JP6155176B2 - カ−ボンナノチュ−ブ集合体の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、「カーボンナノチューブは、機械的特性や電気的特性など、様々な特性を発現し得るフィラーとして知られている。このカーボンナノチューブをマトリックス樹脂に分散してナノコンポジットとすることができれば、様々な特性を発現することが期待される。ところが、カーボンナノチューブをマトリックス樹脂に分散しようとすると、カーボンナノチューブが大きな凝集ドメインを形成してしまい、良好な分散状態を作ることが極めて困難であった。この困難性は、各種分野の材料として汎用されているポリオレフィンをマトリックス樹脂とする場合に、特に大きなものであった。」(特許文献1の発明の詳細な説明の段落番号0003〜0004)ことに鑑み「マトリックス樹脂としてのポリオレフィンにカーボンナノチューブが良好に分散した、該カーボンナノチューブの存在に起因する様々な特性を発現できるナノコンポジットを提供する」(特許文献1の発明の詳細な説明の段落番号0008)ためになされたものであり、具体的には「マトリックス樹脂としてのポリオレフィンにフィラーが分散したナノコンポジットであって、該フィラーが、非塩素系変性ポリオレフィンでコーティングされたカーボンナノチューブである、ナノコンポジット。」(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1)が開示されている。
そこで、本発明では、カ−ボンナノチュ−ブ自体を工夫することで樹脂中で良好に分散するカ−ボンナノチュ−ブを提供することを目的とする。
第1本集合体は、カルボキシル基又はカルボキシル基金属塩が形成されているものであってもよい。
(1)含有液調製工程において、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブと第1液体との混合物に超音波を照射するものである、本製造方法。
(2)酸処理工程と含有液調製工程との間に、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブから不純物を除去する不純物除去工程を含むものである、本製造方法。
(3)不純物除去工程が、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを濾残として回収する濾過工程を含んでなる、上記(2)に記載の製造方法。
(4)含有液調製工程において調製されるカ−ボンナノチュ−ブ含有液が、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを第1液体に溶解させたカ−ボンナノチュ−ブ溶液である、本製造方法。
(5)添加工程が塩生成工程の後に行われるものである、本製造方法。
(6)長手方向に沿った寸法Lに対して長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Sがなす比率Rが5〜300であり且つLが50〜2000nmでありSが3〜60nmであるカ−ボンナノチュ−ブ集合体(目的物)を製造するものである、本製造方法。
(7)カ−ボンナノチュ−ブが単層カーボンナノチューブである、本製造方法。
第2本集合体は、カルボキシル基又はカルボキシル基金属塩が形成されているものであってもよい。
即ち、本樹脂組成物は、樹脂と、本集合体(第1本集合体及び/又は第2本集合体)と、を含む樹脂組成物である。
本樹脂組成物においては、前記樹脂がポリビニルアルコール又はポリエチレンを含むものであってもよい。
即ち、本成形物製造方法は、本樹脂組成物を用いた成形物の製造方法であって、本樹脂組成物を用いて予備成形物を成形する予備成形工程と、予備成形物を延伸する延伸工程と、を含んでなる、成形物の製造方法である。
即ち、本フィラーは、本集合体(第1本集合体及び/又は第2本集合体)を含んでなる樹脂用フィラーである。
カ−ボンナノチュ−ブは、炭素原子が二次元網目状に結合したシート(即ち、単層のグラファイトと考えることもできる)が筒状に巻かれた中空繊維状の物質をいい、該シートが何重に重なって該筒状を形成しているか(何重の筒か)によって単層カーボンナノチューブ(一重の筒、SWNT)及び2重以上の層が巻かれた多層ナノチューブ(MWNT)等に分類される。通常、単層カーボンナノチューブ単体が形成する円筒形状の直径は0.4nm〜2nm程度であり、円筒形状の長さは300nm〜数μm程度である。かかるカ−ボンナノチュ−ブは互いが凝集しやすく、一般的に市販されているカーボンナノチューブは、通常、複数のカーボンナノチューブが互いの長手方向を同方向に向けた状態で凝集したカ−ボンナノチュ−ブ集合体となっており、かかるカ−ボンナノチュ−ブ集合体はそれを構成するカーボンナノチューブ単体に比して長く太い形態を有している。
本発明者らは、この一般的に市販されているカーボンナノチューブ集合体を樹脂に混合した状態を電子顕微鏡等によって詳しく観察したところ、樹脂中のカ−ボンナノチュ−ブ集合体は大半が長く太い形態のままで悪い分散状態であった。そして、本発明者らは、カ−ボンナノチュ−ブ集合体の形態を樹脂中で悪い分散状態を生じるものから、良い分散状態を与えるものに変えることを考え、本発明を完成するに至った。
即ち、複数のカ−ボンナノチュ−ブを含むカ−ボンナノチュ−ブ集合体の長手方向に沿った寸法Lと、該カ−ボンナノチュ−ブ集合体の長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Sと、寸法Sに対して寸法Lがなす比率Rと、をそれぞれ所定範囲内とすることで、該カ−ボンナノチュ−ブ集合体を樹脂中に混合した際に樹脂中で極めて良く分散することが明らかになった。このように該カ−ボンナノチュ−ブ集合体が樹脂中でうまく分散することにより、カーボンナノチューブによって奏される機能(例えば、良好な物性、熱伝導率向上等)が効果的に発揮される。
カ−ボンナノチュ−ブ集合体は多数のものが集合したカ−ボンナノチュ−ブ集合体の集合物として製造や使用がなされるので、寸法L、寸法S及び比率Rは、カ−ボンナノチュ−ブ集合体集合物を構成するカ−ボンナノチュ−ブ集合体i(但しiは1〜U)の長手方向に沿った寸法Li、長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Si及び比率Ri(=Li/Si)の平均値(数平均)をカ−ボンナノチュ−ブ集合体(集合物)の寸法L、寸法S及び比率Rとする。具体的には、カ−ボンナノチュ−ブ集合体の集合物を構成するカ−ボンナノチュ−ブ集合体を顕微鏡(例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)等のような電子顕微鏡)観察することに基づき決定できる。カ−ボンナノチュ−ブ集合体の集合物から所定の個数(U個)のカ−ボンナノチュ−ブ集合体を無作為に選択し、選択した個々のカ−ボンナノチュ−ブ集合体について寸法Li、寸法Si及び比率Ri(=Li/Si)を求め、その平均値(数平均)をカ−ボンナノチュ−ブ集合体(集合物)の寸法L、寸法S及び比率Rとする(U個のLiの合計値をUにて除したものをLとし、U個のSiの合計値をUにて除したものをSとし、そしてU個のRiの合計値をUにて除したものをRとする。)。カ−ボンナノチュ−ブ集合体の測定個数であるU(サンプル数)は、あまり少ないとサンプル選択によるばらつきが大きくなるので、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、最も好ましくは50以上である(サンプル数Uが多いのはばらつきが少なくなって好ましいので上限は特にないが、あまり多いと測定等が煩雑になるので、例えば500以下としてもよい。)。
長手方向に沿った寸法Lは、下限として50nm以上であり、好ましくは80nm以上であり、より好ましくは150nm以上であり、最も好ましくは220nm以上であり、上限として2000nm以下であり、好ましくは1800nm以下であり、より好ましくは1500nm以下であり、最も好ましくは1000nm以下である(従って、Lは50〜2000nm、好ましくは80〜1800nm、より好ましくは150〜1500nm、最も好ましくは220〜1000nmである。)。
