JP6158013B2 - 有機分子メモリ - Google Patents

有機分子メモリ Download PDF

Info

Publication number
JP6158013B2
JP6158013B2 JP2013196983A JP2013196983A JP6158013B2 JP 6158013 B2 JP6158013 B2 JP 6158013B2 JP 2013196983 A JP2013196983 A JP 2013196983A JP 2013196983 A JP2013196983 A JP 2013196983A JP 6158013 B2 JP6158013 B2 JP 6158013B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
conductive layer
molecule
dipole
electron
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013196983A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015065220A (ja
Inventor
田中 裕介
裕介 田中
秀之 西沢
秀之 西沢
繁樹 服部
繁樹 服部
鋼児 浅川
鋼児 浅川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP2013196983A priority Critical patent/JP6158013B2/ja
Priority to US14/456,159 priority patent/US9263687B2/en
Publication of JP2015065220A publication Critical patent/JP2015065220A/ja
Priority to US14/988,415 priority patent/US9543536B2/en
Application granted granted Critical
Publication of JP6158013B2 publication Critical patent/JP6158013B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K10/00Organic devices specially adapted for rectifying, amplifying, oscillating or switching; Organic capacitors or resistors having potential barriers
    • H10K10/701Organic molecular electronic devices
    • GPHYSICS
    • G11INFORMATION STORAGE
    • G11CSTATIC STORES
    • G11C13/00Digital stores characterised by the use of storage elements not covered by groups G11C11/00, G11C23/00, or G11C25/00
    • G11C13/0002Digital stores characterised by the use of storage elements not covered by groups G11C11/00, G11C23/00, or G11C25/00 using resistive RAM [RRAM] elements
    • G11C13/0009RRAM elements whose operation depends upon chemical change
    • G11C13/0014RRAM elements whose operation depends upon chemical change comprising cells based on organic memory material
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K10/00Organic devices specially adapted for rectifying, amplifying, oscillating or switching; Organic capacitors or resistors having potential barriers
    • H10K10/80Constructional details
    • H10K10/82Electrodes
    • H10K10/84Ohmic electrodes, e.g. source or drain electrodes
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K30/00Organic devices sensitive to infrared radiation, light, electromagnetic radiation of shorter wavelength or corpuscular radiation
    • H10K30/671Organic radiation-sensitive molecular electronic devices
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K50/00Organic light-emitting devices
    • H10K50/10OLEDs or polymer light-emitting diodes [PLED]
    • H10K50/11OLEDs or polymer light-emitting diodes [PLED] characterised by the electroluminescent [EL] layers
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K85/00Organic materials used in the body or electrodes of devices covered by this subclass
    • H10K85/10Organic polymers or oligomers
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K85/00Organic materials used in the body or electrodes of devices covered by this subclass
    • H10K85/60Organic compounds having low molecular weight
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K85/00Organic materials used in the body or electrodes of devices covered by this subclass
    • H10K85/60Organic compounds having low molecular weight
    • H10K85/611Charge transfer complexes
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K2101/00Properties of the organic materials covered by group H10K85/00
    • H10K2101/30Highest occupied molecular orbital [HOMO], lowest unoccupied molecular orbital [LUMO] or Fermi energy values
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K2101/00Properties of the organic materials covered by group H10K85/00
    • H10K2101/40Interrelation of parameters between multiple constituent active layers or sublayers, e.g. HOMO values in adjacent layers
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K2102/00Constructional details relating to the organic devices covered by this subclass

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Electromagnetism (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Semiconductor Memories (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

