JP6162467B2 - ガス浄化装置及びガス浄化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガス浄化装置及びガス浄化方法に関するものである。
生ごみ、下水汚泥、養鶏・養豚場等の糞尿、ゴミ焼却炉等から、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、トリメチルアミン、酢酸、メタン、煤塵等の悪臭物質、有害物質、煤塵等の不要物質が発生することがある。発生した不要物質は様々な方法によって除去されている。
不要物質を低コストで除去する方法として、スラグと粘土を混合し、焼成したセラミックス多孔質体に酸性物質や塩基性物質を担持させ、そのセラミックス多孔質体に不要物質を含むガスを通す方法が知られている(特許文献1)。
特許第4063316号公報
しかし、特許文献1に記載のガス浄化方法では、不要物質の除去が不充分であり、さらなる除去性能の向上が求められていた。
そこで、本発明は、ガス中の不要物質を低コストで充分に除去できるガス浄化装置及びガス浄化方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
[1]ガスに水を噴霧する噴霧手段を2個以上有する第1浄化部と、ガスを浄化する多孔質セラミックス焼成体製の吸着手段を備えた第2浄化部とを具備し、前記第1浄化部と前記第2浄化部とが接続されており、少なくとも2個の前記噴霧手段は、噴霧方向が異なるガス浄化装置。
[2]前記噴霧手段で噴霧される水は、酸性物質、塩基性物質、及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載のガス浄化装置。
[3]前記多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度が0.3〜1.5g/mlである、[1]又は[2]に記載のガス浄化装置。
[4]前記多孔質セラミックス焼成体が、亀裂を有し、マイクロメートルオーダーの気孔、及びナノメートルオーダーの気孔を有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のガス浄化装置。
[5]前記第2浄化部が、前記多孔質セラミックス焼成体に水を供給する水供給手段を備え、前記水供給手段で供給される水が、界面活性剤を含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のガス浄化装置。
[6]ガス中に2か所以上から水を噴霧する第1浄化工程と、ガスを多孔質セラミックス焼成体で浄化する第2浄化工程とを有し、前記第1浄化工程において、少なくとも2か所の噴霧方向が異なる、ガス浄化方法。
[7]前記第1浄化工程で噴霧される水は、酸性物質、塩基性物質、及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[6]に記載のガス浄化方法。
[8]前記多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度が0.3〜1.5g/mlである、[6]又は[7]に記載のガス浄化方法。
[9]前記多孔質セラミックス焼成体として、亀裂を有し、マイクロメートルオーダーの気孔、及びナノメートルオーダーの気孔を有するものを用いる、[6]〜[8]のいずれか一項に記載のガス浄化方法。
[10]前記第2浄化工程では、前記多孔質セラミックス焼成体に水を供給し、前記多孔質セラミックス焼成体に供給する水が、界面活性剤を含む、[6]〜[9]のいずれか一項に記載のガス浄化方法。
本発明のガス浄化装置及びガス浄化方法によれば、ガス中の不要物質を低コストで充分に除去できる。
本発明のガス浄化装置の一例を示す模式図である。
(ガス浄化装置)
以下、本発明の一実施形態のガス浄化装置について説明する。
本実施形態のガス浄化装置は、悪臭物質、有害物質及び煤塵よりなる群から選ばれる少なくとも1つの不要物質を含むガスを浄化する装置であり、第1浄化部と、第1浄化部の下流側に設けられた第2浄化部とを具備する。
<第1浄化部>
第1浄化部は、不要物質を含むガスに水を噴霧する噴霧手段を2個以上有する。噴霧手段としては、水を噴霧できれば特に限定されず、例えば、スプレーノズルやジェットノズルなどが挙げられる。ガスと水との接触機会を高めるためには、各々の噴霧手段の先端の方向が異なることが好ましい。
噴霧手段から供給される水の噴霧パターンは、ガスとの接触面積を大きくするために、環状、面状または帯状が好ましい。
後述するように、噴霧手段で噴霧される水には、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれてもよい。
第1浄化部では、噴霧手段を用いてガス中に水を噴霧することにより、不要物質に含まれる煤塵を水に捕捉させることができ、悪臭物質及び有害物質のうちの水溶性成分を水に溶け込ませることができる。特に、第1浄化部は噴霧手段を2個以上有するため、2ヵ所以上から水を噴霧させることができる。これにより、様々な方向に無秩序に且つ高速に乱れ飛ぶ水滴が存在する空間中にガスが通過することになるため、ガスと水の接触機会を増加させることができ、水によって主に煤塵及び水溶性成分をより捕捉できる。
煤塵及び水溶性成分の少なくとも一方を捕捉した水を第1浄化部から排出して廃棄することにより、ガスから煤塵及び水溶性成分の少なくとも一方を除去できる。
第1浄化部では、噴霧した水を回収し、循環ポンプを用いて、再び、噴霧手段に供給しても構わない。
また、第1浄化部では、噴霧した水を一定量貯水し、その貯水された水に、第1浄化部に供給されるガスを通し、バブリングさせて、不要物質を捕捉してもよい。この場合、貯水された水を通過したガスは、噴霧した水に接触することになる。
<第2浄化部>
本実施形態における第2浄化部は、第1浄化部を経たガスを浄化する多孔質セラミックス焼成体製の吸着手段を備える。また、第2浄化部は、不要物質の除去率が高くなることから、多孔質セラミックス焼成体に水を供給するための水供給手段を有することが好ましい。
[吸着手段]
