JP6156824B2 - ヨーネ菌検出用プライマー及びそれを用いたヨーネ菌の検出方法 - Google Patents

ヨーネ菌検出用プライマー及びそれを用いたヨーネ菌の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヨーネ菌の核酸増幅法による検出に関し、具体的には、ヨーネ菌の挿入配列IS900をターゲットとする新規プライマー、及びそれを用いたヨーネ菌の検出方法に関する。
ヨーネ病はMycobacterium avium subspecies paratuberculosis(ヨーネ菌)によって惹起される反芻獣の慢性肉芽腫性腸炎で、非常に長い潜伏期間を特徴としている。ヨーネ病は家畜伝染病予防法に規定された重要疾病であり、我が国では現在も年間数百頭が摘発される状況にある。ヨーネ病の防疫対策には、感染源となるヨーネ菌排菌患畜の早期摘発・淘汰が極めて重要である。
ヨーネ病遺伝子検査は、平成25年4月からヨーネ病の確定診断法として実用化されている(非特許文献1参照)。しかしながら、現行のヨーネ病遺伝子診断法は個体診断法である為、多数の検査対象動物を一頭毎に診断するのに多大な費用と労力を要する。そこで、効率良く検査を行う為に、プール糞便を用いるヨーネ病遺伝子検査スクリーニング法の開発研究が進められている(非特許文献2参照)。
PCR等の核酸増幅法により病原菌を検出する為の遺伝子検査には、通常、当該菌が保有する特異的な塩基配列をターゲットとして利用する。ヨーネ菌でも複数の特異的遺伝子や挿入配列(IS)が知られているが、それらの中で最もコピー数が多いIS900が、ヨーネ菌検出用のターゲットとして、高感度化を図る為に利用されることが多く、上記の従来技術ではいずれもIS900をターゲットとしている。
特に、非特許文献2のヨーネ病スクリーニング検査では、スクリーニング検査でも確定検査と同じプライマー(非特許文献1記載のもの)を用いてヨーネ菌特異的塩基配列の検出を行っている。しかし、検査精度を高める為には、確定検査とは異なる塩基配列をターゲットしたスクリーニング検査法の開発が望ましい。
また、ヨーネ菌以外の抗酸菌がIS900と類似の塩基配列を有していることがあり、上記特許文献1記載の方法では非特異的増幅が行われることが問題となっていた。したがって、ヨーネ病スクリーニング検査法の開発においても、ヨーネ菌DNAを特異的に増幅できる新規プライマーの開発が求められている。
特開2006-025606号公報
「ヨーネ病検査マニュアル」、[online]、平成25年3月29日、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所、[平成26年8月29日検索]、インターネット(http://www.naro.affrc.go.jp/niah/disease/files/NIAH_yone_kensahou_130329.pdf) 三田晶子ら、「ヨーネ病リアルタイムPCR検査における糞便のプール処理法の検討」、日獣会誌、2013年、vol.66、p.317-320
上述の如く、ヨーネ菌以外の抗酸菌がIS900と類似の塩基配列を有していることから、ヨーネ病遺伝子検査法の開発にはプライマーの設定が重要である。
そこで本発明では、上記非特許文献1記載のヨーネ病遺伝子検査とは異なるIS900上のDNA配列をターゲットとし、かつ、ヨーネ菌DNAを特異的に増幅できる、新規のヨーネ菌検出用プライマー、及びそれを用いたヨーネ病遺伝子検査法の開発を目的とした。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ヨーネ菌IS900の塩基配列をターゲットとするプライマーを多数作製した中から様々な組み合わせを検討し、特異性とDNA増幅効率が高いプライマー対を選抜することによって、本発明を完成させたのである。
すなわち、請求項1に係る本発明は、核酸増幅法によるヨーネ菌検出用プライマー対であって、以下の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと、以下の(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーと、を含むプライマー対である:
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
請求項2に係る本発明は、核酸増幅法によるヨーネ菌検出用プライマー対であって、以下の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと、以下の(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーと、を含むプライマー対である:
(c)配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
請求項3に係る本発明は、核酸を含む検体について、請求項1及び/又は2に記載のプライマー対を用いて核酸増幅反応を行い、増幅産物が検出された場合には、検体中にヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp. Paratuberculosis)が存在すると判定する、ヨーネ菌の検出方法である。
請求項4に係る本発明は、さらに、以下の(e)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと、以下の(f)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーと、を含むプライマー対を用いて核酸増幅反応を行う、請求項3に記載のヨーネ菌の検出方法である:
(e)配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
請求項5に係る本発明は、核酸を含む検体が、複数の被検体由来の核酸を含む検体をプールして調製されたプール検体である、請求項3又は4に記載のヨーネ菌の検出方法である。
