1. 本開示の断熱容器の全体
(a)本開示の断熱容器
本開示は、真空断熱材が使用され、組立および分解が可能な断熱容器について、説明する。断熱容器は、側面パネル、天面パネル、および底面パネルに囲まれた断熱空間を形成することが可能であり、かつ、断熱空間が形成されている組立状態から断熱空間が形成されていない分解状態に変更すること、および分解状態から組立状態に変更することが可能である。断熱容器の側面パネルは、外側パネル、および外側パネルの断熱空間側のパネル面に配置された内側パネルを備える。内側パネルは、真空断熱材を含む断熱部を備える。外側パネルは、組立状態で、側面パネルの天面パネル側の端部から側面パネルの底面パネル側の端部まで連続的に延びる、金属製の金属支持部を備える。金属支持部は、組立状態で、側面パネルの断熱空間側のパネル面、天面パネルの断熱空間側のパネル面、および底面パネルの断熱空間側のパネル面により形成される断熱空間に接触しない。
(b)本開示の断熱容器の需要
断熱容器は、例えば物流分野において、保冷または保温が必要な物品の保管や輸送に使用される。このような断熱容器は、一般的に、物品を収納することが可能な容器内部が断熱パネルで囲まれている断熱空間になっていることによって、容器内部の温度変化が極力抑制されるように構成されている。断熱性能を確保するために、断熱パネルには一定の厚さが必要とされる。そのため、断熱容器は、通常の容器と比べて容器内部の体積が小さくなるという問題がある。そこで、断熱容器を組立および分解が可能な構成にすることによって、温度管理が要求される荷物に対しては断熱容器を組み立てて使用し、温度管理が要求されない荷物に対しては通常の容器を使用して断熱容器は分解して保管する運用ができる。
もっとも、断熱容器が大きくなれば、その断熱容器に必要な断熱性パネルも大きくなるが、大きな断熱性パネルは、重くて取り扱い難くなる。そのため、組立および分解が可能な断熱容器は、一般に、各寸法がcmオーダーのものである。しかし、物流分野において汎用されている平パレットは、例えば、日本で一貫輸送用平パレットとしてJISにより規格化されているT11型が縦幅1100mm×横幅1100mm×高さ144mmである。各寸法がcmオーダーの断熱容器は、平パレットに載せて輸送または/および保管しようとする荷物全体を収納することができない場合がある。
さらに、パレットなどの荷役台を用いた輸送や保管では、トラック、鉄道、船舶、航空機などの輸送機械の荷台、コンテナ、倉庫などの限られたスペースを有効に活用するため、荷役台を少なくとも二段に積むことができることが要求される。しかし、各寸法がcmオーダーである従来の断熱容器の各寸法を単に大きくしても、断熱容器にかかる荷重に耐えられず、断熱パネルが破損する場合がある。発泡断熱材では、発泡断熱材の一部が破損した場合であっても、断熱性能の低下は破損した一部に限定されるが、真空断熱材では、真空断熱材の小さい一部が破損すると、その真空断熱材全体の断熱性能が低下することになる。そのため、真空断熱材を使用した断熱容器では、真空断熱材の破損をできる限り防ぐ対策を講じることが要求される。また、容器の耐荷重性を高めるために、金属材料の使用が考えられる。しかし、金属材料は熱伝導性が高いので、断熱容器に金属材料を用いる場合には、断熱性能の低下をできる限り防ぐ対策を講じることが要求される。
(c)断熱容器の主要な構造
本開示の断熱容器は、側面パネル、天面パネル、および底面パネルに囲まれた断熱空間を形成することが可能であり、かつ、断熱空間が形成されている組立状態から断熱空間が形成されていない分解状態に変更すること、および分解状態から組立状態に変更することが可能である。そのため、本開示の断熱容器は、使用しない場合には、分解して重ねることによって小さくした分解状態で保管や輸送ができる。
側面パネルは、外側パネル、および外側パネルの断熱空間側のパネル面に配置された内側パネルを備え、内側パネルは、真空断熱材を含む断熱部を備える。真空断熱材は厚さが小さくても断熱性能が良好なので、真空断熱材を使用することによって、側面パネルを軽量化することができ、組立状態の断熱容器の収納容積を増やすことができ、また、分解状態の断熱容器をコンパクト化することができる。
側面パネルの外側パネルは、組立状態で、側面パネルの天面パネル側の端部から側面パネルの底面パネル側の端部まで連続的に延びる、金属製の金属支持部を備える。金属支持部が自重や天面側からの荷重を支えるので、本開示の断熱容器は、耐荷重が良好であり、断熱容器を大型化して、それを二段積みしようとした場合であっても、真空断熱材が破損することの危険性を減らすことができる。
側面パネルの外側パネルの金属支持部は、組立状態で、側面パネルの断熱空間側のパネル面、天面パネルの断熱空間側のパネル面、および底面パネルの断熱空間側のパネル面により形成される断熱空間に接触しない。そのため、金属支持部を通じて熱が伝わって、断熱容器の断熱性能が低下することを抑制することができる。
上記より、本開示の断熱容器は、真空断熱材が使用され、組立および分解が可能な断熱容器で、良好な耐荷重および断熱性能を得ることができる。
(d)断熱容器の付随的な構造
前記断熱容器で、前記側面パネルの前記外側パネルは、前記金属支持部を備えていない部位を有し、前記部位に有機高分子製の保護材を備えていてもよく、前記金属支持部が前記外側パネルの前記断熱空間側のパネル面に占めている面積と前記保護材が前記外側パネルの前記断熱空間側のパネル面に占めている面積との和に対する前記金属支持部が前記外側パネルの前記断熱空間側のパネル面に占めている面積の割合が40%以下であってもよい。断熱性能の向上および断熱容器の軽量化を図ることができる。この割合は、20%以下や10%以下にすることができる。一方で、この割合は、1%以上であってもよい。
前記断熱容器で、前記側面パネルの前記外側パネルの前記金属支持部は、前記断熱容器の角部に配置されてもよく、前記側面パネルの前記外側パネルの前記保護材は、前記断熱容器の面部に配置されてもよい。断熱容器の耐荷重の向上を効率的に図ることができる。
前記断熱容器は、パレットを備えていてもよく、前記パレットは、前記断熱容器の前記底面パネルの前記断熱空間とは反対側のパネル面に配置されていてもよい。パレット付きの断熱容器は、フォークリフトやハンドリフトなどにより容易に移動することができるので、移動作業中に誤って断熱容器で使用されている真空断熱材を破損させる危険性が低減する。
前記断熱容器の前記底面パネルは、前記パレットに接合されていてもよい。パレットと一体的に固定された底面パネルの位置を基準にしながら断熱容器を構成する各パネルを組み立てることができるので、各パネルを適切な位置に配置して良好な断熱性能を得ることが容易になる。
前記断熱容器の前記底面パネルは、前記パレットから分離可能であってもよい。汎用のパレットを使用することができるので、本開示の断熱容器の使いやすさが向上する。また、荷物の積み降ろしの際に、例えば荷物の角部などが底面パネルに誤って衝突するおそれがある。もし底面パネルが真空断熱材を有する場合には、衝突により真空断熱材が破損するおそれがあるが、底面パネルだけ交換すればよいので、修復が容易になる。
前記断熱容器の前記側面パネルは、前記組立状態で前記底面パネル側に向かう飛び出し部を前記底面パネル側の端部に備えていてもよい。側面パネルの飛び出し部の位置を基準にしながら断熱容器を組み立てることができるので、各パネルを適切な位置に配置して良好な断熱性能を得ることが容易になる。飛び出し部の例としては、後述する側面ガイド部が挙げられる。
前記断熱容器は、前記断熱容器の側面パネルの外周形状が、前記組立状態の前記断熱容器を天面側から見た場合に、少なくとも1組の対向する2辺の長さが0.5m以上の四辺形であってもよく、少なくとも1組の対向する2辺の長さが1m以上の四辺形であってもよい。そのような外周形状により、平パレットに載せて輸送または/および保管しようとする荷物全体を収納することができる。また、前記断熱容器は、前記断熱容器の側面パネルの外周形状が、前記組立状態の前記断熱容器を天面側から見た場合に、少なくとも1組の対向する2辺の長さが1.4m以下の四辺形であってもよい。断熱容器の保管や輸送の際に、衝突により外周パネルが破損する危険性を減らすことができる。
本開示の断熱容器の外周形状や各寸法は、特に限定されない。本開示の断熱容器は、各寸法がcmオーダーのものであってもよいし、各寸法の1つ以上が1m以上のものであってもよい。前記断熱容器の側面パネルの外周形状の具体例としては、前記組立状態の前記断熱容器を天面側から見た場合に、縦幅および横幅がそれぞれ1000mm以上かつ1200mm以下の四辺形、縦幅が1119mm以上かつ1319mm以下で横幅が1116mm以上かつ916mm以下の四辺形、縦幅が1100mm以上かつ1300mm以下で横幅が900mm以上かつ1100mm以下の四辺形、縦幅が1100mm以上かつ1300mm以下で横幅が700mm以上かつ900mm以下の四辺形、縦幅および横幅がそれぞれ1065mm以上かつ1265mm以下の四辺形を挙げることができる。側面パネルの形状を各国の標準的なパレットの形状に適した寸法にすることによって、輸送や保管の効率化を図ることができる。また、断熱容器の側面パネルの外周形状として、例えば、前記組立状態の前記断熱容器を天面側から見た場合に、縦幅が795mm以上かつ995mm以下で横幅が644mm以上かつ844mm以下の四辺形としてもよい。標準的な台車の形状に適した寸法にすることによって、輸送や保管の効率化を図ることができる。
前記断熱容器で、前記側面パネルの前記外側パネルは、前記金属支持部を備えていない部位を有し、前記部位に有機高分子製の保護材を備えていてもよく、前記断熱容器、または前記断熱容器に収納された荷物は、無線通信装置を備えてもよい。後述するRFタグ部などの無線通信装置を配置する場合に、金属支持部が無線通信装置の電波の受発信を阻害することを抑制することができる。なお、無線通信装置は、後述するRFタグ部に限定されず、電波の受発信による無線通信装置であればどのようなものでも用いることができる。例えば、RFID装置、特定省電力無線装置、無線LAN装置、Bluetooth装置(「Bluetooth」は登録商標)、3G回線などの携帯電話装置、LoRaなどのLPWAネットワークで情報を送信する無線装置、が挙げられる。無線通信装置は、電波の受発信により外部装置と通信するものや、電波の受発信により断熱容器やその内部に設置された検知装置などの内部装置と通信するものが挙げられる。
前記断熱容器は、前記側面パネルに配置することが可能な無線通信装置を備えてもよく、前記無線通信装置は、前記無線通信装置が配置される側面パネルを側面側から平面視した場合に、前記金属支持部と重ならない位置に配置されてもよい。金属支持部が無線通信装置の電波の受発信を阻害することを抑制することができる。また、前記断熱容器は、前記側面パネルに配置することが可能な無線通信装置を備えてもよく、前記側面パネルの前記外側パネルは、前記金属支持部を備えていない部位を有し、前記部位に有機高分子製の保護材を備えていてもよく、前記無線通信装置は、前記無線通信装置が配置される側面パネルを側面側から平面視した場合に、前記保護材と重なる位置に配置されてもよい。電波の受発信が有機高分子製の保護材を通して可能になる。また、前記断熱容器は、前記天面パネルまたは前記側面パネルに配置することが可能な無線通信装置を備えてもよい。金属支持部は側面パネルに配置されているので、側面パネル以外のパネルに無線通信装置を配置することによって、金属支持部が無線通信装置の電波の受発信を阻害することを抑制することができる。
前記断熱容器は、前記側面パネルに配置することが可能な無線通信装置を備えてもよく、前記無線通信装置が前記側面パネルの前記外側パネルと前記側面パネルの前記内側パネルの間に配置されてもよい。前記無線通信装置が破損する危険性を低減することができる。
前記断熱容器は、無線通信装置が配置されるパネルと、前記無線通信装置が配置される前記パネルと交換可能で、無線通信装置が配置されない交換用のパネルとを備えてもよい。また、本開示の前記断熱容器は、保冷剤または保温剤が収納可能な収納部が配置されるパネルと、保冷剤または保温剤が収納可能な前記収納部が配置される前記パネルと交換可能で、保冷剤または保温剤が収納可能な収納部が配置されない交換用のパネルとを備えてもよい。本開示の断熱容器は組立および分解が可能であるため、これらの交換用のパネルの活用が可能になる。これらの交換用のパネルを活用することによって、本開示の断熱容器による輸送や保管の効率化を図ることができる。なお、交換用のパネルは、側面パネル、天面パネル、または底面パネルのいずれのパネルを対象としてもよく、これらのパネルの一部を構成するパネルを対象としてもよい。
前記断熱容器は、前記断熱空間に接する導電材を備えてもよい。本開示の前記断熱容器は、金属支持部が断熱空間に接触しないように構成されているため、断熱容器の内部に静電気が発生し易くなるおそれがある。そこで、導電材により静電気が断熱容器の容器内部に蓄積することを抑制することができる。
前記断熱容器は、前記側面パネルの前記内側パネルの前記断熱部が前記真空断熱材の前記断熱空間側に発泡断熱材を備えてもよく、前記真空断熱材が前記断熱部の内部で前記外側パネル側に片寄って配置されてもよい。真空断熱材の外側を外側パネルにより保護し、真空断熱材の内側を発泡断熱材により保護することによって、真空断熱材が破損し難くなる。真空断熱材の外側に配置される発泡断熱材を減らしたり無くしたりすることのよって、断熱容器の容量を増やすことができる。
前記断熱容器は、前記側面パネルの前記内側パネルの前記断熱部が前記真空断熱材の端面と前記内側パネルの端面との間に発泡断熱材を備えてもよい。前記真空断熱材の端面と前記内側パネルの端面との間に空隙を設けることなく、発泡断熱材が充填されることによって、断熱容器の断熱性能の低下を抑制することができる。