第2浄化部における吸着手段の配置は特に限定されないが、ガスとの接触機会が増えることから、ガスの進行方向に対して平行でない方向に配置することが好ましい。さらには、吸着手段を層状とし、ガスの進行方向に対して垂直に配置することがより好ましい。また、層状の吸着手段は複数配置してもよい。層状の吸着手段を複数配置した場合には、吸着手段の層と層の間に空気層を形成してもよいし、他のガス浄化手段を配置してもよい。
また、第2浄化部においては、水供給手段が設置されている部分を除いて、多孔質セラミックス焼成体で充填してもよい。
吸着手段を構成する多孔質セラミックス焼成体は、マイクロメートルオーダーの気孔及びナノメートルオーダーの気孔を有するものである。また、これらの気孔が連通しているものが好ましい。
より具体的には、多孔質セラミックス焼成体に形成されている気孔の大きさが、孔径1nm以上1000nm未満のナノメートルオーダーの気孔及び孔径1μm以上1000μm未満のマイクロメートルオーダーの気孔を有するものである。また、この範囲以外のミリメートルオーダーの気孔、またそれ以外の大きさの気孔を有していてもよい。
気孔の孔径は、多孔質セラミックス焼成体の原料の種類や、焼成条件を組み合わせることにより調節できる。気孔の孔径とは、気孔の長径を指す。ミリメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックス焼成体をカット(板状物の場合はその厚さ方向に沿ってカット)し、スケールを用いて測定される値である。ナノメートルオーダーの気孔の孔径及びマイクロメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックス焼成体をカット(板状物の場合はその厚さ方向に沿ってカット)し、電子顕微鏡を用いて測定される値である。
多孔質セラミックス焼成体がマイクロメートルオーダーの気孔及びナノメートルオーダーの気孔を有すると、後述する好ましい見かけ密度や飽和含水率にしやすくなる。そのため、ガスとの接触面積が増加して、不要物質の除去性能がより高くなる。
多孔質セラミックス焼成体は、多孔質セラミックス焼成体用原料を混合した後、乾燥せずに焼成して得たものであることが好ましい。ここでいう「乾燥」とは、含水率を1質量%以下にする操作のことである。
乾燥せずに焼成することにより、焼成時に、混合物に含まれる水分が短時間で大量に蒸発し、多孔質セラミックス焼成体に亀裂が入る。この焼成時の亀裂により、得られる多孔質セラミックス焼成体の内部にまで、焼成時に熱が伝わり、マイクロメートルオーダーの気孔やナノメートルサイズの気孔をより形成できる。さらに、得られた多孔質セラミックス焼成体の亀裂を通して、多孔質セラミックス焼成体に供給される水や水に含まれる酸性物質等、さらにはガス中の不要物質が多孔質セラミックス焼成体の内部に入り込みやすくなり、さらに除去性能を向上できる。
多孔質セラミックス焼成体の亀裂の大きさは、混合物の組成、焼成速度、焼成時間等により調整できる。
多孔質セラミックス焼成体の形状は、板状物、柱状物、球状物、塊状物、粒状物のいずれであってもよいが、ガスの流れに対する抵抗を小さくし、かつ、ガスと多孔質セラミックス焼成体の接触機会を容易に増やせることから、粒状物が好ましい。
多孔質セラミックス焼成体の粒状物の粒子径は5cm以下であることが好ましく、3cm以下であることがより好ましい。多孔質セラミックス焼成体の粒状物の粒子径が前記上限値以下であれば、不要物質との接触機会をより多くできる。
一方、多孔質セラミックス焼成体の粒状物の粒子径は、ガスの流れに対して抵抗が小さくなることから、1mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。
多孔質セラミックス焼成体の粒状物は、様々な大きさの粒状物を用意し、任意の割合で配合して得てもよい。なお、粒子径は篩分けにより測定される値であり、例えば5mm超10mm以下の粒状物とは、目開き10mmの篩を通過し、目開き5mmの篩を通過できないものを意味する。
なお、粒状物が大きく篩の入手が困難な場合は、粒状物の長辺をノギス等で測定し、粒子径としてもよい。
多孔質セラミックス焼成体は、見かけ密度が0.3〜1.5g/mlであることが好ましい。見かけ密度の上限については、1.1g/ml以下であることがより好ましく、0.8g/ml以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、多孔質セラミックス焼成体の強度を保ちつつ、多孔質セラミックス焼成体内の気孔が多くなる。そのため、多孔質セラミックス焼成体の表面積が大きくなり、ガス中の不要物質との接触機会を増大させることができる。
上記の見かけ密度は、「土壌標準分析・測定法」(博友社)の中の三相分布・容積重(実容積法)にて測定される乾土質量(g)より求められる容積重(仮比重、g/ml)である。
なお、多孔質セラミックス焼成体が大きいときの見かけ密度の単位は、実施例で説明する測定方法より、「g/cm」となる。
多孔質セラミックス焼成体は、飽和含水率が15〜100質量%であることが好ましい。飽和含水率の下限については、30質量%以上であることがより好ましい。飽和含水率が上記の範囲内であれば、多孔質セラミックス焼成体の強度を保ちつつ、多孔質セラミックス焼成体内の気孔が多くなる。そのため、多孔質セラミックス焼成体の表面積が大きくなり、ガス中の不要物質との接触機会を増大させることができる。
なお、多孔質セラミックス焼成体の飽和含水率は、多孔質セラミックス焼成体の気孔率とみなすこともできる。
また、多孔質セラミックス焼成体には、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が担持されてもよい。
具体的な酸性物質、塩基性物質、界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
酸性物質としては、酸化チタン、二酸化けい素、硫酸アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛などの無機化合物、アクリル酸などのカルボキシル基含有化合物やスルホン酸基含有化合物、リン酸系化合物などの有機化合物が挙げられる。