本発明の実施形態は、有機分子メモリに関する。
携帯用電子機器等のモバイル機器の普及と共に、電源オフ時にも記憶したデータを保持することの出来る大容量で安価な不揮発性メモリとして、フラッシュメモリが広く使用されている。しかし近年、フラッシュメモリの微細化限界が見えてきており、MRAM(磁気抵抗変化メモリ)、PCRAM(相変化メモリ)、CBRAM(固体電解質メモリ)、ReRAM(抵抗変化メモリ)などの不揮発性メモリの開発が盛んに行われている。
例えば、ReRAMを用いた場合、ワード線及びビット線の交差部にメモリセルとなる可変抵抗素子と整流素子とを積層させるだけでメモリセルアレイを構成できる。このため、集積度が高いメモリシステムの構築が可能となる。また、このような構造を持つメモリセルアレイを用いた場合、メモリセルアレイを複数積層させて3次元構造にすることができるため、更なる高集積化が可能となる。
ReRAMは一般に、可変抵抗素子として金属酸化物が、整流素子としてPINダイオード等が用いられている。さらなる高集積化を実現するには、メモリセル自身を小さくすることが必要である。
メモリセル自身を小さくする一つのアプローチとして、有機分子を可変抵抗素子や整流素子に用いる方法が考えられる。この方法によれば、有機分子自体のサイズが小さいため、素子のサイズを小さくすることが可能となる。
有機分子の整流素子に関しては、イオン化ポテンシャルが小さな電子供与基(ドナー基)Dと、高い電子親和力を持つ電子吸引基(アクセプター基)Aを、絶縁性の共有結合により橋渡しした分子D−σ−Aを電極で挟んだ素子による整流性の報告がされている。さらに、橋渡し部分を短いπ電子で置き換え、絶縁性のアルキル鎖T(テイル)をDに結合した分子T−D−π−Aを電極で挟んだ素子による整流性が報告されている。
ドナー基Dは電子を放出しやすいため、正孔を受け取りやすいが電子は受け取らない。このため、電極からDへは正孔は流れるが電子は流れない。一方、アクセプター基Aは電子を受け取りやすいが、電子を放出しにくく正孔にならない。このため、電極からAへは電子は流れるが正孔は流れない。したがって、DからA方向のみ電流が流れ、整流性が発現する。
一方、有機分子の可変抵抗素子に関しては、フェニレンエチニレン骨格に、アクセプター性のニトロ基とドナー性のアミノ基を有する分子の自己組織化単分子膜が、負性微分抵抗を示し、ON/OFF比(スイッチング前後で、同じ電圧を印加した時に流れる電流の比)が1000以上のメモリ特性を発現することが報告されている。
以上のように、有機分子にドナー性もしくはアクセプター性の置換基を付け、整流性やメモリ効果を発現する分子の報告例はいくつかある。しかし、メモリセルを設計するに当たって留意すべき点がある。
ReRAMではセル構造上、可変抵抗素子と整流素子を直列に接続する。このため、可変抵抗素子が低抵抗状態の際にメモリセルを流れる電流値が低いと、可変抵抗素子にかかる電圧分担が小さくなることで動作電圧が上昇してしまう。よって、整流素子の順バイアス方向の抵抗値は、低抵抗状態の可変抵抗素子の抵抗値よりも十分小さくなければならない。
また、信号を読み出す際のセルの信頼性を上げるため、可変抵抗素子は低抵抗状態と高抵抗状態の抵抗値の差が大きいほど望ましい。いいかえれば、可変抵抗素子のON/OFF比が大きいことが望ましい。
上記、留意点を考慮した分子素子の設計は簡単ではない。更には、上記留意点を考慮した上で、一つの有機分子に整流性とメモリ特性の両方を持たせる分子素子の設計は困難である。したがって、メモリセルに用いる有機分子の設計に改善の余地がある。
特表2008−532310号公報
本発明が解決しようとする課題は、整流性を有し、ON/OFF比の向上を可能にする有機分子を備える有機分子メモリを提供することにある。
実施形態の半導体装置は、第1の導電層と、第2の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられ、有機分子を有し、前記有機分子が、前記第1の導電層と結合するリンカー基と、前記リンカー基と結合するπ共役系鎖と、前記リンカー基の反対側で前記π共役系鎖と結合し前記第2の導電層と対向するフェニル基を有し、前記π共役系鎖は1重結合と、2重結合または3重結合が交互に結合し、炭素数が12個より大きく46個以下であり、前記有機分子は下記式(1)または下記式(2)で表され、前記リンカー基がLで示され、少なくともD1およびD2のいずれか一方が電子吸引基または電子供与基であり、前記フェニル基は置換基R0、R1、R2、R3、R4を有し前記置換基R0が電子吸引基または電子供与基であり、lおよびnは0以上の整数であり、mは0より大きい整数であり、l+n+mは2以上6未満である、有機分子層と、を備える。
第1の実施形態の半導体装置の有機分子メモリの模式斜視図である。 第1の実施形態のメモリセルの構造を示す模式図である。 第1の実施形態のメモリセルの構造を示す模式図である。 電荷注入障壁を計算するためのモデルの説明図である。 ダイポールによるイメージ電荷の計算の説明図である。 電子−格子相互作用に対する結合モーメントの影響を示す図である。 複数の置換基がある場合の電子−格子相互作用に対する結合モーメントの影響を示す図である。 リング状構造と置換基によるダイポールの向きの説明図である。 リング状構造と光学フォノンのモードの説明図である。 フェニル基をドナーまたはアクセプター化する構造を例示する図である。 メモリ特性を有する2つの分子の電流−電圧特性である。 図11で示した分子のHOMOである。 第1の実施形態の有機分子の一具体例と示す図である。 末端にチオール基を有するフェニル環がパラ位で2つ結合した分子の電流−電圧特性を示す図である。 末端にチオール基を有するフェニル環がパラ位で3つ結合した分子の電流−電圧特性を示す図である。 第1の実施形態のπ共役系鎖に含まれる構造を例示する図である。 第2の実施形態のメモリセルの構造を示す模式図である。 第3の実施形態の有機分子の構造を示す模式図である。 第3の実施形態の置換基R0の構造を例示する図である。 第4の実施形態の有機分子の構造を例示する図である。 実施例1の分子を示す図である。 実施例2の分子を示す図である。 実施例3の分子を示す図である。 実施例4の分子を示す図である。 実施例5の分子を示す図である。 比較例1の分子を示す図である。 比較例2の分子を示す図である。 比較例3の分子を示す図である。 実施例6の分子を示す図である。 実施例7の分子を示す図である。 実施例8の分子を示す図である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
また、本明細書中「抵抗変化型分子鎖」とは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖を意味するものとする。
また、本明細書中「化学結合」とは、共有結合、イオン結合、金属結合のいずれかを指す概念とし、水素結合やファンデルワールス力による結合を除外する概念とする。
(第1の実施形態)
本実施形態の有機分子メモリは、第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられ、有機分子を有し、有機分子が、第1の導電層と結合するリンカー基と、リンカー基と結合するπ共役系鎖と、リンカー基の反対側でπ共役系鎖と結合し第2の導電層と対向するフェニル基を有し、π共役系鎖は1重結合と、2重結合または3重結合が交互に結合し、炭素数が12個より大きく46個以下であり、π共役系鎖の結合方向に対し非線対称な配置の電子吸引基または電子供与基を含み、フェニル基が下記式に示すように置換基R0、R1、R2、R3、R4を有し、置換基R0が電子吸引基または電子供与基である、有機分子層と、を備える。
図1は、本実施形態の有機分子メモリの模式斜視図である。本実施形態の有機分子メモリは、クロスポイント型のメモリデバイスである。図1に示すように、たとえば基板(図示せず)の上部に下部電極配線(第1の導電層)10が設けられている。そして、下部電極配線10に交差するように上部電極配線(第2の導電層)12が設けられている。電極配線のデザインルールは、例えば、5〜20nm程度である。
図1に示すように、下部電極配線10と上部電極配線12との交差部の、下部電極配線10と上部電極配線12との間には、有機分子層14が設けられている。複数の有機分子が、有機分子層14を構成する。有機分子層14の厚さは、例えば、1nm以上20nm以下である。
第1の導電層10、第2の導電層12は、例えば、金属で形成される。金属以外にも、半導体、金属半導体化合物、金属酸化物等の導電体を適用することが可能である。
そして、例えば、複数本の下部電極配線10と複数本の上部電極配線12が交差する点のそれぞれに、図1のように有機分子層14を設けてメモリセルを形成する。このようにして、複数のメモリセルで構成されるメモリセルアレイが実現される。
図2は、本実施形態のメモリセルの構造を示す模式図である。有機分子層14は、複数の有機分子(以下、単に分子とも記述)16で構成される。図2には、便宜上、1個の有機分子16のみを示している。有機分子層14は、例えば、有機分子16の自己組織化単分子膜(Self−assembled monolayer:SAM)である。
有機分子16は、第1の導電層10と結合するリンカー基(L)18と、リンカー基18と結合するπ共役系鎖(P)20と、リンカー基18の反対側でπ共役系鎖20と結合し、第2の導電層12と対向するフェニル基22を備える。いいかえれば、有機分子16は、一方の端部にリンカー基18を備え、他方の端部にフェニル基22を備える。
リンカー基18は、第1の導電層10に化学結合することにより、第1の導電層10に対して有機分子16を固定する。
π共役系鎖20は、1重結合と、2重結合または3重結合が交互に結合し、炭素数が12個より大きく46個以下である。また、π共役系鎖20の結合方向に対し、非線対称な配置の電子吸引基(A)または電子供与基(D)を含む。なお、π共役系鎖20の結合方向とは、π共役系鎖20の主鎖の伸長方向である。以降、電子吸引基(A)はアクセプター基、電子供与基(D)はドナー基とも称する。
π共役系鎖20は、抵抗変化型分子鎖である。抵抗変化型分子鎖は、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を発現する分子鎖である。
フェニル基22は、置換基R0、R1、R2、R3、R4を有し、置換基R0が電子吸引基(A)または電子供与基(D)である。フェニル基22は、第2の導電層12と化学結合しない。
図3は、本実施形態のメモリセルの構造を示す模式図である。本実施形態では、図3に示すように、図2で示した置換基R0が電子吸引基(A)である。
本実施形態の有機分子16は、電子吸引基(A)を備えるフェニル基22が有機分子16内で偏在し、π−A構造を形成している。この構造により、有機分子16内にダイポール(双極子)によるポテンシャルが形成される。このポテンシャルにより、有機分子16が整流性を備える。
本実施形態では、フェニル基22の電子吸引基(A)からπ共役系鎖(P)20を向いたダイポールモーメントを発現させる。これにより、第1の導電層10を基準として、第2の導電層12に正電圧を印加した時を順バイアスとする整流性が発現される。
また、本実施形態の有機分子16は、抵抗変化型分子鎖であるπ共役系鎖20を備えることにより、メモリ特性を備える。したがって、有機分子16は、電圧の印加によるメモリ特性と、整流性の両者を備えることになる。
そして、有機分子16中のダイポールによって、有機分子16を挟む、第1の導電層10と第2の導電層12にイメージ電荷が生じる。このイメージ電荷が作るイメージフォースにより、ダイポールによるポテンシャルが大きくなり、整流作用が高まる。
さらに、フェニル基22は、置換基R0の位置に電子吸引基(A)を備える。したがって、フェニル基22周りの状態密度(DOS)が向上する。よって、第2の導電層12と有機分子16間の電荷のトンネルレートが向上し、ON/OFF比の高いメモリセルが実現できる。
以下、実施形態の有機分子メモリの作用について詳述する。なお、以下の作用に関する説明は、本実施形態のみならず、本明細書中のすべての実施形態に共通する説明となっている。
有機分子が、D−s−AまたはD−π−A構造のとき、周囲の環境による特性の変動要因となるD−s−A、またはD−π−Aのような分子のイオン化が避けられない。本実施形態は、これらの構造とは、異なるメカニズムで整流性を発現する。
(整流性の発現方法)
発明者らは、分子のサイズが小さいこと、および、分子が電極で挟まれていることに注目した。そして、π−A構造の分子内のダイポールおよびその電極でのイメージ電荷が創るポテンシャル(イメージフォース)が非対称であり、同じエネルギーレベルへの電荷の注入であってもダイポールによる非対称なポテンシャルが電荷注入の障壁となることから、電荷の注入に必要なポテンシャルが非対称となることを理論的に見出した。
図4は、電荷注入障壁を計算するためのモデルの説明図である。ダイポールによるポテンシャルと、それによる活性化エネルギーと、分子のカットオフ(分子内電荷と分子外電荷の空間的境界)による電荷注入時の活性化エネルギーとを図示している。
電極中に固定された分子の電荷分布(結合ダイポールモーメントの分布)から、電極によるイメージ電荷も含めたポテンシャル分布を求める。分子内の電荷分布(結合ダイポールモーメントの分布)は、GAUSSIANなどの分子軌道法により得られる。実験によりジフェニル分子のキャリアの伝導は電極間のキャリアのトンネルによる伝導が支配的で、分子の上に電荷がとどまることが無いことが明らかになった。一方、ターフェニル分子のキャリアの伝導は一度分子に電荷が注入されて分子がイオン化し、その後対向電極へ電子が抜けてゆく伝導が支配的であることが明らかになった。
この結果から、片側の電極からトンネリングにより注入された電荷は、フェニル環1つ以上伝導したところで分子上に止まることが分かる。つまり、電極からフェニル環1つ目の端までのポテンシャルを電荷は越えなければならない。したがって、このポテンシャルを計算することにより活性化エネルギーが求まる。
図5は、ダイポールによるイメージ電荷の計算の説明図である。以下、具体的な分子内ダイポールによるポテンシャルの計算方法を述べる。
ダイポール近似は、ダイポールの電荷間の距離が、着目する位置とダイポールとの間の距離に比べ十分小さい場合にのみ成り立つ近似である。このため、ダイポールの電荷によるイメージフォースを考慮するような系では、正しい結果を与えることができない。したがって、以下では近似を行わないで、イメージフォースの効果を含めたダイポールによるポテンシャルの計算を行うため、ダイポールを正と負2つの素電荷と距離で表す。+eの電荷の位置は(a,b,c)をとし、−eの電荷の位置は(a,b,c)とする。
電極が、領域z=−zとz=zにあり、ダイポールを挟んでいる。この時、負側の電極に発生するダイポールの電荷によるイメージ電荷の座標を、図5に示すように(a,b,−u )(ダイポールの正電荷に対応するイメージ電荷:電荷の符合は負になる)および(a,b,−v )(ダイポールの負電荷に対応するイメージ電荷:電荷の符合は正になる)とすれば、
である。
同様に正側の電極に発生するダイポールの電荷によるイメージ電荷の座標を(a,b,u )(ダイポールの正電荷に対応するイメージ電荷:電荷の符合は負になる)および(a,b,v )(ダイポールの負電荷に対応するイメージ電荷:電荷の符合は正になる)とすれば、
が得られる。
なお、ダイポールの電荷が電極間に存在する条件、
が成立する。
次に、正側の電極に誘起された位置(a,b,u )と(a,b,v )のイメージ電荷により誘起される負側の電極のイメージ電荷が存在するので、この効果も取り込まなければならない。一般的に、正側の電極中の位置(a,b,u n−1)と(a,b,v n−1)のイメージ電荷により負側の電極に誘起されるイメージ電荷の座標をそれぞれ(a,b,−u )と(a,b,−v )とすれば、
となる。
同様に、負側の電極中の位置(a,b,−u n−1)と(a,b,−v n−1)のイメージ電荷により正側の電極に誘起されるイメージ電荷の座標をそれぞれ(a,b,u )と(a,b,v )とすれば、
となる。
まとめると、
もう一段繰り返すと、
イメージ電荷の符合は1段ごとに変化するから、nを偶数と奇数で分けて、
元の電荷とイメージ電荷では符号が反転することを考慮すると、正電荷に起因する電荷の位置は、元の電荷(a,b,c)とこれによるイメージ電荷(a,b,−u 2m+1)および(a,b,u 2m+1)、さらには、反転したイメージ電荷(a,b,−u 2m)および(a,b,u 2m)となり、負電荷に起因する電荷の位置は、元の電荷(a,b,−c)とこれによるイメージ電荷(a,b,−v 2m+1)および(a,b,v 2m+1)さらには、反転したイメージ電荷(a,b,−v 2m)および(a,b,v 2m)となる。
以上から、正電荷による位置(x,y,z)にできるポテンシャルはU(x,y,z)は、
同じく負電荷により位置(x,y,z)にできるポテンシャルはU(x,y,z)は、
と計算される。
以上から、求めるべき全ポテンシャルU(x,y,z)は、
で与えられる。
分子の外から注入されるキャリアは、分子のダイポールによるポテンシャルを感じることができる。このため、このポテンシャルバリアの最大値は、キャリアが越えなければならない活性化エネルギーとなることがわかる。
ポテンシャルの最大値を議論するためには、キャリアが分子の外部なのか分子の内部なのかを明確にする必要がある。ダイポールとキャリアの距離をいくらでも小さくできるなら、キャリアとのクーロンポテンシャルは発散してしまう。実際には、十分近づけた場合には、混合した状態となり、クーロンポテンシャルは、たとえば電荷の再配置などにより、状態のエネルギーに繰り込まれ、ポテンシャルの発散は起こらない。このような状態になる境界の距離を、カットオフ距離とよぶ(図4参照)。
π共役系鎖におけるカットオフ距離は次の実験結果から導き出せる。金で挟まれた、ジフェニルチオール(結合した2つのフェニル環の端にチオールが付いている)の電流−電圧特性から得られるコンダクタンスは、金電極間のトンネルによる値と一致する。しかしながら、ターフェニルチオール(3つのフェニル環が直線状に並んで結合し末端にチオールが付いている)の電流−電圧特性は金電極間のトンネルによる値と一致しないことから、電極から注入された電荷が分子内に補足される伝導パスがあることを意味している。
したがって、電極からフェニル環1つ分はトンネル輸送できるけれども、真ん中の1つのフェニル環には電荷が補足されている。このことから、電極につながれたフェニル環1つ分の長さがカットオフ距離である。
電極から注入されたキャリアは、z軸に沿って輸送すると考えられるので、z軸に沿ったポテンシャルの変化を計算することになる。z軸に沿った2つのカットオフ(距離)を考え、電極1に近い方のz座標を−zc0とし、電極2のz座標をzc1とする。この時、活性化エネルギーΔとΔは、
と計算される。
この活性化エネルギーを用いると、電極1(第1の導電層)を基準として電極2(第2の導電層)に印加するバイアスをVとして、電流が立ち上がる正側の閾値電圧Vth と負側の閾値電圧Vth は、分子のイオン化ポテンシャル(HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)レベルから見た真空準位)をIとし、電極1にのみ分子がリンカーで結合している場合には、電極1の仕事関数EF1を用いて、
で与えられる。
ここで、ηは電極間に印加したバイアスに対する電極1と分子間の電位差の比であり、分子の伝導に寄与する波動関数(一般的にはHOMO)をφ(x,y,z)とすれば、
となる長さl(エル)を用いて、