長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Sは、下限として3nm以上であり、好ましくは4nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、最も好ましくは6nm以上であり、上限として60nm以下であり、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは40nm以下であり、最も好ましくは24nm以下である(従って、Sは3〜60nm、好ましくは4〜50nm、より好ましくは5〜40nm、最も好ましくは6〜24nmである。)。
寸法Sに対して寸法Lがなす比率Rは、下限として5以上であり、好ましくは10以上であり、より好ましくは15以上であり、最も好ましくは20以上であり、上限として300以下であり、好ましくは200以下であり、より好ましくは90以下であり、最も好ましくは50以下である(従って、Rは5〜300、好ましくは10〜200、より好ましくは15〜90、最も好ましくは20〜50である。)。
カ−ボンナノチュ−ブは、炭素原子が二次元網目状に結合したシートにより形成されているので、酸素原子や窒素原子を含む樹脂に混合する際に親和しにくい問題があるが、本集合体にカルボキシル基やカルボキシル基金属塩を形成することで該樹脂との親和性を増加させ、本集合体を該樹脂中に混合した際に該樹脂中の分散を改善することができる。
酸処理工程においてカ−ボンナノチュ−ブ集合体(原料集合体)と接触させる酸は、接触によりカ−ボンナノチュ−ブにカルボキシル基を形成することができるものを広く用いることができ、例えば、混酸(濃硫酸と濃硝酸との混合物。なお、濃硫酸と濃硝酸との混合比率(濃硫酸質量/濃硝酸質量)=1/3〜3/1程度のものを用いてもよい。)、硫酸と過酸化水素水との混合物を例示できる。
酸処理工程においてカ−ボンナノチュ−ブ集合体(原料集合体)と接触させる酸の量は、あまり少ないとカ−ボンナノチュ−ブにカルボキシル基をうまく導入できなかったり反応時間を長く要するという問題があり、あまり多いとカ−ボンナノチュ−ブの構造が分解したり壊れやすいという問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましく、カ−ボンナノチュ−ブ集合体(原料集合体)の重量wcに対する酸の重量waの比率(wa/wc)として、下限として、好ましくは3000以上であり、より好ましくは5000以上であり、最も好ましくは8000以上であり、そして上限として、好ましくは1000000以下であり、より好ましくは500000以下であり、最も好ましくは14000以下である(従って、好ましくは3000〜1000000、より好ましくは5000〜500000、最も好ましくは8000〜14000である。)。
酸処理工程においてカ−ボンナノチュ−ブ集合体(原料集合体)と接触させる酸の濃度は、あまり低いとカ−ボンナノチュ−ブの表面にカルボキシル基をうまく導入できなかったり反応時間を長く要するという問題があるし、あまり高いとカ−ボンナノチュ−ブの構造が分解したり壊れやすいという問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましい。
かかる効果を効果的にもたらすためには、照射する超音波は40kHz程度の周波数のものを用いることが好ましい。
そして、酸処理工程の時間は、あまり短いとカ−ボンナノチュ−ブにカルボキシル基をうまく導入できない問題があり、あまり長いとカ−ボンナノチュ−ブの構造が分解したり壊れやすいという問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましく、下限として、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは1.5時間以上であり、最も好ましくは2時間以上であり、そして上限として、好ましくは40時間以下であり、より好ましくは30時間以下であり、最も好ましくは24時間以下である(従って、好ましくは1〜40時間、より好ましくは1.5〜30時間、最も好ましくは2〜24時間である。)。
第1液体は、酸処理工程によりカルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを溶解及び/又は安定的に分散させることができるものを広く用いることができるが、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドを挙げることができる。
カ−ボンナノチュ−ブ含有液は、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを溶解した溶液でもよいし、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを安定的に分散させたものでもよい。ここに「安定的に分散」とは、1週間以上、カ−ボンナノチュ−ブ含有液の色の分布、析出物の量が変化しないことをいう。カ−ボンナノチュ−ブ含有液における該カ−ボンナノチュ−ブの濃度は、あまり低いとカ−ボンナノチュ−ブの含有量が少ないので効率が悪いという問題があり、あまり高いとカ−ボンナノチュ−ブがうまく分散しにくいという問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましく、下限として、好ましくは1.0×10−4重量%以上であり、より好ましくは1.0×10−3重量%以上であり、最も好ましくは1.0×10−2重量%以上であり、そして上限として、好ましくは1.0×10−1重量%以下であり、より好ましくは3.0×10−2重量%以下であり、最も好ましくは1.5×10−2重量%以下である(従って、好ましくは1.0×10−4重量%〜1.0×10−1重量%、より好ましくは1.0×10−3重量%〜3.0×10−2重量%、最も好ましくは1.0×10−2重量%〜1.5×10−2重量%である。)。
即ち、塩生成工程では、含有液調製工程において調製されたカ−ボンナノチュ−ブ含有液に、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを添加することで、カ−ボンナノチュ−ブ含有液に含まれるカ−ボンナノチュ−ブのカルボキシル基をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とする。
カ−ボンナノチュ−ブ含有液に添加するアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンは、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ベリリウムイオン等を例示でき、とりわけナトリウムイオンが好ましい。アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンをカ−ボンナノチュ−ブ含有液に添加する形態は様々なものとすることができるが、例えば、これらのイオンを含む溶液、スラリー、固体等をカ−ボンナノチュ−ブ含有液に添加することができるが、均一な混合を達成しやすいこと等からはイオン溶液(例えば、水酸化物イオン溶液)として添加することができる。
かかるアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンのカ−ボンナノチューブ含有液への添加量は、あまり少ないとカルボキシル基をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩にうまくすることができないという問題があり、あまり多いと生成物の精製に手間がかかる(アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを生成物から除去するための洗浄を十分行う必要があるため)という問題があるので、これらを両立する範囲とすることが好ましく、カ−ボンナノチュ−ブ含有液に含まれるカ−ボンナノチュ−ブ1g当たりアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを加えるモル数(mol/g)として、下限として、好ましくは0.5mol/g以上であり、より好ましくは1.0mol/g以上であり、最も好ましくは2.5mol/g以上であり、そして上限として、好ましくは1×103mol/g以下であり、より好ましくは1×102mol/g以下であり、最も好ましくは10mol/g以下である(従って、好ましくは0.5mol/g〜1×103mol/g、より好ましくは1.0mol/g〜1×102mol/g、最も好ましくは2.5mol/g〜10mol/gである。)。
