JP3702347B2 - ウィンドプロファイラにおける信号処理方法及びそのプログラムと装置 - Google Patents

ウィンドプロファイラにおける信号処理方法及びそのプログラムと装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空中へ向けて複数方向に電磁波等のプローブ波を送信し、大気乱流や降水粒子等の散乱体による反射波を受信し、それら送受信信号を処理することで、風向風速や乱流強度、降雨強度の高度分布などの気象を、短時間で連続的に無人遠隔観測するウィンドプロファイラにおいて、信号データを処理する方法、並びに、その方法を実施するプログラムと装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
風向風速や降雨などに関する気象情報は、災害防止等に有用な情報である。
例えば、上空の風向風速を計測する手段としては、ゾンデが挙げられる。ゾンデを用いた観測では、ゾンデを上げた時刻におけるデータしか得られない。そのため、観測の時間分解能が芳しくなかった。
【0003】
それに対して、ウィンドプロファイラと呼ばれる大気レーダを用いて、分単位の時間分解能で気象データを計測する技術が確立されつつある。
ウィンドプロファイラで大気を観測する原理の概要は次の通りである。ウィンドプロファイラはドップラーレーダの一種であり、一般的には、電磁波の送受信装置、信号処理装置、風速ベクトル算出装置、表示記録装置などによって構成される。アンテナによって上空の複数方向へ送信された電磁波の反射波が、アンテナによって受信され、その受信波が送受信装置によって増幅、周波数変換、検波されてビデオ信号に変換される。そのビデオ信号は、信号処理装置によって周波数解析され、ドップラー速度が算出される。
【0004】
算出されるドップラー速度は、レーダの送受信方向への射影成分である。そこで、観測領域の風速分布が一様であると仮定し、その範囲内で観測方向を複数設定することで、風速ベクトル算出装置によって複数の観測方向のドップラー速度から、実際の風速ベクトルが算出される。
【0005】
ウィンドプロファイラは、大気乱流等によって散乱される非常に微弱な反射波を観測対象とするため、SN比が小さいことが難点である。
これに対処するため、一般的な信号データ処理の流れは、以下のように、まずSN比を向上させるためのディジタル信号処理を行い、次にノイズの影響を回避しつつ所望信号を抽出する処理を行った後、風速等の各種物理量を求めることになる。
【0006】
ディジタル信号処理は、時間領域で行うものと、ドップラー周波数領域で行うものとに大別できる。
時間領域で行う信号処理には、レーダの距離分解能を損なわずにSN比を向上させるパルス圧縮や、計測対象の変化が小さい時間内で信号を積分しSN比を向上させるコヒーレント積分や、受信信号の時間変化を各ドップラー周波数に分解する複素フーリエ変換などがある。
ドップラー周波数領域で行う信号処理には、複素フーリエ変換で得られた複素スペクトルの2乗和を取ってパワースペクトルを算出するドップラースペクトルの算出や、複数のドップラースペクトルを加算してSN比を向上させるインコヒーレント積分などがある。
【0007】
SN比を向上させた後、所望の信号を抽出するには、ドップラースペクトルの中から、大気乱流等の散乱体による所望信号のピークを探知し抽出する。この過程で所望信号を正しく抽出することが、計測精度を高める上で非常に重要である。
【0008】
抽出した所望信号から、レーダのアンテナビーム方向に沿った信号強度やドップラー速度やスペクトル幅などの諸物理量を、観測高度毎に算出する。通常は、鉛直方向と、それから東西南北のそれぞれに若干傾斜した方向との計5方向のビームを用いて観測するので、このレーダの送受信方向物理量は、観測高度毎のほか、観測方向毎にも得られる。
【0009】
観測方向の異なる複数のドップラー速度を用いて、風速3成分(東西、南北、鉛直方向の風速)すなわち風速ベクトルを算出する。この過程は、アルゴリズムに依存せず一意的な結果が得られることが多い。
【0010】
そして最後に、算出した風速ベクトル等の物理量が妥当であるかどうかを吟味する。通常、各物理量が連続的な時間分布、高度分布をすることを利用して、連続性に欠けるデータを取り除く。このスクリーニング処理は、レーダの送受信方向物理量の算出を行った直後に行われることも多い。
【0011】
このような一連の過程において、ドップラースペクトルの中から所望信号を正しく抽出することが、計測精度を高める上で特に重要である。
図1は、ドップラースペクトルの一例を模式的に示すグラフである。
ドップラースペクトルは、各観測方向に沿った複数の観測高度において求められるため、1回の観測で得られるドップラースペクトルの総数は、観測方向数と観測高度数との積となる。1つの観測方向に沿った複数の観測高度で得られたドップラースペクトルを示したグラフを図2に示す。
【0012】