塩基性物質としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化バリウム等の無機化合物、ポリアミン系化合物、ジシアンジアミド系化合物、第四級アンモニウム系化合物などの有機化合物が挙げられる。
なお、酸化亜鉛や酸化アルミニウムなどの両性物質は、処理の対象物質が酸性物質である場合には塩基性物質となり、処理の対象物質が塩基性物質の場合には酸性物質となる。
界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン界面活性剤、アミン塩型、第4級アンモニウム塩型などのカチオン系界面活性剤、脂肪酸エチレンオキサイド付加物などのポリエチレングリコール型の非イオン界面活性剤、グリセロールの脂肪酸エステルなどの多価アルコール型の非イオン界面活性剤、ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記の酸性物質、塩基性物質、界面活性剤は臭いを有さないものが好ましく、例えば、両性界面活性剤ではアルキル部の炭素数が10以上で、純度の高いものが好ましい。
酸性物質、塩基性物質、界面活性剤は、複数のものを組み合わせて使用してもよいが、酸性物質と塩基性物質を併用する場合にはこれらが結合しないように界面活性剤等で均一な分散状態を保つようにすることが好ましい。
多孔質セラミックス焼成体の製造方法の一例について説明する。ただし、多孔質セラミックス焼成体の製造方法は、下記例の製造方法に限定されるものではない。
本例の多孔質セラミックス焼成体の製造方法は、多孔質セラミックス焼成体用の原料を混合して混合物(以下、単に「混合物」ということがある)を調製し(混合工程)、該混合物を成形して成形体を作製し(成形工程)、該成形体を焼成して多孔質セラミックス焼成体を得る(焼成工程)方法である。
混合工程は、粘土を含む原料を混合して混合物を得る工程である。
混合物としては、例えば、発泡剤と粘土とを含むものが好ましく、発泡剤、有機汚泥及び粘土を含むものがより好ましい。発泡剤と粘土を用いることで大きなミリメートルオーダーの気孔やマイクロメートルオーダーの気孔また多孔質セラミックス焼成体の表面にミリメートルオーダー、マイクロメートルオーダーの凹凸を形成することができる。さらに、有機汚泥を用いることでより多くのマイクロメートルオーダーの気孔と、さらに小さなナノメートルオーダーの気孔を形成することができる。このような混合物を焼成して得られた多孔質セラミックス焼成体は、相互の気孔が連通した孔を有するものとなる。
発泡剤は、焼成時に発泡するものであり、例えば、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、炭酸マグネシウム、スラグ等の公知のセラミックス用の発泡剤を用いることができる。これら発泡剤の中でも、スラグが好ましい。スラグは、特に限定されず、例えば、金属精錬時に発生する高炉スラグ、都市ゴミの溶融時に発生する都市ゴミ溶融スラグ、下水汚泥の溶融時に発生する下水汚泥溶融スラグ、ダクタイル鋳鉄等の鋳鉄時に発生する鋳鉄スラグ等のガラス質スラグ等が挙げられ、中でも、組成が安定しているため安定した発泡状態が得られると共に、他のスラグに比べ1.5〜2倍程度の発泡率である鋳鉄スラグがより好ましい。
また、鋳鉄スラグは、SiO、Al、CaO、Fe、FeO、MgO、MnO、KO、NaOなどの成分を含み、得られる多孔質セラミックス焼成体は、塩基性物質を担持させなくとも優れた酸性物質除去性を有している。
配合物中のスラグの配合量は、混合物の成形性を勘案して決定することができ、例えば、80質量%以下が好ましく、20〜75質量%がより好ましく、30〜65質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度、気孔率(飽和含水率)を好適な範囲にすることができる。
有機汚泥は、主成分として有機物を含有する汚泥である。有機汚泥は、任意のものを用いることができ、下水や工場等の排水処理に由来する活性汚泥が特に好ましい。活性汚泥は、活性汚泥法を用いた排水処理設備から、凝集・脱水工程を経て排出される。このような有機汚泥を用いることで、マイクロメートルオーダーの気孔を効率的に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。ナノメートルオーダーの気孔が形成されることで、多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度を小さく、気孔率(飽和含水率)をより高めることができ、不要物質との接触機会を増加させることができる。さらに、廃棄物の位置付けであった排水処理由来の活性汚泥を原料として利用することができる。
有機汚泥の含水率は、例えば、10〜90質量%が好ましく、65〜85質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、均質な混合物が得られると共に、良好な成形性を維持しやすい。
有機汚泥中の有機物の含有量は、特に限定されないが、例えば、有機汚泥の固形分中の有機物の含有量(有機物含有量)として70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。前記有機物含有量が多いほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。なお、有機物含有量は、乾燥後の汚泥をJIS M8812−1993に準じ、炭化温度700℃で灰分(質量%)を測定し、下記(1)式により求まる値である。
有機物含有量(質量%)=100(質量%)−灰分(質量%) ・・・(1)
有機汚泥の平均粒子径は、好ましくは1〜5μm、より好ましくは1〜3μmとされる。有機汚泥は、焼成により焼失し、その部分に気孔を形成するため、平均粒子径が小さいほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)により測定される体積基準のメディアン径(体積50%径)である。