で与えられる。ここでφ(x,y,z)はφ(x,y,z)の複素共役関数を表す。一般的にz方向に対称な分子ではη=0.5と考えてよい。
電極1と電極2の仕事関数が異なる場合には、さらに電極1および電極2の仕事関数EF1、EF2も用いて、
で与えられる。
この式から、活性化エネルギーΔとΔが異なっていても、電極が異なる場合には、仕事関数の差によりその効果を相殺してしまう場合があることが分かる。したがって、電極の材料は整流性を発現するように選ぶ必要がある。どのように選ぶかは、分子内のダイポールベクトルの方向などに依存する。
この閾値電圧を用いて、電流−電圧特性から見た整流性パラメータξ、
が定義できる。この定義において、ξは0<ξ<1の範囲の無次元数である。
ξ=0.5は整流性がない、すなわち、バイアスの絶対値が同じ正/負の電圧で電流が立ち上がることを意味する。また、ξ>0.5の領域では正バイアス側で電流が流れやすく、通常のダイオードで言えば正バイアスが順方向で負バイアスが逆方向に相当する。また、ξ<0.5の領域では負バイアス側で電流が流れやすく、通常のダイオードで言えば負バイアスが順方向で正バイアスが逆方向に相当する。
具体的には、分子の主鎖方向のダイポールの向きが、第2の導電層から第1の導電層に向かっている場合、Δのみポテンシャル障壁(ビルトインポテンシャル)となる。整流比を上げるには、Vth を小さく、Vth を大きくすればよいため、第2の導電層の仕事関数が大きいほうが望ましい(EF1<EF2)。分子の主鎖方向のダイポールの向きが、第1の導電層から第2の導電層に向かっている場合、Δのみポテンシャル障壁(ビルトインポテンシャル)となる。整流比を上げるには、Vth を大きく、Vth を小さくすればよいため、第1の導電層の仕事関数が大きいほうが望ましい(EF2<EF1)。一般的に、0.6> ξ>0.4では活性化エネルギーが小さいためリーク電流が大きく、回路に応用する上で好ましくない。
(整流性を有する分子の設計)
以上から整流性を支配するのは、分子のダイポールであることが明らかである。さらに、活性化エネルギーに寄与するのは分子の主鎖方向(伝導方向)のダイポールの成分である。このようなダイポールを作るには、1次元的な鎖状π共役系鎖に均一に広がったπ電子を、片側につけたドナーまたはアクセプターで寄せることが有効である。片側にドナーを、反対側にアクセプターを付けることにより、より大きなダイポールを発現することは可能であるが、この構造はイオン化するため水分などの影響を受けやすく、さらには正と負のイオン化した部位が共存するため、伝導電荷に対し必ず反発力が強く働くので伝導の妨げになる。
このドナーやアクセプター部位が伝導の邪魔をしないためには、ドナーやアクセプターもπ共役の構造を持つことが望ましい。このためには、フェニル基などπ共役系に置換基を導入したドナーやアクセプターを利用することが可能である。この置換基によるダイポールの影響について議論する。
(メモリ特性の発現方法)
上に示したのはダイポールが作る静的なポテンシャルの効果である。これ以外に、ダイポールがフォノンを通じて電荷に及ぼす効果(電子−格子相互作用)がある。分子内の原子は熱による集団励起つまりフォノンにより、平衡位置からのずれを生じる。π共役系の場合、共役している主鎖方向ではなく、主鎖から分岐している方向(側鎖)に結合している原子集団(置換基)に大きなダイポールを導入できる。
図6は、電子−格子相互作用に対する結合モーメントの影響を示す図である。図6に示すように、これら側鎖のダイポールは主鎖の光学フォノンに対して追従できない、すなわち、同じ方向に変位できないため、主鎖の原子変位に伴うダイポールの方向のずれを発生する。
この方向のずれによるダイポールの変化は、フォノンによる分極の変化として記述される。この分極と電荷はクーロン力により結び付けられ、分極が大きい場合、電荷の周りに分極が引き付けられ、電荷と分極が一緒に動く状態が形成される。この状態をポーラロンと言う。
したがって、ダイポールの位置により、分極の効果に変化が生じると、分子の伝導特性が変化する。このため、以下では、ダイポールの位置によりフォノンによる分極がどのように変わるかについて説明する。
図6においてX方向を横方向とし、π共役が乗る平面を紙面と一致させ、Y方向を縦方向とする。位置(0,0)の原子がフォノンによりX方向にφだけ変位したとする。これにより、側鎖の位置(a,b)に在るダイポールがベクトルd00
からd01
に変化する。
フォノンによる変位φはa,bに比べ十分小さいとすると、
と近似できる。
したがって(主鎖方向に)誘起された分極(ダイポール)Pは、
と評価できる。
つまり、側鎖にダイポールを導入することにより電子−格子相互作用を大きくすることができる。したがって、このようにして導入されたダイポールは元の骨格の伝導特性を変化させる可能性が高い。
図7(a)、図7(b)は、複数の置換基がある場合の電子−格子相互作用に対する結合モーメントの影響を示す図である。π共役系において光学フォノンは、隣接する原子間で反対方向に変位するため、隣接する原子の側鎖にあるダイポールの変位は主鎖方向(X方向)逆向きとなる。
この様子を図7(a)、図7(b)は、に示す。隣接する原子にダイポールを持つ側鎖を導入する場合、図7(a)のような線対称になる導入と、図7(b)のような点対称になる導入の2つが想定される。
線対称の場合、ダイポール(a,b)のフォノンによる分極をPとすれば、
もう一方のダイポール(−a,b)の分極はP、フォノンの対称性(変位が−φ)から、
で与えられる。したがって、全体の分極Pは、
と与えられる。
この式から明らかなように、線対称型の配置の場合には、主鎖方向の分極が打ち消しあい、小さな縦方向の分極のみが残ることがわかる。したがって、このようにして導入されたダイポールは元の骨格の伝導特性を変化させにくい。
次に点対称の場合、ダイポール(a,b)のフォノンによる分極をPとすれば、
もう一方のダイポール(−a,−b)の分極はP、フォノンの対称性(変位が−φ)から、
で与えられる。
したがって、全体の分極Pは、
と与えられ、完全に打ち消しあうことがわかる。つまり、点対称で導入されたダイポールの寄与は打ち消しあい、電子−格子相互作用に寄与しない。したがって、このようにして導入されたダイポールは元の骨格の伝導特性を変化させない。
図8(a)、図8(b)は、リング状構造と置換基によるダイポールの向きの説明図である。電気伝導性を有するπ共役系において、上述のような直線的な構造と同様に重要なのがリング状構造である。
以下に、図8(a)、図8(b)のようなリング状構造(フェニル環構造)を考え、これに結合したダイポールのフォノンによる分極を考える。この場合、隣接した原子に結合したダイポールは直鎖の場合と同じであるため、リング構造に特有の、リング内で対向する位置(パラ位)のダイポールのみ考えればよい。この場合、ダイポールの方向が図8(a)のように平行な場合と、図8(b)のように反平行な場合が存在する。
図9(a)、図9(b)は、リング状構造と光学フォノンのモードの説明図である。リング状構造においては、光学フォノンのモードが図9(a)に示すリングの外に向かうモード(キノンモード)と、図9(b)にしめすリング内のモード(フェニルモード)の2種類存在する。パラ位でつながったリング状パイ共役系では、中性状態ではπ電子は各リング内に局在するのに対し、荷電状態(ポーラロン)ではπ電子は間にまたがって非局在するため構造がキノン的になることが知られている。
キノンモードの場合、2つのダイポールの根元の原子の振動方向は反対方向(振動ベクトルが(φ,0)と(−φ,0)になる。一方、フェニルモードの場合、2つのダイポールの根元の原子の振動方向は反対方向では無い。フェニルモードの場合、図9(b)の上側の原子の振動が(φ,0)方向の場合、下側の原子の振動は(φ/2,31/2 φ/2)方向、上側の原子の振動が(−φ/2,−31/2φ/2)方向の場合、下側の原子の振動は(−φ,0)方向となる。
したがって、フェニルモードでは振動方向は複雑であるが、φ(ファイ)の符号を反転させ、かつ、原子を入れ替えれば、1つに成ることから、従来と同様に1つの場合の計算を行えばよいことがわかる。以下ではこの4つ(=ダイポール2種×フォノン2種)の組み合わせについて計算を行う。
ダイポールが平行でかつキノンモードのフォノンの場合を考える。この場合、ダイポール(a,b)のフォノンによる分極をPとすれば、
もう一方のダイポール(a,b)の分極Pは、フォノンの対称性(変位が−φ)から、
で与えられる。
したがって、全体の分極Pは、
となり、完全に打ち消しあうことがわかる。
つまり、点対称で導入されたダイポールの寄与は打ち消しあい、電子格子相互作用に寄与しない。したがって、このようにして導入されたダイポールは元の骨格の伝導特性を変化させない。
次に、ダイポールが平行でかつフェニルモードのフォノンの場合を考える。この場合、ダイポール(a,b)のフォノンによる分極をPとすれば、
フォノンの対称性(変位が(φ/2, 31/2φ/2))から、もう一方のダイポール(a,b)の分極はP
で与えられる。
したがって、全体の分極Pは、
となり、ダイポール効果は和となり大きくなる。
つまり、この配置によりフェニルモードのフォノンによる電子−格子相互作用を大きくすることができる。したがって、このようにして導入されたダイポールは元の骨格の伝導特性を変化させる可能性が高い。
次にダイポールが反平行でかつキノンモードのフォノンの場合を考える。この場合、ダイポール(a,b)のフォノンによる分極をPとすれば、
もう一方のダイポール(−a,−b)の分極Pは、フォノンの対称性(変位が−φ)から、
で与えられる。
したがって、全体の分極Pは、
となり、ダイポール効果は和となり大きくなる。
つまり、この配置によりキノンモードのフォノンによる電子−格子相互作用を大きくすることができる。したがって、このようにして導入されたダイポールは元の骨格の伝導特性を変化させる可能性が高い。
最後に、ダイポールが平行でかつフェニルモードのフォノンの場合を考える。この場合、ダイポール(a,b)のフォノンによる分極をPとすれば、
もう一方のダイポール(−a,−b)の分極はP、フォノンの対称性(変位が(φ/2,31/2φ/2))から、
で与えられる。
したがって、全体の分極Pは、
と与えられる。
この式から明らかなように、分極が打ち消しあい、小さな分極のみが残ることがわかる。つまり電子格子相互作用に寄与は小さい。したがって、このようにして導入されたダイポールは元の骨格の伝導特性を変化させにくい。
(メモリ特性を有する分子の設計)
表1に、上述のダイポールの位置・方向と電子−格子相互作用の関係のまとめを示す。
一次元π共役系分子の伝導制御のためには、結合モーメントによるダイポールを導入すれば良い。複数個導入する場合、フォノンのモードを考慮すると、隣接位置に置くと伝導特性に変化を起こさずにダイポールが導入できる。フェニル環を用いて、パラ位にダイポールを導入すると元の構造に比べ伝導特性を変えられる可能性が高い。
図10は、フェニル基をドナーまたはアクセプター化する構造を例示する図である。伝導に影響を与えないでフェニル基をドナーまたはアクセプター化するためには、図10(a)〜(e)のような構造においてアクセプターの場合には、置換基Xとしてフッ素・塩素・臭素・ニトロ基・シアノ基・水酸基、カルボニル基、カルボキシル基などを用いれば良く、ドナーの場合には置換基Xとしてアミノ基などを用いればよい。
(整流性とメモリ特性を有する分子の設計)
図11は、メモリ特性を有する2つの分子の電流−電圧特性である。2つの分子、分子Aと分子Bは、フェニル基の側鎖にあるニトロ基とアミノ基によって、+2.5V付近で負性微分抵抗が生じメモリ特性を持つことが出来る。分子Aに関しては、主鎖方向にダイポールモーメントが小さいため整流性が小さい。一方、分子Bはフッ素の置換基挿入によって主鎖方向にダイポールモーメントが形成され整流性が発現している。
整流性の原因となっている、活性化エネルギーΔとΔは、分子の主鎖(伝導方向:z軸)に沿ったポテンシャルの変化であるので、主鎖方向のダイポールの寄与が支配的である。フェニル基全体の電子密度を変調させた図10のようなドナーまたはアクセプターは、π共役系の電子の密度を変調させるため効果的である。
しかしながら、中心のフェニル基の側鎖に付けたドナーやアクセプター置換基(図11の例では、アミノ基とニトロ基)は、主鎖方向へのダイポールの成分は小さくなるだけでなく、伝導パス上にダイポールが存在するわけではない。このため、キャリアとの距離が離れているので、ポテンシャルへの寄与は小さい。したがって、側鎖に導入したダイポールと、主鎖へのドナーまたはアクセプターの導入による主鎖のπ電子の偏りによる効果は、大きな差がある。
(整流比、ON/OFF比の増大方法)
上記に示したアクセプター基もしくはドナー基などの置換基が分子内に形成するダイポールによって、整流性とメモリ特性を単一分子に持たせることが可能になった。整流素子にとっては整流比が高いこと、メモリ素子にとってはON/OFF比が高いことが望ましい特性である。
このため、順バイアス電流およびON電流が大きくすることは分子設計において重要である。ここでON電流とは、分子が低抵抗状態での電流であり、OFF電流とは分子が高抵抗状態での電流のことを意味する。よって、整流性やメモリ特性を発現させるための置換基を配置する際に、ダイポールの大きさや方向以外に、分子のエネルギー準位や、分子軌道の状態密度(DOS)について考慮する必要がある。分子のどこに置換基を配置するかによって、分子のエネルギー準位が大きく変化する場合や、伝導に寄与する分子軌道の状態密度が低下するためである。
伝導パスである分子のHOMO準位(I)が大きくなると、次式から明らかなように閾値電圧が上昇してしまう。
また、HOMO準位(I)が変化しなくとも、電極に隣接した分子軌道の状態密度が低下すると、電極から分子への透過率が減少し、順バイアス電流およびON電流を減少させることになる。分子のエネルギー準位や状態密度の広がりは、GAUSSIANなどの分子軌道法により得られる。
実験では、分子Bはフッ素置換により整流性が発現したものの、ON電流が分子Aよりも一桁以上低くなっていることが分かる。図12は、図11で示した分子のHOMOである。図12(a)が分子A、図12(b)が分子Bである。なお、計算を簡便化するため、チオール基を水素にかえている。
分子Bはフッ素置換により、分子Aと比較してフェニル基の状態密度が減少していることが分かる。これによって、電極から分子への電荷のトンネルレートが減少し、ON電流が低くなっている。以上のことから、高い整流比、ON/OFF比を有する単一分子の設計には、電極(導電層)に隣接した部位が状態密度を持つように置換基を配置することが望ましいことがわかる。