所望信号は、ドップラースペクトル上で比較的幅の狭いピークとして現れるが、ピークが低い場合にはノイズに埋もれやすく、非所望信号によるスペクトルピークを所望信号であると誤認することがありうる。
非所望信号としては、大地や建造物などの固定物からの散乱信号であるグランドクラッタ、海面波からの散乱信号であるシークラッタ、航空機や鳥などの飛翔体からの散乱信号、他の無線局からの信号などが挙げられる。
雨粒や氷晶などの降水粒子による散乱信号は、降雨強度等を計測する際には所望信号として扱われるが、大気乱流による散乱信号を計測する際には非所望信号として扱われる。
【0013】
グランドクラッタによるピークは、ドップラースペクトル上における出現位置や形状の特徴がある程度予想できるのに対し、その他の非所望信号は出現する場所や時間が不定であり、予め予想して対処することは非常に困難である。
【0014】
所望信号を抽出する最も単純な方法は、各観測高度のドップラースペクトル上で最も高いピークを検索して取り出す方法である。この方法は、計算量が少ないため、低速の計算機を用いる場合に利用されたが、所望信号よりも非所望信号が大きい場合は非所望信号を抽出してしまう問題があった。
そこで、次のスクリーニング処理において、抽出した信号の時間と高度に関する連続性を確認し、誤って抽出した非所望信号がその連続性に欠けることを根拠として識別し削除する方法を取ってきた。
【0015】
このスクリーニングは、所望信号の数が誤って抽出した非所望信号の数よりも十分に多い場合には、意図した動作をするが、逆の場合は、むしろ所望信号の方が削除されるなど、効果が得られない問題があった。
更に、ドップラースペクトルから一旦誤ったピークを抽出してしまうと、仮にピークが低いが識別可能な所望信号が存在したとしても、それが生かされず、スクリーニングの結果、データの抜けが生じる問題もあった。
【0016】
また、3つ以上の観測方向で取得したドップラー速度を合成して、風速ベクトルを求める従来の方法は、1回の観測で走査する複数の観測方向から得られたドップラー速度を用いていた。すなわち、1観測毎、独立に風速ベクトルを求めていた。
複数の観測方向におけるドップラー速度が正確に求められていれば、結果として得られる風速ベクトルの精度も良いことになる。しかし、全ての観測方向について高精度でドップラー速度を求められるとは限らないため、実際にはドップラー速度の誤差が風速ベクトルへ伝播して精度が低下しやすい。
【0017】
そこで、ドップラー速度の精度を高めるために、予め観測方向毎にドップラー速度の時間と高度に関する連続性を考慮してスクリーニング処理し異常値を削除するが、それらを完全に取り除くことは困難である。なぜなら、SN比が低く非所望信号に起因する異常値が相対的に多い観測高度などでは、スクリーニングが効果的に機能しないからである。
更に、スクリーニングの結果、欠測扱いとなった観測高度の値は、その周囲の値で補間するなどしない限り風速ベクトルを求められないという問題もある。
【0018】
ウィンドプロファイラに関する従来技術には、
【特許文献1】
特開平11−258358号
【特許文献2】
特開2001−159636号
【特許文献3】
特開2002−168948号
も開示されている。
【0019】
特許文献2は、風速ベクトルの算出精度を向上させるためのものであり、ドップラー速度の時間と高度に関する連続性を考慮してスクリーニング処理する記載がある。しかし、SN比が低く非所望信号に起因する異常値が相対的に多い観測高度などでは、スクリーニングが効果的に機能しないため、十分精度の高いドップラー速度を得ることは依然として困難である。
【0020】
以上のように、ウィンドプロファイラは、非常に微弱な反射波を観測対象とするため、従来技術によっては、ノイズの影響を回避しつつ所望信号を正確に抽出し、精度の高い風速ベクトルなど諸物理量を求めることが困難であった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、所望信号を正確に抽出し、精度の高い風速ベクトルなど諸物理量を求めることができるウィンドプロファイラの信号処理方法、並びに、その方法を実施するプログラムと装置を提供することを課題とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のウィンドプロファイラにおける信号処理方法は、次の構成を備える。
すなわち、空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、観測されたドップラースペクトルの中から所望の信号を仮抽出し、仮抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを試算し、その送受信方向の諸物理量または風速ベクトルの試算データを、観測によるドップラースペクトル上にフィードバックして、その試算データに最も類似する観測データを所望信号として、ドップラースペクトルの中から再抽出し、再抽出した所望信号データに基づいて送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めることを特徴とする。
