JP6165187B2 - メイクアップの評価方法、メイクアップの評価システム、及びメイクアップ製品の推奨方法 - Google Patents

メイクアップの評価方法、メイクアップの評価システム、及びメイクアップ製品の推奨方法 Download PDF

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Description

本発明は、化粧品販売員等が顧客に対して行うメイクアップの評価方法、メイクアップの評価を実行する評価システム、及び評価に基づいて行われるメイクアップ製品の推奨方法に関する。
現在、様々な色のメイクアップ製品が販売されており、使用者は自分の好みや化粧品販売員等のアドバイスの下、購入する場合が多い。特に、ファンデーションの色に関しては、近年、いわゆるナチュラルメイクと呼ばれる素肌と自然に馴染むようなメイクが好まれる傾向がある。そのため、ファンデーションを購入する際、色の選択は非常に重要である。
従来、ファンデーションの色の選択に関して、自分の皮膚に最適な色のファンデーションを簡便に短時間に選択するためのファンデーション用色選びツールがあった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、ファンデーション用色選びツールは、基材シート内に形成された皮膚観察用開口部及び所定色の色票部からなり、基材シート内において皮膚観察用開口部と色票部とが、互いに他方を囲むことなく、独立的に形成されている。そして、対比する皮膚と色票との面積や形状を、色の異同の判断に支障をきたさない程度に同一にすることで、ファンデーションの色の選択を簡便に短時間で行うことができるとされている。
また、顧客が最も望む印象を達成しうるファンデーションを効率よく選択して推奨するファンデーションの選択・推奨方法があった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2によれば、ファンデーションの色見本群を、各色見本の明度、色相、彩度の三指標における偏り具合が一目でわかる肌色マップとして表示する肌色見本表示手段と、顧客の肌の色を測定するための測色手段とを準備し、上記測色手段を用いて顧客の肌の色を測定した後、その測定された肌の色と同一もしくは最も近似する色を、上記肌色マップとして表示された色見本群の中から選択し、その選択色と、肌色マップ上において特定の位置関係にある色見本の色を、顧客の肌の色に適したファンデーションの色として推奨している。これにより、美容員が顧客の素肌の色とファンデーションの色との相性をいちいち記憶したり、実際の肌に試さなくても、その顧客が最も望む印象を達成できるとされている。
特開平9−133584号公報 特開2003−149051号公報
メイクアップ製品、特に、ファンデーションの色を選択する際、顔の中で面積の広い頬の色と対比して自然な仕上がりとなるような色を選択することが通常行われている。この点、特許文献1のファンデーション用色選びツールは、基材シート内における皮膚観察用開口部を皮膚に当て、色票部の色と対比して色を選択できるようにしており、簡単にファンデーションの色を選択することを可能としている。しかし、ファンデーションが塗布された部位における光の反射特性と、色票部における光の反射特性とは全く異なる。このため、照明環境(例えば、照明の種類や光が当たる角度等)が変わると、色票部と合わせてみて最適だと思われたファンデーションの色が肌色に合っていないことがある。このように、色票部の利用では、適切なファンデーションの色を選択することは困難な場合があった。
また、ファンデーションの色を選択する際、頬の色との対比の他に、化粧の仕上がりが不自然とならないように、顔と首との色が馴染むような色を選択することも重要である。この点、特許文献2は、肌色の測定に際し、「額、右頬、左頬、フェイスライン、及び首筋」の5箇所を測定することにより、顔から首にかけて、自然な仕上がりとなるファンデーションの色を選択しようとするものである。ここで、特許文献2で用いる色差計は、外光を遮断して定められた照明環境下で色を測定する機器であるから、上記5箇所の色を測定する際、規定の照明環境下で色が測定される。しかし、額や頬、首筋は、日常の照明環境下では光が当たり易いため明るく見えるのに対し、フェイスラインは、実際には、額や頬、首筋より暗く見える場合が多い。さらに、複雑な内部反射構造を持つ肌においては、光が当たり明るく見えるときの色と、陰になり暗く見えるときの色との関係は、単に明暗だけが異なるのではなく、複雑な色味の変化も生じる。このため、色差計では、日常の照明環境下におけるフェイスラインの色(つまり、人が実際に見たときのフェイスラインの色)を適切に評価することは困難である。特許文献2では、上記のことが全く考慮されておらず、色差計で一律同一の照明環境下における額、頬、フェイスライン、及び首筋の色を測定しているに過ぎない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、美しく仕上がるファンデーション等のメイクアップ製品を選択することができるメイクアップの評価方法、及びメイクアップの評価システムを提供することを目的とする。さらに、メイクアップの評価方法を用いて、顧客に対して行うメイクアップ製品の推奨方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係るメイクアップの評価方法の特徴構成は、
顔をメイクアップする準備工程と、
メイクアップ後の顔の画像を取得する画像取得工程と、
頬、フェイスライン、及び首の各位置において、L空間に基づく色情報を抽出する色情報抽出工程と、
前記フェイスラインから前記頬への色方向と、前記フェイスラインから前記首への色方向との三次元上の角度に関する情報を求める角度演算工程と、
前記角度に関する情報に基づいて、メイクアップの仕上がりを評価する評価工程と、
を包含することにある。