請求項6に係る本発明は、請求項1及び/又は2に記載のプライマー対を含む、ヨーネ菌検出用のキットである。
請求項7に係る本発明は、さらに、以下の(e)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと、以下の(f)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーと、を含むプライマー対を含む、請求項6に記載のヨーネ菌検出用のキットである:
(e)配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
本発明のヨーネ菌検出用プライマーは、IS900類似の塩基配列を有する他の抗酸菌DNAを増幅せず、ヨーネ菌DNAだけを特異的に増幅するため、迅速且つ正確にヨーネ菌を検出することができる。
また、本発明のヨーネ菌検出用プライマーは、上記非特許文献1記載のヨーネ病遺伝子検査とは異なる塩基配列をターゲットとするため、非特許文献1記載のプライマーと組み合わせて用いることによって、ヨーネ菌DNAの検出精度をより一層高めることができる。
実施例1において検討したPCR用プライマーの組み合わせと、これらの組み合わせによるリアルタイムPCRの特異性及びDNA増幅効率を示す図である。図中、○、●、◎は検討したプライマーの組み合わせを示す。そのうち、●、◎がヨーネ菌DNA検出感度と特異性が高いプライマーの組み合わせを示し、◎が特に高いヨーネ菌DNA検出感度と特異性を示した。 実施例1におけるリアルタイムPCR条件を示す図である。 プライマーNo.3と32、No.15と36の組み合わせによるSYBR GreenリアルタイムPCRのヨーネ菌DNA検出感度の比較を示す図である。図中、無印のラインはプライマーNo.3と32のリアルタイムPCRにおける蛍光増幅曲線を、太い矢印で示したラインはプライマーNo.15と36のリアルタイムPCRにおける蛍光増幅曲線を示す。 特許文献1記載のヨーネ菌検出用プライマーと本発明のフォワードプライマーNo.3及びリバースプライマーNo.36との塩基配列の比較を示す図である。 プライマーNo.3-36の組み合わせを用いるリアルタイムPCRの結果を示す図である。図中、上(A)のグラフは蛍光増幅曲線を、下(B)のグラフは融解曲線解析を、太い矢印で示したラインはヨーネ菌DNAとの反応を、無印のラインはM. avium subsp. hominissuis OIT-2株由来DNAとの反応を示す。 プライマーNo.15-36の組み合わせを用いるリアルタイムPCRの結果を示す図である。図中、上(C)のグラフは蛍光増幅曲線を、下(D)のグラフは融解曲線解析を、太い矢印で示したラインはヨーネ菌DNAとの反応を、無印のラインはM. avium subsp. hominissuis OIT-2株由来DNAとの反応を示す。
〔プライマー対〕
本発明は、核酸増幅法によるヨーネ菌検出用プライマー対であって、(a)配列番号1に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマー(以下、「プライマーNo.3」と称する場合がある。)と(b)配列番号2に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマー(以下、「プライマーNo.32」と称する場合がある。)、或いは、(c)配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマー(以下、「プライマーNo.15」と称する場合がある。)と(d)配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマー(以下、「プライマーNo.36」と称する場合がある。)、を含むプライマー対を提供するものである。
上記のオリゴヌクレオチドプライマーは、蛍光物質等によって検出用に標識されていてもよい。
〔ヨーネ菌の検出方法〕
本発明は次に、上記のオリゴヌクレオチドプライマーを用いた核酸増幅法によるヨーネ菌の検出方法を提供する。この方法は、核酸を含む検体について、上記のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて核酸増幅反応を行い、ヨーネ菌特異的増幅産物が検出された場合には、検体中にヨーネ菌が存在すると判定するものである。
本発明に係る検出方法では、まず、核酸を含む検体からDNAを抽出することが好ましい。
本発明において‘核酸を含む検体’としては、被検体である牛、水牛、山羊、めん羊、鹿といった反芻獣の糞便、組織(腸管、リンパ節等)、その培養物、それらの希釈溶液などが挙げられる。なお、糞便や組織の培養は、マイコバクチン、卵黄液添加Middlebrook 7H10寒天培地、マイコバクチン添加ハロルド培地などヨーネ菌の培養に適した培地を用いて公知の方法で行うことができる。
本発明において検体からのDNA抽出は、ヨーネ菌のゲノムDNAを抽出できる公知の方法、例えば「ヨーネスピン(登録商標)」(ファスマック社)など市販のヨーネ菌DNA抽出キットを用いて行うことができる。
本発明に係る検出方法では、オリゴヌクレオチドプライマーとして、上記(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、及び/又は、上記(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、を用いることができる。
本発明に係る検出方法では、本発明に係る上記オリゴヌクレオチドプライマーと共に、従来公知の又は新規に開発されたヨーネ菌検出用プライマーを組み合わせて用いることもできる。ヨーネ菌DNAの異なる塩基配列をターゲットとするプライマーを組み合わせることによって、ヨーネ菌検出精度を高めることができる。