【0023】
また、空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、観測されたドップラースペクトルの中から、所望の信号を抽出するに当たり、略同一の条件下で複数回の観測を行い、観測時間を指標として連続的な関係にある一連のドップラースペクトルから、類似性の高いドップラースペクトルを抽出して、抽出されたドップラースペクトルの中から、所望の信号を求めるようにしてもよい。
【0024】
また、空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、観測されたドップラースペクトルの中から、所望の信号を抽出するに当たり、略同一の条件下で複数回の観測を行い、観測時間を指標として連続的な関係にある一連のドップラースペクトルから、同一のドップラー速度成分について独立にメジアンフィルタをかけた後、メジアン値に近い複数の値の平均を取ることによって、所望のドップラースペクトルを求めるようにしてもよい。
【0025】
また、空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、観測されたドップラースペクトルの中から、所望の信号を抽出するに当たり、観測高度を指標として連続的な関係にある条件下で一連の観測を行い、隣接する観測高度におけるドップラースペクトルの間で、各スペクトル中にあるピーク間の類似性を求め、その類似性に基づいて各スペクトルのピークを連続的に追跡することで高度プロファイルを形成し、得られた複数の高度プロファイルの中から、妥当性の高い高度プロファイルを選定し、選定された高度プロファイルに帰属するドップラースペクトルの中から、所望の信号を求めるようにしてもよい。
【0026】
その際、ピークの類似性を、少なくとも、信号強度の比と、スペクトル幅の比と、ドップラー速度の差とを独立変数とする多次元空間距離の小ささで表現してもよい。
【0027】
また、空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、観測されたドップラースペクトルの中から抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを算出するに当たり、略全ての観測高度にわたって、距離分解能の異なる複数の観測モードで観測を行い、得られた略全てのドップラー速度を用いて、特異行列分解法によって、所望の風速ベクトルを求めるようにしてもよい。
【0028】
本発明のウィンドプロファイラにおける信号処理方法を実施するプログラムは、空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、観測されたドップラースペクトルの中から所望の信号を仮抽出するステップ、仮抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを試算するステップ、その送受信方向の諸物理量または風速ベクトルの試算データを、観測によるドップラースペクトル上にフィードバックして、その試算データに最も類似する観測データを所望信号として、ドップラースペクトルの中から再抽出するステップ、再抽出した所望信号データに基づいて送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるステップとを有することを特徴とする。
【0029】
本発明のウィンドプロファイラにおける信号処理方法を実施する装置は、空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、観測されたドップラースペクトルの中から所望の信号を仮抽出する手段、仮抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを試算する手段、その送受信方向の諸物理量または風速ベクトルの試算データを、観測によるドップラースペクトル上にフィードバックして、その試算データに最も類似する観測データを所望信号として、ドップラースペクトルの中から再抽出する手段、再抽出した所望信号データに基づいて送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求める手段とを有することを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を用い本発明の実施形態を説明する。
なお、ここでは、空中へ向けて放射するプローブ波として電磁波を挙げるが、音波等も利用可能である。また、実施例として用いたウィンドプロファイラは、沖縄県国頭郡大宜味村の通信総合研究所大宜味大気観測施設に設置されたものである。
【0031】
ウィンドプロファイラは、非常に微弱な反射波を観測対象とするため、ノイズの影響を回避しつつ所望信号を正確に抽出することが肝要である。