図13は、本実施形態の有機分子の一具体例と示す図である。分子Cは末端のフェニル基のパラ位に、アクセプター基であるフッ素が置換されている。これにより、主鎖方向のダイポールモーメントは、末端のフェニル基のオルト位、メタ位にフッ素を置換した図12(b)の分子Bと同程度であり、高い整流比を有することが出来る。
また、分子CのHOMOは、図12(a)の分子AのHOMOと同様に、電極に隣接したフェニル基及びフッ素基に状態密度を持つ。したがって、高いON/OFF比を有することが出来る。
ここで、アクセプター基として用いたフッ素は一例であって、ニトロ基、塩素や臭素などのハロゲン基、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、トリアルキルアミノ基などのアクセプター基を用いた場合も同様に、分子の主鎖方向にダイポールモーメントを形成し、その分子のHOMOは、電極に隣接したフェニル基及びアクセプター基に状態密度を持つことから、高い整流比、ON/OFF比を有することが出来る。
図14は、末端にチオール基を有するフェニル環がパラ位で2つ結合した分子(ジフェニルチオール)の電流−電圧特性を示す図である。また、図15は、末端にチオール基を有するフェニル環がパラ位で3つ結合した分子(ターフェニルチオール)の電流−電圧特性を示す図である。
これらの図から、ジフェニルの場合、0.5V以下の低電圧領域においても電流が流れ、フェニル環が3つになるとこの電流が観測されなくなっている。これは、上述のように、フェニル環が2つの場合には、電極から電極へトンネリングにより電子が抜けてゆくことを意味する。また、フェニル環が3つの場合には分子上に電荷が留まるため、分子の離散的な準位と電極の準位とのエネルギー的な整合がとれない場合に、電流が流れないこと意味している。
整流デバイスにおいては、0V付近(低電圧領域)の電流はリーク電流でしかなく、特性を損ねる効果しかもたらさない。このため、一次元π共役系分子としては、π共役系鎖の長さがリーク電流の少ない、12個以上の1重結合と、2重結合または3重結合が交互に結合してなる一次元的なπ共役系鎖を備えることが望ましい。
また、π共役系の長さが長い場合には分子内での電荷の伝導による電圧降下などが問題になる。このため、46個以下の炭素の1重結合と、2重結合または3重結合が交互に結合してなる一次元的なπ共役系鎖(ベンゼン環10個)以下であることが望ましい。荷電状態(キャリア=ポーラロン)では、π電子はベンゼン環の間にまたがって非局在し、ベンゼン環5つに広がった時に安定になることが知られている。したがって、ベンゼン環10個以上の長さになると、1つの分子鎖中に複数のキャリア(ポーラロン)が安定して存在できることになる。
π共役系は一次元であるので、キャリアはお互いを追い抜くことはできない。このため、キャリアの移動は一次元的に並んでいるキャリアの中で一番遅い移動にそろうことになる。また、キャリア間のクーロン力による反発ポテンシャルが移動の活性化エネルギーとなる。この結果、キャリアが1つしか入れない分子長の場合に比べ、複数のキャリアが入る分子長の場合、キャリアの平均的な移動速度が遅くなる、言い換えれば電流が小さくなる。よって、ポーラロンが2つ入る分子長、つまりベンゼン環10個以下の分子であることが望ましい。
構造としては、パラフェニレン誘導体やオリゴチオフェン誘導体、オリゴピロール誘導体、オリゴフラン誘導体、パラフェニレンビニレン誘導体、フェニルエチニレン誘導体などが用いられる。
本実施形態のフェニル基22の置換基R0は電子吸引基(A)である。電子吸引基(A)は、例えば、ニトロ基(−NO)、ハロゲン(−F,−Cl,−Br,−I)、シアノ基(−C≡N)、カルボニル基(−C(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)−)、または、トリアルキルアミノ基(−N+R)である。
また、本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4は、水素、電子吸引基(A)、または、電子供与基(D)である。電子吸引基(A)は、例えば、ニトロ基(−NO)、ハロゲン(−F,−Cl,−Br,−I)、シアノ基(−C≡N)、カルボニル基(−C(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)−)、または、トリアルキルアミノ基(−N+R)である。また、電子供与基(D)は、アルコシキ基(−OR)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基(−NHR)、ジアルキルアミノ基(−NR)、または、アミド基(−NHCOR)である。
本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4の少なくともいずれか一つが、電子供与基(D)であることが望ましい。置換基R0が電子吸引基(A)であるため、電子供与基(D)を備えることで、ダイポールモーメントを強くすることが可能となり、整流性が向上するからである。特に、置換基R3、R4が電子供与基(D)、置換基R1、R2を水素とすることが望ましい。
本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4は、π共役系鎖(P)20の結合方向に対し線対称な配置であることが望ましい。線対称な配置とすることで、ダイポールモーメントの向きが有機分子16の伸長方向に平行となり、有機分子16の整流性を効果的に発現させることが可能となるからである。
また、本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4は、すべて水素であることが望ましい。置換基R1、R2、R3、R4を水素とすることで、フェニル基22周りの状態密度(DOS)が向上するからである。
そして、有機分子16は、結合方向に、1.3Debye(=4.3×10−30C・m)以上15Debye(=50×10−30C・m)以下のダイポールモーメントを備えることが望ましい。1.3Debye未満の場合は、十分な整流性が得られないおそれがある。また、15Debyeを超えると、メモリデータのリセット電圧が高くなりすぎ、メモリデータのリセットが困難となるためである。
上述のように、有機分子中16のπ共役系鎖(P)20は、1重結合と、2重結合または3重結合が交互に結合し、炭素数が12個より大きく46個以下である。炭素数が12個以下であると、電子は第1の導電層10と第2の導電層12との間をトンネリングし、有機分子16が電子の伝導に関与しなくなるおそれが高い。また、炭素数が46個を超えると、有機分子16の抵抗が高くなりすぎるため望ましくない。炭素数は40個以下であることがより望ましい。
π共役系鎖(P)20は、π共役系鎖20の結合方向に対し非線対称な配置の電子吸引基(A)または電子供与基(D)を含む抵抗変化型分子鎖である。この構造により、有機分子16にメモリ特性を発現させる。
図16は、π共役系鎖(P)20に含まれる構造を例示する図である。π共役系鎖(P)20が、フェニレン環(図16(a))、チオフェン環(図16(b))、ピロール環(図16(c))、フラン環(図16(d))、エチレン(図16(e))、または、アセチレン(図16(f))を含むことが望ましい。
π共役系鎖(P)20は、構造の安定性、抵抗変化特性、および製造容易性の観点から、1重結合−2重結合または3重結合−1重結合の炭素結合に挟まれ、電子吸引基または電子供与基を備えるフェニル環であることが望ましい。
上述のように、第1の導電層10、第2の導電層12は、例えば、金属で形成される。金属以外にも、半導体、金属半導体化合物、金属酸化物等の導電体を適用することが可能である。また、リンカー基18は、化学結合により第1の導電層10に対して有機分子16を固定する。
リンカー基18は、例えば、チオール基(−S−)、シラノール基(−SiRO−)、アルコール基(−O−)、ホスホン酸基(−PO−)、カルボキシル基(−COO−)、または、アゾ基(−N−)である。
リンカー基18の構造によって、化学結合の容易性の観点から、望ましい第1の導電層10の材料が異なる。例えば、一端が図3のようにチオール基である場合は、化学結合する側の電極(導電層)は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすい金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、またはタングステン(W)であることが特に望ましい。
また、例えば、一端がアルコール基、カルボキシル基、またはホスホン酸基である場合は、化学結合する側の電極(導電層)はタングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすいタンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが特に望ましい。
また、例えば、一端がシラノール基である場合は、化学結合する側の電極(第1の導電層)はシリコン(Si)または金属酸化物であることが望ましい。
第1の導電層10、第2の導電層12が異なる材料、例えば異なる金属材料で形成されてもかまわない。
第1の導電層10、第2の導電層12が異なる金属の場合、例えば、第1の導電層10と第2の導電層12の一方が、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、W、WNを含み、他方がTa、TaN、Mo、MoN、TiNを含む。
第1の導電層10と第2の導電層12の仕事関数が異なる場合には、閾値電圧Vth 、Vth は、第1の導電層10の仕事関数EF1、電極2の仕事関数EF2、HOMO準位(I)も用いて、
で与えられる。
この式から、活性化エネルギーΔとΔが異なっていても、電極(導電層)が異なる場合には、仕事関数の差によりその効果を相殺してしまう場合があることが分かる。したがって、電極(導電層)は整流性を発現するように選ぶ必要がある。
具体的には、分子の主鎖方向のダイポールの向きが、第2の導電層12から第1の導電層10に向かっている場合、Δのみポテンシャル障壁(ビルトインポテンシャル)となる。整流比を上げるには、Vth を小さく、Vth を大きくすればよいため、第2の導電層12の仕事関数が第1の導電層10の仕事関数より大きいほうが望ましい(EF1<EF2)。
分子の主鎖方向のダイポールの向きが、第1の導電層10から第2の導電層12に向かっている場合、Δのみポテンシャル障壁(ビルトインポテンシャル)となる。整流比を上げるには、Vth を大きく、Vth を小さくすればよいため、第1の導電層10の仕事関数が第2の導電層12の仕事関数より大きいほうが望ましい(EF2<EF1)。
本実施形態では、置換基R0が電子吸引基(A)であるため、分子の主鎖方向のダイポールの向きが、第2の導電層12から第1の導電層10に向かっている。したがって、第2の導電層12の仕事関数が第1の導電層10の仕事関数より大きいほうが、整流性を向上させる観点から望ましい(EF1<EF2)。
分子を流れる電荷は、電極からトンネリングにより注入された電荷である。また、実施形態では、電極のフェルミ準位と分子の準位とのエネルギー的なアライメントを利用することから、電極からのトンネリングがFowler−Nordheim機構など、真空準位を利用する場合には動作しない。したがって、電極から分子への直接トンネリングが可能であれば、電極表面に酸化物や窒化物など絶縁層が存在しても動作する。しかしながら絶縁層は金属から分子へのトンネリングが行われる程度に薄いことが望ましく、絶縁層の膜厚は3nm以下であることが望ましい。
以上のように、本実施形態の有機分子メモリは、小さなサイズで、整流性を有し、ON/OFF比の向上を可能にする。
(第2の実施形態)
本実施形態の有機分子メモリは、フェニル基の置換基R0が電子供与基(D)である点で、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する。
図17は、本実施形態のメモリセルの構造を示す模式図である。本実施形態では、図17に示すように、図2で示した置換基R0が電子吸引基(D)である。
本実施形態の有機分子16は、電子吸引基(A)を備えるフェニル基22が有機分子16内で偏在し、π−D構造を形成している。この構造により、有機分子16内にダイポールによるポテンシャルが形成される。このポテンシャルにより、有機分子16が整流性を備える。
本実施形態では、π共役系鎖(P)20からフェニル基22の電子供与基(D)を向いたダイポールモーメントを発現させる。これにより、第1の導電層10を基準として、第2の導電層12に負電圧を印加した時を順バイアスとする整流性が発現される。
本実施形態のフェニル基22の置換基R0は電子供与基(D)である。電子供与基(D)は、例えば、アルコシキ基(−OR),水酸基(−OH)、アミノ基(−NH),アルキルアミノ基(−NHR),ジアルキルアミノ基(−NR)、または、アミド基(−NHCOR)である。
また、本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4は、水素、電子吸引基(A)、または、電子供与基(D)である。電子吸引基(A)は、例えば、ニトロ基(−NO)、ハロゲン(−F,−Cl,−Br,−I)、シアノ基(−C≡N)、カルボニル基(−C(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)−)、または、トリアルキルアミノ基(−N+R3)である。また、電子供与基(D)は、アルコシキ基(−OR)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基(−NHR)、ジアルキルアミノ基(−NR2)、または、アミド基(−NHCOR)である。
本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4の少なくともいずれか一つが電子吸引基(A)であることが望ましい。置換基R0が電子供与基(D)であるため、電子吸引基(A)を備えることで、ダイポールモーメントを強くすることが可能となり、整流性が向上するからである。特に、置換基R3、R4が電子吸引基(A)、置換基R1、R2を水素とすることが望ましい。
