本発明の実施形態に係るカートリッジ4について説明する。
図1は、印刷材供給システム1の構成を示す斜視図である。
印刷材供給システム1は、印刷装置としてのプリンター10と、カートリッジ4とを備える。
図1には、互いに直交する3つの空間軸であるXYZ軸が描かれている。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向は、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を示している。X軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を、それぞれ+X軸方向,+Y軸方向,+Z軸方向とする。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向と逆の方向が、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向である。X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向を、それぞれ−X軸方向,−Y軸方向,−Z軸方向とする。X軸,Y軸,Z軸に沿った方向で正負を問わないものを、それぞれX軸方向,Y軸方向,Z軸方向とよぶ。
これ以降に示す図及び説明についても同様である。他の図に描かれたXYZ軸は、図1のXYZ軸に方向が対応している。
プリンター10は、インクをヘッド22から吐出するインクジェットプリンターである。このプリンター10は、ポスター等の大判の用紙(A2〜A0等)に印刷を行う大型のプリンターである。プリンター10は、カートリッジ装着部6と、制御部31と、キャリッジ20と、ヘッド22と、駆動機構30とを備える。また、プリンター10は、プリンター10の動作を利用者が操作するための操作ボタン15を備える。
カートリッジ装着部6には、複数のカートリッジ4がそれぞれ着脱可能に装着される。4色(ブラック、イエロー、マゼンダ、シアン)のインクに対応して4種類のカートリッジ4が1つずつ、すなわち合計4つのカートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される。
プリンター10では、前面(+Y軸方向側の面)にカートリッジ装着部6の挿入口69側が露出している。挿入口69を覆うカバーは設けられておらず、常に挿入口69側が外部に露出している。このため、プリンター10では、カートリッジ装着部用カバーの開閉作業を伴わずに、カートリッジ4の着脱が可能である。
カートリッジ装着部6にカートリッジ4が装着されると、チューブ24を介してキャリッジ20に設けられたヘッド22にインクが供給可能となる。プリンター10のポンプ機構(図示せず)によって、カートリッジ4内のインクを吸引することで、インクがヘッド22に供給される。なお、チューブ24は、インクの種類毎に設けられている。カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着された状態を「装着状態」とも呼ぶ。
ヘッド22には、インクの種類毎にノズルが設けられている。ヘッド22は、噴射ノズルから印刷用紙2に向かってインクを噴射して文字や画像等のデータを印刷する。
プリンター10は、カートリッジ装着部6がキャリッジ20の動きとは連動しない、いわゆる「オフキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターである。キャリッジ20にカートリッジ装着部6が設けられ、キャリッジ20と共にカートリッジ装着部6が移動する、いわゆる「オンキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターにも本発明は適用できる。
制御部31は、プリンター10の各部の制御や、カートリッジ4との信号の授受を行う。キャリッジ20は、ヘッド22を印刷用紙2に対して相対的に移動させる。
駆動機構30は、制御部31からの制御信号に基づいてキャリッジを往復動させる。駆動機構30は、タイミングベルト32と、駆動モーター34とを備える。タイミングベルト32を介して駆動モーター34の動力をキャリッジ20に伝達することによって、キャリッジ20が主走査方向(X軸方向)に往復移動する。また、プリンター10は、印刷用紙2を副走査方向(+Y軸方向)に移動させるための搬送機構を備える。印刷が行なわれる際には、搬送機構によって印刷用紙2が副走査方向に移動し、前面カバー11上に印刷完了後の印刷用紙2が出力される。