これに対処するため、本発明では、所望信号の抽出に当たり、各観測高度のドップラースペクトルを独立して取り扱って所望信号を抽出するのではなく、ドップラースペクトルの段階で、時間と高度に関しての連続性を考慮するようにした。
【0032】
ウィンドプロファイラでは短時間の間隔で観測を連続的に行うことができるので、得られるドップラースペクトルは、急激な変化をもたらす飛翔体等によるノイズがなければ、略同一の結果が期待される。
そこで、各観測高度毎に、略同一の条件下で10回程度の複数回観測を行い、観測時間を指標として連続的な関係にある一連のドップラースペクトルを求める。その複数のドップラースペクトルの中から、類似性の高いドップラースペクトルを抽出して、統計的信頼性の高いドップラースペクトルとしてから、所望信号を抽出する。
【0033】
ドップラースペクトルの信頼性を高める計算操作としては、メジアンフィルタと算術平均とを併用する。
すなわち、時間的に隣接する複数の観測から、同一観測高度かつ同一のドップラー速度成分が複数の時刻において得られるが、これらを大きさ順に並べた数値列の中央を採用するメジアンフィルタをかけた後、その中央値に近い複数の数値を平均することで、時間に関しての連続性を考慮した高信頼性の所望信号抽出に寄与させる。
【0034】
高度に関しての連続性については、観測高度を指標として連続的な関係にある条件下で一連の観測を行い、まず、隣接する観測高度におけるドップラースペクトルの間で、各スペクトル中にあるピーク間の類似性を求める。図3は、隣接する観測高度におけるドップラースペクトルを模式的に示したグラフである。例えば、図では、ピーク(B)とピーク(D)との間の類似性、ピーク(B)とピーク(E)との間の類似性、ピーク(B)とピーク(F)との間の類似性が算出され、比較される。
そして、その類似性に基づいて各スペクトルのピークを連続的に追跡することで高度プロファイルを形成し、得られた複数の高度プロファイルの中から、妥当性の高い高度プロファイルを選定し、選定された高度プロファイルに帰属するドップラースペクトルの中から、所望の信号を求めることで、高度に関しての連続性を考慮した高信頼性の所望信号抽出に寄与させる。
【0035】
ピークの類似性を表す指標としては、隣接する観測高度におけるピーク同士の「距離d」を新たに定義する。
2つのピークのそれぞれで正規化した信号強度、スペクトル幅、ドップラー速度などのピークの特性を数値化し、その信号強度の比x、スペクトル幅の比y、ドップラー速度の差zなど、両者の差異をそれぞれ独立変数として多次元空間上に座標P(x,y,z,……)をプロットする。そして、その座標の原点からの距離(x+y+z+……)1/2を「距離d」と定義する。
すると、その多次元空間上の「距離d」の小ささで、ピークの類似性を表現することができる。
これらにより、短時間で消滅する非所望信号から所望信号を識別する点、及び、ピークの低い所望信号を抽出する点において、精度が向上した。
【0036】
また、従来においては、1観測毎、独立に風速ベクトルを求めていた。従来方法では、低SN比によりドップラー速度の計測精度の悪い観測高度において、風速ベクトルの精度も悪化することが問題であった。
高高度では、レーダの送受信装置と観測対象の散乱体との距離が大きいことや、大気濃度が薄くなって電磁波反射率が急激に減少することにより、受信信号のSN比が低くなることが多い。そのため、ドップラースペクトルを正確に検出するためには、インコヒーレント積分の数を多くしてパワースペクトルのゆらぎを小さくする必要がある。また、風が地表面の影響をあまり受けないことから、風速ベクトルの時間変化は小さいので、風速ベクトル算出の時間分解能は低高度の場合より低くてもあまり問題とならない。
【0037】
通常のウィンドプロファイラ観測は、SN比が低くてもよい低高度では距離分解能を高めて詳細に計測し、逆に高高度はできるだけSN比が高くなるように距離分解能を低くして荒く計測するなど、高度別に必要なSN比を勘案して複数の観測モードを順に切り替える観測方法をとっている。
ここで、低高度用の観測モードにおいては、比較的低高度でSN比が低下し計測精度に悪影響が生じ得るが、そのような観測高度のドップラー速度を、高高度用の観測モードの結果を使って推定すれば、低SN比の信号を的確に抽出することが可能となる。
【0038】
そこで、本発明では、略全ての観測高度にわたって、距離分解能の異なる複数の観測モードで観測を行い、得られた略全てのドップラー速度を用いて、一意的に送受信方向の諸物理量や風速ベクトルの高度分布を求めるようにした。
具体的には、特異行列分解法(Singular Value Decomposition)を応用して、未知変数である風速3成分よりも多くのドップラー速度を用いて、妥当な風速ベクトルを求める方法を採用した。
なお、ここで求めた風速ベクトルは、最終的な値として確定されるものではなく、次に述べるように、各観測時におけるドップラースペクトル上の所望信号を抽出するための初期値とすることが好ましい。
【0039】