イオン溶液として添加する場合のイオン溶液の濃度は、あまり低いとカルボキシル基をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩にうまくすることができないという問題があり、あまり高いと生成物の精製に手間がかかる(アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを生成物から除去するための洗浄を十分行う必要があるため)という問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましい。
アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンをカ−ボンナノチュ−ブ含有液へ添加する際の温度は、最も一般的な添加方法である溶液としての添加において、あまり低いと溶液が凝固するという問題があり、あまり高いと溶液が蒸発するという問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましく、下限として、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは5℃以上であり、最も好ましくは10℃以上であり、そして上限として、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは60℃以下であり、最も好ましくは50℃以下である(従って、好ましくは0〜80℃、より好ましくは5〜60℃、最も好ましくは10〜50℃である。)。
添加物は、第1液体に溶解可能であり、添加物を第1液体に溶解することで、カルボキシル基がアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩となったカーボンナノチューブに対して第1液体よりも貧溶媒にすることができるもの(即ち、カルボキシル基がアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩となったカーボンナノチューブの溶解量が、第1液体と添加物との混合物の方が第1液体よりも少ない。)を広く用いることができ、例えば、第1液体として水を用いる場合であれば、添加物としてメチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。
添加物のカ−ボンナノチュ−ブ含有液への添加量は、あまり少ないと析出工程においてカ−ボンナノチュ−ブ集合体が十分析出しないし、あまり多いと生成物を回収するのに手間がかかる(例えば、液中から生成物を回収するための溶媒置換や濾過等の手間が増える)という問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましく、カ−ボンナノチュ−ブ含有液に含まれるカ−ボンナノチュ−ブ1g当たりカ−ボンナノチュ−ブ含有液へ添加する添加物の量(kg)として、下限として、好ましくは1kg/g以上であり、より好ましくは3kg/g以上であり、最も好ましくは5kg/g以上であり、そして上限として、好ましくは150kg/g以下であり、より好ましくは100kg/g以下であり、最も好ましくは50kg/g以下である(従って、好ましくは1〜150kg/g、より好ましくは3〜100kg/g、最も好ましくは5〜50kg/gである。)。また、添加物のカ−ボンナノチュ−ブ含有液への添加は、塩生成工程の後に添加工程を行う場合には、カ−ボンナノチュ−ブ集合体の析出がゆっくり生じるように少しずつゆっくりと行うことが好ましい。
添加工程において添加物をカ−ボンナノチュ−ブ含有液に添加する時期は、塩生成工程の前であっても、塩生成工程の後であっても、そして塩生成工程の前及び後の両方であってもよいが、塩生成に悪影響を与えない(例えば、塩生成を阻害しないことや、不要な反応を生じない等)の点からは、塩生成工程の後が好ましい。
添加工程において添加物をカ−ボンナノチュ−ブ含有液に添加する際の温度は、あまり低いとカ−ボンナノチュ−ブ含有液が凝固するという問題があり、あまり高いとカ−ボンナノチュ−ブ含有液が蒸発するという問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましく、下限として、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは5℃以上であり、最も好ましくは10℃以上であり、そして上限として、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは60℃以下であり、最も好ましくは40℃以下である(従って、好ましくは0〜80℃、より好ましくは5〜60℃、最も好ましくは10〜40℃である。)。
そして、析出工程によりカ−ボンナノチュ−ブ含有液中に析出したカ−ボンナノチュ−ブ集合体は、析出したカ−ボンナノチュ−ブ集合体以外の不純物を除去等して精製(例えば、濾過や洗浄等)し回収する精製回収工程によって回収され、樹脂のフィラー等として使用することができる。
含有液調製工程では、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを第1液体に溶解又は安定的に分散させたカ−ボンナノチュ−ブ含有液を調製するが、このときカルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブと第1液体との混合物に超音波を照射することで、該カ−ボンナノチュ−ブを第1液体に溶解又は安定的に分散させたカ−ボンナノチュ−ブ含有液を円滑かつ容易に調製できる。ここで用いる超音波は、酸処理工程においてカ−ボンナノチュ−ブ集合体(原料集合体)に照射する超音波と同様のものを用いるようにしてもよい。
酸処理工程においては、原料としてのカ−ボンナノチュ−ブ集合体を酸と接触させた状態で超音波を照射し、カ−ボンナノチュ−ブにカルボキシル基を形成させるので、酸処理工程によって得られた組成物にはカ−ボンナノチュ−ブ含有液に含まれない方が好ましい不要物が存在する(例えば、酸処理工程において原料カ−ボンナノチュ−ブ集合体と接触した酸成分、酸処理工程により原料カ−ボンナノチュ−ブ集合体から脱離したアモルファスカーボンやカ−ボンナノチュ−ブの短い断片等。)。従って、これらの不要物を酸処理工程と含有液調製工程との間に除去する方が好ましく、このためカルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブから不純物を除去する不純物除去工程を酸処理工程と含有液調製工程との間に設けるようにしてもよい。酸処理工程と含有液調製工程との間に、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブから不純物を除去することで、析出工程においてカ−ボンナノチュ−ブ含有液中にカ−ボンナノチュ−ブ集合体を円滑かつ清浄な状態で析出させることができる。
前述のように、酸処理工程によって得られた組成物中の不要物(例えば、酸処理工程において原料カ−ボンナノチュ−ブ集合体と接触した酸成分、酸処理工程により原料カ−ボンナノチュ−ブ集合体から脱離したアモルファスカーボンやカ−ボンナノチュ−ブの短い断片等。)は、酸処理工程で処理されカルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブ集合体に比して小さなものが多いことから、不純物除去工程が含む濾過工程によって、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを濾残として回収すると共にこれら不要物(不純物)を濾液側に分離し除去することができる。
含有液調製工程において調製されるカ−ボンナノチュ−ブ含有液は、塩生成工程及び添加工程の後、析出工程において目的のカ−ボンナノチュ−ブ集合体を析出させる。このため得られる(目的物の)カ−ボンナノチュ−ブ集合体の不純物含有量を減少させると共に組織が整った該カ−ボンナノチュ−ブ集合体を得るためには、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを第1液体に溶解させたカ−ボンナノチュ−ブ溶液(例えば、有色であっても透明)をカ−ボンナノチュ−ブ含有液とし、カ−ボンナノチュ−ブ溶液から析出工程において目的のカ−ボンナノチュ−ブ集合体を析出させること(結晶化)が好ましい。