また、キャリッジ20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションには、正常に印刷可能なようにメンテナンスを行うメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、ヘッド22の底面側(印刷用紙2に向いた側)でノズルが形成されている面(ノズル面)に押し付けられて、噴射ノズルを取り囲むように閉空間を形成するキャップ部材8や、ヘッド22のノズル面に押し付けるためにキャップ部材8を昇降させる昇降機構(図示せず)や、キャップ部材8がヘッド22のノズル面に押し付けられることで形成される閉空間に負圧を導入する吸引ポンプ(図示せず)などから構成されている。
印刷材供給システム1(プリンター10、カートリッジ4)の使用状態において、印刷用紙2を搬送する副走査方向に沿った軸をY軸とし、重力方向(上下方向)に沿った軸をZ軸とし、キャリッジ20の移動方向(左右方向)に沿った軸をX軸とする。
「印刷材供給システム1の使用状態」とは、水平な面に印刷材供給システム1が設置された状態をいう。
副走査方向(前方向)を+Y軸方向、その逆方向(後方向)を−Y軸方向とし、重力方向の下方から上方に向かう方向(上方向)を+Z軸方向とし、その逆方向(下方向)を−Z軸方向とする。
印刷材供給システム1を前側(+Y軸方向側)から見たときに、右側から左側に向かう方向を+X軸方向とし、その逆方向を−X軸方向とする。
図2は、カートリッジ装着状態におけるカートリッジ装着部6を示す外観斜視図である。図2には、4つのカートリッジ4がカートリッジ装着部6の各スロットに装着された様子を示している。4つのスロットのうち、−X軸方向側の1つのスロットを除き、3つのスロットでは、レバー672が押し下げられて、レバー672の下端部673がカートリッジ4の取手部5に挿入している。
このように、カートリッジ装着部6にカートリッジ4が装着された後、レバー672が押し下げられることで、カートリッジ4の動きを規制して、カートリッジ4がカートリッジ装着部6から抜け出すことを防止する。カートリッジ4をカートリッジ装着部6から取り外す際には、レバー672を押上げて規制を解除して、カートリッジ4を取り外す。レバー672は、カートリッジ4が着脱する際に通過する挿入口69が形成された壁部67にZ軸方向に移動可能に設けられている。装着されたカートリッジ4のインクは、ポンプ機構7が駆動することでチューブ24に流通する。
図3は、カートリッジ装着部6の第一外観斜視図である。
図4は、カートリッジ装着部6の第二外観斜視図である。
図5は、カートリッジ装着部6の第三外観斜視図である。
図3には、カートリッジ装着部6に取り付けられたチューブ24が図示されている。図4,図5は、カートリッジ装着部6の内部の構成が視認できるように、一部の構成の図示は省略している。
カートリッジ装着部6は、4つのカートリッジ4を独立して着脱できるが、プリンター10の仕様に応じてカートリッジ4の着脱個数を増加できるように構成されている。すなわち、図4に示すように、最も+X軸方向側には、増やしたカートリッジ4が装着できるように予備の装着空間や部材が設けられている。
図3に示すように、カートリッジ装着部6は、以下に述べる6つの壁部によってカートリッジ4を収容するカートリッジ収容室61が形成されている。カートリッジ収容室61は、略直方体形状である。カートリッジ収容室61の形状は、カートリッジ4の外観形状に対応している。なお、カートリッジ収容室61のうち、4つのカートリッジ4のうちの1つを収容する部分をそれぞれ、スロットとも呼ぶ。
カートリッジ装着部6は、装置側前壁部62と、第一装置側側壁部63と、第二装置側側壁部64とを備える。また、カートリッジ装着部6は、第三装置側側壁部65と、第四装置側側壁部66と、開口壁部67と、を備える。これらの6つの壁部62,63,64,65,66,67によってカートリッジ収容室61が区画形成されている。6つの壁部62,63,64,65,66,67の外形はそれぞれ、略長方形状である。
図3及び図4に示すように、装置側前壁部62は、カートリッジ収容室61に対して−Y軸方向側に位置する。装置側前壁部62は、プリンター10の使用状態において、垂直な壁部である。
図4に示すように、装置側前壁部62には、装置側端子部70と、印刷材供給機構640と、ロッド662が設けられている。詳細には、+Z軸方向から−Z軸方向に向かうに順に、装置側端子部70、印刷材供給機構640、ロッド662が配列されている。装置側端子部70及び印刷材供給機構640は、装置側前壁部62の+Y軸方向側(カートリッジ収容室61が位置する側)の面に設けられている。また、ロッド662は、装置側前壁部62をY軸方向に貫通するように設けられている。装置側前壁部62の−Y軸方向側(カートリッジ収容室61とは反対の側)には、ポンプ機構7が設けられている。