従来のファンデーションの色の選択方法には、上記したとおり、頬の色と色の見本とを対比して選択する方法や、顔や首の複数箇所の色を測定する方法が用いられてきた。しかし、色の見本を利用する方法は、照明環境の変化によって、美しく仕上がるファンデーションの色が異なるため、最適なファンデーションの色を選択することは困難である。また、色差計等の測色装置を用いても、フェイスラインには陰影が生じているため、人が実際に見たときのフェイスラインの色を正確に測定することは困難である。
そこで、本発明者らは、顔や首の色そのものではなく、頬から首にかけての色の変化に着目して研究を行った。その結果、L空間におけるフェイスラインから頬への色の方向、及びフェイスラインから首への色の方向がなす三次元上の角度が重要であり、この角度に関する情報によって、ファンデーションの色が使用者に合っているかの評価が可能となることを突き止めた。そのような評価方法として具体的には、使用者の顔にファンデーションを塗布し(準備工程)、塗布した後の顔の画像を取得する(画像取得工程)。次に、頬、フェイスライン、及び首の各位置において、L空間に基づく色情報を抽出し(色情報抽出工程)、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向との三次元上の角度に関する情報を求める(角度演算工程)。このような手順で求められた角度に関する情報に基づいて、ファンデーションの仕上がりを評価することができる(評価工程)。このように、本発明のファンデーションの評価方法は、頬、フェイスライン、及び首の色のみを対象としてファンデーションの色を選択するのではなく、頬、フェイスライン、及び首の各位置における色情報から求められるL空間において色の方向がなす三次元上の角度によって評価を行う。このため、日常の照明環境下(つまり、人が実際に見る場面)における、頬、フェイスライン、及び首の色の関係に基づいて、使用者に塗布したファンデーションの色が合っているか(すなわち、美しい仕上がりであるか)について評価をすることができる。また、感覚的に色を選択することがない定量的な評価方法であるため、化粧品販売員等の経験や能力によらず、評価にばらつきが生じ難くなる。
本発明に係るメイクアップの評価方法において、
前記準備工程において、L空間に基づく下記式(1)
∠H°=tan−1(b/a) ・・・ (1)
(ここで、a≧0、b≧0である。)
で表される色相角(∠H°)が、0〜90°の範囲に設定されるように前記顔をメイクアップすることが好ましい。
本構成のメイクアップの評価方法によれば、人の肌色(素肌の色)に近い赤色〜黄色系統の色でメイクアップが行われるため、準備工程で使用者に塗布したファンデーションの色が使用者に合っているかについて正確に評価することができる。
本発明に係るメイクアップの評価方法において、
前記画像取得工程において、前記画像は、前記頬から前記首にかけて5以上の領域に分割された細分画像として取得されることが好ましい。
本構成のメイクアップの評価方法によれば、メイクアップ後の顔の画像を細分画像として取得するため、頬、フェイスライン、及び首の境界が明瞭となる。これにより、頬、フェイスライン、及び首の色方向がなす角度を正確に測定することができ、準備工程で使用者に塗布したファンデーションの色が使用者に合っているかについて、より正確な評価をすることができる。
本発明に係るメイクアップの評価方法において、
前記画像取得工程において、前記画像は平滑化処理されることが好ましい。
本構成のメイクアップの評価方法によれば、画像の平滑化処理によりノイズやばらつきを低減することができるため、画像を見易くすることができる。これにより、例えば、画像の解像度を高くしてノイズやばらつきが生じた場合にも対応することができ、準備工程で使用者に塗布したファンデーションの色が使用者に合っているかについての正確な評価をすることができる。
本発明に係るメイクアップの評価方法において、
前記色情報抽出工程において、眉間を始点とする口角方向の直線である第一直線と、眉間を始点とする耳垂先端方向の直線である第二直線とが角度領域を形成し、
前記頬、前記フェイスライン、及び前記首の各位置が前記角度領域内に存在し、且つ、同一直線上に位置し、さらに、前記頬に位置する点を始点とし、前記首に位置する点を終点とする基準線が設定されるように前記頬、前記フェイスライン、及び前記首の各位置が選択されることが好ましい。
人が他人の顔や、顔から首にかけての部位を見る際、その視線は、通常、直線的に移動すると考えられる。また、ファンデーションを顔に塗布する際、円を描くように塗布したり、あるいは、左右又は上下にランダムに移動させながら塗布するより、顔の中心から外側(首)に向かって、ある程度一定方向を保ちながら塗布することが一般的であると考えられる。このため、本発明のファンデーションの評価方法においては、色情報抽出工程で用いられる頬、フェイスライン、及び首の各位置は同一直線上にあって、頬に位置する点を始点とし、首に位置する点を終点とする基準線が用いられる。そして、この基準線は、眉間を始点とする口角方向の直線を第一直線とし、眉間を始点とする耳垂先端方向の直線を第二直線とした場合、第一直線と第二直線とによって形成される角度領域内に存在するように選択される。このように、頬、フェイスライン、及び首の各位置が特定されているため、準備工程で使用者に塗布したファンデーションの色が使用者に合っているかについての評価にばらつきは生じず、正確な評価をすることができる。
本発明に係るメイクアップの評価方法において、
前記色情報抽出工程において、前記フェイスラインは、前記基準線上の最も暗い位置にあり、前記頬、及び前記首の位置は、前記フェイスラインの位置から1〜5cmの範囲内に夫々位置するように設定されることが好ましい。
本構成のメイクアップの評価方法によれば、上記のようにしてフェイスラインの位置を決定する。これにより、色情報を抽出したい頬、フェイスライン、及び首の各位置が特定されるため、準備工程で使用者に塗布したファンデーションの色が使用者に合っているかについての評価にばらつきは生じず、正確な評価をすることができる。
本発明に係るメイクアップの評価方法において、
前記角度演算工程において、前記角度に関する情報として前記角度の常用対数値を求めることが好ましい。
本構成のメイクアップの評価方法によれば、角度に関する情報とメイクアップの評価との相関性が高まるため、準備工程で使用者に塗布したファンデーションの色が使用者に合っているかについて、より正確な評価をすることができる。