上述のように、カ−ボンナノチュ−ブ集合体の長手方向に沿った寸法Lと、該カ−ボンナノチュ−ブ集合体の長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Sと、寸法Sに対して寸法Lがなす比率Rと、をそれぞれこれらの範囲内とすることで、多数のカ−ボンナノチュ−ブ集合体が集合したカ−ボンナノチュ−ブ集合体集合物を樹脂中に混合した際に樹脂中で極めて良く分散するものとすることができ、樹脂用のフィラーとして極めて利用価値が高い。このカ−ボンナノチュ−ブ集合体は、寸法L、寸法S及び比率Rをこれらの範囲に制御する必要があるが、本製造方法によれば製造されるカ−ボンナノチュ−ブ集合体の寸法L、寸法S及び比率Rを制御できるので、本製造方法によって製造されることができる。なお、ここの寸法L、寸法S及び比率Rそれぞれの範囲は、第1本集合体に関する寸法L、寸法S及び比率Rと同様の範囲として決定できる。
前述の通り、カ−ボンナノチュ−ブは、炭素原子が二次元網目状に結合したシート(単層のグラファイト)が筒状に巻かれた中空繊維状の物質であり、該シートが何重に重なって該筒状を形成しているかによって単層カーボンナノチューブ(一重の筒、SWNT)及び2重以上の層が巻かれた多層ナノチューブ(MWNT)等に分類される。本製造方法においては、とりわけ単層カーボンナノチューブ(SWNT)を用いることにより円滑に目的のカ−ボンナノチュ−ブ集合体を製造できる(単層カーボンナノチューブは中空の円筒形状をほぼ形成するが、この円筒の一端が閉じていても開いていてもいずれであってもよい。)。
即ち、本製造方法により得られうるカ−ボンナノチュ−ブ集合体(第2本集合体)は新規な利用価値の高いカ−ボンナノチュ−ブ集合体である。この第2本集合体が有するカーボンナノチューブ同士の絡まりが減少した直線的な形態は樹脂に混合した際に樹脂中での分散を一層向上させる。
上述の通り、第1本集合体及び第2本集合体のいずれも、樹脂中に混合した際に樹脂中で極めて良く分散することにより、本集合体に含まれるカーボンナノチューブによる機能(例えば、良好な物性、熱伝導率向上等)が効果的に発揮される。従って、第1本集合体及び第2本集合体は、これらに含まれるカーボンナノチューブにより与えられる機能を樹脂組成物に付与したい場合に好適に用いることができる。
樹脂組成物中における樹脂w1(g)に対する本集合体w2(g)の割合(w2/w1)は、奏される機能とその程度等に応じて適宜定められればよいが、あまり小さいと十分な機能が得られず、逆にあまり大きいと本集合体が本樹脂組成物中で凝集した状態で存在し欠陥となってしまう問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましく、下限として、好ましくは5×10−5以上であり、より好ましくは1×10−4以上であり、最も好ましくは5×10−4以上であり、そして上限として、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは5×10−2以下であり、最も好ましくは3×10−2以下である(従って、好ましくは5×10−5〜0.1、より好ましくは1×10−4〜5×10−2、最も好ましくは5×10−4〜3×10−2である。)。
また、樹脂と本集合体との混合方法は様々な方法を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば、溶融混練法、溶液法等の方法を例示できる。
そして、本樹脂組成物を構成する樹脂は、様々な物を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アラミド等を例示でき、とりわけポリビニルアルコール、ポリエチレンによって本樹脂組成物を構成すれば、汎用高分子材料に効果的に機能を付与できるので利用価値が高い。
このように予備成形工程において本樹脂組成物を用いて成形された予備成形物を、延伸工程において延伸することにより、得られる成形物の物性(例えば、弾性率、引っ張り強度)が大幅に向上する。なお、延伸工程において予備成形物が延伸された物が目的の成形物となっても、また該延伸された物にさらに加工を施して目的の成形物となっても、いずれでもよい。
延伸工程は、目的の成形物に適合するように予備成形物を延伸すればよく様々な方法を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば、本樹脂組成物を構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度においてゆっくりした速度(例えば、1mm/分)で延伸するようにしてもよい。
上述の通り、第1本集合体及び第2本集合体のいずれも、樹脂中に混合した際に樹脂中で極めて良く分散することにより、本集合体に含まれるカーボンナノチューブによる機能(例えば、良好な物性、熱伝導率向上等)が効果的に発揮される。従って、第1本集合体及び第2本集合体は、これらに含まれるカーボンナノチューブにより与えられる機能を樹脂組成物に付与したい場合に用いる樹脂用フィラー(例えば、補強目的、熱伝導率向上)に好適に用いることができる。
本フィラーを樹脂に配合する量は、奏される機能とその程度等に応じて適宜定められればよいが、あまり小さいと十分な機能が得られず、逆にあまり大きいと本集合体が樹脂中で凝集した状態で存在し欠陥となってしまう問題があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましく、樹脂w1(g)に対する本フィラー中の本集合体w2(g)の割合(w2/w1)として、下限として、好ましくは5×10−5以上であり、より好ましくは1×10−4以上であり、最も好ましくは5×10−4以上であり、そして上限として、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは5×10−2以下であり、最も好ましくは3×10−2以下である(従って、好ましくは5×10−5〜0.1、より好ましくは1×10−4〜5×10−2、最も好ましくは5×10−4〜3×10−2である。)。
本フィラーの形態は、本集合体のみにより実質的に構成されるもの(例えば、粉体)、予め樹脂と本集合体とを混練し固めたもの(例えば、マスターバッチ)等を例示できる。
また、樹脂と本フィラーとの混合方法は様々な方法を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば、溶融混練法、溶液法等の方法を例示できる。
そして、本フィラーが添加される樹脂は、様々な物を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アラミド等を例示でき、とりわけポリビニルアルコール、ポリエチレンに本フィラーが添加されれば、汎用高分子材料に効果的に機能を付与できるので利用価値が高い。
図1は、本発明のカ−ボンナノチュ−ブ集合体(本集合体)を製造するための工程を示すフローチャートである。図1を参照して、本集合体の製造方法について説明する。