前記断熱容器は、前記側面パネルの前記外側パネルと前記側面パネルの前記内側パネルとが分離可能に配置されてもよい。もし内側パネルの真空断熱材が破損した場合に、内側パネルだけ交換すればよいので、修復が容易になる。また、前記断熱容器は、前記外側パネルと前記内側パネルとを分離した場合に、前記真空断熱材の表面を目視することができるように構成されてもよい。破損した真空断熱材の表面には異常な変形が発生する場合があるので、内側パネルを壊さずに真空断熱材を目視して、真空断熱材が破損しているかどうか検討することができる。なお、後述する遮熱シートが真空断熱材を覆っている場合には、透明な遮熱シートを使用することによって、真空断熱材の表面を目視することができる。また、前記断熱容器は、前記真空断熱材が前記内側パネルから分離可能に配置されてもよい。もし内側パネルの真空断熱材が破損した場合に、破損した真空断熱材の交換が容易になる。
前記断熱容器で、前記側面パネルは、複数の部分パネルを備えてもよく、前記複数の部分パネルのそれぞれは、組立状態で、内側パネルの一端側のパネル面が他の部分パネルの内側パネルの端面に接触するように配置されてもよく、かつ、内側パネルのもう一端側の端面が他の部分パネルの内側パネルのパネル面に接触するように配置されてもよい。横からの衝撃に対して全方位的に耐えられる内部パネルの配置構造なので、断熱容器の断熱性能が安定する。
前記断熱容器で、前記側面パネルは、第1部分パネル、および前記第1部分パネルの端側に配置される第2部分パネルを備えてもよく、前記第1部分パネルの内側パネルのパネル面と前記第2部分パネルの内側パネルの端面とが弾性体を介して配置されてもよい。前記側面パネルは、第1部分パネル、および前記第1部分パネルの端側に配置される第2部分パネルを備えてもよく、前記第1部分パネルの内側パネルのパネル面および前記第2部分パネルの内側パネルの端面は、パネル面に垂直な断面で見た場合に、弧形状になっている弧面を有してもよく、前記第1部分パネルおよび前記第2部分パネルは、組立状態で、前記弧面どうしが接触するように配置されてもよい。前記側面パネルは、第1部分パネル、および前記第1部分パネルの端側に配置される第2部分パネルを備えてもよく、前記第1部分パネルおよび前記第2部分パネルの内側パネルの端面は、パネル面に垂直な断面で見た場合に、パネル面の法線に対して傾斜している傾斜面を有してもよく、前記第1部分パネルおよび前記第2部分パネルは、組立状態で、前記傾斜面どうしが接触するように配置されてもよい。前記断熱容器で、前記側面パネルは、第1部分パネル、および前記第1部分パネルの端側に配置される第2部分パネルを備えてもよく、前記第1部分パネルの内側パネルの端部と前記第2部分パネルの内側パネルの端部とが嵌合構造を形成するように配置されてもよい。これらの配置構造は、内部パネルどうしの接合が良くなるので、断熱容器の断熱性能が向上する。
前記断熱容器で、前記側面パネルは、第1部分パネル、前記第1部分パネルの一方の端側に配置される第2部分パネル、および前記第1部分パネルのもう一方の端側に配置される第3部分パネルを備えてもよく、前記第1部分パネルは、前記組立状態で、壁面を構成する板部、および直線状の回転中心まわりで前記板部に対して回転して開閉可能である扉部を備えてもよく、前記第1部分パネルの外側パネルの天面側の端面の位置は、前記組立状態で、前記第2部分パネルの外側パネルの天面側の端面の位置および前記第3部分パネルの外側パネルの天面側の端面の位置よりも低くてもよい。第1部分パネルの開閉が容易になる。なお、例えば、第1部分パネルとして後述する正面パネル、第2部分パネルとして後述する右面パネル、第3部分パネルとして後述する左面パネルとすることができる。しかし、これに限定されず、正面パネル以外の開閉可能なパネルが存在する場合は、そのパネルを第1部分パネルとして、上述のように構成すればよい。
前記断熱容器で、前記側面パネルは、壁面を構成する板部、および直線状の回転中心まわりで前記板部に対して回転して開閉可能である扉部を備えてもよく、前記回転中心に直交する断面を見た場合に、前記扉部の閉状態での前記板部と前記扉部の境界面が同一平面上になくてもよい。板部と扉部の境界を経路とする伝熱を抑制され、断熱容器の断熱性能が向上する。また、前記板部側の外側パネルと前記扉部側の外側パネルが接触する位置と前記板部側の内側パネルと前記扉部側の内側パネルが接触する位置がずれて配置されることによって、前記境界面が同一平面上になくてもよく、例えば屈曲していてもよい。板部側の外側パネルと扉部側の外側パネルが接触する位置を板部側の内側パネルまたは扉部側の内側パネルが覆うので、板部と扉部の境界を経路とする伝熱をより抑制することができる。前記扉部の開状態での前記板部側および/または前記扉部側の内側パネルの端面は、表示部を有していてもよい。表示部が警告として働くので、外側パネルによって保護されていない板部側の内側パネルまたは扉部側の内側パネルの端部に衝撃が与えられて真空断熱材が破損する危険性を低減することができる。
前記側面パネルまたは前記天面パネルは、開閉可能な扉部、前記扉部を閉状態に保持するラッチ機構、前記ラッチ機構に接続されており前記ラッチ機構による前記扉部の保持状態を解除するために操作される操作部材、および前記操作部材の少なくとも一部を覆って前記扉部に配置された変形可能な取っ手部を備えていてもよい。断熱容器を組み立てたり分解したりする際に、操作部材が誤って内部パネルにぶつかって真空断熱材が破損する危険性を低減することができる。
前記断熱容器で、前記天面パネルは、前記側面パネルと分離可能であり、折り畳み可能である。断熱容器を組み立てたり分解したりする際に、天面パネルの上げ下ろし作業が容易になり、天面パネルが誤って内部パネルにぶつかって真空断熱材が破損する危険性を低減することができる。
前記断熱容器で、底面パネルの前記断熱空間側に、有機高分子製の底面保護材が配置されてもよい。比較的伝熱性が低い有機高分子材料が用いられる保護材を用いるので、断熱性能が低下し難い。もし底面パネルが真空断熱材を有する場合には、真空断熱材が破損する危険性を低減することができる。
前記断熱容器で、前記側面パネルは、前記断熱容器の前記分解状態で、複数のパネルに分離可能であってもよく、前記側面パネルの端面は、複数のパネルを積み重ねる順番を識別するための表示部を有してもよい。断熱容器を組み立てたり分解したりする作業の効率化を図ることができる。また、真空断熱材が破損する危険性が低減するように順番を決めて、その順番通りに積み重ねるように指示することが容易になる。
前記断熱容器で、前記側面パネルは、前記断熱容器の前記分解状態で、複数のパネルに分離可能であってもよく、前記側面パネルの端部は、複数のパネルを積み重ねる順番を識別するための嵌合構造を有してもよい。断熱容器を組み立てたり分解したりする作業の効率化を図ることができる。また、真空断熱材が破損する危険性が低減するように順番を決めて、その順番通りに積み重ねるように指示することが容易になる。
(e)本開示の断熱容器の一例
以下、図面等を参照して、本開示の断熱容器の一例について説明する。ただし、本開示の断熱容器は、この例や後述する実施形態に限定されない。
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
本開示の断熱容器の一例を図1〜図3に示す。図1は、本開示の断熱容器の一例の構造を示す図である。図2は、本開示の断熱容器の一例の各パネルを外している状態を示す図である。図3は、本開示の断熱容器の一例を二段積みにした状態を示す図である。
図1に示す通り、本例の断熱容器100は、側面パネル110、天面パネル170、底面パネル190、および爪孔501を有するパレット500を備える。側面パネル110は、右面パネル120、左面パネル130、背面パネル140、および正面パネル150を備える。側面パネル110、天面パネル170、および底面パネル190の各々は、後述の通り、真空断熱材を含む断熱部を備えている断熱パネルである。なお、本例では、天面パネル170および底面パネル190は、真空断熱材を含む断熱部を備えているが、これを限定するものではない。天面パネル170および底面パネル190の断熱部は、例えば発泡断熱材などの真空断熱材ではない断熱材を用いてもよい。また、右面パネル120および左面パネル130は、金属支持部310およびフレーム部320を備えている。縦枠としての金属支持部310および横枠としてのフレーム部320により各パネルの外側パネルの枠の全体が構成されている。図示しないが、背面パネル140および正面パネル150も同様に、金属支持部310およびフレーム部320を備えている。なお、本例では、各パネルの外側パネルの枠以外の領域は、後述する有機高分子材料を主成分とする保護材を備えているが、これを限定するものではなく、外側パネルの全体が金属支持部を構成していてもよく、外側パネルの枠以外の領域に他の金属支持部が配置されていてもよい。また、外側パネルのなかで金属支持部が占める割合が、本例よりも多くてもよく少なくてもよい。金属支持部の形状も、特に限定されず、パネルの一方の端部からもう一方の端部まで連続的に延びる部分が金属支持部に存在していればよい。
なお、本明細書において、理解を容易にするために、断熱容器100における方向や位置を下記のように記載する場合がある。
底面パネル190のパネル面に垂直な、底面パネル190から天面パネル170に向かう方向を+Z方向または上方向とし、+Z方向に対する反対方向を−Z方向または下方向とする。+Z方向および/または−Z方向を単にZ方向と称することもある。+Z方向に垂直な平面である水平面の内、背面パネル140のパネル面に垂直な、背面パネル140から正面パネル150に向かう方向を+X方向とし、+X方向に対する反対方向を−X方向とする。+X方向および/または−X方向を単にX方向と称することもある。+X方向に直行する右面パネル120のパネル面に垂直な、左面パネル130から右面パネル120に向かう方向を+Y方向とし、+Y方向に対する反対方向を−Y方向とする。+Y方向および/または−Y方向を単にY方向と称することもある。
各パネルの主面をパネル面とし、主面以外を端面とする。各パネルの断熱空間側のパネル面側をパネルの内側、断熱空間側のパネル面側と反対のパネル面側をパネルの外側とする。
正面パネル150および天面パネル170は、部分的に開閉可能な構造であり、図1では部分的に開いた状態を示している。図1の断熱容器100は、正面パネル150および天面パネル170を閉じた状態にすることによって、四角柱構造の組立状態になり、側面パネル110、天面パネル170、および底面パネル190に囲まれた断熱空間をその容器内部に形成することが可能である。
図2に示す通り、断熱空間300が形成されている組立状態の断熱容器100は、右面パネル120、左面パネル130、背面パネル140、および正面パネル150、ならびに天面パネル170を底面パネル190およびパレット500から分離することによって、断熱空間300が形成されていない分解状態にすることが可能である。明らかに、図2に示すのとは逆に、分解状態の断熱容器100の各パネルを連結することによって、組立状態の断熱容器100に変更することが可能である。
図2に示す通り、側面パネル110である正面パネル150、左面パネル130、背面パネル140、および右面パネル120は、それぞれ外側パネル150B、130B、140B、120B、および内側パネル150A、130A、140A、120Aを備える。天面パネル170は外側パネル170Bと内側パネル170Aを備える。底面パネル190は内側パネル190Aを備える。図示しないが、内側パネルの各々は、真空断熱材を含む断熱部を備える。なお、内側パネル190Aはパレット500で保護されるため、本例では、底面パネルは、外側パネルは備えていないが、これを限定するものではなく、底面パネルは、外側パネルを備えていてもよい。これによって、底面パネルが荷物の荷重によりパレット500の表面の凹凸に押し付けられて、底面パネルの内側パネル190Aが有する真空断熱材が破損することを抑制できる。また、本例では、天面パネル170は、外側パネル170Bを備えているが、これを限定するものではなく、天面パネルは、外側パネル170Bを備えていなくてもよい。天面パネル170が、外側パネル170Bを備えることによって、断熱容器を二段積みしたときに、上段の保冷箱の底面によって、下段の保冷箱の天面パネル170の内側パネル170Aが有する真空断熱材が破損することを抑制できる。
図1および図2に示す通り、右面パネル120、左面パネル130、および正面パネル150は、パネルの左側および右側の端部にそれぞれ、パネルの上側である天面パネル側の端部からパネルの下側である底面パネル側の端部まで連続的に延びる、金属製の金属支持部310を備えている。図示しないが、背面パネル140も同様である。金属製の金属支持部310は、パネルの自重や天面側からの荷重を支持する柱や壁としての役割を果たす。
図1および図2に示す通り、断熱容器100の断熱空間300は、組立状態で、側面パネル110の内側のパネル面、天面パネル170の内側のパネル面、および底面パネル190の内側のパネル面により形成される。側面パネル110、天面パネル170、および底面パネル190の断熱空間300側のパネル面はそれぞれ、真空断熱材を有する内側パネル120A、130A、140A、150A、170A、および190Aの内側のパネル面により構成されている、そのため、金属支持部310が配置されている外側パネル120B、130B、140B、および150Bは、断熱空間300に接触しない。