混合物中の有機汚泥の含有量は、混合物の成形性等を勘案して決定することができ、例えば、1〜60質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば混合物は適度な流動性と可塑性とを備え、成形性が向上し、成形装置を閉塞することなく円滑に成形できる。
粘土は、一般的に窯業原料として用いられる粘土状の性状を示す鉱物材料である。
粘土は、セラミックスに用いられる公知のものを用いることができ、石英、長石、粘土系等の鉱物組成で構成され、構成鉱物はカオリナイトを主とし、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、ベントナイト、パイロフィライトを含むものが好ましい。このような粘土としては、例えば、蛙目粘土等が挙げられる。粘土は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合できる。これらの粘土に含まれる成分もガスに含まれる悪臭物質、有害物質の除去に効果を発揮する。
混合物中の粘土の含有量は、多孔質セラミックス焼成体に求める強度や成形性等を勘案して決定でき、例えば、5〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックス焼成体の強度を充分なものにできる。
混合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、マイティ2000WH(商品名、花王株式会社製)等のナフタリン系の流動化剤、メルメントF−10(商品名、昭和電工株式会社製)等のメラミン系の流動化剤、ダーレックススーパー100pH(商品名、グレースケミカルズ株式会社製)等のポリカルボン酸系の流動化剤、銀、銅、亜鉛等の抗菌剤、塩化アンモニウム、塩化亜鉛等の消臭剤、ゼオライト、アパタイト等の吸着剤、長さが1mm〜5cmの炭素繊維、バサルト繊維、ロックウールなどの強度向上剤、また、金属アルミニウム等が挙げられる。
混合物に任意成分を配合する場合、任意成分の配合量は、例えば、5〜10質量%の範囲で決定することが好ましい。
また、成形性の観点より、混合物の流動性の調整等を目的として、適宜、水を配合してもよいが、有機汚泥が好適な配合比で配合されている場合には、混合工程にて水を添加しなくてもよい。
また、水分が多い場合には、例えば、ガラス、瓦、フライアッシュ、クリンカーアッシュなどの破砕物を含むことが好ましい。特に瓦の破砕物を配合することにより、過剰な水分を吸収し、配合物の流動性を調整でき、成形性を向上させることができる。
ガラスを用いる場合には、好ましくは、溶融温度が900℃以上の高融点ガラスの粒子状フィラーがより好ましい。高融点ガラスの粒子を用いることで、多孔質セラミックス焼成体に形成される気孔を維持しながら水分調整が可能である。また、高融点ガラスやフライアッシュは強度向上剤としても用いることができる。
高融点ガラスや瓦の粒子の粒子径は、0.1〜5mmが好ましい。粒子径が0.1mm未満であると、多孔質セラミックス焼成体における気孔の形成が不充分になるおそれがある。気孔の形成が不充分であると、ガス中に含まれる不要物質の除去性能、多孔質セラミックス焼成体の耐久性が低下することがある。
粒子径が5mm超であると、成形性が低下したり、成形時に押出し口の金具が破損するおそれがある。
また、クリンカーアッシュやフライアッシュは、火力発電所から排出されるものであって、廃棄物の有効活用の観点より好ましい。
混合物中の高融点ガラス、瓦の粒子、フライアッシュ、クリンカーアッシュの含有量は、本発明の目的を逸脱しない範囲で配合物の目的とする流動性にあわせて適宜選択すればよいが、高融点ガラスや瓦以外の原料の合計100質量部に対し、3〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
混合工程に用いられる混合装置は特に限定されず、公知の混合装置を用いることができる。
混合装置としては、例えば、ミックスマラー(東新工業株式会社製)等の混練機や、ニーダー(株式会社モリヤマ製)、混合機(日陶科学株式会社製)等が挙げられる。
成形工程は、混合工程で得られた混合物を任意の形状に成形する工程である。
成形方法は、公知の成形方法を用いることができ、混合物の性状や所望する成形体の形状を勘案して決定することができる。具体的な成形方法としては、成形機を用いて、押し出し成形し、ペレットなどを含めた板状、粒状又は柱状等の成形体を得る方法、混合物を任意の形状の型枠に充填して成形体を得る方法、あるいは、混合物を押し出し、延伸又は圧延した後、任意の寸法に切断する方法等が挙げられる。
成形機としては、真空土練成形機、平板プレス成形機、平板押出し成形機等が挙げられ、中でも、真空土練成形機が好ましい。
焼成前の混合物の含水率は1質量%超であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。混合物の含水率が前記下限値を下回ると、得られる多孔質セラミックス焼成体の内部に不要物質が入り込みにくくなることがある。
一方、焼成前の混合物の含水率は45質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。混合物の含水率が前記上限値を超えると、成形性が損なわれるおそれがある。
焼成工程は、成形体を焼成し(焼成操作)、粘土等を焼成して多孔質セラミックス焼成体を得る工程である。
上述したように、成形体を乾燥せずに焼成することが好ましい。原料を混合した後、乾燥せずに焼成して得た多孔質セラミックス焼成体は、不要物質の除去性能がより高くなる。また、乾燥しない場合には、多孔質セラミックス焼成体の生産性を向上させることもできる。
成形体を乾燥する場合には、成形体を自然乾燥してもよいし、50〜220℃の熱風乾燥炉で任意の時間処理して乾燥してもよい。乾燥により、成形体の含水率を1質量%以下としてもよい。