本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4は、π共役系鎖(P)20の結合方向に対し線対称な配置であることが望ましい。線対称な配置とすることで、ダイポールモーメントの向きが有機分子16の伸長方向に平行となり、有機分子16の整流性を効果的に発現させることが可能となるからである。
また、本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4は、すべて水素であることが望ましい。置換基R1、R2、R3、R4を水素とすることで、フェニル基22周りの状態密度(DOS)が向上するからである。
そして、有機分子16は、結合方向に、1.3Debye(=4.3×10−30C・m)以上15Debye(=50×10−30C・m)以下のダイポールモーメントを備えることが望ましい。1.3Debye未満の場合は、十分な整流性が得られないおそれがある。また、15Debyeを超えると、メモリデータのリセット電圧が高くなりすぎ、メモリデータのリセットが困難となるためである。
また、本実施形態では、置換基R0が電子供与基(D)であるため、分子の主鎖方向のダイポールの向きが、第1の導電層10から第2の導電層12に向かっている。したがって、第1の導電層10の仕事関数が第2の導電層12の仕事関数より大きいほうが、整流性を向上させる観点から望ましい(EF1>EF2)。
(第3の実施形態)
本実施形態の有機分子メモリは、第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられ、有機分子を有し、有機分子が、第1の導電層と結合するリンカー基と、リンカー基と結合するπ共役系鎖と、リンカー基の反対側でπ共役系鎖と結合するフェニル基を有し、π共役系鎖は1重結合と、2重結合または3重結合が交互に結合し、炭素数が12個より大きく46個以下であり、π共役系鎖の結合方向に対し非線対称な配置の電子吸引基または電子供与基を含み、フェニル基が下記式に示すように置換基R0、R1、R2、R3、R4を有し、置換基R0が芳香環であり、芳香環が第2の導電層と対向し、置換基R1、R2、R3、R4の少なくともいずれか一つが電子吸引基または電子供与基である、有機分子層と、を備える。
本実施形態は、フェニル基の置換基R0が電子吸引基または電子供与基ではなく、芳香環である点で第1、第2の実施形態と異なっている。以下、第1、第2の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する。
図18は、本実施形態の有機分子の構造を例示する図である。本実施形態は、フェニル基22の置換基R0は、芳香環(芳香族化合物)である。この芳香環が第2の導電層12と対向する。状態密度(DOS)の高い芳香環を設けることで、メモリセルのON/OFF比が向上する。
図19は、置換基R0の構造を例示する図である。置換基R0が、フェニレン環(図19(a))、チオフェン環(図19(b))、ピロール環(図19(c))、または、フラン環(図19(d))を含むことが望ましい。特に、フェニレン環(図19(a))であることが望ましい。
また、本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4の少なくともいずれか一つが、電子吸引基(A)、または、電子供与基(D)である。電子吸引基(A)、または、電子供与基(D)を設けることで、π共役系鎖(P)20の結合方向のダイポールモーメントが発現され、整流性が発現する。
電子吸引基(A)は、例えば、ニトロ基(−NO)、ハロゲン(−F,−Cl,−Br,−I)、シアノ基(−C≡N)、カルボニル基(−C(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)−)、または、トリアルキルアミノ基(−N+R3)である。また、電子供与基(D)は、アルコシキ基(−OR)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基(−NHR)、ジアルキルアミノ基(−NR)、または、アミド基(−NHCOR)である。
本実施形態では、図18(a)に示すように、例えば、図2で示すフェニル基22の置換基R1またはR2が電子吸引基(A)である。または、図18(b)に示すように、図2で示すフェニル基22の置換基R3またはR4が電子供与基(D)である。あるいは、図18(c)に示すように、図2で示すフェニル基22の置換基R1またはR2が電子吸引基(A)であり、かつ、置換基R3またはR4が電子供与基(D)であってもかまわない。
これらの構造により、有機分子16内に、芳香環からπ共役系鎖(P)20を向いたダイポールモーメントを発現させる。これにより、第1の導電層10を基準として、第2の導電層12に正電圧を印加した時を順バイアスとする整流性が発現される。
本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4は、π共役系鎖(P)20の結合方向に対し線対称な配置であることが望ましい。線対称な配置とすることで、ダイポールモーメントの向きが有機分子16の伸長方向に平行となり、有機分子16の整流性を効果的に発現させることが可能となるからである。
そして、有機分子16は、結合方向に、1.3Debye(=4.3×10−30C・m)以上15Debye(=50×10−30C・m)以下のダイポールモーメントを備えることが望ましい。1.3Debye未満の場合は、十分な整流性が得られないおそれがある。また、15Debyeを超えると、メモリデータのリセット電圧が高くなりすぎ、メモリデータのリセットが困難となるためである。
(第4の実施形態)
本実施形態は、フェニル基の置換基R1、R2、R3、R4の配置が第3の実施形態と異なっている。以下、第3の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する。
図20は、本実施形態の有機分子の構造を例示する図である。本実施形態は、フェニル基22の置換基R0は、芳香環(芳香族化合物)である。状態密度(DOS)の高い芳香環を設けることで、高いON/OFF比を有することが出来る
また、本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4の少なくともいずれか一つが、電子吸引基(A)、または、電子供与基(D)である。電子吸引基(A)、または、電子供与基(D)を設けることで、π共役系鎖(P)20の結合方向のダイポールモーメントが発現され、整流性が発現する。
電子吸引基(A)は、例えば、ニトロ基(−NO)、ハロゲン(−F,−Cl,−Br,−I)、シアノ基(−C≡N)、カルボニル基(−C(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)−)、または、トリアルキルアミノ基(−N+R)である。また、電子供与基(D)は、アルコシキ基(−OR)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基(−NHR)、ジアルキルアミノ基(−NR)、または、アミド基(−NHCOR)である。
本実施形態では、図20(a)に示すように、例えば、図2で示すフェニル基22の置換基R1またはR2が電子供与基(D)である。または、図20(b)に示すように、図2で示すフェニル基22の置換基R3またはR4が電子吸引基(A)である。あるいは、図20(c)に示すように、図2で示すフェニル基22の置換基R1またはR2が電子供与基(D)であり、かつ、置換基R3またはR4が電子吸引基(A)であってもかまわない。
これらの構造により、有機分子16内に、π共役系鎖(P)20から芳香環を向いたダイポールモーメントを発現させる。これにより、第1の導電層10を基準として、第2の導電層12に負電圧を印加した時を順バイアスとする整流性が発現される。
本実施形態のフェニル基22の置換基R1、R2、R3、R4は、π共役系鎖(P)20の結合方向に対し線対称な配置であることが望ましい。線対称な配置とすることで、ダイポールモーメントの向きが有機分子16の伸長方向に平行となり、有機分子16の整流性を効果的に発現させることが可能となるからである。
そして、有機分子16は、結合方向に、1.3Debye(=4.3×10−30C・m)以上15Debye(=50×10−30C・m)以下のダイポールモーメントを備えることが望ましい。1.3Debye未満の場合は、十分な整流性が得られないおそれがある。また、15Debyeを超えると、メモリデータのリセット電圧が高くなりすぎ、メモリデータのリセットが困難となるためである。
以下、実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1は、第1の実施形態の有機分子の具体例である。図21は、実施例1の分子を示す図である。図21(a)が分子構造、図21(b)がHOMOである。分子のダイポールモーメントとHOMOは、Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G)で求めた。
側鎖方向に有するダイポールは、窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)のニトロ基のダイポール(α)と、炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)のアミノ基のダイポール(β)のベクトル和からなり、これらのダイポールはメモリ特性に関与する。一方、主鎖方向に有するダイポールは、フッ素が結合したフェニル基から逆側のフェニル基の方向で、大きさは1.41(Debye)のダイポール(γ)であり、このダイポールは整流性に関与する。
また、分子のHOMO準位は5.67(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上記のイメージフォースの方法によりポテンシャルを計算し、Δ=0.28eV)であり、Δ=0.00(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−1.36(V)、正バイアス側Vth =0.80(V)となる。整流性パラメータξ=0.63であることから、優れた整流性を示している。
さらに、図21(b)に示すように、HOMOは分子全体に広がっていることから、置換基R0のフッ素置換によって第2の導電層から分子へのトンネルレートが減少することはなく、高いON/OFF比を維持できる。
ここで、アクセプター基として用いたフッ素は一例であって、ニトロ基、塩素や臭素などのハロゲン基、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、トリアルキルアミノ基などのアクセプター基を用いた場合も同様に、分子の主鎖方向にダイポールモーメントを形成し、その分子のHOMOは、電極に隣接したフェニル基及びアクセプター基に状態密度を持つことから、高い整流比、ON/OFF比を有することが出来る。
(実施例2)
実施例2は、第1の実施形態の有機分子の具体例である。図22は、実施例2の分子を示す図である。図22(a)が分子構造、図22(b)がHOMOである。
Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G)で、分子のダイポールは、ニトロ基のダイポール(α)は窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)とアミノ基のダイポール(β)は炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)のベクトル和、および、フッ素が結合したフェニル基から逆側のフェニル基の主鎖方向に3.16(Debye)のダイポール(γ)が存在している。
また、分子のHOMO準位は5.88(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上記のイメージフォースの方法によりポテンシャルを計算しΔ=0.42(eV)でありΔ=0.00(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−2.06(V)、正バイアス側Vth =1.22(V)となり、整流性パラメータξ=0.63であることから、優れた整流性を示している。
しかし、実施例1と比較すると、HOMOは分子全体に広がっておらず、第2の導電層から分子へのトンネルレートが減少することで、ON電流が減少している。これは、置換基R1〜R4のフッ素置換により、フェニル基の状態密度が減少してしまったためである。
(実施例3)
実施例3は、第1の実施形態の有機分子の具体例である。図23は、実施例3の分子を示す図である。図23(a)が分子構造、図23(b)がHOMOである。分子のダイポールモーメントとHOMOは、Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G)で求めた。
側鎖方向に有するダイポールは、窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)のニトロ基のダイポール(α)と炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)のアミノ基のダイポール(β)のベクトル和からなり、これらのダイポールはメモリ特性に関与する。一方、主鎖方向に有するダイポールは、塩素が結合したフェニル基から逆側のフェニル基の方向で大きさは2.38(Debye)のダイポール(γ)であり、このダイポールは整流性に関与する。
また、分子のHOMO準位は5.74(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上記のイメージフォースの方法によりポテンシャルを計算しΔ=0.36(eV)であり、Δ=0.00(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−1.66(V)、正バイアス側Vth =0.94(V)となり、整流性パラメータξ=0.64であることから、優れた整流性を示している。
さらに、図23(b)に示すように、HOMOは分子全体に広がっていることから、置換基R0の塩素(Cl)置換によって第2の導電層から分子へのトンネルレートが減少することはなく、高いON/OFF比を維持できる。
(実施例4)
実施例4は、第1の実施形態の有機分子の具体例である。図24は、実施例4の分子を示す図である。図24(a)が分子構造、図24(b)がHOMOである。分子のダイポールモーメントとHOMOは、Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G)で求めた。