印刷材供給機構640は、上述の印刷材供給管642を備え、カートリッジ4内のインクをプリンター10側に流通させるために利用される。装置側端子部70は、上述の装置側端子群721(図5)及びコネクター739(図4)を備え、カートリッジ4とプリンター10を電気的に接続するために利用される。
図4に示すように装置側端子部70は、印刷材供給管642よりも第一装置側側壁部63側(+Z軸方向側)に設けられている。ロッド662は、カートリッジ4のインクエンド状態をプリンター10側で検出するために用いられる。すなわち、ロッド662は、後述するプリンター10の検出機構の一部を構成する。また、ロッド662は、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際に、正しい装着位置からの位置ずれを抑制するための位置決め部材としても機能する。
図3に示すように、第一装置側側壁部63は、カートリッジ収容室61に対して+Z軸方向側に位置する。第一装置側側壁部63は、装置側前壁部62と交差する向きに設けられている。第一装置側側壁部63は、装置側前壁部62と直交する向きに設けられている。第一装置側側壁部63は、プリンター10の使用状態において、水平な壁部である。第一装置側側壁部63は、カートリッジ装着部6の上面を構成する。
本明細書では、「交わる」や「交差する」とは、(i)2つの要素が相互に交差し実際に交わる状態、(ii)一方の要素を延ばした場合に他方の要素に交わる状態、及び(iii)相互の要素をそれぞれ延ばした場合に互いの要素が交わる状態、のいずれかの状態であることを意味する。
図5に示すように、第一装置側側壁部63はカートリッジ4を装着位置まで案内するための第一ガイド部682を有する。第一ガイド部682は、少なくとも装着されるカートリッジ4の個数に対応して設けられている。実際に装着されるカートリッジ4の個数4つと、予備1つの計5つの第一ガイド部682が設けられている。第一ガイド部682はY軸方向に延びる溝であり、カートリッジ4の一部分が挿入される。また、第一ガイド部682の−Y軸方向側端部には、係止部材としての板ばね684が設けられている。装着状態では、板ばね684がカートリッジ4を係止することで、カートリッジ装着部6からカートリッジ4が抜け出すことを防止する。
図3、図4に示すように、第二装置側側壁部64は、カートリッジ収容室61に対して−Z軸方向側に位置する。第二装置側側壁部64は、カートリッジ収容室61を挟んで第一装置側側壁部63と対向する。第二装置側側壁部64は、装置側前壁部62と交差する向きに設けられている。第二装置側側壁部64は、装置側前壁部62と直交する。第二装置側側壁部64は、プリンター10の使用状態において、水平な壁部である。第二装置側側壁部64は、カートリッジ装着部6の底面を構成する。
図4に示すように、第二装置側側壁部64はカートリッジ4を装着位置まで案内するための第二ガイド部602を有する。第二ガイド部602は、少なくとも装着されるカートリッジの個数に対応して設けられている。
第二ガイド部602は第一ガイド部682と同様に5つ設けられている。第二ガイド部602はY軸方向に延びる溝であり、カートリッジ4の一部分が挿入される。また、第二ガイド部602の−Y軸方向側端部には、係止部材としての板ばね604が設けられている。装着状態では、板ばね604がカートリッジ4を係止することで、カートリッジ装着部6からカートリッジが抜け出すことを防止する。同じカートリッジ4が装着される第一ガイド部682と第二ガイド部602は、カートリッジ収容室61を挟んで向かい合う位置に設けられている。
第一ガイド部682と第二ガイド部602とはX軸方向の寸法が異なる。詳細には、第一ガイド部682は第二ガイド部602よりもX軸方向の寸法が小さい。これにより、誤ってZ軸方向の向きを逆向きにしてカートリッジ4がカートリッジ装着部6に挿入されようとした場合に、カートリッジ4が第一ガイド部682及び第二ガイド部602に挿入できない構成となっている。これにより、Z軸方向の向きが逆向きの誤った状態でカートリッジ4がカートリッジ装着部6に挿入される可能性を低減できる。
また、図4に示すように、第二装置側側壁部64のうち、装置側前壁部62に近接した位置には、装置側識別部材610が設けられている。装置側識別部材610は、カートリッジが装着される個数に対応して設けられている。装置側識別部材610は4個設けられている。装置側識別部材610は、カートリッジ収容室61の各スロットに正しい種類(インク色)のカートリッジ4が装着されたか否かを識別するために用いられる。各装置側識別部材610は、装着されるカートリッジ4内のインクの色に応じて、異なる形状を形成する。