フレーム部について補足する。図1および図2の断熱容器100では、右面パネル120、左面パネル130、および正面パネル150は、パネルの上側および下側の端部にそれぞれ、パネルの右側の端部からパネルの左側の端部まで連続的に延びる、金属製のフレーム部320を備えている。また、正面パネル150は、パネルの中央付近にパネルの右側の端部からパネルの左側の端部まで連続的に延びる、金属製のフレーム部(図示しない)も備えている。さらに、天面パネル170は、パネルの上側、下側、左側、右側の端部にそれぞれ、パネルの一方の端部からもう一方の端部まで連続的に延びる、金属製のフレーム部320を備えている。フレーム部は、断熱容器100の輸送や保管の際に横方向から加えられた場合に、その荷重を支えて、真空断熱材の破損を抑制するために配置されている。さらに、天面側からの荷重を金属支持部310に伝える横梁としての役割を果たすこともできる。しかし、フレーム部の存在を限定するものではなく、フレーム部は設けなくてもよい。また、金属製のフレーム部の使用を限定するものではなく、有機高分子材料を主成分とする有機高分子製のフレーム部を使用してもよい。図1および図2に示す通り、金属製のフレーム部320を外側パネルに配置することによって、金属製のフレーム部320が断熱空間300に接触しないので、断熱容器の断熱性能の低下を抑制できる。
本例の断熱容器100は、金属支持部310を備えることによって、側面パネルの自重や、二段積みされた断熱容器の下段の断熱容器が受ける天面側からの荷重を支えることができ、真空断熱材が破損することを抑制できる。また、本例の断熱容器100は、真空断熱材を有する内側パネルのパネル面で断熱空間300を形成して、金属支持部310が断熱空間300に接触しないようにすることによって、断熱容器の断熱性能が金属支持部310より低下することを抑制できる。
図3に示す通り、本例の断熱容器100は、同じ仕様の断熱容器100Aを上側に積み上げた状態で保管や運送ができる。断熱容器の二段積み作業は、例えば、次の手順でおこなうことができる。パレット500の荷物が載せられる面を上にして作業場の床面に配置する。断熱容器100の底面パネル190をパレット500の荷物が載せられる面にそれぞれ配置する。荷物を底面パネルに載せる。分解状態の断熱容器100を容器内部に荷物が収納されるように組み立てる。これにより、パレット500に載せられた荷物が内部に収納された組立状態の断熱容器100を得ることができる。なお、荷物を底面パネルに堆積する前に分解状態の断熱容器100の組立作業を開始して、荷物は組立後または/および組立途中で容器内部に収納してもよい。同様の手順で、パレット502に載せられた荷物が内部に収納された組立状態の断熱容器100Aを得ることができる。そして、例えばフォークリフトを使用して、断熱容器100Aを断熱容器100の上に積載する。
以下、本開示の断熱容器について、幾つかの実施形態を挙げて、より詳しく説明する。
2.第1実施形態
(a)断熱容器の構造
第1実施形態について説明する。図4は、第1実施形態の断熱容器100を説明する図である。図5は、断熱容器100の各構成部材を説明する図である。
断熱容器100は、例えば、冷凍品や加熱品等の保冷や保温が必要な物品の保管や輸送等に使用される容器である。断熱容器100は、図4に示すように略直方体形状であり、搬送用のパレット500を備えている。パレット500の側面には、反対側側面に貫通する爪孔501が設けられている。爪孔501にフォークリフトの爪部を挿入することによって、パレット500とともに、物品が収納された断熱容器100を移動することができる。
図4に示す通り、断熱容器100は、パレット500、底面パネル190、正面パネル150、左面パネル130、背面パネル140、右面パネル120、および天面パネル170に囲まれた略直方体形状である。正面パネル150は、背面パネル140にパネル面が平行な状態で対向し、天面パネル170、底面パネル190、左面パネル130および右面パネル120にパネル面が垂直な位置関係で隣接している。また、左面パネル130は、右面パネル120にパネル面が平行な状態で対向し、天面パネル170、底面パネル190、背面パネル140および正面パネル150にパネル面が垂直な位置関係で隣接している。また、背面パネル140は、天面パネル170、底面パネル190、右面パネル120および左面パネル130にパネル面が垂直な位置関係で隣接している。
断熱容器100の側面パネル110の外側のパネル面の外周形状は、組立状態の断熱容器100を天面側すなわち+Z方向から平面視した場合に、縦幅および横幅がそれぞれ1000mm以上かつ1200mm以下の四辺形である。できるだけ、1辺の長さを長くできるほうが、ひとつの断熱容器への収納容積を増やす上で有利であるばかりでなく、トラック、鉄道、船舶、航空機などの輸送機械の荷台、コンテナ、倉庫などの限られたスペースに効率的に収納する上でも効率的である。断熱容器の側面パネルの1辺の長さは、一緒に使用するパレット500の寸法と近似させることが好ましい。本実施形態の断熱容器100は、JISの規格が縦幅および横幅が1100mmであるT11型平パレットに好適である。
正面パネル150は、蝶番101によって部分的に開閉が可能なパネルである。正面パネル150の+Y方向と−Y方向の端部に、Z方向に平行な方向に延びる金属支持部310が配置されている。正面パネル150の+Z方向と−Z方向の端部にY方向に平行な方向に延びるフレーム部320が配置されている。
図5に示す通り、天面パネル170は、外側パネル170Bと内側パネル170Aを有している。正面パネル150、左面パネル130、背面パネル140、および右面パネル120は、それぞれ外側パネル150B、130B、140B、および120Bと、内側パネル150A、130A、140A、および120Aとを有している。底面パネル190は内側パネル190Aだけにより構成されている。各パネルは、その内側パネルが内部の閉鎖空間側を向くように囲んで配置されている。内側パネルの内側のパネル面で囲まれた領域が断熱空間300となる。
(b)断熱容器の組立および分解
(i)断熱ボックスの組立
図6〜図10は、断熱容器100を順番に組立てた場合の各々の組立工程の一例を説明する図である。まずは、図6の通り、パレット500の上に底面パネル190を敷く。次に、左面パネル130を底面パネル190の−Y方向側に立てて配置する。左面パネル130の内側パネル130Aは断熱空間300側である+Y方向側に配置される。
次に、図7の通り、背面パネル140を底面パネル190の−X方向側に立てて配置する。背面パネル140の内側パネル140Aは断熱空間300側である+X方向側に配置される。
次に、図8の通り、右面パネル120を底面パネル190の+Y方向側に立てて配置する。右面パネル120の内側パネル120Aは断熱空間300側である−Y方向側に配置される。
次に、図9の通り、正面パネル150を底面パネル190の+X方向側に立てて配置する。左面パネル130、背面パネル140、右面パネル120、および正面パネル150の、それぞれのパネル下端部には、パレット500に向かう側面ガイド部352が設けられており、側面ガイド部352は、パレット500の4側面と隣接している。これにより、側面パネル110が外部から水平方向の力を受けても、パネルがずれてパレット500からずり落ちてしまうことが抑制される。正面パネル150の内側パネル150Aは断熱空間300側である−X方向側に配置される。
最後に、図10の通り、4つの側面パネル110の上方すなわち+Z方向側に、天面パネル170を載置して、断熱容器100の組立が完了する。天面パネル170は自重で4つの側面パネル110に被さっているだけであるが、端部に側面パネル側に向く天面ガイド部351を取り付けているので、輸送中に振動等を受けても極端に載置位置がずれてしまうことが抑制される。ずれを抑制するためには、側面パネル110同士の接合に用いるネジ等による連結を追加で行ってもよいし、面ファスナー等で接合してもよい。
なお、上述の組立方法の説明では、側面パネル110の組立順番について、左面パネル130、背面パネル140、右面パネル120、正面パネル150、の順で組立てる旨の説明をしたが、これ以外にも、右面パネル120、背面パネル140、左面パネル130、正面パネル150、の順で組立てることも可能であり、正面パネル150、左面パネル130、背面パネル140、右面パネル120、の順で組み立てることも可能である。
(ii)断熱ボックスの分解
分解方法は、基本的に組立方法の逆の順に行うことによってできる。まず、図10の逆作業から始めることになるが、天面パネル170を外し、ついで図9の逆作業として、正面パネル150を外し、次に、図8の逆作業として、右面パネル120を外す。さらに、図7の逆作業として、背面パネル140を外し、最後に、図6の逆作業として、左面パネル130と底面パネル190を外すことにより、分解作業が完了する。
このように、断熱空間に物品を入れた断熱容器として使用しない場合には、できる限り全体の体積を小さくして保管、輸送することが効果的である。
図11(a)〜図11(c)は、分解された各パネルを、指定された順番に重ねた状態を、側面から見た図である。
図11(a)の通り、断熱容器100が分解されている状態では、例えば、内側パネル190Aから構成される底面パネル190が置かれ、その上に、左面パネル130が、下側を内側パネル130A、上側を外側パネル130Bとなる向きで重ねられ、その上には背面パネル140が、下側を外側パネル140B、上側を内側パネル140Aとなる向きで重ねられる。その上には右面パネル120が、下側を内側パネル120A、上側を外側パネル120Bとなる向きで重ねられ、さらにその上には、正面パネル150が、下側を外側パネル150B、上側を内側パネル150Aとなる向きで重ねられ、最後に、天面パネル170が、下側を内側パネル170A、上側を外側パネル170Bとなる向きで重ねられている。分解状態でも、底面パネル、側面パネル、および天面パネルを下側から上側に向かってこの順番で配置することによって、組み立てるときに作業者が理解しやすくなる。
このように、各パネルを、互いの内側パネル同士、外側パネル同士が隣接するように積み重ねることによって、内側パネルの真空断熱材を保護することができる。
図11(b)のように、積み重ねられたパネルの側面を見ることにより、パネルの積み重ねの順番が正しいか否かを一目瞭然に識別できる順番識別用表示105を施すことも有効である。作業者の習熟度や勘違いの有無によって、分解された各パネルを積み重ねる順番が変わらないように管理することができる。図11(b)では重ねたときに連続的な平行四辺形の形状が認識できるように表示をしているが、これに限らず、各パネルの側面に順番に番号や文字を付けたものでもよいし、正しく重ねたときには正しいデザインが認識できるが誤って積み重ねたときには正しいデザインが認識できないようにデザインを付けたものでもよい。
図11(c)のように、特定の向かい合って重ねられるべき外側パネル同士に、正しく重ねた場合のみ、互いの嵌合凸部106aと嵌合凹部106bが正しく嵌合する順番識別用嵌合構造106を設けていてもよい。なお、図11(c)は、図11(a)のA部を拡大した図である。例えば、左面パネル130の外側パネル130Bと背面パネル140の外側パネル140Bとの隣接面、右面パネル120の外側パネル120Bと、正面パネル150の外側パネル150Bとの隣接面に、それぞれ異なる位置、大きさ、数量で順番識別用嵌合構造106を設けておけば、仮に間違った順番、組み合わせでパネルを重ねてしまっても、嵌合できない箇所が現れるため、作業者が容易に間違いを認識することができる。
(c)側面パネル
(i)構造
断熱容器100を構成する各パネルのうち、側面パネル110について説明する。側面パネル110は、4枚のパネルである正面パネル150、左面パネル130、背面パネル140、および右面パネル120から構成されるが、そのうちの左面パネル130、背面パネル140、および右面パネル120は同一構造であるため、背面パネル140と正面パネル150の構成について順次説明する。図12(a)および図12(b)は、背面パネル140をパネル面に垂直な方向から平面視した図である。図12(a)は、背面パネル140を断熱容器100の外側である−X方向側から見た図であり、図12(b)は、背面パネル140を断熱容器の内側である+X方向側から見た図である。
(ii)背面パネル
(1)構造
図12(a)に示す通り、背面パネル140は、断熱容器100の外側から見た場合、外側パネル140Bが視認される。外側パネル140Bは、保護材322と、保護材322の周囲を取り囲むように、外側パネル140Bの端部に沿って枠状に配置された、2箇所の金属支持部310と2箇所のフレーム部320から構成されている。また、図12(b)に示す通り、背面パネル140は、断熱容器100の内側から見た場合、内側パネル140Aが視認され、また、内側パネル140Aの外周の外側には、外側パネル140Bの端部に配置された2箇所の金属支持部310と2箇所のフレーム部320の一部が視認される。内側パネル140Aは、主に後述する真空断熱材331を含む断熱部330から構成されている。
内側パネル140Aの外周の各寸法は、外側パネル140Bの外周の各寸法よりも小さく、内側パネル140Aは、外側パネル140Bのパネル面内に配置されている。内側パネルの端部が外側パネルの端部により保護されるので、内側パネル140Aの真空断熱材が損傷することを防ぐことができる。さらに、パネルの厚みを考慮した寸法差にすることにより、背面パネルの内側パネルの一方の端部を左面パネルの内側パネルの端部に密着させ、もう一方の端部を右面パネルの内側パネルの端部に密着させたときに、各パネルの外側パネルの端部も同様に密着するように構成することができ、組立状態の断熱容器で断熱空間の断熱性を向上させることができる。
(2)内側パネル
内側パネル140Aの構造について説明する。図13(a)および図13(b)は、断熱部330の断面図である。図14(a)および図14(b)は、断熱部330に含まれる真空断熱材331の断面図である。