従来公知のヨーネ菌検出用プライマーとしては、例えば、従来のヨーネ病遺伝子検査(非特許文献1参照)で用いられているヨーネ菌検出用プライマーを用いることができる。
すなわち、(e)配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマー(以下、「MP10-1」と称する場合がある。)と(f)配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマー(以下、「プライマーMP11-1」と称する場合がある。)を含むプライマー対を用いることができる。
この非特許文献1記載のプライマーは、本発明に係る上記オリゴヌクレオチドプライマーとはターゲットとする塩基配列が異なる上に、他の抗酸菌DNAに対して非特異的増幅を起こさないことが知られているため、好適である。
本発明に係る検出方法では、公知の核酸増幅法により、上記のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、上記検体について核酸増幅反応を行う。核酸増幅法としては、ヨーネ菌DNAにおける上記のプライマー対の結合部位に挟まれた領域が増幅できる方法であれば特に限定されず、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法などを利用することができる。
本発明における核酸増幅反応は、上記2種の本発明に係るプライマー対を反応液中に共存させて行うマルチプレックスPCRにより行っても良い。また、本発明の1種又は2種のプライマー対と、非特許文献1のプライマー対と、を組み合わせて用いる場合には、マルチプレックスPCRで行うこともできる。
本発明において、核酸増幅反応を行う際の反応液組成や温度サイクル条件の各温度及び反応時間等は、当業者であれば、使用する核酸増幅法、プライマーのTm値、サーマルサイクラーの仕様などに合わせて適宜定めることができる。例えばPCR法の場合、95〜98℃で5〜30秒間の熱変性の後、55〜68℃で10〜60秒間及び68〜72℃で15〜60秒間のアニーリング及び伸長反応を1サイクルとして40〜50サイクル行う温度サイクル条件で核酸増幅反応を実施しても良い。
本発明に係る検出方法では、核酸増幅反応の結果として得られる増幅産物を任意の核酸分析手段によって確認することができる。そして、増幅産物が検出された場合には、直ちに検体中にヨーネ菌が存在する(陽性)と判定することができる。
上記プライマー対はヨーネ菌のIS900を特異的に増幅し、他のヨーネ菌IS900類似の塩基配列を有する抗酸菌DNAを増幅しないことから、増幅産物がヨーネ菌特異的なものか否かを判定する必要が無いからである。
一方、増幅産物が検出されなかった場合には、検体中にヨーネ菌が存在しない(陰性)と判定することができる。
本発明において増幅産物の検出は、例えば、反応液に予め二本鎖核酸の分子内に取り込まれるSYBR Green I等の蛍光色素を添加し、経時的に反応液の蛍光強度を測定するリアルタイムPCR法を用いて行うことができる。この方法は、核酸増幅反応から増幅産物の検出までを閉鎖系で行えるため、コンタミネーションが起きる危険性が他の方法に比べて少ない点で優れている。
なお、リアルタイムPCR法では、解離温度解析(融解曲線解析、あるいはディソシエーション解析)によって、増幅産物がヨーネ菌由来のDNA断片か否かを区別することができる。2本鎖DNAはその塩基配列によりTm値が決まる為、PCR後に反応液の温度を少しずつ上昇させ、増幅産物の2本鎖核酸が1本鎖に分かれる温度(解離温度)、つまり増幅産物に取り込まれていた蛍光色素が外れて、蛍光強度が急激に低下する温度を分析するのが解離温度分析である。
したがって、ヨーネ菌DNAを鋳型として用いて増幅されるIS900の増幅産物について解離温度を求め、検体での解離温度がヨーネ菌DNAでのそれと一致すれば、ヨーネ菌特異的増幅産物であることが確認できる。一方、ヨーネ菌DNAでの解離温度と異なる解離温度を示した場合には、非特異的な増幅産物であることが示される。
さらに、リアルタイムPCR法では、PCRによりターゲット遺伝子の増幅が指数関数的に起こる領域内に閾値を設定し、蛍光増幅曲線が閾値と交差する点をThreshold cycle(Ct)値とし、Ct値から各検体中のターゲット遺伝子の初期濃度を算出することが可能である。そのため、検体中のヨーネ菌DNA濃度を算出し、所定のヨーネ病判定基準DNA濃度と比較することによって、検体がヨーネ病に罹患しているかどうか判定することができる。
また、例えば核酸増幅反応終了後の反応液をそのままアガロースゲル電気泳動にかけることで、増幅産物の存在及びサイズを確認することもできる。そして、ヨーネ菌DNAを鋳型として用いた場合と比較することで、検体中にヨーネ菌が存在するか否か判定することができる。
〔ヨーネ菌のスクリーニング検査方法〕
本発明においては、上述の検出方法をプール検体に対して適用することで‘スクリーニング検査’を実施することもできる。
すなわち、上述の検出方法において、‘核酸を含む検体’として‘プール検体’を用いたものが、本発明のスクリーニング検査方法である。
本発明のスクリーニング検査方法では、はじめに、複数の被検体由来の核酸を含む検体をプールし、プール検体を調製する。
ここで、‘被検体’とは牛、水牛、山羊、めん羊、鹿といった反芻獣をさす。
‘核酸を含む検体’としては、被検体の糞便、組織(腸管、リンパ節等)、その培養物、それらの希釈溶液などが挙げられる。なお、糞便や組織の培養方法については前述の通りである。
‘プールする’とは複数の検体を1つにまとめることを言い、プールされ1つにまとめられた検体のことを‘プール検体’と呼ぶ。
プール検体の具体的な調製方法については、増幅産物の検出が可能である限りにおいて、特に限定されない。具体的な調製方法としては、複数の検体の混合物から一部分を抽出して核酸増幅反応に供する方法や、各検体から一部分ずつ抽出して混合して核酸増幅反応に供する方法、複数の検体の混合物を濃縮(例えば遠心分離後に上清を廃棄)して核酸増幅反応に供する方法、各検体の濃縮物(例えば遠心分離後に上清を廃棄したもの)を混合して核酸増幅反応に供する方法、などが挙げられる。