本発明に係るメイクアップの評価方法において、
前記評価工程において、前記角度の常用対数値が所定の閾値以下となる場合を仕上がり良好と判定することが好ましい。
本構成のメイクアップの評価方法によれば、評価基準が明確であるため、準備工程で使用者に塗布したファンデーションの色が使用者に合っているかについて、人の感覚に頼らずに常に一定の評価を行うことができる。
上記課題を解決するための本発明に係るメイクアップの評価システムの特徴構成は、
顔に施したメイクアップを評価するメイクアップの評価システムであって、
メイクアップ後の顔の画像を取得する画像取得手段と、
頬、フェイスライン、及び首の各位置において、L空間に基づく色情報を抽出する色情報抽出手段と、
前記フェイスラインから前記頬への色方向と、前記フェイスラインから前記首への色方向との三次元上の角度に関する情報を求める角度演算手段と、
前記角度に関する情報に基づいて、メイクアップの仕上がりを評価する評価手段と、
を備えることにある。
本構成のメイクアップの評価システムによれば、上記のファンデーションの評価方法と実質的に同様の効果を奏する。すなわち、頬、フェイスライン、及び首の色のみを対象としてファンデーションの色を選択するのではなく、頬、フェイスライン、及び首の各位置における色情報から求められるL空間において色の方向がなす三次元上の角度によって評価を行う。このため、日常の照明環境下(つまり、人が実際に見る場面)における、頬、フェイスライン、及び首の色の関係に基づいて、使用者に塗布したファンデーションの色が合っているか(すなわち、美しい仕上がりであるか)について評価をすることができる。また、感覚的に色を選択することがない定量的な評価方法であるため、化粧品販売員等の経験や能力によらず、評価にばらつきが生じ難くなる。
上記課題を解決するための本発明に係るメイクアップ製品の推奨方法の特徴構成は、
上記の何れか一つに記載のメイクアップの評価方法を利用して、使用者に適したメイクアップ製品を推奨するメイクアップ製品の推奨方法であって、
前記準備工程は、コンピュータ又はネットワーク上で行われる仮想的なメイクアップとして実行され、
前記評価工程による評価に基づいて、使用者に適したメイクアップ製品を選択することにある。
本構成のメイクアップ製品の推奨方法は、上記したメイクアップの評価方法を利用する。ここで、準備工程として、使用者に対してコンピュータ又はネットワーク上で行われる仮想的なメイクアップが施される。このため、使用者に負担を掛けることなく何通りものメイクアップを手軽に行うことができる。そして、メイクアップ後の顔の画像を取得し、頬、フェイスライン、及び首の各位置において、L空間に基づく色情報を抽出する。次いで、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向との三次元上の角度に関する情報を求め、この角度に関する情報に基づいて、仮想的なメイクアップ仕上がりを評価する。この評価に基づいて、化粧品販売員等は、使用者に適したメイクアップ(つまり、美しい仕上がりとなるようなメイクアップ)製品を選択・推奨することができる。
図1は、頬、フェイスライン、及び首の各位置における色情報の抽出に関する説明図である。 図2は、L空間に関する説明図である。 図3は、フェイスラインから頬の色方向、及びフェイスラインから首の色方向が形成する角度に関するグラフである。 図4は、メイクアップの仕上がりに対する目視的評価値と2つの色方向がなす角度との相関性を示すグラフである。 図5は、メイクアップの仕上がりと2つの色方向がなす角度との関連性を示すグラフである。 図6は、本発明のメイクアップの評価システムのブロック図である。 図7は、本発明のメイクアップの評価方法のフローチャートである。 図8は、本発明のメイクアップ製品の推奨方法を実行するシステムのブロック図である。
以下、本発明のメイクアップの評価方法、メイクアップの評価システム、及びメイクアップの製品の推奨方法に関する実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、初めに、本発明のメイクアップの評価方法に関して行った検証を説明し、その後、メイクアップの評価システム、メイクアップの評価方法、及びメイクアップ製品の推奨方法について説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
<メイクアップの評価に関する検証>
[メイクアップの仕上がりに対する目視的評価と2つの色方向がなす角度との相関性]
上記の「背景技術」にて説明したとおり、従来のファンデーションの色の選択方法は顔や首の色に重点を置いていたが、信頼性に欠けるものであった。本発明者らは、色は、L表色系で表され、このL表色系は三次元空間であることから、顔や首の色そのものではなく、三次元空間上における色方向が、ファンデーションの色の選択に関係するのではないかとの予測を立て、以下の検証を行った。
(1)目視的評価試験
人が「美しい」と感じることは、人の主観に依るところが大きいと考えられる。そのため、他人のメイクアップの仕上がりを評価する際、直接見て感覚的に「合っている、又は合っていない」と判定することは重要である。そこで、本発明に係るメイクアップの評価に関する検証では、まず、メイクアップの仕上がりに対して目視での評価を行った。メイクアップ製品としてファンデーションを使用した。
4名の被験者に、色の異なる10種のファンデーションを塗布し、顔(首も含む)をデジタルカメラで撮影し、合計40枚(4名×10種=40枚)の撮影画像を用意した。この40枚の画像をファンデーションの被験者以外の34名の評価者が評価し、点数をつけた。回答項目と点数は以下のように設定した。
(イ)ファンデーションの色が被験者に合っている(つまり、美しい仕上がりである):+1点
(ロ)ファンデーションの色が被験者に合っていない(つまり、美しい仕上がりでない)」:−1点
(ハ)どちらとも言えない:0点
34名の評価者の点数を集計し、各画像に対する点数の平均値(これを「美肌スコア」と称する。)を求めた。
(2)2つの色方向がなす角度