焼成操作は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラーハースキルン等の連続式焼結炉、シャトルキルン等の回分式焼結炉を用い、任意の温度で焼成する方法が挙げられる。中でも、焼成操作には、生産性の観点から連続式焼結炉を用いることが好ましい。
焼成温度(最高到達温度)は、混合物の性状等に応じて決定でき、例えば、850℃〜1200℃とされる。上記下限値以上であれば、有機汚泥中の有機物の大部分が揮発して減量する。上記上限値超であると、セラミックス焼成体の組織全体のガラス化が進み、気孔が閉塞するおそれがある。
上記の製造方法によりマイクロメートルオーダーの気孔及びナノメートルオーダーの気孔を有する多孔質セラミックス焼成体が得られる。
焼成工程の後、粒状物としたい場合には、必要に応じて、任意の大きさに多孔質セラミックス焼成体を破砕する破砕工程を有してもよい。破砕工程では、焼成工程で得られた多孔質セラミックス焼成体をハンマーミル、二軸回転式破砕、ジェットミル、ボールミル、エッジランナーミル等で破砕、粉砕し、多孔質セラミックス焼成体の粒状物を得ることができる。得られた粒状物は必要に応じ任意の粒子径になるように篩分けする。
多孔質セラミックス焼成体を製造する際に原料として用いられる粘土あるいはスラグには金属酸化物等が含まれ、この金属酸化物が焼成体において酸性成分または塩基性成分として機能する。この多孔質セラミックス焼成体の酸性成分は塩基性成分を吸着可能であり、多孔質セラミックス焼成体の塩基性成分は酸性成分を吸着可能である。
[水供給手段]
第2浄化部には、多孔質セラミックス焼成体に水を供給するための水供給手段を備えることが好ましい。多孔質セラミックス焼成体に水を供給すると、ガス中の成分が多孔質セラミックス焼成体の塩基性成分、酸性成分等と接触しやすくなり、ガス中の不要物質を除去しやすくなる。
水供給手段としては、スプレーノズル、ジェットノズル、孔の開いたパイプやプレート状物等が挙げられる。孔の開いたパイプやプレート状物の場合には、多孔質セラミックス焼成体の上方に配置することが好ましい。
第2浄化部が水供給手段を備える場合には、ポンプ等を用いて、多孔質セラミックス焼成体を通過した水を再び水供給手段に供給してもよい。
後述するように、水供給手段で供給される水には、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれてもよい。
<他の構成>
上記ガス浄化装置においては、ガスをガス浄化装置内に流すための吸引ファンや送風ファンが設置されてもよい。また、ガス中のミストを捕捉するデミスターが設置されてもよい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲で、温度計や濃度計等の各種計器が設置されてもよい。
(ガス浄化方法)
本発明のガス浄化方法の一実施形態について説明する。
本発明のガス浄化方法は、不要物質を含むガスを浄化するガス浄化方法であって、第1浄化工程と第2浄化工程とを有する。
<第1浄化工程>
第1浄化工程は、前記ガス中に2か所以上から水を噴霧する工程である。
ガス中に水を噴霧すると、主に、ガス中に含まれる煤塵を水に捕捉させることができ、また、悪臭物質及び有害物質のうちの水溶性成分を溶け込ませることができる。さらに、2ヵ所以上から噴霧することにより、様々な方向に無秩序に且つ高速に乱れ飛ぶ水滴が存在する空間中にガスを通すことができる。そのため、ガス中の煤塵及び水溶性成分と水の接触の機会を増大させることができる。したがって、粉塵及び水溶性成分の除去性能が高くなり、従来のスプレーによる水の噴霧、貯め水でのガスのバブリングに比べても、ガス中の煤塵及び水溶性成分の除去率が向上する。
なお、当然のことではあるが、ガス中に煤塵が含まれない場合には、第1浄化工程で煤塵が除去されることはなく、ガス中に水溶性成分が含まれない場合には、第1浄化工程で水溶性成分が除去されることはない。
第1浄化工程において噴霧する水には、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させてもよい。酸性物質、塩基性物質、界面活性剤を水に添加した場合には、煤塵及び水溶性成分に加えて、水に不溶性、難溶性の、塩基性物質、酸性物質、油系成分、中性成分等を除去することも可能になる。
酸性物質、塩基性物質、界面活性剤としては、多孔質セラミックス焼成体に担持されるものと同様のものを用いることができる。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲で、水には、マスキングのための香料、キレート剤、抗菌剤、触媒等を添加してもよい。
第1浄化工程における処理温度は、浄化処理されるガスの温度、ガスに含まれる成分の溶解度や蒸気圧などを勘案し任意に設定すればよい。
<第2浄化工程>
第2浄化工程は、第1浄化工程を経たガスを多孔質セラミックス焼成体に通し、ガスを多孔質セラミックス焼成体で浄化して不要物質の一部を捕捉する工程である。
第2浄化工程では、具体的には、不要物質を多孔質セラミックス焼成体の表面に物理吸着させて除去する。また、多孔質セラミックス焼成体中の酸性成分により、主に、ガス中の塩基性成分をイオン的に吸着して除去し、多孔質セラミックス焼成体中の塩基性成分により、主に、ガス中の酸性成分をイオン的に吸着して除去する。
第2浄化工程では、不要物質の除去率が高くなることから、多孔質セラミックス焼成体に水を供給することが好ましい。
また、多孔質セラミックス焼成体に供給する水の中に、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることが好ましい。酸性物質、塩基性物質、界面活性剤としては、多孔質セラミックス焼成体に担持されるものと同様のものを用いることができる。
多孔質セラミックス焼成体に供給する水の中に、前記酸性物質等を含ませた場合には、前記酸性物質等を多孔質セラミックス焼成体に担持させなくても、不要物質をより除去できる。大きな表面積を有する多孔質セラミックス焼成体中に、水と共に前記酸性物質等を通過させれば、ガス中の各成分と酸性物質等との接触機会が増え、また、新しい酸性成分等が多孔質セラミックス焼成体中に供給されるため、不要物質の除去性能がより高くなるものと考えられる。