詳細には、各装置側識別部材610は、少なくとも1つ以上のリブによって形成され、リブの数と位置によって定まるパターンがカートリッジ4の種類に応じて異なる。カートリッジ4にも、リブによって形成された識別部材(「カートリッジ側識別部材」ともいう。)が設けられている。カートリッジ4の識別部材も収容するインクの色に応じて異なる形状を形成している。そして、正しい種類のカートリッジ4がスロットに挿入される場合は、装置側識別部材610とカートリッジ側識別部材とが嵌合する。一方、誤った種類のカートリッジ4がスロットに挿入される場合は、装置側識別部材610とカートリッジ側識別部材とが嵌合できない。これにより、誤った種類のカートリッジ4がカートリッジ装着部6の各スロットに装着される可能性を低減できる。
また、図4に示すように、第二装置側側壁部64のうち、装置側前壁部62に近接した位置には、規制部材612が設けられている。規制部材612は、カートリッジ4が装着される個数に対応して設けられている。規制部材612は5個設けられているが、実際に利用される個数は4個である。規制部材612は、カートリッジ4が+Y軸側の挿入口69(図3)から−Y軸方向側の装置側前壁部62に向ってカートリッジ装着部6のカートリッジ収容室61に挿入され、正しい装着位置まで到達したときにカートリッジ4と当接する。これにより、正しい装着位置からカートリッジ4がさらに押し込まれる可能性を低減できる。
図3に示すように、開口壁部67は、カートリッジ収容室61に対して+Y軸方向側に位置する。開口壁部67は、カートリッジ4の着脱の際にカートリッジ4を通過させるための挿入口69を有する。開口壁部67は、カートリッジ収容室61を挟んで装置側前壁部62と対向する。開口壁部67は、第一装置側側壁部63及び第二装置側側壁部64に交差する向きに設けられている。開口壁部67は、第一装置側側壁部63及び第二装置側側壁部64に直交する。開口壁部67は、プリンター10の使用状態において、垂直な壁部である。
開口壁部67は、Z軸方向に移動可能なレバー672が設けられている。カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着された後にレバー672を−Z軸方向に移動させる。これにより、レバー672がカートリッジ4に引っ掛かり、カートリッジ4が誤って取り外されることを防止する。レバー672がカートリッジ4に引っ掛かった状態とは、図2の+X軸方向側に位置する3つのカートリッジ4と対応する3つのレバー672が示す状態である。
図3に示すように、第三装置側側壁部65は、カートリッジ収容室61に対して+X軸方向側に位置する。第三装置側側壁部65は、装置側前壁部62、第一装置側側壁部63、第二装置側側壁部64、及び、開口壁部67と交差する向きに設けられている。第三装置側側壁部65は、装置側前壁部62、第一装置側側壁部63、第二装置側側壁部64、及び、開口壁部67と直交する。第三装置側側壁部65は、プリンター10の使用状態において、垂直な壁部である。第三装置側側壁部65は、カートリッジ装着部6の側面を構成する。
図3に示すように、第四装置側側壁部66は、カートリッジ収容室61に対して−X軸方向側に位置する。第四装置側側壁部66は、カートリッジ収容室61を挟んで第三装置側側壁部65と対向する。第四装置側側壁部66は、装置側前壁部62、第一装置側側壁部63、第二装置側側壁部64、及び、開口壁部67と交差する向きに設けられている。第四装置側側壁部66は、装置側前壁部62、第一装置側側壁部63、第二装置側側壁部64、及び、開口壁部67と直交する。第四装置側側壁部66は、プリンター10の使用状態において、垂直な壁部である。第四装置側側壁部66は、カートリッジ装着部6の側面を構成する。
各壁部62,63,64,65,66,67の配置から以下のような関係が規定できる。装置側前壁部62と開口壁部67あるいは挿入口69とが対向する方向がY軸方向である。開口壁部67あるいは挿入口69から装置側前壁部62に向かう方向、つまりカートリッジ4をカートリッジ装着部6に挿入する(装着する)方向が−Y軸方向であり、その逆、つまりカートリッジ4をカートリッジ装着部6から引き抜く(取り外す)方向が+Y軸方向である。第一装置側側壁部63と第二装置側側壁部64とが対向する方向がZ軸方向である。第一装置側側壁部63から第二装置側側壁部64へ向かう方向が−Z軸方向であり、その逆が+Z軸方向である。第三装置側側壁部65と第四装置側側壁部66とが対向する方向がX軸方向である。第三装置側側壁部65から第四装置側側壁部66へ向かう方向が−X軸方向であり、その逆が+X軸方向である。
次に、図6〜13を用いてカートリッジ4の概略構成を説明する。カートリッジ4を図示した図面に付したXYZ軸は、装着状態におけるカートリッジ4に対するXYZ軸に対応する。