図1は、頬、フェイスライン、及び首の各位置における色情報の抽出に関する説明図である。本発明者らは、顔や首の色の測定位置を次のように定めた。まず、図1に示すように、眉間Aを始点として左右どちらかの口角B(図1では、顔の左側を例示している)の方へ直線を引き、この直線を第一直線1とする。次に、眉間Aを始点として口角Bと同じ側にある耳垂先端C(図1では、顔の左側の口角方向に第一直線1を設けたので、耳垂先端Cは顔の左側を選択している)の方へ直線を引き、この直線を第二直線2とする。図1に示すように、第一直線1、及び第二直線2は角度領域Rを形成する。この角度領域R内にあり、且つ、同一直線上にある頬、フェイスライン、及び首の各位置を選択する。そして、この直線上にあって、頬Dに位置する点を始点とし、首Fに位置する点を終点とする基準線3を設定する。このとき、フェイスラインEは、基準線3上の最も暗い点に位置し、フェイスラインEと頬Dとの距離L、及びフェイスラインEと首Fの距離L´が夫々1〜5cmの範囲内となるように選択される。従来のファンデーションの選択方法による評価が信頼性に欠ける理由の一つとして、フェイスラインには陰影が生じ易く、これを考慮して色の測定を行っていないことが挙げられる。そこで、本発明者らは、フェイスラインを上記のように特定し、この後における色の測定に影響を及ぼさないようにした。このように、頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置を選択した後、各位置におけるL空間に基づく色情報(後に詳述する)を抽出した。
ここで、L空間に基づく色情報に関して説明する。図2は、L空間に関する説明図である。図2(a)は、色相環を表したものであり、図2(b)は、L空間を表したものである。物体の色を表すのに用いられる表色系として、L表色系がある。L表色系では、明度をL、色相と彩度とを示す色度をa、bで表す。図2(a)に示すように、a、bは円環状の色相環で表すことができ、色の方向を示す。+aは、赤方向であり、−aは、緑方向を示す。+bは、黄方向であり、−bは、青方向を示す。図2(b)に示すように、Lは、a軸、及びb軸を含む色相環に対して垂直方向に位置する。+Lは、白方向(明)であり、−Lは、黒方向(暗)である。従って、図2(a)の色相環は、図2(b)の三次元空間を表す球体を中央から水平方向に切ったときの切断面に相当することとなる。
図3は、フェイスラインから頬の色方向、及びフェイスラインから首の色方向が形成する角度に関するグラフである。図3(a)は、Lとaとの関係を表したものであり、図3(b)は、Lとbとの関係を表したものであり、図3(c)は、L空間における三次元上の角度を表したものである。ここで、上記の手順により選択される頬、フェイスライン、及び首の各位置を、頬d、フェイスラインe、及び首fとし、L、a、bの各値を(L,a,b)とした場合、頬、フェイスライン、及び首の各座標は、頬d(L1,a1,b1)、フェイスラインe(L2,a2,b2)、首f(L3,a3,b3)と表される。図3(a)及び(b)では、フェイスラインeから頬dへの色方向と、フェイスラインeから首fへの色方向とが角度を形成していることが示されている。しかし、図3(a)及び(b)は、Lとa、及びLとbという二点の要素のみで色方向の二次元的な角度を表しており、L、a、及びbの全ての要素によって表される色方向の三次元的な角度は表されていない。そこで、図3(a)及び(b)を合成し、図2(b)で示したL空間(三次元空間)におけるフェイスラインから頬の色方向、及びフェイスラインから首の色方向が形成する角度を求める。図3(c)は、図3(a)及び(b)の合成結果である。図3(c)によれば、フェイスラインeから頬dへの色方向と、フェイスラインeから首fへの色方向とによって三次元上の角度Mが形成されることが理解される。
図4は、メイクアップの仕上がりに対する目視的評価値と2つの色方向がなす角度との相関性を示すグラフである。図4(a)は、美肌スコアと三次元上の角度(M)との相関性を示すグラフであり、図4(b)は、美肌スコアと三次元上の角度の常用対数値(logM)との相関性示すグラフである。「(1)目視的評価試験」にて使用した40枚の画像について、頬、フェイスライン、及び首の各位置におけるL空間に基づく色情報から、上記の角度Mに相当する三次元上の角度を夫々求めた。そして、横軸を三次元上の角度とし、縦軸を目視的評価試験において得た美肌スコアの値とした場合、図4(a)に示すグラフが得られた。図4(a)のグラフは、一見すると、美肌スコアと三次元上の角度との相関性が低いように見える。そこで、美肌スコア、及び三次元上の角度の相関性の有無を確実に理解するため、「ヴェーバー・フィヒナーの法則」(感覚量は物理量の対数に比例する)に基づいて三次元上の角度の常用対数値を求め、この常用対数値(横軸)と美肌スコアとの相関性を調べた。その結果、図4(b)に示すグラフが得られた。図4(b)のグラフから、最小二乗法により美肌スコアの近似直線Nを求めると、美肌スコア、及び三次元上の角度の常用対数値には高い相関性があることが判明した。
[メイクアップの仕上がりと2つの色方向がなす角度との関連性]
上記の検証試験によって、美肌スコア、及び三次元上の角度の常用対数値には相関性があることが分かった。次に、この結果を踏まえて、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向との三次元上の角度によって、メイクアップの美しさが決定されるのかについて検証した。
(1)メイクアップの仕上がりと2つの色方向がなす角度との関連性確認試験
上記と同様に、メイクアップ製品としてファンデーションを使用した。まず、4名の被験者に色の異なる3種のファンデーションを塗布し、顔(首も含む)をデジタルカメラで撮影し、合計12枚(4名×3種=12枚)の撮影画像を用意し、これを基準画像とした。この各基準画像に対して、次の二通りの操作を加えた。一つは、基準画像における首の色を変えて、フェイスラインから頬への色方向、及びフェイスラインから首への色方向がなす角度を変更する操作(つまり、各基準画像におけるフェイスラインから頬への色方向、及びフェイスラインから首への色方向がなす角度を狭める、又は、広げる操作を意味する。)であり、もう一つは、基準画像における頬の色を明るくする、または、暗くする操作(つまり、色方向のベクトルの長さを変更することを意味する。)である。この二通りの操作を組み合わせた画像を作成した。上記の二通りの操作により、1つの基準画像につき9種の画像が得られるため、合計で108枚(12枚×9種=108枚)の画像が得られる。これらの画像を被験者以外の6名の評価者が評価し、点数をつけた。回答項目と点数とは以下のように設定した。