本発明のスクリーニング検査方法においても、(プール)検体からDNAを抽出することが好ましい。
検査工程のどの段階でDNA抽出を行うかは、核酸増幅反応を行う前であれば特に限定されず、プール検体を調製した後にDNA抽出を行っても良いし、プールする前に各検体についてそれぞれDNAを抽出することもできる。しかし、工程の簡素化やコスト節約の観点から、プール検体調製後にDNA抽出を行うのが好ましい。
なお、DNAの抽出方法については前述の通りである。
本発明のスクリーニング検査方法では、続いて、公知の核酸増幅法により、上記プール検体について核酸増幅反応を行う。なお、核酸増幅法及び核酸増幅反応の実施条件については前述の通りである。
当該核酸増幅反応においては、オリゴヌクレオチドプライマーとして、上記(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、及び/又は、上記(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、を用いることができる。
また、本発明のスクリーニング検査方法においても、本発明に係る上記オリゴヌクレオチドプライマーと共に、従来公知の又は新規に開発されたヨーネ菌検出用プライマーを組み合わせて用いることができる。ヨーネ菌DNAの異なる塩基配列をターゲットとするプライマーを組み合わせることによって、ヨーネ菌検出精度を高めることができる。
従来公知のヨーネ菌検出用プライマーとしては、例えば、上述の非特許文献1記載のヨーネ菌検出用プライマー、すなわち、上記(e)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(f)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、を用いることができる。
この非特許文献1記載のプライマーは、本発明に係る上記オリゴヌクレオチドプライマーとはターゲットとする塩基配列が異なる上に、他の抗酸菌DNAに対して非特異的増幅を起こさないことが知られているため、好適である。
本発明のスクリーニング検査における核酸増幅反応は、上記2種の本発明に係るプライマー対を反応液中に共存させて行うマルチプレックスPCRにより行っても良い。また、本発明の1種又は2種のプライマー対と、非特許文献1のプライマー対と、を組み合わせて用いる場合には、マルチプレックスPCRで行うこともできる。
本発明において、ヨーネ菌検出精度を高める観点からターゲット配列の異なるプライマーを組み合わせて用いる場合には、‘スクリーニング検査’と続いて行われる‘確定検査’において、それぞれターゲット配列の異なるプライマーを用いることも可能である。
例えば、スクリーニング検査では本発明の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用い、確定検査では本発明の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用いることができる。
また、スクリーニング検査では本発明の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用い、確定検査では本発明の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用いることができる。
あるいは、スクリーニング検査では本発明の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、及び/又は、本発明の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用い、確定検査では従来公知の又は新規に開発されたヨーネ菌検出用プライマーを用いることができる。
あるいは、スクリーニング検査では従来公知の又は新規に開発されたヨーネ菌検出用プライマーを用い、確定検査では本発明の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、及び/又は、本発明の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用いることができる。
あるいは、スクリーニング検査では本発明の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用い、確定検査では本発明の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、及び、従来公知の又は新規に開発されたヨーネ菌検出用プライマーを用いることができる。
あるいは、スクリーニング検査では本発明の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、及び、従来公知の又は新規に開発されたヨーネ菌検出用プライマーを用い、確定検査では本発明の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用いることができる。
あるいは、スクリーニング検査では本発明の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用い、確定検査では本発明の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、及び、従来公知の又は新規に開発されたヨーネ菌検出用プライマーを用いることができる。
さらには、スクリーニング検査では本発明の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、及び、従来公知の又は新規に開発されたヨーネ菌検出用プライマーを用い、確定検査では本発明の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対を用いることができる。