側鎖方向に有するダイポールは、窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)のニトロ基のダイポール(α)と炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)のアミノ基のダイポール(β)のベクトル和からなり、これらのダイポールはメモリ特性に関与する。一方、主鎖方向に有するダイポールは、臭素が結合したフェニル基から逆側のフェニル基の方向で大きさは2.27(Debye)のダイポール(γ)であり、このダイポールは整流性に関与する。
また、分子のHOMO準位は5.73(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上記のイメージフォースの方法によりポテンシャルを計算しΔ=0.35(eV)でありΔ=0.00(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−1.62(V)、正バイアス側Vth =0.92(V)となり、整流性パラメータξ=0.64であることから、優れた整流性を示している。
さらに、図24(b)に示すように、HOMOは分子全体に広がっていることから、置換基R0の臭素(Br)置換によって第2の導電層から分子へのトンネルレートが減少することはなく、高いON/OFF比を維持できる。
(実施例5)
実施例5は、第1の実施形態の有機分子の具体例である。図25は、実施例5の分子を示す図である。図25(a)が分子構造、図25(b)がHOMOである。分子のダイポールモーメントとHOMOは、Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G)で求めた。
側鎖方向に有するダイポールは、窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)のニトロ基のダイポール(α)と炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)のアミノ基のダイポール(β)のベクトル和からなり、これらのダイポールはメモリ特性に関与する。一方、主鎖方向に有するダイポールは、フッ素とアミノ基が結合したフェニル基から逆側のフェニル基の方向で大きさは2.59(Debye)のダイポール(γ)であり、このダイポールは整流性に関与する。
また、分子のHOMO準位は5.97(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上記のイメージフォースの方法によりポテンシャルを計算しΔ=0.37(eV)でありΔ=0.00(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−2.14(V)、正バイアス側Vth =1.40(V)となり、整流性パラメータξ=0.60であることから、優れた整流性を示している。
さらに、図25(b)に示すように、HOMOはフッ素とアミノ基に置換したフェニル基側に広がっていることから、第2の導電層から分子へのトンネルレートが減少することはなく、高いON/OFF比を維持できる。
(比較例1)
図26は、比較例1の分子を示す図である。図26(a)が分子構造、図26(b)がHOMOである。
Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G*)で、分子のダイポールは、ニトロ基のダイポール(α)は窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)とアミノ基のダイポール(β)は炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)である。ダイポールモーメントのγが小さいことから、整流性は小さい。
また、分子のHOMO準位は5.65(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上記のイメージフォースの方法によりポテンシャルを計算しΔ=0.17(eV)でありΔ=0.00(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−1.10(V)、正バイアス側Vth =0.76(V)となり、整流性パラメータξ=0.59であることから、弱い整流性を示している。しかしながら、Vth とVth の絶対値の差は0.42(V)以下であり、熱による準位の拡がり効果を考慮した場合、安定な整流性(特性ばらつきを考慮しても常に整流性が発現する)を得ることができず、実用的な整流性とは言えない。
本比較例の場合、Vth とVth の絶対値の差が0.42(V)以上であるためには、Δ>0.21(eV)である必要がある。Δ=0.21(eV)の時、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−1.18(V)であり正バイアス側Vth =0.76(V)である。この場合の、整流性パラメータξ=0.6である。
したがって、ばらつきを考慮しても安定な整流性を得るためには、正バイアス側が順方向である場合、整流性パラメータξ>0.6であることが望ましい。同様に、負バイアス側が順方向である場合、整流性パラメータξ<0.4であることが望ましい。
一方、図26(b)に示すように、HOMOは分子全体に広がっていることから、第2の導電層から分子へのトンネルレートが減少することはなく、高いON/OFF比を維持できる。
(比較例2)
図27は、比較例2の分子を示す図である。図27(a)が分子構造、図27(b)がHOMOである。
Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G*)で、分子のダイポールは、ニトロ基のダイポール(α)は窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)とアミノ基のダイポール(β)は炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)のベクトル和、およびフッ素が結合したフェニル基から逆側のフェニル基の主鎖方向に1.90(Debye)のダイポール(γ)が存在している。
また、分子のHOMO準位は5.86(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上記のメージフォースの方法によりポテンシャルを計算しΔ=0.32(eV)でありΔ=0.00(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−1.82(V)、正バイアス側Vth =1.18(V)となり、整流性パラメータξ=0.61であることから、優れた整流性を示している。
しかし、図27(b)示すように、HOMOは分子全体に広がっておらず、第2の導電層から分子へのトンネルレートが減少することで、ON電流が減少している。これは、置換基R1〜R4のフッ素置換により、フェニル基の状態密度が減少してしまったためである。
(比較例3)
図28、比較例3の分子を示す図である。図28(a)が分子構造、図28(b)がHOMOである。
Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G*)で、分子のダイポールは、フッ素が結合したフェニル基から逆側のフェニル基の主鎖方向に2.39(Debye)のダイポール(γ)が存在している。
このダイポールによってIV特性に整流性はあるものの、π共役系主鎖(P)に電子‐格子相互作用に関与する置換基がないため、ヒステリシス挙動は観測されていない。したがって、メモリ特性を備えない。
(実施例6)
実施例6は、第2の実施形態の有機分子の具体例である。図29は、実施例6の分子を示す図である。図29(a)が分子構造、図29(b)がHOMOである。分子のダイポールモーメントとHOMOは、Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G)で求めた。
側鎖方向に有するダイポールは、窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)のニトロ基のダイポール(α)と炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)のアミノ基のダイポール(β)のベクトル和からなり、これらのダイポールはメモリ特性に関与する。一方、主鎖方向に有するダイポールは、置換基の無いフェニル基からアミノ基とフッ素基が結合したフェニル基の方向で大きさは3.74(Debye)のダイポール(γ)であり、このダイポールは整流性に関与する。
また、分子のHOMO準位は5.38(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上に記したイメージフォースの方法によりポテンシャルを計算しΔ=0.00(eV)でありΔ=0.57(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−0.22(V)、正バイアス側Vth =1.36(V)となり、整流性パラメータξ=0.14であることから、優れた整流性を示している。
さらに、図29(b)に示すように、HOMOは分子全体に広がっていることから、高いON/OFF比を維持できる。
ここで、ドナー基として用いたアミノ基は一例であって、アルコシキ基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アミド基などのドナー基を用いた場合も同様に、分子の主鎖方向にダイポールモーメントを形成し、その分子のHOMOは、分子全体に広がっていることから、高い整流比、ON/OFF比を有することが出来る。
(実施例7)
実施例7は、第3の実施形態の有機分子の具体例である。図30は、実施例7の分子を示す図である。図30(a)が分子構造、図30(b)がHOMOである。分子のダイポールモーメントとHOMOは、Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G)で求めた。
側鎖方向に有するダイポールは、窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)のニトロ基のダイポール(α)と炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)のアミノ基のダイポール(β)のベクトル和からなり、これらのダイポールはメモリ特性に関与する。一方、主鎖方向に有するダイポールは、フッ素が結合したフェニル基から逆側のフェニル基の方向で大きさは1.79(Debye)のダイポール(γ)であり、このダイポールは整流性に関与する。
また、分子のHOMO準位は5.74(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上記のイメージフォースの方法によりポテンシャルを計算しΔ=0.30(eV)でありΔ=0.00(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−1.54(V)、正バイアス側Vth =0.94(V)となり、整流性パラメータξ=0.62であることから、優れた整流性を示している。
さらに、第2の導電層に隣接した導電性のあるフェニル基によって、第2の導電層から分子へのトンネルレートが減少することはなく、高いON/OFF比を維持できる。
ここで、アクセプター基として用いたフッ素は一例であって、ニトロ基、塩素や臭素などのハロゲン基、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、トリアルキルアミノ基などのアクセプター基を用いた場合も同様に、分子の主鎖方向にダイポールモーメントを形成し、その分子のHOMOは、電極に隣接したフェニル基及びアクセプター基に状態密度を持つことから、高い整流比、ON/OFF比を有することが出来る。
(実施例8)
実施例8は、第4の実施形態の有機分子の具体例である。図31は、実施例8の分子を示す図である。図31(a)が分子構造、図31(b)がHOMOである。分子のダイポールモーメントとHOMOは、Gaussianによる計算(DFT法:B3LYPを用い、基底関数は6−31G)で求めた。
側鎖方向に有するダイポールは、窒素原子から炭素原子の方向で大きさは4.22(Debye)のニトロ基のダイポール(α)と炭素原子から窒素原子の方向で大きさは2.25(Debye)のアミノ基のダイポール(β)のベクトル和からなり、これらのダイポールはメモリ特性に関与する。一方、主鎖方向に有するダイポールは、アミノ基が結合したフェニル基から逆側のフェニル基の方向で大きさは2.92(Debye)のダイポール(γ)であり、このダイポールは整流性に関与する。
また、分子のHOMO準位は5.37(eV)であり、主鎖π共役鎖のη=0.50であった。上記のイメージフォースの方法によりポテンシャルを計算しΔ=0.00(eV)でありΔ=0.14(eV)であった。
したがって、仕事関数E=5.27(eV)のAu(111)基板を用いたときの、電流が立ち上がる電圧は、負バイアス側Vth =−0.20(V)、正バイアス側Vth =0.48(V)となり、整流性パラメータξ=0.29であることから、優れた整流性を示している。
さらに、図32(b)に示すように、HOMOは分子全体に広がっていることから、高いON/OFF比を維持できる。
ここで、ドナー基として用いたアミノ基は一例であって、アルコシキ基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アミド基などのドナー基を用いた場合も同様に、分子の主鎖方向にダイポールモーメントを形成し、そのHOMOは分子全体に広がっていることから、高い整流比、ON/OFF比を有することが出来る。
なお、第3および第4の実施形態では、フェニル基22の置換基R0を芳香環とする場合を例に説明したが、芳香環にかえて、ビニレン基またはエチニレン基を適用しても、整流性を有し、ON/OFF比の向上を可能にする有機分子を備える有機分子メモリを提供することが可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換えまたは変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10 第1の導電層
12 第2の導電層
14 有機分子層
16 有機分子
18 リンカー基(L)
20 π共役系鎖(P)
22 フェニル基