(イ)ファンデーションの色が被験者に合っている(つまり、美しい仕上がりである):+1
(ロ)ファンデーションの色が被験者に合っていない(つまり、美しい仕上がりでない)」:−1
(ハ)どちらとも言えない:0
6名の評価者の点数を集計し、各画像に対する点数の平均値(美肌スコア)を求めた。
(2)試験結果
操作を加えた画像を2つの観点から以下のようにグループ分けした。1つ目は、角度の変化に着目した場合のグループ分けである。
(A1):フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向とが一致する傾向にあった画像。つまり、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向とがなす三次元上の角度が小さかった画像。
(A2):フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向とが乖離する傾向にあった画像。つまり、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向とがなす三次元上の角度が大きかった画像。
(A3):(A1)及び(A2)のどちらとも言えない画像。
2つ目は、頬の色の明るさの変化に着目した場合のグループ分けである。
(B1):ベクトルの長さが基準画像より長くなった画像。つまり、明るい画像。
(B2):ベクトルの長さが基準画像より短くなった画像。つまり、暗い画像。
(B3):(B1)及び(B2)のどちらとも言えない画像。
図5は、メイクアップの仕上がりと2つの色方向がなす角度との関連性を示すグラフである。操作を加えた画像について、基準画像からの美肌スコアの増減量を求めた。そして、(A1)〜(A3)、及び(B1)〜(B3)に属する各グループの美肌スコアの平均増減量を求めた。図5に示されるように、角度の変化に着目した場合の(A1)〜(A3)において、(A1)グループと(A2)グループとでは、美肌スコアの平均増減量が全く正反対の結果となった。一方、明るさの変化に着目した場合の(B1)〜(B3)において、(B2)グループは美肌スコアの平均増減量がマイナスの値となっているため、頬の色を暗くすると「美しくない」と判断される傾向にあると考えられる。一方、(B1)グループの平均増減量はプラスの値であるものの、決して大きいとは言えない。これらの結果から、ファンデーションの仕上がりの美しさを決定するのは、頬(顔)が過剰に暗い場合を除き、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向とがなす三次元上の角度であることが明らかとなった。
以上より、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向との三次元上の角度が小さいほど、ファンデーションの仕上がりが美しい、つまり、被験者に合っていると判定することができる。従って、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向との三次元上の角度から、ファンデーションの仕上がりの美しさについての評価が可能となる。本発明者らは、これらの新規な知見に基づいて、信頼性に優れたメイクアップの評価方法、メイクアップの評価システム、及びメイクアップ製品の推奨方法を創作するに至った。以下、本発明に関して説明する。
<メイクアップの評価システム>
図6は、本発明のメイクアップの評価システム100(以下、単に「評価システム100」と称する。)のブロック図である。評価システム100は、メイクアップ後の顔の画像を取得する画像取得手段10と、頬、フェイスライン、及び首の各位置において、L空間に基づく色情報を抽出する色情報抽出手段20と、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向との三次元上の角度に関する情報を求める角度演算手段30と、角度に関する情報に基づいて、メイクアップの仕上がりを評価する評価手段40とを備える。また、任意の構成要件として、評価手段40による評価に基づいて使用者に最適なメイクアップ製品を推奨する際、その内容が表示される表示手段50を備えることができる。
[メイクアップの評価システム実行前の準備]
評価システム100を使用する際、使用者が評価を希望するメイクアップ製品を用いて、予め使用者にメイクを施す。本実施形態では、メイクアップ製品としてファンデーションを使用する。ここで、使用者に塗布するファンデーションの色は、L空間に基づく下記式(1)
∠H°=tan−1(b/a) ・・・ (1)
で表される色相角(∠H°)が、0〜90°の範囲に設定されるものを使用する。上記式(1)において、a≧0、b≧0と設定される。このように設定した場合、使用者に塗布されるファンデーションの色は、人の肌色(素肌の色)に近い赤〜黄系統の色が選択されることとなる。このため、使用者に塗布したファンデーションの色が使用者に合っているかについて正確に評価することができる。
[画像取得手段]
画像取得手段10は、メイクアップ後の顔の画像を取得する。画像取得手段は、カメラ11からの画像情報を受け取るように構成されており、カメラ11により撮影された使用者の画像を取得する。まず、ファンデーションを塗布した後の使用者の顔(首も含む)をカメラ11で撮影し、評価システム100内に取り込む。カメラ11は、評価の際に使用する頬、フェイスライン、及び首が明確に判別することが可能な解像度を有するものであれば特に限定されず、例えば、デジタルカメラや、スマートフォン等のようなカメラ機能を有する電子機器が挙げられる。撮影を行う環境については、使用者に合うファンデーションかどうかを評価することが目的であるから、できるだけ日常の環境に近いことが望ましいが、照度と演色性とがある程度あれば、色温度等の影響を考慮せず実施可能である。また、光源の位置は日常的な照明環境に近づけるため、顔よりも高い位置にあるか、若しくは顔と同じ高さになるように調整される。