本発明のスクリーニング検査方法では、核酸増幅反応の結果として得られる増幅産物を任意の核酸分析手段によって確認することができる。そして、増幅産物が検出された場合には、直ちにプール検体中にヨーネ菌が存在する(陽性)と判定することができる。
上記プライマー対はヨーネ菌のIS900を特異的に増幅し、他のヨーネ菌IS900類似の塩基配列を有する抗酸菌DNAを増幅しないことから、増幅産物がヨーネ菌特異的なものか否かを判定する必要が無いからである。
一方、増幅産物が検出されなかった場合には、プール検体中にヨーネ菌が存在しない(陰性)と判定することができる。
なお、増幅産物の具体的な検出方法については前述の通りである。
上記のスクリーニング検査方法において増幅産物が検出された(プール検体中にヨーネ菌が存在すると判定された)場合には、続いて確定検査を実施して、どの被検体がヨーネ菌を保菌しているかを判定することができる。
なお、当該確定検査は、上述した本発明の検出方法や、従来行われているヨーネ病遺伝子検査(非特許文献1参照)等と同様に行うことができる。
〔ヨーネ菌検出用のキット〕
本発明はまた、前述のヨーネ菌検出用プライマー対を含むヨーネ菌検出用のキットも提供する。
すなわち、当該キットは、上記(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、及び/又は、上記(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、を含むヨーネ菌検出用キットである。
本発明に係るヨーネ菌検出用キットは、さらに、従来公知の又は新規に開発されたヨーネ菌検出用プライマーを含んでいても良い。
従来公知のヨーネ菌検出用プライマーとしては、例えば、上述の非特許文献1記載のヨーネ菌検出用プライマー、すなわち、上記(e)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと上記(f)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーとを含むプライマー対、を用いることができる。
本発明のキットは、上記オリゴヌクレオチドプライマーのほか、必要に応じて核酸増幅反応及び増幅産物の確認に利用可能な分子量マーカー、酵素、dNTP、NTP、緩衝液、滅菌水、標品(ヨーネ菌標準菌株、ヨーネ菌標準DNAなど)等を含んでいても良い。
当該キットは、本発明に係る‘ヨーネ菌の検出方法’、‘ヨーネ菌のスクリーニング検査方法’及びそれに続く‘確定検査’において、非常に便利に用いることができる。
以下に実施例、および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1(ヨーネ菌IS900をターゲットとするPCR用プライマーの検討)
ヨーネ菌IS900の塩基配列(1,541bp)のうち、比較的多様性に富む領域である450-1072番目の塩基からなる領域に含まれる塩基配列をターゲットとするリアルタイムPCR系を構築する為に、76種類のプライマーの組み合わせ(図1)について、ヨーネ菌DNAとヨーネ菌類似の抗酸菌DNAを用いて検討した。
〔材料と方法〕
1. 抗酸菌及びDNAの調製法
供試抗酸菌として、ヨーネ菌と遺伝学的に類似性の高い抗酸菌を中心として48菌株を使用した。Mycobacterium avium subsp. aviumとMycobacterium avium subsp. hominissuisは鳥型結核菌群の抗酸菌であり、Mycobacterium sp. 2333株はIS900と高い相同性を有する挿入配列を有することが知られており、Mycobacterium intracellulareとMycobacterium scrofulaceumはヨーネ菌と遺伝学的に類似性の高い抗酸菌とされている。
(供試菌株)
Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis (ヨーネ菌)42-13-1株、ATCC 19698株
Mycobacterium avium subsp. avium P-18株、S-1株、S-2株、S-3株、Ac-1株、Ac-3株
Mycobacterium avium subsp. hominissuis S-4株、S-5株、S-6株、S-8株、S-9株、S-10株、S-11株、OIT-2株
Mycobacteroum avium complex Ac-21株、Ac-22株、Ac-24株、Ac-28株
Mycobacterium sp. 2333株
Mycobacterium intracellulare S-7株、S-12株、S-13株、S-14株、S-15株、S-16株、S-17株、S-20株、Ac-20株、Ac-23株、Ac-25株、Ac-27株
Mycobacterium scrofulaceum AC-41株、AC-42株、AC-43株、S-41株、S-42株、S-43株
Mycobacterium marseillense S-18株
Mycobacterium chimaera S-19株、Ac-19株
Mycobacterium smegmatis 155株
Mycobacterium terrae AOM-1株
Mycobacterium fortuitum Mie-8株
Mycobacterium thermoresistibile NLBC 9-H株
Mycobacterium hassiacum MYZ-19株
Mycobacterium porcinum MYZ-1株
ヨーネ菌はマイコバクチンを含むMiddlebrook 7H10培地を用いて培養し、その他の抗酸菌は小川培地、あるいはMiddlebrook7H10培地を用いて培養した。
