JP6158866B2 - 複合成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
金属成形体と樹脂成形体を工業的に有利な方法で、かつ高い接合強度で接合一体化する方法として、特許文献1、2の発明が知られている。
特許文献2の発明は、金属成形体の接合面にパルス波レーザーを照射することで粗面化した後、金型内に前記金属成形体の接合面を置いた状態でインサート成形などをすることで、金属成形体と樹脂成形体の複合成形体を製造する方法である。
前記金属成形体の熱可塑性樹脂成形体との接合面を粗面化する工程、
前記金属成形体の粗面化された接合面が前記熱可塑性樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂の熱変形温度(ISO75,荷重1.8MPa)から50℃以上になるように加熱する工程、
前記金属成形体の粗面化された接合面と前記熱可塑性樹脂成形体を圧着する工程を有している、複合成形体の製造方法を提供する。
図1(a)、(b)に示すとおり、第1工程にて、金属成形体10の熱可塑性樹脂成形体20との接合面12を粗面化する。
金属成形体10の金属としては、例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム、亜鉛、チタン、銅、マグネシウムおよびそれらを含む合金、タングステンカーバイド、クロミウムカーバイドなどのサーメットから選ばれるものを挙げることができ、これらの金属に対して、アルマイト処理、めっき処理などの表面処理を施したものにも適用できる。
金属成形体10の形状も特に制限されるものではなく、複合成形体の用途に応じて選択することができ、平面、曲面、平面と曲面の組み合わせなどから選択することができる。
金属成形体10の大きさも特に制限されるものではなく、複合成形体の用途に応じて選択することができ、例えば、既設の固定された状態の金属成形体も適用対象となる。
金属成形体10の接合面12を連続波レーザーの照射により粗面化するときは、特許文献1に記載のとおり、金属成形体の接合面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射する方法を適用することができる。
金属成形体10の接合面12をパルス波レーザーの照射により粗面化するときは、特許文献2に記載のレーザースキャン方法を適用することができる。
連続波レーザーの照射速度は、2000〜20,000mm/secが好ましく、2,000〜18,000mm/secがより好ましく、2,000〜15,000mm/secがさらに好ましい。
出力は4〜4000Wが好ましく、50〜2500Wがより好ましく、100〜2000Wがさらに好ましく、250〜2000Wがさらに好ましい。
ビーム径(スポット径)は5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましい。
さらに出力とスポット径の組み合わせの好ましい範囲は、レーザー出力とレーザー照射スポット面積(π・〔スポット径/2〕2)から求められるエネルギー密度E1(W/μm2)より選択することができる。
エネルギー密度E1(W/μm2)は、0.1W/μm2以上が好ましく、0.2〜10W/μm2がより好ましい。
エネルギー密度E1(W/μm2)が同じであるとき、出力(W)が大きい方がより大きなスポット面積(μm2)に対してレーザー照射できることになるため、処理速度(1秒当たりのレーザー照射面積;mm2/sec)が大きくなり、加工時間も短くすることができる。
波長は300〜1200nmが好ましく、500〜1200nmがより好ましい。
焦点位置は-10〜+10mmが好ましく、−6〜+6mmがより好ましい。
1本の直線に繰り返し照射するときは、双方向照射と一方向照射を選択することができる。
双方向放射は、1本のライン(溝)を形成するとき、ライン(溝)の第1端部から第2端部に連続波レーザーを照射した後、第2端部から第1端部に連続波レーザーを照射して、その後は、第1端部から第2端部、第2端部から第1端部というように繰り返し連続波レーザーを照射する方法である。
一方向照射は、第1端部から第2端部への一方向の連続波レーザー照射を繰り返す方法である。
粗面化された接合面は、特許文献1の図7、図8、実施例のSEM写真に示すような孔や溝が形成された状態になる。形成された孔または溝の深さは、接合面12から約50〜500μmの範囲である。
また、レーザー照射時に、必要に応じて金属の酸化防止や処理の効率化(処理時間の短縮化)などを目的にアシストガスを噴射することもできる。
加熱方法は金属成形体10の大きさや形状に応じて選択することができる。