(作用効果)
上記ガス浄化装置及びガス浄化方法では、ガス中に2ヵ所以上から水を噴霧することにより、ガスに含まれる粉塵及び水溶性成分を高い除去率で除去できる。また、多孔質セラミックス焼成体にガスを通すことにより、ガスに含まれる不要物質を多孔質セラミックス焼成体の表面に物理吸着させることができる。多孔質セラミックス焼成体は表面積が大きいため、不要物質の吸着量が多い。また、多孔質セラミックス焼成体に、ガスに含まれる酸性成分及び塩基性成分を化学吸着させることができる。したがって、ガス中の不要物質を充分に除去できる
また、上記ガス浄化装置は簡素な構成で低コストであり、中小規模の工場、廃棄物処理場、汚水処理場、養豚・養鶏場、ごみ焼却場等においても容易に導入でき、地域の環境を容易に且つ安価に改善できる。
(他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、ガスに含まれる悪臭物質、有害物質、煤塵の量や種類に応じて、第1浄化部と第2浄化部を複数配置してもよい。例えば、第2浄化部を2つ具備し、一方の第2浄化部では、酸性物質を含む水を多孔質セラミックス焼成体に供給してガス中の塩基性物質を除去し、他方の第2浄化部では、塩基性物質を含む水を多孔質セラミックス焼成体に供給してガス中の酸性物質を除去してもよい。
また、第1浄化部→第2浄化部→第2浄化部→第1浄化部の順で配置してもよい。
また、第1浄化部の上流側に第2浄化部を配置してもよい。ただし、ガス浄化率が高い点では、第1浄化部の下流側に第2浄化部を配置することが好ましい。
また、上記ガス浄化装置に他のガス浄化装置を任意に組み合わせてもよい。
以下、本発明について実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(製造例1)多孔質セラミックス焼成体の製造
スラグ50質量部、有機汚泥25質量部、粘土25質量部(合計100質量部)に対し、瓦20質量部を添加し、これらを、ミックスマラー(新東工業株式会社製)を用いて混合し、可塑状態の混合物を得た(混合工程)。
次いで、真空土練成形機で上記混合物を直径1.5cmの円柱状に押し出し、次いで、長さ3cmに切断して円柱状の成形体(含水率15質量%)を得た。その成形体を、乾燥工程を経ずに引き続き、連続式焼結炉を用いて、焼成温度1050℃、焼成温度での滞留時間7分間の焼成条件にて焼成した(焼成工程)。連続式焼結炉としては、ローラーハースキルン(焼結炉の有効長:全長15m、焼結炉を各1.5mのゾーン1〜10に分割)を用いた。焼成によって得られた多孔質セラミックス焼成体は細かな亀裂が入った長径が3cm〜10cm程度の粒状物と塊状物が混在したものであった。
得られた多孔質セラミックス焼成体の粒状物及び塊状物をハンマーミルで粉砕した。次に、篩を用いて、5mm超10mm以下のものに篩分けして、多孔質セラミックス焼成体の粒状物を得た。得られた多孔質セラミックス焼成体の粒状物は、マイクロメートルオーダーの気孔とナノメートルオーダーの気孔が確認された。特に孔径が1μm〜30μm及び200nm〜500nmのものが多く観察された。また、多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度は0.7g/ml、飽和含水率は43質量%であり、気孔同士の連通も確認された。
<使用原料>
なお、上記製造例で用いた多孔質セラミックス焼成体の原料は、具体的には次のものである。
[有機汚泥]
有機汚泥としては、染色工場(小松精練株式会社)の活性汚泥法による排水処理設備から凝集・脱水工程を経て排出された活性汚泥を用いた。この活性汚泥の有機物含有量(対固形分)は83質量%、含水率は85質量%であった。
[粘土]
粘土としては、蛙目粘土(岐阜県)を用いた。
[スラグ]
発泡剤として、鋳鉄スラグを用いた。この鋳鉄スラグは、SiO、Al、CaO、Fe、FeO、MgO、MnO、KO、NaOを主成分とするダクタイル鋳鉄スラグである。
[瓦]
住宅用の瓦として使用された後、廃棄されたものを粉砕した粒子径0.1mm〜1.2mmのものを用いた。
<物性の測定・確認>
多孔質セラミックス焼成体の物性値は以下の方法により測定した。
[孔径の確認]
多孔質セラミックス焼成体のマイクロメートルオーダーの気孔及びナノメートルオーダーの気孔の確認は、電子顕微鏡(SEMEDX Type H形、日立サイエンスシステムズ製)を用い、30倍〜10000倍で観察した。
[見かけ密度]
多孔質セラミックス焼成体が粒状物のものの場合は、「土壌標準分析・測定法」(博友社)の中の三相分布・容積重(実容積法)にて測定される乾土質量(g)より求められる容積重(仮比重、g/ml)を見かけ密度とした。
また、多孔質セラミックス焼成体の粒状物が測定容器と比べ大きい場合には、サンプルを直方体にカットし、サンプルの外形寸法をノギスにより測定し体積を求めた。カットしたサンプルを絶乾状態にし、電子天秤にて質量を測定(絶乾状態質量)し、下記(2)式により見かけ密度を算出した。
見かけ密度(g/cm)=[絶乾状態質量(g)]/[体積(cm)] ・・・(2)
[飽和含水率]
多孔質セラミックス焼成体を、水に60分間浸漬し、水中から取り出し、直ちに質量を測定(飽和含水状態質量)し、下記(3)式により飽和含水率を求めた。飽和含水率の測定を試料数(N)=10について行い、平均値を求めた。
飽和含水率(質量%)=[(飽和含水状態質量−絶乾状態質量)/絶乾状態質量]×100・・・(3)
[気孔同士の連通の有無の確認]
多孔質セラミックス焼成体における気孔同士の連通の有無の確認は、得られた多孔質セラミックス焼成体を水に浸漬し、充分に吸水させた後に切断または潰し、その断面を観察することで確認した。多孔質セラミックス焼成体の内部に、満遍なく水分が分布・保水されている場合、気孔同士が連通していると判断した。多孔質セラミックス焼成体の内部に水分が行き渡っていない場合には、個々の気孔又は孔隙が独立しており、気孔同士が連通していない又は連通が不充分であると判断した。