培養後の各菌株のDNAを、ヨーネ菌DNA抽出・精製キット「ヨーネスピン(登録商標)」(ファスマック社)を用いて抽出し、約400ng/mlのDNA濃度となるようにTE緩衝液を用いて調製した。DNA濃度は、分光光度計を用いて波長260nmと280nmの吸光度より算出した。
2. ヨーネ菌IS900をターゲットとするプライマーの設定
ヨーネ菌IS900(1,541bp)の塩基配列と94%の相同性を有するISを保有するMycobacterium sp. 2333株の塩基配列を比較検討し、相同性が比較的低いIS900の中央部領域、450-1072番目までのDNA配列を標的として、リアルタイムPCR用のプライマーを選択した。
フォワードプライマーとしては、図1に示すように、IS900の450番目-897番目の塩基からなる領域から選択された15種類のプライマーを用いた。リバースプライマーとしては、これも図1に示すように、IS900の601番目-1072番目の塩基からなる領域から選択された24種類のプライマーを用いた。
PCR産物のサイズが300bp以下となるように、種々のプライマーの組み合わせを設定し、最終的に76種類のプライマーの組み合わせ(図1)を比較検討した。
プライマーの合成は他社に委託し、精製は逆相カラムにより行った。
3. リアルタイムPCRによるDNAの検出、定量
SYBR Green インターカレーション法によるリアルタイムPCRは、「QuantiTect SYBR Green PCR Kit」(キアゲン社)または「GeneAce SYBR qPCR Mix」(ニッポンジーン社)を用いて実施した。プライマーの選択試験には主にキアゲン社のキットを使用し、そこで比較的特異性と感度が高いことが明らかとなったプライマーの組み合わせについては、ニッポンジーン社のキットを用いる試験も同時に実施した。
いずれのキットを用いる場合も、PCR反応液は以下の表1に示す様に調製した。
リアルタイムPCRは図2に示す条件で実施した。酵素活性化の為の加熱工程がキアゲン社キットでは95℃,15分、ニッポンジーン社キットでは95℃,10分間と異なる点以外は、両キットとも全て同条件で実施した。
また、リアルタイムPCR装置として、ロシュダイアグノスティクス社製LightCycler 480、あるいはタカラバイオ社製Dice TP800を使用した。
〔結果〕
ヨーネ菌IS900の塩基配列の中央部をターゲットとするリアルタイムPCR用フォワードプライマー15種類、リバースプライマー24種類について、76種類のプライマーの組み合わせ(図1)について検討した結果、以下の2種類のプライマーの組み合わせを用いるリアルタイムPCRが、特に高い特異性とDNA増幅効率を示すことが明らかとなった。
1. リアルタイムPCR3-32
フォワードプライマーNo.3:GCCGGGCAGCGGCTGCTTTATA(配列番号1)
リバースプライマーNo.32:GCGCGCAGAGGCTGCAAGTCGT(配列番号2)
2. リアルタイムPCR15-36
フォワードプライマーNo.15:CCAGCCGACGTTCCGATCTGGTG(配列番号3)
リバースプライマーNo.36:TCGGGAGTTTGGTAGCCAGTAAGCAGGAT(配列番号4)
なお、図1において、○、●、◎は検討したプライマーの組み合わせを示す。そのうち、●、◎がヨーネ菌DNA検出感度と特異性が高いプライマーの組み合わせを示し、◎が特に高いヨーネ菌DNA検出感度と特異性を示した。
1〜0.001pg/2.5μLのヨーネ菌精製DNAを鋳型としてリアルタイムPCR3-32と15-36を同時に行った場合の蛍光増幅曲線を図3に示す。図3において、無印のラインはプライマーNo.3と32のリアルタイムPCRにおける蛍光増幅曲線を、太い矢印で示したラインはプライマーNo.15と36のリアルタイムPCRにおける蛍光増幅曲線を示す。
図3に示すように、1〜0.001pg/2.5μLのDNA濃度では、いずれのプライマーの組み合わせでもヨーネ菌DNAを検出可能であった。しかし、リアルタイムPCR3-32と15-36を比較すると、蛍光増幅曲線の立ち上がりはリアルタイムPCR 15-36(図3の太い矢印で示したライン)の方がやや早いことから、ヨーネ菌DNAの増幅効率はリアルタイムPCR 3-32(図3の無印のライン)に比べてリアルタイムPCR 15-36の方が高い傾向が認められた。
抗酸菌10菌株を用いた交差反応性試験の結果を表2に示す。その結果、リアルタイムPCR3-35と15-36はともに他の抗酸菌との交差反応を認めず、高い特異性を有することが確認された(表2)。
Map (ヨーネ菌): Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis
Maa: Mycobacterium avium subsp. avium
Mah: Mycobacterium avium subsp. hominissuis
Mac: Mycobacterium avium complex
+: DNA増幅有り、 −: DNA増幅無し
比較例1(従来技術のPCRプライマーとの特異性の比較)
前述の特許文献1に記載のヨーネ菌検出用プライマーの塩基配列(配列番号7、8)は、図4に示すように、本発明のフォワードプライマーNo.3とリバースプライマーNo.36の塩基配列と部分的に一致していた。
本発明のプライマーNo.3とNo.36の組み合わせによるPCR産物は、リアルタイムPCRの系としては増幅されるヨーネ菌DNA断片のサイズが336 bpとやや大きい為、実施例1ではこのプライマーの組み合わせについて試験を行っていなかった。そこで、プライマーNo.3とNo.36の組み合わせ、並びに、プライマーNo.15とNo.36の組み合わせ、によるリアルタイムPCRを実施例1と同様の方法で実施した。