上記のように撮影環境を整えているため、一般的なデジタルカメラであれば撮影した画像は何らの処理を施さなくても評価に用いることは可能であるが、一定レベル以上の正確な評価を行うためには、頬から首にかけて5以上の領域に分割された細分画像を使用することが好ましい。これにより、頬、フェイスライン、及び首の境界が明瞭となる。また、細分画像にノイズやばらつきが生じた場合、画像取得手段10は、画像の平滑化処理を行って低減することが可能である。これにより、ファンデーションの色が使用者に合っているかについての正確な評価をすることができる。
[色情報抽出手段]
色情報抽出手段20は、頬、フェイスライン、及び首の各位置において、L空間に基づく色情報を抽出する。頬、フェイスライン、及び首の各位置は、図1を参照して説明したとおりの手順にて選択する。頬、フェイスライン、及び首の各位置が適切に選択されたら、色情報抽出手段20は、各位置におけるL空間に基づく色情報を抽出する。すなわち、頬、フェイスライン、及び首の各位置の明度L、及び色度a、bの値を抽出する。
[角度演算手段]
角度演算手段30は、色情報抽出手段20によって得られた頬、フェイスライン、及び首の各位置におけるL空間に基づく色情報から、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向との三次元上の角度に関する情報を求める。このとき、求めた三次元上の角度をそのまま評価に用いることは可能であるが、より正確な評価を得るため、三次元上の角度から常用対数値を夫々求める。ここで、角度演算手段30によって求められる常用対数値を「評価値」と称することとする。
[評価手段]
評価手段40は、角度(三次元上の角度)に関する情報に基づいて、メイクアップの仕上がりを評価する。評価手段40は、角度演算手段30によって求められた角度に関する情報(評価値)を閾値と比較する。本実施形態の場合、閾値として1.2が設定され、評価値が1.2以下であれば、使用者に塗布したファンデーションの色は使用者に合っている(つまり、美しい仕上がりである)と評価される。一方、評価値が1.2より大きい場合、使用者に塗布したファンデーションの色は使用者に合っていない(つまり、美しい仕上がりではない)と評価される。閾値は、メイクアップの条件、評価方法等により、適切な値が選択される。評価値は、評価システム100に接続されたディスプレイ等の表示手段50に表示することができる。
[メイクアップ製品の推奨]
評価手段40によって、ファンデーションの色が使用者に合っていないと評価された場合(つまり、評価値が1.2より大きい場合)、使用者に最適なメイクアップ製品が推奨される。この推奨は、化粧品販売員等によるカウンセリングの他、評価システム100がアクセス可能なデータベース60、あるいは、ネットワーク上のクラウドデータ70等を参照して行うことができる。使用者に最適なファンデーションを推奨する際には、上記の評価値と合わせて、その内容を表示手段50に表示することができる。このように、本発明の評価システム100であれば、感覚的に色を選択することがない定量的な評価方法であるため、化粧品販売員等の経験や能力によらず、客観的に正確な評価がなされるため、評価の信頼性が向上し、最適なメイクアップ製品を顧客に推奨することができる。
<メイクアップの評価方法>
本発明のメイクアップの評価方法は、上記のメイクアップの評価システムを用いて、正確なメイクアップの評価をするものである。図7は、本発明のメイクアップの評価方法のフローチャートである。図7中に示す記号「S」はステップを意味する。以下、ステップ毎に詳細に説明する。
[準備工程]
最初に、使用者が評価を希望するメイクを使用者に施す(ステップ1)。本実施形態では、メイクアップ製品としてファンデーションを使用する。ここで、使用者に塗布するファンデーションの色は、L空間に基づく下記式(1)
∠H°=tan−1(b/a) ・・・ (1)
で表される色相角(∠H°)が、0〜90°の範囲に設定されるものを使用する。上記式(1)において、a≧0、b≧0と設定される。このように設定した場合、使用者に塗布されるファンデーションの色は、人の肌色(素肌の色)に近い赤〜黄系統の色が選択されることとなる。このため、ファンデーションの色が使用者に合っているかについて正確に評価することができる。ステップ1の工程を「準備工程」とする。
[画像取得工程]
次に、画像取得手段10でメイクアップ後の顔の画像を取得する。まず、使用者の顔(首も含む)をカメラ11で撮影し、評価システム100内に取り込む(ステップ2)。撮影画像は、頬から首にかけて5以上の領域に分割された細分画像であることが好ましい。細分画像は、必要に応じて平滑化処理が行われる(ステップ3)。ステップ3の工程により、ファンデーションの色が使用者に合っているかについての評価を容易に行うことができ、且つ、より正確な評価をすることができる。ステップ2〜3(又は、ステップ2のみ)の工程を「画像取得工程」とする。
[色情報抽出工程]