(実施例1)
図1に示すように、実施例1におけるガス浄化装置1は、第1浄化部10と第2浄化部20とを具備するものとした。
第1浄化部10は、槽11の側面11a及び上面11bの各々にスプレーノズル12が取り付けられたものとした。また、第1浄化部10においては、槽11の底部に溜まった水を循環して、再度、スプレーノズル12に供給する循環ポンプ13を設けた。また、槽11の上部にガスを導入する導入管14を接続し、槽11の下部に溜まった水を排出する排出管15を取り付けた。
第2浄化部20は、1層の多孔質セラミックス焼成体層21a(吸着手段)を備える槽22aと、5層の多孔質セラミックス焼成体層21b(吸着手段)を内部に備える槽22bと、5層の多孔質セラミックス焼成体層21c(吸着手段)を内部に備える槽22cとを備えるものとした。槽22aは、槽11の上部に連結した。
多孔質セラミックス焼成体層21a,21b,21cは、各々、製造例1で得た多孔質セラミックス焼成体の粒状物をメッシュ状容器に充填することにより構成され、ガスの流れに対して垂直になるように配置した。
また、槽22aの内部には、多孔質セラミックス焼成体層21aの上面に水を噴霧するスプレーノズル23aが設けられ、スプレーノズル23aの上方には、ミストを捕捉して除去する不織布製のデミスター24aが設けられた。
槽22bの内部には、最上層の多孔質セラミックス焼成体層21bの上面に水を噴霧するスプレーノズル23bが設けられ、スプレーノズル23bの上方には、ミストを捕捉して除去する不織布製のデミスター24bが設けられた。槽22bの下部には、溜まった水を排出する排出管25bを取り付けた。
槽22cの内部には、最上層の多孔質セラミックス焼成体層21cの上面に水を噴霧するスプレーノズル23cが設けられ、スプレーノズル23cの上方には、ミストを捕捉して除去する不織布製のデミスター24cが設けられた。槽22cの下部には、溜まった水を排出する排出管25cを取り付けた。
また、ガス浄化装置1は、槽11の底部に溜まった水をスプレーノズル23aに供給するための配管31a及びポンプ32aと、槽22bの底部に溜まった水をスプレーノズル23bに供給するための配管31b及びポンプ32bと、槽22cの底部に溜まった水をスプレーノズル23cに供給するための配管31c及びポンプ32cを具備するものとした。また、薬液タンク33bと薬液タンク33bの内部に入れられた薬液Aを配管31bに供給するための配管34b及びポンプ35bと、薬液タンク33cと薬液タンク33cの内部に入れられた薬液Bを配管31cに供給するための配管34c及びポンプ35cとを具備するものとした。
また、槽22aの上部と槽22bの下部とを配管41で接続し、槽22bの上部と槽22cの下部とを配管42で接続し、槽22cの上部に配管43を取り付けた。配管41には送風ファン44aを取り付け、配管42には送風ファン44bを取り付け、配管43には排気ファン44cを取り付けた。
本例では、製造例1の多孔質セラミックス焼成体を製造する際に、焼成炉から排出されたガスを、ガス浄化装置1を用いて脱臭した。
具体的には、焼成炉から排出されたガスを導入管14に通して、第1浄化部10の槽11にガス供給速度3m/分で供給し、槽11の内部のガスに、水供給管16から供給した水道水を、スプレーノズル12を用いて充円形状のスプレーパターンで噴霧した。これにより、様々な方向に無秩序に且つ高速に乱れ飛ぶ水滴が存在する空間中にガスを通すことができる。槽11の底部に溜まった水の一部は、循環ポンプ13を用いて、再度、スプレーノズル12から槽11の内部に噴霧し、残りは排出管15から廃棄した。これにより、第1浄化部10において、主に、ガスに含まれる煤塵及び水溶性成分を除去した。
次いで、槽11の上部から排出させたガスを、槽22aに導入し、多孔質セラミックス焼成体層21aに通した。その際、配管31a、ポンプ32a及びスプレーノズル23aを用いて、多孔質セラミックス焼成体層21aに、槽11の底部に溜まった水の一部と、水供給管36aから供給した水道水を噴霧した。
槽22aでは、不要物質を多孔質セラミックス焼成体の表面に物理吸着させて除去した。また、焼成体多孔質セラミックス焼成体に含まれる酸性成分により主にガス中の塩基性成分を吸着除去し、多孔質セラミックス焼成体に含まれる塩基性成分により主にガス中の酸性成分を吸着除去した。
多孔質セラミックス焼成体層21aを通過したガスをデミスター24aに通してミストを捕捉した後、送風ファン44aを用い、配管41に通して槽22bの下部に導入した。
槽22bに導入したガスを、5層の多孔質セラミックス焼成体層21bに通した。その際、配管31b,ポンプ32b及びスプレーノズル23bを用いて、多孔質セラミックス焼成体層21bに、槽22bの底部に溜まった水と、水供給管36bから供給した水道水を噴霧した。また、薬液タンク33bに入れられた薬液Aを配管34b及びポンプ35bを用いて配管31bに供給した。槽22bは、塩基性物質と油性物質、中性成分の除去を主な役割とするものであり、薬液Aは、酸性物質とノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤の水溶液とした。
なお、噴霧された水及び薬液Aの一部は、5層の多孔質セラミックス焼成体層21bを通過し、槽22bの底部に落下して溜まり、溜まった水及び薬液の一部は排出管25bを用いて排出される。
多孔質セラミックス焼成体層21bを通過したガスをデミスター24bに通してミストを捕捉した後、送風ファン44bを用い、配管42に通して槽22cの下部に導入した。
槽22cに導入したガスを、5層の多孔質セラミックス焼成体層21cに通した。その際、配管31c,ポンプ32c及びスプレーノズル23cを用いて、多孔質セラミックス焼成体層21cに、槽22cの底部に溜まった水と、水供給管36cから供給した水道水を噴霧した。また、薬液タンク33cに入れられた薬液Bを配管34c及びポンプ35cを用いて配管31cに供給した。槽22cは、酸性成分の除去を主な役割とするものであり、薬液Bは、塩基性物質の水溶液とした。