Claims (10)

  1. 第1の導電層と、
    第2の導電層と、
    前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられ、有機分子を有し、前記有機分子が、前記第1の導電層と結合するリンカー基と、前記リンカー基と結合するπ共役系鎖と、前記リンカー基の反対側で前記π共役系鎖と結合し前記第2の導電層と対向するフェニル基を有し、前記π共役系鎖は1重結合と、2重結合または3重結合が交互に結合し、炭素数が12個より大きく46個以下であり、前記有機分子は下記式(1)または下記式(2)で表され、前記リンカー基がLで示され、少なくともD1およびD2のいずれか一方が電子吸引基または電子供与基であり、前記フェニル基は置換基R0、R1、R2、R3、R4を有し前記置換基R0が電子吸引基または電子供与基であり、lおよびnは0以上の整数であり、mは0より大きい整数であり、l+n+mは2以上6未満である、有機分子層と、
    を備えることを特徴とする有機分子メモリ。
  2. 前記置換基R1、R2、R3、R4が、前記π共役系鎖の結合方向に対し線対称な配置であることを特徴とする請求項1記載の有機分子メモリ。
  3. 前記置換基R0が電子吸引基の場合、前記置換基R1、R2、R3、R4が水素または電子供与基であり、前記置換基R0が電子供与基の場合、前記置換基R1、R2、R3、R4が水素または電子吸引基であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の有機分子メモリ。
  4. 前記置換基R0が、ニトロ基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、または、トリアルキルアミノ基であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の有機分子メモリ。
  5. 前記置換基R0が、アルコシキ基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、または、アミド基であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の有機分子メモリ。
  6. 前記置換基R1、R2、R3、R4が、すべて水素であることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の有機分子メモリ。
  7. 前記置換基R0が電子吸引基の場合、前記第2の導電層の仕事関数が、前記第1の導電層の仕事関数よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の有機分子メモリ。
  8. 前記置換基R0が電子供与基の場合、前記第1の導電層の仕事関数が、前記第2の導電層の仕事関数よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の有機分子メモリ。
  9. 第1の導電層と、
    第2の導電層と、
    前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられ、有機分子を有し、前記有機分子が、前記第1の導電層と結合するリンカー基と、前記リンカー基と結合するπ共役系鎖と、前記リンカー基の反対側で前記π共役系鎖と結合し前記第2の導電層と対向するフェニル基を有し、前記π共役系鎖は1重結合と、2重結合または3重結合が交互に結合し、炭素数が12個より大きく46個以下であり、前記有機分子は下記式(1)または下記式(2)で表され、前記リンカー基がLで示され、少なくともD1およびD2のいずれか一方が電子吸引基または電子供与基であり、前記フェニル基は置換基R0、R1、R2、R3、R4を有し前記置換基R0が芳香環であり、lおよびnは0以上の整数であり、mは0より大きい整数であり、l+n+mは2以上6未満である、有機分子層と、
    を備えることを特徴とする有機分子メモリ。
  10. 前記置換基R1、R2、R3、R4が、前記π共役系鎖の結合方向に対し線対称な配置であることを特徴とする請求項9記載の有機分子メモリ。