次に、色情報抽出手段20で頬、フェイスライン、及び首の各位置において、L空間に基づく色情報を抽出する。まず、図1を参照して説明したとおり、使用者の眉間Aと口角Bとを結ぶ第一直線1と、眉間Aから耳垂先端Cを結ぶ第二直線2とを設定し、第一直線1と第二直線2とによって角度領域Rを形成する(ステップ4)。続いて、頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置が、角度領域R内に存在するように、頬D、フェイスラインE、及び首Fを選択する(ステップ5)。このとき、頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置が同一直線上にあるか判断する(ステップ6)。頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置が同一直線上にない場合(ステップ6;NO)、ステップ5へ戻り、再び頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置を選択する。頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置が同一直線上にある場合(ステップ6;YES)、この直線上にあって、頬Dに位置する点を始点とし、首Fに位置する点を終点とする基準線3を設定する(ステップ7)。次に、フェイスラインEが基準線3において最も暗い位置であるか判断する(ステップ8)。フェイスラインEが基準線3において最も暗い位置でない場合(ステップ8;NO)、ステップ5へ戻り、再び頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置を選択する。フェイスラインEが基準線3において最も暗い位置である場合(ステップ8;YES)、フェイスラインEと頬Dとの距離L、及びフェイスラインEと首Fとの距離L´が夫々1〜5cmの範囲内であるか判断する(ステップ9)。フェイスラインEと頬Dとの距離L、及びフェイスラインEと首Fとの距離L´が夫々1〜5cmの範囲内でない場合(ステップ9;NO)、ステップ5へ戻り再び頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置を選択する。フェイスラインEと頬Dとの距離L、及びフェイスラインEと首Fの距離L´が夫々1〜5cmの範囲内である場合(ステップ9;YES)、頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置において、L空間に基づく色情報を抽出し(ステップ10)、次の角度演算工程へと進む。ステップ4〜10の工程を「色情報抽出工程」とする。
[角度演算工程]
上記の色情報抽出工程(ステップ4〜10)で得られた頬D、フェイスラインE、及び首Fの各位置におけるL空間に基づく色情報に基づいて、角度演算手段30は、フェイスラインEから頬Dへの色方向と、フェイスラインEから首Fへの色方向との三次元上(L空間)の角度を求める(ステップ11)。ステップ11で得られたフェイスラインEから頬Dへの色方向と、フェイスラインEから首Fへの色方向との三次元上の角度は、そのまま評価の対象として用いることは可能であるが、より正確な評価をするため、常用対数値に変換される(ステップ12)。この常用対数値が評価値となる。ステップ11〜12の工程を「角度演算工程」とする。
[評価工程]
最後に、評価手段40によりメイクアップの仕上がりを評価する。角度演算工程(ステップ11〜12)で得られた評価値を閾値と比較する(ステップ13)。評価値が閾値以下の場合(ステップ13;YES)、準備工程(ステップ1)で使用者に塗布したファンデーションの色が使用者に合っている(つまり、美しい仕上がりである)と評価され、一連の評価工程は終了する。評価値が閾値以下でない場合(ステップ13;NO)、使用者に塗布したファンデーションの色は使用者に合っていない(つまり、美しい仕上がりではない)と評価される。ステップ13を「評価工程」とする。この評価結果は、表示手段50に表示することができる。
評価工程(ステップ13)で、使用者に塗布したファンデーションの色は使用者に合っていないと評価された場合、使用者に最適なメイクアップ製品が推奨される(ステップ14)。この推奨は、化粧品販売員等によるカウンセリングの他、評価システム100がアクセス可能なデータベース60、あるいは、ネットワーク上のクラウドデータ70等を参照して行うことができる。使用者に最適なファンデーションを推奨する際には、上記の評価結果と合わせて、その内容を表示手段50に表示することができる。このように、本発明のメイクアップの評価方法であれば、感覚的に色を選択することがない定量的な評価方法であるため、化粧品販売員等の経験や能力によらず、客観的に正確な評価がなされるため、評価の信頼性が向上し、最適なメイクアップ製品を使用者に推奨することができる。
<メイクアップ製品の推奨方法>
本発明のメイクアップ製品の推奨方法は、上記のメイクアップの評価方法を用いて、使用者に適した(つまり、使用者を美しくメイクアップすることができる)メイクアップ製品を選択し、推奨するものである。図8は、本発明のメイクアップ製品の推奨方法を実行するシステムのブロック図である。以下、詳細に説明する。
[準備工程]
本発明のメイクアップ製品の推奨方法において、上記「メイクアップの評価方法」で説明した準備工程は、コンピュータ又はネットワーク上で行われる仮想的なメイクアップとして実行される。本実施形態では、メイクアップ製品としてファンデーションを使用する。初めに、使用者の顔(首も含む)をカメラ等(図示せず)で撮影し、撮影画像を評価システム100に接続されたコンピュータ80に取り込む。コンピュータ80は、評価システム100を構成するコンピュータと同一のものであってもよい。準備工程は、化粧品販売店等で直接使用者を撮影し、その画像をコンピュータ80に取り込むようにしても良く、また、使用者が自宅等で撮影した自分の顔の画像を電子メールで化粧品販売店等に送信し、その画像をコンピュータ80に取り込むようにしても良い。次に、仮想的なメイクアップとして、使用者が希望する、あるいは、化粧品販売員等が推奨するファンデーションの色を用いて使用者の画像を処理(着色)する。すなわち、使用者のシミュレーション画像を作成する。
[仮想的なメイクアップの評価方法]
上記にて説明したメイクアップの評価方法を利用して、この仮想的なメイクアップが使用者に適しているかについて評価する。上記の準備工程で得られた仮想的なメイクアップを使用者に施したシミュレーション画像が画像取得手段10に取り込まれる。次に、色情報抽出手段20によって、使用者の頬、フェイスライン、及び首の各位置におけるL空間に基づく色情報が抽出される。続いて、角度演算手段30によって、色情報抽出手段20が抽出した色情報により、フェイスラインから頬への色方向と、フェイスラインから首への色方向との三次元上の角度を求め、当該角度から常用対数値(評価値)を求める。そして、評価手段40によって、上記の仮想的なメイクアップが使用者に合っているか否か(つまり、美しい仕上がりであるか否か)を評価する。