まず、原料とする複数のカ−ボンナノチュ−ブを含むカ−ボンナノチュ−ブ集合体(イ)を準備した。具体的には、Continental Carbon nanotechnologies, INC社製の単層カ−ボンナノチュ−ブの型番HiPCO SP-SWNT(カ−ボンナノチュ−ブ集合体を構成するカーボンナノチューブのチューブ径:1.0nm。以下「1.0SWNT集合体」という。)、株式会社名城ナノカーボン社製の単層カ−ボンナノチュ−ブの型番SWNT SO(カ−ボンナノチュ−ブ集合体を構成するカーボンナノチューブのチューブ径:1.4nm。以下「1.4SWNT集合体」という。)、そしてCVD(化学気相成長法)により作製した単層カ−ボンナノチュ−ブ(カ−ボンナノチュ−ブ集合体を構成するカーボンナノチューブのチューブ径:2.0nm。以下「2.0SWNT集合体」という。)の3種類を購入した。これら1.0SWNT集合体、1.4SWNT集合体及び2.0SWNT集合体のいずれも(これら1.0SWNT集合体、1.4SWNT集合体及び2.0SWNT集合体をまとめて単に「SWNT集合体」ということもある。)、不純物(例えば、アモルファスカーボン等のような炭素不純物)を除去するため熱処理を行った。かかる熱処理は、いずれのSWNT集合体も同様に行い、詳しくはSWNT集合体50mgをムライト製のルツボに装入し、該ルツボを電気炉(FULL−TECH社製の型番FT−101VAC)内にて空気流通(湿り(予め室温下の水中にてバブリングさせて加湿)空気流量100ml(標準状態)/分)下で加熱処理した。該電気炉内に存する該ルツボの温度は、室温から225℃まで約1時間にて昇温し、225℃にて約18時間保持した後、225℃から315℃まで約0.5時間にて昇温し、315℃にて約1.5時間保持した。その後、加熱を中止し室温近くまで降温し、該電気炉から該ルツボを取り出して該ルツボ内のSWNT集合体を図1におけるSWNT集合体(イ)とした。
撹拌混合(A)後、その第1のナス型フラスコに超音波を照射(B)した。超音波照射(B)は、超音波照射装置(日本エマソン株式会社販売、「BRANSON」社製、卓上型超音波洗浄器、型番2510J−MT)を用い、第1のナス型フラスコ中の温度約40℃において時間T1(単位:時間)行われた。
予め800mlの蒸留水(ニ)を第2のナス型フラスコに注入しておき、第1のナス型フラスコ中の内容物を第2のナス型フラスコに少しずつ加えて混合(C)し内容物を希釈した。蒸留水(ニ)を混合(C)後、その第2のナス型フラスコを約1日間静置(D)した。約1日の間、静置(D)された第2のナス型フラスコの内容物は下部に沈殿(SWNT集合体)が生じると共に上部が透明な上澄み液になっていた。
超音波照射(G)後の含有液(チ)に、20mlの10重量%水酸化ナトリウム水溶液(リ)と、100mlのメチルアルコール(ヌ)と、を混合(H)した。
混合(H)後、静置(I)したところ約2時間の経過の後、沈殿の析出が観察された。
静置(I)しても上澄み液が透明になった後、濾過(N)に供された。具体的には、濾過(N)は、濾過(E)にて用いた濾材を用いた減圧濾過によって行った。濾残(ワ)は、濾材(フィルター)上にて蒸留水(カ)をかけて十分に洗浄(P)した(濾液がpH約7程度になるまで洗浄した。)。詳しくは濾過(N)はフィルターホルダーのファンネル部とベース部の間にメンブレンフィルターを挟み、吸引瓶にセットし、ダイアフラムポンプで減圧し行った。洗浄(P)は、濾材(フィルター)上の蒸留水(カ)を最後まで引き切らないように蒸留水(カ)を引いては足すという操作を繰り返し、減圧濾過をしながら洗浄した。濾過の最後は蒸留水(カ)を引ききり、得られた残渣を蒸留水で洗い取った。
洗浄(P)した濾残(ワ)を、70℃の乾燥機に入れ乾燥(Q)させた。
乾燥(Q)の後、真空乾燥(Y)して生成物(Z)(多数のカ−ボンナノチュ−ブ集合体が集合したカ−ボンナノチュ−ブ集合体集合物)を得た。なお、真空乾燥(Y)は、140℃、1Torrにて約8時間行った。
上述の生成物(Z)の形態を観察するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を実施した。ここではTEMとして、日本電子株式会社製の型番「JEM2100EX II」を用いた。
まず、上述の生成物(Z)約0.1mgに蒸留水約2gを加え、超音波照射(G)と同様に6時間超音波を照射(ここでは室温下)し、生成物(Z)を蒸留水中に分散させ懸濁液を調製した。懸濁液を白金線ループを用いて観察用グリッドに載せた後、デシケータ内にて乾燥させた。そして、上述のTEMを用い、加速電圧200kVにて観察した。
透過型電子顕微鏡(TEM)写真をもとに、それぞれのカ−ボンナノチュ−ブ集合体(以下、ナノフィラーということもある)の長さ(Liに該当)、幅(Siに該当)を測定した。その結果からアスペクト比(Riに該当)も算出した。得られた結果をもとに平均値を算出し、多数のカ−ボンナノチュ−ブ集合体が構成するカ−ボンナノチュ−ブ集合体集合物のL、S及びRとした。なお、ここでは透過型電子顕微鏡(TEM)写真からナノフィラー(微細繊維状物)を無作為に選択し、その選択された物について長さLi及び幅Siを測定した。無作為に選択して測定する個数は多数(具体的には、ここでは50個)行った。
1.4SWNT集合体を使用して、図1を用いて説明した本製造方法に従って得られた本集合体の結果を図2の表に示す。
図2において、「超音波照射時間(h)」は、超音波照射(B)を行った時間T1(単位:時間)を示し、超音波照射時間(h)が0と記載されているものは、1.4SWNT集合体(図1におけるSWNT集合体(イ))を示している。そして、図2において、「長さL(nm)」は集合体の長手方向に沿った寸法Lを示し、「直径S(nm)」は集合体の長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Sを示している。また、アスペクト比RはRを示している。
図3は1.4SWNT集合体(図1におけるSWNT集合体(イ))の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示し、図4は「超音波照射時間(h)」(T1)が5時間の場合に得られた図1中の生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示し、図5は「超音波照射時間(h)」(T1)が10時間の場合に得られた図1中の生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示し、図6は「超音波照射時間(h)」(T1)が17時間の場合に得られた図1中の生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示し、そして図7は「超音波照射時間(h)」(T1)が24時間の場合に得られた図1中の生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示している(即ち、図2中の「超音波照射時間(h)」が5、10、17、24時間それぞれに生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である図4、図5、図6、図7がそれぞれ対応する。)。
図8において、「超音波照射時間(h)」は、超音波照射(B)を行った時間T1(単位:時間)を示し、超音波照射時間(h)が0と記載されているものは、2.0SWNT集合体(図1におけるSWNT集合体(イ))を示している。そして、図8において、「長さL(nm)」は集合体の長手方向に沿った寸法Lを示し、「直径S(nm)」は集合体の長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Sを示している。また、アスペクト比RはRを示している。
図9は2.0SWNT集合体(図1におけるSWNT集合体(イ))の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示し、図10は「超音波照射時間(h)」(T1)が10時間の場合に得られた図1中の生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示し、図11は「超音波照射時間(h)」(T1)が17時間の場合に得られた図1中の生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示している(即ち、図8中の「超音波照射時間(h)」が10、17時間それぞれに生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である図10、図11がそれぞれ対応する。)。
図12において、「超音波照射時間(h)」は、超音波照射(B)を行った時間T1(単位:時間)を示し、超音波照射時間(h)が0と記載されているものは、1.0SWNT集合体(図1におけるSWNT集合体(イ))を示している。そして、図12において、「長さL(nm)」は集合体の長手方向に沿った寸法Lを示し、「直径S(nm)」は集合体の長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Sを示している。また、アスペクト比RはRを示している。
