が所定の強度閾値を超える場合に、鳥エコーありと判定するようにしてもよい。あるいは、一定の時間範囲の受信データの電力が所定の電力閾値を超える場合に、鳥エコーありと判定するようにしてもよい。
例えば、飛翔体判定部34は、周波数領域の受信データにおける振幅又は受信データの電力の最大値が閾値を越える場合に、飛翔体による散乱成分が散乱電波に含まれていると判定することができる。周波数領域の受信データにおける振幅Aとは、複素数の実数部をR、虚数部をIとすると、(I×I+R×R)の平方根、すなわち振幅A=√(I×I+R×R)で表すことができ、また電力Pはその2乗、すなわちP=(I×I+R×R)で表すことができる。これら振幅値又は電力値の最大値を求め、例えば、その最大値が閾値以上であれば飛翔体エコーが含まれていると判定できる。
また、飛翔体判定部34は、周波数領域の受信データの電力の積分値が閾値を越える場合に、飛翔体による散乱成分が散乱電波に含まれていると判定することができる。周波数領域の受信データにおける電力Pとは、複素数の実数部をR、虚数部をIとすると、P=(I×I+R×R)で表すことができる。電力の積分値Psumは、この電力Pを全周波数点、または電力Pの最大値周辺の複数の周波数点において積分した、すなわちPsum=ΣPで表すことができる。例えば、この電力の積分値が閾値以上であれば飛翔体エコーが含まれていると判定できる。
しかし、ドップラースペクトルの全電力を用いる場合、あるいは受信データの電力を用いる場合には、電力値を算出するのに時間が要するので、迅速に観測値を算出することができず、観測点を間引きするなどの対応が必要となるので、上述の実施の形態1〜3の方が優れている。また、同様に、ドップラースペクトルのスペクトル強度を用いる場合も、ドップラースペクトルを周波数軸で走査してピーク値を探索する処理が必要となり、迅速に観測値を算出することができず、観測点を間引きするなどの対応が必要となるので、上述の実施の形態1〜3の方が優れている。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 空中線装置
20 送受信装置
30 信号処理装置
31 CPU
32 信号処理部
33 決定部
34 飛翔体判定部
40 データ処理装置

Claims (9)

  1. 大気に向かって複数の方向に発射した電波ビームの散乱電波を受信する受信部と、
    該受信部を用いて得られた時間領域の受信データから周波数領域の受信データを生成する生成部と、
    時間領域及び周波数領域の少なくとも一方の受信データに基づいて、飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれているかどうかを判定する飛翔体判定部と、
    該飛翔体判定部の判定結果に従って、前記飛翔体による散乱成分を含む受信データの除外処理を行う除外処理部と、
    一の方向の電波ビームに対する前記周波数領域の受信データと、他の方向の電波ビームに対する前記周波数領域の受信データとの差分に基づいて、前記除処理部による除外処理を利用するかどうかを決定する決定部と
    を備える気象観測装置。
  2. 前記決定部は、
    さらに、前記周波数領域の受信データにおいて振幅が最大となる位相と前回位相値との位相回転量に基づいて前記除処理部による除外処理を利用するかどうかを決定する請求項1に記載の気象観測装置。
  3. 前記決定部は、
    さらに、異なる高度に対する前記周波数領域の受信データ間の連続性に基づいて、前記除処理部による除外処理を利用するかどうかを決定する請求項1又は請求項2に記載の気象観測装置。
  4. 前記飛翔体判定部は、
    前記周波数領域の受信データにおける振幅又は該受信データの電力の最大値が閾値を越える場合に、前記飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれていると判定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の気象観測装置。
  5. 前記飛翔体判定部は、
    前記周波数領域の受信データの電力の積分値が閾値を越える場合に、前記飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれていると判定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の気象観測装置。
  6. 前記飛翔体判定部は、
    前記時間領域の受信データの絶対値の最大値が閾値を越える場合に、前記飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれていると判定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の気象観測装置。
  7. 前記飛翔体判定部は、
    前記時間領域の受信データの最大値から最小値を引いた差分値が閾値を越える場合に、前記飛翔体による散乱成分が前記散乱電波に含まれていると判定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の気象観測装置。
  8. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の気象観測装置としてコンピュータを機能させるための気象観測プログラム。
  9. 大気に向かって複数の方向に発射した電波ビームの散乱電波を受信するステップと、
    該受信するステップを経て得られた時間領域の受信データから周波数領域の受信データを生成するステップと、
    一の方向の電波ビームに対する前記周波数領域の受信データと、他の方向の電波ビームに対する前記周波数領域の受信データとの差分に基づいて、飛翔体による散乱成分を含む受信データの除外処理を利用するかどうかを決定するステップと
    を含む気象観測方法。
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