金属成形体10が小さなものや薄いものであれば、金属成形体10自体をオーブン中に入れて全体を加熱したり、ホットプレートの上に金属成形体10を置いて加熱したりすることができる。
金属成形体10が大きなものや長いもので、オーブン中で加熱できないものであれば、ガスバーナーなどで粗面化された接合面12を中心として加熱することができる。
加熱温度は、前記熱可塑性樹脂の熱変形温度から50℃以上(熱変形温度が100℃であれば、150℃以上)であればよいが、好ましくは前記熱変形温度よりも50〜200℃高い温度範囲になるように加熱する。前記温度範囲であると、金属成形体と熱可塑性樹脂成形体の接合強度が高くなり、熱可塑性樹脂成形体の形状も保持できるので好ましい。
図1(c)では、加温装置が内蔵された下部プレス板50上に金属成形体10を置いて加熱している。
圧着方法としては、例えば、
金属成形体10を接合面12が上になるように作業台(好ましくは加熱装置を有する作業台)上に固定して、接合面12に熱可塑性樹脂成形体20の接合面22を合わせた状態で、熱可塑性樹脂成形体20側からプレスする方法、
金属成形体10の接合面12と熱可塑性樹脂成形体20の接合面22を合わせた状態で、下部プレス(好ましくは加熱装置を有するプレス)側の金属成形体10と上部プレス側の熱可塑性樹脂成形体20の両方からプレスする方法、
を適用することができる。
その他、金属成形体10と熱可塑性樹脂成形体20を水平方向に対向配置させた状態で、一方からまたは両方からプレスする方法を適用することもできる。
図1(d)では、所定の温度に加温した下部プレス板50上に金属成形体10を置いて、金属成形体10を所定の温度に加温した後、接合面12に熱可塑性樹脂成形体20を置き、その後、図1(e)では、金属成形体10側の下部プレス板50と熱可塑性樹脂成形体20側の上部プレス板51で上下方向から圧力を加えている。
接合面12と接合面22が圧着されているため、溶融した熱可塑性樹脂は、金属成形体10の接合面12に形成されている孔内部や溝内部に入り込む。
その後、圧着状態を開放して冷却する方法、または圧着状態を維持したままで冷却する方法を適用することで、金属成形体10の接合面12の孔内部や溝内部に入り込んだ熱可塑性樹脂が固化するため、金属成形体10と熱可塑性樹脂成形体20は、高い接合強度で一体化される。
圧着状態を維持したままで冷却する方法を適用するときは、図1(e)の状態にて下部プレス板50による加温を停止して、自然冷却、送風冷却する方法のほか、上部プレス板51として冷却装置を内蔵したものを使用して冷却することもできる。
例えば、酢酸セルロースなどのセルロースエステル(但し、可塑剤を含む)、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66などの脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
前記模様は、熱可塑性樹脂成形体20の表面に印刷されているものでもよいし、内部から表面まで同じ模様が形成されているものでもよい。
前記模様は、各種模様のほか、各種文字、図形、絵、漫画、写真、色分け(例えば、グラデーションをつけた色分け)、これらの組み合わせなども含む。
上記した特許文献1、2の発明では、金属成形体と樹脂成形体はインサート成形法または圧縮成形法(樹脂ペレットを使用した圧縮成形法)により接合一体化されているため、接合前の樹脂成形体に模様を形成しておくことはできない。
本発明の製造方法では、金属成形体10と熱可塑性樹脂成形体20を圧着させることで一体化させるため、予め熱可塑性樹脂成形体20の所望の模様(最終製品の外観に現れる模様)を形成しておくことができるため、得られた複合成形体の用途をより広い範囲から選択できるようになる。
(第1工程:図1(a)、(b))
作業台(鋼板)上に図2に示すアルミニウム(A5052)板10(縦4mm、横10mm、長さ50mm)を置き、図3に示す装置にて表1に示す条件で連続波レーザーを照射して、接合面12(4×10mm)を粗面化した。
なお、図1に示す金属成形体10は、実施例で使用したアルミニウム板に限定されるものではないため、図1に示す金属成形体10と図2に示すアルミニウム板の寸法は一致していない。
100:シングルモードファイバーレーザーの先端部
101:光学ヘッド
102:fcレンズ
103:fθレンズ
104:保護レンズ
d1:ファイバー径
d2:スピット径
f1:fcレンズの焦点距離
f2:fθレンズの焦点距離
発振器:IPG-Ybファイバー,YLR-300-SM(IPG製)
光学ヘッド:LXD30+ARGES社のSQUIRREL(fc=80mm/fθ=100mmまたはfc=80mm/fθ=163mm)
出力:274W
ファイバー径:9μm
最小スポット径:11μm
スポット面積:9.93516×10-7cm2
最大走行速度:13330mm/sec