図13(a)は、断熱部330の構造の一例を示す断面図である。断熱部330は、真空断熱材331、真空断熱材331の主面の一方および端面の両方を囲む発泡断熱材332、およびこれらの外周全体を包む遮熱シート333から構成されている。発泡断熱材332が真空断熱材331の端面の両側に配置されているため、発泡断熱材332が真空断熱材331の端面の両側に配置されずに空間になっている場合と比べて、断熱性能が向上する。真空断熱材331は、芯材331aおよび外装材331bから構成されている。真空断熱材331は、外装材331bが破損した場合には真空を維持することができなくなり、所望の断熱性を得ることができなくなるため、真空断熱材331は、断熱空間側に発泡断熱材332が配置されている。これにより、断熱空間に入れた物品がぶつかったときに真空断熱材331が破損する危険性を低減できる。なお、図13(a)の構成では、真空断熱材331は、断熱空間とは反対側に配置された外側パネルにより保護されている。なお、図示しないが、真空断熱材331の断熱空間とは反対側に後述する保護基材が配置されていてもよい。
図13(a)に示す断熱部330を形成する場合、必ずしも真空断熱材331を金型にセットしてから、射出成型で発泡断熱材332を一体的に成形する必要はなく、互いに別個に製造したものを後で接着剤等により接合する方法なども許容される。また、発泡断熱材の使用量を減らすことができるので、断熱部自体の厚みを薄くすることができ、収容容積を大きくとることができる。さらに、真空断熱材331と発泡断熱材332を別個に作り置きする等の製造方法の柔軟性があり、真空断熱材だけを交換することが容易である等、メンテナンス性も高まる。真空断熱材331と発泡断熱材332とは、接着剤を使用して固定してもよい。接着剤を使用しないで勘合させた場合には、真空断熱材331は発泡断熱材332から取外し可能に構成することができる。弱粘着性の接着剤を使用することによっても、真空断熱材331を発泡断熱材332から取外し可能に構成することができる。
図13(b)は、断熱部330の構造の他の一例を示す断面図である。断熱部330は、真空断熱材331、真空断熱材331を取り囲む発泡断熱材332、発泡断熱材332を取り囲む遮熱シート333から構成されており、さらに保護基材338が、断熱部330の遮熱シート333を取り囲んでいる。保護基材としては、例えば後述する外側パネルの有機高分子製の保護材を用いることができる。なお、図示しないが、断熱部330の構造は、真空断熱材331、真空断熱材331を取り囲む発泡断熱材332、発泡断熱材332を取り囲む保護基材、および保護基材を取り囲む遮熱シート333から構成されていてもよい。このときの保護基材としても、例えば後述する外側パネルの有機高分子製の保護材を用いることができる。
図14(a)に示すように、真空断熱材331は、芯材331aとガスバリア性を有する外装材331bとから構成されており、外装材331b内を減圧して得られる断熱材である。図14(b)は、真空断熱材331の他の一例である。図14(a)では、真空断熱材331の内部の両端に空隙が形成されているが、図14(b)では、空隙が形成されていない。空隙は、真空断熱材331の製造方法の違いにより形成されたり形成されなかったりする。
芯材331aは、従来から使用される公知の真空断熱材の芯材に用いられる材料を使用することができ、例えば、シリカ等の粉体、ウレタンポリマー等の発泡体、グラスウール等の繊維体等の多孔質体を使用してもよい。
外装材331bは、芯材331aの外周を覆う部材であり、芯材から熱溶着層、ガスバリア層が順に積層された可撓性を有するシートを使用してもよい。ガスバリア層は、金属箔、樹脂シートの片面に蒸着層が形成された蒸着シート等を使用してもよい。金属箔は、例えばアルミニウムを使用することができる。蒸着層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物を使用することができる。
外装材331bのガスバリア性は、酸素透過度が0.5cc・m−2・day−1以下、中でも0.1cc・m−2・day−1以下であってもよい。また、水蒸気透過度が0.2cc・m−2・day−1以下、中でも0.1cc・m−2・day−1以下であってもよい。
真空断熱材331の内部真空度は、例えば5Pa以下であってもよい。真空断熱材331の初期熱伝導率は、例えば25℃環境下で15mW・m−1・K−1以下、中でも10mW・m−1・K−1以下、特に5mW・m−1・K−1以下であってもよい。
発泡断熱材332は、真空断熱材331の少なくとも断熱空間側の主面に隣接して接合されるように配置することができる。発泡断熱材332には、公知の発泡性の断熱材を用いることができ、例えばポリウレタン発泡体であってもよい。
遮熱シート333は、隣接する真空断熱材331と発泡断熱材332の全体を覆って配置することができる。遮熱シート333としては、例えば金属箔を含む多層シートや、樹脂シートの片面に蒸着層が形成された蒸着シート等があげられる。
断熱部330は、外部から真空断熱材331が視認可能なように構成することができる。例えば、発泡断熱材332、遮熱シート333、保護基材338が存在しない領域を設けたりすること、それらの一部または全部を透明にすることが挙げられる。真空断熱材331が破損して表面に異常な変形が発生した場合に、内側パネルを壊さすことなく真空断熱材の破損状況を確認することができる。
(3)外側パネル
外側パネル140Bの構造について説明する。図12(a)に示す通り、外側パネル140Bは、内側パネル140Aよりも外側に配置され、保護材322と、保護材322の周囲を取り囲むように外側パネル140Bの端面に沿って枠状に配置された、Z方向に平行な2箇所の金属支持部310およびY方向に平行な2箇所のフレーム部320と、から構成されている。
背面パネル140と左面パネル130の隣接部の構造を説明する。図15(a)および図15(b)は、背面パネル140と左面パネル130との隣接部に関する平面図および断面図である。図15(a)は、天面パネル170を外したときの、+Z方向から見た断熱容器100の平面図である。図15(b)は、図15(a)のB部付近について、背面パネル140と左面パネル130との隣接部を結合するネジ結合部341の箇所で、Z方向に垂直な断面で切った拡大断面図である。
図15(a)に示す通り、側面パネル110は、正面パネル150の内側パネル150Aの端面と左面パネル130の内側パネル130Aのパネル面とが当接するように配置され、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と背面パネル140の内側パネル140Aのパネル面とが当接するように配置され、背面パネル140の内側パネル140Aの端面と右面パネル120の内側パネル120Aのパネル面とが当接するように配置され、右面パネル120の内側パネルの端面と正面パネル150の内側パネル150Aのパネル面とが当接するように配置されている。このように、各側面パネル110は、その内側パネルが、端面とパネル面の2箇所で、それぞれ隣接する2つの側面パネルと当接している。これにより、側面パネル110の各パネルは、開閉部を設けない場合には、外側パネルや内側パネルの寸法や配置、構造をすべて同一のものとすることができ、パネル部品の共通化がはかれる。これにより、外側、内側パネルや、断熱部、真空断熱材等の予備部品のストックを減らすことができ、部品交換や修理作業も容易となる。また、組立作業においても、例えば、左面パネル130、背面パネル140、および右面パネル120の相互の配置を間違えても、問題なく組み立てられ、機能的にも問題がなく、作業性や利便性を向上できる。なお、各パネルの配置は、図15(a)に限定されず、例えば後述する変形例がある。
金属支持部310について説明する。図15(b)に示す通り、左面パネル130の構成として、+Y方向側から−Y方向側に向かって、遮熱シート333、発泡断熱材332、真空断熱材331から構成される断熱部330がある。−Y方向側には、接着剤334を挟んで保護材322があり、接着剤334は断熱部330と保護材322とを接着固定している。保護材322の−X方向の先端には溝部310cを隔てて金属支持部310の構成部材である部分支持部310aが嵌合固定されている。保護材322や部分支持部310aは外側パネル130Bの構成部材である。また、隣接する背面パネル140の構成として、+X方向側から−X方向側に向かって、遮熱シート333、発泡断熱材332、真空断熱材331から構成される断熱部330がある。−X方向側には接着剤334を挟んで保護材322があり、接着剤334は断熱部330と保護材322とを接着固定している。背面パネル140の断熱部330の内部構造は、上述した左面パネル130の断熱部330と同様である。保護材322の−Y方向の先端には溝部310cを隔てて金属支持部310の構成部材である部分支持部310bが嵌合固定されている。部分支持部310bと、前述した部分支持部310aとは、その一部に貫通孔が開けられ、ネジ結合部341により、連結されている。
図15(b)において、左面パネル130の内側パネル130Aの−X方向側の端面である断熱部330の端面330aは、背面パネル140の内側パネル140Aの内側のパネル面である断熱部330の面330bと当接しており、断熱部330で囲まれた断熱空間の断熱性を維持している。また、左面パネル130の部分支持部310aと、背面パネル140部分支持部310bとが当接して、一体の金属支持部310を形成し、この金属支持部310は、底面パネル190のパネル面に垂直な方向に、天面パネル170側の端部から底面パネル190側端部から天面パネル170側端部まで連続的に延びている。2つの部分支持部310aと310bとは、ネジ結合部341により連結されているので、左面パネル130と背面パネル140とは、互いに位置がずれることなく固定され、かつ必要な剛性を得ることができる。
これより、特に断熱容器を二段積みする際に、金属支持部310が、上下方向に掛かる荷重を支えることにより、真空断熱材の変形や破損の危険性を低減することができる。金属支持部310は、金属材料の全般が適用可能であり、例えば鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、真鍮、亜鉛等を用いることができる。軽量化、加工適性、剛性の観点からはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。
保護材322について説明する。外側パネルの構成部材で使用された場合、保護材322は、内側パネルの真空断熱材331を保護し、また、その端部に金属支持部310およびフレーム部320を配置して、外側パネル全体としての面としての剛性を持たせることができる。保護材322は、断熱性を高めるために、熱伝導率の低い材料により構成されていてもよい。例えば合板、発泡材、樹脂板、エンボス樹脂シート、板紙等の有機高分子材料や、セラミック部材などを用いることができる。軽量で比較的剛性のある材料として、プラスチックダンボールや養生された木材などを使用することができる。保護材322は、接着剤334を介して、内側すなわち断熱空間側に隣接する断熱部330と接合される。接着剤334は、任意の液状、固体の接着剤を用いることができる。断熱部を容易に着脱できるので、例えば面ファスナーや両面テープを用いてもよい。着脱可能とすることにより、例えば真空断熱材331だけを交換したい場合に、パネル全体を断熱容器100から外す必要がなく、メンテナンス性が向上する。
フレーム部320について説明する。フレーム部320は、図12(a)および図12(b)で説明した通り、外側パネルの上側および下側の端部にそれぞれ、外側パネルの右側の端部から外側パネルの左側の端部まで連続的に延びるように配置されている。本実施形態では、フレーム部320の材料は、金属支持部310と同一部材を用いて設計、構造の簡略化を図っているが、必ずしも同じにする必要はなく、他の部材、例えばポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリアセタール、フェノール樹脂等の各種樹脂を用いてもよい。
背面パネル140の外側パネル140Bは、後述する背面パネル140がパレット500からずり落ちないようにするために、パレット500に向かう飛び出し部である、側面ガイド部352を備えることができる。
(iii)左面パネル、左面パネル
左面パネル130および右面パネル120は、上述した背面パネル140と同一の構造であるため、左面パネルおよび右面パネルの説明は省略する。
(iv)正面パネル
正面パネル150の構造について説明する。図16(a)および図16(b)は、正面パネル150をパネル面に垂直な方向から平面視した図である。図16(a)は、正面パネル150を断熱容器100の外側である+X方向側から見た図であり、図16(b)は、正面パネル150を断熱容器の内側である−X方向側から見た図である。図16(a)に示す通り、正面パネル150は、Y方向に平行な直線mを中心として、+Z方向側のパネルである前扉部161と、−Z方向側のパネルである前板部151に分割されている。
前扉部161は、前板部151に対して、直線m上に配置される蝶番101を介して取り付けられており、前扉部161は前板部151に対して、直線m軸周りに開閉できるよう、回転可能に固定されている。
図16(a)に示す通り、前扉部161と前板部151とを断熱容器100の外側から見た場合、それぞれ、+Z方向側の外側パネル161Bと、−Z方向側の外側パネル151Bが視認される。外側パネル161Bは、保護材322、保護材322の周囲を取り囲むように、外側パネル161Bの端部に沿って枠状に配置された金属支持部310、および各種フレーム部から構成される。各種フレーム部は、+Z方向側の前扉部先端フレーム部162、その奥側に破線表示するフレーム部320、および−Z方向側である直線m付近の前扉部開閉フレーム部321bから構成される。
外側パネル151Bも、保護材322と、保護材322の周囲を取り囲むように、外側パネル161Bの端部に沿って枠状に配置された2箇所の金属支持部310およびフレーム部から構成される。フレーム部は、+Z方向側の前板部開閉フレーム部321a、および−Z方向側のフレーム部320とから構成される。