図13は1.0SWNT集合体(図1におけるSWNT集合体(イ))の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示し、図14は「超音波照射時間(h)」(T1)が5時間の場合に得られた図1中の生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示している(即ち、図12中の「超音波照射時間(h)」が5時間の場合に生成物(Z)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である図14が対応する。)。
アスペクト比Rは、超音波照射(G)(上述のようにここでは約3時間)を増減させることで変化させることができ、具体的には、超音波照射(G)を長くするとRを減少させることができ、逆に、超音波照射(G)を短くするとRを増加させることができる。
このように、図1におけるSWNT集合体(イ)に図1に示すような処理を施すことで、集合体を短くかつ細くすることができると共に、集合体の絡まりが減少又は無くなり、生成物(Z)は個々が独立した直線状の形態を有することが明らかになった。
このような生成物(Z)は水や有機溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドン)にうまく分散させることができ、これら水や有機溶媒中に懸濁させた状態(懸濁液)としても輸送、貯蔵、使用することもできる。
図2(1.4SWNT集合体を用いた場合)における「超音波照射時間(h)」(T1)が10時間の場合に得られた生成物(Z)に蒸留水を加え、超音波照射(G)と同様に6時間超音波を照射(ここでは室温下)し、生成物(Z)を蒸留水中に分散させ、生成物(Z)の濃度が0.2mg/1gの懸濁液(懸濁液1g中に生成物(Z)が0.2mg含まれる)を調製した。
一方、ポリビニルアルコール(PVA)は、Aldrich社製の純度99%以上、平均重量分子量146000〜186000のものを購入し用いた。かかるPVA0.25gを蒸留水約20gに溶解させてPVA水溶液を調製し、該PVA水溶液約20gに該懸濁液約1.25gを加えて本集合体含有PVA水溶液(本集合体含有PVA水溶液全体における生成物(Z)の重量割合が0.1重量%である。以下、「SWNT0.1wt%PVA水溶液」ということもある。)とした。また、該PVA水溶液約20gに該懸濁液約3.75gを加えた本集合体含有PVA水溶液(本集合体含有PVA水溶液全体における生成物(Z)の重量割合が0.3重量%である。以下、「SWNT0.3wt%PVA水溶液」ということもある。)、該PVA水溶液約20gに該懸濁液約6.25gを加えた本集合体含有PVA水溶液(本集合体含有PVA水溶液全体における生成物(Z)の重量割合が0.5重量%である。以下、「SWNT0.5wt%PVA水溶液」ということもある。)、そして該PVA水溶液約20gに該懸濁液を加えない対照PVA水溶液も調製した。
これらSWNT0.1wt%PVA水溶液、SWNT0.3wt%PVA水溶液、SWNT0.5wt%PVA水溶液及び対照PVA水溶液それぞれに超音波照射(G)と同様に2時間超音波を照射(ここでは室温下)した後、脱泡のため700〜800Gによる遠心分離を30分行った。遠心分離後、SWNT0.1wt%PVA水溶液、SWNT0.3wt%PVA水溶液、SWNT0.5wt%PVA水溶液及び対照PVA水溶液それぞれを内径75mmのPFAシャーレにゆっくり注ぎ、該シャーレを70℃の乾燥機にて乾燥させフィルムを作製した。以下、このようにしてSWNT0.1wt%PVA水溶液から形成されたフィルムを「SWNT0.1wt%フィルム」と、SWNT0.3wt%PVA水溶液から形成されたフィルムを「SWNT0.3wt%フィルム」と、SWNT0.5wt%PVA水溶液から形成されたフィルムを「SWNT0.5wt%フィルム」と、そして対照PVA水溶液から形成されたフィルムを「対照フィルム」と、それぞれ言うこともある。
SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム及び対照フィルムの光透過率を測定した。いずれのフィルムも厚さ20μm程度であった。光透過率測定は、具体的には、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の紫外・可視分光光度計(U-1900)を用い、波長200〜800nmの光の透過率を測定した。図15に光透過率測定の結果を示す。図15のグラフは横軸に光の波長(単位:nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとっているが、光の透過率(%)は、SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム及びSWNT0.5wt%フィルムに関するそれぞれの測定値から対照フィルムの測定値を減じた値としている(即ち、グラフ中の透過率100%は対照フィルムの測定値を示している。)。図15のグラフ中には3本の曲線が観察されるが、上(透過率が大きい)から下(透過率が小さい)に向かってSWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルムの順番になっている。
また、対照フィルム、SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルムの透明性を観察するため、図16のように模様が印刷された白紙の上に対照フィルム、SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルムをこの順番で図16において左側から載置した。
図15及び図16から、生成物(Z)の添加量が増加するにつれて、透過率は減少し(図15)、黒みが増加する(図16)ものの、いずれのフィルムの下に存する白紙上の模様も十分観察できることから(図16)は、SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルムのいずれも十分な透明性を有している。
SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム及び対照フィルムの弾性率を測定した。具体的には、各フィルムによって形成された長さ20mm(有効長さ10mm)、幅5mmの短冊状の試験片(いずれの試験片も含水率約4重量%に調節して測定した。)を、株式会社今田製作所製の引張圧縮試験機(型番SV−201NA)を用い、室温下にて4mm/分の引っ張り速度によって試験しその結果から弾性率を算出した。結果を図17に示す。図17の「サンプル」の欄に「PVA」が記載されたものが対照フィルムを示し、「PVA/SWNT(0.1wt%)」が記載されたものがSWNT0.1wt%フィルムを示し、「PVA/SWNT(0.3wt%)」が記載されたものがSWNT0.3wt%フィルムを示し、そして「PVA/SWNT(0.5wt%)」が記載されたものがSWNT0.5wt%フィルムを示している。
図17に示されたように、対照フィルムに比してSWNT0.1wt%フィルムは弾性率が増加したが、SWNT0.3wt%フィルム及びSWNT0.5wt%フィルムについては弾性率の増加が認められなかった。この理由を解明するため、SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルムについて光学顕微鏡及び電子顕微鏡による観察を行ったところ、SWNT0.1wt%フィルム中では本集合体が極めてうまく分散して存在していたが、SWNT0.3wt%フィルム及びSWNT0.5wt%フィルムのように本集合体の割合が増加すると本集合体同士が凝集して存在することで本集合体が弾性率向上に寄与しにくいことが明らかになった。さらに実験を行ったところ弾性率を顕著に向上させることからは、本集合体を0.1wt%〜0.3wt%の範囲で含有することが好ましいことが明らかになった。
上述のように形成されたSWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム及び対照フィルムを延伸した。