JP2013196983A 2013-09-24 2013-09-24 有機分子メモリ Active JP6158013B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013196983A JP6158013B2 (ja) 2013-09-24 2013-09-24 有機分子メモリ
US14/456,159 US9263687B2 (en) 2013-09-24 2014-08-11 Organic molecular memory
US14/988,415 US9543536B2 (en) 2013-09-24 2016-01-05 Organic molecular memory

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013196983A JP6158013B2 (ja) 2013-09-24 2013-09-24 有機分子メモリ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015065220A JP2015065220A (ja) 2015-04-09
JP6158013B2 true JP6158013B2 (ja) 2017-07-05

Family

ID=52690146

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013196983A Active JP6158013B2 (ja) 2013-09-24 2013-09-24 有機分子メモリ

Country Status (2)

Country Link
US (2) US9263687B2 (ja)
JP (1) JP6158013B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6158013B2 (ja) * 2013-09-24 2017-07-05 株式会社東芝 有機分子メモリ
JP6203154B2 (ja) * 2014-09-22 2017-09-27 東芝メモリ株式会社 有機分子メモリ
CN108155290B (zh) * 2016-12-02 2020-06-12 北京大学 一种基于离子液体栅的单分子场效应晶体管
JP2019054207A (ja) * 2017-09-19 2019-04-04 東芝メモリ株式会社 記憶装置及び記憶装置の製造方法
CN110343110B (zh) * 2018-04-02 2021-05-28 北京大学 强极化分子及应用其制备的单分子场效应晶体管
JP2022107072A (ja) * 2019-05-23 2022-07-21 国立大学法人東京工業大学 可変抵抗デバイスおよびその製造方法
EP3813132A1 (en) * 2019-10-21 2021-04-28 Merck Patent GmbH Electronic switching device

Family Cites Families (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2377671C (en) * 1999-07-01 2011-01-04 David F. Bocian High density non-volatile memory device
US7112366B2 (en) 2001-01-05 2006-09-26 The Ohio State University Chemical monolayer and micro-electronic junctions and devices containing same
US7141299B2 (en) * 2001-01-05 2006-11-28 The Ohio State University Research Foundation Electronic junction devices featuring redox electrodes
US6855950B2 (en) 2002-03-19 2005-02-15 The Ohio State University Method for conductance switching in molecular electronic junctions
US6995312B2 (en) 2001-03-29 2006-02-07 Hewlett-Packard Development Company, L.P. Bistable molecular switches and associated methods
US7307870B2 (en) * 2004-01-28 2007-12-11 Zettacore, Inc. Molecular memory devices and methods
US7324385B2 (en) * 2004-01-28 2008-01-29 Zettacore, Inc. Molecular memory
US7345302B2 (en) 2004-09-21 2008-03-18 Hewlett-Packard Development Company, L.P. E-field polarized materials
US7378539B2 (en) * 2004-09-22 2008-05-27 Hewlett-Packard Development Company, L.P. Compound, a molecular switch employing the compound and a method of electronic switching
EP1703572A1 (en) 2005-01-25 2006-09-20 SONY DEUTSCHLAND GmbH Molecular rectifiers
JP2008532310A (ja) 2005-03-02 2008-08-14 エージェンシー フォー サイエンス、テクノロジー アンド リサーチ 分子電子素子のための複合有機分子
KR101300006B1 (ko) 2006-09-28 2013-08-26 주식회사 동진쎄미켐 전자 소자용 화합물 및 이를 포함하는 전자 소자
KR101458204B1 (ko) * 2007-04-02 2014-11-04 삼성전자주식회사 메탈로센 코어를 가지는 덴드리머, 이를 이용한 유기메모리 소자 및 그의 제조방법
JP5390554B2 (ja) 2011-03-24 2014-01-15 株式会社東芝 有機分子メモリ
JP5717490B2 (ja) * 2011-03-24 2015-05-13 株式会社東芝 有機分子メモリ
US9276216B2 (en) * 2013-09-10 2016-03-01 Kabushiki Kaisha Toshiba Organic molecular device
JP6158013B2 (ja) * 2013-09-24 2017-07-05 株式会社東芝 有機分子メモリ
JP6203154B2 (ja) * 2014-09-22 2017-09-27 東芝メモリ株式会社 有機分子メモリ

Also Published As

Publication number Publication date
US9543536B2 (en) 2017-01-10
JP2015065220A (ja) 2015-04-09
US20160164015A1 (en) 2016-06-09
US9263687B2 (en) 2016-02-16
US20150083988A1 (en) 2015-03-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6158013B2 (ja) 有機分子メモリ
Gao et al. Organic and hybrid resistive switching materials and devices
TWI528366B (zh) 有機分子記憶體
JP2012204434A (ja) 有機分子メモリ
JPWO2016039022A1 (ja) 熱電変換素子および熱電変換モジュール
JP4332508B2 (ja) 双安定分子スイッチ及びそれに関連する方法
Li et al. Fluorine-induced highly reproducible resistive switching performance: facile morphology control through the transition between J-and H-aggregation
US9276216B2 (en) Organic molecular device
US8254165B2 (en) Organic electronic memory component, memory component arrangement and method for operating an organic electronic memory component
US9177997B2 (en) Memory device
Nagarajan et al. First-principles studies on electronic properties of Oligo-p-phenylene molecular device
Zhang et al. Large rectification ratio of up to 106 for conjugation-group-terminated undecanethiolate single-molecule diodes on pt electrodes
US8809846B2 (en) Organic molecular memories and organic molecules for organic molecular memories
US9412944B2 (en) Organic molecular memory
EP1747558B1 (en) A composition of matter which results in electronic switching through intra- or inter- molecular charge transfer between molecules and electrodes induced by an electrical field
Liu et al. Rational design of bis (4-methoxyphenyl) amine-based molecules with different π-bridges as hole-transporting materials for efficient perovskite solar cells
Hu et al. Water-soluble conjugated polymers as active elements for organic nonvolatile memories
US9412943B2 (en) Organic molecular memory
US20030183847A1 (en) Single molecule realization of the switch and doide combination
Li et al. Low-cost bidirectional selector based on Ti/TiO2/HfO2/TiO2/Ti stack for bipolar RRAM arrays
JP2013197268A (ja) 不揮発性半導体記憶装置
Sui et al. Temperature dependent electron transport in oligo (3-methylthiophene) derivative molecular devices
US9711743B1 (en) Reconfigurable electronics using conducting metal-organic frameworks
KR100838931B1 (ko) 전기장에 의해 유도되는 분자내 전하이동, 분자간 전하이동, 또는 분자와 전극간 전하이동을 통해 전자 스위칭을 발생시키는 물질 조성물
Devisree et al. A methedology to simulate and analyse molecules as molecular switches

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160315

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161115

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20161117

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170113

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170509

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170607

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6158013

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350