図16(b)では、正面パネル150は、内側から見た場合に、+Z方向側に内側パネル161Aが視認され、−Z方向側に内側パネル151Aが視認される。内側パネル151A、161Aは、真空断熱材331を含む断熱部330から構成されている。また、内側パネル161A、151Aの外周の外側には、外側パネル161B、151Bの端部に配置された金属支持部310と、フレーム部320が視認される。内側パネル161A、151Aの外周の各寸法が、それぞれ外側パネル161B、151Bの外周の各寸法より小さい理由は、上記の背面パネル140の場合と同様である。
なお、正面パネル150の内側パネルを内側パネル150Aと表すときは、本実施形態の場合には、内側パネル151Aと161Aのいずれか、または両方含めたものを指す。同様に、正面パネル150の外側パネルを外側パネル150Bと表すときも、本実施形態の場合には、外側パネル151Bと161Bのいずれか、または両方含めたものを指す。
正面パネル150が、上述した背面パネル140などと異なる点は、パネルが開閉可能で、内側パネルおよび外側パネルが2分割されている点であり、内側パネル161A、151Aおよび外側パネル161B、151Bの内部構造は、他の側面パネルの構造と同様である。さらに、開閉可能な正面パネル150の外側パネルの高さは、右面パネル、背面パネル、および左面パネルの外側パネルの高さよりも低くなっている。そのため、組立状態の断熱容器で、正面パネルの天面側の端面の位置は、右面パネル、背面パネル、および左面パネルの端面の位置よりも低くなる。そのため、天面パネルや他の断熱容器の重さにより側面パネルの端面がたわんだ場合であっても、正面パネルの開閉は妨げられない。
(d)天面パネル
天面パネル170について説明する。図17(a)および図17(b)は、天面パネル170をパネル面に垂直な方向から平面視した図であり、図17(a)は、天面パネル170を断熱容器100の外側である+Z方向側から見た図であり、図17(b)は、天面パネル170を断熱容器の内側である−Z方向側から見た図である。
図17(a)に示す通り、天面パネル170は、断熱容器100の外側から見た場合、外側パネル170Bとして視認される。外側パネル170Bは、保護材322と、保護材322の周囲を取り囲むように外側パネル170Bの端部に沿って枠状に配置された4箇所のフレーム部320から構成されている。また、図17(b)に示す通り、天面パネル170は、断熱容器の内側から見た場合、内側パネル170Aが視認されて、また、内側パネル170Aの外周の外側には、外側パネル140Bのフレーム部320に囲まれた外枠の一部が視認される。内側パネル170Aは、真空断熱材331を含む断熱部330から構成されている。天面パネルの内側パネル170Aの外周の各寸法も、側面パネルと同様に、外側パネル170Bの外周の各寸法より小さくしている。
天面パネル170が側面パネル110の上に載置された状態について説明する。図18(a)および図18(b)は、天面パネル170と左面パネル130との隣接部に関する正面図および断面図である。図18(a)は、正面パネル150を外したときの、+X方向から見た断熱容器100を示す図である。図18(b)は、図18(a)のC部付近について、X方向に垂直な断面で切った拡大断面図である。
図18(a)において、左面パネル130、天面パネル170、右面パネル120、および底面パネル190は、左面パネル130の内側パネル130Aのパネル面に、天面パネル170の内側パネル170Aの端面と、底面パネル190の内側パネルAの端面とが、当接するように配置されている。右面パネル120の内側パネル120Aのパネル面に、天面パネル170の内側パネル170Aの端面と、底面パネル190の内側パネルAの端面とが、当接するように配置されている。
図18(b)に示す通り、左面パネル130の構成として、+Y方向側から−Y方向側に向かって、遮熱シート333、発泡断熱材332、真空断熱材331から構成される断熱部330がある。−Y方向側には接着剤334を挟んで保護材322があり、接着剤334は断熱部330と保護材322とを接着固定している。保護材322の+Z方向の先端には溝部320cを隔ててフレーム部320が嵌合固定されている。隣接する天面パネル170の構成として、−Z方向側から+Z方向側に向かって、遮熱シート333、発泡断熱材332、真空断熱材331から構成される断熱部330がある。+Z方向側には接着剤334を挟んで保護材322があり、接着剤334は断熱部330と保護材322とを接着固定している。断熱部330の内部構造は上述した左面パネル130の断熱部330と同様である。保護材322の−Y方向の先端には、溝部320cを隔ててフレーム部320が嵌合固定されている。フレーム部320の−Y側には、接着剤335によって接着固定された−Z方向に向かう飛び出し部である天面ガイド部351が取り付けられている。
図18(b)において、左面パネル130の内側パネル130Aの内側のパネル面である断熱部330の面330bは、天面パネル170の内側パネル170Aの−Y方向側の端面である断熱部330の端面330aと当接しており、断熱部330に囲まれた断熱空間の断熱性を維持している。また天面パネル170は、左面パネル130の上部すなわち+Z方向側に載置され、その自重で左面パネルと当接しているが、+Z方向に垂直な面に沿って載置位置がずれないよう、天面ガイド部351により、その位置ずれを規制している。
なお、図示はしないが、上記の左面パネル130と天面パネル170の隣接部分に関する説明は、背面パネル140と天面パネル170、右面パネル120と天面パネル170および正面パネル150と天面パネルについても共通する。
(e)底面パネル
底面パネル190について説明する。本実施形態における底面パネル190は、天面パネル170における内側パネル170Aと同じの構造である内側パネル190Aによって構成される。底面パネルが、天面パネル170における外側パネル170Bに相当する構造を備えないことにより、断熱容器の軽量化を図ることができる。
パレット500に載せられた底面パネル190と、左面パネル130の隣接部の状態について説明する。図19は、底面パネル190と左面パネル130との隣接部の断面図であり、図18(a)のD部付近について、X方向に垂直な断面で切った拡大断面図である。
図19において、フレーム部320が保護材322の先端に溝部320cを隔てて嵌合固定されている。フレーム部320の外側に、パレット500に向かう飛び出し部として側面ガイド部352が、接着剤335を介して取り付けられている。この側面ガイド部352は、パレット500の側面に沿って、下側に張り出す形状で取り付けられているため、側面パネル110全体がパレット500に対して水平方向にずれようとすることを規制する。図19では、側面ガイド部352は、接着剤335でフレーム部320に接合されているが、接合手段は、接着剤に限らず、ネジ留め、リベット留め、溶接等でもよい。
また、図示はしないが、上記の左面パネル130と天面パネル170との隣接部分に関する説明や上記の左面パネル130と、底面パネル190と、パレット500との隣接部分に関する説明は、他の関連する隣接部分に関しても共通する。
また、底面パネル190の内側パネル190Aの上に直接物品を載置することによる内側パネル190Aの損傷等を防ぐために、内側パネル190Aの上に追加の保護用シートを配置してもよい。保護用シートの材質に制限はないが、樹脂性シート、たとえばプラスチックダンボールシート等を使用することができる。
(f)パレット
パレット500について説明する。パレット500としては、一般的なものを用いることができる。本実施形態の断熱容器100では、軽量で剛性があるプラスチック製のT11型平パレットを用いているが、特に限定されず、例えば、プラスチック製、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属製、木製、ダンボール製などの各種サイズのパレットが挙げられる。
(g)断熱空間
天面パネル170、側面パネル110、底面パネル190は、それぞれ内側パネル170A、110A、190Aを有する。各内側パネル170A、110A、190Aは、断熱部から構成される。側面パネル110の内側パネル110Aは、真空断熱材331を含む断熱部330から構成される。これら各パネルを組立状態にすると、図5で説明した通り、各内側パネルのパネル面によって略直方体形状の空間として、断熱空間300が形成される。断熱空間300は、周囲が断熱材で囲まれているため、外部との熱の流入や流出が制限され、断熱性を維持することができる。
(h)保冷剤、保温剤
断熱容器100に、保冷剤や保温剤を取り付ける形態について説明する。図20は、背面パネルの内側パネル140Aのパネル面に、ポケット状の収納部401が付いており、その内部に保冷剤または保温剤402を収納した図である。背面パネルの代わりにまたは背面パネルに加えて、他のパネルに同様の収納部401、および保冷剤または保温剤402を備えていてもよい。収納部401は内側パネルに直接接着剤で接合されていてもよく、または面ファスナーや両面テープで着脱可能に接合されていてもよい。
断熱容器100の用途や要求内容に応じて、保冷剤または保温剤402の収納部401が取り付けられたパネルと、取り付けられていないパネルとを用意しておき、両者を使い分ける運用をしてもよい。
(i)電子機器
断熱容器100には、各種の小型電子機器を取り付けることができる。小型電子機器としては様々なものが選択可能であるが、一例として、センサ付きRFタグ600を取り付けた形態について説明する。
センサ付きRFタグは、各種環境状態を測定し、測定データを収集する測定および測定データの出力機能を有するセンサ部と、外部機器と無線通信により情報の入出力ができるRFタグ部とを備えた、環境状態の測定と測定データおよび各種情報の無線通信による外部への入出力が可能な小型電子機器である。
図21(a)、図21(b)、図22(a)、および図22(b)は、断熱容器100に、センサ付きRFタグ600を取り付けた状態を説明する図である。図21(a)および図22(a)は、左面パネル130に、センサ付きRFタグ600を取り付けた状態を説明する図である。図21(b)および図22(b)は、図15(a)のB部付近について、保護材322に取り付けられたRFタグ部610の取り付け箇所でZ方向に垂直な断面で切った拡大断面図である。
図21(a)(b)に示す通り、本実施形態では、左面パネル130に、断熱容器100の断熱空間300の環境状態を測定し、その測定結果を外部機器に非接触通信により送信するためのセンサ付きRFタグ600を備えている。左面パネル130の内側パネル130Aの内側のパネル面に、センサ部630が取り付けられており、このセンサ部630からケーブル部620がパネル面沿いに配設される。ケーブル部620は、内側パネル130Aの端部に沿って屈曲したケーブル部621を経由して、外側パネル130Bの保護材322の貫通孔322cを通って、外側パネル130Bの外側まで配設される。ケーブル部620の端部は、同じく外側パネル130Bの外側のパネル面に取り付けられたRFタグ部610に接続されている。
RFタグ部610は、図21(b)に示す通り、外側パネル130Bの金属部分である金属支持部310から距離が離れた場所である保護材322の外側面に取り付けられている。RFタグ部610は、前述の通り、外部機器と非接触通信を行うための電波を送受信するため、付近に金属物が存在すると、感度や通信距離が低下する恐れがある。このように、RFタグ部610を、金属支持部310から離れた場所に配置することにより、通信感度や通信距離の低下を防ぐことができる。
図23は、このセンサ付きRFタグ600の構造を示すブロック図である。図23に示す通り、センサ付きRFタグ600は、RFタグ部610と、センサ部630と、その両者を電気的に接続するケーブル部620から構成されている。RFタグ部610は、外部機器との通信を非接触通信で行うための通信アンテナ部611と、通信インターフェース部612を備えている。また、RFタグ部610は、外部機器との情報のやり取りにおける各種の情報を記憶したり、センサ部630が測定した環境状態の測定データを記憶するための記憶部614と、各種制御を行う制御部613と、センサ付きRFタグ600の動作電力を供給する電源部615と、センサ部630との通信を行うための有線インターフェース部616とを有する。
制御部613は、外部機器との通信やセンサ部630への測定指示、測定結果出力指示、記憶データの記憶部614からの読み出しや記憶部614への書き込み、電源部615の状態確認等を行う。また、外部機器とやり取りする各種情報として、中に収納する物品の品目識別情報、管理温度範囲情報、管理温度範囲を逸脱したときの、対応指示情報や、連絡先識別情報、配送先識別情報、配送予定日時情報、配送完了後の断熱容器の回収予定日時情報、返送先識別情報等を含めてもよい。
RFタグ部610は、電源部615を有するが、電源部615は充電ができない一次電池でもよく、充電可能な二次電池でもよく、さらには、太陽電池、振動発電素子等を備えることにより、自身で発電して充電するタイプであってもよい。または外部機器と非接触通信をする際の通信電波から発電してこれを二次電池に充電するタイプでもよい。使用中の突然の電池切れを防ぐためには、自身が発電、または通信電波からの発電が可能な二次電池を備えた電源部であることが好ましい。
また、センサ部630は、RFタグ部610とケーブル部620介して電気的に接続され、RFタグ部610の電源部615から電力供給を受けながら、RFタグ部610の指示により周囲の環境状態を測定し、その測定結果をRFタグ部610に出力する。測定対象の環境状況は例えば温度、湿度、圧力、加速度、位置等である。それぞれ、公知の温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、加速度センサまたは振動センサ、GPSセンサ等を用いることができる。