図6は、カートリッジ4の第一外観斜視図である。図7は、カートリッジ4の第二外観斜視図である。図8は、カートリッジ4の正面図である。図9は、カートリッジ4の背面図である。図10は、カートリッジ4の上面図である。図11は、カートリッジ4の底面図である。図12は、カートリッジ4の第一側面図である。図13は、カートリッジ4の第二側面図である。
図6及び図7に示すように、カートリッジ4は、外形が略直方体形状である。カートリッジ4は、Y軸方向、Z軸方向、X軸方向の順で寸法が小さくなる。カートリッジ4は、内部にインクを収容するケース9を備える。ケース9は合成樹脂を成形することで形成された筐体である。カートリッジ4は、前面42と、後面47と、第一側面43と、第二側面44と、第三側面45と、第四側面46とを備える。
第一側面43を上面43とも呼び、第二側面44を底面44とも呼び、第三側面45を右側面45とも呼び、第四側面46を左側面46とも呼ぶ。前面42と後面47は、Y軸方向において対向しており、前面42が−Y軸方向側に、後面47が+Y軸方向側に位置する。第一側面43と第二側面44は、前面42及び後面47と交わり、Z軸方向において対向している。第一側面43が+Z軸方向側に、第二側面44が−Z軸方向側に位置する。第三側面45と第四側面46は、前面42、後面47、第一側面43、及び第二側面44と交わり、X軸方向において対向している。第三側面45が+X軸方向側に、第四側面46が−X軸方向側に位置する。
前面42の形状は、Z軸方向の寸法がX軸方向の寸法よりも大きい略長方形である。前面42は、装着状態において装置側前壁部62(図4)と向かい合う。
前面42には、ロッド挿入孔420と、供給管挿入孔424と、が形成されている。ロッド挿入孔420は、前面42のうち、第一側面43と第二側面44との中間の位置に設けられている。言い換えれば、Z軸方向について、第一側面43と第二側面44を結ぶ中間の位置に設けられている。すなわち、ロッド挿入孔420の中心軸Ceは、第一側面43と第二側面44のZ軸方向における中間の位置に配置されている。ここで、「中間の位置」とは、完全に中間である必要はなく、第一と第二側面43,44のどちらか一方に偏って配置されていなければ良い。例えば、「中間の位置」とは、第一側面43と第二側面44のZ軸方向における距離に対して中心位置から10%以内の範囲内の位置を含む。
第一側面43と第四側面46が交わる部位のうち、後面47に近接する部位には、カートリッジ4の着脱時に操作者が指を入れるための凹形状の取手部5が形成される。
装着状態において、供給管挿入孔424には、印刷材供給管642(図4)が挿入される。また、供給管挿入孔424内には、カートリッジ4内のインクを外部へ流通させるための印刷材導出管484(図4)が配置されている。印刷材供給管642が印刷材導出管484に接続されることで、カートリッジ4内のインクが印刷材供給管642に流通可能となる。
装着状態において、ロッド挿入孔420には、外周の一部がロッドカバー720に覆われたロッド662(図4)が挿入される。ロッド挿入孔420にロッド662が挿入されることで、カートリッジ装着部6に対するカートリッジ4全体の位置決めを行い、正しい装着位置からの位置ずれを抑制する。また、装着状態においてロッド662がレバー部材490(図4)に当接する。
図6、図10、図12及び図13に示すように、第一側面43は第一レール部432を有する。第一レール部432は、第一側面43から+Z軸方向側に突出する。第一レール部432は、Y軸方向に沿って延びる。詳細には、図12及び図13に示すように、第一レール部432は、第一側面43のうち、前面42に近接した位置から後面47に近接した位置まで延びるが、−Y軸方向側の第一部分432aと+Y軸方向側の第二部分432bに分かれており、その間に凹状の第一係止部436が形成される。
図11〜図13に示すように、第二側面44は第二レール部442を有する。第二レール部442は、第二側面44から−Z軸方向側に突出する。第二レール部442は、Y軸方向に沿って延びる。詳細には、図12及び図13に示すように、第二レール部442は、第一側面43のうち、前面42に近接した位置から後面47に近接した位置まで延びるが、−Y軸方向側の第一部分442aと+Y軸方向側の第二部分442bに分かれており、その間に凹状の第二係止部446が形成される。カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際には、第一レール部432が第一ガイド部682(図5)に挿入され、第二レール部442が第二ガイド部602(図4)に挿入される。これにより、カートリッジ4をカートリッジ装着部6の対応するスロットに対して円滑に押し進めることができる。