すなわち、観測されたドップラースペクトルの中から所望の信号を仮抽出し、仮抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを試算し、その送受信方向の諸物理量または風速ベクトルの試算データを、観測によるドップラースペクトル上にフィードバックする。このフィードバックには、試算データによる上記風速ベクトル初期値を、各観測ビーム方向へ射影してドップラー速度を求めて、その試算データに最も類似する観測データを所望信号としてドップラースペクトルの中から再抽出し、再抽出した所望信号データに基づいて送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求める。
【0040】
このフィードバック処理は、統計的信頼性の高い平均的な風速ベクトルを先に求め、それを初期値として各観測時における風速ベクトルを再計算するというものである。そのため、低SN比の観測高度において風速値が真値から大きく外れることを避けることが可能となる。
これによって、ウィンドプロファイラによる実時間データを、気象予報等に有効に利用できる。
【0041】
本発明のよる信号処理装置は、少なくとも、観測されたドップラースペクトルの中から所望の信号を仮抽出する手段、仮抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを試算する手段、その送受信方向の諸物理量または風速ベクトルの試算データを、観測によるドップラースペクトル上にフィードバックして、その試算データに最も類似する観測データを所望信号として、ドップラースペクトルの中から再抽出する手段、再抽出した所望信号データに基づいて送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求める手段を備える。
【0042】
図4は、本発明による信号処理プログラムの要部を示すアルゴリズムである。ウィンドプロファイラの特に実時間データ処理において、大気乱流や降水粒子などの散乱体により反射された所望信号成分を、他のノイズ成分の影響を避けながら抽出し、低SN比の観測高度においても統計的信頼性の高い値を求められるようにした。
ドップラースペクトルから所望信号成分を抽出する過程においては、時間連続性に関して、複数回の観測結果を用いて、各観測高度のドップラースペクトルを統計的信頼性の高いドップラースペクトルとしてから、所望信号を抽出する方法とした。高度連続性に関しては、隣接する観測高度におけるピーク同士の類似性を算出し、それに基づいて連続的なピークを追跡して高度プロファイルを求め、複数の高度プロファイルの中から妥当なものを取り出す方法とした。
【0043】
ドップラー速度から風速ベクトルを算出する過程においては、異なる観測モードから得られたドップラー速度を略全て用いて、特異行列分解法により妥当な風速ベクトルのプロファイルを算出する方法とした。
【0044】
次いで、上記で仮に求めた風速ベクトルを各観測方向へ射影して、ドップラースペクトル上に現れる所望信号のおおよその位置を求め、各観測におけるドップラースペクトル上のピークのうち、その位置の近くにある類似ピークを改めて所望信号として選定し、観測毎の送受信方向(視線)物理量や風速ベクトルを求めるというフィードバック法を採用した点に特徴がある。
【0045】
【発明の効果】
本発明のウィンドプロファイラにおける信号処理方法及びそのプログラムと装置によると、次の効果を奏する。 すなわち、所望信号の強度が他のノイズに比べて低い状況においても、正確に所望信号を抽出し、欠測の少ない高精度なデータ処理を実現した。この結果、スクリーニング処理はほぼ不要となり実時間性が向上し、精度の高い風速ベクトルなど諸物理量を求めることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ドップラースペクトルの一例を模式的に示したグラフ
【図2】 1つの観測方向に沿って複数の観測高度で得られたドップラースペクトルを示したグラフ
【図3】 隣接する観測高度におけるドップラースペクトルを模式的に示したグラフ
【図4】 信号処理プログラムの要部を示すアルゴリズム

Claims (8)

  1. 空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、
    観測されたドップラースペクトルの中から所望の信号を仮抽出し、
    仮抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを試算し、
    その送受信方向の諸物理量または風速ベクトルの試算データを、観測によるドップラースペクトル上にフィードバックして、その試算データに最も類似する観測データを所望信号として、ドップラースペクトルの中から再抽出し、
    再抽出した所望信号データに基づいて送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求める ことを特徴とするウィンドプロファイラにおける信号処理方法。