センサ付きRFタグ600の動作、機能の詳細を説明する。まず、外部機器とセンサ付きRFタグ600との非接触通信により、外部機器からセンサ付きRFタグ600に対し、センサ部630が断熱空間の環境状態を測定する測定頻度についての指示情報を送信する。センサ部630は、温度センサと仮定する。
センサ付きRFタグ600のRFタグ部610は、外部機器からの指示情報を通信アンテナ部611、通信インターフェース部612を通じて取得し、制御部613で解読し、測定頻度の情報に従って所定の時間間隔ごとに、センサ部630に測定指示を送信する。センサ部630は、ケーブル部620を通じて電源部615からの電力供給を受けながら、有線インターフェース部616からケーブル部620を介して送信された制御部613からの測定指示に従って温度測定を行い、測定データを制御部613に送信する。
RFタグ部610の制御部613は、所定時間ごとに測定指示したセンサ部630から送信されてきた温度測定データを受信し、これを記憶部614に記憶させる。記憶部は不揮発性メモリであることが望ましい。これを繰り返し行い、外部機器からセンサ部630が測定した温度測定データの出力指示を受けた場合には、RFタグ部610は、記憶部614に記憶した温度測定データを読み出し、非接触通信を通じて外部機器に対して出力する。これにより、外部機器は、任意のタイミングで、断熱容器100に取り付けられたセンサ付きRFタグ600に対して無線通信で指示を出すことにより、あらかじめ指示しておいた測定時間間隔に従ってセンサ部630が測定した断熱空間の温度測定値を、読み出すことが可能になる。
ところで、仮に、センサ部630とRFタグ部610を接近させて内側パネル130Aの内側に設置した場合、ケーブル部620の長さを短くでき、外側パネルに貫通孔を設ける等の手間が省ける。しかしながら、内側パネル130Aの断熱部330の外周を覆う遮熱シート333や、真空断熱材331の外装材331bは、金属箔または樹脂シートの片面に蒸着層が形成された蒸着シート等が用いられることが多く、金属部材が多く存在することから、RFタグ部610と外部機器との無線通信機能に支障が出ることが考えられ、通信距離の低下や通信安定性の低下の恐れがある。
このため、本実施形態のように、RFタグ部610を、センサ部630から離し、外側パネル130Bの外側で、かつ、金属支持部310等の金属部分を避けた場所に取り付けることにより、外部機器との無線通信が阻害されることがなく、良好な通信距離や通信安定性が得られる。
また、図22(a)(b)に示す通り、ケーブル部620を内側パネル130Aの端部まで回り込ませず、内側パネル130Aのパネル面に貫通孔330cを開けて、内側パネルの外側まで引き出すこともできる。ただし、この場合は、断熱部330の中の真空断熱材331の配置を避けるように貫通孔の場所や孔径を選定する必要がある。またこの図ではRFタグ部610を外側パネル130Bの外側ではなく、内側の内側パネル130Aとの隙間部分に配置している。こうすることによりRFタグ部610を断熱容器100から着脱することは容易ではなくなるが、保管や輸送時の外力によるRFタグ部610の損傷の危険性を低減することができる。
上述の通り、図21や図22は、左面パネル130にセンサ付きRFタグ600のRFタグ部610とセンサ部630を取り付けた形態について説明したが、センサ付きRFタグ600はこれに限らず、他のパネルに対して取り付けられていてもよく、複数のパネルに取り付けられていてもよい。さらには、センサ付きRFタグ600自体を異なる環境状態の測定用として複数種類取り付けてもよい。例えば、同一の断熱容器100について、温度センサ、湿度センサ、加速度センサ、位置センサをそれぞれ有する複数のセンサ付きRFタグ600を複数のパネルに取り付けてもよい。
また、センサ付きRFタグ600を含む小型電子機器は、その全部または一部がパレット500に取り付けられていてもよく、パレット500の上面、下面、側面および内部の任意の場所に配置してもよい。例えば、パレット500の側面の、水平方向側の中央部付近に配置してもよく、さらには、隣接する2側面の、それぞれの水平方向の中央部付近に配置してもよい。また、センサ付きRFタグ600を含む小型電子機器の全部または一部を取り付けたパレットと、そうではないパレットとを使い分けて、必要性に応じて、パレットを選択する方法をとってもよい。
また、断熱容器100の用途や要求内容に応じて、センサ付きRFタグ600のRFタグ部610を配置した側面パネルを使用する場合と、使用しない場合とを、当該側面パネルを予備パネルとの交換によって使い分ける運用をしてもよい。例えば、左面パネル130として、センサ付きRFタグ600のRFタグ部610が配置されたものと、配置されていないものとの2枚のパネルを持っておき、センサ付きRFタグ600の無線通信が要求される場合には、RFタグ部610が配置された左面パネル130を使用して断熱容器100を組み立て、RFタグ部610が配置されていない左面パネル130を予備パネルとして保管しておく運用ができる。逆に、センサ付きRFタグ600の無線通信が要求されない場合には、RFタグ部610が配置されていない左面パネル130を使用して断熱容器100を組み立て、RFタグ部610が配置された左面パネル130を予備パネルとして保管しておけばよい。これは左面パネル130や他の側面パネル110はもちろんのこと、天面パネル170や底面パネル190にも適用できる。
以上のように、センサ付きRFタグ600を取り付けた断熱容器100は、断熱空間の温度等の所望の環境状態を測定し、その測定データを外部機器から無線通信で必要に応じて読み出すことが可能である。その結果、断熱空間の温度履歴、すなわち物品の温度履歴をはじめとする環境状況の把握が可能となり、物品の保証において重要な情報を断熱容器を開けることなく、容易に取得することができる。
また、RFタグ部610を、外側パネル130Bの外側の、金属支持部310を避けた位置に取り付けることにより、内側パネル130A付近の幅広い領域に存在する、金属部材による通信機能の低下を抑え、良好な通信距離や通信安定性を得ることができる。
(j)導電材
断熱容器100に、静電気の蓄積を低減するための導電性シート701を取り付けた形態について説明する。図24(a)、図24(b)、および図25は、本実施形態の断熱容器100に、導電性シート701を取り付けた状態を示す図である。図24(a)は、断熱容器100の底面パネル190の、内側のパネル面上に導電性シート701を備えた断熱容器の説明図であり、正面パネル150と天面パネル170を省略している。図24(b)は、図24(a)について、+Z方向から見た、底面パネル190の内側のパネル面の位置でZ方向に垂直な断面で切った拡大断面図である。
図24(a)(b)に示す通り、断熱容器100は、底面パネル190の上側のパネル面上に導電性を有する導電性シート701を備え、さらに、断熱容器100の外部に接地接続部731を備え、両者がケーブル部720により電気的に接続されている。ケーブル部720は、底面パネル190の内側のパネル面上に配設され、左面パネル130と背面パネル140の隣接部の隙間を通って外側パネル130Bの保護材322の貫通孔322cを通して外部に引き出され、接地接続部731に接続している。
導電性シート701は、導電性の高い部材であれば特に限定はされず、例えばステンレス、銅、アルミ等の金属、あるいは金属箔を含む多層シートや樹脂シートの片面に蒸着層が形成された蒸着シート等であってもよく、グラファイトシートのような非金属の高導電性部材でもよい。なお、本実施形態で使用することが可能な導電材としては、シート状の導電性シートに限定されず、例えば、線状や塊状のものであってもよい。
図24(a)(b)の断熱容器100の内部に物品を入れた場合、物品は底面パネル190の上部に敷かれた導電性シート701と導通し、これに電気的に接続されたケーブル部720を介して断熱容器100の外部にある接地接続部731と導通する。このため、あらかじめ接地接続部731を保管場所や輸送機器の接地箇所すなわちアースが取れる部位に電気的に接続しておけば、物品または断熱容器100自体が帯びる静電気を安全に外部に逃がすことができる。そのため、可燃性の物品を収納した場合や、断熱容器100の近辺に可燃性物質があった場合にも、静電気の放電等により発火事故等が起きる危険性を低減することができる。接地接続部731は金属片や導電部材であればよく、クリップのように外部の接地可能場所に挟んで固定できる形状のものでもよい。
図25は、断熱容器100の断熱空間を覆う全面に、導電性シートを貼り付けた状態を示す図である。この図に示す通り、底面パネル190の内側パネル190Aの内側のパネル面だけでなく、側面パネル110の内側パネル110Aの内側のパネル面と、天面パネル170の内側パネル170Aの内側のパネル面にも導電性シート701を貼り付け、さらに、パレット500の下面に導電性マット732を敷設し、両者をケーブル部720で電気的に接続している。なお、図25は正面パネル150と天面パネル170を省略しているが、実際には、これらのパネルにも導電性シート701が存在する。
図25のように、断熱空間を覆う広い領域に導電性シート701を貼り付けることにより、物品や断熱容器100自体が帯びる静電気をより安全に外部に逃がす効果を高めることができる。さらに、パレット500の下面に導電性マット732を敷設し、パレット500と一体化しておくことにより、もし接地を取り忘れていた場合であっても、パレット500の下面に敷設した導電性マット732から自然と接触する外部や大気中への放電効果が見込める。すなわち、収納物品が可燃性の場合や、断熱容器100の近辺に可燃性物質がある場合の静電気放電による発火事故等の危険性を低減する効果がある。導電性マット732としては、表面にアルミや金、亜鉛等の金属を樹脂性シートに蒸着したものや、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)やポリスチレン、アクリル樹脂などに親水性の高分子材料を混合したポリマーアロイ型のもの、カーボンブラックを高分子材料に混合したもの等、様々なタイプのものが使用できる。
3.第2実施形態
(a)断熱容器の構造
第2実施形態について説明する。図26は、本発明の第2実施形態である断熱容器100Bを説明する図である。図27は、第2実施形態である断熱容器100Bにおいて、すべての扉が開いた状態を示す図である。図28は、正面パネルを内側である−X方向から見た図である。
第1実施形態と異なる主な点は、天面パネル170が折り畳み可能であることと、正面パネル150について、回転中心軸mに直交する断面において、前扉部161の閉状態での前板部151と前扉部161との境界面が同一平面上にないこと、である。
(b)天面パネルの変形例
図26の通り、天面パネル170は、Y方向に平行な直線nにおいて2分割されており、第1上板部171および第2上板部181を有している。第1上板部171および第2上板部181は、直線n上に配置される蝶番102を介して、直線n軸周りに互いに回転可能に固定されている。
図27の通り、第1上板部171を側面パネル110に保持した状態で、直線n軸周りに第2上板部181を+Z方向側に回転させて開き、または元の位置に回転して閉じる開閉動作が可能である。あるいは、図示しないが、第2上板部181を側面パネル110に保持した状態で、第1上板部171の方を開閉動作することもできる。断熱容器100を組み立てた後でも、第2上板部181または第1上板部171を開けて、物品の出し入れができる。例えば、正面パネル150の前に荷物が積まれていて正面パネル150を開けることが困難な場合に、天面側から荷物の出し入れができる。
さらに、断熱容器100Bを分解する際に、図27のように天面パネルを折り畳んだ後に、天面パネルを側面パネルから取り外すことができる。また、断熱容器100Bを組み立てる際に、折り畳まれた状態の天面パネルを図27のように側面パネルに載せた後に、側面パネルを開くことができる。天面パネルを折り畳んだ状態で天面パネルの上げ下ろしができるので、作業の効率性や安全性の向上を図ることができる。
(c)正面パネルの変形例
図26に示す通り、正面パネル150は、Y方向に平行な直線mにおいて2分割されており、−Z方向側の、開閉しない固定部である前板部151と、直線mの軸周りに、前板部151に対して+X方向側に回転して開き、または元の位置に回転して閉じる開閉動作が可能な、+Z方向側の前扉部161とを有している。前扉部161は、前板部151に対して、直線m上に配置される蝶番101を介して取り付けられており、前扉部161は前板部151に対して、直線m軸周りに開閉できるよう、回転自在に固定されている。
正面パネル150が、前板部151と前扉部161を備えることにより、断熱容器100Bを組み立てた後でも、前扉部161を開けて物品の出し入れができる。断熱容器100Bの上段に他の断熱容器が積み重ねられていた場合であっても、前扉部161によって、物品の出し入れができる。
正面パネル150の構成について説明する。図28は、正面パネル150を内側から見た図である。正面パネル150を内側から見た場合に、+Z方向側に内側パネル161Aが、−Z方向側に内側パネル151Aが視認される。内側パネル161A、151Aの外周の外側に、図示されていない外側パネル161B、151Bの端部に配置された金属支持部310およびフレーム部320が視認される。
内側パネル151Aと161AのZ方向の配置は、両者の境界面が、前扉部161の回転中心軸である直線mよりも+Z方向にずれたものとなっている。これより、前扉部161を開いた状態では、前板部151と前扉部161の隣接部付近の端部において、複数の階段状の段差が生じる形態となる。