延伸は、SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム及び対照フィルムそれぞれを吸湿させ(具体的には、室温下にて水蒸気がほぼ飽和したシャーレ内に各フィルムを収容することで吸湿させた。この収容時間を調整することで、含水率15重量%、含水率6重量%及び含水率1重量%未満(具体的には含水率0.7重量%)の各フィルムを作製した。)、引張り測定台(日進機械製の型番「NI−FIRM」)を用いて室温下にて延伸前の初期長さ10mmの部分を所定の速度で延伸した(具体的には、含水率15重量%及び含水率6重量%のものは1mm/分の速度で延伸し、含水率1重量%未満(含水率0.7重量%)のものは25mm/分の速度で延伸した。)。延伸は、各フィルムごとに初期長さ10mmの部分が3倍の長さになる3倍延伸(フィルムの白化が起こらない倍率)を行い、初期長さ10mmの部分が3倍の長さになるときの弾性率を求めた。
これら3倍延伸されたSWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム及び対照フィルムそれぞれについて、含水率15重量%、含水率6重量%及び含水率1重量%未満(含水率0.7重量%)で上述の未延伸フィルムの弾性率測定と同様に弾性率を測定した。含水率15重量%におけるSWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム及び対照フィルムそれぞれについての結果を図18に示す。そして、含水率6重量%におけるSWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム及び対照フィルムそれぞれについての結果を図19に示す。さらに含水率1重量%未満(含水率0.7重量%)におけるSWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム及び対照フィルムそれぞれについての結果を図22に示す。図18及び図19のいずれも、「サンプル」の欄に「3倍延伸PVA」が記載されたものが対照フィルムを示し、「3倍延伸PVA/SWNT(0.1wt%)」が記載されたものがSWNT0.1wt%フィルムを示し、「3倍延伸PVA/SWNT(0.3wt%)」が記載されたものがSWNT0.3wt%フィルムを示し、そして「3倍延伸PVA/SWNT(0.5wt%)」が記載されたものがSWNT0.5wt%フィルムを示している。そして、図22において、「フィルム」欄に「3倍延伸PVA」が記載されたものが対照フィルムを示し、「3倍延伸PVA/SWNTナノフィラー」のうち「SWNT濃度(wt%)」の欄に「0.1」が記載されたものがSWNT0.1wt%フィルムを示し、「3倍延伸PVA/SWNTナノフィラー」のうち「SWNT濃度(wt%)」の欄に「0.3」が記載されたものがSWNT0.3wt%フィルムを示し、そして「3倍延伸PVA/SWNTナノフィラー」のうち「SWNT濃度(wt%)」の欄に「0.5」が記載されたものがSWNT0.5wt%フィルムを示している。
図18に示される通り、3倍延伸された対照フィルムに比して、3倍延伸されたSWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム及びSWNT0.5wt%フィルムのいずれも弾性率が大幅に増加した。とりわけ3倍延伸されたSWNT0.1wt%フィルムは、本集合体が0.1重量%とごく僅かな添加量にも係わらず3倍延伸対照フィルムに比して2倍近い弾性率を示した。図19に示される通り、含水率が6重量%と低くなると、本集合体の添加量が0.1重量%では大きな向上が見られないが、SWNT0.3wt%フィルム及びSWNT0.5wt%フィルムのように添加量が大きくなると弾性率が大幅に増加した。そして、図22に示される通り、含水率1重量%未満のように含水率が低いものはSWNT添加により弾性率が大幅に向上することが明らかになった。特に、図22においては、SWNTの添加量が増加するほど弾性率も増加しており、フィルム中でSWNTが有効に補強効果を奏している。
このように3倍延伸フィルムにおける飛躍的な弾性率向上は本集合体を0.1〜0.5wt%の範囲で含有させることが好ましいことが明らかになった。
上述の図2における「超音波照射時間(h)」(T1)が10時間の場合に得られた生成物(Z)を用いた。ポリエチレンは、高密度ポリエチレンを用い、詳しくは、Aldrich社製の高密度ポリエチレン(型番427985、melt index 12g/10分)を購入して用いた。
イ)混練部温度145℃、回転数10rpm(回転/分)に設定した混練機に、HDPE4gを投入した。
ロ)混練部に蒸留水4gを少量ずつ加えた(後述する生成物(Z)を加える場合と同量の蒸留水を添加し、作製条件を揃えるため。)。
ハ)回転数70rpmで、10分間混練を行った。
ニ)混練後、溶融したHDPEを取り出した。
ホ)混練部温度145℃、回転数10rpmに設定した混練機に、ニ)にて取り出したHDPEを投入した。
へ)上述したハ)→ニ)→ホ)→ハ)→ニ)を行い、混練済みHDPE(以下、対照HDPEということもある)を得た。
ト)回転数70rpmで、10分間混練を行った。
チ)混練後、溶融したHDPEを取り出した。
リ)混練部温度145℃、回転数10rpmに設定した混練機に、チ)にて取り出したHDPEを投入した。
ヌ)上述したト)→チ)→リ)→ト)→チ)を行い、生成物(Z)を0.3重量%含むHDPEの組成物(以下、SWNT0.3wt%HDPE組成物ということもある)を得た。
まず、図20(a)に示す通り、テフロン(登録商標)製のシート31a(主表面が100mm×100mmの正方形をなし、厚み1mmである)の中央に、SWNT0.3wt%HDPE組成物のペレット21を約100mg載置し、さらにシート31aと同様のシート31bとシート31aとでペレット21を図20(b)のように挟み込んだ。
その後、シート31aとシート31bとで挟まれたペレット21を、一対のステンレス鋼製の平板41a、41b(平板41a、41bいずれの主表面も100mm×100mmの正方形をなし、厚み2mmである)にて挟み込んだ。
この平板41a、41b及びシート31a、31bにより挟まれたペレット21(以下、プレス物ということもある)を、株式会社井元製作所製の手動油圧真空加熱プレス機(型番IMC-11FD)を用いてプレスした。詳細には、かかるプレス機の145℃に昇温したプレス部分の中央にプレス物を置き、内部を真空にした。その後、上下のプレス板でステンレス板を軽く挟み、15分保持することにより試料を溶融させ、圧力6MPaで3分間プレスした。プレス後、プレス物を氷浴につけて急冷し、フィルムを作製した(このフィルムを「本集合体含有HDPEフィルム」と呼ぶ)。本集合体含有HDPEフィルムは、平均厚さ約80μmの黒色半透明なフィルムであり、フィルム全体中の生成物(Z)の重量%は0.3重量%であった。
また、対照HDPEを使用し、上のSWNT0.3wt%HDPE組成物のペレット21と同様にフィルムを作製した(このフィルムを対照HDPEフィルムと呼ぶ)。
本集合体含有HDPEフィルム及び対照HDPEフィルムいずれも直径6cm程度の円形を略なす薄膜状であった。
測定結果を図21に示す。図21において「試料」の欄の「HDPE」(上欄)は対照HDPEフィルムの結果を示し、「HDPE/SWNTナノフィラー複合体(0.3wt%)」(下欄)は本集合体含有HDPEフィルムの結果を示す。
図21に示した通り、対照HDPEフィルムに比較して本集合体含有HDPEフィルムは熱伝導率が0.49から0.54と約10%増加していた。本集合体含有HDPEフィルム内における本集合体の分散状況を顕微鏡観察したところ、極めてうまく均一に分散されていた。この良分散によって0.3重量%という僅かな添加量にも係わらず、上述のような大きな熱伝導率の向上をもたらしたものと思料される。
対照フィルムの未延伸フィルム501(以下、「対照未延伸フィルム」という)、SWNT0.5wt%フィルムの未延伸フィルム501(以下、「SWNT未延伸フィルム」という)、対照フィルムの延伸フィルム505(以下、「対照延伸フィルム」という)、そしてSWNT0.5wt%フィルムの延伸フィルム505(以下、「SWNT延伸フィルム」という)の4種類のフィルムにつき、熱拡散率を測定した。熱拡散率の測定は、株式会社ベテル社製の熱物性測定装置(商品名:サーモウェーブアナライザ、型番:TA3)を用い、各フィルムにつき、図24に示すように延伸方向Xに沿った熱拡散率(面内)と厚み方向Z(延伸方向Xに対して垂直方向)に沿った熱拡散率との2種類の熱拡散率を測定した(対照未延伸フィルム及びSWNT未延伸フィルムについては方向Xに延伸されていないが、延伸フィルム505において延伸する方向と一致させている。)。