プライマーNo.3-36の組み合わせによるリアルタイムPCRの結果を図5に、プライマーNo.15-36の組み合わせによるリアルタイムPCRの結果を図6に、それぞれ示す。図5及び図6において、上のグラフは蛍光増幅曲線を、下のグラフは融解曲線解析(1次微分)を、太い矢印で示したラインはヨーネ菌DNA(濃度1〜0.001pg/2.5μL)との反応を、無印のラインは鳥型結核菌群のMycobacterium avium subsp. hominissuis OIT-2株由来DNA(濃度400及び40pg/2.5μL)との反応を示す。
その結果、プライマーNo.3-36の組み合わせによるリアルタイムPCRでは、M. avium subsp. hominissuis OIT-2のDNAに対して非特異的なDNA増幅が起こることが明らかとなった(図5)。これに対して、プライマーNo.15-36の組み合わせによるリアルタイムPCRでは非特異的DNA増幅は認められなかった(図6)。
プライマーNo.3とNo.36と特許文献1記載のプライマーは3’側の塩基配列が一致しているため、リアルタイムPCRにおいて同じDNA配列を増幅する可能性が極めて高い。したがって図5から、特許文献1のヨーネ菌検出用プライマーによるリアルタイムPCRでは、M. avium subsp. hominissuis OIT-2株のDNAに対して非特異的なDNA増幅が起こり、ヨーネ菌DNAを特異的に検出できないことが示唆された。
ヨーネ菌のIS900DNAを検出する為のPCRを構築する際、高い特異性を確保する為に、IS900と94%の相同性を示すISを保有するMycobacterium sp. 2333株のDNA配列を参照し、両者で塩基配列が異なるポイントをプライマーの3'側末端として、2333株と交差しないように考慮する必要がある。図1に示したプライマーの組み合わせも基本的にはこのような考え方により選択されている。しかし、実際にプライマーを合成し、PCRを行うと、このようにして選択されたプライマーによるPCRであっても、高い特異性と感度を示す系を構築することは難しい。現に、特許文献1のプライマーを用いる系では、Mycobacterium sp. 2333株のDNAとは交差反応を認めないが、比較例1に示すようにM. avium subsp. hominissuis OIT-2株由来DNAとは交差反応が認められた。
ヨーネ菌を含む鳥型結核菌は遺伝学的類似性が極めて高い為、類似の塩基配列を示すISや遺伝子を多数保有している。また、その塩基配列の類似性は菌株によっても異なる為、構築しようとするPCRの特異性と感度の検証には、Mycobacterium sp. 2333株に加え、多くの鳥型結核菌群の抗酸菌由来DNAを用いることが重要である。特に、比較例1で用いたM. avium subsp. hominissuis OIT-2株は牛由来の菌株であり、ヨーネ病の遺伝子検査のように主に牛由来のDNAサンプルを用いるPCRを検討する際は、検査対象動物から分離された鳥型結核菌のDNAを用いてPCRの検証を行う事は、特異性の高いPCRを構築する上で有用な手段になると思われる。
実施例2(実験感染牛由来サンプルを用いたヨーネ菌検出試験)
上記実施例1の3.で試験したプライマーNo.3(配列番号1)とプライマーNo.32(配列番号2)、プライマーNo.15(配列番号3)とプライマーNo.36(配列番号4)の組み合わせを用いて、実験感染牛の糞便又は組織乳剤を対象としたリアルタイムPCR試験を行った。
すなわち、ヨーネ菌実験感染牛の糞便から、「ヨーネスピン(登録商標)」(ファスマック社)を用いて、当該キット添付の説明書に従ってDNA抽出・精製を行い、DNA液を得た。対照として、ヨーネ菌接種前の同じ個体(非感染健康牛)の糞便から同様にして抽出したDNA液を用いた。
また、ヨーネ菌実験感染牛の腸管組織を生理食塩液で懸濁して5%腸管乳剤を調製し、次いで上記の糞便からの方法と同様にして当該腸管乳剤からDNAを抽出・精製し、DNA液を得た。
プライマーNo.3-32及びプライマーNo.15-36の組み合わせによるリアルタイムPCRは、「QuantiTect SYBR Green PCR Kit」(キアゲン社)を用いて、上記実施例1の3.と同様にして実施した。
ヨーネ菌精製DNAを標準として用いて上記リアルタイムPCRを行い、DNA増幅が見られた検体中のヨーネ菌DNA濃度を算出した。
各検体のヨーネ菌DNA濃度(pg/2.5μL)の計算結果を表3に示す。
ND:ヨーネ菌不検出
表3から、本発明のプライマーNo.3-32及びNo.15-36の組み合わせによるリアルタイムPCRによって、糞便及び組織中のヨーネ菌を検出できることが示された。
実施例3(プール糞便を用いたヨーネ菌スクリーニング検査)
ヨーネ菌実験感染牛及び健康牛の糞便を用いてプール糞便(プール検体)を模擬的に調製し、プライマーNo.3-32、プライマーNo.15-36、及び、従来のヨーネ病遺伝子検査(非特許文献1参照)で用いられるプライマー、の組み合わせを用いて、スクリーニング検査を行った。
〔材料と方法〕
1. 陽性糞便:ヨーネ菌実験感染牛由来の糞便を用いた。ヨーネ菌を含み、従来のヨーネ病遺伝子検査(非特許文献1参照)では、本糞便の20倍(W/V)希釈液1mlから調製されたDNA液中にヨーネ菌DNAが約0.001pg/2.5μl程度検出される。
2. 健康牛由来糞便:糞便ヨーネ病遺伝子検査(非特許文献1参照)が陰性であり、その他一般的な健康状態も正常な牛3頭(No.1, 2, 3)から採取された糞便を用いた。
3. 模擬プール糞便の調製
3頭の健康牛糞便を用いて、同一個体の糞便希釈液量を増やすことにより模擬プール糞便を調製した。すなわち、上記糞便をそれぞれ常法により20倍(W/V)希釈して、陽性糞便液及び健康牛糞便液とした。次に、陽性糞便液1ml(1頭分)と健康牛糞便液4ml(4頭分)とを混合したものを5頭プール糞便、陽性糞便液1ml(1頭分)と健康牛糞便液9ml(9頭分)とを混合したものを10頭プール糞便として、各プール糞便からヨーネスピン(登録商標、ファスマック社)を用いてDNAを抽出・精製し、DNA液を得た。