図29は、図26中に示した矢印E−Eの位置で切断した断面図である。前板部151には、−X方向から見て順に、遮熱シート333、発泡断熱材332、真空断熱材331より構成される断熱部330、断熱部330に接着剤334を介して接合している前板部開閉フレーム部321a、および前板部開閉フレーム部321aに溝部321cを隔てて嵌合された外側パネル151Bの構成部材である保護材322が配置されている。また、前扉部161も同様の構成となっており、前扉を−X方向から見て順に、遮熱シート333、発泡断熱材332、真空断熱材331より構成される断熱部330、断熱部330に接着剤334を介して接合している前扉部開閉フレーム部321b、前扉部開閉フレーム部321bに溝部321cを隔てて嵌合された外側パネル161Bの構成部材である保護材322が配置されている。前板部開閉フレーム部321aと前扉部開閉フレーム部321bは、蝶番101により回転可能に固定されている。
図29に示す通り、断面で見る前板部151の外側パネル151Bと前扉部161の外側パネル161Bの境界面である、前板部開閉フレーム部321aと前扉部開閉フレーム部321bの境界面と、前板部151の内側パネル151Aと前扉部161の内側パネル161Aの境界面である、それぞれの断熱部330の境界面とは、Z方向において異なる位置に形成されるため、前板部151と前扉部161の境界面が同一平面上にないものとなっている。これにより、前扉部161を閉じた状態では、外部からの空気の流入が妨げられることとなり、断熱空間の断熱性を維持する効果がある。また、前板部開閉フレーム部321aと前扉部開閉フレーム部321bの境界面付近と、前板部151の内側パネル151Aと前扉部161の内側パネル161Aの境界面である、それぞれの断熱部330の境界面付近とは、それぞれが、他の部位に比べて断熱性能が低い箇所であるため、前板部開閉フレーム部321aと前扉部開閉フレーム部321bの境界面付近の断熱性低下領域に、真空断熱材331を含む断熱部330を配置することにより、断熱性能低下領域が重なることによるヒートブリッジを抑える効果もある。
図30は、前扉部161が開いた状態を図29と同様な断面で示した図である。図31は図30の断面を基にして前扉部161が開いた状態を斜投影図として示した図である。これら両図の通り、前扉部161が開いた状態では、前板部151と前扉部161の隣接部付近の端部は、−X方向から+X方向に向かって順次、階段状に高さが低くなっており、この階段状の端部一体に、警告テープ103が貼り付けられている。警告テープ103の材質やデザインについては特に制限はないが、エストラマー素材やスポンジ素材等の弾性部材により構成して、隙間を埋める効果や外力の衝撃を吸収させる効果を上げるようにしてもよい。警告テープ103の存在は、指の挟み込み防止のための注意喚起をすること、および、物品の出し入れ作業中に、前扉部161の外側パネル161Bから上方に突出している内側パネル161Aに物品がぶつかって内側パネル161Aの真空断熱材を損傷させてしまうことを防止するための注意喚起をすることを目的としている。また、本実施形態で警告テープ103が貼り付けられている箇所は、X方向すなわち正面パネル150から前扉部161を開けて、物品を出し入れする側から断熱容器100Aを見たときに、奥側すなわち−X方向側に進むにつれて段が上がっていく構造の段差であるため、警告テープ103の視認性が格段に向上している。
また、本実施形態では、前扉部161を開く際の安全対策として、前板部151および前扉部161の外側でありかつ前扉部161が開いたときに互いに対向する位置のそれぞれに、図26の通り、緩衝材104を備えている。万一、前扉部161を閉じる際に作業者が指を挟んだとしても、被害を低減することができる。
なお、本実施形態では、第1上板部171と第2上板部181との境界面部分については説明しないが、前板部151と前扉部161との境界面部分と同じ構成としてもよい。
4.第3実施形態
(a)断熱容器の構造
第3実施形態について説明する。図32は、本発明の第3実施形態である断熱容器100Cを説明する図である。第2実施形態と異なる主な点は、断熱容器100Cが、前扉部161を閉じた状態に保持し、操作部材202の操作によりロック状態を解除して、前扉部161を+X方向に開くことができるラッチ機構を持つことである。さらに、真空断熱材や操作部材202の保護、および操作性の向上のために、操作部材202の少なくとも一部を覆う変形可能な取っ手部205または取っ手部215を取り付けたことである。操作部材202が、真空断熱材に誤って衝突して、真空断熱性に損傷を与える危険性を低減することができる。また、操作部材202は、+X方向側に突出して設けられているため、作業中に様々なものが衝突する可能性がある。このリスクを減らすためには、操作部材202を操作可能な最小限度の突出量となるように小さくすることが必要であるが、操作部材202をばねの力に抗して操作しながら前扉部161を手前に引き下げるという複数の操作を同時に行うため、作業性が低下する。取っ手部205または取っ手部215を取り付けることにより、操作部材の破損防止と作業性の向上を図ることができる。
(b)取っ手部付きラッチ機構
図33、図34は、取っ手部付きラッチ機構を操作する操作部材202付近を示す図である。図35は、取っ手部付きラッチ機構を操作する操作部材202付近を上方側から見た図である。図36は、取っ手部付きラッチ機構を操作する操作部材202付近を手前側から見た図である。
図33、図34、図35、図36に示す通り、取っ手部205は、+X方向側すなわち正面パネル150より手前側から見たとき、操作部材202の全体を覆うように前扉部161に配置されている。なお、取っ手部205は、2カ所ある操作部材202のそれぞれに対応した位置に設けられている。取っ手部205は、本実施形態では可撓性のある帯状の皮革を素材としているが、変形可能であれば後述する通り、リンク部等を持たせた硬質な材料でもよい。また、前扉部161への固定方法もネジ留めやリベット留め、接着剤等から適宜選択することができる。
取っ手部205は、通常は、作業者が前扉部161の開閉操作時に掴むことができる図35、図36に示した位置(第1の位置)にその中央部が存在している。また、図37は、取っ手部205の中央部が第1の位置よりも操作部材202に接近した第2の位置にある状態を示す図である。例えば、外部から断熱容器100Cの操作部材202付近に衝撃のような外力が加わった場合に、取っ手部205が変形して、図37のように取っ手部205の中央部が第1の位置よりも操作部材202に接近した第2の位置に移動することができる。これにより、取っ手部205が変形しながら外力を受け流し、操作部材202に直接外力が集中することを回避することができるため、操作部材202を保護することができる。
図35、図36のような通常の第1の位置にある取っ手部205があることにより、作業者が前扉部161の開閉操作時に掴むことができ、操作部材202をばね203の付勢力に抗して操作しながら、前扉部161を+X方向側に引き下げるという操作を容易に行うことができる。よって、作業者の操作性を向上させることができる。
図38は、上記の取っ手部205とは形状の異なるリンク部を有する取っ手部215を上方側から見た図であるが、この取っ手部215は、把持部215aと第1リンク部215bと、第2リンク部215cとを備えており、第1リンク部215bおよび第2リンク部215cは、把持部215aの両側に、それぞれ1つずつ配置されている。なお、図38では、見やすくするために、前扉部161内にある第1リンク部215bおよび第2リンク部215cについても、実線で示している。また、把持部215aが第2の位置にある状態を破線で示している。
このような構成とした場合の取っ手部215の把持部215aは、操作時に作業者が把持する部分であり、操作部材202に接近したときに、操作部材202との干渉を避けるための凹部215dを備えている。第1リンク部215bは、一端が把持部215aの端部に回動可能に取り付けられ、他端が第2リンク部215cの端部に回動可能に取り付けられている。第2リンク部215cは、一端が第1リンク部215bの端部に接続されており、他端が前扉部161内をY方向に沿って移動自在に設けられている。
また、このような構成により、把持部215aは、上述したように第1の位置と第2の位置との間で移動可能であるので、例えば、断熱容器100Cを組み立てたり分解したりする際に、操作部材202付近に他のパネルの真空断熱材が誤って衝突した場合に、把持部215aが移動して第1の位置よりも操作部材202に接近した第2の位置に移動することができる。これにより、外力が取っ手部215によって受け流され、操作部材202に直接外力が集中することが回避され、真空断熱材を保護することができる。また、第1の位置にある取っ手部215は、作業者が前扉部161の開閉操作時に掴むことができ、操作部材202をばね203の付勢力に抗して操作しながら前扉部161を+X方向側に引き下げるという操作を容易に行うことができる。このような取っ手部215は、硬質の樹脂や金属で形成することもできるので、操作部材202の耐久性を向上させることができる。
5.変形例
上述した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本開示の範囲内である。下記に、幾つかの変形例を挙げる。
(a)金属支持部の変形例
金属支持部310の変形例について説明する。上述の第1実施形態では、左面パネル130と背面パネル140の隣接部の構造について、図15(b)の通り、左面パネル130の部分支持部310aと背面パネル140の部分支持部310bとをネジ結合部341で連結して一体の金属支持部310が形成されている。しかし、金属支持部310の部分支持部は、これに限られるものではない。
図39は、図15(a)のB部の領域に対応する、左面パネル130と背面パネル140との隣接部を、Z方向に垂直な面で切った断面形状である。図39では、左面パネル130と背面パネルとは、断面形状が凸形状の雄型支持部311aと、凹形状の雌型支持部311bとの嵌合関係によって係止され、雄型支持部311aと凹形状の雌型支持部311bとが、一体の金属支持部310を構成している状態を示している。この場合、係止状態においては左面パネル130と背面パネル140のいずれかを、Z方向に垂直な水平方向に動かそうとしても嵌合関係を解消できず、両パネルを分解することができず、強固な組立状態が得られる。なお、どちらかのパネルをZ方向に平行にずらすことにより、嵌合関係を容易に解消でき、パネルを外すことができる。
図40(a)および図40(b)は、他の構造例を示す図である。図40(a)では、左面パネル130と背面パネル140とは、断面形状が半円状の凸形状の雄型支持部311aと、半円状の凹形状の雌型支持部311bとの嵌合関係によって係止され、雄型支持部311aと凹形状の雌型支持部311bとが、一体の金属支持部310を構成している状態を示している。この場合にも、図39と同様に、強固な組立状態が得られる。なお、図40(a)の構造は、パネルをZ方向に平行にずらす方法だけではなく、図40(b)に示す通り、左面パネル130を、雌型支持部311bを支点として、Z方向の軸周りに−Y方向側に一定角度になるまで回転させることにより、容易に係合状態を解消することができ、組立および分解の作業性を格段に向上させることができる。
図41(a)および図41(b)は、第1実施形態の図12と同様に、背面パネル140の外側のパネル面および内側のパネル面のそれぞれをパネル面に垂直な方向から平面視した図である。第1実施形態との相違点は、外側パネル140Bが金属支持部323のみで構成されていることである。金属支持部323が、第1実施形態の外側パネル140Bを構成する保護材322、金属支持部310、およびフレーム部320を、すべて同一の部材で兼ねているので、断熱容器の耐荷重を向上させることができ、また、断熱容器の部品点数を減らすことができる。
なお、図示しないが、第1実施形態の外側パネル140Bを構成する、保護材322、金属支持部310、およびフレーム部320を全て金属材料で構成することによっても、断熱容器の耐荷重を向上させることができる。
(b)内側パネルの変形例(1)
隣接する内側パネルの断熱部330どうしの当接部の形状に関する変形形態を説明する。断熱部330どうしの当接部の材質や形状は、第1実施形態で説明した図15(b)の形状には限定されず、様々な材質や様々な形状が適用できる。図42〜図45は、左面パネル130の内側パネル130Aの断熱部330と、背面パネル140の内側パネル140Aの断熱部330のみを取り出して、断熱部330どうしの当接部分をZ方向に垂直な面で切った断面図である。
図42(a)は、背面パネル140の断熱部330の端面に可撓性や柔軟性を持った弾性体337を取り付けた例を示す図である。このような当接部の形状を採用した場合は、断熱容器の気密性がより上がるので、断熱容器の断熱性能が向上する。弾性体337の材料は特に限定されず、各種のエストラマー素材やスポンジ素材等を使用することができる。
図42(b)は、背面パネル140の断熱部330の端面の断面形状が円弧状の凸形状とし、左面パネル130の断熱部330の端面の断面形状が円弧状の凹形状とした例を示す図である。このような当接部の形状を採用した場合は、断熱容器の気密性がより上がるので、断熱容器の断熱性能が向上する。
図43は、背面パネル140の断熱部330の端面および左面パネル130の断熱部330の端面のそれぞれに、パネル面に対して垂直ではない傾きを持ったテーパー面が形成され、それらのテーパー面どうしで当接する形状とした例を示す図である。このような当接部の形状を採用した場合は、断熱部330の端部どうしの接触面積がより大きくなって当接部の密着がより向上するので、断熱容器の断熱性能が向上する。