測定結果を図25に示す。図25中、フィルム欄の「PVA」は対照未延伸フィルムを示し、「PVA/SWNTナノフィラー(SWNT濃度0.5wt%)」はSWNT未延伸フィルムを示し、「延伸PVA」は対照延伸フィルムを示し、そして「延伸PVA/SWNTナノフィラー(SWNT濃度0.5wt%)」はSWNT延伸フィルムを示している。加えて、図25の測定方向における「厚み」は図24における厚み方向Zに沿った熱拡散率を示し、「面内」は延伸方向X(対照未延伸フィルム及びSWNT未延伸フィルムについては未延伸)に沿った熱拡散率を示している。なお、図25中の「PVA」(対照未延伸フィルム)及び「延伸PVA」(対照延伸フィルム)において、面内の測定値がいずれも「0.5×10−6(m2/s)以下」となっているのは熱拡散率が低いため具体的数値の測定が困難であることを示している。
図25において「PVA/SWNTナノフィラー(SWNT濃度0.5wt%)」(SWNT未延伸フィルム)の面内の測定結果と「PVA」(対照未延伸フィルム)の面内の測定結果とを比較すると、フィルムにSWNTナノフィラーを添加することで面内の熱拡散率を大幅に増加させること(熱伝導率の増加)ができることが明らかになった。
そして、図25の「PVA/SWNTナノフィラー(SWNT濃度0.5wt%)」(SWNT未延伸フィルム)の測定結果と「延伸PVA/SWNTナノフィラー(SWNT濃度0.5wt%)」(SWNT延伸フィルム)の測定結果とを比較すると、前者の面内の測定値が0.82×10−6(m2/s)であったのに対し、後者の面内(延伸)の測定値が1.6×10−6(m2/s)と約2倍に増加している。そして、「PVA」(対照未延伸フィルム)の測定結果と「延伸PVA」(対照延伸フィルム)の測定結果において面内の測定値はいずれも0.5×10−6(m2/s)以下であったことから、SWNTナノフィラーを添加したフィルムを延伸することで延伸方向に沿った熱拡散率を大幅に増加(熱伝導率増加)させることができることが明らかになった。「延伸PVA/SWNTナノフィラー(SWNT濃度0.5wt%)」の面内(延伸)の熱拡散率は「延伸PVA」の熱拡散率の少なくとも3倍以上に増加した。また、SWNTナノフィラーを添加したフィルムを延伸することで延伸方向に沿った熱拡散率と延伸方向に沿っていない方向の熱拡散率を異ならせることができることも明らかになった。
本製造方法においては、酸処理工程(超音波照射(B))と含有液調製工程(混合(F)と超音波照射(G))との間に、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブから不純物を除去する不純物除去工程(ここでは濾過(E))を含むものである。そして、本製造方法においては、不純物除去工程(濾過(E))が、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを濾残(ホ)として回収する濾過工程(濾過(E))を含んでなる。
本製造方法においては、添加工程(混合(H)のうちメチルアルコール(ヌ)を混合する工程)が塩生成工程(混合(H)のうち水酸化ナトリウム水溶液(リ)を混合する工程)の後に行われるものである。
本製造方法においては、長手方向に沿った寸法Lに対して長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Sがなす比率Rが5〜300nmであり且つLが50〜2000nmでありSが3〜60nmであるカ−ボンナノチュ−ブ集合体(多数のカ−ボンナノチュ−ブ集合体が構成するカ−ボンナノチュ−ブ集合体集合物)を製造することができる。
本製造方法においては、(原料)SWNT集合体(イ)及び生成物(Z)のいずれの集合体を構成するカ−ボンナノチュ−ブも単層カーボンナノチューブである。
本製造方法において製造されるカ−ボンナノチュ−ブ集合体(生成物(Z))は、カルボキシル基が表面に形成されているものである。
3倍延伸されたSWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルムの製造方法は、樹脂(ポリビニルアルコール)と本集合体(図2における「超音波照射時間(h)」(T1)が10時間の場合に得られた生成物(Z))とを含む樹脂組成物を用いた成形物(3倍延伸されたSWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム)の製造方法であって、該樹脂組成物を用いて予備成形物(SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム)を成形する予備成形工程と、予備成形物(SWNT0.1wt%フィルム、SWNT0.3wt%フィルム、SWNT0.5wt%フィルム)を延伸する延伸工程と、を含んでなる、成形物の製造方法である。
本製造方法において製造されるカ−ボンナノチュ−ブ集合体(生成物(Z))は、それを含む樹脂用フィラーとして用いることができる。
31a、31b シート
41a、41b 平板
501 未延伸フィルム
503a、503b 主表面
505 延伸フィルム
Claims (8)
- 複数のカ−ボンナノチュ−ブを含むカ−ボンナノチュ−ブ集合体の製造方法であって、
複数のカ−ボンナノチュ−ブを含むカ−ボンナノチュ−ブ集合体を酸と接触させた状態で超音波を照射し、カ−ボンナノチュ−ブにカルボキシル基を形成する酸処理工程と、
酸処理工程によりカルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを第1液体に溶解又は安定的に分散させたカ−ボンナノチュ−ブ含有液を調製する含有液調製工程と、
アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンをカ−ボンナノチュ−ブ含有液に添加し該カルボキシル基をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とする塩生成工程と、
第1液体に溶解させることでカルボキシル基のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に対して第1液体よりも貧溶媒となる添加物を塩生成工程の前及び/又は後のカ−ボンナノチュ−ブ含有液に添加する添加工程と、
塩生成工程及び添加工程の後、カ−ボンナノチュ−ブ含有液中にカ−ボンナノチュ−ブ集合体を析出させる析出工程と、
を含んでなる、製造方法。 - 含有液調製工程において、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブと第1液体との混合物に超音波を照射するものである、請求項1に記載の製造方法。
- 酸処理工程と含有液調製工程との間に、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブから不純物を除去する不純物除去工程を含むものである、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 不純物除去工程が、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを濾残として回収する濾過工程を含んでなる、請求項3に記載の製造方法。
- 含有液調製工程において調製されるカ−ボンナノチュ−ブ含有液が、カルボキシル基が形成されたカ−ボンナノチュ−ブを第1液体に溶解させたカ−ボンナノチュ−ブ溶液である、請求項1乃至4のいずれか1に記載の製造方法。
- 添加工程が塩生成工程の後に行われるものである、請求項1乃至5のいずれか1に記載の製造方法。
- 長手方向に沿った寸法Lに対して長手方向に対して垂直な方向に沿った寸法Sがなす比率Rが5〜300であり且つLが50〜2000nmでありSが3〜60nmであるカ−ボンナノチュ−ブ集合体を製造するものである、請求項1乃至6のいずれか1に記載の製造方法。
- カ−ボンナノチュ−ブが単層カーボンナノチューブである、請求項1乃至7のいずれか1に記載の製造方法。
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