[メイクアップ製品の推奨]
評価手段40によって、仮想的なメイクアップが使用者に合っていないと評価された場合、使用者に最適なメイクアップ製品が推奨される。この推奨は、化粧品販売員等によるカウンセリングの他、評価システム100がアクセス可能なデータベース60、あるいは、ネットワーク上のクラウドデータ70等を参照して行うことができる。使用者に最適なファンデーションを推奨する際には、上記の評価結果と合わせて、その内容を表示手段50に表示することができる。
本発明のメイクアップ製品の推奨方法では、評価手段40による評価から、使用者に最適なメイクアップ製品を推奨した場合、その推奨したメイクアップ製品でメイクアップした顔のシミュレーション画像をコンピュータ80で作成することができる。コンピュータ80で作成したシミュレーション画像は、ディスプレイに表示させて目視で確認したり、再度、評価システム100で評価することができる。また、評価手段40による評価が良好であっても、今回使用したメイクアップ製品以外で使用者が興味のあるメイクアップ製品でメイクアップした場合のシミュレーション画像をコンピュータ80で作成し、ディスプレイに表示させて目視で確認したり、再度、評価システム100で評価することができる。
本発明のメイクアップ製品の推奨方法における評価(評価に基づいて推奨するメイクアップ製品を含む)の伝達方法としては、化粧品販売店等での販売員による使用者への直接のアドバイスだけでなく、電子メールや郵送によって通知することもできる。このように、本発明のメイクアップ製品の推奨方法は、使用者が化粧品販売店等に実際に足を運ばなくても評価することができ、使用者にとって利便性の高い推奨方法となる。また、感覚的に色を選択することがない定量的な評価方法であるため、化粧品販売員等の経験や能力によらず、客観的に正確な評価がなされるため、評価の信頼性が向上し、最適なメイクアップ製品を使用者に推奨することができる。
本発明は、メイクアップ製品として、特に、ファンデーションの選択・推奨を有効に行うために利用されるが、ファンデーション下地や日焼け止め等、顔に塗布して肌色と合わせることを目的とする他のメイクアップ製品の選択・推奨においても利用することができる。
1 第一直線
2 第二直線
3 基準線
10 画像取得手段
11 カメラ
20 色情報抽出手段
30 角度演算手段
40 評価手段
100 メイクアップの評価システム
A 眉間
B 口角
C 耳垂先端
D 頬
E フェイスライン
F 首
M 三次元上の角度
R 角度領域

Claims (10)

  1. 顔をメイクアップする準備工程と、
    メイクアップ後の顔の画像を取得する画像取得工程と、
    頬、フェイスライン、及び首の各位置において、L空間に基づく色情報を抽出する色情報抽出工程と、
    前記フェイスラインから前記頬への色方向と、前記フェイスラインから前記首への色方向との三次元上の角度に関する情報を求める角度演算工程と、
    前記角度に関する情報に基づいて、メイクアップの仕上がりを評価する評価工程と、
    を包含するメイクアップの評価方法。
  2. 前記準備工程において、L空間に基づく下記式(1)
    ∠H°=tan−1(b/a) ・・・ (1)
    (ここで、a≧0、b≧0である。)
    で表される色相角(∠H°)が、0〜90°の範囲に設定されるように前記顔をメイクアップする請求項1に記載のメイクアップの評価方法。
  3. 前記画像取得工程において、前記画像は、前記頬から前記首にかけて5以上の領域に分割された細分画像として取得される請求項1又は2に記載のメイクアップの評価方法。
  4. 前記画像取得工程において、前記画像は平滑化処理される請求項1〜3の何れか一項に記載のメイクアップの評価方法。
  5. 前記色情報抽出工程において、眉間を始点とする口角方向の直線である第一直線と、眉間を始点とする耳垂先端方向の直線である第二直線とが角度領域を形成し、
    前記頬、前記フェイスライン、及び前記首の各位置が前記角度領域内に存在し、且つ、同一直線上に位置し、さらに、前記頬に位置する点を始点とし、前記首に位置する点を終点とする基準線が設定されるように前記頬、前記フェイスライン、及び前記首の各位置が選択される請求項1〜4の何れか一項に記載のメイクアップの評価方法。
  6. 前記色情報抽出工程において、前記フェイスラインは、前記基準線上の最も暗い位置にあり、前記頬、及び前記首の位置は、前記フェイスラインの位置から1〜5cmの範囲内に夫々位置するように設定される請求項1〜5の何れか一項に記載のメイクアップの評価方法。
  7. 前記角度演算工程において、前記角度に関する情報として前記角度の常用対数値を求める請求項1〜6の何れか一項に記載のメイクアップの評価方法。
  8. 前記評価工程において、前記角度の常用対数値が所定の閾値以下となる場合を仕上がり良好と判定する請求項7に記載のメイクアップの評価方法。
  9. 顔に施したメイクアップを評価するメイクアップの評価システムであって、
    メイクアップ後の顔の画像を取得する画像取得手段と、
    頬、フェイスライン、及び首の各位置において、L空間に基づく色情報を抽出する色情報抽出手段と、
    前記フェイスラインから前記頬への色方向と、前記フェイスラインから前記首への色方向との三次元上の角度に関する情報を求める角度演算手段と、
    前記角度に関する情報に基づいて、メイクアップの仕上がりを評価する評価手段と、
    を備えるメイクアップの評価システム。
  10. 請求項1〜8の何れか一項に記載のメイクアップの評価方法を利用して、使用者に適したメイクアップ製品を推奨するメイクアップ製品の推奨方法であって、
    前記準備工程は、コンピュータ又はネットワーク上で行われる仮想的なメイクアップとして実行され、
    前記評価工程による評価に基づいて、使用者に適したメイクアップ製品を選択するメイクアップ製品の推奨方法。
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