図8に示すように、第一レール部432のX軸方向の寸法(幅)Xaと、第二レール部442のX軸方向の寸法(幅)Xbは異なる。寸法Xa<寸法Xbの関係を満たす。また、第二レール部442は、第一ガイド部682(図5)よりもX軸方向の寸法が大きく、第二レール部442は第一ガイド部682に挿入できない。これにより、誤って第一側面43と第二側面44の向きを逆にした状態で、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される可能性を低減できる。また、装着状態では、第一係止部436に板ばね684(図5)が入り込み、第二係止部446に板ばね604(図4)が入り込む。これにより、カートリッジ4がカートリッジ装着部6から不用意に外れることを防止する。
図6に示すように、第三側面45には、ラベルS1が貼り付けられている。このラベルS1には、カートリッジ4の取り扱いに関する情報(使用について注意事項等)が記載されている。
図8に示すように、前面42と第二側面44とが交差するコーナー部88には、凹部49と、一対の規制面421とが設けられている。凹部49には、カートリッジ側識別部材491が設けられている。カートリッジ側識別部材491は、1つ以上のリブによって形成され、収容するインクの色に応じて異なる形状を形成する。また、カートリッジ側識別部材491は、カートリッジ装着部6の正しいスロットに装着されることで、装置側識別部材610(図4)と嵌合する。一対の規制面421は、凹部49のX軸方向の両側に配置されている。一対の規制面421は、カートリッジ4が正しい装着位置まで到達したときに、規制部材612(図4)と当接する。
図6及び図8に示すように、カートリッジ4はさらに、前面42と第一側面43とが交差するコーナー部89に設けられた凹部90を備える。換言すれば、凹部90は、前面42と第一側面43に亘って設けられている。凹部90には、回路基板50が配置されている。回路基板50の表面50fa(図8)には、カートリッジ側端子群521が形成されている。カートリッジ側端子群521は、複数の端子(9個)を備える。装着状態において、カートリッジ側端子群521の各端子は、装置側端子群721(図15)の対応する各端子と接触することで、電気的に接続される。
図14は、カートリッジ4の分解斜視図である。
図14に示すように、ケース9は、印刷材収容部450と、カートリッジ側流路部材480とを収容する。印刷材収容部450は、内部にインクを収容する。また、印刷材収容部450は、可撓性を有する袋体である。印刷材収容部450は樹脂フィルム層の上にアルミニウム層が積層形成されたアルミラミネート複層フィルムにより形成されている。
カートリッジ側流路部材480は、印刷材収容部450と外部とを連通させる流路(「印刷材導出流路」とも呼ぶ。)を形成する。すなわち、カートリッジ側流路部材480は、一端部が印刷材収容部450内に接続され、他端部に設けられた印刷材導出管484が印刷材供給管642(図4)に接続される。印刷材導出流路の途中には、検出室482が設けられている。
検出室482内には、付勢部材としてのコイルばね496と、逆止弁495と、受圧板493とが収容される。また、検出室482の一側面である開口は可撓性を有するフィルム492によって覆われている。受圧板493は、コイルばね496とフィルム492との間に配置されている。コイルばね496は、検出室482の容積を増大させるように受圧板493を付勢する。
ケース9は、さらにレバー部材490を収容する。レバー部材490は、フィルム492に検出室482の外側から接する。検出室482は、内部の圧力の変化に応じて容積が変化する。検出室482の容積の変化によりレバー部材490が変位する。上述のごとく、レバー部材490にはロッド662(図4)が当接している。印刷材収容部450にインクが収容されている状態で、ポンプ機構7により印刷材収容部450内が吸引された場合、吸引に伴って検出室482内にもインクが供給される。これにより検出室482内の圧力は所定圧に維持される。このとき、検出室482の容積は大きく維持されているため、ロッド662(図4)は、レバー部材490によって、付勢部材665(図4)によって付与される付勢力に抗して−Y軸方向へ押された状態となっている。
一方、印刷材収容部450のインクが無くなった状態で、ポンプ機構7により印刷材収容部450内が吸引された場合、検出室482内は負圧となる。検出室482内が負圧となることで所定圧の時よりも検出室482内の容積が減少し、レバー部材490が変位する。それに伴い、ロッド662(図4)は、付勢部材665(図4)によって付与される付勢力によって、+Y軸方向へ変位する。このレバー部材490の変位に伴うロッド662(図4)の変位をセンサー138(図4)が検出することで、インクエンド状態を制御部31が検出できる。