なお、噴霧された水及び薬液Bの一部は、5層の多孔質セラミックス焼成体層21cを通過し、槽22cの底部に落下して溜まり、溜まった水及び薬液の一部は排出管25cを用いて排出される。
多孔質セラミックス焼成体層21cを通過したガスをデミスター24cに通してミストを捕捉した後、排気ファン44cを用い、配管43に通して槽22cの外部に放出した。
実施例1におけるガス中に含まれる悪臭物質等の脱臭性能について、以下の方法により評価した。
すなわち、ガスに含まれるプロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸、硫黄酸化物(これらはいずれも悪臭物質である。)の濃度を、昭和47年環境庁告示第9号に従って測定した。測定結果を表1に示す。
また、ガス浄化装置1に入る前のガス、ガス浄化装置1を経たガスの臭いを、評価者が嗅いで評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 0006162467
表1に示すように、ガス浄化装置1を用いることにより、焼成炉から排出されたガスに含まれる悪臭物質を充分に除去できた。
また、実施例1において、薬液タンク33cに香料を少し添加したところ、不快な悪臭は全く感じず、香料の良い香りが感じられた。
1 ガス浄化装置
10 第1浄化部
11 槽
12 スプレーノズル
13 ポンプ
14 導入管
15 排出管
16 水供給管
20 第2浄化部
21a,21b,21c 多孔質セラミックス焼成体層
22a,22b,22c 槽
23a,23b,23c スプレーノズル
24a,24b,24c デミスター
25b,25c 排出管
31a,31b,31c 配管
32a,32b,32c ポンプ
33b,33c 薬液タンク
34b,34c 配管
35b,35c ポンプ
41,42,43 配管
44a,44b 送風ファン
44c 排気ファン

Claims (14)

  1. ガスに水を噴霧する噴霧手段を2個以上有する第1浄化部と、ガスを浄化する多孔質セラミックス焼成体製の吸着手段を備えた第2浄化部とを具備し、前記第1浄化部と前記第2浄化部とが接続されており、少なくとも2個の前記噴霧手段は、噴霧方向が異なり、
    前記多孔質セラミックス焼成体は、亀裂を有し、マイクロメートルオーダーの気孔、及びナノメートルオーダーの気孔を有するガス浄化装置。
  2. 前記噴霧手段で噴霧される水は、酸性物質、塩基性物質、及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のガス浄化装置。
  3. 前記多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度が0.3〜1.5g/mlである、請求項1又は2に記載のガス浄化装置。
  4. 前記第2浄化部が、前記多孔質セラミックス焼成体に水を供給する水供給手段を備え、前記水供給手段で供給される水が、界面活性剤を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のガス浄化装置。
  5. ガスに水を噴霧する噴霧手段を2個以上有する第1浄化部と、ガスを浄化する多孔質セラミックス焼成体製の吸着手段を備えた第2浄化部とを具備し、前記第1浄化部と前記第2浄化部とが接続されており、少なくとも2個の前記噴霧手段は、噴霧方向が異なり、
    前記第2浄化部が、前記多孔質セラミックス焼成体に水を供給する水供給手段を備え、前記水供給手段で供給される水が、界面活性剤を含む、ガス浄化装置。
  6. 前記噴霧手段で噴霧される水は、酸性物質、塩基性物質、及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項に記載のガス浄化装置。
  7. 前記多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度が0.3〜1.5g/mlである、請求項5又は6に記載のガス浄化装置。
  8. ガス中に2か所以上から水を噴霧する第1浄化工程と、ガスを多孔質セラミックス焼成体で浄化する第2浄化工程とを有し、前記第1浄化工程において、少なくとも2か所の噴霧方向が異なり、
    前記多孔質セラミックス焼成体として、亀裂を有し、マイクロメートルオーダーの気孔、及びナノメートルオーダーの気孔を有するものを用いる、ガス浄化方法。
  9. 前記第1浄化工程で噴霧される水は、酸性物質、塩基性物質、及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項に記載のガス浄化方法。
  10. 前記多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度が0.3〜1.5g/mlである、請求項8又は9に記載のガス浄化方法。
  11. 前記第2浄化工程では、前記多孔質セラミックス焼成体に水を供給し、前記多孔質セラミックス焼成体に供給する水が、界面活性剤を含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載のガス浄化方法。
  12. ガス中に2か所以上から水を噴霧する第1浄化工程と、ガスを多孔質セラミックス焼成体で浄化する第2浄化工程とを有し、前記第1浄化工程において、少なくとも2か所の噴霧方向が異なり、
    前記第2浄化工程では、前記多孔質セラミックス焼成体に水を供給し、前記多孔質セラミックス焼成体に供給する水が、界面活性剤を含む、ガス浄化方法。
  13. 前記第1浄化工程で噴霧される水は、酸性物質、塩基性物質、及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項12に記載のガス浄化方法。
  14. 前記多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度が0.3〜1.5g/mlである、請求項12又は13に記載のガス浄化方法。
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