実施例1〜4は、fc=80mm/fθ=100mmのレンズの組み合わせを使用し、実施例5、6は、fc=80mm/fθ=163mmのレンズの組み合わせを使用した。
実施例4は、ノズル(ノズル形状7mm×3mm楕円形)を使用して、アシストガスとして圧縮空気(圧力0.3MPa)を供給しながらレーザー照射した。
加熱装置を備えた180℃に加温されたプレス板上に粗面化された接合面12が上になるように金属成形体を置き、表2に示す条件で接合面12が180℃になるまで加熱した。
金属成形体10の粗面化された接合面12と酢酸セルロース系樹脂[酢酸セルロースと可塑剤などを含むもの;品名;セルブレンEC210,ダイセルポリマー(株)製,熱変形温度(ISO75,荷重1.8MPa)66℃]を多色押出成形より作成した柄物シートから切出して製作した板(縦4mm、横10mm、長さ50mm)20の接合面22を合わせた状態で、プレス圧力1MPa、プレス時間60秒で上下方向からプレスした。
なお、金属成形体と酢酸セルロース系樹脂板とのプレス作業は室温(20〜25℃)で実施したが、プレス時間は60秒であるから、プレス終了時まで金属成形体が酢酸セルロース樹脂の熱変形温度から50℃以上高い温度であることは自明である。
その後、プレスした状態で加熱を停止し、室温になるまで自然冷却して複合成形体1を得た。複合成形体のセルロース系樹脂の板の柄模様は、ほとんど変化することなくプレス成形前とほぼ同様の柄模様であった。
なお、金属成形体と熱可塑性樹脂成形体が高い接合強度で接合されていることは、特許文献1の圧縮成形法を適用した実施例10〜15(表3)に示す引張接合強度からも自明である。
例えば、日用品、調理器具、スポーツ用品、家具、OA機器、通信機器、各種電気製品、自転車部品、自動二輪車部品、自動車などの車両部品、内装品、外装品、建材などで使用している金属成形体に対して適用することで、熱可塑性樹脂成形体との複合成形体にすることができる。
また、本発明の複合成形体の製造方法は、既存または建設中の建築物で使用している金属成形体(壁、梁、柱など)のような大きな固定物に対して適用することで、接着剤を使用することなく金属成形体の表面を模様のある熱可塑性樹脂シートで被覆したり、ねじなどを使用することなく金属成形品に模様のある熱可塑性樹脂成形品(例えば、物を掛けるためのフック、カーテンレール、板(棚)、網かご、棒、枠、柱)を固定したりすることもできる。
10 金属成形体
12 接合面(粗面化された接合面)
20 熱可塑性樹脂成形体
22 接合面
Claims (3)
- 金属成形体と熱可塑性樹脂成形体が接合された複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の熱可塑性樹脂成形体との接合面を粗面化する工程、
前記金属成形体の粗面化された接合面が前記熱可塑性樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂の熱変形温度(ISO75,荷重1.8MPa)から50℃以上になるように、前記金属成形体をオーブン中に入れて全体を加熱する方法、前記金属成形体をホットプレートにより加熱する方法、前記金属成形体の粗面化された接合面をガスバーナーで加熱する方法、加熱装置が内蔵されたプレス板の上に金属成形体を置いて加熱する方法から選ばれる方法により加熱する工程、
前記金属成形体の粗面化された接合面と前記熱可塑性樹脂成形体を圧着する工程を有している、複合成形体の製造方法。 - 金属成形体と熱可塑性樹脂成形体が接合された複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の熱可塑性樹脂成形体との接合面に対してレーザー光を照射して粗面化する工程、
前記金属成形体の粗面化された接合面が前記熱可塑性樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂の熱変形温度(ISO75,荷重1.8MPa)から50℃以上になるように、前記金属成形体を
オーブン中に入れて全体を加熱する方法、前記金属成形体をホットプレートにより加熱する方法、前記金属成形体の粗面化された接合面をガスバーナーで加熱する方法から選ばれる方法、加熱装置が内蔵されたプレス板の上に金属成形体を置いて加熱する方法により加熱する工程、
前記金属成形体の粗面化された接合面と前記熱可塑性樹脂成形体を圧着する工程を有している、複合成形体の製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂成形体が少なくとも表面に所望の模様を有しているものである、請求項1または2記載の複合成形体の製造方法。
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