検出室482、コイルばね496、受圧板493、フィルム492、レバー部材490は、プリンター10側でインクエンド状態を検出するために利用される検出機構を構成する。
カートリッジ側流路部材480はさらに、外部から印刷材収容部450にインクを注入するための注入流路483を有する。印刷材収容部450にインクが注入された後は、注入流路483は塞がれる。
また、図14に示すように、ケース9は、第一ケース部材472と第二ケース部材474とを備える。第一ケース部材472は、第三側面45の一部と、第一側面43のうち第三側面45側の一部43aと、第二側面44のうち第三側面45側の一部44aとを少なくとも構成する。第二ケース部材474は、第四側面46の一部と、第一側面43のうち第四側面46側の一部43bと、第二側面44のうち第四側面46側の一部44bとを少なくとも構成する。
第一ケース部材472は、第一係合部451を有する。第一係合部451は、第一ケース部材472のうち第一側面43aに設けられている。第一係合部451は、第一側面43aから+Z側へ突出するように形成されている。第一係合部451は、Y方向に延びるように形成されている。
第二ケース部材474は、第二係合部452を有する。第二係合部452は、第二ケース部材474のうち第一側面43bに設けられている。第二係合部452は、第一側面43bから+Z側へ突出するように形成されている。第二係合部452は、Y方向に延びるように形成されている。
第一係合部451及び第二係合部452は、互いに係合可能に設けられている。第一係合部451と第二係合部452とが互いに係合することで、第一レール部432を構成している。
図15は、図12におけるA−A断面図である。図16は、図12におけるB−B断面図である。図15及び図16に示すように、第一係合部451及び第二係合部452は、Y方向の異なる位置において異なる構成を有している。
まず、図15に示すように、第一係合部451は、L字型に形成された鈎状部451aを有している。鈎状部451aは、−X側端部が+Z側に折り返されている(折り返し部451c)。第二係合部452は、鈎状部451aの+Z側を覆うカバー部452aを有している。カバー部452aは、−Z側の面の一部が−Z側に突出している(突起部452c)。図15に示す箇所においては、折り返し部451cと突起部452cとが係止されることにより、第一係合部451と第二係合部452とが係合された状態となっている。
次に、図16に示すように、第二係合部452は、L字型に形成された鈎状部452bを有している。鈎状部452bは、+X側端部が+Z側に折り返されている(折り返し部452d)。第一係合部451は、鈎状部452bの+Z側を覆うカバー部451bを有している。カバー部451bは、−Z側の面の一部が−Z側に突出している(突起部451d)。図16に示す箇所においては、折り返し部452dと突起部451dとが係止されることにより、第一係合部451と第二係合部452とが係合された状態となっている。
一方、図14に示すように、第一ケース部材472は、第三係合部453を有する。第三係合部453は、第一ケース部材472のうち第二側面44aに設けられている。第三係合部453は、第二側面44aから−Z側へ突出するように形成されている。第三係合部453は、Y方向に延びるように形成されている。
第二ケース部材474は、第四係合部454を有する。第四係合部454は、第二ケース部材474のうち第二側面44bに設けられている。第四係合部454は、第二側面44bから−Z側へ突出するように形成されている。第四係合部454は、Y方向に延びるように形成されている。
第三係合部453及び第四係合部454は、互いに係合可能に設けられている。第三係合部453と第四係合部454とが互いに係合することで、第二レール部442を構成している。第三係合部453及び第四係合部454は、例えば図15に示すような第一係合部451及び第二係合部452と同様の構成となっている。
以上のように、本実施形態によれば、第一ケース部材472の第一係合部451及び第二ケース部材474の第二係合部452を、それぞれ、第一レール部432及び第二レール部443の少なくとも一部として兼用することができるので、第一係合部451及び第二係合部452と、第一レール部432部及び第二レール部442とを別々に設ける必要が無くなる。これにより、その分のスペースを節約することができるため、大型化を防ぎつつ収容効率を向上させることができる。
また、第一係合部451及び第二係合部452が、それぞれ、第一ケース部材472及び第二ケース部材474の外面(第一側面43及び第二側面44)に設けられているため、容積効率が高く、より多くのインクを効率よく収容可能なカートリッジ4を実現することができる。