図44(a)、図44(b)、図45(a)、図45(b)は、背面パネル140の断熱部330の端面と、左面パネル130の断熱部330のパネル面の当接部が様々な嵌合関係を形成する形状である例を示す図である。このような当接部の形状を採用した場合は、当接部の断熱部330の境界線長が長くなって、外部からの空気が流入し難くなり、また、外力等によりパネルの当接部がずれ難くなるので、断熱容器の断熱性能が向上する。なお、図44(b)や図45(b)のように、背面パネル140の断熱部330端面の断熱空間側すなわち+X方向側に凸形状がある場合、断熱部どうしがより外れ難くなる。また、図45(b)のように凸形状がくさび形状である場合、さらにより外れ難くなる。
また、上述の説明は左面パネル130と背面パネル140を例として行っているが、他のパネルどうしの関係についても同様である。
(c)側面パネルの変形例(1)
側面パネル110の構造の変形例について説明する。上述の第1実施形態では、側面パネル110の各部である左面パネル130、背面パネル140、右面パネル120および正面パネル150は、すべてが個別に分離可能である。しかし、これに限るものではなく、側面パネルを構成する一部または全部のパネルが分離不可能に連結されていてもよい。
図46、図47、図48は、側面パネル110が部分的に連結したパネルであることの一例を説明する図である。図46は、側面パネル110のうち、左面パネル130と、背面パネル140と、右面パネル120とが、連結部361で連結された側面パネル110Cと、110C以外の側面パネル110Dである正面パネル150を示す図である。図47は、側面パネル110のすべてである左面パネル130と、背面パネル140と、右面パネル120と、正面パネル150とが、連結部361で連結された側面パネル110Cであることを示す図である。図48は、側面パネル110のうち、左面パネル130と、背面パネル140とが、連結部361で連結された側面パネル110Cと、正面パネル150と、右面パネル120とが、連結部361で連結されている、110C以外の側面パネル110Dであることを示す図である。
このように、側面パネル110を部分的に複数パネル分あらかじめ連結部361で連結しておくことによって、断熱容器100の組立や分解の作業負荷は大幅に軽減することができる。特に連結部361を、回転自在な蝶番等で構成したり、面ファスナー等で構成しておくことにより、折り畳んだ後の体積も小さくすることができる。また、連結するパネルは側面パネル110だけに限定されず、例えば側面パネル110のどれかと天面パネル170を連結するものであってもよい。
(d)側面パネルの変形例(2)
側面パネルに開閉部を持たない断熱容器の変形例について説明する。図49は、蝶番等による、開閉部を持たない断熱容器100Dを示す図である。上述の第1実施形態の断熱容器100と異なる主な点は、正面パネル150に開閉部がなく、前板部151や前扉部161、前扉部を回転させるための蝶番101等がないことである。開閉部がないことによって、側面パネルの強度を上げることができるので、二段積み等をする際の耐荷重を向上させることができる。
(e)内側パネルの変形例(2)
内側パネルの断熱部330の構成に関する変形形態について説明する。断熱部330は、第1実施形態では、図13(a)および図13(b)のように、真空断熱材331の少なくとも1つの主面に隣接する位置に発泡断熱材332を配置する例を説明した。しかし、断熱部330の構造はこれに限定されない。図50(a)および図50(b)は、発泡断熱材332を二分割して、断熱部330を形成した例を示す断面図である。
図50(a)では、発泡断熱材332e、332fは二分割されている。発泡断熱材332eには、貫通孔が形成されており、貫通孔に真空断熱材331を嵌め込まれている。そのため、発泡断熱材332が真空断熱材331の端面の両側に配置する構造の形成が容易になる。発泡断熱材332eと発泡断熱材332fとは接着剤336を介して固定されており、発泡断熱材332eおよび発泡断熱材332fの外周部が遮熱シート333で覆われている。例えば、接着剤336として弱粘着性の接着剤を用いることにより、真空断熱材331を取り外し可能に構成することができ、真空断熱材が破損した場合に交換し易くなる。
図50(b)では、二分割された発泡断熱材332e、332fを用いる点は図50(a)と同じであるが、発泡断熱材332fには、接着剤336が不連続に配置されるように、接着剤336塗布用の凹部が形成されている。それにより、比較的断熱性が低い接着剤336によるヒートブリッジを抑制することができる。
(f)断熱容器の構造の変形例
パネルの配置方法の変形例について説明する。まずは、左面パネル130、天面パネル170、右面パネル120、および底面パネル190の配置、隣接状態に関する変形形態について説明する。上述の第1実施形態では、図18(a)により、左面パネル130、天面パネル170、右面パネル120、および底面パネル190の配置例について説明したが、パネルの配置方法はこれに限るものではない。図51、図52(a)および図52(b)、図53(a)および図53(b)、図54(a)および図54(b)、図55(a)および図55(b)、図56(a)および図56(b)は、パネルの配置方法の変形例を示している。図51、図52(a)および図52(b)、図53(a)および図53(b)は、底面パネル190が内側パネル190Aのみである場合の配置例、また、図54(a)および図54(b)、図55(a)および図55(b)、図56(a)および図56(b)は、底面パネル190が外側パネル190Bと内側パネル190Aより構成される場合の配置例である。
図51は、左面パネル130の内側パネル130Aのパネル面と、右面パネル120の内側パネル120Aのパネル面とに、天面パネル170の内側パネル170Aの端面が当接し、底面パネル190の内側パネルAのパネル面に、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とが当接していることを示す図である。図52(a)は、天面パネル170の内側パネル170Aのパネル面に、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とが当接し、底面パネル190の内側パネルAのパネル面に、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とが当接していることを示す図である。
図52(b)は、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とが、天面パネル170の内側パネル170Aのパネル面に当接し、底面パネル190の内側パネル190Aの2つの端面に、左面パネル130の内側パネル130Aのパネル面と、右面パネル120の内側パネル120Aのパネル面とが、当接していることを示す図である。図53(a)は、天面パネル170の内側パネル170Aが、左面パネル130の外側パネル130Bの端部と、右面パネル120の外側パネル120Bの端部との両方に、張り出すように接して載置され、底面パネル190の内側パネルAの2つの端面に、左面パネル130の内側パネル130Aのパネル面と、右面パネル120の内側パネル120Aのパネル面とが、当接していることを示す図である。
図53(b)は、天面パネル170の内側パネル170Aが、左面パネル130の外側パネル130Bの端部と、右面パネル120の外側パネル120Bの端部との両方に、張り出すように接して載置され、底面パネル190の内側パネルAのパネル面に、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とが、当接していることを説明する図である。
図54(a)、図54(b)、図55(a)、図55(b)、図56(a)、および図56(b)は、それぞれ、図18(a)、図51、図52(a)、図52(b)、図53(a)、および図53(b)に対して、底面パネル190に外側パネル190Bを追加したことだけを変更点とする図である。
図52(a)、図52(b)、図53(a)、図53(b)、図55(a)、図55(b)、図56(a)、および図56(b)の例は、天面パネル170の内側パネル170Aのパネル面が、それぞれ左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とに当接する構造である。これらの構造は、蓋をしたときの位置がずれやすい天面パネル170の載置位置が多少ずれても、確実に断熱部同士が当接できる点で有利であり、天面パネル170載置位置許容度を広げられる。
次に、4枚の側面パネル110の配置、隣接状態に関する変形例について説明する。上述の第1実施形態では、図15(a)により、側面パネル110の4枚のパネル配置例について説明したが、パネルの配置方法はこれに限るものではない。図57(a)および図57(b)は、パネルの配置方法の変形形態を示す図である。
図57(a)は、左面パネル130の内側パネル130Aのパネル面に、背面パネル140の内側パネル140Aの端面と、正面パネル150の内側パネル150Aの端面とが当接し、右面パネル120の内側パネル120Aのパネル面に、背面パネル140の内側パネル140Aの端面と、正面パネル150の内側パネル150Aの端面とが当接していることを示す図である。図57(a)の構成では、前扉部161を閉じたとき、外側パネル150Bが、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とに接触する構造となる。よって、前扉部161を閉める際の衝撃力は、正面パネル150の内側パネル150Aには伝わらず、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面だけに伝わる。
図57(b)は、背面パネル140の内側パネル140Aのパネル面に、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とが当接し、正面パネル150の内側パネル150Aのパネル面に、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とが当接していることを示す図である。図57(b)の構造では、前扉部161を閉じたとき、正面パネル150の内側パネル150Aのパネル面が、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とに接触する構造となる。よって、前扉部161を閉める際の衝撃力は、正面パネル150の内側パネル150Aのパネル面と、左面パネル130の内側パネル130Aの端面と、右面パネル120の内側パネル120Aの端面とに伝わる。そのため、図57(a)の構造に比べ、断熱部への衝撃を分散できる点で、断熱部の保護効果が得られる。
6.シミュレーション
本開示の断熱容器に関連するシミュレーションについて説明する。
第1のシミュレーションの条件は次の通りである。断熱容器は、1辺の内寸が1mである立方体である。その断熱容器の各面の断熱パネルに、第1構造および第2構造が所定の割合で配置されている。第1構造は、厚さ14mmの発泡ウレタン(熱伝導率34.7mW・m−1・K−1)、厚さ6mmの真空断熱材(熱伝導率3mW・m−1・K−1)、および厚さ9mmのプラスチックダンボール(熱伝導率66mW・m−1・K−1)が容器内部側から容器外側に向かってこの順番に並んで構成されている。第2構造は、厚さ29mmのアルミニウム(熱伝導率229.04W・m−1・K−1)で構成されている。断熱容器の外部の環境温度が35℃で、仮想荷物として2℃の水80kgを上述の断熱容器の内部の中心付近に配置した場合に、第1構造と第2構造の割合を変えて、その水が8℃まで上昇するまでの時間(以下、「温度保持時間」と記載する。)を計算した。
第1のシミュレーションの結果は次の通りである。第1構造の割合が100%の場合、温度保持時間が12.4時間だった。第1構造の割合が99.9%で第2構造の割合が0.1%の場合、温度保持時間が3.3時間だった。金属であるアルミニウムが各断熱パネルで形成される断熱空間の表面積の0.1%に接触することによって、断熱性能が大幅に低下することがわかった。
第2のシミュレーションの条件は次の通りである。断熱容器は、1辺の内寸が1mである立方体である。その断熱容器の各面の断熱パネルに、第1構造および第2構造が所定の割合で配置されている。第1構造は、厚さ14mmの発泡ウレタン(熱伝導率34.7mW・m−1・K−1)、厚さ6mmの真空断熱材(熱伝導率3mW・m−1・K−1)、および厚さ9mmのプラスチックダンボール(熱伝導率66mW・m−1・K−1)が容器内部側から容器外側に向かってこの順番に並んで構成されている。第2構造は、厚さ14mmの発泡ウレタン(熱伝導率34.7mW・m−1・K−1)、厚さ6mmの真空断熱材(熱伝導率3mW・m−1・K−1)、および厚さ9mmのアルミニウム(熱伝導率229.04W・m−1・K−1)が容器内部側から容器外側に向かってこの順番に並んで構成されている。断熱容器の外部の環境温度が35℃で、仮想荷物として2℃の水80kgを上述の断熱容器の内部の中心付近に配置した場合に、第1構造と第2構造の割合を変えて、温度保持時間を計算した。
第2のシミュレーションの結果は次の通りである。第1構造の割合が100%の場合、温度保持時間が12.4時間だった。第1構造の割合が80%で第2構造の割合が20%の場合、温度保持時間が12.2時間だった。第1構造の割合が60%で第2構造の割合が40%の場合、温度保持時間が12.1時間だった。第1構造の割合が40%で第2構造の割合が60%の場合、温度保持時間が11.9時間だった。第1構造の割合が20%で第2構造の割合が80%の場合、温度保持時間が11.9時間だった。第2構造の割合が100%の場合、温度保持時間が11.8時間だった。真空断熱材の外側に金属であるアルミニウムが配置された場合は、真空断熱材の外側に有機高分子製のプラスチック段ボールが配置された場合よりも、断熱性能が低下することがわかった。アルミニウムを含む第2構造の割合を40%以下にすることによって、半日以上の温度保持時間を確保できることがわかった。