4. リアルタイムPCRによるヨーネ菌スクリーニング検査
SYBR Green インターカレーション法によるリアルタイムPCRは、「QuantiTect SYBR Green PCR Kit」(キアゲン社)を用いて、上記実施例1の3.と同様にして実施した。
プライマーとしては、プライマーNo.3(配列番号1)とNo.32(配列番号2)、あるいはプライマーNo.15(配列番号3)とNo.36(配列番号4)の組み合わせに加え、従来のヨーネ病遺伝子検査(非特許文献1参照)で用いられるMP10-1(配列番号5)とMP11-1(配列番号6)の組み合わせも用いた。
リアルタイムPCR装置としては、ロシュダイアグノスティクス社製LightCycler 480を使用した。
判定は、陽性コントロールとして用いたヨーネ菌精製DNAと同様なTm値を示すPCR増幅産物が検出された場合、陽性と判定した。
〔結果〕
ヨーネ菌DNAが0.001pg/2.5μl程度検出される陽性牛糞便液と、健康牛3頭の糞便液を用いてサンプル量を増やすことにより調製した模擬プール糞便を用いてスクリーニング試験を実施した結果を表4に示す。
その結果、5頭プールあるいは10頭プール糞便液から抽出されたDNAを用いるリアルタイムPCR検査の判定は全て陽性となった。このことから、上記のプライマーを用いるリアルタイムPCRは、複数頭の糞便を混合して試験する、所謂プール糞便試験(スクリーニング検査)にも応用可能であることが明らかとなった。
なお、表中の数値はリアルタイムPCRにおける平均Ct値(単位:サイクル、n=2)を示す。
〔考察〕
陽性糞便のみ(1頭分、1ml)からDNAを抽出・精製しリアルタイムPCRを行った場合、そのCt値は約32〜33サイクルであったが、プール糞便の場合はCt値が約33〜37に上昇した。このCt値の上昇は、プール糞便ではDNA抽出に用いる糞便量が大幅に増える為、糞便に含まれるPCR阻害物質の量も増えたことに起因するものと考えられる。
本発明は、我が国の膨大な数に上るヨーネ病検査対象動物を効率的に検査する遺伝子検査法として、畜産・獣医領域での利用が大いに期待される。
配列番号1:プライマーNo.3
配列番号2:プライマーNo.32
配列番号3:プライマーNo.15
配列番号4:プライマーNo.36
配列番号5:プライマーMP10−1
配列番号6:プライマーMP11−1
配列番号7:特開2006−25606のフォワードプライマー
配列番号8:特開2006−25606のリバースプライマー

Claims (7)

  1. 核酸増幅法によるヨーネ菌検出用プライマー対であって、以下の(a)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと、以下の(b)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーと、を含むプライマー対:
    (a)配列番号1に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
    (b)配列番号2に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
  2. 核酸増幅法によるヨーネ菌検出用プライマー対であって、以下の(c)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと、以下の(d)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーと、を含むプライマー対:
    (c)配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
    (d)配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
  3. 核酸を含む検体について、請求項1及び/又は2に記載のプライマー対を用いて核酸増幅反応を行い、増幅産物が検出された場合には、検体中にヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp. Paratuberculosis)が存在すると判定する、ヨーネ菌の検出方法。
  4. さらに、以下の(e)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと、以下の(f)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーと、を含むプライマー対を用いて核酸増幅反応を行う、請求項3に記載のヨーネ菌の検出方法:
    (e)配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
    (f)配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
  5. 核酸を含む検体が、複数の被検体由来の核酸を含む検体をプールして調製されたプール検体である、請求項3又は4に記載のヨーネ菌の検出方法。
  6. 請求項1及び/又は2に記載のプライマー対を含む、ヨーネ菌検出用のキット。
  7. さらに、以下の(e)のオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーと、以下の(f)のオリゴヌクレオチドからなるリバースプライマーと、を含むプライマー対を含む、請求項6に記載のヨーネ菌検出用のキット:
    (e)配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
    (f)配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
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