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば以下のような変形が可能である。
例えば、上記実施形態においては、ケース9の第一側面43に第一レール部432が設けられ、第二側面44に第二レール部442が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、第一レール部432及び第二レール部442のうち一方を残して他方を省略する構成であっても構わない。
このような構成として、例えば、図17に示すように、ケース9の第二側面44側が連結部455によって連結され、第一ケース部材472と第二ケース部材474とが一体化された構成であっても構わない。この構成においては、ケース9の第一側面43に設けられた第一係合部451と第二係合部452とを係合させることにより、第一レール部432を形成することができる。
また、上記実施形態においては、第一ケース部材472と第二ケース部材474とが組み合わされて一体化された状態で、第一係合部451及び第二係合部452が第一レール部432を構成し、第三係合部453及び第四係合部454が第二レール部442を構成する場合を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図18に示すように、第一係合部451及び第二係合部452の一方によってのみ第一レール部432が形成された構成であっても構わない。
また、上記実施形態においては、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に対してX方向に並ぶように配置され、当該カートリッジ4が−Y方向へ挿入され、板状に形成されたカートリッジ4の板面がYZ平面に平行な状態となる場合を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
例えば、図19に示すように、カートリッジ4がZ方向に並ぶように配置された構成であっても構わない。なお、図19に示す構成において、カートリッジ4は−Y方向に挿入され、カートリッジ4の板面はXY平面に平行な状態となっている。なお、カートリッジ4の挿入方向は−Y方向に限られず、他の方向(例、±X方向)であっても構わない。
また、例えば図20に示すように、カートリッジ4がXY平面に対して−Z側に傾いた方向に挿入された状態で配置された構成であっても構わない。なお、カートリッジ4がXY平面に対して+Z側に傾いた方向に挿入される構成であっても構わない。更に、例えば図21に示すように、カートリッジ4が−Z方向に挿入される構成であっても構わない。
また、例えば、上記実施例では、カートリッジ4は、印刷材収容部450を有していたが、ケース9に直接インクが収容されていても良い。
本発明は、インクジェットプリンター及びそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の印刷装置及びそのカートリッジにも適用することができる。例えば、以下のような各種の印刷装置及びそのカートリッジに適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレー等の画像表示装置用のカラーフィルタの製造に用いられる色材を噴射する印刷装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーや、面発光ディスプレー (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材を噴射する印刷装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する印刷装置
(5)精密ピペットとしての試料印刷装置
(6)潤滑油の印刷装置
(7)樹脂液の印刷装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する印刷装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する印刷装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する印刷装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える印刷装置
なお、「液滴」とは、印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。
また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。