  2. 空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、
    観測されたドップラースペクトルの中から、所望の信号を抽出するに当たり、
    略同一の条件下で複数回の観測を行い、
    観測時間を指標として連続的な関係にある一連のドップラースペクトルから、類似性の高いドップラースペクトルを抽出して、
    抽出されたドップラースペクトルの中から、所望の信号を求める
    ことを特徴とするウィンドプロファイラにおける信号処理方法。
  3. 空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、
    観測されたドップラースペクトルの中から、所望の信号を抽出するに当たり、
    略同一の条件下で複数回の観測を行い、
    観測時間を指標として連続的な関係にある一連のドップラースペクトルから、
    同一のドップラー速度成分について独立にメジアンフィルタをかけた後、
    メジアン値に近い複数の値の平均を取ることによって、
    所望のドップラースペクトルを求める
    ことを特徴とするウィンドプロファイラにおける信号処理方法。
  4. 空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、
    観測されたドップラースペクトルの中から、所望の信号を抽出するに当たり、
    観測高度を指標として連続的な関係にある条件下で一連の観測を行い、
    隣接する観測高度におけるドップラースペクトルの間で、各スペクトル中にあるピーク間の類似性を求め、
    その類似性に基づいて各スペクトルのピークを連続的に追跡することで高度プロファイルを形成し、
    得られた複数の高度プロファイルの中から、妥当性の高い高度プロファイルを選定し、
    選定された高度プロファイルに帰属するドップラースペクトルの中から、所望の信号を求める
    ことを特徴とするウィンドプロファイラにおける信号処理方法。
  5. ピークの類似性を、
    少なくとも、信号強度の比と、スペクトル幅の比と、ドップラー速度の差とを独立変数とする多次元空間距離の小ささで表現する
    請求項4に記載のウィンドプロファイラにおける信号処理方法。
  6. 空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、
    観測されたドップラースペクトルの中から抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを算出するに当たり、
    略全ての観測高度にわたって、距離分解能の異なる複数の観測モードで観測を行い、
    得られた略全てのドップラー速度を用いて、特異行列分解法によって、所望の風速ベクトルを求める
    ことを特徴とするウィンドプロファイラにおける信号処理方法。
  7. 空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、
    観測されたドップラースペクトルの中から所望の信号を仮抽出するステップ、仮抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを試算するステップ、
    その送受信方向の諸物理量または風速ベクトルの試算データを、観測によるドップラースペクトル上にフィードバックして、その試算データに最も類似する観測データを所望信号として、ドップラースペクトルの中から再抽出するステップ、
    再抽出した所望信号データに基づいて送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるステップ、
    とを有することを特徴とするウィンドプロファイラにおける信号処理プログラム。
  8. 空中へ向けて複数方向にプローブ波を送信し、空中に存する散乱体で反射されたプローブ波を受信し、それら送受信信号を処理することで、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求めるウィンドプロファイラにおいて、
    観測されたドップラースペクトルの中から所望の信号を仮抽出する手段、
    仮抽出された所望信号データより、送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを試算する手段、
    その送受信方向の諸物理量または風速ベクトルの試算データを、観測によるドップラースペクトル上にフィードバックして、その試算データに最も類似する観測データを所望信号として、ドップラースペクトルの中から再抽出する手段、 再抽出した所望信号データに基づいて送受信方向の諸物理量または風速ベクトルを求める手段、
    とを有することを特徴とするウィンドプロファイラにおける信号処理装置。
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